平成 28 年度(公社)秋田県診療放射線技師会学術大会 抄録 セッション 1:被ばく防護・血管撮影 1.ERCP 用防護具の有用性の検討 市立秋田総合病院 放射線科 高橋萌子 鎌田伸也 鈴木奈々子 石塚康裕 泉谷重明 【目的】ERCP 等の内視鏡を用いた検査では X 線の透視時間が通常の検査より長くなる傾向にある。そのため検 査に携わる医療従事者の被ばく線量の増加が危惧されており、従来の鉛防護衣に加えての防護対策が必要である。 そこで ERCP 用防護具(鉛当量 0.125mmPb)を新たに導入することによって医療従事者の被ばく低減を試み、 どの程度被ばく低減効果を示したか取り付けの前後で検討を行った。 【方法】防護具装着時と未装着時にあらかじめ定めた測定ポイントにおいて床面から高さ 90cm、150cm で寝台 にファントムを設置し、散乱線量をサーベイメーターで測定した。その後 ERCP に携わる医療従事者について防 護具導入前後における被ばく線量の変化について検討を行った。 【結果】ファントムを用いた実験では空間線量が高さ 90 ㎝で最大 91%、高さ 150 ㎝で最大 89%低減した。医療 従事者の被ばく線量は 1 件当たりの検査で、実効線量が 20%、等価線量(水晶体)が 24%減少した。 【考察】新たに ERCP 用防護具を導入することによって医療従事者の被ばく線量がどの程度低減したか検討を行 った。検討の結果から ERCP 用防護具は検査に携わる医療従事者の被ばくの低減に効果的であり、積極的に使用 するべきであると考えた。 2.スマートフォン等の通信機器が電子ポケット線量計に及ぼす影響についての検証 秋田大学医学部附属病院 ○白坂 中央放射線部 直哉、篠原 俊晴、佐藤 駿、近野 昂史、疋田 一成 【目的】電子ポケット線量計(以下:EPD)は,スマートフォン等の通信機器の近くで誤作動を起こす可能性が ある.これらの通信機器は日常的に身の回りに存在している.適切な使用環境での被ばく管理を行うため,誤作 動を起こす使用条件について検証する. 【方法】型番の異なる EPD を用いて,通信機器の種類,通信状況,EPD との距離,測定時間,測定方向を変え, 誤作動を起こす使用条件を検証した. 【結果】通信機器によっては,誤作動を起こすものと,起こさないものがあった.誤作動を起こした通信機器に ついて,通信状況と測定距離の検証について誤作動を確認した.測定時間および測定方向を変えても結果に違い は見られなかった. 【考察】当院で使用した EPD には,電磁遮蔽が施されていたため,似た通信規格のものでも結果が異なったと 考えられた.誤作動の要因は距離に依存するため,EPD と通信機器を一緒に携帯しない等の方法で回避が出来 ると考えられた.適切な使用環境で被ばく管理をすることは,安心して業務に専念できる環境作りに繋がると考 える. 3.血管撮影室でのタイムアウトの有用性について 秋田大学医学部附属病院 篠原 俊晴 白坂 中央放射線部 直哉 佐藤 駿 虻川 嘉大 小松 斉 【目的】血管撮影室の稼働件数が増加しており医療安全がより重要となっている。以前から手術室で実施してい るタイムアウトを血管撮影室でも簡易的におこなっていた。この度、本格導入することになり、タイムアウトに 関するワーキンググループが立ち上げられ、各科共通のタイムアウトチェックリストを作成し運用している。本 発表は血管撮影室におけるタイムアウトチェックリストの作成とタイムアウトの有用性や課題について報告す る。 【方法】タイムアウトチェックリスト作成の過程、チェックリストを使用した約 100 症例での有用性と課題につ いて医師とスタッフに聞き取りを行った。 【結果・考察】医師・スタッフ共に有用であるとの答えであった。実際、過去に起きたインシデントが現段階で は起こっておらずタイムアウトが血管撮影室のインシデントに対し有用であると考える。反面、実施記録の扱い や感染症等の個人情報の確認などで課題が見えてきた。 【結語】血管撮影室でのタイムアウトは有用であったが、課題も見えてきた。今後はこの課題の解決に取り組み、 より簡便で有益なタイムアウトを行っていきたい。 4.FPD 搭載型血管撮影装置の患者照射基準点線量と画質について 秋田厚生医療センター 放射線科 吉田 恭平、佐藤 均 秋田脳血管研究センター 放射線科診療部 加藤 守 【目的】当院では FPD 搭載型の心血管撮影装置(Allura Clarity)と Angio 機能付き多方向撮影装置(Artis Zee MP) が稼働しており共に面積線量計を有し、患者照射基準点(patient entrance reference point: PERP)積算線量を表 示することから、PERP 線量と画質について比較検討した。 【方法】SID100cm、アクリル 20cm を用い電離箱線量計を PERP に配置し透視線量率を測定した。 上記条件と同等の線量となるように QC ファントムとアクリル 9 枚を用いてダイナミックレンジ、低・高コント ラスト分解能を視覚評価した。 【結果】アクリル 20cm 厚の PERP 透視線量率は,Allura Clarity で 6.245mGy/min、Artis Zee MP で 8.702 mGy/min であった。撮影線量はそれぞれ,0.098mGy/frame、0.128 mGy/frame であった。 QC ファントムを用いた PERP 線量率は透視が Allura Clarity で 6.375 mGy/min、Artis Zee MP で 9.061mGy/min であった。撮影線量はそれぞれ 0.104 mGy/frame、0.054mGy/frame であった。画質評価は2機 種間で透視では差はなく、撮影で Artis Zee MP で高コントラスト分解能が 1/8 ポイント低下していた。 【考察】2 機種とも PERP 透視線量率は診断参考レベル(DRLs2015)と比較して低い線量であった。画質評価に おいて撮影で Artis Zee MP が高コントラスト分解能で低下した原因に Allura Crarity は 15frame に対して Artis Zee MP は 10frame と低く、管電圧の上昇により線量は低く抑えられる一方で、その分コントラストが低下した と考えられるが、画質としては臨床を通じて支障のないレベルと思われる。 