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決算レポート
審査済 A
審査番号 TA16-111
(平成 28 年 4 月 21 日)
ACE Research Institute
バリュエーション判断
ロゼッタ(東M:6182)
決算説明会:2016 年 4 月 19 日
【連結】
決算期
2014/2
2015/2
2016/2
2017/2
2017/2
2018/2
NR
目標株価-円
担当 : 石飛 益徳
(百万円、%、円:会/会社計画、予/エース経済研予想)
売上高
1,327
1,402
1,668
会 1,774
予 1,780
予 2,020
【売上構成】
MT事業
GLOZE事業
翻訳・通訳事業
企業研修事業
伸率
6
19
6
7
13
営業利益
106
129
216
241
245
295
伸率 経常利益
104
22
131
67
201
12
241
13
245
20
290
【PER】
13% 16/2
114.2
22% 17/2予
112.3
50% 18/2予
92.1
15%
16/2期
BPS
純資産
総資産
時価総額
伸率
26
53
20
22
18
当期利益
71
94
141
165
168
205
伸率
32
50
17
19
22
EPS
19
26
36
36
37
45
配当
5.00
5.00
8.50
9.00
9.00
10.00
16/2末
【財務指標】
285円 株価(4/21終値) 4,115円
1,308百万円 売買単位
100株
1,673百万円 発行株数
4,586千株
18,871百万円 PBR
14.4倍
注.EPS、BPSは期末発行株数で計算。
<注目ポイント>
①企業ミッションは「日本を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する」で、2025 年にプロ翻訳
者に匹敵する翻訳機の完成を目指している。MT 事業と GLOZE 事業を将来の柱に育成。
②MT 事業は、インターネット上の膨大な情報を言語のビッグデータとして統計解析することを原
理とする AI 型機械翻訳を開発、自動翻訳ソフト「熟考」と「熟考 2015」を販売。GLOZE 事業は
翻訳支援ツール「究極 Z」を活用した翻訳サービスを提供。
③2016 年 2 月期は売上高 16 億 68 百万円(前期比 19%増)、営業利益 2 億 16 百万円(同 67%
増)、経常利益 2 億 1 百万円(同 53%増)、当期利益 1 億 41 百万円(同 50%増)と、計画を
上回る大幅増益を達成。MT 事業と GLOZE 事業が大幅に伸長し、収益拡大を牽引。
④2017 年 2 月期の会社計画は、売上高 17 億 74 百万円(前期比+6%)、営業利益 2 億 41 百
万円(同+12%)、経常利益 2 億 41 百万円(同+20%)、当期利益 1 億 65 百万円(同+
17%)。高精度の翻訳機の実現に研究開発を加速、先行投資として開発費を増額。
⑤エース経済研究所の今期予想は売上高 17 億 80 百万円、営業利益 2 億 45 百万円、経常利
益 2 億 45 百万円、当期利益 1 億 68 百万円。
バリュエーションの考え方
同社の株価は、2 月 12 日の安値から短期間で 4 倍以上に急騰し、予想 PER も 100 倍超の水
準となっている。同社の事業や成長性への期待というより、株価変動そのものが株価材料となって
おり、過熱感を否めない。このため、当面はバリュエーション判断及び目標株価の算出は見送る。
なお、比較対象としては、企業向け技術翻訳を主力とする翻訳センター(JQ:2483)、製品取扱説
明書や修理マニュアル等の翻訳も手掛けるクレステック(JQ:7812)などが挙げられる。
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審査済 A
審査番号 TA16-111
(平成 28 年 4 月 21 日)
決算レポート/ロゼッタ
ACE Research Institute
AI 型の自動翻訳機を開発
同社は、㈱ロゼッタ及び子会社の㈱グローヴァ、㈱海外放送センターの 3 社でグループを構成。
「日本を言語的ハンディキャップの呪縛から解放する」ことを企業ミッションとして掲げ、2025 年にプ
ロ翻訳者に匹敵する精度の翻訳機の完成を目指している。
同社グループの事業構成は、インターネット上の膨大な情報を言語のビッグデータとして統計解
析することを原理とする AI 型の機械翻訳を開発する MT 事業(ロゼッタ)、従来の人間による翻訳
業務を受託する翻訳・通訳事業(グローヴァ)、MT 事業の翻訳支援ツールを活用して人間が翻訳
