平成28年度大津市消費生活審議会第2回会議概要(PDF:644.1KB)

平成27年度 大津市消費生活審議会(第2回)会議結果
1
開
会
事務局
只今から、平成27年度大津市消費生活審議会・第2回会議を開会します。
開会にあたり、大津市の市民部長がご挨拶を申し上げます。
市民部長
ここ数年、犯罪の認知件数は減少傾向にありますが、消費生活に深刻な影響を及ぼす特殊詐欺被
害は相変わらず高止まりしており、今後も社会環境や経済情勢がめまぐるしく変化する中で市民生
活の不安要因はますます増大し、安全で安心な日常生活を維持していくことは市にとって喫緊の課
題となっております。
こうした消費者を取り巻く環境にあって、本審議会では「大津市における消費者教育のあり方」
の検討を始めて頂いており、すでに消費者への情報発信のあり方や学校における消費者教育の必要
性、消費者の声を事業者に届ける消費者団体の育成などについて言及してもらっております。
今は、消費者自身に自立と正しい選択、正しい判断の力を身につけてもらうことが求められてお
り、私ども地方自治体にもあらゆる機会を通して消費者に必要な情報の提供と学習機会の確保がな
されるよう求められ、体系的で計画的な消費者教育の推進のための方針が必要と考えているところ
であります。
つきましては、是非とも本審議会としての「消費者教育のあり方」を取りまとめていただきたく、
限られた時間の中ではありますが、中身の濃いご審議を賜るようお願い申し上げます。
事務局
それでは、ここからは大津市消費生活条例施行規則の規定により、進行を会長にお願いします。
2
議
事
中田会長
それでは、議事に入る前に出席者の確認を行います。委員10名のうち9名の出席があり、
「大津
市消費生活条例施行規則」の規定により、本日の会議開催に必要な委員数を満たしていることを確
認しました。
次に、本日の会議は「大津市附属機関等の設置及び運営に関する指針」に基づき、公開で開催す
ることとなっております。審議結果については、会議終了後、速やかに会議録等が一般に公表され
ますので、各委員はその旨了解願います。
中田会長
早速、議事に入りますが、前回会議に引き続き、大津市における消費者教育推進のあり方につい
て審議を行います。最初に前回会議で出された各委員の意見の整理と内容の確認を行います。事務
局からの説明をお願いします。
事務局
- 1 -
ご用意しました資料に基づき、前回会議の各委員からのご意見を整理して報告します。
前回会議のご意見は、その内容から大きく5つの項目に分けさせていただきました。個々のご意
見についての説明と確認は割愛させて頂きますが、委員の発言意図と異なる部分や補足の説明が必
要であれば最後にお願いして、まずはおおよその説明を行います。
まず、一つ目について、
「消費者教育推進に向けた情報発信のあり方」に関するご意見でありま
すが、これについては、現状、大津市が行う情報発信は「誰に対して」
「どんな情報を届けたいのか」
がわかりにくく、その情報発信の手法にもまだまだ一考の余地があるというものでした。
特に高齢者の特殊詐欺被害などが多いことから、発信する情報がその分野に偏っていないか、講
座や啓発活動の成果や効果を事後評価し、その結果を次の行動に反映できているか、また、体系的
で計画的な情報発信のあり方を検討する必要があるのではないかといった意見が出されました。
次に、
「消費者教育推進に向けた学校教育のあり方」についてですが、本市においては、学校にお
ける消費者教育の推進に向けた積極的な働きかけが出来ていないのではないかというが前提の下で、
子ども達の発達や成長の段階に応じた消費者教育のあり方を検討する必要があるとご意見や、学校
や教育委員会などの関係部署との連携の必要性や義務教育以降の大学生等に対しての消費者教育が
必要であるなどのご意見が出されました。
次に、
「家庭や地域社会との連携」について、学校における消費者教育とともに家庭における親や
祖父母による日常生活の中での消費者教育の必要性や、超高齢化社会に入り地域内での見守りや世
代間交流を通じての消費者意識の高揚を図る必要性も指摘されました。
次に、
「消費者教育を進める上での事業者との連携」について、一部の悪質事業者の存在によって
消費者からの信頼を失うことやそのことでマーケットが縮小してしまうことを事業者側にも理解し
てもらい、業界内部での自主規制や相互監視の制度整備なども消費者教育の一環として検討するこ
とが必要との意見が出され、そのための事業者を対象とした学習機会の創造も必要との指摘があり
ました。
次に、消費者教育を推進していく上で、
「地域に密着した適格消費者団体のような消費者団体の育
成が必要」との指摘がありました。こうした団体は、消費者の声を代弁し、行動できる団体として、
地域における消費者意識の高揚に大きな影響を与えるものであり、そのために必要とされています。
また、消費者団体には、消費者や行政だけが参加するのではなく、事業者の参画も求めていくべき
とのご意見もありました。
最後に、本市における消費者教育の推進に向けてこの審議会が果たす役割について、具体的な「消
費者教育推進計画」などは行政が策定すべきものとしながらも、審議会として各委員の立場と見識
を活かして意見を出し、大津市の消費者教育推進に向けての基本的な考え方や方向性はしっかりと
示していこうとのご意見が出され、この点では皆さんの合意が得られ、その過程で「外部有識者」
の意見も取り入れる必要があるとして審議会内に「専門部会」設置のご提案もありましたが、これ
については条例改正などが必要なこともあって難しいと事務局から申し上げたところでした。
以上、事務局からの報告であります。
中田会長
それでは、只今の事務局のまとめに関して各委員の方から修正や補足があればお願いします。
中田会長
ないようであれば、先に各委員にお願いしておりました今後の消費者教育の推進に向けた議論の
参考となるような、各組織、団体における取り組み事例や将来に向けての具体的な行動提案、構想
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などを順にご紹介いただきたいと思います。
本日は、滋賀県消費生活センターの所長も出席されていますので、まずは、県が現在策定作業を
進めておられます「第3次・滋賀県消費者基本計画」についてお話をして頂きたいと思いますがよ
ろしいでしょうか。
大橋委員
それでは、現在、滋賀県県民活動生活課において進められております「第3次・滋賀県消費者基
本計画」の策定作業について報告します。
資料として用意したものは、昨年12月にパブリック・コメントが実施された時のもので、現在
は、その結果も取りまとめが済んでおり、今後、県議会への説明を経て、県消費生活審議会に諮っ
て正式な計画となる予定です。
この計画は、滋賀県の「消費者基本計画」であると同時に「消費者教育推進計画」でもあると定
義されており、今日はその中の消費者教育推進の部分についてご説明をさせて頂きます。
まず、この計画の中では、第2章の2の(6)において消費者教育の状況についてまとめられて
います。基本的には、
「消費者教育推進法」の基本方針に則ってその推進の方向性が示されており、
県としては広域的な観点から市町村の支援や市町村間の格差を埋める役割を担うとしております。
滋賀県における消費者教育の現状については、この計画の改訂作業に先立って平成26年度から
県内の学校や公民館、
事業所などを対象に実態調査を実施しており、
その結果を取りまとめました。
幼稚園においては、環境に配慮した暮らしや遊具の安全・安心な利用などを通じて、小・中・高校・