セッション 2:MRI 1 5.重複する pre saturation pulse に対する信号変化に関する基礎検討 市立角館総合病院 千葉 大志 【目的】日々の診療において pre saturation pulse(以下, SAT)の使用頻度は高く, その原理に関して把握して おくことは重要である. 特に重複させて SAT をかけた際の基礎的な挙動を検討した. 【方法】φ10cm の球形 phantom に 1slice をとり, 撮像面内に 1-4 の番号を割り振った SAT を 5pattern(以下, P) の方法で印加し下記条件で撮像した. P1:各々が交差する, P2:交差する SAT 番号の入れ替え, P3:各々が同一方 向・部位, P4:SAT 厚を変え, 同一方向・中心で重ねたもの. P5:重複する SAT 番号の組み合わせの変更. 各々の SAT 部位の両端に ROI を置き, 平均信号値(以下, SI)を測定した. 得られた画像に対し, slice profile を作成し比 較検討した. 撮像条件:Signa Contour 0.5T, QDHead coil, Cor-Single slice, TR:600ms, TE:15ms, BW:15.6kHz, FoV:240mm, Slice 厚:10mm SAT 厚:20mm 【結果】P1,P2 で SAT1〜SAT4 まで信号抑制部の SI が変化した. P3 では 1 つの SAT のみと SAT 重複×3は信 号抑制部の SI に違いが見られ重複×2 と重複×4 に関しては SAT 中心に抑制不良が起きた. P4 に関しては SAT の厚みにより抑制不良の発生の有無が分かれた. 【考察】P1,2 で SI に変化が見られたのはパルスシークエンス上での SAT パルスを打つ順番が影響していると考 えられる. P3,4 を通して重複する部分の SI については後掛けした SAT の信号抑制状態に依存せず装置固有のパ ルス印加順に依存すると考えられる. 最適な信号抑制を実現するため SAT の印加する順番を把握しておくこと は重要である. 6.重複する pre saturation pulse によって出現するアーチファクトに関する基礎検討 市立角館総合病院 千葉 大志 【目的】日々の診療において pre saturation pulse(以下, SAT)の使用頻度は高く, その原理に関して把握して おくことは重要である. 特に重複させて SAT をかけた際の基礎的な挙動を検討した. 【方法】φ10cm の球形 phantom に 1slice をとり, 撮像面内に 1-4 の番号を割り振った SAT を 4pattern(以下, P) の方法で印加し下記条件で撮像した. P1:SAT 厚 10-60 で各々を交差, P2:交差する SAT 番号の入れ替え, P3:SAT3 の印加方向を 0°~90°まで 15°毎に変更, P4: 3 つの SAT の印加方向を指定し, 印加順を変更. 得られた画像に 対し画像解析ソフト Image J にてフーリエ変換(以下, FT)をし, 実画像と比較し artifact の性質を検証した. 撮像 条件:Signa Contour 0.5T, QDHead coil, Cor-1slice, TR:600ms, TE:15ms, BW:15.6kHz, FoV:240mm, Slice 厚:10mm 【結果】SAT 重複×3 以上の交差部位で縞模様の artifact が発生した. 重複×3 と重複×4 で artifact の模様に変 化が見られ, 同時に phantom 外に artifact が発生した. FT 画像上で artifact の発生場所と SAT 配置の間に規則 性が見られた. P3 では重複角度により縞模様は変化した. P2,4 では印加する SAT の順番で artifact の模様に変化 が見られた. 【考察】縞模様は SAT の干渉によって生じるクロストークと考えられ, 厚みの変化と共に SAT の形状が広がり 干渉幅が広がると思われる. P2,4 は先に掛けた SAT パルスによって飽和した縦磁化が回復すると共に連続した 印加で干渉の状態が変わる. Phantom 外の artifact は FT 画像より, 強く現れる SAT 配置は連続する印加が隣り 合った配置の場合であった. 発生原理に関しては今後更なる検討を要するが, 不要な SAT をかけることは artifact を誘発させると考えられる. 7.T2*強調像における頸椎椎間板ヘルニア描出能の一評価について ・・・椎間板造影後 CT と手術所見との比較・・・ 独立行政法人 労働者健康安全機構 秋田労災病院 中央放射線部 黒澤 慎哉 【目的】今回の研究の目的は、1.5T ー MRI 水平断像における頸椎椎間板ヘルニアの描出能力がどれくらいであ るのかを、数値化し、何 mm 以下の頸椎椎間板ヘルニアは 1.5T ー MRI 水平断像では描出ができないであろうと いう線引きをすることである。 【方法】頸椎椎間板ヘルニア患者で、頸椎 MRI 検査と頸椎椎間板造影後 CT 検査を行い、その後、手術(頸椎前 方固定術)を行った患者 15 名に対して、以下の比較を行った。 1:手術所見との比較 ヘルニアが存在と脱出形態 2:頸椎 MRI と頸椎椎間板造影後 CT の比較 2 名による視覚評価 診療放射線技師 1 名(磁気共鳴専門技術者) 整形外科医師 1 名(脊椎脊髄外科指導医) 【結果】椎間板造影後 CT で椎間板ヘルニア描出があった 15 名中、MRI でヘルニア描出がわかったのが 8 名、 描出が微妙だったのが 4 名、わからなかったのが 3 名であった。MRI において描出された頸椎椎間板ヘルニア は、3mm 以上の大きさの椎間板ヘルニアで、2mm 以下の椎間板ヘルニアは描出されていなかった。 【考察】椎間板造影後 CT で描出されて、MRI 水平断像で描出ができなかった理由についてピクセルサイズの違 いが一番大きいと考えられる。 【結語】結果より、現在の MRI では小さな頸椎椎間板ヘルニアの描出や外側ヘルニアの描出が厳しい。