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2016/5/18
松本・長野・飯田支店
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する長野県内企業の意識調査
「減収減益」見通しが増加し、
「増収増益」に迫る
個人消費の低迷や中国経済の悪化に対する懸念が拡大
はじめに
帝国データバンクが今年1月にリリースした「2016 年の景気見通しに対する長野県内企業の意
識調査」によると、2016 年の景気見通しについて「回復」局面と見込む企業が 9.5%にとどまっ
たのに対し、
「悪化」局面が3倍近い 27.5%に達する一方、
「踊り場」局面が 38.7%で最も多くな
った。前年との比較では、「悪化」と「踊り場」が増加し、「回復」は減少、厳しい見方をする企
業が増加している。実際、国内景気は公共工事の減少が地域経済を悪化させる要因となっている
ほか、中国経済や資源国経済の低迷による金融市場の混乱で企業・消費マインドが萎縮するなど
全国的に停滞感を強めている。
こうした状況下にあって、各企業はどのような業績見通しを描いているのだろうか。帝国デー
タバンクでは今回、2016 年度の業績見通しに関する企業の見解について調査を実施した。調査期
間は3月 17 日~31 日で、調査対象は全国2万 3342 社、長野県 494 社。有効回答企業数は全国1
万 622 社(回答率 45.5%)
、長野県 229 社(同 46.4%)
。
調査結果(要旨)
■「増収増益」は 0.3 ポイント減、
「減収減益」は 5.0 ポイント増
2016 年度の業績見通しは、
「増収増益」が 24.9%、
「減収減益」が 23.6%、
「増収減益」
「減収増益」が各 5.3%だった。前回の 2015 年度見通しと比較すると、
「増収増益」が 0.3
ポイント減、
「増収減益」が 2.2 ポイント減、
「減収増益」が 3.1 ポイント減だったのに対
し、
「減収減益」は 5.0 ポイント増と前年度を上回っている。
■上振れ材料、下振れ材料ともトップは「個人消費」関連
業績見通しの上振れ材料として最も多かったのは「個人消費の回復」
(40.6%)
。一方、
下振れ材料の最多は「個人消費の一段の低迷」
(47.2%)だった。上振れ、下振れとも「個
人消費」関連がトップ。消費増税の最終判断にも関心が集まっている。
■アベノミクスへの評価は平均 59.9 点、1年前より 3.8 ポイント低下
安倍政権による経済政策(アベノミクス)への評価(100 点満点)は 59.9 点で、1年前
の 63.7 点から 3.8 ポイント低下した。前回 64.8 点だった「大企業」が 57.1 点、63.4 点だ
った「中小企業」が 60.3 点となり、下げ幅は「中小企業」より「大企業」の方が大きい。
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する長野県内企業の意識調査
1.
「中小企業」の「増収増益」は 23.4%、
「減収減益」は 25.0%
2016 年度(2016 年4月決算~2017 年3月決算)の業績見通し(売上高・経常利益ベース)につ
いて尋ねたところ、
「増収増益(見込み)
」が 24.9%(56 社)
、
「減収減益(見込み)
」が 23.6%(53
社)
、
「増収減益(見込み)
」と「減収増益(見込み)
」が各 5.3%(12 社)
。このほか、
「前年度並
み(見込み)
」が 21.8%(49 社)
、
「その他」が 19.1%(43 社)だった。前回調査の 2015 年度見
通しとの比較では、
「増収増益」が 0.3 ポイント減、
「増収減益」が 2.2 ポイント減、
「減収増益」
が 3.1 ポイント減と前年度を下回ったのに対し、
「減収減益」は 5.0 ポイント増と上回った。全体
としてみると、2016 年度の業績見通しは前年度より厳しさを増している。
「増収増益」と「減収減益」の構成比を規模別にみると、
「大企業」が「増収増益」39.4%、
「減
収減益」15.2%、
「中小企業」が「増収増益」23.4%、
「減収減益」25.0%、
「(中小企業のうち)
小規模企業」が「増収増益」24.1%、
「減収減益」25.9%。「増収増益」が「減収減益」を上回っ
たのは「大企業」だけである。また、主要業界別では「建設」が「増収増益」13.0%、
「減収減益」
30.4%、
「製造」が「増収増益」25..7%、
「減収減益」19.8%、