特別支援学校においては、平成23年度から平成25年度に完全実施された「新学習指導要領」に
基づきそれが実施されております。
大学・専修学校に関しましては、特に専修学校での実施率が低いことが明らかになり、事業所に
おいては、従業員に対する消費者教育を行っていない事業所が半数以上もありましたが、従業員3
00人以上の事業所では約6割が実施していることもわかっています。
消費者教育に取り組むために必要な支援については、実践事例の紹介や教材提供などのニーズが
高かったです。
こうした状況を踏まえ、どのようにして施策推進をしていくのかについては、第4章で3つの基
本方針を定め、このうちの基本方針Ⅱ「自ら考え行動する消費者になるための支援」が消費者教育
の推進に該当する箇所となり、消費者が消費生活に関する正しい知識を習得し、適切な行動に結び
つけるための実践的能力を身につけるために、そのライフステージや消費者の特性に応じた消費者
教育を推進することとしています。また、消費者教育の推進にあたっては、消費者の自立支援と消
費者市民社会の形成を基本的な考え方とし、消費者が消費生活に関する知識を習得し、適切な消費
行動に結びつける能力と態度を身に付けることができるよう、また、持続可能な社会の実現のため
に消費者が消費行動を通じて、よりよい暮らし、よりよい社会の形成に主体的に参画し、発展に寄
与できるよう積極的に支援するとしております。
具体的な施策としては、重点施策として「消費生活情報の発信・啓発」と「消費者教育・学習の
推進」を掲げており、「消費者教育・学習の推進」に関しては、さら踏み込んで3つに区分し、「消
費者教育・学習の機会拡大と体系的な消費者教育の推進」に関しては、誰もがどこに住んでいても
生涯を通じて成長の各段階に応じた消費者教育を様々な場で受けることができるよう、その機会を
提供し、体系的教育を効果的に推進することとしております。特に、これに関しては、消費者教育
を始める時期が重要と考えており、
「スマートフォンを持ち始める年齢層」と「高齢期」にポイント
をおいて取り組んでいきたいと考えております。
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それと2つ目として、
「消費者教育の担い手の育成と支援」に関して、消費者教育を進めていく上
でその担い手となる人材が重要となっており、人材育成の拠点として消費生活センターを位置付け
ております。
最後、3つ目として「消費者市民社会の構築に向けた機運づくり」に関しては、その機運を盛り
上げていくことが重要と考えております。
パブリック・コメントで様々なご意見を頂戴し、今後、多少の変更はありますが、概ねこのよう
な内容の計画です。
中田会長
ありがとうございました。
只今の県の消費者基本計画、または、これから我々がまとめていこうとする大津市の消費者教育
推進のあり方や方向性のベースになる「消費者教育推進法」について、ここで私の方から少し説明
をさせてもらいたいと思います。
まず準備いたしました資料2「消費者教育推進法の概要」をご覧下さい。
この法律は、
「消費者基本法」に基づき制定された法律であり、行政が消費者被害を防止するとと
もに消費者の望ましい消費生活を実現するにあたって、消費者啓発や消費者教育においてどのよう
な役割を果たすべきかを定めたものであります。この法律の上位法が「消費者基本法」であります
が、この法律は平成16年までは「消費者保護基本法」という名前でありました。しかし、消費者
を「保護する客体」として捉えるのではなく、消費者はマーケットにおいて商品の良し悪しを判断
し、良い商品を購入することでマーケットにメッセージを送る「自立した主体」でなければならな
いという考え方がとられ、この法律名が変わりました。このことによって消費者は、賢い消費者と
位置付けられ、マーケットの中での消費者の役割が示されました。消費者として、我々の資本主義
社会を推進して行くという役割を担うことになったのです。もちろん、高齢者や未成年者といった
社会的弱者は保護されなければなりませんが、この時から消費者施策の中に明確に市場原理という
ものが取り入れられたのです。
よって、
「消費者基本法」では、消費者の自立を支援していくために消費者の権利保護について規
定がおかれています。そこには、かつてケネディ大統領が提唱したところの消費者の権利(①安全
を求める権利、②知らされる権利、③商品を選ぶ権利、④意見を聞いてもらう権利)や、さらにそ
の後のフォード大統領が付加したしたところの「教育を受ける権利」があげられています。この「教
育を受ける権利」は、法第17条において具体化され、消費者が消費生活に関する教育を受けられ
るよう国及び地方自治体はそのための施策を講じなければならないとされています。これは、消費
者が正しい判断をするための前提として正しい情報が提供されていなければならず、事業者が適正
な情報を提供することで消費者はそれを信頼しその商品やサービスを選択でき、これによって、自
立した行動や合理的な消費活動が可能となるとされたのです。
また、消費者が安全に暮らしていくためには、危険な物や製品の正しい用法・用途などに関する
情報も提供されなければなりません。こうした情報は、子どもから高齢者まで、それぞれのライフ
ステージに応じて必要な段階で適切な情報が提供されなければならず、それゆえ、消費者教育の総
合的・一体的推進が重要となるのです。
消費者教育は、市場に参加する消費者を育て鍛えていくわけでありますから、これらは当然のこ
とであり、これが消費者教育の体系化といわれるものであります。
では、そうした消費者教育を具体的施策として実現するのは誰かというと、当然、これは常に消
費者と密接な関係を持つ地方自治体であり、各地方自治体が果たす役割は大変重要になります。各
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地方自治体は、子どもから高齢者まで、非常に幅広い範囲にわたって情報を提供し、啓発活動を行
い、消費者教育を展開する教育システムの構築を求められることになるのです。なお、ここでいう
地方自治体とは、広い意味での行政組織を意味しており、各組織の中で「消費者行政の担当」、「教
育行政の担当」、
「福祉行政の担当」などと分かれており、これらが常に連携して消費者教育を推進
していくことが必要となります。
では、なぜ今こうしたことが求められるのかというと、それには2つの側面があります。その1
つは、先ほど説明した市場の健全化を図っていくためには、そこにおいて消費者に求められる役割
をきちんと果たしてもらうことが重要だからです。
そして、もう1つの側面は、不正行為や犯罪行為によって失われる消費者の財産を守るというこ
とです。消費者の判断能力には限界があって、そうした限界につけ込んで行われる悪質な商売や詐
欺などの不正行為、犯罪行為は、健全な市場に対しての消費者の不安や不信を増大させることにな
り、結果、そこに莫大なコストがかかってしまうので、これを阻止することが求められます。
消費者市民社会という言葉が使われることがありますが、これを定義するのはたいへん難しいの
ですが、この考え方は、消費者が、環境への配慮なども含め、社会形成に深く関与していることを
意識して意思決定をしていくことは、よりよい事業者を育てることにもつながるというものです。
その1つの手段が消費者教育なのです。賢い消費者は、法令を遵守し良質廉価な商品を提供する
事業者、社会的責任・社会的貢献をしっかり果す事業者、環境にやさしく平和を意識した事業者、