FOV を 小さくし Matrix を増やせば描出可能と考えられるが、SNR の低下が考えられる。SNR を稼ごうと思えばおの ずと撮像時間が増加してしまい、臨床上現実的ではない。よって、ヘルニアの脱出場所や形態によって異なるが、 2mm 以下の頸椎椎間板ヘルニアは現在の 1.5T-MRI において臨床上描出不可能と考えられた。 8.頭部緊急 MRI 検査における EPI-FLAIR の有用性 北秋田市民病院 放射線科 鈴木 準 平川 修 【目的】当院では頭部緊急MRI検査においてFSE-FLAIRを撮像している。今回、撮像時間の短縮を目的にEPI-FLAIR の検討を行った。 【方法】装置はSignaHDxt 1.5T(GEHJ)。 (1)健常ボランティアによる至適条件の検討 SE-EPI法を用いて、以下のパラメータを変更し、歪み・コントラスト・脳脊髄液の抑制について視覚的評価を行 う。Shot数:1・2・4・8、Eff.TE(msec):80・100・120・140、TR(msec):8000・10000・12000・14000、TI(msec):1900・2000・ 2200・2500 (2)臨床症例(脳卒中)による比較 FSE-FLAIRと(1)で得た至適条件におけるEPI-FLAIRとの、臨床的有用性について比較を行う。 【結果】(1) Shot数:4、Eff.TE:120msec、TR:10000msec、TI:2000msecを至適条件とした。 (2)EPI-FLAIR(撮像時間:45sec)はFSE-FLAIR(撮像時間:2min)と同等の病変描出が可能であった。 【考察】FLAIRの超高速撮像実現のためEPI法を用い、その代償として出現する歪みを軽減するためMultishot法 を用いた。FLAIRコントラストを得るためにはEff.TEの値を最低でも120msec程度まで伸ばす必要があった。FSE 法より体動にも強く臨床での使用価値が十分ある。 9.頭部 FLAIR 撮像における再収束パルス角度の検討 秋田大学医学部附属病院 中央放射線部 佐々木 洋平 吉田 博一 櫻田 渉 【目的】頭部領域での脱髄性疾患,多発性硬化症などにおける FLAIR 撮像の有用性は高く,コントラストの確 保は重要である.当院装置において再収束パルス(Refocus flip angle : RFA)の調整が可能となった.RFA の設定 によるコントラストの変化が懸念される事から条件の最適化が必要である.RFA に着目した FLAIR の撮像条件 の最適化を目的として,検討を行った. 【方法】使用装置は GE 社 3T Discovery 750 ,QD HEAD Coil,ファントムは日興ファインズ社 90-401 型 MR ファントムを使用した.撮像条件は頭部領域の 2D FLAIR を元に,RFA のみ変化させた(90°~180°ま で 10°ずつ).ファントムのコントラストセクションに模擬白質,模擬灰白質を想定し,コントラスト比(CR) と信号雑音比(SNR)を計測した.また健常ボランティアを撮像し,白質,灰白質部の CR を計測した. 【結果】ファントムにおいて RFA の増加に伴い,CR は増加した.また SNR は低下した.ボランティア撮像に おいて RFA の増加に伴い,CR は増加した. 【考察】RFA 増加に伴う CR の増加と SNR の減少は MT 効果の影響と考える.RFA 増加に伴う SAR の増加や 設定スライス数の制限なども考慮すると,今回の検討から RFA 150°の設定が最適であると考えられた セッション 3:情報・一般撮影 10.自作できる PACS 市立角館総合病院 小林 康徳 【目的】電子画像管理加算の算定を目指し、PACS を導入する。 【方法】 PACS サーバー、VIEWER をそれぞれフリーソフトである CONQUEST、K-PACS で作成し、各端末の LAN 設 定、端末間の DICOM 接続を行う。 【結果】フリーソフトを用いた PACS の導入は実現した。しかし、画像参照する際の画像ダウンロード時間が放 射線科内に比べ放射線科外では長時間要する。 【考察】ネットワークが貧弱であると考えられる。どこかのハブ、LAN ケーブルに 10BASE が使用されている可能 性があると考えている。 現時点では参照用としての利活用になるが、時期システムのステップになるといえる。 セキュリティ面において、現在は注意喚起のみとしているが、システム上でメディアの使用停止を考慮している。 バックアップ面についてはサーバーをもう一台作成し、データ移行は使用頻度の少ない時間帯に自動で行う運用 にし、故障時にも対応できる仕組みを作成予定。 11.腰椎正面撮影立位 PA 法における椎間板腔描出について 北秋田市民病院 放射線科 石山 隼人 鈴木 準 平川 修 【目的】近年、腰椎正面撮影立位PA法(以下、立位PA法)の有用性が様々報告されている。今回は立位PA法におけ る椎間板腔描出について検討した。 【方法】2015年12月に撮影された症例の椎間板腔描出の良否について診療放射線技師8名で視覚評価を行った。 (1)腹部正面撮影(立位PA・臥位AP)を行った20例での比較(男性:10名、女性:10名、平均72歳)。 (2)立位PA法において、X線を第3腰椎に垂直入射及び頭側から5度斜入した10例での比較(男性:5名、女性:5名、 平均68歳)。 【結果】(1)立位PAの方が臥位APより上位の椎間板腔描出に優れるが、下位ほど描出に有意差が見られなかった。 (2)下位の椎間板腔描出については第3腰椎にX線を頭側から5度斜入した方が、垂直入射に比べある程度向上し た。 【考察】腰椎全体を考えた場合、立位PAの方が臥位APより椎間板腔の描出に優れていた。これは、腰椎の前彎と、 X線束が合致するためと考えられる。しかし、下位の椎間板腔においてはその描出にバラツキがみられたため X線 を頭側から5度斜入するという一つの対策を検討したが、ある程度の描出向上につながるものの、全ての症例で満足 のいくものではなかった。 