とって,情報科は 2 番目の教科だったのかもしれない。し かし,数学の先生の公式に対する情熱,理科の先生の科学 現象に対する情熱,国語の先生の作家に対する情熱。自分 の高校時代を考えれば,先生が目を輝かせて語る内容は, 完全には理解できないけれども,非常に引き込まれるもの であった。 今度の『新編社会と情報』は,情熱を持った先生たちと 情熱を込めて作り上げた。この教科書を使って,情熱を持 って授業してくれる先生を募集中!ぜひ,情報教育を熱く 広めましょう。 『新編社会と情報』33 ページ▶ 情報科の基本は,現在に至るも進化し続けている。 みよう」など,自分の授業を更におもしろくできる ような気がした。まさに, 教科書は「読む」ものだ, インターネットはマスメディア? 中央大学 松田 と感じた次第である。 美佐 大学生と話していると,同じ単語が違う意味で使われて いると感じることがある。例えば, 「マスメディア」 という語。 これまでは「マスメディアとは何か」は共有されているこ とを前提に,インターネットの登場でマスメディアという カテゴリーが無効化しつつあることを授業で話してきた。 しかし,ふとある日,200 人近い大教室で尋ねてみると,イ ンターネットはマスメディアだと考えている学生のほうが 多数派だったのだ。 ネットのない時代の経験がある世代は,こうした定義を明 確に意識していなくとも,インターネットはマスメディアだ とは言いがたい。新しいメディアとして登場し,普及してい った記憶を持つからだ。しかし,ネットがあたりまえに存在 ▲『社会と情報』112 ページ 授業で扱っていた実習が紙面に載ることになった。 する社会で生まれ育った学生の感覚では,ネットはテレビや 新聞と同じマスメディアの1つと捉えたほうがしっくりくる のであろう。このギャップに気づいてからは,誰でも発信者 になることができるネット社会が,それ以前とどう異なるの か,より丁寧に説明するようになった。 教科「情報」を教えることの難しさの1つは,最新の状 況をどう織り込むかにあるといわれる。しかし,本当に手 ごわいのは,目に見える技術やサービスの変化ではなく, どの教科にも共通する知識や常識のギャップなのではない か。教える立場にある者として,改めて常に意識しようと 思っている。 ▲『情報の科学』9 ページ ▲ 『社会と情報』169 ページ ニューサポート¦高校情報 5 2020 年と情報セキュリティ 尚美学園大学 小泉 「超スマート社会」の一員となるために 力一 東京学芸大学 宮寺 庸造 2020 年夏に東京でオリンピック・パラリンピッ 昨年末に,2016 ~ 2020 年度の「第 5 期科学技術基 クが開催される。世界中からたくさんの人々が東 本計画」答申案が,政府の会議によって承認された。 京にやってくるが,ここ数年で先進的な情報技術 この計画の主要指標の政策目的の1つ「未来の産業創 が数多く実用化されていて,日本の ICT 環境に世 造と社会変革に向けた新たな価値創出」は,ICT の 界が驚くことになるだろう。その一方で,インタ 活用により,サイバー空間と実空間を融合した「超ス ーネットにより情報の世界に国境がなくなった今, マート社会」の実現を目指し,あらゆる人が快適で豊 国際的なサイバー犯罪の脅威が深刻化している。 かな暮らしができる社会を期待している。 4 年後のスポーツの祭典が安全に開催されるに 昨今,ICT に関する知識や仕組みを理解しないこ は,今から日本人一人ひとりが情報セキュリティ とから,トラブルに巻き込まれることが増えている。 を意識しなくてはならない。ディジタル化された そのため,超スマート社会で生きるうえでの基本知識 情報はとても便利である反面,その特性をよく理 とスキルを持つことが必要である。 解して利用しないと思わぬ落とし穴にはまる。情 教科「情報」は,このような知識やスキルを養う重 報セキュリティを他人事と思わず,パスワードの 要な場であり,自動車運転免許取得のためのドライビ 管理,コンピュータの保護,インターネットの安 ングスクールと位置付けることができる。ドライビン 全な利用,個人情報の扱い方など,その必要性を グスクールでは,運転に必要な最低限の知識とスキル よく考えたいものだ。 が習得できる。超スマート社会で暮らすために,教科 情報社会の光が強ければ強いほど,影は深い闇 「情報」で知識とスキルを習得してほしい。 になる。世界の祭典が成功裏に終わることを心か ら祈りたい。 ▲『新編社会と情報』73 ページ ▲『社会と情報』59 ページ 誰もが容易に情報共有できる社会に向けて 東京大学 中山 雅哉 今回の教科書執筆の過程でも教科書の内容のディ ジタル化を推進し,インターネットを介して教科内 容にアクセスできる環境の提供を推進すべきではな コンピュータの急速な発展とインターネットの普 いかとの意見も寄せられてきた。 及に伴い,現在の社会生活は大きく情報化が進んで 今後,誰でも容易に情報共有できる社会を実現す いる。教科「情報」では,情報のディジタル化に伴 るために,教科「情報」が率先して,その実現を牽 って,さまざまな情報をコンピュータで扱うための 引することが必要ではないかと考えている。 表現方法や情報の伝達の仕組みについて学ぶことが できる。 しかし,誰もが参加できる情報社会の側面で考え ると,紙面だけで構成される教科書は,例えば視覚 障がいのある生徒には内容を十分に伝えられないと いう課題がある。 ▲『情報の科学』80 ページ ユニバーサルデザイン ニューサポート¦高校情報 7
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