社会的弱者やマイノリティに配慮する事業者を育てていくことができるのです。こうした見方は、
われわれの消費生活において大きな役割を果しているのは事業者だという認識が基礎にあります。
いずれにせよ、事業者と消費者がお互いに高めあっていく仕組みを作っていくためには、消費者は
しっかりと事業者を選別・選択し、必要なことは事業者に要求し、良い事業者だけが生き残ってい
くように働き掛けていかなければならないのです。
では、現状の消費者教育においてどのようなことが可能でしょうか。従来からのやり方では限界
もあるように思えます。確かに、高度成長期の大量生産・大量消費の結果、多くの消費者被害が発
生し、それによって被害防止と被害者救済の目的で多くの団体や専門家によって消費者教育が実践
されるようになり、この「消費者教育推進法」の概要を見てもそれらの取り組みの成果が数多く残
されていることがわかります。
しかし、これまでの消費者教育は被害防止とその救済に主眼がおかれていたことから、
「トラブル
に巻き込まれないようにする」、
「安易に契約しない」
、「トラブルに巻き込まれたら消費生活センタ
ーや弁護士に相談する」などといった予防的・消極的なものが中心でありました。もちろん、これ
らを否定するものではありませんが、もう少し違う観点でも消費者の権利を実現していくような情
報提供をしていく必要もあるのではないかと考えています。それがこれから皆で考えていくべき課
題でもあります。
今は、これ以上の具体的な内容に踏み込む時間はありませんが、消費者教育というものが非常に
重視され認識されてきたというのがこの間の動向であり、それが「消費者基本法」や「消費者教育
推進法」の整備などにも現れていることを指摘しておきたいと思います。しかし、実際に法律がで
きてもこれらを具体的に推進していかなければ意味がないので、先にもお話したように、まず20
04年に「消費者基本法」において消費者教育というものがきちんと位置付けられ、その後、20
09年に「消費者安全法」などの消費者庁関連三法が成立し消費者庁ができ、そこで消費生活に関
する教育活動というものが明確に位置付けられて「あらゆる機会を利用して全国における推進体制
の強化を図る」とした付帯決議が付けられましたことは認識しておきましょう。
そして、2010年の「消費者基本計画」の中で消費者教育を体系的・総合的に推進することが
- 5 -
謳われ、学習指導要領の中にも消費者教育や法教育といった部分での取り組みが明記されて消費者
教育を重視した記載が教科書の中にも見て取れるようになりました。また、消費者教育推進委員会
なども設置されて、その審議の過程が消費者庁のホームページなどでも公表されています。
そして、今日お話している「消費者教育推進法」が2012年に施行され、2013年には、
「消
費者教育に関する基本的な方針」が閣議決定され、消費者教育を積極的に推進していく意志が明確
に表されたところであります。先に説明のあった滋賀県における「消費者基本計画」の見直し作業
もこうした流れの中で行われているものであって、大津市においても何ができるのかということが
問われているのも、これらの動きに基づくものであります。なお、行政以外でも日弁連などにおい
ても活発な啓発活動などの動きがあり、これについては、後ほど黒田副会長からお話が伺えると思
います。
こうした流れの中で、私たちがこれから何をしていくべきなのかというということについて、抽
象的ですが、その流れを整理しておきます。今までの「騙されない」という教育から少しシフトし
て、まず1つ目は、
「消費者の権利の実現」に向け、消費者の生活の安定と向上を図るために、消費
者自身に消費に関する基礎的・基本的な知識と技能を修得してもらい、これらを活用して消費者被
害の危機を自ら回避し、将来を見通した生活設計を行う能力及び課題を解決する実践的な問題解決
能力を育んでもらうということです。
2つ目として、自己の利益だけを求めるのではなく、他者や社会との関わりにおいて意思決定を
し、より良い社会を形成する主体として、経済活動においても倫理観をもって責任ある行動を取っ
てもらえるようになることが指摘されております。
そして、3つ目として、
「消費」が「持続可能な社会を実現するため」の重要な要素として認識さ
れ、消費者が「持続可能な社会を実現するため」にライフスタイルなども工夫し、主体的に行動で
きるようになってもらうことが重要とされ、そのためには、生涯学習の機会の提供や学校、地域、
職域などとも十分に連携をとっていくことが大事だとされているのであります。つまり、消費者被
害の現状にどのように対処するかの観点だけではなく、消費者自身の利益の擁護と社会全体の利益
の推進のために自主的かつ合理的に行動する、こうした消費者の自立を支援するための教育が重視
されるようになってきたのです。
したがって、そうした消費者の主体的な行動を支えるために、どういった情報を提供していけば
いいのかが問われており、従来の消費者教育のままでいいということにはならないのです。
ただし、実践的な問題解決能力を学ぶといってもそれは大変なことで、消費者の権利が実現され
るためには、消費者の権利意識を高めることが必要となり、それをサポートしていく体制も必要に
なってくるのです。これが消費者団体の育成というところにつながっていき、行政や司法はそうし
た消費者の「訴え」をきちっと受け止め、社会の中に実現するというところが重要になってまいり
ます。また、こうした消費者市民社会という考え方においては、環境に配慮した消費者行動も注視
していく必要があり、こうした環境問題をどう考えていくのかも今後検討していかなければならな
いと考えております。
消費者教育の全体像をどのように見ていくのかに関しては、消費者のライフステージに合わせた
消費者教育というものが必要になります。本日の資料としても配布されている消費者教育のライフ
ステージごとの推進マップのようなものも参考にしていただければと思います。
以上、今日の話はやや抽象的なものですが、先ほど説明のあった県の計画見直しなどは、まさに
これを具体的取組みに広げていこうとするものであり、県の方針などを市町レベルにどう反映して
いくのか、また、この審議会の構成メンバーである各団体等との相互連携をどのように図っていけ
るかを今後検討していきたいと考えております。
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中田会長
それでは、この後は、各委員からのご意見や県の計画、私へのご質問も含め、自由にご発言をお
願いします。
まず、黒田副会長にご発言をお願いします。
黒田委員
それでは、まず、2009年に日弁連が出した「消費者被害のない安全で公正な社会を実現する
ための宣言」についてでありますが、現代社会においては、消費者の役割が非常に重要になってき
ていることから、消費者に対して「批判的意識を持つこと」、
「主張し行動すること」、「貧困者など
の社会的弱者に配慮すること」、
「環境に配慮すること」、「連帯すること」が呼びかけられており、
これについて日弁連として具体的に政策提言していくと宣言したものであります。
次に、私からは滋賀弁護士会の消費者教育の状況について報告をさせて頂きます。
弁護士が消費者教育に出向いているところとしては、大津市消費生活センターが行っている消費
者向けの法律講座にはこれまでからずっと協力してきており、当初の啓発的な内容から最近では消
費者関連法の具体的内容にまでバージョンアップしてきております。参加者も民生委員などを中心
