「増収増益」が1年前に比べてダウン、個人消費低下へ

2016/5/18
山形支店
山形市本町 2-4-3 本町ビル 4F
TEL:023-622-4301
FAX:023-622-4415
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画 : 2016 年度の業績見通しに関する山形県内企業の意識調査
「増収増益」が1年前に比べてダウン、個人消費低下への懸念強まる
~ アベノミクスへの企業の評価は 57.6 点、1 年前より 3.4 ポイント低下 ~
はじめに
国内景気は、公共工事の減少が地域経済を悪化させる要因となっているほか、中国経済や資源
国経済の低迷による金融市場の混乱で企業や家計のマインドを萎縮させるなど、全国的に悪化し
ている。また、人手不足による受注機会の喪失は景気拡大を抑制する懸念材料ともなっているな
か、景気動向は地域や業界、規模によって業績に与える影響が異なっている。
そこで、帝国データバンク山形支店では、2016 年度の業績見通しに関する企業の見解について
調査を実施した。本調査は、TDB 景気動向調査 2016 年 3 月調査とともに行った。
※調査期間は 2016 年 3 月 17 日~31 日、調査対象は山形県内の 227 社で、有効回答企業数は 122
社(回答率 53.7%)
。なお、業績見通しに関する調査は今回で 3 回目。
調査結果(要旨)
1.2016 年度の業績見通しを「増収増益」とする企業は 13.1%に止まった。2015 年度実績見込みか
らは 13.9 ポイントの大幅減少となる。
「減収減益」の予想も減少しているものの、2016 年度業
績は厳しい見方をする企業が多い。
2.2016 年度業績見通しの下振れ材料は「個人消費の一段の低迷」が 45.5%でトップとなり、
「公
共事業の減少」
「原油・素材価格の動向」が続いた。上振れ材料は「公共事業の増加」が 39.0%
でトップとなり、
「個人消費の回復」
「原油・素材価格の動向」が続いた。
3.安倍政権の経済政策(アベノミクス)の成果に対する企業の評価は、100 点満点中平均 57.6 点。
3 年余りにわたるアベノミクスについて 1 年前より 3.4 ポイント低下しており、厳しい目で見
る企業が増加した。
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する山形県内企業の意識調査
1. 2016 年度は企業の13.1%が「増収増益」見通し、2015 年度実績から 13.9 ポイント減少
2016 年度(2016 年 4 月決算~2017 年 3 月決算)の業績見通し(売上高および経常利益ベース)
について尋ねたところ、
「増収増益(見込み)
」と回答した企業は 13.1%に止まり、2015 年度実績
見込みから 13.9 ポイント減少した。また、
「減収減益(見込み)
」も前年度から 1.6 ポイント減少
した一方、
「前年度並み(見込み)
」は 17.2 ポイント増加した。
「減収減益」を予想する企業も減
少したものの、
「増収増益」の減少幅が大きく、その結果「増収」
(
「増収増益」
「増収減益」
「増収
だが利益は前年度並み」の合計)を見込む企業は全国平均の 41.0%を大きく下回る 27.0%に止ま
り、2016 年度業績は厳しい見方をする企業が多くなっている。
2016 年度の業績見通しを従業員数別に見ると、1,000 人超の企業からの回答が 1 社で、
「増収増
益」であったことから 100%となった。しかし、そのほかでは最高値で「301 人~1,000 人」の 28.6%
に止まり、県内における「増収増益」の企業は 10 社に 1 社強と厳しい状態を示す結果となった。
2 01 5 年度の実績見込み、2 01 6年度の見通しについて
増収増益
(見込み含む)
2014年度
実績見込み
増収減益
(見込み含む)
29.8%
減収増益
(見込み含む)
前年度並み
(見込み含む)
減収減益
(見込み含む)
6.5% 13.7%
29.0%
その他
5.6%
15.3%
2015年
3月調査
2015年度
見通し
22.4%
2015年度
実績見込み
2016年
3月調査
2016年度
見通し
4.8%
6.4%
27.0%
13.1%
28.0%
7.4% 11.5%
4.9%
7.4%
19.2%
30.3%
28.7%
19.2%
8.2%
25.4%
15.6%
20.5%
注1: 母数は「分からない/不回答」を除く2014年度実績見込みが124社、2015年度見通しが同125社、
2015年度実績見込みが同122社、2016年度見通しが同122社
注2:業績は、売上高および経常利益ベース
■2016年度「増収」「増収増益」を見通す企業の割合~従業員数別~
(%)
100.0 100.0
100
増収
増収増益
80
60
40
20
27.0
20.0
13.1
33.3
27.3
10.0
15.2
33.3
12.1
28.6 28.6
16.7
10.0
0.0
0
全体
5人以下
6~20人
21~50人
51~100人 101~300人 301~1,000人 1,000人超
従業員数
注:「増収」は、「増収増益」「増収減益」「増収だが利益は前年度並み」の合計
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する山形県内企業の意識調査
