平成28年05月12日発表の平成28年度病害虫発生予報第02号(PDF

平成28年度
病害虫発生予報
第2号
平成28年5月12日
千葉県農林総合研究センター長
Ⅰ 向こう 1 か月間の予報
発生量及び発生時期は平年との比較で表す。また,予報の根拠の(+)は多発要因,(-)は少発要因で
あることを示している。
作
物
名
病害虫名
いもち病
(葉いも
ち)
予想
発生量
並
イネミズゾ やや多
ウムシ
イ ネ
イネドロオ やや多
イムシ
イネクロカ やや多
メムシ
スクミリン やや多
ゴガイ
(ジャンボ
タニシ)
つる枯病
並
予報の根拠
育苗期発生量:並〔発生なし〕
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(+)
防除上の注意事項
・ ほ場においた補植用取り置き
苗は,発生源となりやすいの
で,早めに処分する。
5月上旬発生量:並
・ 移植 10 日後ごろに成虫数が
5月上旬雑草地すくい取り量:多
2~3株に1頭以上の場合,あ
(+)
るいは移植 10 日後以降に成虫
2月越冬量:やや多(+)
が多飛来したときにも,薬剤防
除する。
5月上旬発生量:並
・ 5月中旬ごろの成虫数が 10
5月上旬雑草地すくい取り量:や
株に2頭以上の場合,又は5月
や多(+)
下旬ごろの卵塊数が1株に1卵
気象予報:降水量並か多(+)
塊以上の場合には,薬剤防除す
る。
昨年の発生量:やや多(+)
・ 発生の多い場合には,成虫飛
2月越冬量:やや多(+)
来期の5月中旬~6月に薬剤防
除する。
5月上旬発生量:並
・ 水田取水口にネットや金網を
気象予報:気温高(+)
設置する(網目は5mm 以下が
望ましい)。
・ 貝,卵塊とも地域ぐるみで捕
殺する。
・ 移植後2週間程度は水深をで
きるだけ浅くし,被害が目立つ
ときは薬剤防除する。
5月上旬発生量:並〔発生なし〕 ・ ほ場の排水をよくする。
気象予報:気温高(+)
・ 多湿を防ぐため,トンネルの
降水量並か多(+)
換気を十分行う。
スイカ
アブラムシ
類
やや多
5月上旬発生量:多(+)
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(-)
ハダニ類
やや多
5月上旬発生量:やや多(+)
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(-)
1
・ 薬剤散布は葉裏まで十分かか
るよう,ていねいに行う。
・ 繁殖が早く,短期間で高密度
となるため,防除適期を逃さず
早期防除する。
作
物
名
病害虫名
黒星病
予想
発生量
並
ナ シ
温州ミカン
やや多
ハマキムシ
類
やや多
そうか病
やや多
ミカンハダ
ニ
やや多
カミキリム
シ類
並
カメムシ類
やや多
4月下旬発生量:並
気象予報:降水量並か多(+)
4月下旬発生量:多(+)
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(-)
4月下旬発生量:やや多(+)
4月フェロモントラップ誘殺数
:多(+)
気象予報:気温高(+)
4月下旬発生量:並
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(+)
4月下旬発生量:多(+)
気象予報:気温高(+)
降水量並か多(-)
4月下旬発生量:並
ビワ
アブラムシ
類
予報の根拠
果樹共通
越冬成虫数:やや多(+)
5月桜樹払い落とし調査:並
4月フェロモントラップ誘殺数
:並
気象予報:気温高(+)
2
防除上の注意事項
・ 罹病した葉や果実は,伝染源
となるので除去する。
・ 繁殖が早く,短期間で高密度
となるため,防除適期を逃さず
早期防除する。
