アフリカ水田農法(Sawah Technology)による 持続可能な稲作革命の実現と平和構築 若月利之(島根大学 名誉教授)ホームページ http://www.kinki-ecotech.jp/ 2015 年 5 月 21 日、東京農大特別講義「アフリカにおける水田農業の普及」、同 5 月 24 日、京都大学、第 22 回地球 環境フォーラム「アフリカ水田農法とアジア・アフリカ連携」、同 9 月 11 日、日本土壌肥料学会京都大会公開シンポジ ウム「土壌はアフリカを養えるのか」の統合講演資料。2016 年 5 月 16 日更新。文章の一部は雑誌「現代農業」2015 年 3 月号と 5 月号で発表。2015-16 年の IOM(国際移住機関)とナイジェリア Sawah チーム(農業機械化センターNCAM) によるチャド移住難民定住化へのアフリカ水田農法の適用事例も加えた。 はじめに 私は 1986-9 年、JICA(国際協力機構)専門家として、ナイジェリアのイバダン市に本部をおく国際熱帯 農業研究所(IITA)に派遣された。この間、セネガルからコンゴまで、西・中部アフリカ全域の稲作地帯の土 壌と地形と水、そして稲作システムを調査した。又、ナイジェリア中部のビダ市付近のニジェール川支流の 内陸小低地集水域の村々で、農民の自力で可能な灌漑水田開発と水田稲作技術(Sawah technology)の 基礎的及び実証研究を行った。これにより「水田はアフリカを救う」(若月、1989)ことを確信した。しかし当 時の IITA や西アフリカ稲作開発協会(WARDA、現 AfricaRice)では水田の重要性についての理解は進ま なかった。当初は農民圃場で実証研究として開田された水田が、そのまま維持管理され自律的に拡大す ることはなかった。日本の研究者からは品種さえ良ければ解決するという誤解、陸稲と伝統農業への勘違 いや文化人類学視点からの水田帝国主義との批判もあった。ともあれ、以後 30 年、広大なアフリカでの歩 みは遅々としていたが、近年、特に 2008 年のコメの国際価格の高騰以降、アフリカの水田稲作は急速な進 化と発展の段階に入った。 1、 爆発的に増加するアフリカの米生産とコメ消費 表 1~5 に示す FAOSTAT(2016 年)のデータによれば、アフリカ(サハラ以南)の人口は過去 50 年で 2.5 表1.サブサハラアフリカの1961-2014年の間の稲作市場関連データの変遷。データソースはFAOSTAT2016とAQUASTAT2016、籾と精米の重量換 算率は 0.625 x 籾重量 = 精米重量とした。全データは各5年の平均値である。ただし、2008、2011-2014年は単年のデータ。 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2008 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 2012 2013 2014 2011 -2014 247 人口(百万人) 2694 作付面積(1000ヘクタール) 作付面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 70.2 280 3110 81.1 320 3556 92.7 368 4114 107 424 4469 117 488 5292 138 562 6222 162 642 6803 177 732 7453 194 837 8593 224 837 8611 225 907 932 957 983 945 9920 10563 10573 10952 10502 259 275 276 286 274 灌漑面積(1000ヘクタール) 3719 4059 4430 4926 5422 6122 6731 7309 7646 7855 7858 8010 8088 8061 灌漑面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 籾生産量(1000トン) 籾生産量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 精米換算生産量(1000トン) 籾収量(トン/ヘクタール) 籾収量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 精米換算収量(トン/ヘクタール) 79.5 3531 64.3 2207 1.31 91.4 0.82 600 78.8 135 11.3 86.8 4330 78.8 2706 1.39 97.1 0.87 696 79.5 156 12.1 94.7 5149 93.8 3218 1.45 101 0.90 904 78.1 267 12.9 105 5835 106 3647 1.42 99.0 0.89 1866 66.9 356 14.9 116 6735 123 4210 1.51 105 0.94 2847 59.6 343 16.7 131 144 156 163 168 168 171 173 173 8830 10062 11243 12388 17068 17274 20499 22555 22340 161 183 205 226 311 315 373 411 407 5519 6289 7027 7742 10667 10796 12812 14097 13962 1.67 1.62 1.65 1.66 1.99 2.00 2.07 2.14 2.11 116 113 115 116 139 139 144 149 147 1.04 1.01 1.03 1.04 1.24 1.25 1.29 1.33 1.32 3057 3838 4470 7707 8654 8954 11196 13516 13970 64.2 62.1 61.2 50.2 55.2 54.3 53.4 51.1 50.0 276 294 303 242 556 428 557 529 529 17.5 18.1 17.9 21.1 23.1 23.6 26.5 29.6 29.2 172 25161 22639 458 412 15726 14149 2.30 2.15 160 150 1.44 1.35 12894 51.5 538 28.4 精米換算年間輸入量(1000トン) 自給率(%) 精米換算輸入価格(ドル/トン) 精米換算年間一人当たりの消費量(kg/人) 8086 表2.西アフリカの1961-2014年の間の稲作市場関連データの変遷。データソース、その他のデータ処理法は、表1と同じ。 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2008 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 90.6 人口(百万人) 1515 作付面積(1000ヘクタール) 作付面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 76.4 101 1603 80.9 2012 2013 2014 2011 -2014 344 6914 349 330 6575 332 114 1826 92.1 130 2137 108 149 2434 123 171 3095 156 196 3817 193 223 4207 212 255 4725 238 291 5251 265 292 5314 268 317 5947 300 325 6651 336 335 6789 343 1216 1218 1282 1290 1292 灌漑面積(1000ヘクタール) 426 449 504 558 606 674 758 921 1108 灌漑面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 籾生産量(1000トン) 籾生産量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 精米換算生産量(1000トン) 籾収量(トン/ヘクタール) 籾収量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 精米換算収量(トン/ヘクタール) 80.2 1571 59.1 982 1.04 77.3 0.65 333 74.9 133 14.5 84.6 2035 76.5 1272 1.27 94.7 0.79 403 75.9 148 16.5 95.0 2430 91.4 1519 1.33 99.2 0.83 477 76.1 253 17.5 105 2890 109 1807 1.35 101 0.84 1188 61.9 362 22.9 114 3683 138 2302 1.51 113 0.95 1809 56.0 342 27.5 127 5119 192 3199 1.65 123 1.03 1852 63.0 261 29.5 143 6171 232 3857 1.62 121 1.01 2401 61.6 274 32.0 174 6948 261 4342 1.65 123 1.03 2801 60.9 291 32.0 209 229 229 241 243 243 242 7383 10391 10224 12115 14410 14657 16669 14463 278 391 384 455 542 551 627 544 4614 6494 6390 7572 9006 9161 10418 9039 1.56 1.98 1.92 2.04 2.17 2.16 2.41 2.19 117 148 143 152 162 161 180 164 0.98 1.24 1.20 1.27 1.35 1.35 1.51 1.37 4996 5496 5574 7290 8623 8467 8127 48.0 54.2 53.1 50.9 51.1 52.0 51.3 234 545 413 543 521 528 531 37.7 41.1 40.9 46.9 54.2 52.7 51.3 精米換算年間輸入量(1000トン) 自給率(%) 精米換算輸入価格(ドル/トン) 精米換算年間一人当たりの消費量(kg/人) 1 1288 億から 9.8 億人と 4 倍、米生産量は 7 倍増した。西アフリカではさらに顕著で 0.9 億から 3.4 億人と 3.8 倍の 人口増に対して、米生産量は 11 倍増した。この間一人当たりの年間精米消費量は 15kg から 53kg と、アジ ア人のコメ消費の 50%の水準に達した。一方、アジアは 18 億から 44 億人と 2.4 倍増、米生産は 3 倍増で あった。アフリカ No.1 の米生産と消費国ナイジェリアの増産がめざましく、米生産は過去 50 年で 30 倍以上 になった。しかし人口増と消費増の相乗効果で急拡大する米需要をまかなえず、自給率は 60%以下で、さ らなる増産が求められている。アジア型の稲作国マダガスカルでは作付面積でなくて灌漑面積の増加が収 量増と生産増をもたらした。その対極にあるナイジェリア等、大部分のアフリカ諸国では作付面積の増加が 生産増の主因となった。しかし、灌漑面積も着実に増加しており、両者の相乗効果により米生産が爆発的 に増加した。 表3.アジアの1961-2014年の間の稲作市場関連データの変遷。データソースとデータ処理法は表1と同じ。 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2008 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 2012 2013 2014 2011 -2014 人口(百万人) 1795 2019 2276 2526 2785 3080 3369 3620 3853 4080 4080 4215 4260 4305 4350 4282 111 118 124 128 129 130 132 137 135 143 141 144 143 146 144 144 102 103 105 109 107 114 112 114 114 115 114 114 作付面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 88.4 93.7 98.3 102 108 115 124 133 145 156 176 193 210 222 222 228 228 229 228 灌漑面積(百万ヘクタール) 作付面積(百万ヘクタール) 灌漑面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 84.0 籾生産量(百万トン) 222 籾生産量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 68.9 139 精米換算生産量(百万トン) 1.99 籾収量(トン/ヘクタール) 77.9 籾収量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 1.24 精米換算収量(トン/ヘクタール) 5343 精米換算年間輸入量(1000トン) 96.3 自給率(%) 125 精米換算輸入価格(ドル/トン) 80.0 精米換算年間一人当たりの消費量(kg/人) 89.7 264 82.0 165 2.23 87.5 1.39 5527 96.7 162 84.3 96.5 302 93.8 189 2.43 95.5 1.52 5445 97.2 270 85.3 104 342 106 213 2.66 105 1.66 5675 97.4 366 86.7 112 406 126 254 3.15 124 1.97 5546 97.8 379 93.0 121 448 139 280 3.44 135 2.15 5208 98.2 324 92.6 137 150 163 487 537 544 151 167 169 305 335 340 3.69 3.91 4.04 145 153 159 2.31 2.44 2.53 6783 11719 11578 97.8 96.6 96.7 372 365 312 92.4 95.9 91.2 172 624 194 390 4.36 171 2.73 14006 96.5 770 99.1 173 612 190 382 4.34 170 2.71 13410 96.6 623 97.0 177 653 203 408 4.54 178 2.83 15678 96.3 717 101 177 663 206 415 4.61 181 2.89 15559 96.4 685 101 178 177 669 667 663 208 207 206 418 417 414 4.57 4.57 4.34 179 179 170 2.87 2.89 2.87 14790 15342 96.6 96.4 786 730 101 100.7 表4.