文化施設職員のためのアートマネジメントセミナー2016

文化施設職員のためのアートマネジメントセミナー2016
開催要領
静岡県コンベンションアーツセンター・グランシップでは、公立文化施設職員を対象に少人数制
のアートマネジメントセミナーを開催しています。
前期は、公布施行から4年目を迎えた劇場法が、劇場・音楽堂等の公立文化施設にどのような影
響を与えたか、施設のブランディングや他施設との共同・連携事業を中心に先進事例を紹介しなが
ら考察していきます。
後期は、昨年に引き続き「アウトリーチ」をテーマにします。アーティストを地域の学校や福祉
施設に派遣して出前公演やワークショップを行う「アウトリーチ」は、文化・芸術の普及にとどま
らず、医療・福祉分野等への広がりも見込まれ、地域における公立文化施設の役割を拡大させてき
ています。本セミナーでは、そうしたアウトリーチや地域連携の可能性を考えるとともに、実践に
向けた具体的な方策について学び、職員とアーティストが協働してアウトリーチの実践を行います。
テ
ー
マ
公立文化施設の共同・連携事業とアウトリーチの可能性
伊藤
元静岡文化芸術大学教授
東京大学文学部卒業後、広告会社、シンクタンクを経て、2000 年より静岡文化芸術大学教授、2006
年富山大学芸術文化学部教授。2011 年富山大学を退職後、静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科、
立教大学大学院 21 世紀社会デザイン研究科、慶應義塾大学大学院アートマネジメントコース等の兼
任講師を努める。専門は、文化政策、アートマネジメント。芸術と社会の出会いを、芸術組織の運
営や文化政策という観点から調査研究する同時に、その実現に向けた活動にも関わっている。
ファシリテーター
対
裕夫 / 日本文化政策学会会長
静岡県内の公立文化施設に勤めている職員
象
※文化施設の共同・連携事業や教育普及事業に関心がある事業担当者など
10 人程度(全プログラム参加できない場合はご相談ください。)
募 集 人 数
※各回のプログラムに、聴講生をして単発で参加を希望される方を別途承ります。詳細は下記まで
お問い合わせください。
期
間
平成 28 年 5 月 23 日(月)~平成 29 年 3 月
場
所
グランシップ内 会議室
前期
全 10 回
他
後期
H29 年度(セミナー終了後)
〈第 1~3 回〉
〈第 4~6 回〉
文化施設概論
共同・連携事業
アウトリーチ入門
フィールドワーク
〈第 7 回~第 10 回〉
アウトリーチ事業
の実践・振り返り
講義・ワーク
セ ミナ ー
「」)参 加 者 の
市町で、希望により
アウトリーチ事業を
実施予定
事業の企画・実施
申 込 方 法
所定の申込用紙に必要事項をご記入の上、5 月 13 日(金)までに郵送、Fax、メールのいずれかにてご送
付下さい。
問い合わせ先
公益財団法人静岡県文化財団 事業課
Tel. 054-203-5714 / Fax. 054-203-5716 / Mail. [email protected]
平成 28 年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業
/
平成 28 年度地域創造地域の文化・芸術活動助成事業
【 前期 】
第1回 2016 年 5 月 23 日(月) 13:30~17:00
① 「公立文化施設概論と経営視点」
劇場法の制定や各地での市民参加型アートプロジェクトの増加など、昨今の公立文化施設を取り巻く状況や抱え
る課題を概観し、公立文化施設のあり方とミッション、文化施設職員に求められる役割について考えます。また
公立文化施設の社会的役割から、アウトリーチを考えます。
[講師]
伊藤裕夫 / 日本文化政策学会会長 元静岡文化芸術大学教授
② 「劇場法と公立文化施設の変遷」