・ 防除暦に従って薬剤防除す
る。
・ 罹病した枝葉は,伝染源とな
るので除去する。
・ 今後の薬剤による防除適期
は,落花直後と梅雨期である。
・ 今後の発生動向に注意し,発
生の多いほ場(寄生葉率 30%
以上)では薬剤防除する。
・ 食入した幼虫が虫糞を押し出
している孔を見つけたら,その
孔から針金等を差し込んで刺殺
する。
・ 園芸用キンチョールEでの薬
剤防除は収穫7日前までか,収
穫後に行う。
・ P3 これから注意を要する
病害虫を参照。
Ⅱ これから注意を要する病害虫
果樹を加害するカメムシ類の発生について(写真を見る)
県内で果樹を加害する果樹カメムシ類は,チャバネアオカメムシを主体として,ツヤアオカメムシ,
クサギカメムシも発生する。3種とも成虫で越冬し,5月中旬頃から6月にかけて収穫時期となるビ
ワをはじめ,ナシ,カンキツ等で問題となる。
今年1月に県内 51 地点のチャバネアオカメムシの越冬量を調査したところ,12 地点で越冬が確認
され,越冬個体数は 0.64 頭/㎡(平年値 0.68 頭/㎡)であり,過去 11 年中3番目のやや多い越冬
量であった(図1)。
4.0
1200
越冬量
発生面積(ナシ)
越
冬
量 2.0
600
頭
1.0
発生面積( )
ha
900
( )
3.0
300
0.0
0
2006
2009
2012
2015
図1 チャバネアオカメムシ越冬量とナシ園での発生面積
県内 10 か所に設置しているチャバネアオカメムシ集合フェロモントラップの誘殺数は,4月第5
半旬から増加しており,5月第1半旬には 4.21 頭(平年値 3.03 頭)で,過去 11 年中2番目に多か
った(図2)。
館山市に設置した果樹予察灯への初飛来は4月第4半旬と早く,5月第2半旬は平年の 7.14 倍誘
殺された(図3)。
また,5月第2半旬に安房地区で調査した桜樹での払い落とし調査では,果樹カメムシ類捕獲数は
1網当たり 1.44 頭(平年値 2.45 頭)と平年並であった。しかし,館山市の袋掛けの遅いビワほ場で
は4月中旬に吸汁被害が認められるなど,園内への侵入飛来が早まっていると予想される。
果樹カメムシ類は, 今後夜温が上昇するとさらに活動が活発になり,ビワ等の果実に被害が発生す
ることが懸念されるので注意が必要である。
15.0
3.0
本年値
1
日 12.0
当
た 9.0
り
誘
6.0
殺
数
3.0
頭
本年値
1
日
当
2.0
た
り
誘
殺 1.0
数
平年値
前年値
平年値
( )
( )
頭
0.0
4.01
0.0
4.04
5.01
4.01
5.04
4.04
5.01
5.04
6.01
月・半旬
月・半旬
図3 予察灯での果樹カメムシ類誘殺数の推移(館山市)
図2 フェロモントラップでの誘殺数
3
防除対策
1 果樹カメムシ類は,各種樹木の果実等を移動しながら吸汁しており,果樹園への飛来状況は地域
や園により異なるので,園内をこまめに見回り,飛来を確認したら早急に薬剤防除を行う。
2 露地ビワは5月下旬より収穫期に入るため,収穫前日数に注意して薬剤防除を行う。
3 ナシでは早急に多目的防災網(9㎜クロス入り)を展張する。
4 カンキツの開花時期に飛来が認められた場合は,表を参考に薬剤防除する。
5 合成ピレスロイド剤はカメムシ類に対して高い効果があるが,天敵類に及ぼす影響も大きく,カ
イガラムシ類やハダニ類がかえって増加しやすくなるので,使用回数はできるだけ抑える。
表 各作物に適用のあるカメムシ類の主な防除薬剤
作物
名
IRAC の
作用機構
薬 剤 名
希釈倍数
使用時期/使用回数
分類
テルスター水和剤
ビワ
3A
4A
1B
ナシ
3A
1,000~2,000 倍
収穫前日まで/2回
テルスターフロアブル
3,000 倍
ロディー水和剤