に継続的に受講されている方も多いように承知しております。また、滋賀県消費生活センターとの
合同事業として県立高校などにも出向いており、消費生活相談員が同行して合同授業なども行って
います。
また、滋賀弁護士会は、特に法教育に力を入れており、3年計画の今年がその3年目にあたりま
すが、県内の中・高・養護学校で年間100コマの授業をさせてもらっています。今年も94コマ
の授業を行っており、ほぼ目標を達成しています。学校側からの要望としては、3割程度が消費者
問題、特にインターネットの利用やトラブルに関する内容となっています。
その他にも、滋賀県消費生活センターが主催する各市町の消費生活相談員向けの専門研修なども
担当しており、この研修では「事業者サイドの権利」にも配慮したかたちでの解釈を示しており、
視点の多様性という点では大きな特徴にもなっております。これによって、県内の消費生活相談員
の対応能力は他に比べて向上しているのではないかと感じております。
他にも、様々なイベントにおける啓発や最近はその相談件数が減少しつつありますが、自治体職
員向けの多重債務の研修なども行っており、社会福祉協議会が主催する民生委員向けの専門講座や
市民講座などでも、主に高齢者被害の話を中心に出前講座などを行っております。
ここからは、滋賀弁護士会としてではなく、私の私的な意見として発言させて頂くが、前回会議
でも話題になった、被害が集中している高齢者トラブルばかりに啓発の機会が集中しがちであるが、
あらためて「20歳問題」などの深刻な問題がまだまだ存在していることにも留意頂きたいという
ことである。
この「20歳問題」というは、20歳になると消費者金融などから、学生証や身分証等で簡単に
50万円から150万円の金が借りられてしまうというもので、こうした現実を狙って実体のない
契約やマルチ商法などの話を持ち掛けられて若者が被害に巻き込まれてしまうというものでありま
す。近年は、スマホの契約をし、それを売却してしまうなどといった問題も多発しています。こう
いう学生や就職して間もない若者たちへの啓発ができていないと思うのです。
私たち弁護士は、こうした問題に対し法的視点から啓発や被害救済に取り組んでおり、違法性を
明確に明示して対処できるのが弁護士の強みでもありますが、一般的な啓発活動や消費者教育が行
われる場合には、ともすると、非常に禁止的、抑止的なものになりがちで、
「やめましょう」、
「注意
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しましょう」という言い方で終わってしまっているということが多いと思います。
また、もう一つの問題として「単発性」ということがあると思います。
出前授業や講演・講座などでは消費者にインパクトを与えることがメインになりがちで、いわゆ
る消費者の権利である分析や批判などの本質を教える機会になっていないのではないかと感じてい
ます。
では、どうすればいいのかということになりますが、まずは、
「20歳問題」のような若者を対象
とした問題の啓発・教育の機会をもっと作っていくことが喫緊の課題だと思います。
賢い消費者教育のメニュー支援としては、消費者教育推進法に基づいた継続的なメニューを実践
していくべきだと考え、ここでは事業者と協力してやっていけたらよいのではないかと考えます。
真の消費者教育という点では、発達の段階に応じた学習機会の創造として、高校に比べてまだま
だ中学校教育には穴があるようにも感じています。消費者の権利である「批判」や「商品等に関す
る分析力」などは、やはり義務教育の段階でしっかりと教育すべきだと思います。ただし、これを
誰が教えるのかという問題は残りますが、主体的行動がとれる消費者を育てるということは法的ト
レーニングがこの段階でできていなければならないと考えています。
「消費者問題における批判的視点」を説明することは難しいという話も先にありましたが、テレ
ビCMで「スムーズな毎日」、「使われた方は実感」というメッセージが流れ、同時にウォーキング
する高齢者の姿が映像として映ると、人はそのメッセージと映像に勝手に因果関係を持たせてイメ
ージを作り出してしまいます。これが「映像の省略法」といわれるものですが、こうした状況にお
いて、これは事業者が作成したCMだと認識して冷静にその内容を分析・判断できるかどうかが「批
判的視点」ということもできます。
私からは以上であります。
中田会長
ありがとうございました
では、続いて村田(省)委員にご発言をお願いします。
村田(省)委員
前回の会議を欠席しましたので、議論に参加させて頂くだけの準備が十分にできておりませんが、
これまでのお話を聞いて、あらためて消費者教育の必要性や重要性を感じており、こうしたことが
安全、安心な社会づくりにつながっていくのだと考えているところであります。
そうした中で、特に、黒田副会長から「賢い消費者教育のメニュー支援として、継続的なメニュ
ーの実践をやっていくべきで、事業者と協力してやっていけたらいいのではないか」とのご発言が
ありましたが、まったくそのとおりで、この点はしっかり実現していきたいと思っております。
ただ、本当に消費者教育に関心を持ってもらわなければいけない方々になかなか関心を持っても
らえていないということが、実は一番大きな問題のようにも感じており。関心をお持ちの方は、放
っておいても自ら望んで必要な情報を集め、学習され判断もされるわけで、いかに関心のない方々
に関心を持たせるかが最も重要であると考えるところです。
以上でございます。
中田会長
ありがとうございました。
続いて沼井委員にご発言をお願いします。
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沼井委員
私は公募でこの審議会に参加しておりますことから、どこかの団体等に所属しているわけではご
ざいませんが、大学に勤務しておりますことから、自分の勤務する大学と言うことではありません
が、一般的な大学における現状として考えを述べさせて頂きます。
毎年、かなりの数の学生が入学をしてくる訳でありますが、そこで必ず出てくるのが、
「カルトに
注意しよう」、「マルチ商法に気をつけよう」などと言った話で、かなりしつこく学生に対して注意
を促しますが、数ヶ月すると必ず悪質商法の被害などにあった学生が出てまいります。
こうした場合、最初に表面化するのは、加害者側の実態ではなく被害者側の学生本人やその父兄
からの相談として大学に情報が入ってきます。これは、客観的に見れば「悪いことしている」と判
断されることであっても、やっている当事者に「悪いことをしている」といった認識が非常に薄く、
その点がこの問題の深刻さだということもできます。こうしたことは、様々な機会や場を通じてこ
れまでも啓発してきましたし、今後も行っていく訳でありますが、こうした努力を続けていてもこ
の状況が劇的に改善されるかというとそれは非常に微妙な情況にあります。
では、学生たちにどのようにして消費生活に関する正しい知識を学ばせ理解させればよいのか、
いかにして効果的に今の情況を改善していけばいいのかと考えますと、それは、授業として学生た
ちに学ばせ、試験をし、それによって「単位」を与えるということになると思います。こうしたこ
とを行えば、学生たちは、知識として消費者としての正しい行動や判断の方法を学びます。
しかしながら、近年、文部科学省がいうところの「単位の実質化・厳格化」という流れには、も
しかすると逆行するものであるかも知れないため、大学あるいは高等学校にこうしたことを取り入
