サポイン事業化成功事例 企業名 企業情報 住所 株式会社 FJ コンポジ ット 〒066-0009 北海道千歳市柏台南 2-2-3 Tel/Fax 0123-29-7034 0123-29-7835 HP www.fj-composite.com 資本金 35 百万円 代表者 代表取締役 津島 栄樹 【事業内容】 炭素素材を中心とした異種材料の特徴を複合化し、燃料電池セパレータ、炭素/炭素複 合材、ヒートシンク等顧客のニーズを満足する素材の提供 【主要取引先】 京セラ(株)、新日鉄住金マテリアルズ(株) 、富士電機(株) 、住友電工(株)、 【採択プロジェクト名】 平成 18 年度中小機構採択 「燃料電池セパレータ板の成形技術開発」 【事業化成功製品及び特長】 (1)事業化製品(下図写真) 燃料電池用セパレータ板、蓄電システムなど (炭素粉末樹脂成形体) (2)製品の特長、顧客(市場、用途) ・熱硬化性樹脂と炭素粉末のコンパウンドに温度を加えずにプレス圧力だけで成形し、 その後まとめて熱処理する手法により、高速生産を実現する製造技術を確立し、製造 コストを低減した。 ・開発したセパレータ板は燃料電池用として量産評価が進んでいる。また、レドックス フロー電池のような二次電池にも適用が可能である。 ※レドックス電池:2 次電池の一種で、イオンの酸化還元反応を溶液のポンプ循環によ って進行させ、充電と放電を行う流動電池で大型化に適する。 ・その他、各種電池製造メーカ向けに蓄電池、電極材などとして供給 セパレータ(隔膜) レドックス蓄電池の構造 (住友電工 HP より転記) 売上高(含む開発成功品) H20 年度 47.6 百万円 H22 年度 64.0 百万円 H24 年度 49.9 百万円 H26 年度 147.7 百万円 【事業化までの経緯】 (1)当初の想定顧客(市場)と製品及びその理由(市場ニーズ) ・当初は自動車用の燃料電池のセパレータ板の製造を目指した。同時に、家庭用燃料電 池も視野に入れていた。それらは、次世代の動力源として高い期待が寄せられていた 市場であったことが理由である。 (2)事業化達成の障壁と具体的な打開方法 ①事業化達成の障壁となったもの ・当初の想定市場においては、長期間の評価期間を要し、ベンチャー企業では容易に 参入できる市場では無く、売り上げは殆ど無かった。 ・事業化には多くの資金が必要なため、その資金調達が最も高い障壁となった。 ・現状では開発の補助金制度はあるが、その開発が上手く出来た時に、事業化をサポ ートする資金を供給する制度は殆ど無い。利益を上げる前に資金は必要であるが、 事業にはリスクがあることなどから、銀行融資は適していない。一方で、多くのベ ンチャーキャピタルでは少額の資金で株式公開を迫るなど、現実に即していない。 そのため、事業化に必要な十分な資金を調達することが最大の問題である。 ・弊社の場合、セパレータでの売り上げの無い中、平成 24 年度のサポインの採択で高 機能性放熱材の開発に取組み、会社基盤技術の更なる確保・維持を図ったが、開発 の「死の谷」の突破に約 8 年を要した。 ・当社が北海道に新工場を建てられたのは、地元金融機関、国の助成金、政策金融公 庫から次世代産業として支援を受けられた結果である。 ②事業化の為、顧客をどの様に開拓したのか ・創業当初、開発型ベンチャー企業として好意的にマスコミに取り上げられ、新聞記 事や学会発表などを通して会社の知名度がアップした。その後殆どの場合、蓄電池 の新素材を求めているユーザー側からのコンタクトがあり、現在もその状況は変わ っていない。 ・現在のセパレータの主要なユーザーは中小機構採択サポインの成果報告書をネット 上で探索し、弊社の存在を知りコンタクトをしてきた。 ・大手企業に認められた結果、PEFC およびそれ以外のタイプの燃料電池や、新型の 畜電池などの大市場に対して、今後国内海外向けに製品を生産する予定。 ③事業化時の課題と対応(コスト、品質、機能、生産等) ・これまではサポインで導入した試作機で各種蓄電池向けの評価用サンプルを製造し 販売してきたが、売上高から言えば、ようやく事業化が始まった段階である。 ・蓄電池等のセパレータ(セルスタック)に採用されることにより事業拡大が期待さ れる。今後の事業拡大に対応する為、2016 年夏には新設備を導入し、本格的にセパ レータ事業に参入する計画である。 ・その技術は黒鉛粉末と樹脂粉末からなる粉末原料からの成形技術となる。従来の技 術の場合、樹脂料の割合が多いことから、押出機による射出成形が一般的であった が、燃料電池用では黒鉛粉末の割合が圧倒的に高く、そのような成型方法は適用で きなかった。そのため圧縮成形方法を検討し、断面形状が異なる溝付き板を緻密に 成形出来る技術を開発し、製品に仕上げた。セパレータとして電気導電性と耐食性 が要求されるが、本開発品はこの両方とも満足する物に仕上がった。 ④事業化に成功した要因 ・当初予定以外の大型蓄電池市場にも参入できた。 ・開発した技術、製品が顧客の、耐食性、伝導性等の要求にマッチしていた為 ・伸びている蓄電池の市場に参入出来た為 ・蓄電池のセパレータを探していた最適な顧客先に遭遇出来た事 ⑤採択 10 年目の現在 ・新工場を建設出来た ・量産テストラインを設置予定。 (2016 年夏) 2015 年 4 月、千歳の新工場に移転 【社長のことば】 ①サポイン事業が企業経営に果たした効果 サポインに応募することは、書類の作成などの面において時間を必用とします。また採 択された場合、研究を成功させる責務を負います。そのため、当初は申請に躊躇いがあり ました。 しかしながら、採択されたことにより、資金的な面での心配が無くなり、研究に集中し て取り組むことが出来ました。その結果、当初の目標を達成することができました。 サポインでの研究に取り組む事により、多くの経験と実績を積むことが出来、例え失敗 の場合の実験でも貴重な体験となりました。 この多くの経験がその後の事業展開に柔軟に対応することを可能にした基礎になったと 確信しております。それらの意味でも、サポイン事業に採択されたことは、研究開発にも 事業経営においても大きな効果をもたらしました。 ②今後への希望及び展開 サポイン研究が終了後も、自社での開発を継続しました。それはサポイン研究の期間以 上に長い時間を有しましたが、2016 年にはようやく量産ラインを設置するところまでにな りました。 さらに、開発したセパレータ板は電気を通すプラスチックであり、同時に耐食性を有し ています。これらの特性を生かした電池材料全般への市場展開を図りたいと思っています。 また、弊社は、2015 年 4 月に北海道千歳市に新工場を建設して移転しました。 熱板プレス成形は発熱を伴う工程であり、天然クーラーのような環境である北海道は最 適な土地であり、湿度の少ないことも吸湿性のある炭素を扱うには適しています。近くに は原料・製品の入出庫に利用できる苫小牧港があり、そこから世界に製品を出荷すること が可能です。 今後は、これらの地の利を利用し、北海道に燃料電池関連事業製品を製造する拠点を構 築するとともに大きな市場を獲得し、北海道の経済発展に寄与する夢を持っています。 【参考】 研究開発の成果の概要は以下の HP で公表されている。 「燃料電池セパレータ板の成形技術開発」 http://www.smrj.go.jp/keiei/dbps_data/_material_/common/chushou/b_keiei/keieitech/ pdf/fjkonnpojiltsuto7.pdf
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