「卸売」が「増収増益」22.2%、
「減
収減益」27.8%、
「サービス」が「増収増益」45.8%、
「減収減益」12.5%。
「増収増益」と「減収
減益」の比率は業界間でバラ
ツキがみられる。規模・業種
とも、「増収増益」は広がり
を欠いている。
全国の調査結果は、「増収
増益」25.9%、
「増収減益」
5.8%、
「減収増益」5.6%、
「減収減益」 20.7 %など。
「増収増益」は全国が長野県
より 1.0 ポイント高く、
「減
収減益」は長野県が全国より
2.9 ポイント高かった。
2.下振れ材料は「個人消費の一段の低迷」
「中国経済の悪化」など
各企業は、2016 年度の業績見通しを上振れさせる材料、下振れさせる材料としてどんなことを
想定しているのだろうか。それぞれ複数回答で得られた結果は次頁の表の通り。上振れ材料とし
ては、
「個人消費の回復」が 40.6%で最多となり、以下、
「所得の増加」
「原油・素材価格の動向」
(各 25.8%)などの順。
一方、下振れ材料は「個人消費の一段の低迷」が 47.2%で最も多く、
「外需(中国経済の悪化)」
(41.0%)
、
「所得の減少」
(30.1%)などと続く。
「個人消費の一段の低迷」
「外需(中国経済の悪
化)
」
「所得の減少」はいずれも1年前から大幅に上昇。特に「外需(中国経済の悪化)
」は、昨年
秋に中国経済の減速が鮮明になったこともあり、
前回の 22.6%から 41.0%へ大幅に増加している。
このほか、「公共事業の減少」(25.8%)、「消費税率 10%への引き上げをにらんだ買い控え」
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する長野県内企業の意識調査
(25.3%)など今回新たに加わった項目を選択する企業も一定程度存在しており、下振れする懸
念が拡大しているだけでなく、下振れ材料自体が増加していることが窺える。
なお、上振れ材料としては「個人消費の回復」
、下振れ材料としては「個人消費の一段の低迷」
と、いずれも「個人消費」関連がトップとなった。
「所得」関連や「消費税」関連も上位に入って
いる。国内景気は、一昨年4月に消費税率が5%から8%へ引き上げられたのを機に停滞感が目
立つようになり、いまだにその影響が尾を引いている企業も少なくないと言われている。今回の
調査結果は、消費や所得が今後どう推移していくかによって業績が左右されると考えている企業
が多いことを示すとともに、来年4月に予定されている消費税率 10%への再引き上げに対する関
心の強さを物語っている。
引き上げられる場合は、上振れ材料の「消費税率 10%への引き上げを控えた駆け込み需要」
、下
振れ材料の「消費税率 10%への引き上げをにらんだ買い控え」が今以上にクローズアップされる
と予想される。現時点では、下振れ材料の「消費税率 10%への引き上げをにらんだ買い控え」
(25.3%)が上振れ材料の「消費税率 10%への引き上げを控えた駆け込み需要」
(17.0%)を上回
っているが、消費増税の最終判断は今年度以降の国内景気や企業業績に大きな影響を与えること
になる。
■2016年度業績見通しの上振れ材料(複数回答)
(%)
■2016年度業績見通しの下振れ材料(複数回答)
2016年度見通し 2015年度見通し
(2016年3月調査) (2015年3月調査)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
個人消費の回復
所得の増加
原油・素材価格の動向
公共事業の増加
外需(中国経済の成長)
外需(米国経済の成長)
↓
↑
消費税率10%への引き上げを控えた駆け込み需要
雇用の改善
外需(ASEAN諸国経済の成長)
物価下落(デフレ)からの脱却
為替動向
外需(欧州経済の成長)
株式市況の上昇
金融緩和(量的・質的緩和)
政策支援の充実
欧州債務危機の早期払拭
マイナス金利政策
消費税率8%への引き上げによる影響の収束
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
東日本大震災にともなう復興需要の増加
その他
↓
↓
↓
40.6
25.8
25.8
22.7
21.4
20.5
17.0
16.2
14.8
14.0
12.7
10.9
9.6
9.2
7.9
7.0
6.1
5.7
5.7
3.1
7.4
注:2016年3月調査の母数は有効回答企業229社。2015年3月調査は230社
49.6
27.0
28.3
25.2
11.7
19.1
—