れてほしいよとお願いしてもなかなか簡単に受け入れられるとは思われません。
よって、こうしたことに大津市として先進的に取り組むことができれば、これはまさに「大津市
モデル」として全国的にも注目されることになると思います。
これに関連して申し上げると、本日配布された広報誌「ぽけっと」に掲載されているような事例
に巻き込まれそうな情況に陥ったとき、こうした広報誌等によって消費者情報を目にするとそれを
参考にその対処法や問題解決の手段を考えることもあると思いますが、普段こうしたものを手にし
てもなかなかその内容が印象に残ることは稀で、どうすればこうした貴重な情報を消費者に強く印
象付けられるのか。これまでも市や県はいい取り組みを続けてきているのに、その効果が十分に得
られていないのはなぜなのかと考え、まだまだ啓発、消費者教育の進め方に検討の余地が残ってい
るのではないかと考えるのであります。
前回会議でも「PDCAサイクル」の話をさせてもらいましたが、新しい取り組みを始めること
はもちろん大切ですが、その一方で、これまで取り組んできたものをいかに効果的に有効活用して
いくかを見直し、そこに足りないものがあればその時に新しいものを加えていくとすることの方が、
コストパフォーマンスにおいても一番効果的ではないのかと考えます。
さらに、もう一点、
「賢い消費者を育てる」と言うことは非常に重要な考えでありますが、実際の
教育現場においては、単に事例・事実だけを伝えていくのであれば短時間で済むことであっても、
「賢い消費者」
「自ら考えて行動する消費者」を育てていくとなると、恐らく、その何倍もの時間と
手間をかけなければならないと考えます。消費者教育の持つ真の意義は、なかなか当事者にでもな
らない限り実感することが難しく、これを今の学校現場に浸透させることは非常に困難な課題であ
ると思います。
これまでも何度も申し上げてきましたが、まずは、いかに消費者に「当事者意識」を持たせるよ
うな取り組みができるか。そして、それと平行してこれまでやってきた取り組みの評価を行うこと
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が重要でないかと考えます。
最後になりますが、批判的に物事を見ようとする姿勢は、消費者問題に限らず、非常に重要なこ
とだと思います。教育現場にこうした考え方を浸透させていこうとすることには大いに期待をする
ところであります。
中田会長
ありがとうございました
義務教育以降は、消費者法レベルのものを教育カリキュラムに取り入れることは十分可能である
と思います。単位化することに関しても大学で教鞭をとっている立場から言えばそんなに難しいこ
とでもないように思います。
確かに、いくら啓発活動を行っても消費者被害や消費者問題は無くならないことは事実で、そう
であれば、迅速に処理をしていくためにそうした人の周りにどれだけ消費者問題に関しての知識を
持った人を増やしていくかが問題になってきます。
かつて、ドイツでは、
「消費者法」が「民法」の外にあったため国家試験を受ける法律家を目指す
若者は「消費者法」を真剣に学ばなかった時代がありました。しかし、2002年頃からは消費者
契約のルールを「民法」の中に取り込んで教育しはじめたことから、若い法律家の中に「消費者法」
に精通した者が出てくるようになり、そうした若い法律家を介して市民にも正しい消費者知識が伝
えられていくようになっていると聞いています。それは消費者法の知識を広めるのに非常に役立っ
ていると評価されています。この事例が示すように、教育を通じて消費者知識を持った者を世の中
にどれだけ増やしていくのかということを考えれば、教育機関や教育行政が果す役割というものが
いかに重要かということを理解してもらえると思います。
広報誌「ぽけっと」に掲載されているような貴重な情報をどうやって消費者に伝えていくのかと
いう話が出ましたが、ここに掲載されている内容をそのまま市民の中に一般的な知識として広める
ことは確かに難しいと思います。では、どうやってその知識を消費者の中に浸透させていくかとい
うと、消費者、行政、事業者の三者がそれぞれの立場で、こうした知識をどうやって市民の中に定
着させるかを考えていかなければならず、特に事業者に考えてもらうきっかけづくりなどを行うの
も我々の役割であると考えます。事業者による自主規制やルール作りが進んでいくような働きかけ
を行政ができるようになるための仕組みを考えていくことも必要であると思います。
では、続いて村田(恵)委員にご発言をお願いします。
村田(恵)委員
では、今後の大津市の消費者教育につながっていくであろうと考えられる生活協同組合の取り組
みについて、2015年度の活動を中心にご報告申し上げます。
生協組合員が主体となって行った取り組みとしましては、
「消費者力」というテーマの下で“整理
収納”と“憲法を知る”という2つの活動が行われました。どちらも参加者は各20数名でありま
したが、告知も報告も注文書と一緒に配布する地区ニュースを通じて行いました。
生協として実施した事業としては、
「消費者力って…」というテーマの下で、まずは常任理事がオ
リジナルのパワーポイントを作成し、県内7つのエリアの代表委員さんを対象に講演会を開催し、
それを聞いた代表委員が各エリアに戻って、今度は各エリアで地区委員を集めて講演会を行うとい
うかたちで広めていくことを行いました。また、2016年度の取り組みとしては、コープ・クラ
ブというビギナークラスの集まりにおいて、11月には「消費者力」をテーマにクラブコーディネ
ーターなども入ってわかりやすく消費者教育を行っていく予定をしています。
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特に、エリア代表委員を対象に開催した「消費者力って…」というテーマの講演会では、消費者
教育推進法にも触れ、その感想の中に、
「私たち自身が賢い消費者になって子供達にも伝えていかな
いといけない」などといった感想も多く見受けられました。これを見ても家庭の「要」である主婦
からこうした感想が寄せられたことで、家庭での消費者教育や家庭での情報発信の重要性が見て取
れると思います。
また、生協では約2,100食の高齢者向け夕食宅配サービスを行っていますが、滋賀県の消費
生活センターからその際に特殊詐欺の注意喚起チラシを一緒に配布できないかとのご相談を受け、
現在これを実践しており、さらに昼食に関しても検討を進めているところです。こうした見守り活
動や啓発行動は日々の業務と合わせて行っていることから、常にタイムリーな情報発信が可能で、
緊急を要するものについても柔軟に対応できると考えます。
なお、消費者教育推進地域協議会については、制度として体制整備が整えば地域住民の方々の消
費者問題への関心も高まると考え、行政や地域活動団体の支援にもつながっていくのではないかと
考えます。
中田会長
ありがとうございました。
生協という組織においては、直接消費者にアプローチできるというところがあるということで重
要な視点だと思います。
生協は、組合員を支援するということが重要な目的となっておりますが、消費者情報を組織内で
共有・発信していくこともその大切な役割でもあることから、効果的に組合員に対する消費者教育
が行われていることもわかりました。
それでは、続いて岡委員にご発言をお願いします。
岡
委員
私たちの組織は、消費生活センターや法テラスなどで勤務経験を有する消費生活相談員等のOB
組織でありまして、現在は、主に自治会や公民館などからの依頼や要請を受けて啓発活動、出前講
座を行っております。