2. 2016 年度業績見通し、個人消費の冷え込みが企業業績見通しの足枷となる
2016 年度の業績見通しを下振れさせる材料を尋ねたところ、
「個人消費の一段の低迷」が 45.5%
で最多となった。次いで、
「公共事業の減少」
「原油・素材価格の動向」
「人手不足」
「所得の減少」
が続いた。特に、6 位の「外需(中国経済の悪化)
」を挙げた企業は前回調査(8.8%)から大きく
伸びており、中国の景気低迷に危機感を強めている様子がうかがえる。また、家計の所得増加が
厳しい状況のなか「消費税率 10%への引き上げをにらんだ買い控え」は 25.0%超となっており、
家計支出の抑制を懸念する企業が多くなっている。
一方で、建設業や建設資材販売などの企業からは「公共工事が減少し、競合の激化から落札金
額が低廉化している」
(建設)など公共事業の減少に懸念する声が複数寄せられた。
2016 年度の業績見通しを上振れさせる材料では「公共事業の増加」が 39.0%(前年度比 11.0
ポイント増加)で最多となり、以下、「個人消費の回復」「原油・素材価格の動向」と下振れ材料
の上位との相対的な関係を示す結果となった。例えば「公共事業」については、規模や実績によ
り入札ランクが決定されるため、それらの要因で参加できる受注金額の範囲が変わることや、現
場が県内であるか、公共事業が活性化している首都圏や震災被災地であるか、などの状況の違い
から、見通しの立て方に差が現れる傾向を見せている。
企業からは、「原料・資材調達価格が上がるのに対し、最終製品の単価が上がらない」という
卸業者の声がある一方で、食品製造業者からは「原料価格(原料事情)が収益性に影響を与える」
と「増収増益」を予想する声があるなど温度差が見られた。
■2016年度業績見通しの下振れ材料(複数回答)
(%)
2016年度見通し 2015年度見通し
2016年度見通し 2015年度見通し
(2016年3月調査) (2015年3月調査)
(2016年3月調査)
1
個人消費の一段の低迷
45.5
2
公共事業の減少
37.4
3
原油・素材価格の動向
34.1
4
人手不足
31.7
30.9
25.2
5
所得の減少
6
外需(中国経済の悪化)
■2016年度業績見通しの上振れ材料(複数回答)
(%)
↑
7 消費税率10%への引き上げをにらんだ買い控え
25.2
(2015年3月調査)
44.0
1
公共事業の増加
2
個人消費の回復
37.6
3
原油・素材価格の動向
32.5
33.6
34.4
4
所得の増加
21.1
21.6
27.2
5
消費税率10%への引き上げを控えた駆け込み需要
8.8
6
外需(中国経済の成長)
7
雇用の改善
-
-
8
雇用の悪化
9
物価下落(デフレ)の進行
10
外需(米国経済の悪化)
↑
16.3
8.8
11
株式市況の下落
↑
15.4
5.6
12
為替動向
14.6
14.4
12
13
賃金相場の上昇
12.2
16.8
14
政策支援の縮小・終了
12.2
12.0
15
外需(ASEAN諸国経済の悪化)
11.4
6.4
16
外需(欧州経済の悪化)
17 消費税率8%への引き上げによる影響の長期化
↑
↑
39.0
28.0
35.8
38.4
18.7
↑
↑
9.6
15.4
15.2
23.6
21.6
8
外需(米国経済の成長)
14.6
7.2
22.0
11.2
9
為替動向
14.6
14.4
10
物価下落(デフレ)からの脱却
13.8
11.2
11
東日本大震災にともなう復興需要の増加
12.2
15.2
政策支援の充実
11.4
10.4
13
金融緩和(量的・質的緩和)
10.6
6.4
14
外需(ASEAN諸国経済の成長)
8.1
5.6
15
株式市況の上昇
8.1
12.0
↑
8.9
3.2
16
外需(欧州経済の成長)
6.5
3.2
↓
8.9
26.4
17
欧州債務危機の早期払拭
4.9
1.6
18
マイナス金利政策
7.3
-
18
マイナス金利政策
19
自然災害やテロなどの不確実要因
7.3
-
19
消費税率8%への引き上げによる影響の収束
20
欧州債務危機の長期化
5.7
20
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
2.4
21
カントリーリスク(中東などの政治リスク)
4.9
その他
8.9
22
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
4.1
その他
-
17.9
↓
4.1
5.6
4.8
-
4.9
↓
-
4.1
12.0
5.6
注1:2016年3月調査の母数は有効回答企業123社。2015年3月調査は125社
9.6
注:2016年3月調査の母数は有効回答企業123社。2015年3月調査は125社
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する山形県内企業の意識調査
なお、消費税率の引き上げについては、
「買い控え」を懸念する企業が 25.2%を占めるなかで「駆
け込み需要」に期待する企業は 18.7%に止まり、懸念材料と見ている企業が多いことが分かった。
3. アベノミクスへの評価は平均 57.6 点、1 年前より 3.4 ポイント低下
安倍政権による経
■アベノミクスへの評価
済政策(アベノミク