12.FPD 導入における撮影条件の検討 かづの厚生病院 高谷 健太 湯瀬直樹 川又 渉 佐藤明弘 【目的】昨年, 当院の一般撮影に FPD 装置が導入された. FPD 装置は従来の CR 装置に比べて感度がよ く, 被曝低減の為にも撮影条件の再検討が必要である. DQE の観点から, 従来の CR 装置と比較して線量 を半分に落としても同等の画質が得られるとの事であったが, いきなり半分に落としても線量不足になら ないのかという疑問もあり, 当院では 3 割減の条件で設定する事とした. そこで,実際に線量を半分にしても同等の画質が得られるのかを確かめる. また, 実際には線量をどこま で落とせるのかを確認する. それによって, 適切な撮影条件を検討する. 【方法】1) ファントム(胸部, 膝関節, 足関節, 手部)を撮影した. 距離・照射野を一定とし, 電圧を固定, mAs 値を変化させて撮影を行った. 2) 撮影した画像を当院の技師 9 名による視覚評価によって評価し, 平 均を求めた. 【結果】平均点 4 点以上を合格とすると, 手関節では CR の条件の 50 %, 足関節では 30 %, 膝関節及び 胸部では 40 % まで合格であった. 【考察】従来の CR 装置における撮影線量を半分にしても, 同等の画質を得られる事が確認出来た. 部位に よっては, 更に線量を落とす事も可能であるといえる. 今回, 評価には視覚評価を用いたが, 物理評価を加える事で, 更に有意性のある結果が得られると思われ る. また, 実際の臨床で行われる撮影の条件は被写体や撮影方法にも影響される為, 最終的な条件の調整は 技師の判断により, 特性を理解した上で使用する事が重要であろう. セッション 4:核医学 13.心筋血流 SPECT における収集軌道が欠損描出能に与える影響について 北秋田市民病院 放射線科 鈴木 恵美子 【目的】当院の 99m 鈴木 準 平川 修 Tc-tetrofosumin を用いた心筋血流 SPECT 検査における収集軌道の違いによる欠損描出能を検 討する。 【方法】装置は GE 社製 Infinia。現状の近接軌道と円軌道(半径 230mm)を用いて 3 種類のファントム①欠損なし②欠 損あり(下壁 1 か所 2cm)③欠損あり(前壁・中隔・下壁・側壁に各 1cm)を撮像する。得られたデータに対して (1)Polarmap による視覚評価(2)3 軸による視覚評価(3)短軸像を使用した Circumferentialprofilecurve の評価の解析・ 比較を行う。 【結果】欠損なしファントムは収集軌道による差異は生じなかった。欠損ありファントム(下壁 1 か所 2cm)は近接軌道が 欠損描出能に優れていた。欠損ありファントム(各壁 4 箇所 1cm)では解析方法の違いによって欠損描出能が異なる。 【考察】 近接軌道は空間分解能が良く欠損描出能に優れる。しかし、収集データの不均一成分によって生じる偽欠 損が、欠損の配置や数により正常部にも影響を及ぼす。さらにその影響が解析方法の違いによって、どう結果に反 映されるかを把握した上で検査することが重要である。 14.核医学検査における空間線量分布の基礎的検討 秋田県立脳血管研究センター 放射線科診療部 小南衛 佐藤郁 大阪肇 【目的】核医学検査時および検査後における被験者周辺の被ばくへの関心が高まっており報告もみられるが、そ の多くは個人被ばく線量計による実測に基づくもので、かつ積算線量による評価が主である。空間線量率の分布 と合わせて評価することが出来れば被ばく管理の上でより有用と考え、検討を行った。【方法】脳血流 SPECT (ECD)を対象とした。99m-Tc を 800MBq 溶出し、添付文書を参考に体内での放射性同位元素(RI)の分布を 模した配分でファントムに封入した。投与 5 分後・65 分後・125 分後(排尿後を仮定)についてファントムを作 成し、50cm 間隔で線量計を用いて放射線量を測定し分布図を作成した。使用機器は電離箱サーベイメータ AE133V(応用技研)【結果】得られた分布図は体内の RI の分布の変化を反映した曲線となった。また測定点ご との線量率については排尿後を仮定したファントムにおいて大きく低下した。RI の減衰以外にも空間線量分布に 影響を与える因子があることが確認された。【考察】ファントムを用いることで空間線量分布の変化を簡易に評 価することが可能であった。人体への RI 投与と異なる状況下となるが、個人被ばく線量を用いた測定結果に有 用な情報を付加することができ、被ばく管理に有用であると考えられる。 15.123I イオフルパン SPECT 検査における異なる線条体解析ソフトの比較 秋田県立リハビリテーション精神医療センター 柴田敏明 佐々木和子 放射線科 佐藤亜結子 菅原重喜 【目的】当院では 123I イオフルパン SPECT 検査において、日本メジフィジックス社製の線条体解析ソフト DaTView により SBR を算出し参考値としている。今回 SIEMENS 社製の線条体解析ソフト Scenium Ratio Anarysis(以下 SRA)を使用する機会を得たので、解析結果の比較を行った。 【方法】AD/DLB 鑑別診断目的で検査を行った 89 症例について 2 つのソフトを用いて解析を行い、その値から ROC 解析よりカットオフ値を求め感度、特異度、正診率を算出した。装置は SIEMENS 社製 SymbiaT6(LEHR コリメー タ)を用い、再構成は CT 減弱、散乱補正を行った。 【結果】SBR ではカットオフ値 4.74 で感度 86.2%、特異度 92.1%、正診率 79.4%であった。また SRA ではカッ トオフ値 3.32 で感度 94.1%、特異度 97.4%、正診率 91.6%であった。 【考察】今回求めたカットオフ値に差が見られたが、これは線条体 ROI の設定が SBR と SRA で異なるためであっ た。SRA では CT とイオフルパン画像を Fusion し、CT 像を参考に手動で適切な ROI の設定が可能なことも要因の 一つと考えた。 セッション 5:MRI 2 16.伸展制限のある膝関節における最適コイル設置方法の検討 雄勝中央病院 放射線科 佐藤徳彦 安達正利 【目的】膝関節 MRI において伸展制限により専用コイルが使用できないケースがあるため他コイルでの最適設 置方法を検討する。 