ナイジェリアの1961-2014年の間の稲作市場関連データの変遷。データソースとその他のデータ処理法は表1と同じ。 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2008 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 人口(百万人) 2012 2013 2014 2011 -2014 177 3096 997 171 2790 899 48.2 179 作付面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 57.7 200 灌漑面積(1000ヘクタール) 53.7 234 75.4 60.4 289 93.0 69.5 332 107 79.8 630 203 90.8 1069 344 103 1678 541 117 2053 661 133 2271 732 151 2382 767 151 2366 762 164 2269 731 168 2864 923 173 2931 944 200 200 200 200 206 233 256 292 293 293 293 293 293 灌漑面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 100 100 321 60.2 201 1.36 80.7 0.85 1.09 99.4 197 3.75 100 470 88.2 294 1.67 98.8 1.04 3.73 98.8 404 4.92 100 596 112 373 1.71 101 1.07 408 51.0 565 11.1 100 1300 244 813 2.06 122 1.29 492 62.7 463 16.4 103 2216 416 1385 2.10 124 1.31 289 81.7 258 18.3 117 2980 559 1862 1.78 106 1.11 329 84.8 275 21.3 128 3248 609 2030 1.59 94.0 0.99 647 76.2 337 22.9 146 3139 589 1962 1.38 81.7 0.86 1436 57.8 222 25.6 147 4179 784 2612 1.75 104 1.10 971 72.9 795 23.7 147 3885 729 2428 1.66 98.3 1.04 1241 66.5 512 24.2 147 4613 865 2883 2.03 120 1.27 2187 56.9 568 31.0 147 5433 1019 3396 1.90 112 1.19 2455 58.0 562 34.8 147 4823 905 3015 1.65 97 1.03 2187 58.0 719 30.1 2012 2013 2014 2011 -2014 23.6 1500 137 22.6 1453 133 作付面積(1000ヘクタール) 籾生産量(1000トン) 207 籾生産量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 38.9 130 精米換算生産量(1000トン) 1.15 籾収量(トン/ヘクタール) 67.9 籾収量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 0.72 精米換算収量(トン/ヘクタール) 1.28 精米換算年間輸入量(1000トン) 99.0 自給率(%) 220 精米換算輸入価格(ドル/トン) 2.71 精米換算年間一人当たりの消費量(kg/人) 293 6734 1263 4209 2.18 129 1.36 147 5401 1013 3375 1.94 115 1.21 2277 57.6 616 31.9 表5.マダガスカルの1961-2014年の間の稲作市場関連データの変遷。データソースとその他のデータ処理法は表1と同じ。 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2008 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 人口(百万人) 5.49 843 作付面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 77.0 306 灌漑面積(1000ヘクタール) 6.24 986 90.1 灌漑面積指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 63.1 作付面積(1000ヘクタール) 籾生産量(1000トン) 1563 籾生産量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 78.5 977 精米換算生産量(1000トン) 1.85 籾収量(トン/ヘクタール) 102 籾収量指数(1971-1980の平均値を基準値100とした) 1.16 精米換算収量(トン/ヘクタール) 17.0 精米換算年間輸入量(1000トン) 98.4 自給率(%) 76.0 精米換算輸入価格(ドル/トン) 181 精米換算年間一人当たりの消費量(kg/人) 2 7.16 1042 95.2 8.27 1147 105 9.47 1183 108 10.9 1142 104 12.7 1166 107 14.8 1187 108 17.3 1227 112 19.9 1284 117 19.9 1395 127 21.7 1464 134 22.3 1549 142 22.9 1300 119 330 396 574 754 983 1087 1087 1086 1086 1086 1086 1086 1086 68.1 1779 89.4 1112 1.80 99.0 1.13 15.1 98.7 77.6 180 81.7 1943 97.6 1214 1.87 102 1.17 67.1 94.8 236 179 118 2037 102 1273 1.78 97.6 1.11 104 92.5 293 167 156 2087 105 1305 1.76 96.8 1.10 214 86.1 263 160 203 2271 114 1420 1.99 109 1.24 94.8 93.8 302 139 224 2430 122 1519 2.08 114 1.30 46.2 97.1 315 124 224 2511 126 1569 2.12 116 1.32 87.5 94.9 288 112 224 2898 146 1811 2.36 129 1.47 190 90.8 198 116 224 3914 197 2446 3.05 167 1.91 169 93.6 473 131 224 4055 204 2535 2.90 159 1.81 151 94.2 387 134 224 4300 216 2688 2.94 161 1.84 201 93.0 479 133 224 4551 229 2844 2.94 161 1.84 193 93.6 471 136 224 3611 181 2257 2.78 152 1.74 389 85.3 458 115 1086 3978 200 2486 2.65 146 1.66 224 4110 207 2569 2.83 155 1.77 261 90.7 470 128 2、 アフリカの稲作革命がスタートした 2008 年のコメ危機と価格高騰以降、アフリカの米増産はさらに加速度がつき 2009-2014 年までの 6 年 間で、籾生産は 50%増産し、2014 年には 2500 万トンの生産を達成した。国際協力機構 JICA の米増産支 表6.サハラ以南アフリカ諸国とエジプトの米生産の1961-2014年の年間籾生産(1,000トン単位)の動向と 生産量ランク。ランクは2011-14年の平均値による。データソースはFAOSTAT 2016。青字は過去50年で10倍 以上、 緑字は5倍以上の増産を実現した国。赤字は減少を記録した期間を示す。 Rank (2011-14) Country エジプト ナイジェリア マダガスカル タンザニア マリ ギニア コートジボワール シエラレオネ ガーナ セネガル コンゴ民主共和 ブルキナファソ リベリア チャド ウガンダ ベナン モーリタニア ギニアビサウ カメルーン モザンビーク トーゴ ケニヤ マラウィ エチオピア ルワンダ ブルンジ ガンビア ザンビア 旧スーダン 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 32 1961 1966 1971 1976 1981 1986 1991 1996 2001 2006 2011 -1965 -1970 -1975 -1980 -1985 -1990 -1995 -2000 -2005 -2010 -2014 1845 2342 2396 2363 2333 2566 4178 5333 5997 6147 5828 207 321 470 596 1300 2216 2980 3248 3139 3885 5401 1563 1779 1943 2037 2087 2271 2430 2511 2898 4055 4110 120 121 229 320 330 653 579 743 1035 1591 2216 172 158 174 191 165 274 447 678 849 1603 2009 230 286 355 441 548 680 844 1048 1150 1446 1903 220 321 388 479 451 621 673 624 665 779 1606 336 457 502 563 484 501 446 316 490 849 1157 34 53 66 92 64 80 161 213 264 324 530 100 114 88 97 127 155 172 178 218 380 468 62 146 198 220 273 351 404 344 317 317 346 32 38 35 42 44 38 57 98 92 172 303 125 158 222 247 286 271 76 170 124 256 274 29 36 42 33 21 56 84 112 123 146 249 3.2 6.6 15 22 19 33 71 91 128 184 224 1.0 2.4 8.7 13 7.4 9.3 12 34 64 98 219 0.6 0.7 2.7 6.2 20 49 51 82 75 85 205 48 40 38 52 96 109 127 99 90 155 192 10 16 18 52 77 65 38 51 52 99 188 94 86 110 62 82 93 74 175 107 148 168 21 19 16 15 15 25 40 79 67 94 129 14 20 33 40 42 48 47 48 48 52 122 5.8 14 56 70 34 37 49 74 73 113 121 10 14 13 57 108 0.0 0.7 2.1 3.4 6.1 7.8 11 9.0 35 71 87 2.7 3.3 5.4 7.9 13 33 37 52 63 74 66 33 34 30 27 30 23 18 23 25 52 55 0.4 0.8 2.3 7.6 10 11 12 14 30 47 1.2 2.4 6.3 10 4.5 1.1 1.3 5.0 18 25 21 表7.アジア,サブサハラアフリカ諸国の1961~2014年のモミ生産量の動向.