公立文化施設の歴史を振り返りながら劇場法の制定経緯や、同法3条に掲げる劇場、音楽堂等の事業について理
解を深め、自らが関わる施設のミッションについて考えます。また、劇場法の実効性を高めるための文化庁の助
成スキームを紹介し、我が国及び地域の劇場・音楽堂等の現況と未来について考えます。
[講師]
髙橋 透 / グランシップ プロデューサー兼事業課参事
第2回 2016 年 6 月 20 日(月) 13:30~17:00
① 「劇場・音楽堂等のマーケティング、ブランディング」
阪神・淡路大震災の「心の復興、文化の復興」のシンボルとして 2005 年に開館した兵庫県立芸術文化センター。
今や無料会員6万人を抱え、年間 300 の主催公演と約 30 万人の有料観客を有し、「チケットを売り切る」劇場と
して名声を博しています。いかに創客し、維持発展してきたか、その 10 年の歩みから施設のマーケティング、ブ
ランディングを考えます。
[講師]
安田 江 / 兵庫県立芸術文化センター 事業部プロデューサー
② 「県内文化施設との連携について」
劇場法第3条4項に「他の劇場、音楽堂等その他の関係機関等と連携した取組を行うこと」とあります。拠点施設として
兵庫県立芸術文化センターが県内文化施設とどのような連携事業を実施しているか事例を紹介します。講義後半にディ
スカッションの時間を設け、セミナー生と一緒に静岡県内の連携事業のあり方等を考えます。
[講師]
安田 江 /兵庫県立芸術文化センター 事業部プロデューサー
第3回 2016 年 7 月 11 日(月)
① 「共同制作の裏表」
13:30~17:00
第2回の「県内文化施設との連携について」に引き続き、この回では都道府県域を越えた共同・連携事業の事例
を紹介します。2009 年に東京芸術劇場と石川県立音楽堂の2都市で始まったシアターオペラの共同制作が年々規
模を拡大し、2015 年度は演劇界の野田秀樹氏が演出した『フィガロの結婚』が 10 都市で上演されました。共同
制作の意義や効果、経費負担の考え方、音楽と演劇の制作プロセスの違いなど様々な角度から共同制作のあり方
を考えます。
[講師]
中村よしき / 東京芸術劇場 音楽プロデューサー
② 「ソーシャル・エンゲージメント〜劇場の「壁」を越えて〜」
前2回の講義内容を踏まえ、劇場・音楽堂間の共同・連携事業から、さらにその枠を超えた「公立文化施設」の
果たすべき役割を、
市民参加型アートプロジェクトやその他アート NPO の社会包摂的な取り組みを紹介しながら、
広く社会との「つながり」や「かかわり」といった視点で考えていきます。
[講師]
伊藤裕夫 / 日本文化政策学会会長 元静岡文化芸術大学教授
【 後期 】※以降、グランシップアウトリーチ登録アーティストと合同研修になります。
第4回 2016 年 9 月 13 日(火)13:30~17:00
① 「アウトリーチ入門」
地域社会におけるアーティストの役割を考えます。シュガーホールで実践しているアウトリーチの具体的な事例
を元に、子どもたちやアーティスト自身にどのような効果をもたらしたかを考え、地域でアウトリーチ活動を行
うことの意義を見出します。
[講師]
中村透 / 作曲家、グランシップ企画アドバイザー、南城市文化センター・シュガーホール芸術監督
② 「アウトリーチを体験してみよう」
アーティストによるアウトリーチを実際に体験し、実践におけるポイントや、音楽的事項の取り入れ方等を学び
ます。
[講師] 中川賢一 /
ピアニスト・指揮者、地域創造公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
第5回
2016 年 10~11 月頃(日程未定)
「フィールドワーク ~グランシップのアウトリーチ視察~」
グランシップアウトリーチ事業を視察し、検証します。終了後にはアウトリーチ先の教員らとの懇談会を実施し、