【方法】被験者状態は患側を下部とした側臥位と想定し、仮想膝関節ファントムの屈折角は 90 度でガントリ中 心から 15cm のオフセンタに設置。コイルは GPflex&5inch Dual coil とし上下対向位で 5inch 側は上部で膝関 節中心に設置。下部の GPflex は以下の方法①膝関節に垂直②下腿骨に平行③下腿骨に平行&大腿骨遠位を覆う ④膝関節に平行&膝蓋骨を覆う。Protocol は一定で磁場均一補正 PURE 有無とし、使用データはファントム中 心部で評価法は SNR と画像均一性とし、さらに臨床評価も行う。 【結果】SNR は全方法で PURE 有が高く設置方法別では④が最も高かった。均一性は方法②が最も高く方法④ が最も低かったが PURE により全方法で均一性が担保された。総合的に方法④PURE 有が最適であるとし、同 方法での臨床評価では大きな画質不良は観察されなかったが noise が若干観察された。 【考察】方法④は他方法よりも膝関節中心に感度が集中し SNR が上昇した。PURE はメリットもある一方で、 無感度領域の信号補正が原因と考えられる Background の noise の増加が懸念されるため視覚上で選択的に使用 するのが現行の対策である。 17.当院のガドリニウム造影剤投与回数による非造影 T1 強調画像での歯状核の信号変化 平鹿総合病院 阿部 駿 【目的】2014 年 RSNA の神田らの報告により正常腎機能の患者でもガドリニウム(以下 Gd)造影剤による Gd 沈着の可能性が示唆された。当院で行った造影検査において Gd 造影剤の種類や投与回数により小脳歯状核に信 号変化の検証を行った。 【方法】当院で 2011 年 10 月から 2015 年 12 月の間に造影 MRI を 5 回以上施行され、推算糸球体濾過量(eGFR) が 60ml/min/1.73m2 以上の腎機能軽度低下から正常範囲で、線状型造影剤のみを投与した 29 例を線状群とし、 環状型造影剤のみを投与した 28 例を環状群と分類した。両群の造影前 T1WI の歯状核-橋・小脳のコントラスト 比(以下 CR)を算出した。また MRI 造影を行ったことない正常 30 例と t 検定により比較した。 【結果】投与回数が増加するごとに両群とも CR の上昇がみられ、線状群の上昇が大きかった。正常例との比較 では線状群は 5 回目以降より有意差を認めた(P<0.01)、しかし、環状群では有意差を認めなかった。 【結論】正常腎機能の Gd 沈着による副作用の報告は現在確認されていないが、経過観察などで複数回造影を行 う場合は、CR の上昇が少ない環状型造影剤の使用が望まれる。ただ信号上昇が少ないが造影回数により若干の CR 増加が見られたため、必要最小限の量を使用すべきである。 18.撮像シーケンスがADC値に及ぼす影響について 秋田大学医学部附属病院 吉田 中央放射線部 博一 佐々木 洋平 櫻田 渉 【目的】TSE DWI は EPI DWI よりも磁化率の違いによる歪みの影響が少ないことが知られ、内耳領域の評価 に積極的に用いられている。当院では Propeller DWI を用いて評価を行っているが、他部位に応用する場合にみ かけの拡散係数(ADC)の値は EPI DWI と異なる可能性があるため検討した。 【方法】使用装置は GE 社製の Signa HDxt 1.5T、コイルは HD 8ch NV Array Coil を使用した.ファントムには 数種類のヨード造影剤希釈液を充填し、①異なるb値(500、800、1000、1500)の組合せにおける ADC 値の 比較.②ファントム配置を変化させた時の ADC 値の比較.③ETL を変化させた時の ADC 値の変化.の 3 項目につ いて検討を行った。 【結果】Propeller DWI は EPI DWI と比較すると歪みの影響は少ないものの、Propeller 特有のストリークアー チファクトが ADC 値に影響を与えていた。その影響はファントム配置によっても変化を示した。ETL 数の調整 により若干の改善がみられた。 【考察】Propeller DWI を使用する場合は EPI との比較を行い、適切に使用する必要がある。本検討では readout の違い(TSE と EPI)による ADC 値への影響については評価しきれなかった。 19.拡散強調画像における MPG 印加方法の違いによる SNR 評価 秋田県立脳血管研究センター 沢木 未央 放射線科診療部 高橋 一広 豊嶋 英仁 【目的】拡散強調画像を得るには双極傾斜磁場(MPG)を印加する必要がある。従来の 3 軸印可方法に加えて,最 近では 4 軸印可方法が可能になった.今回、MPG の印加方法の違いによる SNR を評価しその有用性を検討し た。また、MPG は ADC 値と関係があるためその結果も評価した。 【方法】粘稠性のある自作ファントムおよび同意を得た健常ボランティアの頭部を対象とした。使用した MRI は SIEMENS Skyra 3T、32ch ヘッドコイルを使用した。シーケンスは 4 軸同時印加(4-scan trace 法)、3 軸同 時印加(3-scan trace 法)、Orthogonal 法の 3 法を使用した。TE は各シーケンスの最短 TE に設定し、その他撮 像条件は同一とした。ファントム画像では差分マップ法を使用し、健常ボランティアの頭部画像では視覚的に SNR を評価した。また、頭部画像から ADC 値の比較も行った。 【結果】SNR 評価では 4-scan trace 法が最も高く、最も低かった Orthogonal 法と比べ、約 40%高かった。同 じ 3 軸でも、Orthogonal 法より trace 法の方が TE も短く SNR が高かった。ADC 値はシーケンスによる有意 な差は認められなかった。 【考察】MPG の印可方法により TE が短縮したのは MPG パルスの大きさが起因する。また印加軸数の増加に より SNR が向上したと推察される。ADC 値に有意な差が認められなかったことから、4-scan trace 法は有用で あると判断した。 