2,000 倍
収穫前日まで/4回
アドマイヤーフロアブル
2,000 倍
収穫7日前まで/2回
スタークル/アルバリン顆粒水溶剤
2,000 倍
収穫前日まで/2回
スプラサイド水和剤(無袋栽培)
1,500 倍
スプラサイド水和剤(有袋栽培)
マブリック水和剤 20
2,000 倍
収穫 21 日前まで/2回
収穫7日前まで/3回
収穫 30 日前まで/2回
カンキツ
テルスターフロアブル
3,000~6,000 倍
収穫前日まで/2回
4A
モスピラン顆粒水溶剤
2,000~4,000 倍
収穫前日まで/3回
3A
テルスター水和剤
1,000~2,000 倍 収穫前日まで/3回
アドマイヤーフロアブル
2,000~5,000 倍 収穫 14 日前まで/3回
4A
スタークル/アルバリン顆粒水溶剤
2,000 倍
収穫前日まで/3回
1)農薬使用時には最新の登録内容を十分に確認すること。
2)IRAC(殺虫剤抵抗性対策委員会)による殺虫剤作用機構分類は次のとおりである。
1B:有機リン系
3A:ピレスロイド系
4A:ネオニコチノイド系
4
参考資料
○主要病害虫の発生状況
巡回調査結果 (水稲:4月中旬~5月上旬,スイカ:5月上旬,果樹:4月下旬)
作物名
(調査地域)
イネ
(県内全域)
病害虫名
いもち病
籾枯細菌病
苗立枯病
ばか苗病
イネヒメハモグリバエ
イネミズゾウムシ
イネゾウムシ
イネドロオイムシ
スイカ
(山武・印旛)
ナシ
(県内全域)
温州ミカン
(安房)
ビワ
(安房)
果樹共通
(安房)
スクミリンゴガイ
イネミズゾウムシ
イネドロオイムシ
つる枯病
アブラムシ類
ハダニ類
ウリハムシ
黒星病
赤星病
ハマキムシ類
ハダニ類
アブラムシ類
そうか病
かいよう病
ヤノネカイガラムシ
ミカンハダニ
ミカンハモグリガ
灰斑病
アブラムシ類
カミキリムシ類
果樹カメムシ類
調査項目
苗の発病度
苗の発病度
苗の発病度
苗の発病度
被害株率(%)
成虫寄生株率(%)
被害株率(%)
成虫寄生株率(%)
被害株率(%)
成幼虫蛹寄生株率(%)
被害株率(%)
貝密度(/㎡)
雑草地すくい取り成虫数
雑草地すくい取り成虫数
発病葉率(%)
成幼虫寄生葉率(%)
雌成虫寄生葉率(%)
25株当たり寄生成虫数
発病葉率(%)
発病果率(%)
発病葉率(%)
被害葉率(%)
雌成虫寄生葉率(%)
成幼虫寄生新梢率(%)
発病度
発病度
成幼虫寄生葉率(%)
雌成虫寄生葉率(%)
幼虫寄生葉率(%)
発病葉率(%)
成幼虫寄生葉率(%)
被害穴数
桜樹払い落とし虫数
(1網あたり捕獲成虫数)
本年値
0.00
0.01
0.10
0.05
0.16
1.16
2.56
0.07
0.00
0.00
0.00
0.11
1.07
0.58
0.00
1.00
0.60
0.00
0.00
0.09
0.00
0.25
0.00
4.96
0.04
0.00
0.20
28.20
0.00
2.75
0.00
0.25
調査結果
平年値
0.00
0.03
0.17
0.05
0.23
1.04
2.28
0.06
0.02
0.16
0.05
0.09
0.13
0.26
0.00
0.48
0.08
0.02
0.00
0.14
0.05
0.03
0.00
0.92
0.02
0.00
0.10
3.50
0.00
2.43
0.10
0.70
前年値
0.00
0.07
0.00
0.00
0.00
3.17
3.99
0.23
0.00
0.15
0.00
0.00
0.27
1.38
0.00
0.60
0.00
0.00
0.00
0.14
0.00
0.05
0.00
0.63
0.04
0.00
0.20
3.60
0.00
0.00
0.00
1.25
1.44
2.45