14.3
15.2
9.6
17.4
8.7
15.7
9.1
13.0
7.0
—
11.7
—
4.8
3.9
(%)
2016年度見通し 2015年度見通し
(2016年3月調査) (2015年3月調査)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
個人消費の一段の低迷
↑
47.2
外需(中国経済の悪化)
↑
41.0
所得の減少
↑
30.1
原油・素材価格の動向
↓
26.2
公共事業の減少
25.8
外需(米国経済の悪化)
↑
25.3
消費税率10%への引き上げをにらんだ買い控え
25.3
人手不足
↓
20.5
外需(欧州経済の悪化)
↑
17.9
雇用の悪化
17.9
物価下落(デフレ)の進行
17.5
為替動向
↓
17.5
株式市況の下落
↑
16.2
外需(ASEAN諸国経済の悪化)
15.7
欧州債務危機の長期化
13.5
賃金相場の上昇
↓
13.1
消費税率8%への引き上げによる影響の長期化 ↓
11.8
自然災害やテロなどの不確実要因
7.4
マイナス金利政策
6.6
カントリーリスク(中東などの政治リスク)
5.2
政策支援の縮小・終了
↓
4.8
環太平洋パートナーシップ協定(TPP)
0.0
その他
3.9
注:2016年3月調査の母数は有効回答企業229社。2015年3月調査は230社
36.5
22.6
23.0
37.4
—
17.0
—
30.0
9.6
18.3
14.8
26.1
10.9
11.7
17.0
23.5
28.3
—
—
6.1
10.0
—
2.6
3.アベノミクスへの評価、1年前から 3.8 ポイント低下し 59.9 点
安倍政権による経済政策(アベノミクス)について、現在までの成果を 100 点満点で評価して
もらった。平均は 59.9 点となり、1年前の 63.7 点から 3.8 ポイント下降、60 点を下回った。こ
の間、景気は停滞感を増し、企業マインドも伸び悩んだことを背景に、各社の見方は厳しさを増
した。
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特別企画:2016 年度の業績見通しに関する長野県内企業の意識調査
規模別にみると、
「大企業」が 57.1 点、「中小企業」が 60.3 点、「小規模企業」が 57.4 点。前
回との比較では「大企業」が 7.7 ポイント減、
「中小企業」が 3.1 ポイント減。下げ幅は「大企業」
が「中小企業」を大きく上回り、評価点は「中小企業」の方が高くなった。主要業界別では、
「建
設」60.3 点(前回 62.2 点)
、
「製造」64.1
点(同 66.0 点)
、
「卸売」55.5 点(同 61.6
点)
、
「サービス」50.8 点(同 57.5 点)
。い
ずれも1年前よりも評価を下げている。
企業からは「これまでの政権とは異なる
積極的な政策を歓迎している」といった声
がある一方で、「経済政策も含め現政権は
信頼できない」といった指摘もあり、評価
は分かれた。
まとめ
中国経済の減速や原油安に伴う資源国経済の減速に加え、来年4月に予定されている消費税率
引き上げを前に、国内景気の先行きには不透明感が漂っている。今回の調査では、県内企業の
24.9%が「増収増益」を見込んでいるが、
「減収減益」を見込む企業も1年前を 5.0 ポイント上回
る 23.6%に達し「増収増益」に迫るなど、2016 年度業績に対する各社の見方は厳しさを増してい
ることが明らかとなった。特に、個人消費に対する懸念は強く、消費税率が8%に引き上げられ
て以降長期化している駆け込み需要の反動減とともに、収入の増加が難しい状況で 10%への引き
上げを前にした家計の支出抑制の影響を視野に入れている様子が窺える。
一方、安倍政権の経済政策(アベノミクス)に対する県内企業の評価点は、1年前から 3.8 ポ
イント下降して平均 59.9 点だった。これまで「回復は大企業が中心」と指摘されることが多かっ
たが、今回の調査ではその「大企業」で評価を下げ、
「中小企業」の点数を下回っており、政府の
経済政策に厳しい目を向ける「大企業」が増加していることも浮き彫りとなった。
2016 年度の企業業績については、個人消費や中国経済の動向、円相場の行方など懸念材料が多
く、政府は一層効果的な政策を打ち続けていかなければならないが、消費税率引き上げの最終判
断にも関心が集まっている。
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