20.TSE 法における静音シーケンスの基礎検討 秋田県立脳血管研究センター 放射線科診療部 高橋一広 かづの厚生病院 川又 豊嶋英仁 沢木未央 渉 【目的】MRI 検査では傾斜磁場を高速で切り替えることによってコイルが振動し、その振動により発生する騒音 は撮像法によっては大音量となる。Siemens 社が提供する静音シーケンスである Quiet は、傾斜磁場の立ち上が りや切り替えを調整することで騒音を低減させることが可能である。今回、臨床利用を想定し、Quiet TSE 法 (qTSE)について基礎検討を行った。 【方法】装置は siemens MAGNETOM Skyra 3T、騒音測定器は MT 901 A。測定器をガントリ開口部から 3m、 高さを 1m 設置し、qTSE 法にてファントム撮像を行い、シーケンスが安定した時点の音圧レベルを測定した。 qTSE 法の撮像条件は echo spacing (ES)と実効 TE を可変として、TR=4000ms、ES/TE=(12.9/90)、①(14.2/85)、 ②(15.5/93)、 ③(19.4/97)、 ④(25.8/104)、 ⑤(49.9/105)、matrix=325×512、スライス厚=5mm、BW=140Hz、 TF=10。撮像断面は横断像とし、ファントムの空間分解能セクションを撮像した。また。研究に同意を得られた ボランティアを撮像し、特性を評価した。 【結果】qTSE 法は従来 TSE 法に比べて 70~90%程度の音圧レベルであった。ES を延長するほど音圧低減効 果が高く、空間分解能は低下した。ボランティア撮像の結果、眼窩内、表皮の脂肪の信号値が低下した。 【考察】条件①と②までは従来法と同程度の画質であり、臨床利用が可能であると考えられた。条件③、④、⑤ では分解能が低下した。ES の延長によるブラーリングが原因と考えられた。脂肪など T2 緩和の短い組織で影響 が大きく、臨床利用では注意を要することが示唆された。 セッション 6:放射線治療 21.当院で実施したリニアックの電子銃・ターゲット交換の報告 大館市立総合病院 木次谷 隆志 塩谷 弘一 小畑 学 工藤 淳 奥村 渉 【目的】当院では 2009 年にリニアックを更新し、昨年で稼働から 6 年が経過した。使用時間にもよるが、メー カーではおおよそ 5~6 年での電子銃・ターゲットの交換を推奨している。当院でも昨年末にリニアックの電子 銃・ターゲット交換を実施したので報告する。また、交換作業により放射化物(交換後のターゲット)が発生し たので、その対応についても報告する。 【方法】交換作業には 1 週間ほど要するため、なるべく治療を止めないよう予定を組んだ。また、放射化物を保 管廃棄できるよう、予め治療室内に専用のロッカーを準備した。 【結果】実際の作業では、電子銃・ターゲットの交換後、真空工事に 3 日ほど費やした。その後、ビーム調整や 線量校正を行い、治療を再開した。ビームデータの比較の結果、線質などに大きな相違は見られなかった。交換 後のターゲットは、線量率を測定した後、放射能を算出して記帳を行った。その後、専用のドラム缶に収納し、 保管廃棄設備に保管した。 【考察】劣化した電子銃・ターゲットの使用により、装置が故障すれば復旧にも相当の時間を要すると思われる。 予防交換という意味でも今回の作業は非常に重要なものとなった。また、発生した放射化物についても適切な対 応をとることができた。 22.当院における放射線治療部門情報システム(治療 RIS)の運用状況 市立秋田総合病院 放射線科 伊藤恵 鈴木智志 清水康司 田村博文 泉谷重明 【目的】当院では昨年2月より電子カルテと富士フィルム社製 RIS(F-RIS)を導入し、新システムの運用を開 始した。放射線治療装置と治療計画装置は平成 15 年度導入の装置であり、治療 RIS とのオンライン化は整備さ れていない。その環境でいかに治療 RIS 既存の機能と拡張機能を用いて、治療情報管理の改善や臨床現場での安 全性や業務効率の向上ができるかを図る。 【方法】従来のペーパー運用で行っていた業務から、治療 RIS の機能を用いた新システムへ移行するにあたり、 どのように治療情報管理の改善・治療の安全性・業務効率の向上ができるか検討した。 [結果]治療期間や治療計画変更日、照合実施日などのスケジュール管理を解りやすく表示できた。照合結果の記 録欄を設けた。線量分布やセットアップ、照合に必要な画像を登録することで実際の治療業務での支援が可能と なった。また、ビームデータの検証結果をファイル添付することができた。これらの治療情報は電子カルテから 容易に閲覧することが可能となった。 【考察】治療 RIS 機能の導入は、治療情報の集約化と共有化が可能であり、業務効率の向上に有用であった。 23.非物理ウェッジのガントリ角度やコリメータ角度の依存性の評価 市立秋田総合病院 放射線科 鈴木智志 清水康司 田村博文 伊藤恵 泉谷重明 【目的】当院で使用する非物理ウェッジ(Virtual Wedge)は、照射中に上絞りコリメータを照射野全体にわた り一定の速度で移動させ、その間、線量率を変化させることにより物理ウェッジと同等の線量分布が得られる。 IMRT などの MLC を移動させて照射する場合に、ガントリ角度による重力負荷の影響で MLC の位置精度が変 化することが報告されている。そこで今回、Virtual Wedge においてもガントリ角度やコリメータ角度の違いに よって、軸外線量の変化があるか検証した。 【方法】2次元半導体検出器 Profiler を専用の器具により照射ヘッドに固定し、ガントリ角度およびコリメータ 角度を変化させて線量プロファイルの測定を行い、ガントリ角度0度を基準とした線量変化量を算出した。 【結果】ガントリ角度とコリメータ角度における線量変化量の平均値は 0%とほぼ等しく最大値で 0.13%となり、 線量プロファイルの変化は僅かであった。 【考察】AAPM TG-142 では、非物理ウェッジの精度管理項目のなかの許容値として、平坦化領域内で軸外線量 比の変化が2%以内と定めているが、それと比較しても軸外線量の変化は小さかった。 24.