2016 年 5 ⽉ 12 ⽇ 特定秘密に関する監視活動について NPO 法⼈情報公開クリアリングハウス 理事⻑ 三⽊ 由希⼦ 1 はじめに―⼆つの視点 ・ 特定秘密に関する監視活動をどのように⾏うか ・ 特定秘密の実態を効果的に把握できる仕組みと運⽤をどのように構築するか 2 特定秘密の指定と政府活動 ・ 秘密は政府活動や⽅針によって作成、取得・収集されるもの ⇒秘密であることの妥当性は、政府活動や判断の妥当性・適切性があって成⽴ ・ 特定秘密の指定が妥当かを「指定情報」だけで判断することは困難 ⇒どのような政府活動上の必要性があるのか、その活動が妥当・適切かという説明が必要 ・ ⾏政機関として、特定秘密の指定の妥当性を説明するためには、それに関する政府活動の 妥当性・適切性、必要性の説明が不可⽋ 3 監視をすべきと考えるポイント (1)特定秘密の指定と表⽰ ・ 「指定」「表⽰」とも⾏政機関の⻑が⾏う(特定秘密保護法第 3 条 1 項、2 項) ・ 保全責任者が特定秘密に指定された情報を含むと判断した⽂書等に「特定秘密」と表⽰す ることで、秘密が実体化(例 内閣官房特定秘密保護規程第 9 条) ・ 特定秘密として指定された「情報」の範囲の明確さだけでは、実体化した特定秘密の範囲の 妥当性が判断できない仕組み ・ 「表⽰」が適切な範囲でなされているかを監視するのは、特定秘密⽂書等の確認が不可⽋ ・ 監視の⽅法は、制度上作成される簿冊類と、独⽴公⽂書管理監の監視活動で取得される 情報の活⽤が必要ではないか 【作成される簿冊類】 ① 特定秘密の指定 ⇒特定秘密指定管理簿 ② 特定秘密と表⽰された⽂書等 ⇒特定秘密⽂書等管理簿 ③ 指定理由 ⇒ 指定理由点検記録簿 ④ 特定秘密の⾏政⽂書としての管理 ⇒特定⾏政⽂書ファイル等 1 (2)特定秘密の情報の性質への着⽬ ・ 技術的情報、収集した情報とそれを分析した情報、交渉や政策に関する情報、⼿段に関す る情報など、特定秘密の情報の性質は多様 ・ 情報が定型的なものであるものがあれば、その監視⽅法を確⽴すべき ・ 特に、衛星画像は画像そのものとその分析結果、技術情報などで、他の特定秘密と少なくと も区分して監視⽅法を確⽴することは可能ではないか (3)特定秘密の指定事項 ・ 政府報告書は、各特定秘密の主たる指定事項の数値を取りまとめている ・ 特定秘密指定管理簿からも明らかなとおり、指定は複数の事項・細⽬を適⽤させている ⇒特定秘密の指定は、情報を使う範囲ともいえる ・ どの範囲で⽤いられる情報であるか、その範囲が適切であるかという監視も必要ではないか 主たる事項・細⽬と副次的事項・細⽬(2014 年 12 ⽉末現在分) 事項・細⽬ 主 副 1 号イ a(a) 1 3 1 号イ a(b) 7 1 号イ a(c) 事項・細⽬ 主 副 2 号ハ a 1 48 6 2 号ハ b 9 5 25 7 2 号ハ c 0 59 1 号イ b 22 4 2 号ニ 52 14 1 号ロ a 17 36 2 号ホ 27 0 1 号ロ b 11 9 3 号イ a(b) 0 1 1 号ロ c 1 62 3 号イ a(c) 0 1 1 号ハ 5 60 3 号ロ a 2 54 1 号ニ a 3 4 3 号ロ b 2 6 1 号ニ b 10 2 3 号ロ c 0 63 1 号ニ c 2 3 3 号ハ 13 60 1 号ホ 0 2 3 号ニ 1 