(赤字は減少、青は10倍、緑は5倍以上増 加;生産量順位:2011-2014年の年平均モミ生産量;*:2006-2013年の平均値;データ出典:FAOSTAT 2016) 生 アジア 産 国名 順 位 1 中国 2 インド 3 4 5 6 平均籾生産量 [百万トン](籾収量 [トン/ha], 平均籾生産量 [百万トン](籾収量 [トン/ha], サブサハラアフリカ 年間一人当り精米消費量 [kg/人]) 年間一人当り精米消費量 [kg/人]) 国名 1961-1970 2006-2014 85 ( 2.9, 73) 171 ( 5.2, 100) 196 ( 6.6, 92*) 55 ( 1.5, 70) 93 ( 2.3, 73) 149 ( 3.4, 76*) インドネシア 14 ( 1.9, 94) 39 ( 4.0, 148) 64 ( 5.0, 169*) バングラデシュ 16 ( 1.7, 179) 23 ( 2.2, 156) 48 ( 4.3, 201*) 9.2 ( 1.9, 169) 16 ( 2.8, 164) 41 ( 5.4, 283*) ベトナム 12 ( 1.8, 233) 19 ( 2.0, 227) 34 ( 3.0, 317*) タイ 7 ミャンマー 8 フィリピン 9 日本 10 カンボジア 11 パキスタン 12 韓国 13 ネパール 14 スリランカ 15 ラオス 16 北朝鮮 17 マレーシア 18 イラン 19 台湾 20 トルコ 1961-1970 エジプト ナイジェリア マダガスカル タンザニア マリ ギニア 1981-1990 2006-2014 209 ( 5.2, 42) 245 ( 6.0, 31) 601 ( 9.6, 47*) 26 ( 1.3, 3) 176 ( 2.1, 17) 456 ( 1.8, 27*) 167 ( 1.8, 181) 218 ( 1.9, 150) 408 ( 2.9, 132*) 12 ( 1.1, 8) 49 ( 1.6, 17) 187 ( 2.2, 27*) 16 ( 1.0, 19) 26 ( 1.7, 48) 27 ( 1.0, 51) 22 ( 1.2, 26) 178 ( 3.2, 83*) 61 ( 1.7, 94) 165 ( 1.9, 118*) 54 ( 1.2, 66) 115 ( 3.0, 83*) 49 ( 1.3, 110) 99 ( 1.7, 133*) 30 ( 3.9, 367*) コートジボワール 17 ( 3.8, 130*) シエラレオネ 40 ( 1.3, 114) ( 11 6.6, 58*) ガーナ 4.3 ( 1.1, 8) 7.2 ( 1.1, 8) ( , ) ( , ) ( , *) 2.7 1.2 256 2.0 1.3 170 8.1 2.9 349 セネガル 11 ( 1.3, 57) 14 ( 2.0, 67) 2.3 ( 1.6, 28) 4.9 ( 2.5, 33) 7.8 ( 2.9, 30*) コンゴ民主共和 10 ( 0.8, 5) 31 ( 0.8, 8) 5.0 ( 4.2, 115) 7.7 ( 6.3, 127) 6.1 ( 6.8, 85*) ブルキナファソ 3.5 ( 0.9, 5) 4.1 ( 1.7, 11) 2.2 ( 1.9, 122) 2.8 ( 2.0, 105) 4.4 ( 2.9, 108*) リベリア 14 ( 0.8, 98) 28 ( 1.2, 125) 7.7 ( 1.6, 199) 14 ( 3.0, 227) 4.4 ( 1.4, 93) 8.6 ( 2.6, 101) 17 ( 5.3, 113) 13 ( 6.1, 70) 1.1 ( 2.1, 103) 2.4 ( 3.0, 100) 3.8 ( 3.8, 0.7 ( 1.0, 222) 1.3 ( 2.0, 215) 3.2 ( 3.8, 2.1 ( 4.3, 100) 2.2 ( 3.4, 74) 2.5 ( 4.5, 1.3 ( 2.2, 124) 1.8 ( 2.6, 90) 2.5 ( 3.7, 123*) チャド 312*) ウガンダ 73*) ベナン 89*) モーリタニア 0.9 ( 2.7, 24) 1.7 ( 3.4, 32) 2.4 ( 4.3, 37*) ギニアビサウ 2.9 ( 3.7, 144) 2.7 ( 4.8, 87) 1.6 ( 6.0, 46*) カメルーン 0.2 ( 4.0, 5) 0.3 ( 4.8, 6) 0.8 ( 7.8, 10*) モザンビーク 籾生産(収量, 消費) 3 1981-1990 籾生産(収量, 消費) 3.2 ( 1.1, 0.5 ( 1.1, 6) 3.9 ( 1.2, 7) 1) 2.6 ( 1.3, 1) 0.2 ( 0.7, 2) 0.8 ( 1.2, 12) 0.1 ( 1.5, 12) 3.5 ( 4.5, 48) 4.4 ( 1.0, 55) 10 ( 1.5, 98) 1.3 ( 1.0, 9.0 ( 1.3, 3) 7.1 ( 4.2, 9) 7) 8.8 ( 0.9, 10) 籾生産(収量, 消費) 42 ( 2.4, 28*) 42 ( 3.5, 90*) 33 ( 0.7, 5*) 23 ( 2.2, 25*) 26 ( 1.2, 99*) 19 ( 1.4, 10*) 20 ( 2.1, 6*) 15 ( 3.0, 92*) 14 ( 5.1, 56*) 17 ( 1.8, 98*) 14 ( 1.3, 28*) 16 ( 0.8, 22*) 籾生産(収量, 消費) 援の国際協力政策(CARD、2008)も貢献した。表 6 と 7 に示すように、サブサハラアフリカ第 2 位のマダガ スカル、4 位マリ、6 位コートジボワール、9 位セネガル、16 位ベナン、19 位モーリタニア等の諸国では、灌 漑水田基盤整備の進化段階はアジアのレベルに近くなり、籾収量はヘクタール当たり 3 トンの以上の水準 に達し、すでに稲作の緑の革命が実現したと言える国も現れた。2011-14 年の平均籾生産量のランキング を示した表 6 を見ると、No.1 のナイジェリアは 1960-71 年を基準にしても 25 倍の増産を実現し、2014 年 単年度ではついにエジプトを抜いてアフリカ No.1 になった(表 4)。トップ 27 ケ国のうち 14 ケ国が 10 倍以 上の増産、7 ケ国が 5 倍以上の増産を実現した。この間 5 倍以上の増産国のなかった表7のアジアの主要 国と比較すると、アフリカ諸国の米生産の爆発的な増加が分かる。ただし、これらの統計データには信頼性 に乏しいものもあり(例えばギニヤや近年の象牙国等)注意も必要である。ベナンの近年のコメ消費の急増 は、恐らくナイジェリアへの密輸量分も含まれる。カメルーンの近年の収量の顕著な減少は、乾燥地の浅い 大面積ダムによるマガ湖等、大規模水田灌漑や政策的な陸稲振興が持続可能でないことを示す。 アジアでは、カンボジアや北朝鮮(アフリカではシエラレオーネ、リベリア、モザンビーク、ギニアビサウ、 ガンビア等)等の社会政治的な危機国以外は、日本、韓国、台湾、そして近年の中国等、急速な工業発展 により米生産や消費が減少した。その他の諸国は緑の革命により、農業生産が成熟段階に入り、工業発展 の段階に入ったことを示す。このことは、アジア諸国では今後食糧輸入が増加するであろうことを示しており、 世界的な食糧危機を招く可能性も高いことも示している。 3、 アフリカ水田稲作の国際協力のパイオニア:台湾 戦前の 1930 年に、台湾の嘉南平原に 15 万ヘクタールの灌漑水田を完成させた八田與一は、映画 KANO(嘉農)に登場し、今日の台湾発展の基礎を作った日本人として、台湾で最も愛されている(李登輝、 2015 年)。1955 年、インドネシアのバンドン、アジア・アフリカ会議後、アフリカ諸国も続々独立した。その独 立直後の 1961-75 年、台湾はアフリカ全域にわたって、灌漑水田開発の大規模な国際協力を実施した (図 1)。当時人口 1200 万人にすぎなかった台湾は 25-35 才の技術者を全国公募で選抜し、1-2 年の訓 練後、年間 1200 人をアフリカ 21 ケ国に派遣し、現地人をオンザジョブ訓練をしながら灌漑水田 1.7 万 ha 図1台湾がアフリカへの水田稲作導入のパイオニア 1960~75年(Phase I)および1995~2000年(Phase II)に実施した水田稲作技術協力の主な 国と分隊あるいは小隊が駐在して技術協力を行ったサイト。(ただしギニアビサウは1990~98 年に実施。) 4 を開発した。40-50 代チームリーダーの下で 5-10 人の小隊を組み、アフリカの農村に 2-3 年駐屯し、 農民を訓練しながら開田と稲作を実施した。「国連での中国との正統権争い」という国家の存亡をかけた戦 いの一部として、若者がアフリカに「海外派遣」された(若月利之・謝順景、2003)。 4、 台湾の活動以降の、アジア諸国のアフリカでの水田稲作国際協力 アフリカ水田稲作協力のパイオニアとしての台湾の活動は、1970 年代半ば突然の中止に追い込まれた。 外交権闘争に勝利した中国が、台湾の水田稲作技術協力を継承発展させることはなかったからである。私 が IITA(国際熱帯農業研究所、ナイジェリア、イバダン市)に派遣されていた 1980 年代によく聞かされた、 サブサハラのアフリカの水田稲作について、欧米諸国の研究者による大変ネガテブな評価(例えば IITA 1992)は、このような台湾と中国との外交権の交代に伴う一時的な停滞期に由来する。しかしながら、台湾 が先鞭をつけた水田稲作協力はその後、日本、韓国、中国、北朝鮮、インド、パキスタン、タイ、インドネシ ア、マレーシア、ベトナム等のアジア諸国に引き継がれた。2015 年のバンドン「アジア・アフリカ」会議 60 周 年を契機にさらに拡大している。 5、 アフリカの稲作革命は水田稲作の進化と拡大が牽引 水田稲作は低地を均平化して畔で囲いかつ水の出入り口があり、水の管理に有効な人為的な施設であ る水田圃場を使って行う稲作であるという点は世界共通である。アジアの専売特許ではない。農機具と農 法の進化と水田施設は「共進化」する。ただし、世界の地形、土壌、水文、気候、社会経済及び歴史は多 様であり、世界の水田稲作と水田農業は多様な進化発展段階をたどる。 しかし、ナイジェリアを典型として、その他の大部分のアフリカ諸国の稲作は、以下の日本やアジアの水 田稲作進化の 6 段階と対比させれば、現在は(1)-(3)の水田稲作の進化段階にある。アフリカの稲作革命 を牽引するナイジェリアのケッビ州やマダガスカル、セネガル、マリあるいはガーナでは、急速に水田稲作 は(4)と(5)の段階に進化し拡大しつつある(以下の写真、アフリカの水田稲作進化の 6 段階の(I)と(II))。国 際機関である AfricaRice や IITA でも次第に水田稲作の重要性について理解が進みつつある(IITA 2008、 AfricaRice 2016 等)。 6、 水田稲作進化の 6 段階(図 2 と 3 の写真) クワとカマが主要な農具であるレベルでは(1)畔なし灌漑なしの陸稲稲作を典型とする「非水田稲作」、 (2)日本の弥生期に見られ現在の西アフリカで良く見られる、「灌漑小区画準水田稲作」と(3)氾濫原湿地で の「灌漑畦立て稲作」段階までの 3 段階が、水田稲作の原初的進化段階と言える。この進化段階 1-3 まで は緑の革命の 3 要素近代農業技術技術(高収量品種、灌漑排水、肥料農薬)は、次項「7、アフリカの稲作 革命に必要な 3 つの革新」で述べるように、無効である。 日本で本格的な水田稲作は、畜力による鉄製の鋤耕作が導入された条里制以降の(4)「伝統的水田稲 作」段階が長く 1000 年以上の歴史を持つ。その後、1960 年代以降の耕耘機利用による(5)「標準的水田稲 作」、2000 年以降の湿地トラクターとレーザレベラー利用による(6)「大区画高度均平化水田」段階等の進 化段階を区別できる。図には示していないが、藤森・小野(2012 年)の地下水位制御水田(FOEAS)は進化 段階としては図 3 の(6)の次の進化段階 7 に位置づけられるかもしれない。水環境の制御レベルが上がり施 設稲作、植物工場的な水田稲作の性格がより明確であるからである。 ナイジェリアのケッビ州の例で述べるように、アフリカでは 30 年前までは水田のない稲作が大部分であっ た。1960 年代の台湾による、アフリカへの水田稲作導入の先駆的な活動に引き続いて、日本等による、お 金をかけた各種のモデル灌漑水田の導入が続いた。しかし、広大なアフリカではこれら ODA 方式の灌漑 水田稲作技術の定着と拡大はゆっくりしていた。しかし現在では Google 写真等により、以上の写真で見る ような、水田進化を系統づけることが可能な、各種形態の水田が見られるようになった。陸稲に加え自然に 水が湛水する「非水田低地稲作」、日本の弥生前期の稲作と類似の、「小区画準水田」が大規模灌漑開発 地でも、小低地でも見られる。10-15m2 サイズのオアシス灌漑畑農地が水田の起源という説(古川久雄、 2011)を実証するような農地が見られる。一筆のサイズ、均平化度、畔の質、灌漑排水の水利等から見て 「標準的な段階まで進化した水田」が普及したマダガスカル、セネガル、マリでは緑の革命が実現したとい 5 シエラレオーネ,内陸小低地の非水田湿地 稲作(進化段階1)1987年 ナイジェリアヌぺ人の灌漑「小区画水田」(進化 段階2)と畝立て湿地稲作(段階3)、2005年 ギニアの陸稲栽培とフォニオ栽培、2002年 (進化段階1かあるいは0段階?) 奈良県中西遺跡(弥生前期, 2400年前ころ)の 小区画水田 (段階2)水田1筆の区画サイズは左と 同様10-25m2 (写真は小森努 2011, http://tsu-com 515.my.coocan.jp/H23.11.12.NakanishiIseki.html) 図 2.アフリカの稲作と水田稲作進化の 6 段階(I):日本の弥生期の小区画水田と比較 ナイジェリア、ヌぺ人のカドナ川氾濫原での灌漑 「畔有り畝立て湿地稲作」(進化段階3)、2005年 スマトラ島の水田(Sawah)と牛耕、(進化段階 4)一筆水田の均平化度±5cm、2002年 ガーナ、アシャンテイ州で「アフリカ水田農法」で 農民が自力化開発した標準的水田」(進化段階5) 一筆水田の均平化度±5cm、2000年 日本で進行中のレーザーレベラートラクターによる 均平化度±2.5cmで1筆1ha以上の大区画化と機械 田植作業。直播も拡大中(進化段階6)、2012年 図 3.水田稲作進化の 6 段階(II) 6 えるレベルに達した。 エジプトを含アフリカ最大の稲作国となったナイジェリアは 2014 年の籾生産は 673 万トン(310 万 ha、 2.2t/ha)で、サブサハラアフリカ全体の 27%を生産した。ナイジェリアの穀物統計データにはコートジボワー ル同様の信頼性に不安があるのは事実であるが、1984-86 年の平均籾生産量は 138 万トンだったので、 この間 4.9 倍に急増した。その潜在生産力 2000 万トン(500 万 ha、4t/ha)の 4 分の 1 にすぎない。この間人 口とコメ消費も各々3 倍増したため、自給率は 60%以下である。生産すればいくらでも売れる状態にある。 