業務を行う GLOZE 事業(ロゼッタ)、企業等に講師を派遣して語学研修サービスを行う企業研修
事業(海外放送センター)となっている。同社は、この人間による翻訳サービスから AI 型機械翻訳
サービスまで一括して提供できる体制を特徴としている。
現在は、翻訳・通訳事業と研修事業が安定収益として研究開発原資を稼いでいるが、今後は
GLOZE 事業を育成し、10 年後までには MT 事業を収益の柱とすることを目指している。
「熟考 Z」が MT 事業の中核
MT 事業は、AI 型の機械翻訳機能を、インターネットを通じて顧客に提供するサービス型ソフト
ウェア(SaaS:Software as a Service)の自動翻訳「熟考」と同「熟考 Z」を販売している。
「熟考」は「人間には及ばないが、従来の自動翻訳より高精度、低コストで早い」という特徴があり、
医薬、ライフサイエンス、化学、機械、電気電子、特許等の専門分野の翻訳を対象にしている。
「熟考 Z」は、「熟考」に翻訳支援ツール機能を付加したサービス。翻訳支援機能ツールは、自動
翻訳の結果を利用者が修正する作業を支援する。2015 の専門分野別に訳語の使用頻度を表示
する「究極の辞書」機能、利用者ごとの用語集を自動的に作成する「自動辞書作成」機能など翻訳
業務を効率的に行う様々な機能を搭載している。また、情報漏洩等のセキュリティリスクにも対応し
ており、意図しない情報漏洩の危険がある多くの無料翻訳サイトと差別化している。
現在の翻訳市場規模は 2577 億円(矢野経済研究所)で年率数%の伸びとされているが、そのう
ち機械翻訳は 10 億円レベルと推定されている。人間による A4 サイズ 1 ページの翻訳費用は数千
円だが、GLOZE 事業では同 2~3000 円、MT 事業では同数百円までコストダウンできるため、同
社では自動翻訳の精度が向上すれば潜在需要も含めて市場拡大を促進できると考えている。
GLOZE 事業を新たな収益の柱に
GLOZE 事業は、顧客から受託した案件を人間が翻訳する過程で、独自の統計型翻訳支援
(CAT)ツール「究極 Z」を活用して、品質の標準化、コストダウン、納期短縮を図るサービスである。
翻訳作業は社外の翻訳者が担当し、社内では翻訳原稿の内容に応じた翻訳者の手配や翻訳内
容の品質管理を行っている。主な対象は、医薬、IT、機械、電気電子、法務、金融など、用語や類
似文の訳文統一が重要とされる分野に特化している。また、翻訳だけでなく、ローカライズ(他言語
対応)、DTP(机上型の電子編集システム)、印刷等の周辺サービスを手掛けている。主な収益は
翻訳業務の委託料で、翻訳原稿ごとに言語、分野、翻訳量、指定納期等に応じて見積りを行って
いる。5 年後には最大の事業セグメントとすることを目指している。
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審査済 A
審査番号 TA16-111
(平成 28 年 4 月 21 日)
決算レポート/ロゼッタ
ACE Research Institute
2016 年 2 月期は計画を上回る着地
2016 年 2 月期は前期比 19%増収の 16 億 68 百万円、同 67%営業増益の 2 億 16 百万円、
同 53%経常増益の 2 億 1 百万円、当期利益同 50%増の 1 億 41 百万円と大幅増益を達成し、
公表計画(売上高 15 億 63 百万円、営業利益 1 億 93 百万円、経常利益 1 億 75 百万円、当期利
益 1 億 25 百万円)を上回った。
セグメント別では、MT 事業と GLOZE 事業が大幅に伸長し、収益拡大を牽引した。MT 事業は
同 49%増収の 2 億 14 百万円、同 82%営業増益の 70 百万円。営業エリアの拡大や営業マネジ
メントの見直しに加え、インターネット上の無料翻訳サイトで情報漏洩が発生したことによる企業の
セキュリティ意識の高まりが寄与した。GLOZE 事業は大口案件が多かったことと機械翻訳部分の
増加によるコストダウンで、同 52%増収の 3 億 62 百万円、営業利益 14 百万円と黒字転換(同+
26 百万円)した。両事業の営業利益に占める構成比は前期の 20%から 40%に高まった。また、安
定収益源としている翻訳・通訳事業は同 9%増収の 8 億 35 百万円、同 48%営業増益の 1 億 15
百万円、企業研修事業は同微増収の 2 億 55 百万円、同 11%営業増益の 48 百万円となった。な
お、セグメント別営業利益の調整額は 32 百万円(前期 18 百万円)。
2017 年 2 月期は先行投資を追加
2017 年 2 月期の会社計画は、売上高 17 億 74 百万円(前期比+6%)、営業利益 2 億 41 百