0.82
本年値
4.7
1.3
0.0
0.0
0.0
1.0
81.7
19.4
0.0
3.8
0.0
23.2
0.0
78.0
44.9
22.5
1.9
0.3
4.7
調査結果
平年値
0.5
0.2
0.0
0.2
0.2
0.2
41.1
16.0
0.6
4.9
1.5
36.2
0.0
13.5
12.3
22.2
0.5
0.9
10.4
トラップ月間誘殺数(4月)
種類
水稲予察灯
果樹予察灯
性フェロモン
チャバネアオカ
メムシ集合フェ
ロモン
病害虫名
イネミズゾウムシ
イネヨトウ
ニカメイガ
チャバネアオカメムシ
クサギカメムシ
ツヤアオカメムシ
コナガ
ハスモンヨトウ
シロイチモジヨトウ
オオタバコガ
タバコガ
ナシヒメシンクイ
モモシンクイガ
チャハマキ
チャノコカクモンハマキ
チャバネアオカメムシ
ツヤアオカメムシ
クサギカメムシ
マルボシヒラタヤドリバエ
備考
単位:頭/1 か月当たり
トラップ設置場所
千葉,香取,安房
安房
海匝
県内全域
県内全域
県内全域
県内全域
東葛,印旛,香取
東葛,印旛,香取
印旛,香取
印旛,香取
県内全域
県内全域
県内全域
県内全域
5
前年値
2.3
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
110.0
19.6
0.0
2.7
0.4
20.0
0.0
25.3
11.0
23.3
0.4
0.9
12.8
備考
○気象予報
5月5日気象庁地球環境・海洋部発表
関東甲信地方における向こう1か月間の確率(%)
20
(℃)
低い・少ない
平年並
向こう1か月間の各気象要素の平年値
(銚子地方気象台資料)
要
素
気
温
10
30
60
気
温(℃)
降 水 量
20
40
40
日照時間
40
40
20
平均気温
100
(mm)
高い・多い
要
素
銚子
館山
18.9
17.4
18.7
降 水 量(mm)
116.6
133.0
154.3
日照時間(hr)
171.9
180.8
175.5
降水量
100
15
75
75
10
50
50
5
25
25
0
0
2下 3上 3中 3下 4上 4中 4下
千葉
(hr)
日照時間
0
2下 3上 3中 3下 4上 4中 4下
2下 3上 3中 3下 4上 4中 4下
本年値
前年値
平年値
過去2か月の気象概況(千葉)
◎農薬は適正に使用しましょう。無登録農薬の使用はできません。
● 農薬は,農薬取締法に基づいて,使用できる農作物の種類,適用病害虫,希釈倍数,
収穫前日数,総使用回数などが定められています。
● 登録番号のない薬剤は,農薬として使用できません。登録農薬には必ず登録番号が記
載されています(記載例 農林水産省登録第○○○号)。
● 農薬はラベルをよく読んで適正に使用しましょう。
● 飛散させないように工夫して散布しましょう。
● 農薬を散布したら必ず記帳するようにしましょう。
● タンクやホースは洗いもれがないようきれいに洗っておきましょう。
・病害虫発生予察情報はインターネットでもご覧いただけます。
http://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/boujo/
・次回の発行予定は6月9日です。なお,注意報等の臨時情報は,逐次発行されます。
・薬剤の選定については、最新の農薬登録情報を確認してください。
http://www.acis.famic.go.jp/searchF/vtllm000.html
問い合わせ先
農林総合研究センター病害虫防除課
〒266-0006 千葉市緑区大膳野町 808
TEL 043(291)6077 FAX 043(226)9107
e-mail [email protected]
6