しかし、ナイジェリアの数百万の小農の大部分は、他のアフリカ諸国と同様、日本の弥生期の非水田や小 区画水田と同様の「原初的な水田稲作」であり、農具は鍬のみで、その生産性は極めて低い。大部分のア フリカ諸国の水田進化段階は日本の弥生前期の小区画準水田に類似したものであることはアフリカの稲作 振興政策に再考をせまる事実である。 下の図 4 に示したようにナイジェリア最大規模の灌漑水田プロジェクトサイトの水田でも大部分は灌漑小 区画水田である、収量は 2/ha の水準にとどまっており、単に灌漑面積を増やせば良いわけでなないこと、 畔を作り均平化をすればよいわけではないことが理解できる。水田の質こそが重要であることを示してい る。 50m square 一辺 50m 図 4. 灌漑システムはあるが一筆面積10-20m2 の小区画準水田で鍬による稲作 (上はソコト州, 下はカノ市付近, いずれもナイジェリア, Google earth Pro, 2012) ナイジェリア北部カノ付近の 灌漑はあるが、小区画水田 稲作では収量は3t/ha以上は 困難。灌漑稲作地は全体の 20%に満たず、収量は2t/ha 以下が大部分。 50m square 7、アフリカの稲作革命ための 3 つの革新 アフリカの稲作革命は①イギリス産業革命の前段である 16-18 世紀の農業革命の基盤を作ったエンク ロジャー(農地囲い込み)と同等と考えることのできる、水田区画による技術の進化条件の整備(水田仮説 1) に加え、集約的持続性を可能にする水田の多面的機能の理解(水田仮説 2)、②1960-70 年代のアジア・ ラテンアメリカの緑の革命の 3 要素技術(高収量品種・灌漑排水・肥料農薬)、③2000 年代から始まるアジ アの農業機械化等、3 つ革新が一体となって、2005-10 年ころから発展期に入った。 科学技術の進化条件としてのエンクロージャー(囲い込)と水田仮説 1 については少しわかりにくいかも しれないので以下の Salatoga(2012)による図 5 や写真で説明する。 7 旧農業システム(開放耕地制)の欠点 作付しない休閑地が残る。 自分の農地に 他人が通告し、 自分も他人の 農地を通行せ ねばならない。 農民は開放耕地下では以下の問題を解決する農 業技術のアイデアを採用できない。 休閑地での圃場試験は困難 新しい農 業技術の 取入れが 困難。 石垣や柵 等の区画 がない。 柵がなく雑草が 広がりやすい 牛の転回 地は土が 劣化する 排水改良 が不可能 農家所有の農地が散在している ため、農地間の移動に時間がか かる。適切な排水ができない。 家畜が作物 を踏み付け、 感染症が広 がりやすい。 他人との農 地間はつぶ れ地となる 家畜伝染病が 広がりやすい 従って,開放耕地の囲い込みが行われた 土地は農家ごとに生け垣や塀などで区画化された 品種改良 選抜育種 区画と 囲い込み 4作物の輪作 ノーフォーク農法 農業改良 と変革 機械化 化学肥料 図5. エンクロジャーによる近代農業技術の発展基盤プラットフォームの整備 (Salagado, 2012) http://www.slideshare.net/maggiesalgado/agricultural-revolution-13173417-33117637 混沌とした農家圃場:不均質で多種 多様な生態環境が混在 (1) 土・水・作物の管理は不可能 (2) 土地所有権は重層的で多様なコ ミュニテイによる共有型。 (3) 市場価値のあるポストハーベスト は適用不可能。 緑 の 革 命 は 不 可 能 APCDEFAFIZPCM GMDUGHIGKCDILMBN NPQTBBAACIGHOLKJDBV IRNJUAHGDNVAPCDEFAFT GMDUGHIGKCDILMGHOLNH NPQTBBAACIGHXLKJDHGLP IRNJUAHGDNVGHOLKNPSD TBBAACIGHYLKJDIRNJHG UAHGDNVAPCDEFKLG A B GHIGKCDIMB 地形と土壌・水文に応じての水田区画 造成は国造りと科学技術の進化条件で ある:(生態工学:エコテクノロジー) (1) 水と土と作物の管理が可能 (2) 土地所有や利用の管理が可能 (3) 規格化された籾生産が可能、優 良種子増産も容易。 アフリカ 水田農法 ブッシュ状のオープンフィールド:肥料 や地力維持・灌漑技術、高収量品種 等の緑の革命技術は適用できない。 BBB OO AAA PP EEE CC DD FFF KK J J HHH I I I KK MM LL NN 科学技術の本質:共通基盤(プラットフォ ーム)としての水田:農地は分類区画整備 (エンクロージャー)される必要がある。 図6.水田仮説 I :水田的な地形と水及び土壌という生態環境で区画された 圃場が必要:アフリカ独特の生態環境と社会経済条件及び過去500年の 歴史的経過(奴隷・植民地)に由来する?と考えられる。 科学技術とは一定の限界や境界の明確な条件や環境下で得られる、合理的に体系化・分類整理された、 教育訓練等により伝達可能な知識や経験や技能の全体である。近代科学により近代は成立した(中山茂、 2011)。土地の区画整理であるエンクロージャーにより、図 5 に示すように科学的研究が可能になり、技術 8 革新が進み、伝達可能な知識や技術が生まれた。科学 Science の原義は「知識」を意味するが、「科」は 個々の部門や一定領域を意味する。細胞膜で囲まれた生物との対比も可能。分類区別が技術進化(差別 化)の原動力。分業による産業革命の進展等。図 6 の水田仮説 1 は図 5 のエンクロージャーと同等である ことが理解できる。 近代科学の成立に貢献した、コペルニクス(1473-1543)、ケプラー(1571-1630)、ガリレオ(1564- 1642)、デカルト(1596-1650)、ボイル(1626-91)、ニュートン(1642-1727)、ラボアジェ(1743-94)、ワ ット(1736-1819)、リー ビッヒ(1803-73)等が活躍した時代とエンクロージャーの時代が重なるのは偶然 ではない。一方、科学技術の「囲い込み」、「専門分化」、「社会から独立して知的欲求の赴くままに探求さ れるべき科学技術」は科学革命をもたらしたが、環境破壊も爆弾も核兵器ももたらした(伊東俊太郎、2007) のも事実である。 中世の荘園は開放耕地(オープンフィールド)と農村共同体がセット。近代化の開始は、石垣や生け垣 等で、区画された耕地基盤整備、エンクロージャー(囲い込み)が進行した時代でもあった。第 1 次は 16 世 紀を中心に、地主が羊牧場を拡大するため、小作人を追い出し「羊が人間を食べている」と称された。一方、 1700-1850 年ころの第 2 次エンクロージャーは、農業生産を飛躍的に増大させた。図 5 で M.Salagado (2012)等が示すように、この区画化農地は、土地利用計画を可能にし、排水改良や潰れ地の削減等、基 盤整備を可能にし、耕作に伴う土地劣化を防ぎ、病害や雑草管理を向上させ、優良品種や新農法の採用 や機械化を促進した。圃場試験が可能になり、科学的農業技術の革新(進化)を可能にした。 しかし区画化して基盤整備をするには資本が必要であり、エンクロージャーを実施できた資本家は増々 豊かになり、できなかった小作農や小農は農業所得が相対的に低下し、土地を収奪され、都会に出て賃 労働者になる等、格差が広がった。これらの離村農民は資本主義的工業生産、産業革命の担い手労働者 となった。 8、アフリカ水田農法の基本技術(若月、2016) 我々が推進しているアフリカ水田農法はアフリカ特有の低湿地(後述の 14、アジアと比較したアフリカの 各種湿地の特徴とアフリカ水田農法の可能性の項参照)に、耕運機等の適正農機を使い、農民が自力で 新規水田開発と水田稲作を同時に実施する技術で、現地では Sawah technology と呼んでいる。Sawah は インドネシア語で水田を意味する。アフリカ水田農法は上記の 3 つの革新を融合した技術で、ナイジェリア とガーナの稲作農民と技術者によって、当初はアフリカ型里山の内陸小低地で「谷地田農法」として開発さ れ、試行錯誤の中で進化してきた。 アフリカ水田農法は以下の表 8 に示すように 4 つの基本技術よりなる。現在の日本の稲作農民には必要 がなくなった(1)水田適地を選定して、地形と土壌と水文に適する適田システムの設計技能と(2)農民によ る自力で内発的な開発を促進するため、ブルドーザー等の重機ではなくて、耕運機等の適正農機による 効率的で経済的な灌漑水田開発技術である。この2つがアフリカ水田農法独自の中核技術である。2011 年以降あきらかになった、氾濫原や内陸デルタ等、サハラ砂漠の南縁のサバンナ帯の大規模湿地で農民 の自力水田開発を可能にする浅い地下水の利用技術をアフリカ水田農法とドッキングする試みは、後述す る Kebbi rice revolution であきらかになったように、アフリカ水田農法のメリットを最もよく生かすことができ る。 現在の日本ではレーザーレベラーつきのトラクターで均平化度±2.5cm の 1ha の大区画水田化を農民 が自力で進めている。アフリカの湿地は未整備であるため、まず耕耘機での水田整備、ついである程度の 整備段階に達したら湿地トラクターが有効に使えるようになると思われる。 ODA ではヘクタール当たりの開発コストは 2-3 万ドルであるが、アフリカ水田農法はこの 10 分の 1 以下 である。ODA 等、外部技術者に開発を依存せずとも、農民の自力開発を可能にする内発的開発を可能に する技術である。残りの二つは、以下に示すように、これまで行われてきた、稲作分野の国際協力で通常 実施されるもので、(3)水田開発が完了した後で行う水田稲作技術、(4)稲作農民をエンパワーメントする 社会経済的仕組み等である。 9 表8 .アフリカ水田農法(SawahTechnology:農民の自力灌漑水田開発と稲作)の4つの要素技術 (1) 適地・適期選定と適田システム設計のポイント (a) 農民が15ha以上の低湿地で稲を栽培しており、自立心旺盛で、稲作技術とビジネス向上に強い意欲を持つ (b) 水文と水資源及び氾濫洪水強度と期間。乾季作の場合は20m以浅(5m以深がベスト)の地下水が利用可 i) 内陸小低地の重力水灌漑:>流量30リットル/秒、流水継続期間5ケ月以上、氾濫等最大水量<10トン/秒 ii) 氾濫原やデルタの重力水灌漑:>流量30リットル/秒、流水継続期間5ケ月以上、氾濫最大水量<10トン/秒 iii) 氾濫原やデルタの浅管井戸ポンプ灌漑:地下水位<10m、氾濫時期を避けて経済的に乾季作が可能 (c) 地形と土壌:勾配<3%、<1%なら均平化が容易、砂+シルト含量<90%、内陸小低地では<95%でも可 (d) 持続可能な土地利用権:個人所有がベストだが、5-10年以上の借地契約なら本農法は持続可能 (e) 適田システムのデザイン:地形と土壌と水源の観察に基づく個々の水田と水田集団の中小の畔のレイアウ ト、水田の標準的均平化度(1筆±5cm)の実現、耕運機使用稲作、干ばつ、氾濫対策も考慮してデザイン (f) 取水、分水、貯水(地下水涵養)、排水システム:小中河川の簡便な土のう堰、泉や浸出水の集水分水路、た め池や養魚池、小中のポンプ利用と<10m深度(将来的には<20-50m)の管井戸切削、小中の排水路 (g) 荷物運搬や耕耘機用、あるいは洪水対策用の作業路兼堤防等の位置とサイズ構造等のデザイン 注1):農民と技術者・普及員が連携して、適地適田開発と管理の試行錯誤が必要。農民はサイトの水文を熟知 しているが、水田は未知。技術者は現場の水文の動態を知らない。 注2):重力灌漑は燃料が不要なので経済的だが、水田面積>50ha以上になると、堰や水路の維持管理にコミュ ニテーの共同作業が必要となるが、現状では困難な場合が多い。ポンプ灌漑はこの共同作業が不要。 注3):パラドックスであるが、適地選定とシステムデザインが適切ならアフリカの水田開発はアジアより大変容易 (2) 効率的で経済的な開発:開発速度>3-5ha/年/耕耘機1台と開発コスト<1000-3000ドル/haを実現 (a) ヤブの開墾、抜根、畔作り、水路作り、耕運機用地表面の凸凹処理:自力労働+補助的な雇用労賃 (b) 農具と資機材の購入費用:$1000/10ha、2期作用のポンプと浅管井戸切削費用:$1500-2000/10ha (c) 耕運機購入費用:$3000-4000/1台/10ha、維持管理費用:$2000-3000/10ha(>10ha開田/3年が目標) (d) On-the-Job訓練費用:日当として技術者$1000/ha、普及員$500/ha、篤農$250/ha 注1):耕耘機の価格(アジア並なら1台$2000)、耕運機利用の開田技術と維持管理技能の熟練度がポイント (表8続き) (3) 水田稲作技術:基準目標は1台の来運気で>20t/年のモミ生産と>4t/haの収量の達成 (a) 取水、分水、貯水、排水等、水田の水管理システムの維持管理 (b) 水田の水管理技術:湛水新管理、間断灌漑、好気・嫌気性管理、排水管理 (c) 畔の管理。耕運機を利用する田面の均平度管理と代播き技術。 (d) 施肥と養分及び土壌有機物管理技術 (e) 育苗と移植あるいは直播技術 (f) 雑草、病害虫、鳥獣害対策技術 (g) 目標収量を実現する品種選択と生育管理技術 (h) 市場性の高いポストハーベスト技術 注1):1台の耕運機で3年以内に年間籾生産>50tonを実現すると水田開発は加速する。 注2):基準目標を達成すれば、収量>10t/haを目指す研究も、農民の現場で意味を持つ。 (4) 稲作農民をエンパワーメントする社会経済技術 (a) 水田農民グループの組織化。自力開田から一般農民の新規皆伝を指導できる篤農の (b) 持続的な内発的発展性は、農民間技術移転>普及員>研究者>ODA方式、の順になる。 (c) 耕運機利用の開田と稲作技術の訓練とイノベーションの誘発システムの整備 (d) 水田造りは国造りと人創り。国富を増加させた人に報いる土地制度/借地制度は極めて重要。 (e) 農業機械や水田適地及び灌漑水田の、ローン等による農民の土地購入システムの整備 (f) 25ha以上の灌漑水田は5万ドル以上の年間籾生産となり、1万ドル規模の小型ハーベスターが 経済的に利用可能になる。