まず、ここまでの各委員のご発言を聞いていて気付いたのですが、今の私たちの啓発活動では、
集まった方々に被害事例や注意事項をお伝えするだけに終ってしまっていることが多く、特にその
後の啓発効果の検証などができていないことが今後の課題だと思いました。また、私たちの啓発活
動に参加されておられる方々はすでに消費者問題に少なからず関心を持っておられる方が多く、こ
うした集まりに参加されない方々にこそどのように関心を持ってもらうかが今後の大きな課題であ
ると思いました。
中田会長
ありがとうございました。
直接、消費者に対して啓発活動を行っておられるがゆえのご意見であり、非常に貴重なご意見と
受け止めさせて頂きました。
それでは、続いて本多委員にご発言をお願いします。
本多委員
各委員のご発言を聞いて、すでに様々な組織や団体で消費者保護、消費者支援の具体的活動が行
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われていることを知りました。また、消費者の主体的行動によって社会や企業活動に大きな影響を
与えることができるということを知り、今後の活動の参考にしたいと思いました。
しかしながら、すべての消費者に必要な情報が届けられていないということについて、私も以前
からそのように感じておりました。その一方で、消費者側も知ろうという努力をすれば様々な媒体
を通じて情報は入手可能であり、消費者一人ひとりが如何にそうした意識を持つことができるか、
学校や地方自治体に依存するだけでなく、家庭や地域の中でそうした意識醸成が行われるかが重要
だとも考えます。
私たちの団体は、一般の主婦が集まって活動を行っている団体で、主婦として、母親として、日々
の生活の中で様々な問題を考えております。
その中で、ある時、子どもたちにスマートフォンを持たせることに関して、具体的にどんな問題
が発生したのかはわからないのですが、学校側から、
「与えることに関しては親の責任において与え
てほしい」と、厳しい論調で一方的に連絡を受けたことがありました。その時は、さすがに突き放
された印象を受け、
親としてはどのように判断したらよいのか戸惑いましたが、そういう時にこそ、
情報がほしいと切に感じたことを覚えています。
また、子どもが学校から頂いてきた消費者教育に関する資料を見たことがありますが、イラスト
などもたくさん載っていたすばらしい教材であったと記憶しています。しかし、これを使った授業
がどれくらいの時間と手間をかけて行われたのかはわからず、今回の会議でも話に出ている学校に
おける消費者教育に関しては、どこかの段階で教えればよいものではなく、子どもたちの成長に合
わせて発展的・段階的に行われるべきものではないかと考えます。
最後に、高齢者の年金生活におけるトラブルを含め、生活資金に関する啓発や消費者教育は非常
に重要であると思います。高齢者自身に問題意識を持ってもらうことはなかなか難しいかも知れま
せんが、根気強く支援が行われることを願いますし、子育て中の若い世代の方々も含めた様々な年
代の消費者を対象にしたライフプランを立てることの重要性を学ぶような学習機会が提供されるこ
とも大切だと思います。
中田委員長
ありがとうございました。
スマホをめぐる問題はあちこちで話題になっておりますが、問題の本質が不明瞭なままで親の責
任を問うというのは少し乱暴な問題提起だと思いました。しかし、問題の本質を明確にした上で消
費生活センターのような行政窓口が事業者などと共に問題解決に向けてその糸口を見つけるよう努
力をし、我々のような立場の者がその過程をしっかり見届けていくというのが重要であると考えま
す。
学校における消費者教育については、PTA組織もあり、保護者も含めた子ども達への学習機会
の提供というのは非常に重要で、そうしたことが確実に行われるシステムを作っていくことが大事
だと思います。
それでは、田中委員にご発言をお願します。
田中委員
本日ご出席になられている各委員の団体、組織では、かなり具体的な行動を起こしておられると
ころがあることに感心しております。そうした中で、少し抽象的な意見となってしまいますが、消
費者と生産者・販売事業者、双方の資質向上と行政との連携が非常に重要であると私は考えており
ます。
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私たち商工会・女性部の取り組みのコンセプトの一つに「地産地消の推奨」があります。例えば、
農産物や加工食品の分野においては、国内産と外国産ではその価格にたいへん大きな格差があり、
消費者は、
「食の安全・安心」に関心は持ちつつも、やはり価格を気にして外国産を選ばざるを得な
いという現状がそこにはあります。決して、すべての外国産の農産物や加工食品を否定するつもり
はありませんが、安全に関するチェックの信頼性などには非常に大きな関心を寄せているところで
あります。
平成25年度に開催された消費生活講座では「食の安全」をテーマにしたものもありましたが、
消費者も知識習得や情報収集を積極的に行うことが大切であり、事業者も努力と工夫が大いに求め
られるところではあります。また、それだけでは解決できない問題については、行政による抜本的
な見直しと制度改革が必要になってくると考えます。
事業者組織である商工会においても、毎年、テーマを決めて事業者の資質向上に向けた学習機会
として研修会を開催しております。事業者にとっても非常に厳しいこの時代を生き残っていくため
には消費者との信頼関係が最も重要であり、こうした場において事業者としても努力を続けている
ところであります。
中田会長
ありがとうございました。
第1回会議でも消費者施策の推進における事業者の協力の重要性を議論してきたところであり、
今後も事業者としての立場で積極的な意見を出していただけることを期待しております。
それでは、あらためて大橋委員に県としての考え方についてお話いただきたいと思います。
大橋委員
先に説明した滋賀県の基本計画の中でも触れておりますが、県の調査において「消費生活センタ
ーの認知度」に関しては、センターの業務も含めてその存在を知っているとの回答がわずか13%
でありました。これに名前だけは知っているとの回答の38%を加えると半数の方に認知されてい
ると言えないこともない訳ですが、何をやっているかまでは知ってもらっていたのが僅か13%と
いうのは非常に残念な結果と考えています。それとともに、
地域別認知度というものを見てみると、
大津市では21.8%、県のセンターがある彦根市で28.6%と、両市においては約3割弱の方が
消費生活センターという行政機関を認知されていましたが、他市町においては思いのほかその認知
度は低い情況でした。これだけ様々なメディアで特殊詐欺の被害などが取り上げられているにも関
わらずこの結果というのは、特に啓発活動などは、なかなかその結果が見えにくいということはあ
っても、繰り返し、繰り返し、行動を起こしていくことが重要であると考えるところであります。
また、県では、今後は学校教育における消費者教育の実践も重要になってくると考えており、そ
れを担う小・中学校の教員向けの研修も始めております。今年度も小・中学校の家庭科における共
通教材の研究やモデル授業の実施などを行ったところです。
さらに、黒田副会長からも出されましたが、
「20歳問題」について、弁護士の方々とも協力しな
がら高校生を対象に出前講座などを実施しております。しかし、大学生に関してはなかなか難しい
問題もあります。しかしながら、契約年齢に達するそうした年齢層に対しても工夫を凝らして何と