ス)について、現在
までのアベノミクス
の成果を 100 点満点
で評価した場合、何
点と評価するか尋ね
たところ平均 57.6 点
だった。
企業からは、
「これ
まで安倍首相のよう
な対応を行った政権
はなかった」
(機械製
造、90.0 点)や「公
共工事増加、雇用の
64
62
前回(2015年3月調査)
61.5点
61.0点
60
58
57.6点
今回(2016年3月調査)
56
57.7点
57.8点
56.8点
54
52
0
全体
大企業
中小企業
注:母数は「分からない」を除く有効回答企業120社
拡大など内需関連に
ついては大きく評価」
(建設、80.0 点)など、デフレ脱却に向けた取り組みを評価する意見も見
られたものの、3 年余りにわたるアベノミクスについての評価は、前回調査(61.0 点)から 3.4
ポイント低下して及第点ラインの 60 点を割っており、厳しい目で見る企業が増加した。
アベノミクスに対する評価は、山形県では全国と異なり「大企業」より「中小企業」の評価が
高い傾向を示している。しかし、それでも「中小企業」で 57.7 点と及第点ラインの 60 点を下回
っており、1 年前と比べると、どちらの規模も点数が低下した。企業からは「大都市や大企業へ
の恩恵は厚いが、地方や中小企業が切り捨てられている。経済を下支えしている中小零細企業の
社員の現状をもっと把握し、政策を考えてほしい」
(印刷、15.0 点)など、アベノミクスは当地
の実体経済を活性化させていないとの声が多く寄せられた。
政府は、企業がアベノミクスに対して徐々に厳しい見方を増しているなか、より効果的な政策
を果断に実行しなければならない。
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■アベノミクスへの評価分布
25.8%
平均 57.6 点
25.0%
前回(2015年3月調査)
前回 61.0 点
今回(2016年3月調査)
10.8%
19.2%
18.3%
20.0%
22.5%
15.0%
10.0%
7.5%
0.8%
0.8%
2.5%
1.7%
1.7% 5.0%
1.7%
5.0%
4.2%
2.5%
10点未満 10~19点 20~29点 30~39点 40~49点 50~59点 60~69点 70~79点 80~89点 90点以上
#REF!
注:母数は「分からない」を除く有効回答企業120社
まとめ
県内経済は、建設や製造などの基幹産業に影響を及ぼす公共事業の減退や中国の景気低迷、原
油安にともなう資源国経済の減速など憂慮案件が見られ、不透明感が漂っている。また、2016 年
度は「増収増益」を見込む企業は 13.1%(前年度実績比 13.9 ポイント減)に止まり、
「減収減益」
とする企業も僅かに減少しているものの、企業の 2016 年度業績に対する見通しは総じて厳しい。
特に、個人消費に対する懸念は強く、消費税率を 8%に引き上げて以降長期化している駆け込み需
要の反動減とともに、収入の増加が厳しい状況のなかで、10%への引き上げを前にした家計の支
出抑制の影響を視野に入れている様子がうかがえる。
一方、安倍政権の経済政策(アベノミクス)に対する県内企業の評価は、平均 57.6 点。3 年余
りにわたるアベノミクスに対して 60 点以上の及第点には至らず、政府の経済政策に厳しい見方を
とる企業が増加していることも浮き彫りとなった。
2016 年度の企業業績について前年度より弱気の見通しとなっているなか、個人消費や公共事業
の動向などが懸念材料として捉えられていることから、政府は一層効果的な政策を打ち続けてい
かなければならない。
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企業規模区分
中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。
業界
大企業
中小企業(小規模企業を含む)
小規模企業
製造業その他の業界
「資本金3億円を超える」 かつ 「従業員数300人を超える」
「資本金3億円以下」 または 「従業員300人以下」
「従業員20人以下」
卸売業
「資本金1億円を超える」 かつ 「従業員数100人を超える」
「資本金1億円以下」 または 「従業員数100人以下」
「従業員5人以下」
小売業
「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員50人を超える」
「資本金5千万円以下」 または 「従業員50人以下」
「従業員5人以下」
サービス業
「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員100人を超える」
「資本金5千万円以下」 または 「従業員100人以下」
「従業員5人以下」
注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング
【 内容に関する問い合わせ先 】
株式会社帝国データバンク 山形支店
TEL 023-622-4301
担当:佐藤剛喜
FAX 023-622-4415
当リリース資料の詳細なデータは景気動向調査専用 HP(http://www.tdb-di.com)をご参照下さい。
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