当施設における前立腺癌に対する外部放射線治療 JA 秋田厚生連 菅原 康紘 〜固定4門照射から回転原体照射へ〜 由利組合総合病院 藤澤 幹寛 佐藤 仁志 放射線科 小林 大輔 竹林 龍亮 佐々木 真一 【目的】近年、前立腺への外部放射線治療は IMRT(強度変調放射線治療)や VMAT などの高度放射線治療が主流 になってきているが、当施設でも、直腸への照射線量の抑制と前立腺への線量集中性を目標として、2014 年 7 月より、前立腺癌に対する外部放射線治療の照射方法を、固定4門照射から回転原体照射へ変更した。固定4門 照射と回転原体照射の治療計画による線量の比較をし、前立腺への線量集中性の担保をしつつ、直腸線量をどの 程度、低減可能か検討する。 【方法】2014 年 7 月以前に前立腺癌(原発巣)への固定4門照射を施行した 11 名と 2014 年 7 月から 2015 年に回 転原体照射を施行した 24 名を比較対象とする。 回転原体照射と従来の固定4門照射の治療計画より DVH(Dose Volume Histogram)をから、GTV・CTV・ Rectum への照射線量を算出し、比較、検討する。 【結果】照射方法による各部位への照射線量の変化率は、GTV:0.88%、CTV:1.21%、Rectum:24.07%であ った。 【考察】従来の固定4門照射と比較して、回転原体照射では、前立腺(GTV・CTV)への線量の変化率は 1%程度 であることから、線量集中性は保たれているといえる。直腸への線量の変化率は 24%であることから、回転原 体照射を行うことで、24%の線量(約 1100cGy)を低減することが可能であるといえる。 【結語】前立腺への照射は、直腸(便)や膀胱(尿)の影響による位置精度が問題となるので、IGRT(画像誘導放射線 治療)、特に CBCT(Cone Beam Computed Tomography)で位置精度が担保されていることが必須条件ではある が、位置精度が担保されていれば、回転原体照射を行うことで、直腸への照射線量は低減可能であるといえる。 25.前立腺癌の放射線治療における CBCT の有用性の確認と検討 JA 秋田厚生連 由利組合総合病院 小林 大輔 藤澤 幹寛 放射線部 佐藤 仁志 菅原 康紘 竹林 龍亮 佐々木 真一 【目的】当院の放射線治療では原発巣の前立腺癌に対し回転原体照射を行う。照射の際には体表面のマーカーや 位置情報を確認しセットアップを行っているが、体内の状態は日々変化し特に膀胱内の尿量や腸管内の便・ガス がセットアップエラーの原因となる為 CBCT(Cone Beam Computed Tomography)を用いて位置の補正を行ってい る。CBCT を用いて得られた情報からどの程度の誤差があったかを見ることで CBCT の有用性を改めて確認する事 を目的とした。 【方法】当院で原発巣の前立腺癌に対し回転原体照射を行った患者を対象とし、CBCT により得られた画像と数値 から誤差の大きさや傾向を確認する。 【結果】CBCT により確認できた誤差は最大で vrt 方向で 2.4 ㎜、lng 方向で 1.6 ㎜、lat 方向で 0.9 ㎜であった。 また、vrt 方向で誤差が確認されたある患者では誤差の大きさは様々ではあるが、同一方向へ誤差が現れる傾向 が確認できた。 【考察】体表面のマーカーと位置情報を元に正しくセットアップを行ったとしても前立腺の位置には大きな誤差 が見られる事があり、位置の修正には CBCT を用いて確認する事が有用であると考える。また、ある患者では vrt 方向で一定の方向に誤差がでる傾向があり、前立腺直下の直腸内のガスが主な原因と思われる。位置の再現性を 保つには前処置を行うことが重要となるが、毎回ガス抜きの前処置を行うことが難しいのが現状としてあり今後 の課題としていきたい。CBCT を用いる事は治療を受ける患者はだけでなく、放射線治療を行う技師にとっても安 心して照射ができる重要な役割を担っていると考える。 セッション 7:CT 26.CT 画像における金属アーチファクト低減処理ソフトの物理評価 秋田県立リハビリテーション精神医療センター 柴田敏明 佐藤亜結子 放射線科 佐々木和子 菅原重喜 【目的】昨年、金属アーチファクト低減処理ソフト SEMAR のアーチファクト低減効果について視覚評価を行った。 今回は極値統計学を利用した評価法により撮影条件及び画像再構成条件が同処理に与える影響について検討し た。 【方法】白金ワイヤー(0.25×500mm)を 6mm×6mm に丸めて 23fr 内チューブに留置し、水中へ固定し脳動脈 瘤コイル模擬ファントムとした。管電圧、逐次近似応用再構成 AIDR3D を変化させて得られた画像及び低減処理 後の画像に対し、Gumbel 法を適用した。 【結果】SEMAR 無では管電圧が高値になるほど位置パラメータは低値となった。また AIDR3D を強くかけるほど 位置パラメータは低値となった。SEMAR 有では管電圧や AIDR3D の強弱による位置パラメータに変化はなかった。 【考察】SEMAR 無の管電圧による影響はビームハードニングのためと考えた。また AIDR3D による影響はストリ ークアーチファクト除去効果を示したものと考えた。SEMAR 有では位置パラメータに変化はなく、撮影条件及び 画像再構成条件を変化させた場合でもストリークアーチファクト低減効果を損なうことなく使用可能と考えた。 27.逐次近似応用再構成法(ASIR)搭載 16 列 CT 装置における低電圧撮影の基礎的検討 秋田厚生医療センター 齊藤 放射線部 仁 鈴木 一 小川秀晴 【目的】コントラスト改善や造影剤低減を目的とした低電圧撮影が近年研究されている。しかしこれらは、高出 力装置に限られている場合が多い。当院の 16 列 CT 装置で低電圧撮影(上腹部領域)が使用可能か、患者体重 を指標として検討した。 【方法】使用機器は、直径 20 ㎝の水ファントム。GE 社製 Bright Speed Elite Pro VISION, 最大管電流は 80kv, 100kv, 120kv でそれぞれ 400mA, 420mA,440mA である。 検討は、以下で行った。 ① 水ファントムを用いて、管電流を 50~350mA まで変化させ各管電圧の SD を求めた。また ASIR を 0 から 50%まで併用した SD も求めた。 ② 救急患者で来院し CT 検査を施行した 85 名(120kv 使用)の体重および臍レベルにおける Axial 面の mA (AEC, NI13, Smart mA and Auto mA 使用時)を求め、①で求めた SD 値から 80kv および 100kv が何 kg までの 患者に使用可能か検討した。 【結果】 ① 120kv の電圧に対して同等の SD を得るには、80kv は約 4 倍、 100kv は 1.5 倍程度の管電流が必要であった。 ASIR 併用時は、120kv, 193mA と 80kv+ASIR50%, 350mA が同等の SD 値であり、100kv は ASIR40%併 用で 120kv と同様の SD 傾向を示した。 ② 平均体重および平均管電流は、57.5 13.3kg, 155.3 77.2 mA であった。体重と mA の相関係数は r = 0.84 と高い相関であった。 ③ 臍レベルで 193mA を超えた人は、体重 50kg 以下は 0%、60kg 以下では 6%であった。 【考察】管電圧 80kv の場合, ASIR50%を併用することで上腹部撮影時、体重 50kg 程度までは、使用可能なこ とが示唆された。 28.頸部 CTA における造影剤注入レートの検討 秋田県立脳血管研究センター 中泉航哉 放射線科診療部 佐藤祐一郎 大村知巳 石田嵩人 豊嶋英仁 【目的】頸部 CT-Angiography(CTA)では撮影範囲が体軸方向に長く、当院における従来の造影剤注入レートで は撮影位置によって造影効果に差が生じる場合があると考えられたため造影剤注入レートを変更した。注入レー ト変更の前後における CT 値の変化について検討した。 【方法】変更前の造影剤注入レートは 4ml/s で注入時間は 10 秒である。変更後は注入開始後 5 秒間 4ml/s から 3ml/s までレートを落としつつ注入し、その後 3ml/s で 7 秒注入し注入時間は計 12 秒である。CT 装置は Aquilion ONE(東芝)を用いた。注入レートの変更前と変更後のそれぞれ 50 症例において大動脈弓・総頸動脈・内頚動 脈の CT 値を測定し比較検討した。 【結果、考察】今回測定した全症例において注入レート変更で有意な差は見られなかったが、体重 60kg 未満と 60kg 以上の2つのグループに分けて比較した結果、体重 60kg 以上のグループにおいて大動脈弓及び総頸動脈で の CT 値のバラつきが有意に低下した。また、注入レート変更後は変更前に比べて、体重によって分けた 2 グル ープ間の大動脈弓における CT 値の差が減少した。注入レートを低下させ注入時間を長くすることによって CT 値のバラつきが小さくなり、体重による影響を低下させることができた。 29.くも膜下出血における CT-Perfusion を用いた病態評価の試み 秋田県立脳血管研究センター 佐藤祐一郎 放射線科診療部 大村知巳 石田嵩人 中泉航哉 豊嶋英仁 【目的】くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage; SAH)発症時の患者状態を表す臨床的重症度評価は、手術適 用の有無や術後の予後予測などの判断指標として重要であり、意識レベルおよび神経症状を併せた、世界脳神経 外科連合による分類(WFNS 分類)が一般的である。今回我々は、SAH 発症時の頭部 CT-Perfusion(CTP)から得 られた灌流マップと重症度の関係性について検討した。 【方法】対象は SAH 発症時に CTP を施行した 17 例(男性 6 例、女性 11 例、平均年齢 62 歳、34~79 歳)。CTP で 得られた平均通過時間(mean transit time; MTT)から脳灌流圧(1/MTT)を得た。重症度は、WFNS 分類を用い て評価された情報を電子カルテより得た。検討は、脳灌流圧と WFNS 分類を比較・検討した。CT 装置は東芝 Aquilion ONE。 【結果】脳灌流圧が低下するにつれ、WFNS 分類で重症の傾向を示した。また、破裂動脈瘤の半球側では、健常側 と比較して脳灌流圧が低下する傾向となった。 【考察】結果より脳灌流圧と WFNS 分類との関係性が示された。CTP から得た MTT より脳灌流圧を予測しうる可能 性が示唆された。 30.3D Filter を使用したアンシャープマスク処理による 3D 画像の画質改善 平鹿総合病院 阿部 駿 【目的】血管3D 画像において末梢血管の描出能の改善のためにワークステーションの 3D Filter 機能と fusion 機能を組み合わせることでアンシャープマスク(以下 USM)処理を行うことができる。USM 処理により分解能が 向上するが、同時にノイズも増加する。今回、3D Filter を使用した USM 処理の最適な処理方法の検討を行っ た。 【方法】検討は Catphan700 を CT で撮影した画像を使用し、オリジナル画像、USM 画像、差分画像に3D Filter 処理(25%,50%,75%,100%)をした filterUMS 画像の MTF、SD、NPS の比較を行った。MTF は CTP682 モジュ ールからそれぞれの CT 値差(825,570,275,155,65HU)について円形エッジ法で算出した。SD、MTF は CTP712 モジュールから測定した。MTF、NPS は CT 画像計測 CTmeasure Ver0.96a(日本 CT 技術研究会)を使用した。 [結果]USM 処理を行うことで MTF10%が 15%向上し、SD が 48%上昇した。CT 値差による MTF 向上に大きな 差はみられなかった。filterUMS 画像では処理強度による MTF、SD、NPS に大きな差はなかったが、高周波領 域の SNR と MTF10%では 50%filterUMS 画像が最も高く、MTF10%が 11%向上と SD の 27%上昇であった。 [考察]3Dfilter を使った USM 処理は 3D 画像の画質向上に有用であった。しかし、Z 軸方向の画質評価を行って いないので継続して検討をしていきたい。
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