23 1 号ヘ 1 3 4 号イ a(a) 1 1 1 号ト 85 24 4 号イ a(b) 0 2 1 号チ a 54 0 4 号イ a(c) 0 1 1 号チ b 3 0 4 号ロ a 2 56 2 号イ a(a) 5 2 4 号ロ b 1 7 2 号イ a(b) 5 2 4 号ロ c 0 65 2 号イ a(c) 1 6 4 号ハ 0 75 2 号イ a(d) 0 4 4 号ニ 0 24 2 号イ b 10 2 382 807 2 号ロ b 3 1 合計 2 (4)特定秘密の指定期間 ・ 特定秘密の指定期間の判断 「特段の秘匿の必要性」の期間の判断 ・ 「特段の秘匿の必要性」については、具体的な判断基準がないので特定秘密の指定の実態、 政府活動の状況に照らした審査が必要 (5)制度上予定されているものの活⽤ 1)独⽴公⽂書管理監の監視活動の活⽤ 2)⾏政機関の⾏う点検等の活⽤ ①指定理由 ・ 特定秘密の指定理由を年 1 回以上⾏う(例 内閣官房特定秘密保護規程 14 条) ②定期検査・臨時検査(例 内閣官房特定秘密保護規程 41 条) ・ 特定秘密管理者は年 2 回以上の定期検査の実施義務。必要に応じて、臨時検査を実施 ・ 検査は、「特定秘密⽂書等管理簿の記録と実際に保管されている特定秘密等を突合する ほか、この規程に規定された措置が確実に講じられているか否かの確認を中⼼に⾏うものす る」 ・ 保全責任者等が⽉ 1 回保管状況の検査を⾏い、異常の有無を確認 ⇒特定秘密⽂書等 ⽉末点検簿に記載(「内閣衛星情報センターにおける特定秘密の保護について」) ※点検簿記載事項 前回の保管数、接受、作成、複製、秘密区分変更、交付、廃棄、指定の解除、有 効期間満了、点検⽉中の増減、保管数、登録番号等の付与 4 効果的に特定秘密の実態を把握するための改善 (1)特定秘密指定管理簿 ・ 解除する場合の条件は、特定秘密指定書記載の「指定理由」(指定管理簿には未記載) で記載することとなっている ・ 解除条件が⽰されている場合は、指定管理簿への記載が必要ではないか (2)特定秘密に関する定期点検等 ・ 点検項⽬、内容の精査が必要 ・ 各⾏政機関の⾏政⽂書管理規則に基づく点検・監査の実施内容は相当にばらつきがある (3)特定秘密を含む⽂書等の保存期間と廃棄について ・ 特定秘密としての寿命と、⾏政⽂書としての寿命が異なることは避けられない ・ 特定秘密情報を含む⽂書、特定秘密だった情報を含む⽂書を含む⾏政⽂書ファイルの廃 棄審査の問題 3 ・ ⾏政⽂書の廃棄は、内閣総理⼤⾂の同意が必要(実際の審査は内閣府公⽂書管理 課)。廃棄対象の⾏政⽂書ファイルリストが内閣府に送付される ・ ⼀⽅、統⼀基準では「特定秘密⾏政⽂書ファイル等」が独⽴公⽂書管理監に提出(どの ⾏政⽂書ファイルに特定秘密情報が含まれているかが管理可能) ・ 現状の基準だと、内閣府公⽂書管理課の受け取る廃棄リストで廃棄審査 ・ 独⽴公⽂書管理監が、特定秘密情報を含む、あるいは含んでいた⾏政⽂書ファイル等の廃 棄の審査を⾏うべきではないか(責任の所在を明確化) 5 参考 ・ 情報公開・個⼈情報保護審査会は、国家安全保障会議の議事録等のインカメラ審理を実 施(4 ⼤⾂会合のものをインカメラで確認したかは不明) 4
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