鉄酸化物系構造体触媒の水性ガスシフト特性に及ぼす助

講演番号:B01(09:30~09:50)
講演題目:鉄酸化物系構造体触媒の水性ガスシフト特性に及ぼす助触媒の効果
わたなべ りょう
わたなべ しゅうへい
こ う の よし うみ
ふくはら ちょうじ
(静大院工)渡部 綾 ・渡辺 周 平・河野 芳海・福原 長寿
酸化鉄は,安価かつ身近な材料で磁性材,顔料など多くの実用材として利用されている。とくにア
ンモニア製造のための二重促進鉄(鉄-アルミナ-酸化カリウム)は,人類の生存を支えた触媒として
知られている。近年,この酸化鉄が魅力ある材料として再び注目され始めた。基本的に酸化鉄は鉄イ
オンと酸素イオンから構成されているが,この酸化鉄を触媒とするいくつかの反応系で最近酸素イ
オンが反応に関与することがわかってきた。具体的には,水素製造反応の一つである“水性ガスシフ
ト反応(一酸化炭素 + 水 ⇄ 二酸化炭素 + 水素)”において,一酸化炭素と酸化鉄中の酸素イオン
が反応することで二酸化炭素が生成し,消費された酸素イオンは水から復元するレドックス機構で
反応が進行することを我々は明らかにした。
ところで,酸化鉄は熱伝導率が低いといった特徴をもっている。この伝熱特性を改善することが
できれば,一酸化炭素と酸素イオンの反応性を高め,より効率的に反応を進めることが期待できる。
そこで本研究では,伝熱特性に優れたアルミニウム基板上に水熱合成法により酸化鉄を析出した構
造体触媒を開発し,水性ガスシフト反応に対する触媒特性を調査した。また酸化鉄中に,助触媒成分
を添加することで反応の作動温度域の低温化を図った。
得られた結果を以下に列挙する。
1)水熱合成法により調製した酸化鉄は,直径約 3μm の円盤状マイクロシートの特徴的な形状(図1)
をもっており,この円盤状マイクロシートは,鉄成分とアルミニウム成分から構成されるコンポ
ジット材料であった。アルミニウム成分が酸化鉄中に混ざることによって,マイクロシートがア
ルミニウム基板上に強固に密着した材料となった。
2)助触媒成分としてニッケルを酸化鉄に組み込んだ構造体触媒は,酸化鉄のみから構成される触媒
と比較して,反応選択性がやや低下するものの反応性が向上した。
3)ニッケルを酸化鉄に組み込んだ構造体触媒に,さらにカリウム成分を添加することで選択性や反
応性が大幅に向上し,カリウム担持量を最適化することで活性の大幅な低温化を達成した。図2
に,カリウム成分の担持量を最適化した触媒(K(1.0)/Ni-FeOx)とカリウム成分無担持の触媒(NiFeOx)の反応率の温度依存性を示す。Ni-FeOx 触媒に比べて K(1.0)/Ni-FeOx 触媒は優れた活性を示
し,最大で 75℃も低温化した。
今後は,酸化鉄中における酸素イオンの反応性への寄与や,伝熱促進が反応性に及ぼす影響につ
いて明らかにする予定である。本研究で開発した酸化鉄をベースとする触媒は,温故知新に繋がる
材料であり,資源的にも有利な触媒である。学術的・工業的にも重要な触媒材料と考えられる。本内
容は 5 月 23 日(月)から開催される石油学会第 59 回年会で発表される。
図1 アルミニウム基板上における酸化鉄の(a)表
面像および(b)拡大像
図2 カリウム添加が Ni-FeOx 触媒のシフト特性に及ぼす影響