か対策を講じていかなければならないと考えているところです。
中田会長
ありがとうございました。
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どういう形で調査が行われたのかがわかりませんが、公的窓口の消費生活センターの認知度がこ
れだけ低いということは衝撃的な事実であります。特に消費生活センターの業務内容についてはも
っと理解してもらうことが重要で、何らかの対策を考えていかなければならないと思います。
また、学校現場における消費者教育に係る取り組みについては、具体的にどのような内容で、ど
れくらいの時間が割かれているのか、履修単位などはどうなっているのかなどをもう少し詳しく情
報提供していただけたらと思いました。
「20歳問題」については、大学入学当初は成人年齢には達していない学生がほとんどですから、
成年になることに備えて、入学してからの1年を効果的に消費者教育にあてることは十分に可能と
考えます。学生たちに日常生活における契約の意味などを意識付けすることは本当に重要だと考え
ます。
中田会長
これですべての委員からご意見を頂いたことになりますが、当審議会としては、お聞かせ頂いた
各組織・団体の具体的取り組み事例や考え方、問題点などを、今後どのように大津市の消費者行政
に反映していくのかを考えていく必要があります。その流れとして、まずは、国の基本計画に沿っ
たかたちで検討を始め、現在の状況をどのように変えていくのかなど、大津市としての「消費者教
育の推進のあり方」を検討していくことになると思います。
その過程で各専門分野の外部有識者や学識経験者の意見なども聞きながら審議会としての意見を
まとめていく必要があると考えておりますが、前回会議でも事務局には審議会の検討作業をサポー
トする外部専門員による「専門部会」の設置をお願いしたところです。新たな予算の確保が難しい
中でその点についてどうなったか事務局から報告をお願いします。
事務局
それでは平成28年度の消費者教育に関係する予算措置の情況についてご報告申し上げます。
まず、会長からお話のあった審議会に「専門部会」を設置することにつきましては、予算要求は
行いましたが措置はされませんでした。よって、そうした専門家のサポートが受けられない中で審
議会としての意見の取りまとめが必要となります。なお、審議会については、今年度より1回多い
年間3回の開催経費が予算措置されましたので、限られた会議開催回数の中ではありますが、意見
の取りまとめをよろしくお願いしたいと思います。
次に、消費者教育の実践としての「啓発事業」については、講座・講演会等の開催経費約50万
円が予算措置されました。毎年開催しております「消費者月間記念講座」や8回連続の「消費者の
ための身近な法律講座」
、年4回開催の「くらしの安心カレッジ」など、市民向け講座・講演会等の
開催経費は例年並みの予算措置がされております。その他、センター広報誌の「ぽけっと」発行・
配布に係る経費、啓発用パンフレット・リーフレット類の作成・購入費、貸出しを行っている教育
用DVDソフトの新規購入費なども前年並みで予算措置されております。
「啓発事業」の全体予算額
は172万円となっております。
次に、消費生活センターの重要な事業であります「相談事業」に関する予算額ですが、現在、6
名の消費生活相談員を配置し、週5日の体制で消費者からの相談や苦情に対応しています。次年度
も同じ配置人数、相談体制で業務を行うこととしており、その人件費が予算措置されております。
さらに、平成26年に「消費者安全法」が改正され、この4月から施行されることを受け、昨年
12月の市議会定例会で「大津市消費生活センター条例」を改正しました。これまで以上に消費生
活相談員の資質向上や知識・技術力のアップを図っていくため、相談員の研修機会の確保や滋賀弁
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護士会をはじめとする専門家の積極的な相談支援を活用させて頂くための経費なども要求どおり予
算措置されました。
繰り返しになりますが、会長から話のあった審議会に「専門部会」を設置することに関しては予
算措置がされなかったということでご了解願います。
中田会長
専門部会の設置については予算措置してもらえなかったということで残念な結果でありますが、
啓発事業の中で研修機会が確保されているということで、こうした機会を効果的に活用して専門家
の先生方を招聘しお話を聞くなど、その穴埋めは十分にやっていけるのではないかと考えます。
中田会長
ここで審議会としての消費者教育のあり方検討に移る前に、県内の消費者団体の活動状況につい
て情報提供をお願いしようと思います。
「消費者ネット・しが」の活動状況について、黒田副会長からお話をして頂きたいと思います。
黒田副会長、お願いします
黒田副会長
「消費者ネット・滋賀」の活動としては、月1回以上は会議や研修等を行っておられ、今年度も
消費者月間に公開講座を開催されたり、国や県に対して提言を提出することも行っておられます。
この団体は、いわゆる「適格消費者団体」ではなく、
「NPO法人」として活動する団体でありま
すが、
「適格消費者団体」である「NPO法人消費者支援機構関西」の団体メンバーになっておられ、
このことから「適格消費者団体」としての活動も行えるようにはなっているようであります。ちな
みに「適格消費者団体」とは、現在、全国に11団体あり、これらの団体は、
「消費者契約法」等に
基づく差し止め訴訟というかたちで団体訴訟が行えるということになっています。
この「消費者ネット・滋賀」の活動の源は、滋賀県の「石けん運動」の流れを受け継いでいるも
ので、その点で消費者運動としての実績は十分に備えた団体と言えます。
中田会長
こうした地域団体を「適格消費者団体」に押し上げていくということは大事なことであります。
しかし、
「適格消費者団体」になるためのハードルはかなり高いというのが現実で、とりわけ、最も
大きな問題となるのが、組織を支えるための財政の問題です。このあたりの問題は、国レベルで考
えてもらわないといけないのですが、それとは別に、地方がどのように支援していくか検討されな
ければならないとも考えます。
いずれにせよ、消費者団体というのは消費者教育の大きな要にもなってくる訳ので、今後、この
審議会でもその支援などについて議論させてもらいたいと思います。
中田会長
市の予算が非常に厳しいということは報告のあったとおりですが、そうした中で委員の皆さんに
あらためてお伺いしたいのは、これだけ消費者教育の必要性が言われ、消費者問題が社会問題化し
ている中で、県のレベルにおいては新しい計画が策定されたことから、これを受ける立場にある県
都・大津が何もしないというわけにはいかないと感じております。審議会としても市長に対して何
か提言をしていきたいと考えております。大津市長に対し提言をするにあたって、どのように皆さ
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んのご意見を集約し、何を訴えていくのか、具体的なスケジュールも含め、ご意見があればお聞か
せ頂きたいと思います。
村田(省)委員
今、会長から提案のあった審議会として大津市長に提言をすることに対しては、大変意義あるこ
とだと考え賛成します。どんなかたちになるにせよ、本来こうした審議会は、市政に対して意見や
提言を行うことが期待されたものであると考えますので、是非とも提言をまとめて提出すべきだと
思います。
中田会長
