グラジアンはよく知られているものの、 QCD の非摂 No.1 別紙第１号様式 動論的な特性のために相図の大部分は未だよくわか 博 っていない。そこで QCD 相図の解明は原子核物理 士 論 文 の 要 旨 では重要なテーマであり、素粒子物理や凝縮系物理 専攻名 システム創成科学専攻 氏 名（本籍） 牧山 隆洋 (長崎) 印 博士論文題名 「量子色力学的理論における相構造 の分野とも関連している。 QCD の 第 一 原 理 計 算 の 格 子 QCD(Lattice の研究」 Quantum Chromodynamics, LQCD)シミュレーシ （外国語の場合は，和訳を付記する。） ョンは符号問題のために有限温度 T と有限バリオン 化学ポテンシャルμB で破綻するので高密度の QCD 要旨 力学についての我々はほとんど理解できてないとい 初期宇宙の高温度や中性子星内部の高密度では物質 ってよい。 は日常の生活のそれとは全く違っている。このよう LQCD シミュレーションにアプローチする補完的 な特別な状況の物質を理解するためには微視的視点 なものとして有効モデルが考えられる。実際に高密 が必要である。 度の QCD 相図は主に有効モデルから解析されてき 原子核は陽子と中性子の束縛状態である。陽子や た。有効モデルには近似による不確かなところも大 中性子はクォーク 3 つから構成されており、クォー きいが、有限バリオン化学ポテンシャルμB を含む クは物質の最小単位、素粒子であると考えられてい 大きな範囲をカバーすることができる。 る。クォークには、自然界の 4 つの相互作用の全て Polyakov-loop が働く。そのうち強い相互作用の力学は量子色力学 (PNJL)モデルはカイラル対称性とカラーの閉じ込 (Quantum Chromodynamics, QCD)と呼ばれる力 めを同時に扱うことができるように考えられている 学であり、クォークの間にグルオンが飛ぶことで力 が、LQCD データを定量的に再現できるかどうかは が伝達され、クォークとグルオンの基本的理論とし まだ定かではない。 extended Nambu-Jona-Lasinio て記述される。QCD 真空はその非摂動論的な特性と この論文の目的は 2 つに分けられる。一つは、PNJL カラーの閉じ込めやカイラル対称性の自発的破れと モデルで、虚数アイソスピン化学ポテンシャルを導 いった興味のある特性などのためにかなり非自明で 入することによって Z3 対称性を保ち、より理想的な ある。カラーの閉じ込めとはクォークやグルオンな 状況のもとで QCD 物質の基本的な特性の一つであ どの色荷粒子が低エネルギーの QCD スペクトルで る閉じ込めについて研究することである。もう一つ は明確に現れない現象であり、ここではカラーがな は、2 カラーの LQCD シミュレーションを解析する い陽子や中性子やパイオン等の粒子が出てくる。カ ことにより、実数と虚数μB 領域の両方で 2 カラー イ ラ ル対 称性 の 自発 的破 れ はカ イラ ル 対称 性が QCD の相構造について研究し、また PNJL モデル QCD 真空で自発的に破れる現象である。これは質量 を用いて結果を解析することにより有効モデルの有 の起源であり、例えば、中性子の質量の 90%以上が 効性を確かめることである。 このメカニズムによっておこる。 強い相互作用は高エネルギーで弱くなり、QCD 物 質は高温度 T か高バリオン化学ポテンシャルμB で 相転移を持つと考えられている。T-μ B 平面での QCD の図は QCD 相図と呼ばれている。QCD のラ
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