透明導電性高分子による透明ショットキー接合 (電子デバイス・太陽電池)

■ キーワード
松木 伸行 准 教 授 ■ 工学部 ■ 電気電子情報工学科
π共役系高分子、ショットキー接合、透明ショットキー電極、太陽電池、ダイオード
電流を一方に流す整流作用を発現させるデバイス構造の一つとしてショットキー接
合があります。これまで、ショットキー接合は主に金属と半導体との接合によって
形成していました。ショットキー接合には光を照射すると光起電力を生ずるという
研究概要
性質もあります。シンプルな構造なので、低コストの太陽電池を作ることも可能で
す。しかし、これまでは光を反射してしまう金属電極が主に用いられてきたために
高効率の太陽電池が出来ないという欠点がありました。本研究による「透明導電性
高分子による透明ショットキー接合」は、透明で光を通すため、太陽電池の効率を
向上することができます。以上より、本研究は低コストで高効率の太陽電池を創製
できる要素技術となりえます。
透明導電性高分子Polyanilineとn型GaN(窒化ガリウム)の接合によって良
好なショットキー特性と、太陽電池特性が得られた
ポリアニリン膜
透明ショットキー電極
(1 ~ 2 mm角)
オーミック電極
サファイア基板
3
2
1
0
-1
-1
-2
Light
-3
-4
-5
-6
-7
Dark
-8
-9
-10
-11
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
Voltage (V)
Dark
Light
-1.0 -0.5 0.0 0.5 1.0
Voltage (V)
透明導電性高分子とGaN
の接合によるダイオード
の電流-電圧特性
0.14
0.14
0.12
0.12
0.10
0.10
0.08
0.08
0.06
0.06
0.04
0.04
0.02
0.00
0.0
0.02
0.2
0.4
0.6
Voltage (V)
Power density (mW/cm2)
5
4
Current density (mA/cm2)
6
Log {|current density| (A/cm2)}
Current density (mA/cm2)
透明導電性高分子(ポリアニリン)とGaNの接合
により作製した太陽電池の模式図
0.00
0.8
透明導電性高分子とGaN
の接合による太陽電池の
電流-電圧特性
2014年のノーベル物理学賞でも話題になった青色発光ダイオードの主要半導体であ
るGaN(窒化ガリウム)でショットキー接合デバイスを作るためには、真空中での
研究の
特徴・比較・
優位性
金属蒸着や特殊な表面前処理が必要でした。しかも、金属によるショットキー電極
は高温処理も必要であり、また金属であるため、光も通しませんでした。
これに対して、本研究のπ共役系高分子による透明ショットキー電極は、真空中で
はなく大気中で、比較的低温(100℃程度)での形成が可能で、光も通します。また、
マスクを通じたUV照射による高分子硬化と、水洗いによるエッチングで非常に簡
単にデバイスパターニングできるという特長もあります。そのため、低コスト・高
性能な(1)光センサー (2)太陽電池 (3)透明ダイオードといった応用デバイスを創製で
きるポテンシャルを有しています。
応用研究
透明導電性高分子による透明ショットキー接合
(電子デバイス・太陽電池)
基礎研究
応用研究
今 後 の 展 望
π共役系高分子原料は液体であり、また、紫外線照射によるデバイスパターニングも出
来ます。インクジェットによるデバイス形成が可能ですので、インクジェットプリンター
によるプリンタブルデバイスプロセスを適用することができます。また、低温で形成で
きるのでプラスチックなど熱に弱い基板も使うことができます。
応用としては、透明太陽電池・大面積フレキシブルデバイス・医療用デバイスなどが考
えられます。
また、基礎的な分野への適用として、半導体材料の欠陥評価に利用することもできます。
GaNやSiCなどのワイドギャップ半導体に対する透明なショットキー電極を形成すること
で、半導体中に光を導入しながら電気容量の測定が可能となります。このことにより、
半導体中の深い欠陥準位の密度を高感度に計測できるようになり新しい光電子デバイス
の開発の促進にも役立ちます。
I N F O R M A T I O N
著
書:N. Matsuki, Y. Nakano, Y. Irokawa, M.
Lozac’h, and Masatomo Sumiya, Transparent
MESSAGE
conducting polymer/nitride semiconductor
heterojunction solar cells, Solar Cells / Book 4 ,
(Ed. L. Kosyachenko), Chapter 14, pp.307-324,
publisher : InTECH, ISBN 979-953-307-193-9,
2011.
π共役系高分子と無機半導体のショットキー接合
によって、インクジェットプリンティングによる低コ
スト・フレキシブルな電子デバイス、太陽電池などを開
発・製品化できればと考えております。
学術論文:N. Matsuki, Y. Irokawa, Y. Nakano, M.
Sumiya, π-Conjugated polymer/GaN Schottky
solar cells, Solar Energy Materials and Solar
Cells , 95 , 1, 284-287, (2011).
特許:
1.ショットキー型接合素子とこれを用いた光
電変換素子及び太陽電池,松木伸行,色川
芳宏,伊高健治,鯉沼秀臣,角谷正友,国
際特許公開WO2010/110475(国際出願PCT/
JP2010/055574),2009.
2.ワイドギャップ半導体のバンドギャップ電
子物性の計測方法, 中野 由崇, 松木伸行,
色川 芳宏, 角谷 正友, 特開2011-82353
(特願
2009-233602), 2011.
問い合わせ先:産官学連携推進課 神奈川県横浜市神奈川区六角橋3-27-1 TEL:045-481-5661(代) [email protected]