教育機関等受け入れ側との関係についても考えます。
第6回 2016 年 11 月 10 日(木)13:30~17:00
① 「コミュニティに密着したアウトリーチの実践と展開を学ぶ」
コミュニティに密着したアウトリーチを実施している岐阜県山県市の花咲きホールの事例を紹介し、アーティス
トとの繋がりやアウトリーチ事業とホール公演の両面展開について考えます。
[講師]
伊藤直樹 / 山県市文化の里 花咲きホール館長
② 「アウトリーチプログラムの組み立て方」
アウトリーチプログラムを組み立てる際のポイントや注意点を学び、実践に向けてグループで検討をします。
[講師]
花田和加子
第7回
2016 年 12 月 12 日(月) 10:00~17:00
「アウトリーチ事業の企画策定①」
これまでのセミナーによって得た成果をもとに、研修生とグランシップアウトリーチ登録アーティストがプログラ
ムを企画策定します。なお第7回以降、実践に向けての打ち合わせを複数回実施する予定です。
[講師] 花田和加子 / 中川賢一
第8回
2017 年 1 月 31 日(火) 10:00~17:00
「アウトリーチ事業の企画策定②」
学校での本番を想定して45分間のプログラムを登録アーティストが実演し、さらにプログラムが良くなるよう検討
を重ねます。
[講師] 花田和加子 / 中川賢一
第9回 2017 年 2017 年 2 月~3 月(日程未定)
「アウトリーチ事業の実践」
(トライアル事業)
企画策定したアウトリーチ企画を研修生によるトライアル事業として実施します。
[講師]
中村透 /
花田和加子
/
伊藤裕夫
第10回 2017年3月(日程未定)
「振り返りとまとめ」
トライアル事業の振り返り、検証をおこない、これまでのセミナーを通じてのまとめと意見交換をします。
[講師]
伊藤裕夫
/
中村透
/
花田和加子
※セミナーの日程および講師は都合により変更になる場合がございます。ご了承ください。
<講師プロフィール>
いとうやすお
○ 伊藤裕夫 / 日本文化政策学会会長
元静岡文化芸術大学教授
東京大学文学部卒業後、広告会社、シンクタンクを経て、2000 年より静岡文化芸術大学教授、2006 年富山大学芸術
文化学部教授。2011 年富山大学を退職後、静岡文化芸術大学大学院文化政策研究科、立教大学大学院 21 世紀社会デ
ザイン研究科、慶應義塾大学大学院アートマネジメントコース等の兼任講師を努める。専門は、文化政策、アートマ
ネジメント。芸術と社会の出会いを、芸術組織の運営や文化政策という観点から調査研究する同時に、その実現に向
けた活動にも関わっている。本セミナーのファシリテーター。
やすだ
○ 安田
こう
江 / 兵庫県立芸術文化センター 事業部プロデューサー
島根県松江市生まれ。四国、関西で育つ。2004 年 8 月、兵庫県芸術文化協会に入社。翌年 10 月オープンの兵庫県立
芸術文化センターの開館準備業務に携わる。
一貫し、同センターの営業、広報用務・スポンサーセールス・チケッティング業務等に従事。 2011 年 4 月より現職。
劇場・音楽堂等間の連携事業に多くの実績を残す。地方の中核劇場としての賑わいを維持しつつ、企画・発信力を
強化し、劇場の存在意義を高めていくことが近年の課題。
なかむら
○ 中村よしき / 東京芸術劇場 音楽プロデューサー
2002 年から東京文化会館で様々なコンサートのプロデュースを行い、当時の館長、故・三善 晃氏から多大な薫陶を
受ける。現在、東京芸術劇場勤務。読売日本交響楽団との事業提携、オペラ制作をスタートさせると共に様々な公
演を多数プロデュース。2015 年、全国 10 都市 14 公演の共同制作オペラ『フィガロの結婚』の共同制作プロデュー
サーを務めた。
なかむら
○ 中村
とおる
透 / 作曲家、グランシップ企画アドバイザー、南城市文化センター・シュガーホール芸術監督