他の委員はどうお考えでしょうか。前回会議でも意見書提出は必要とのご意見はありましたので、
他の委員もそのようにお考え頂いていると考えてよろしいでしょうか。
ご了解をいただいたようですので、次は、どこまでのレベルで意見や提言をまとめていくのかと
いうことになります。まずは、大津市における消費者教育推進のあり方の大きな方向性について、
事務局を通じてまとめていければいいのではないかと考えておりますが、事務局はどうお考えです
か。
事務局
このような場合、審議会に対して市から諮問をさせて頂き答申を頂くというのが本来のかたちな
のかもしれませんが、これまで毎年開催してきた審議会で出されてきた審議会委員の貴重なご意見
を何らかのかたちで市政に反映させるべきと考えておりまして、今年度は、直面する「消費者教育
の推進」という課題について審議をお願いしてまいりました。よって、委員のご意見を具体的事業
につなげていくため、まずは本市の消費者教育のあり方の「大きな方向性」をお示しいただきたい
と考えます。
中田会長
事務局に確認をしますが、この問題については「諮問→答申」という本来の審議スタイルを採る
のではなく、あくまでも審議会の自主的な「意見書」の提出とスタイルをとることになるのでしょ
うか。
事務局
今回は、審議会の自主的「意見書」の提出になります。
中田会長
わかりました。では、
「意見書」というかたちでまとめることとします。
特にどういった「意見書」を市長に提出するかは今後の議論ということになりますが、平成28
年度は「意見書」を取りまとめるということで、平成29年度予算の編成が始まる10月頃までに
はこれをまとめ、その「意見書」の内容が、平成29年度予算に反映されることも期待するところ
であります。
そうなると第1回会議は、5月下旬ころに開催する必要があると考えます。その後の会議は、事
務局を通じての文書会議のようなかたちで各委員のご意見を聴取したり調整を行いながら、第2回
会議を9月中旬から下旬にかけて開催し、
「意見書」の完成を目指したいと思います。そして、2月
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上旬ころに第3回会議を開催して平成29年度につないでいくというスケジュールでどうでしょう
か。
なお、委員間の意見調整などでどうしても臨時的に皆が集まる必要が生じることもあるかと思い
ますが、そうした場合は事務局には臨機応変に対応をしてもらわなければならないと思います。そ
の時はよろしくお願いします。
非常にタイトなスケジュールの中で重要な「意見書」をまとめるということになりますが、各委
員には、短期間で多くの文書を検討して頂いたり、ご意見を返してもらわなければならないなど、
ご負担をお掛けすることも多々あるかと思いますが、よろしくご協力をお願いします。
ところで、パブリック・コメントなどを取る必要はないのでしょうか。
事務局
審議会の「意見書」なので、その必要はありません。ただし、提出された「意見書」は公開され
ることになります。
中田会長
ここで、各委員にお願いをしておきたいのですが、次回5月の会議までに、どこまでをこの「意
見書」に求めるのか事前にご検討をお願いしておきたいと思います。
また、各委員が所属されている各団体・組織、又は関係されている団体・組織等において、消費
者教育を重点的に進めておられる、あるいは進めていこうとする動きがあれば、そうした情報も是
非ともご提供願いたいと思います。
なお、次年度に策定する「意見書」は、平成29年度予算に少なからず影響を与えるものとした
いと考えております。それゆえ、消費者教育というものは、消費生活センターだけが担うものとい
う狭い政策議論とはせず、教育分野も、福祉・介護分野も、防犯・生活安全分野も、環境分野も、
様々な取り組みや啓発が可能であるという視点に立って、こうした各分野でも必要な予算が配分さ
れるよう提言できればと考えます。こうした動きによって、大津市は市をあげて消費者教育の推進
に取り組んでいるということがアピールできると思いますので、そうした視点でも今後の検討・協
議をお願いいたします。
また、予算を要求するだけではなく、「ここまではできている」、
「こんな課題が認識されている」
といった内容まで、市長に届けられるようにしてまいりたいとも思います。
「対処療法」だけに言及
して終ることだけは避けたいと思います。
私は、先ほどの県の調査結果において、大学生や専門学校生に対する消費者教育の実施率が37.
9%という極めて低い数字であったことに対し、これだけ学生たちの被害が増加してきているにも
関わらず、これでは教育を行ったことにはまったくなっていないと感じております。学校教育の中
で重要な情報をいかにして学生たちに提供していくのかを考えて、これを100%に近づけたいと
思っています。これはまったく無理な話ではないと思っていますし、そのために学生たちはもちろ
んのこと、教員や学生の保護者にも消費者教育の学習機会が提供ができるよう、学校という教育現
場における実践可能な教育プログラムの構築ができないかとも考えております。
さらに、事業者には、事業者の果す役割がある訳で、事業者にとって消費者教育に協力すること
は自らの営利活動を制限するようにも感じておられるかもしれませんが、悪質事業者がいるからこ
そ、まじめに事業を営む事業者までもが誤解されることになっているのです。事業者の方にも消費
者の立場を理解していただき、消費者教育に協力することで自らの事業活動の範囲を拡大すること
につながっていくということに気付いていただき、行政も、こうした事業者とはしっかり協力関係
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を築いていくべきだと思います。
消費者団体についても、財政状況が厳しい中にあってもそれを乗り越え、消費者の安心・安全を
確保していくための努力をする必要があります。特にそのためのネットワーク構築は重要であり、
そうしたネットワークを活用して必要な情報を入手したり、配信していくことが重要となります。
消費者情報というのは、消費者被害や消費者トラブルだけではないので、そうした情報もしっか
りと消費者に届けていかなければなりません。
中田会長
日程や「意見書」に関して少し話過ぎたかも知れませんが、何かご意見があれば発言をお願いし
ます。
特にないようなので、今のスケジュールで平成28年度は「意見書」の取りまとめ作業を進めて
まいります。
最後に、事務局から連絡事項等があればお願いします。
事務局
それでは、本日の会議において次回開催は5月下旬とされましたので、それに向け準備を進めて
いきます。
また、本日の会議の中で、消費生活センター以外の大津市の各部署との緊密な連携の必要がある
とご意見も出されましたので、
「大津市消費生活条例」の規定では、会長が必要と認めた場合には委
員以外の者の会議出席も認められるとあることから、今後、いずれかの時点で市役所の関係各部局
に対して審議会への出席を要請し、意見聴取や意見交換できる場を設けることができないか、検討
してまいりたいとも考えております。
中田会長
滋賀県との連携も忘れずに行って下さい。特に、教育分野においては教員研修や学習カリキュラ
ムに関することは県の教育委員会が深く関与しているので、その点もうまく調整を願います。
中田会長
では、これをもって本日の審議会は終了します。
委員の皆さんには、長時間にわたってご審議を頂き感謝しております。
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