これにより市場性高い籾が出荷できさらに付加価値が付く。 注3): 以上の4つの要素技術を進化させ、ODA依存を脱却する内発的な技術として成熟可能 注4): 過去の成功例:①スーダンサバンナ帯の氾濫原や内陸デルタでの浅井戸小型ポンプ灌漑、 ②泉灌漑は全気候帯で成功、③ギニヤサバンナ、森林移行帯、赤道森林帯の小河川の堰灌漑 10 9、Kebbi Rice Revolution:谷地田農法からアフリカ水田農法への進化と水田進化による稲作革 命の実現 2010-2011 年度に文科省科研費特別推進研究の一環として「ナイジェリア北西部のケッビ州のソコト川 とニジェール川大規模氾濫原で 2 台の中国製耕耘機(日本製は入手できなかった)で Sawah 技術のオン ザジョブ訓練を実施」した。他にもニジェール、べヌエ、デルタ、エボニ、ラゴス州でも実施したが、自立的な 展開には繋がらなかった。 表 9 と図 7 に示すように、州内の Arugungu 等の 4 地域で、農民グループが 18ha の自力水田開発(実 際には小区画準水田を標準的な水田に整備)を行い、合計 12.8 トン(平均籾収量 7.1t/ha)を実現した。州 知事 Dakingari(2013)は、2013 年 9 月、首都 Abuja の経済サミットで、この成果を Kebbi Rice Revolution と 呼んだ。農民は 20 台の耕耘機を自費購入し 2013 年 11 月から 14 年 5 月末までの乾季水田稲作面積を 199ha に拡大し、1260 トン(6.3t/ha)の籾生産を実現した。これを受け州政府は 1000 台の耕耘機を購入し、 2015 年 3 月末の大統領選後、1 万 ha 規模の水田開発と整備プロジェクトを開始した。2015 年には Kebbi 州では年間の籾生産量がナイジェリア全体の 20%、100 万トンのレベルに達したと推定され、ナイジェリア No.1 の米生産州となった。内陸小低地をターゲットとしてきた Sawah 技術は、ナイジェリアのケッビ州にお ける実践を通じて、大規模氾濫原や内陸デルタでも展開できるようになり、谷地田農法(若月、2009)からア フリカ水田農法に進化した。 図 7 は 1987 年 12 月 14-16 日に若月が実施した氾濫原土壌と土地利用の調査ルートである(Oyediran、 1990)。IITA の博士研究の指導として実施した。Arugungu 市周辺は当時も現在もケッビ州の稲作の中心 地である。当時の稲作は図 8 に示すようにアフリカ稲が非水田的に栽培されていた。その後 2011 年に再調 査した時点では図 9 と 11 に示すように、10m 以深の浅井戸ポンプ灌漑により稲と玉ねぎが小区画準水田で 栽培されていた。Arugungu-Birinin Kebbi 間の Rima(Sokoto)川氾濫原で合計面積は約 10 万 ha と推定さ れた。図 8-12 は 2011 年 3 月より開始した水田農法の訓練と準水田を標準的な水田に改良したこと、その 効果として、小区画準水田段階では 2-3t/ha の籾収量が 6-7t/ha まで増加した状況を示す。小区画水田段 階(水田進化レベル 2)では畔がきちんと作られていないことに加え、小区画であるが故に 1ha の面積に 300-600 区画ものミニ水田では個々の水田の水管理や土壌管理は不可能になる。さらに無数の畔により稲 が栽培できない潰れ地の割合が増えることも収量の低下をまねく。Arugungu の MaiGando 農場のグーグル 写真は 2013 年 10 月時点であり、カメラの写真は 2014 年 6 月であり、水田区画はさらに拡大し、水田の質 も向上していた。 表9. 2011年3月から2014年4月の間のKebbi州におけるSawah米生産技術の拡大 1. 近畿大学/ナイジェリア国立農業機械化センター(NCAM) によ るデモンストレーションと訓練(2011年3月-2012年4月に実施) 地方自治体 農場 耕耘機 (台) Arugungu* Birinin Kebbi* Jega* 合 計 共用 共用 共用 2(共用) 2(共用) 2(共用) 共用 総開田面 生産料 籾収量 積(ha) (100kg袋) (トン/ha) 6.5 3.5 8 18 487.5 227.5 560 1275 7.5 6.5 7 7.1** 2. アフリカ水田農法の拡大、 2012年4月-2013年10月 地方自治体 Arugungu* Birnin Kebbi Bagudo Jega Suru 合 11 農場 MGD farm* JUM farm ABK farm AK farm AMB farm Dr YA farm ANL farm AMI farm ASD farm ABA farm BB farm AS farm ABB farm HHJ farm AUA farm Dr.UD farm 計 耕運機 総開田面 生産料 (台) 積 (ha) (100kg袋) 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 1 1 1 22 15 10 4 3 4 4 3 6 5 4 3 3 35 7 20 5 131 975 650 260 180 240 240 180 390 300 260 180 180 2450 455 1200 300 8440 * デモンストレーションと普及活動の サイトは図7のGoogle earthに示し た. **平均値 3. 2014年乾期の米生産、 2013年11月-2014年5月 籾収量 耕運機 総開田面 生産料 籾収量 (トン/ha) (台) 積(ha) (100kg袋) (トン/ha) 6.5 6.5 6.5 6 6 6 6 6 6 6.5 6 6 7 6.5 6 6 6.4** 2 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 5 1 1 1 22 20 10 8 6 5 5 5 10 5 4 6 6 50 14 40 5 199 1400 650 480 360 300 300 325 650 300 ― 360 360 3500 910 2400 300 12595 7 6.5 6 6 6 6 6.5 6.5 6 ― 6 6 7 6.5 6 6 6.3** ソコト地区周辺の氾濫状態, Arugungu氾濫原より60km北東 (Google earth 8 Sep 2010) ソコト,リマ川 Arugungu Birinin Kebbi Jega 0 100km Suru 図7.2011-2015年中に実施 したアフリカ水田農法(Sawah technology) のデモンスト レーションと普及サイト Bagudo ニジェール川 2001~2015年中に氾 濫洪水した年数 1-2年 3-4年 5-6年 7年以上 (地図: Zwart & Hamady, AfricaRice, http://ricetoday.irri.org/wpcontent/uploads/2016/03/flood-pronerice-areas-in-West-Africa_legend_big.jpg) 1987年12月14-16日 における土壌及び土 地利用調査サイト (Oyediran 1990) Mai Gandu (MGD) 20ha Sawah農場 AR4 2011-2012年の最初の水田デ モンストレーションサイト. 左下写真の2015年7月10日に 耕耘機の訓練を行ったサイト. AR3 AR2 AR1 図 8.1987年と2015年のArugung.アフリカ水田農法を用いた 水田システム改革によってKebbi稲作革命がスタートしたサイト. 1987年の AR1サイト KebbiのAR1サイトにおける耕運機と 水田農法の訓練の様子, 2015年7月10日 12 アフリカ水田農法実施前のSokoto 氾濫原(2011年) アフリカ水田農法実施前の Jega氾濫原(2011年) 図9.ナイジェリアKebbi州におけるアフリカ水田農法実施前の小規模灌漑と小区画水 田と野菜畑.水利用効率が悪く,雑草が多く見られる. 図 10. アフリカ水田農法のデモンストレーションと訓練の様子. (上2枚は2011年4月のJega. 下2 枚は2011年9月, 左下はArugunguのAR1 (図7), 右下はBirinin Kebbi.) 2011年のAR3サイト 2011年のAR3サイト 1筆の面積を4-9倍 に拡大して水田進 化を推進中。浅管井 戸と小型ポンプで水 田稲作を実施。籾収 量は6-7t/haに増加 図 11. Kebbi 州の Arugungu 付近の氾濫 原の MaiGandu 農場 (表 9 の MGD Farm 20 ha の一部, 位置は図 4 と 5) における水田の改 良 (進化) の進行を示す Google 衛星写真。 下は 2009 年で 1 筆面積 15-25m2 の浅管井戸 でポンプ灌漑の小区画 水田。籾収量は 2-3 t/ha。2011 年 3 月よりア フリカ水田農法で耕耘機 等を使用して 1 筆面積を 4-9 倍に拡張し、畔を 強化、代掻きと均平化の レベルも改良中。図 9 の 写真は 2014 年 6 月に赤 丸の付近で撮影。籾収 量は 6-7t/ha に増加。 Abdullahi Maigandu Arugungu氏による 20haの開田(図8右上の赤丸付近) 2014年 ニジェール川氾濫原,BagudoのABB 6月 farm(Alh. Bello Baidu氏)の35 ha水田 図12. Kebbi稲作革命サイトのArunnguとBagudoの水田開発と進化 (写真撮影場所は図7, 8, 11に示した) 13 10、アジアの水田は農民が 1000 年かけて整備しそれが科学技術適用の基盤となった。アフリカ では 1500 年代からの欧米のグローバリゼーションで国土基盤の形成が阻害された。 アジア諸国や日本では水田基盤は農民達が千年という歴史的時間をかけて整備した。この基盤の上に 高収量品種、灌漑排水、肥料農薬等のような近代農業科学技術の適用が可能になった(ことはあまり認識 されていない)。水田基盤の存在は、すでに説明したように、農業革命の基盤を作った欧米のエンクロージ ャーに対比できる(水田仮説 1、図 5 と 6 と 13)。 アジアでは数世紀以上の歴史的時間で農民により整備された水田基盤が既に存在しており それが近代科学技術適用の基盤となった。アフリカの爆発的人口増に対処するためには, この 基盤整備は今後半世紀以内に完了する必要がある(研究、技術開発、イノベーションが必要)。 収 量 (t/ha) ( 作緑 動の の革 前命 提の と三 な要 る素 基技 盤術 のと 相 対 的 寄 与 ) 5 水田(Sawah=SUIDEN)仮説 (1): 科学技術の作動条件の整備がカギ 4 緑の革命の 三要素技術 3 2 アフリカの統計 数値の不確かさ 灌漑技術 農民の自助努力による 水田基盤の存在 (科学技術の作動条件) 1 0 緑の革命 実現の目安, 国の平均収 量3t/ha 1.3億ha 水田 生態工学 アフリカの 緑の革命の 中心的技術 2500万ha 2050年まで の目標 1960年 2005年 2050年 1960年 2005年 2050年 アジア サブサハラアフリカ 1960-2005年の変化から予想される、2005-2050年の変化 図13.アジアにおける1960-2005年の収量向上に貢献した技術の相対的寄与の 推定と今後50年の予測をサブサハラのアフリカと比較 モミ収量(t/ha) 水田面積(百万ha) 小低地で 肥料科学 世 水田稲作 灌漑水田の整備が1000年以上継続 技術の導入 機械化 界 推進 中世の基盤整備拡大 が開始 100億人? 140 人 P.R. China 戦国期の R. of Korea 7 口 水田面積 100 大規模開発 TaiwanJapan ピ China モミ収量 120 日 ー 世界の人口 6 日本の人口極大 本 日本の人口 ク 100の 75 Vietnam 5 人 Indonesia 日本における緑の革命は 世 緑の革命以前に 欧米の肥料技術が導入 80 口 界 4 水田開発と灌漑 された1800年代後半に ( Sri Lanka 百 速やかに達成された 整備が営々と 50 の 60 万 人 Pakistan (モミ収量の変遷) 継続して実施 3 ア フリカ Cambodia 人 口 (水田面積の変遷) Ghana では 奴隷 貿易 ) ( Guinea Cote d’Ivoire 40 億 2 等で 国づくりが 25 Nigeria 人 Sierra Leone 妨害? ) 日本の水田と 20 1 食糧を回復する 戦略は? 0 0 0600 700 800 西 900 1000 1100 1200 1300 1400 1500 1600 1700 1800 1900 2000 2100 暦 年 1880 1945 欧米のグロー 世界大戦の時代 テロ戦争,地球温暖化 バリゼ―ション 食料危機の時代 図14.大化の改新以来の日本の水田面積と籾収量及び日本と世界の人口の変遷 (高瀬2003, Wakatsuki 2008, 鬼頭2007, 本間1998) 14 アフリカでは 500 年前に始まる欧米の奴隷貿易や植民地支配により、このような国土基盤や科学技術の 適用基盤の形成が妨げられた(図 14)。現在の世界的なテロ戦争の背景と同根と思われる。日本は 1955 年のバンドンのアジア・アフリカ会議で、唯一招聘された先進国であった。図 14 と 15 に示すように、過去 500 年の欧米のグローバリゼーションを正すアジア・アフリカ新時代(植民地独立)の幕開けに日本は貢献 した。日本は 1993 年以来東京アフリカ会議(TICAD)を主催してきたが、過去 500 年の原罪を負う欧米を単 に補完する、「従属的な ODA」になったが故に、問題の多い最近の中国によるビジネスと国益を全面に出 すアフリカ開発支援に比べても、存在感を失いつつある。 何故アフリカ?