琉球大学名誉教授、作曲家・芸術文化学博士。作曲理論、舞台芸術創造論。シュガーホール芸術監督として各種コン
サート、伝統芸能公演等の制作・運営に参加。地域創造公共ホール音楽活性化事業調査委員・アドバイザー、国立劇
場おきなわ自主事業実行委員会委員等を歴任。主要作品として、オペラ「モーイのとんち」「キジムナー時を翔る」
(平成 2 年度文化庁優秀舞台芸術創作奨励特別賞)等。地域創造・ステージラボ静岡セッションコーディネーター。
はなだ わ
か
こ
○ 花田和加子 / 地域創造公共ホール音楽活性化事業コーディネーター、ヴァイオリニスト
5 歳よりヴァイオリンを始め、1987 年に渡英。英国王立音楽カレッジのディプロマ(ARCM)取得。
オックスフォード大学音楽学部、東京藝術大学大学院修士課程修了。石井志都子、李亮才、ジョルジュ・パウク、
澤和樹の各氏に師事。第 3 回ストラディバリウス・コンクール入賞。1999 年度村松賞受賞。
アンサンブル東風、アンサンブル・コンテンポラリーα等のメンバーとして古典から現代までの幅広いレパートリ
ーで演奏活動を行っている。東京藝術大学、及び、桐朋学園芸術短期大学非常勤講師。サントリーホール室内楽ア
カデミーファカルティ。
なかがわけんいち
○ 中川賢一
/ ピアニスト・指揮者、地域創造公共ホール音楽活性化事業登録アーティスト
桐朋学園大学音楽部ピアノ専攻卒業。同時に指揮も学ぶ。ベルギーアントワープ音楽院ピアノ最高過程、特別過程
を修了。'97 年オランダのガウデアムス国際現代音楽コンクール第 3 位。ベルギー、パリ、イギリスほかヨーロッ
パ各地の音楽祭に出演する。帰国後はソロ、室内楽奏者として活動。現代音楽アンサンブル「アンサンブルノマド」
ピアニスト、指揮者として活動するほか、ダンスなど他分野とのコラボレーションも多い。
いとうなおき
○ 伊藤直樹 / 山県市文化の里 花咲きホール館長
2005 年~2008 年 山県(やまがた)市教育委員会文化課・生涯学習課で主に文化振興担当として、花咲きホールで行
う諸事業のコーディネートを行う。2010年~現在まで花咲きホールにおいて自主事業の企画・運営全般を担当。
たかはし
○ 髙橋
とおる
透 / グランシップ プロデューサー兼事業課参事
1982 年4月、神奈川県企業庁入庁。1992 年4月、神奈川県民ホール。2000 年 4 月、県民部文化課神奈川芸術劇場開
設準備担当。2010 年4月、東京芸術劇場事業企画課長。2014 年4月、(公財)東京都歴史文化財団事務局調整担当課
長。2015 年4月より現職。日本アートマネージメント学会会員。
1997 年度文化庁芸術家在外研修員(アートマネージメント分野)
。
平成 27年度 セミナー参加者の声(抜粋)
※平成 27 年度のテーマ「公立文化施設とアウトリーチ~広がる可能性~」
各講師の方々からの講義と、アウトリーチの実践とのバランスが良く、理論を踏まえた上で実践すること
が出来たので、セミナー後も自分の中で理解度が高いように思える。
通常ならば知り合うことのできなかった他施設の職員の方々と知り合うことができたのも1つの大きな収
穫です。今後も情報共有や、広報協力などで連絡を取り合っていきたいと思います。
アウトリーチを知ることができた点と各施設やアーティスト、グランシップの方達と知り合えたことが大
きいです。
アウトリーチは潜在的なニーズを探れるチャンスであり、地域の人達との関わり方や事業にも活かせると
いうお話が印象に残っています。
アウトリーチを行う際の学校との打ち合わせを体験できたこと、アウトリーチを行った時の現場の反応が
見られたことは良かった。
普段学ぶ機会のない分野の芸術文化を知ることができ、そこで人と人とのつながりを得ることができた。
今回の研修で出会えたアーティストや研修生たちと連携することにより、お互いの都市の文化振興に寄与
する一助となりうる。