第6章 電源回路の部屋

第 6 章 電源回路の部屋
バーチャル・スタジオ 26
ただし,r 1:コアの内径[m],r 2:コアの外径
[m],
t :コアの厚さ[m],μ:コアの透磁率,
N:
もったいない! 使い古しの乾電池
でも LED を明るく点灯する回路
● キーパーツ「コイル」の作り方
図 1 に示すのは,発振しながら入力電圧を昇圧する
電源回路です.使い古しの電池でも LED がパッと明
るく点灯します.宝石泥棒( jewel thief)の Jewel(ジ
joule
ュウェル)と joule
( ジュール)を掛けて,ジ ュール・
thief
シーフ回路と呼ばれています.
キーパーツはトランスです.私はリング状のトロイ
ダル・コアにエナメル線を手巻きして作りました
(写
真 1)
.トロイダル・コアを使うと,磁束の漏れの少
ない特性の良いトランスを作れます.インダクタンス
L [H]は次式で求まります.
N2
r2
μtℓn
2π
r1
(1)
F
(KRV)
IC
ILED
巻き数を 1/ 㲋2 にすると,インダクタンスが半分に
なります.
● バーチャル実験! 発振のようすを見てみる
付録 CD−ROM 関連記事 No.1−032
L=
コイルの巻き数[回]
LTspice で図 1 の回路を動かしてみましょう.
シンボル・ライブラリで diode を選んで回路図に置
きます.このダイオードを右クリックして,[Pick
New Diode]−[NSPW500BS]を選びます.
コイルはシンボル・ライブラリから ind2 を選びま
す.丸印がついているので巻き線の向きはわかります.
L 1 と L 2 をトランスとして動かすには,結合係数 K を
定 義 す る 必 要 が あ り ま す.SPICE Directive で「k1
L1 L2 0.999」と入力してから配置してください.
シミュレータ上の発振回路は,きっかけを与えない
と起動しないことが多いので,電源
(V CC )に信号源モ
デルの PWL を使って,1 μs 後に 1.2 V に変化するよう
にしました.内部抵抗は 1 Ωです.
図 2 に実験結果を示します.回路はバッチリ発振し
ています.LED 両端に 3.6 V 以上の電圧が加わってい
て 電 流 が 流 れ て い ま す. 図 2
(c)か ら, 回 路 は 約
700 kHz で発振しています.
● 図 1 の回路のふるまい
図 3 に示すのは,図 1の回路の時間範囲を 2μ∼ 6 μs
に狭めて再表示したものです.
白色LED
コイル
LED
VLED
IB
写真 1 トロイダ
ル・コアに線材を
巻いて手作りした
トランス
.tran 0.1m
図 1 勝手に発振して LED を点灯し続ける昇圧電源
4.5
120
3.5
80
40
10
ゲイン[dB]
160
電圧
[V]
電流
[mA]
電源が 0.6 V まで低下しても動作し続ける
2.5
1.5
0.5
0
0
10
20
時間
[μs]
(a)LED(D1)
に流れる電流
30
−0.5
0
10
20
時間
[μs]
30
(b)LED に加わる電圧(順方向)
700kHz
−10
−30
−50
−70
100k
1M
周波数[Hz]
(c)LED に加わる電圧[図(b)]のスペクトラム
図 2 図 1 の LED に流れる電流,電圧の波形とスペクトラム
(c)
のスペクトラムから発振周波数は約 700 kHz とわかる
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2016 年 4 月号