万円(同+12%)、経常利益 2 億 41 百万円(同+20%)、当期利益 1 億 65 百万円(同+17%)。
前期に比べて、成長スピードが減速するように見えるが、同社社長は高い目標を掲げて無理な営
業を行うことは回避したいとしている。また、2025 年に高精度の翻訳機を完成する目標に向けて研
究開発を加速するため、先行投資の追加として開発費 31 百万円を投入する。具体的には、DNN
(Deep Neural Network、人間の脳を模した深層学習技術)と同社が保有する独自技術を組み
合わせて翻訳精度の向上を図る実験に充当する。
セグメント別の業績計画は開示していないが、安定収益源の翻訳・通訳事業、企業研修事業は
ほぼ横ばい、MT 事業と GLOZE 事業で 20%程度の伸長を見込んでいるようである。前期に黒字
化した GLOZE 事業は機械翻訳部分の増加で更なる利益率の改善が期待できると見られる。
一方、今期は新製品として、御社専用の自動翻訳 AI 翻訳サービス「T-4OO」(Translation
for Onsha Only)の開発を計画している。顧客企業別にテイラーメイドで提供する自動翻訳システ
ムで、翻訳作業の効率化や情報セキュリティの確保という面から導入が進む可能性があると期待し
ているが、今期計画には殆ど織り込まれていない。
エース経済研究所では、今期予想を売上高 17 億 80 百万円、営業利益 2 億 45 百万円、経常
利益 2 億 45 百万円、当期利益 1 億 68 百万円とする。上場による知名度の向上や高精度で
情報セキュリティが確保された自動翻訳システムによる競争力の向上等による収益拡大が
可能と見ている。ただ、同社が投資先行型であることや事業規模が小さいため、僅かな受注の
ズレや案件規模の変動などで収益が振れやすいというリスクには留意する必要があろう。
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審査番号 TA16-111
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決算レポート/ロゼッタ
ACE Research Institute
自動翻訳機の開発を推進
同社は、人間による翻訳・通訳が殆どを占める現在の国内市場で徐々に機械翻訳化が進み、
将来は自動翻訳が殆どを占めるようになると想定している。これに伴い、今後は GLOZE 事業の成
長と収益性の向上が進み、その後に MT 事業の収益成長が加速するという軌道を描いている。
このため、2006 年のビッグデータを統計解析する AI 型自動翻訳「熟考」の開発以来、昨年投入
した 2015 の専門分野別に細分化した「熟考 2015」へと機能の拡充を進めてきた。前述の通り、今
年は「T-4OO」の開発を計画し、来年には同社が 2025 年に完成を目指している自動翻訳機の
原型となる翻訳エンジン「T-4PO」(Translation for Private Only)バージョン 1.0 の開発に注
力する。2025 年には、この「T-4PO」の完成形の実現を目指して開発を加速する方針である。完
成形は画像認識/音声認識 AR(Augmented Reality:拡張現実)によって目で見ているも
のや音声を精度 95%で自動的に日本語に変換できる翻訳機で、ウエラブル端末内蔵型を想定
している。
なお、同社は大きな技術的ブレイクスルー、業務提携、M&A 等の要素を除いた現在の事業の
拡大による収益見通しを中期的な業績ガイダンスとして公表している(下表)。
中期業績ガイダンス
(単位:百万円、%)
売上高
営業利益
経常利益
当期利益
2016/2期
1,668
216
201
141
2017/2期
1,774
241
241
165
伸率
6
12
20
17
2018/2期
2,008
292
287
203
伸率
13
21
19
23
2019/2期
2,217
389
364
256
伸率
10
33
27
26
出所:会社資料より、エース経済研究所作成
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ACE Research Institute
≪アナリストによる宣言≫
私、石飛 益徳は本調査資料に表明された見解が、対象企業と証券に対する私個人
の見解を正確に反映していることをここに証明します。
また、私は本調査資料で特定の見解を表明することに対する直接的または間接的な
報酬は、過去、現在共に得ておらず、将来においても得ないことを証明します。
≪利益相反に関する開示事項≫
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