緑の革命今だならず人口増加:食料・脆弱な経済・社会と環境危 機:ナイジェリアとアフリカ:2050年の世界3~5位の人口大国,そしてアフリカ アフリカ アジア パキスタン インド バングラデシュ 植民地 資源 新大陸の 欧米化と ラテンアメリカ化 入植 開発 欧米の グローバリゼーション と世界大戦、そして テロ戦争 戦後処理 犠牲 脱亜入欧 科学技術 日本 世界制覇した英国等欧米とは全く異 なる日本の立ち位置の確立が必要 中東パレスチナ イスラエル問題 中国, 台湾 韓国, 朝鮮 発展と分裂 (共産主義と資本主義) 資源開発人種差別撤廃の 大東亜(植民地解放)戦争だったのか? アメリカの定義した「太平洋戦争?」 *TICAD:東京アフリカ開発会議(1993, 1998, 2003, 2008, 2013, 2016) 図15. 1500年以来の、欧米グローバリゼーションの犠牲になったアフリカ。欧米の科学技術 を吸収したが、21世紀に入って立ちすくむ日本。強大となった中国。過去500年を清算 するための欧米型ODAでなく、今後500年の地球社会創造に貢献する(例えば1955 年のバンドン、アジア・アフリカ会議の精神を実現する)ような日本型ODAが必要。 11、アフリカの稲作革命にみる水田の恐るべき持続可能な生産能力 アフリカにおける陸稲や非水田段階での持続可能な収量は無肥料ではヘクタール当たり 1 トン(施肥し ても 2 トン)であるが、低地に標準的な水田基盤が整備されれば、図 14 や表 10 に示すように、無施肥で 2 トン(施肥すれば 4 トン)と約 2 倍の差がある。陸稲は休閑により地力の回復を図る必要があり、通常 1ha の 陸稲栽培を持続するには 5ha 程度の農地を余分に確保する必要がある。水田では以下に述べるマクロとミ クロの人為と自然のエコロジーの利用(エコテクノロジー)により、休閑は不要であり、1000 年という単位で連 作が可能である。そのため、水田は畑地や森林の 10 倍以上の持続的生産性を持つ。1ha の水田は 10ha 以上の畑地や森林保全を可能にする。地球環境や生物多様性保全における水田の機能は今後ますます 重視する必要がある。世界的に見ればアフリカの持続可能な水田開発は 2050 年ころの地球社会を救うこと になると考えられる。最近国連で採択された「持続可能な開発のための 2030 アジェンダ」実現の戦略の一 つになり得る。 2015 年は、国際土壌年であった。欧米等の畑作文化圏の農業者は土壌団粒の機能を重視する。しかし、 「畔で囲み均平化し適度な代掻き水田の機能」は、団粒の機能を遥かに上回ることは理解できない。当初 アフリカで一般的な「非水田湿地稲作」や小区画準水田を陸稲と勘違いしての「陸稲重視」や「陸稲ネリカ の過剰宣伝」、「灌漑と水田の混同」、英仏語に水田概念がないため「モミ(Paddy)と水田(Sawah)の混同」 等、「種々の誤解と勘違い」があり、アフリカの稲作振興戦略は迷走してきた。しかし、2008 年以降農水省 がアフリカ稲作センター(AfricaRice)と連携して始めた水田 Sawah プロジェクト(SMART-IV、2016)により、 15 水田 Sawah 技術の重要性がようやくアフリカでも理解されつつある(Mophapatra、2016)。 表10.何故水田か;もう一つの理由。集水域における低地水田の 集約的持続的生産性に関する水田仮説(II) 畑作地の10-15倍程度の持続的生産性がある。 1haの水田開発により10haの森林地を確保でき, アフリカ型里山創造が可能 1ha の水田(sawah) = 10-15ha of 陸稲(upland)栽培地 面積比 (%) 収量 (t/ha) 生産の持続性* 焼畑の陸稲 95 % 1-3 1以下 1 水稲(Sawah) 5% 3-6 2程度 : 5 (丸囲みの数値は無肥料の場合) * 生産の持続性は、水稲は連作可能であるが、焼畑の陸稲栽培 は2年の稲作後8年の休閑が必要であると仮定して計算した 12、アフリカ水田農法のマクロとミクロのエコテクノロジー 図 16 に示したが、低地に適地・適田開発し、適期に適切に管理すれば、集水域のマクロの地質学的施 肥作用と水田の水と土管理によりミクロの養分供給性が強化され、畑作地の 10 倍以上の持続可能な生産 性をもたらす。1ha の水田は 10ha 以上の畑地や林地の保全を可能にする。即ち、人為的施設としての水田 は自然資本の増加にも貢献できる。マクロの地質学的施肥作用とは、集水域の水循環によるものである。 森林生態系は岩石鉱物の風化と自己施肥作用により肥沃な表土を形成する。地質活動が盛んな日本や アジアでは 1 年間に 1ha 当たりでは 2-5 トンの土壌を生成し、年間 0.2-0.5mm の厚さの土壌生成速度に 相当する。世界平均では厚さ 0.1mm 弱、生成量は 1 トン弱、アフリカでは 0.05mm、0.5 トン程度と推定され る。日本は自然災害も多いが、活発な土壌生成と天然養分供給能に恵まれていると言える。 アフリカでは東部アフリカの大地溝帯地域を除けば、土壌生成と天然養分供給能と言う点では、やや不 利な環境にあるが、広大な土地面積を有する。しかし、低地に開発した水田はこのような不利も克服し得る 機能を持つ。集水域の水循環で表土が適切に侵食されると、低地に堆積して低地土壌が作られ、表土の 若さも保たれる。その際に川や土壌水中にミネラル養分が溶解し、灌漑水を通じてケイ素、カルシウム、マ グネシウム、カリウムなどの養分が水田に供給される。低地水田では林地や畑地の 5-10 倍、あるいはそれ 以上の養分供給能力が推定される。日本の平均土壌生成速度は年間 0.2-0.5mm と推定され 1000 年でも 20-50cm であるが、奈良や大阪の今から 2000-2500 年ほど前の弥生前期の水田遺跡は 4-5m 以上の 沖積土の下にあり、年間平均堆積速度は 1.6-2.5mm となり、森林や畑作地の土壌生成速度の 3.2-12.5 倍となる。 図 16 の下半分は水田システムの集約的持続性の高さを説明するミクロの生態工学的機構を示す。水田 システムは多機能性湿地として管理することが可能な人工的な施設でもある。適切な深度と強度の代かき と湛水深度と湛水頻度の管理により、雑草を制御することが可能である。この時、水田の均平化度は重要 である。水田システムは湛水、藻類と稲植物、各種の土壌菌類の相互作用により年間 1 ヘクタール当たり 20-200kg の窒素を固定できる。赤褐色の酸化(3 価)鉄イオンは湛水下で青灰色の 2 価鉄イオンに還元さ れ、不可給態のリン酸が有交化する。この有効化は水田システムの窒素固定量増加にも寄与する。湛水は 酸素の供給を制限することにより土壌有機物の分解を抑制し、地力維持に貢献し、空気中の炭酸ガスの隔 離、温暖化防止にも寄与する。又、土壌 pH を中和し各種の微量元素の可給化も促進する等、各種の養分 16 供給能が強化され、又、雑草制御等の生態的機能も強化される。 低地水田の持続可能な生産性の 高さは畑作地の2倍以上に達する マクロの生態工学的機構:腐植 に富む肥沃な表土の堆積と培養 水の集積:地質学的施肥 森林生態の再生 アグロフォレストリーシステムの拡大 アップランドの集約的持続性 =牧畜とのドッキング 炭素隔離 型の炭焼 養 分 循 環 低炭素型社会における水田農業と 里山創造の意義:土壌肥沃度を 肥沃な表土の形成 維持し、ダム機能による洪水制御と 集水と保水機能の強化により乏し 地質的施肥と炭 い水循環量を有効に活用して持続 素隔離(数10年数100年毎の洪 可能な集約化を図り、森林を再生 水のタイムスパン で新たな水田土 する戦略となる。適度な土壌侵食と 壌断面が新堆積 物中に生成) 山地土壌の更新、林地と畑地及 び低地水田土壌層への微粒炭や 腐植質表土の堆積・埋没(一部 a few mm ~ 2cm は海洋底に移動)は、安全な炭 素隔離・貯留法となり得る。 水田土壌 中に 10 ~20cm ミクロの生態工学的機構:代掻き による多種微生物の共同作用の おける多 促進は、多機能性湿地としての水 様な微生 物相互作 田エコテクノロジーの中心技術。窒 用を制御 素、リン、カリ、ケイ素、カルシウム、マ する科 グネシウム等無機養分の供給性を 学・技術・ イノベー 強化し、有機炭素を蓄積。 ション 畑地 村落 溜め池 養魚池 堰 水田システム 水田仮説1:水田は科学技術のプラットフォ-ム 水田仮説2:低地水田1ha≡10-15haの畑地 小川 細粒炭や腐植質表土の堆 積と埋没による炭素隔離 低地:100~500ha 低炭素型社会における水田農業とアフリカ型里山 システムの創造(集水域アグロフォレストリー) CH4 CO2 emission O 2 + N2 N2O N2 algae CH4→CO 2 窒 素 固 定 organic N2 養牛 分や をヤ 糞ギ と等 しは てア アッ ップ プラ ラン ンド ドよ のり 畑 に 集 積 水土と稲と藻類の総合管理による水田システム の窒素固定能の制御技術の開発。炭素 貯留能向上のための水田管理技術の開発 N2(N2O, NO) algae 硝化 NH3→NO2→NO3 脱窒素 submerged water + 400 ~ 500mV 分子状酸素の消失 NO3 NO3 ←NO2←NH4-N Mn (IV) Fe (III) SO4 N2 CO2 CO2 CH4 O2, N2 CH3COOH CH4→CO2 地下水涵養 N2 (N2O, NO) 鉄、マンガン - 100mV Mn (II) Fe (II) の酸化還元 H2S 硫化水素生成 NH4 メタン生成 CH4 -250mV 水素生成 CH4 (Eh) oxidized layer reduced layer Accumulating layer Fe2O3 ・ nH2O Accumulating layer MnO2 ・ nH2O を作 改土 善層 しの 、適 有切 効な 分代 layer plow げ掻 つき をは 促土 進壌 しの 、理 高化 収学 量性 をと 実生 現物 す性 る 図16.水田仮説2:集約的持続的な生産性の高さを背景にアフリカ型里山集水域を創造して地球温暖化防止 しかしながらこれらの機能は大部分定性的な理解に留まり、科学的な定量的なデータは得られていない。 過去 40 年の減反政策により水田研究が停滞しているからである。このため、水田の均平化、代掻き、土壌 の養分状態と多様な微生物相互作用等は科学的な定量化ができていないため、新しい技術の創出やイノ ベーションにはつながっていない。今後強化すべき研究分野である。 13、広大な湿地フロンテアの残るアフリカは近未来 2050 年ころの地球社会の希望の地 緑の革命の実現により産業基盤を形成したアジアは、世界の経済成長の中心となったが農業衰退化も 始まった。近未来の食糧危機が危惧される。一方、緑の革命が実現すれば、広大な未開拓の低湿地を有 するアフリカは、将来の地球社会の食糧基地になり得る。図 14 に示すように、2050 年頃と予想される地球 の人口増加率のピークは、1900 年代における先進諸国の人口増加率のピーク時に経験した二度にわたる 世界大戦の発展途上国版「世界的なテロ戦争・地球温暖化・食糧危機」が予想される。このような地球社会 の危機回避にアフリカは貢献できる可能性がある。表 11 に示すように、アジア後を展望すれば、未来の地 球社会の希望ともなる。全体で 5000 万 ha 規模の灌漑水田ポテンシャルが推定される。2 億トンの籾生産 10 億人分の食糧増産が期待できる。下の図 17 に示すように、地下水位の浅い、広大な内陸湿地(デルタ) が分布する。とりわけチャド、スーダン、中央アフリカでは過去 20 年で 200 万人以上の死者を出し、現在で も 100 万人以上の難民が避難生活を余儀なくされている。下に示した図 17 と 18 からわかるようにこの地域 はアフリカの中でも最も有望な水田稲作ポテンシャルが推定される。 緑の革命が実現した暁には、中長期的には集水域低地の水田の集約的な持続性の高さを背景にして、 アップランドに森林を再生させ、アフリカ型里山創造が可能になる。日本農業と対比して、土地面積に限界 のない広大なアフリカで稲作の緑の革命が実現した暁には、中長期的には集水域低地の水田の集約的な 17 持続性の高さを背景にして、アップランドに森林を再生させ、アフリカ型里山創造が可能になる。広大なア フリカはこれにより中長期的には地球温暖化防止や生物多様性保全に貢献できる。 表11. サブサハラアフリカの各種低地の分布面積。全低地2.4億ha (Windmeijer & Andriesse 1993)のうちの灌漑水田ポテンシャルの推定は著者による (Wakatsuki 2002, Wakatsuki et al. 2012, 2016) 面積 灌漑水田ポテンシャル推定値 低湿地の種類 沿海低地 1700万ha 4-9 百万 ha (25-50%) Coastal swamps 内陸デルタ(大低地) 1.1億ha 5-20 百万 ha (5-20%) Inland deltas (basins) 氾濫原 3000万ha 8-23 百万 ha (25-75%) Flood plains 内陸小低地 8500万ha 9-21 百万 ha (10-25%) Inland valleys Sawah技術のターゲットは当初、農民の自力による水制御が容易な内陸小低地で「谷地田農 法」として確立した。しかし2011年以降、ナイジェリア北部サバンナ帯のKebbiからBorno州の 内陸デルタや氾濫原でも氾濫時期の数ケ月を除けば、簡易なポンプ灌漑により数100万ha規 模の水田開発が可能であることが判明し「アフリカ水田農法」に進化した。アジアと異なりアフ リカの氾濫の破壊力は小さいからである。サブサハラアフリカ全体で利用可能な水量はアジア の40%(Oki et al 2009)なので、アジア(1.4億haの年間灌漑水田稲作作付面積FAOSTAT 2015, AQUASTAT 2016)との比較から約5000万haのポテンシャルが推定される。 