豪ドル為替相場の動向と背景 - ニッセイ アセットマネジメント

2016年5月12日
投資情報室
オーストラリアレポート
オーストラリア経済とリート市場の動向について
豪ドル為替相場の動向と背景
 物価見通しの下方修正から豪州準備銀行(RBA)が利下げ、日銀の金融緩和策への失望感も豪ドル安の要因に。
 豪州経済は内需拡大により堅調、RBAは経済見通しを上方修正、今後は利下げによる景気刺激効果を注視。
 今後の豪ドル為替相場は、堅調な経済を背景に底堅い展開が期待される。
インドが追加利下げ 今年4回目
図1:豪ドル為替クロスレートの推移
年初来の豪ドル為替相場の動向
年初来の豪ドルの対円為替相場は、5月6日時点で
1 豪 ド ル = 78.91 円 と 2015 年 末 の 88.05 円 か ら -10.4 % の
豪ドル安円高となっています。
豪ドルの対円為替相場は、基軸通貨の米ドルを軸に
①豪ドル米ドルレートと②米ドル円レートの掛け算によって決
まるため、以下に①と②についてそれぞれ分析を行っています。
【豪ドル円レート】(=①×②)
90
(円)
豪ドル高
円安
88
86
84
82
80
①豪ドル米ドルレート:
豪ドルは対米ドルで底堅い動きも、利下げから反落
年初来、オーストラリアでは資源から非資源への転換が進む
など経済の底堅さを背景に、豪ドルに対する見直し買いの
動きが広がり、豪ドルの対米ドル相場は緩やかな豪ドル高
米ドル安傾向が続きました。
しかし、4月27日に基調インフレ率(2016年1-3月期)が
前年比+1.6%と大きく低下し、インフレ見通しの後退が示唆
されました。5月3日には豪州準備銀行(RBA)が1年ぶりに政
策金利を0.25%引き下げ過去最低の1.75%としたことから、
一転して豪ドル安米ドル高が進みました。
5月6日時点では1豪ドル=0.7366米ドルと年初来+0.7%の
豪ドル高米ドル安となっています。
76
2015/12
0.80
78.91
豪ドル安
円高
78
2016/1
2016/2
【①豪ドル米ドルレート】
(米ドル)
2016/4
(年/月)
4/27 基調インフレ率1.6%に低下
豪ドル高
米ドル安
0.78
2016/3
0.76
0.74
5/3 RBA、利下げ
0.7366
0.72
0.70
0.68
0.66
2015/12
豪ドル安
米ドル高
2016/1
2016/2
2016/3
2016/4
(年/月)
②米ドル円レート:
日銀への失望感から円高米ドル安が進む
年初来の米ドルの対円相場は、日銀のマイナス金利政策の
効果への不透明感に加えて、米国景気の先行き懸念などの
影響から米ドル安円高傾向となりました。
市場で追加緩和への期待が高まる中、4月28日の日銀の
(円)
124
120
米ドル安円高となっています。
米ドル高
円安
1/29 日銀、マイナス金利導入を決定
116
112
金融政策決定会合で金融政策の現状維持が決定されると、 108
失望から米ドル安円高がさらに進行しました。
5 月 6 日 時 点 で 1 米 ド ル = 107.12 円 と 年 初 来 -11.0 % の
【②米ドル円レート】
104
2015/12
107.12
米ドル安
円高 4/28 日銀、金融政策の現状維持を決定
2016/1
2016/2
2016/3
2016/4
(年/月)
(出所)ブルームバーグ、(期間)2015年12月31日~2016年5月6日
●当資料は、市場環境に関する情報の提供を目的として、レッグ・メイソン・アセット・マネジメントの情報を基に、ニッセイアセット
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えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料のグラフ・数値
等はあくまでも過去の実績であり、将来の投資収益を示唆あるいは保証するものではありません。また税金・手数料等を考慮し
ておりませんので、実質的な投資成果を示すものではありません。●当資料のいかなる内容も将来の市場環境の変動等を保
証するものではありません。
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(審査確認番号H28-TB31)
オーストラリアレポート
図2:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率
物価見通しの下方修正が利下げの主因
スティーブンスRBA総裁は5月3日の利下げについて、声明
文で「予想以上のインフレ圧力(物価上昇圧力)低下」を主
因として指摘しました(図2)。声明文では政策金利について
のガイダンス(方針)は示されませんでした。
当面は利下げの効果やインフレ動向を注視しながら金融政
策の様子見姿勢が続くものとみられますが、7月後半に公表
される4~6月期の消費者物価指数の結果によっては、もう
一段の利下げとなる可能性もあります。
ただし、レッグ・メイソン・アセット・マネジメントでは堅調な
経済状況等から利下げは最終局面に入りつつあると考えて
います。
5.0
(%)
豪州準備銀行の政策金利
(キャッシュ・レート)
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
インフレ目標
レンジ(2~3%)
1.75%
基調インフレ率
(前年比)
1.6%
1.0
オーストラリア経済は引き続き堅調
インフレ見通しの後退とは対照的に、経済成長は引き続き
拡大基調にあります。RBAは5月3日の利下げ決定後の
声明文において、労働市場は強弱が入り乱れているとしなが
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS)
(期間)基調インフレ率:2009年1-3月期~2016年1-3月期
政策金利:2009年1月1日~2016年5月5日
(注)基調インフレ率は消費者物価指数(CPI)のトリム平均値(平均値を算出する際、
データの最大値と最小値付近の値を計算から除外)と加重中央値の平均により
算出。
図3:RBAの経済見通し(実質GDP成長率)
ら、「資源投資ブーム後のリバランスが継続中」との従来通り
の景気判断が示されました。
またRBAは経済見通しでも、2016年(通年)の実質GDP
成長率の予想を2.5~3.5%へ上方修正しており(従来予想
は2.0~3.0%)、2018年半ばまでに成長率は3~4%に拡大
すると予想しています(図3)。
2016年
通年
2.5-3.5%
4-6月
10-12月
2.5-3.5%
2.5-3.5%
2017年
通年
2.5-3.5%
4-6月
10-12月
2.5-3.5%
2.5-3.5%
2018年
-
-
4-6月
3.0-4.0%
(出所)RBA、2016年5月6日時点 (注)単位:前年比
オーストラリアは人口増加に伴い、日米と比較しても安定
して消費が拡大しており、内需の成長が続いています(図4)。
今後は、利下げによる景気刺激効果が内需のさらなる拡大
図4:日米豪の小売売上高(前年同期比)比較
につながることが期待されます。
8%
豪ドル為替相場の見通し
当面はRBAによる政策金利の据え置きが続くものとみられま
すが、豪ドルの対米ドル相場は堅調な内需の拡大を背景に
底堅い動きとなると考えられます。
米ドル円相場については、今後は日米の金融政策の方向
性の違いが注目材料となると考えられます。
レッグ・メイソン傘下のウエスタン・アセットのオーストラリア拠点
では、今後6カ月の期間に、足元で進んだ米ドル安円高が修
正されることにより、豪ドルの対円相場は1豪ドル=85~87
円の水準まで豪ドル高円安が進むと考えています。
6%
オーストラリア
4%
2%
米国
0%
‐2%
日本
‐4%
2015/4
2015/7
2015/10
2016/1
(出所)ブルームバーグ (期間)2015年4月~2016年3月
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