チャドTissi,Haraze帰 還難民の定住化のた めの新規水田プロジェ クトサイト,2015-16 A 低い アフリカ B 高い アフリカ 500mm 1000mm 2000mm D 年間降雨量 C D 500mm 1000mm D E 2000 mm 500mm 1000 mm (荒木茂,2008.データベース世界版,仮想地球 研究会);http://virtual-earth.asafas.kyotou.ac.jp/ve-world/datac.cgi Fan, Y et al. 2013. Global patterns of groundwater table depth. Science, vol. 339, p. 940-943 図17. サブサハラアフリカの水田稲作のポテンシャルの高い様々な標高に分布する内陸デルタ 18 チャド定住化プロジェクトサイト Kebbi rice revolution site マリ, 内陸デルタ (800万ha, 標 高±270m) ナイルデルタ・氾 濫原(400万ha) サハラ沙漠 南スーダン,スッド 湿地 (1500万ha, 標高±450m ) 500mm 高い アフリカ ナイジェリア の様々な湿地 アフリカ最大のチャド湿地 (3500万ha, 標高±290m) 500mm 年間降雨量 コンゴ湿地 (2500万ha, 標高±400m) オカバンゴ他の内陸デルタ (2500万ha, 標高±1000m) この地図には氾濫原,内陸湿地や沿 海デルタのみ示したが,図には示さ れない、合計で1億haに近い無数の 稲作適地の内陸小低地が存在する。 500mm 500mm 年間降雨量 0 1000 2000km 図18. 内陸部の種々の標高に分布するアフリカの湿地(Van Dam and Van Diepen 1982) 14、アジアと比較したアフリカの各種湿地の特徴とアフリカ水田農法の可能性 図 19 に示すように水田システムの開発適地は主として水文と地形により決まる。100%に近い砂質土壌 でなければ、土性は決定因子ではない。当初 1986-2010 年までは主としてギニヤサバンナ以南の降雨に 恵まれた内陸小低地や氾濫リスクの小さい氾濫原をターゲットとしてきた。これらの生態系では農民が自力 で主として小流量の重力水を制御することは比較的容易であると考えたからである。図 20 は降雨量分布 (Time Altas、2007)を図 21 は低地土壌生成速度を侵食速度(Waling、1983)から読み替えたものである。 畑作においては土壌侵蝕は許容できない悪であるが、低地水田稲作においてはアップランドの森林や畑 地における適度な侵蝕は、土壌の更新と若返りのプロセスであり、低地水田土壌の更新のプロセスであり、 100-1000 年という長期的な持続性を担保する重要な生態学的プロセスである。 これらの図からわかることは、アジアと比べて水循環量が小さく、低地土壌生成作用が小さいため、アフリ カの小低地や氾濫原は種々の多様な微地形が混在していることである。図 19 に示すように泉や小河川水 を簡便な堰等で取水可能な低湿地は農民の自力開発が容易でアフリカ水田農法(当初はアフリカ谷地田 農法)の最優先の開発適地であった。緩斜面のすそ野でのウォーターハーベストやコンターバンドシステム の開発可能であるが、アフリカの低地は一般にアップランド的地形条件も多いため、水田適地の選定が極 めて重要となる(表 8)。 アフリカの諸地域の水文、地形、土壌、気候、植性、および地質、さらには社会経済、文化、および歴史 条件の多様性故に、アフリカ水田農法はこれら諸地域の多様性に対処し適応する必要がある。表 11 に示 すようにアフリカの湿地面積は約 2.4 億 ha と巨大である(Andriesse、1985)が、水循環量の少なさ(図 20) 故にこれらの湿地すべてが持続可能な水田適地ではない、これらはアフリカにおける水田開発の生態環 境から見た制限因子である。 19 山地や 台地面 泉 表面水の集水 が可能な低地 部 [W] 表面水 Sawah (水田) 等高線に 沿う畦 地下水 地下水面 [S] 泉が利用可能な 上部斜面水田 Sawah (水田) (地下水涵養) 洪水期間外でも 洪水被害を 氾濫原、内陸湿 受けやすい 地や沿海デルタ は灌漑可能 低地 [F] (地下水涵養) 洪水被害を 受けやすい 低地 [F] 海 [U] 低地であるが アップランド的 な生態環境 [L] 川 典型的な 灌漑可能な 水田 川 氾濫原 浅い地下水面 0m 沿海低湿地や デルタ (2千万ha) 多様な灌漑オプション: 天水田、田から田への賭け流し、等高線に沿う畦による集水、泉利用、堰利用、 河川利用、ポンプと管井戸利用、インターセプト水路利用、ため池利用等 低地水田開発の優先順位:[S] [L] [F]* > [W] > [U] *広い氾濫原やデルタにおいて、2-3ヶ月の洪水期間外でも農民は小さなポンプと管井戸を利 用して水田稲作ができる。主なアフリカの大河の洪水はそれほど破壊的な力は無いので、農 民による水田システムの開発は氾濫下でも可能である。 図19 . アフ リカ の 多 様な 低 湿地 環 境 と 水 田 適地 。 ア フ リカ 水田 農 法 ( Sawah Technology)の継続的な改善と進化のためにはアフリカの多様な低湿地での広範 な普及・社会実装活動が必要であり、多様な土地の特性を考慮した水田開発と水田 稲作のオンザジョブ訓練を同時並行で実施することが重要である。 500mm/year 2000mm/yea 1000mm/year 3000mm 1500mm/year r 3000mm/year 2000mm/yea r 500mm/year 2000mm/yea r 図20. 地球上の年間降雨量分布: 白は1000mm, 水色は 2000mm, 赤紫は3000mm以上(Times Atlas 2008) 20 4000mm/year サブサハラアフリカの水田は持続可能か? 活発な造山運動とアジアモンスーンは活発 な土壌生成と侵食と低地土壌生成をもたらし1.4億haの持続可能な水田稲作を支えている。 サブサハラのアフリカではそのような低地土壌生成作用はアジアの5分の1から10分の1程度 しかないように見える。 図17-19に示すようにサブサハラアフリカにはマリ、チャド、スッド、コ ンゴ、オカバンゴ大湿地のような内陸の種々の比高に分布し無数の内陸小低地を合わせて 数億haが分布する。沿海低湿地が大部分のアジアと異なる。水循環量の少なさから最大ポ テンシャルは5000万ha程度と推定される。このため水田適地の湿地の見極めが重要。 低地土壌生成速度 10.0 7.5 5.0 2.5 1.0 0.5 t. ha-2. yr-1 Deserts and permanent ice 図21. 世界における土壌侵食速度の分布 (Walling1983)。侵食速度は主として河川中の懸 濁土壌粒子重で測定。これはアジアの場合は低地土壌の生成速度に近似できる。 アジア大陸面積 44.6億 ha アフリカ大陸面積 30.4億 ha d a e f c a g b 図22.アフリカ大陸とアジア大陸の高度別頻度分布(荒木,2008). アフリカは安定した大陸で,200-1000mの様々な標高にc,d,e,f,gなどの十数段の 準平原地形面がある.fを除いたこれらには,広大な内陸低地や湿地,デルタがある.一 方,アジア大陸は広大な低地があるが,主に沿岸地域の標高200m以下(右図a)に 存在し,主に稲作を行う水田に利用されている湿地である. 図 22 はアフリカとアジア大陸の高度別頻度分布を示した(荒木 2008)。アフリカは安定した大陸で 200- 1000m の様々な高度に c, d, e, f, g 等、十数段の準平原面があり、図 17 からわかるように 600-700mの高 度の f 面を除いたこれらの平面は広大な内陸低湿地やデルタとなっている(図 18)。 図 23 と 24 は図 17 の代表的な内陸湿地やデルタのトランセクト面の地形を示すもので、極めて広大な内 陸湿地があること、これらの湿地の地下水面は浅いことを示している。一方アジア大陸にはこの種の内陸低 湿地の分布は限られており、大部分は 200m より低い、沿海デルタとなっている。 21 トランセクト A マリ内陸低地, デルタ (標高150-350m) 標高(m) 350 250 850km 150 ±270m 浅い地下水<10m トランセクト B チャド内陸低地,デルタ (標高150-450m) 800 700 600 500 400 300 200 100 0 標高(m) 推定湿地面積,800万ha 1550km ±290m 浅い 地下水 <10m 中間 地下水 10~50m 推定湿地面積,3500万ha 深い地下水 >50m 図23.図17の左図のトランセクトAとBの地形断面図.2つの平坦地は地下水面が 50mより浅く、浅管井戸と小型ポンプ灌漑水田システムの設置に適している. ±400m Altitude(m) トランセクトC コンゴ内陸低地,デルタ 700 600 500 400 300 200 100 0 推定湿地面積,2500万ha 浅い地下水 <10m 1350km トランセクトD 1300 1200 推定湿地面積,1500万ha ナイル川流域全湿地面積, 3000万ha 1100 スッド,内陸デルタ Altitude(m) 1000 900 800 700 ±450m 白ナイル 600 500 400 300 浅い地下水 <10m 950km トランセクトE 1300 ±1000m オカバンゴ内陸低地,デルタ Altitude(m) 1200 推定湿地面積, 2500万ha 1100 1000 900 800 浅い地下水 <10m 1000km 図24.図17のトランセクトC,D,Eの地形断面図.コンゴとスッドの平坦地は地下水 面が50mより浅く、浅管井戸と小型ポンプ灌漑水田システムの設置に適している.しか し,オカバンゴの低地は入念な環境調査が必要. 15、サハラ砂漠の南縁のサバンナ帯の持続可能な農業振興とスーダン・中央アフリカ・ボコハラム 難民・移住民の定住化にアフリカ水田農法は貢献可能か? 図 17-18 に示すように、チャドという国がアフリカ最大の低湿地、500-1000 万ヘクタール規模の水田 開発ポテンシャルを有していることを認識したのは 2015 年 6 月チャドの国際移住機関 IOM と共同調査を 実施したことに始まる(図 25-27 の写真)。低平な地形が広がるアフリカではダム湖の造成による重力灌漑 22 水田開発は蒸発量の増大による水資源の無駄とダム湿地の造成による広大な土地を無駄にする(図 28)。 地下ダム機能を強化する、水田の地下水涵養機能の強化がカギとなる。ナイジェリアのケッビ州での稲作 革命の成果が利用できる。ナセル湖ができる前の、ナイルデルタで行われていた、アフリカ氾濫原農法とア フリカ水田農法の融合により集約性の高い持続可能な 21 世紀型の新農法へと発展する可能性もある(図 29)。 チャド湖に近い首都ンジャメナ付近 の黒土のバーテソル(2015年6月) 手前はChari/Logone川 チャドも豊葦原の国 葦の家(2015年6月) 瑞穂の国ではないが 7-9月は泥の海。水田 が可能な肥沃な黒土が 500-1000万ha分布。 図25. Chadに広く分布する黒色粘土質のバーテソルは持続可能な水田開発が可能か。 7-10月の雨季は泥の海。乾季はひび割れた大地となるが、地下水は浅い。 図26. Chadの帰還難民の定住化のためのアフリカ水田農法の訓練とデモンストレー ションサイト, Haraze, Tissi, 2015年12月-16年2月(場所は図17-18参照) 23 図27. Chadの帰還難民の定住化のためのアフリカ水田農法の訓練とデモンストレー ションサイト, 中央アフリカとの国境のMassamagne村, Haraze, 2016年4月12日 図28.カメルー ン北部サバンナ 帯での約4万ha のマガ湖湿地と1 万haの灌漑水 田開発の例 (広大なつぶれ 地と無駄な蒸発 散量が増加)。 チャド湖消滅を 誘発? 1万haの 灌漑水田 マガ湖と湿地 24 図29. アスワンダムとナセル湖完成 (1957年) 以降のナイルデルタの持続 可能性と氾濫原農法の復活の可能性 ナイルデルタ+氾濫原400万ha アスワンダム以前 1、毎年の氾濫で肥沃な表土が約1mm/年 (10-15ton/ha)上流部のエチオピアやケニヤ、 ウガンダより供給。上流部の土壌生成速度 は大地溝帯の火山灰が母在なので、 1-5t/ha/年で、アフリカとしては大きい。 2、地下水も涵養され塩水の洗浄され5000 年の持続性を可能にしてきた。 アスワンダム以降の現在 1、灌漑と肥料と品種で食料は増産 2、氾濫による肥沃土の供給ストップ (a)デルタ沿海漁業は壊滅 (b)デルタ沿海部の侵食:堤防で保全 (c )塩害の拡大:ポンプ排水の必要性 3、肥沃な表土、年間1mmのストップの影響 がでるのは10-15cmの表土に相当する損失 が顕在化する100-150年後(西暦2050-2100 年ころと予想される) (衛星写真はGoogle earth Pro,ナセル湖の 写真は同Mr. Youssef Alam氏による ) ナセル湖はアフリカでは珍しく大地溝 帯山地の地形に恵まれ、水深が深く 面積が比較的小さいので砂漠気候下 の蒸発散量損失が相対的に少ないの は大きなメリット 斜面でのテラス、 サブサハラアフリカの水バランス チェックダムは 半乾燥地では降雨の3分の1以下しか作物は消 雨水を貯水し、 費していない。30-50%は土壌表面から直接蒸 乾季の水供給 発してしまう。残りは表面流去と地下水の涵養 を増やす 蒸発散 耕起をせずマ ルチすれば土 壌(団粒)に水 分が貯留される 降雨 蒸発 土 壌 水 低平なアフリカでは洪水の破壊力は大きくな く、氾濫しても水田の畔は破壊されない。無 数の水田により水循環を改善できる。 蒸発 水 水田図は農業土木学会「新編・水田工学,1999年」 排水 Rockstrom&Falkenmak (Nature 2015)がMolden (ed.) Water for Food, Water for Life (IWMI, 2007)を引用 水田が水循 環を改善 (アジア戦略) 畔で囲われた水田 は表面流去を減らす ダム機能。水田稲作 により地下水の涵養 能を強化できる(可 能性がある)。 表 面 流 去 地下水 涵養 畑作システムによ る水循環の改善 (欧米流戦略) 降雨 田 地下水 涵養 灌漑 図30.アフリカの水循環を改善するための畑作ベースの戦略と水田ベースの戦略 25 上の図 30 に示したように、サブサハラアフリカの水文の特徴は降雨のうち蒸発により失われる割合が 30 -50%と多く、河川水となる表面流去水の割合が 10-25%と少ないので、ダムの利用や河川水からの直接 取水可能量は、アジアに比べて多くない。地下水の割合が 10-30%と比較的多いことが特徴である。 このような状況で欧米型の土壌団粒の機能を重視する畑作システムをベースとする水循環の改善戦略と アジア型の水田システムによる水循環の改善戦略の両者を併用することが重要と考えられる。 16、アジア・アフリカ連携による世界平和の構築 日本農業は、世界を植民地化した英国等、欧米型のグローバリゼーションではなく、日本型グローバリゼ ーションにより世界に貢献できる。アフリカ水田農法等をさらに進化させながら、中国やインドネシア等のア ジア諸国と連携しながら、サブサハラアフリカの 1 千万の農民に普及させることは重要な貢献になる。これ によりガーナ 50 万 ha、ナイジェリア 500 万 ha、サブサハラアフリカ 5000 万 ha の水田稲作を実現し、アジア で 1000 年を要した水田開発(国土基盤と科学技術の適用基盤造り)を数十年以内に短縮させ、地球社会 の持続可能な食糧を確保し、地球温暖化防止や生物多様性保全、貧困撲滅や平和構築に貢献できる。 17、参考文献 Africa Rice 2016. Sawah, Market Access, and Rice Technology (SMART) choice for Africa’s inland-valley rice farmers by AfricaRice (4 March 2016), http://ricetoday.irri.org/a-smart-choice-for-africas-inland-valley-rice-farmers/ AQUASTAT 2016. http://www.fao.org/nr/aquastat CARD 2008. 「アフリカ稲作振興のための共同体 Coalition for African Rice Development (CARD)」につい て-アフリカのコメ生産倍増にむけたイニシアテイブ, 2008 年 5 月国際協力機構(JICA), アフリカ緑の 革命のための同盟(AGRA), http://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/pdf/card_jp.pdf (Browsed in 25th February, 2016) Dakingari ASU. 2013. Growing Agriculture in Kebbi state, paper presented by the executive governor of Kebbi state at the 19th National Economic summit, Group(NESG) held in Abuja on the 4th September, 2013 (http://www.nigerianeconomicsummit.org/images/GovernorDakingari(Kebbi)_Plenary5.pdf) Fan Y, Li H, and Miguez-Macho G. 2013. Global patterns of groundwater table depth, Science, 22 February 2013, Vol 339: 940-943 FAOSTAT. 2015. http://www.fao.org/statistics/en/ 藤森新作・小野寺恒雄 2012.「水田農業自由自在, 地下水位制御システム FOEAS」農文協, 115 頁 藤尾慎一郎 2015. 弥生時代の歴史, 講談社現代新書, 248 頁 古川久雄 2011. 「オアシス農耕起源論」, 京大出版, 京都 394 頁 Gleeson T, Waga Y, Bierkens MFP, and van Beek LPH 2012. Water balance of global aquifers revealed by Groundwater footprint. Nature, Vol 488, 9 August 2012: 197-200, doi:10.1038/nature11295 長谷川英祐 2014. 「科学の罠」, 青志社, 東京, 245 頁 HSIEH Sung-Ching. 2001. Agricultural Reform in Africa-With Special Focus on Taiwan Assisted Rice Production in Africa, Past, Present and the Future Perspective-, Tropics, Vol.11 (1): 33-58 Hyams E 1976. Soil and Civilization, Haper, London, pp312 IITA 1992. Annual Report, p34 IITA 2008. Bountiful rice harvest from 'Sawah' system, http://www.iita.org/search/-/journal_content/56/25357/48172#.Vws6g2xJloa 伊東俊太郎 2007. 環境問題と科学文明 http://mitizane.ll.chiba-u.jp/metadb/up/ReCPAcoe/42ito.pdf, 2007 年 2 月 4 日, 千葉大学シンポジウム「文明論・環境倫理・公共哲学」 小森 努 2011. 御所市中西遺跡の弥生時代水田遺構, 2011 年 11 月 12 日, 橿原考古学研究所による説 明会, http://tsu-com515.my.coocan.jp/H23.11.12NakanishiIseki.html Karimi P, Molden D, Notenbaert A and Pdeden D. 2012. Nile Basin farming systems and productivity, http://www.iwmi.cgiar.org/Publications/Books/PDF/H045315.pdf 国際連合 2015. 我々の世界を変革する:持続可能な開発のための 2030 アジェンダ, 26 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000101402.pdf 松下明弘 2013. ロジカルな田んぼ, 日経プレミアシリーズ, 237 頁 Molden D 2007. Water for Food, Water for Life, Earthscan, London and IWMI, Colombo, pp624 Mophapatra S 2016. A SMART(Sawah, market Access and Rice Technology) choice for Africa’s Inland Valley farmers, Rice today by IRRI, http://ricetoday.irri.org/a-smart-choice-for-africas-inland-valley-rice-farmers/ 中山茂 2011. パラダイムでたどる科学の歴史, べㇾ 出版, 東京, 302 頁 Nile Basin Initiative 2016. State of the river Nile basin 2012, http://nilebasin.org/nileis/content/state-river-nile-basin-report 農業土木学会編 1999. Advanced Paddy Field Engineering, 信山社サイテック, 388 頁 Oki T, Agata Y, Kanae S, Saruhashi T, Yang D, and Musiake K 2009. Global assessment of current water resources using total runoff integrating pathways, Hydrological Sciences Journal, 46(6), 983-995, DOI:10.1080/02626660109492890 Oyediran GO 1990. Genesis, Classification and Potential Productivity of Selected Wetland Soils in the Savanna Ecosystem of Nigeria, PhD Thesis, Obafemi Awolowo University, Ile-Ife, Nigeria, pp1-335 李登輝 2015.「新・台湾の主張」, PHP 新書 Rockstrom J and Falkenmark. 2015. Increasing water harvesting in Africa, Nature, Vol.516: 283-285 Salagado M 2012. Agricultural revolution, http://www.slideshare.net/maggiesalgado/agricultural-revolution-13173417, and -33117637 SMART 2016. Sawah, market access and rice technology in African Inland valley ecology (https://smartiv.wordpress.com/) 若月利之 1989. 水田はアフリカを救えるか, 私の任国事情, JICA Expert 誌, No.80: 8-16, http://www.kinki-ecotech.jp/download/JICAExpert1989No.2.pdf Wakatsuki T 2002. Sustainable Agricultural Development of West Africa during Global Environmental Crises, In Hirose and Wakatsuki ed “Restoration of Inland Valley Ecosystems in West Africa”, Association of Agriculture & Forestry Statistics, Tokyo, p572 Wakatsuki T, Buri MM, Bam R, Ademiluyi SY and Azogu II 2012. Sawah Ecotechnology: Farmers’ Personal Irrigated Sawah Systems to Realize the Green Revolution and Africa’s Rice Potential, In Buri MM, Wakatsuki T, Issaka RN and Abe S edited “Proceedings of the 1st International Workshop on Sawah Ecotechnology and Rice Farming in Sub-Saharan Africa”, 22nd -24th Nov. 2011, Kumasi Ghana, NiiNai Creations, pp222 若月利之 2016. Sawah technology for African Green Revolution ホームページ, アフリカ水田農法(Sawah 技術)の社会実装による稲作革命の実現, http://www.kinki-ecotech.jp/ 若月利之 2013. Sawah(灌漑水田)稲作技術普及の展望. 熱帯農業研究, 6(1): 43-50 若 月 利 之 2015. 文 章 の 一 部 は , 雑 誌 「 現 代 農 業 」 , 2015 年 3 月 号 と 10 月 号 で 発 表 し た (http://www.ruralnet.or.jp/gn/201503/iken.htm)。 若月利之 2009. アフリカ発谷地田農法で新・緑の革命, 現代農業, 11 月号, 346-350 頁 若月利之・謝順景 2003.「アフリカ稲作開発協力史―その 1 台湾」国際農林業協力, Vol.26 (No3): 82-94 Van Dam AJ and Van Diepen CA 1982. The soils of the flat wetlands of the world, their distribution and their agricultural potential. Technical paper 5 for Polders of the world, pp1-50. Wageningen, International Soil Museum, http://www.isric.org/isric/webdocs/docs/ISRIC_TechPap05.pdf Zwart S and Hamady H 2016. Finding flood-prone rice areas in West Africa, http://ricetoday.irri.org/finding-flood-prone-rice-areas-in-west-africa/, in ricetoday.irri.org 27
© Copyright 2024 ExpyDoc