EPAの原産地規則について

平成28年4月25日
EPA利用促進セミナー資料
EPAの原産地規則について
門司税関
業務部
知的財産調査官(前原産地調査官)
長城
憲明
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
本日の説明事項
1.特恵税率と原産地規則
2.原産地基準(原産品とは)
3. 積送基準と手続的要件
4. まとめ
2
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
1. 特恵税率と原産地規則
3
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
(1)特恵税率とは
・「特恵税率」とは、特定の国・地域の産品に対
して与えられる他の国よりも低い税率。
一般特恵税率
(GSP:Generalized System of Preferences)
「特恵税率」
・開発途上国及び地域が適用対象
経済連携協定税率
(EPA: Economic Partnership Agreement)
・EPA相手国が適用対象
・日本が結んでいるEPAは14種類
4
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
特恵適用対象国
アセアン締約国
スイス
10カ国(含日本)
オーストラリア
2国間、アセアン適用可能
GSP受益国
ブルネイ
シンガポール
2国間のみ
適用可能
144カ国
(関税暫定措置法施行令別表第一)
タイ
マレーシア
2国間、アセアン、
GSP対象国
フィリピン
ベトナム
LDC:アセアン、
GSP対象国
カンボジア
メキシコ
5
チリ
5
インド
ミャンマー
ペルー
ラオス
インドネシア
(日アセアン協定未発効)
2国間、GSP対象国
◎EPAとGSPの両方に税率の設定がある場合
原則:EPA税率が優先されGSP税率は適用不可
例外:GSP税率の方がEPA税率より低い場合(両方適用可能)
LDCの場合(税率に関係なく両方適用可能)
(関税暫定措置法施行令第25条第2項第6号、第7号)
(2015年7月現在)
5
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
我が国のEPA
日本は、2002年に発効した日シンガポールEPA以降、これまで14のEPAを発効
各国とのEPAの進捗状況
: 共同研究等
2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
韓国
: 交渉
4月
12月
: 大筋合意
GCC (注1)
ASEAN (注2)
9月
4月
10月
(投資・サービス)
3月
カナダ
コロンビア
11月
3月
5月
EU
4月
7月
RCEP (注3)
5月
9月
トルコ
(注2)ASEANとの日ASEAN包括経済連
携協定は、物品貿易については署名・発
効済(インドネシアとの間では未発効)で
あるが、投資・サービスについては、2010
年から交渉中。
12月
11月
日中韓
(注1)GCC(湾岸協力理事会) : アラブ
首長国連邦、オマーン、カタール、ク
ウェート、サウジアラビア、バーレーン(計
6か国);2009年以降、交渉延期
11
12
※発効又は署名済みEPA
シンガポール
メキシコ
マレーシア
チリ
タイ
インドネシア
ブルネイ
2002年11月発効 (2007年9月改定)
2005年 4月発効 (2012年4月改定)
2006年 7月発効
2007年 9月発効
2007年11月発効
2008年 7月発効
2008年 7月発効
ASEAN(物品貿易)
フィリピン
スイス
ベトナム
インド
ペルー
豪州
モンゴル
TPP (注4)
2008年12月発効
2008年12月発効
2009年 9月発効
2009年10月発効
2011年 8月発効
2012年 3月発効
2015年 1月発効
2015年 2月署名 (未発効)
2016年 2月署名 (未発効)
(注3)RCEP(東アジア地域包括的経済
連携) : ASEAN加盟国(インドネシア、カ
ンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、
ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャン
マー、ラオス)、日本、中国、韓国、豪州、
ニュージーランド、インド(計 16か国)
(注4)TPP(環太平洋パートナーシッ
プ) :豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、
メキシコ、マレーシア、ニュージーランド、
ペルー、シンガポール、米国、ベトナム
(計12か国)
これらの国との貿易に
ついては、
EPA税率の適用が可能
6
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
(2)特恵税率適用のための条件
①輸入される産品に関し、特恵税率が設定されていること(EPA税率の場合、
協定の譲許表、一般特恵税率の場合は関税暫定措置法別表)
②生産された貨物が、「原産品」であ
③運送の途上で「原産品」という資格を
ると認められること(=原産地基準
を満たしていること)
失っていないこと(=積送基準を満た
していること)
→この原産地基準を満たしていることを
証明する書類が「原産地証明書」
→この積送基準を満たしていることを証明
する書類が「運送要件証明書」(通し船荷
証券の写し等)
他の国
日本
相手国
④税関に対して、原産地証明書及び(必要
に応じ)運送要件証明書を提出するなど、
必要な手続き(手続要件)を行うこと
4つの条件をすべて満たさなければいけない!
7
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
輸入される産品に関し、特恵税率が設定されていること
HS番号
一般特恵(GSP)
経済連携協定(EPA)
【出典】税関ホームページ
実行関税率表
http://www.customs.go.jp/
8
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
参考 輸出される産品に関し、特恵税率が設定されていること
日本貿易振興会(JETRO)が契約しているWorld
Tariffを使えば、日本に居住している方は、我が国
がEPAを締結している国を含む175カ国の関税率
を調べることができます(JETROのページからユー
ザー登録が必要です(無料))。
メキシコに自動車(8703.90)
を輸出する場合。
(JETRO 世界各国の関税率)
http://www.jetro.go.jp/the
me/trade/tariff/
日メキシコEPAを利用すれば、
メキシコにおいて、関税なしで
輸入することができる。
9
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
関税分類番号(HS番号)とは?
• 関税分類番号(HS番号)
– 関税分類番号(HS番号)~HS条約(商品の名称
及び分類についての統一システムに関する国際
条約)の品目表の番号
シャープペンシルの HS番号???
• 類(2桁)・・・(例)第96類
Chapter
• 項(4桁)・・・(例)第96.08項
tariff heading
• 号(6桁)・・・(例)第9608.40号
tariff subheading
10
10
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
原産地規則の構成(概略)
特恵税率が
設定されて
いること
原産地規則の
3大構成要素
3種類の原産品
完全生産品
(材料:[自然]または完全生産品のみ)
原産地基準
原産材料のみから
生産される産品
EPAのみ。
GSPでは実質的変
更基準を満たす産
品に含まれる。
(材料:原産材料のみ)
原産地規則
実質的変更基準
積送基準
実質的変更基準を
満たす産品
関税分類変更基準
付加価値基準
(材料:非原産材料を使用)
加工工程基準
手続的規定
原産地証明書等
運送要件証明書
実質的変更基準の例外
累積(EPAのみ)
自国関与 (GSPのみ)
僅少の非原産材料
原産資格を与えるこ
ととならない作業
11
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
2. 原産地基準(原産品とは)
12
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
原産地基準を満たしていること
(=生産された貨物が「原産品」であると認められること)
【日タイEPA第28条 原産品】
この章に別段の定めがある場合を除くほか、次のいずれかの
産品は、締約国の原産品とする。
(a) 当該締約国において完全に得られ、又は生産される産品で
あって、2に定めるもの
完全生産品
(b) 当該締約国の原産材料のみから当該締約国において完
全に生産 される産品
原産材料のみから生産される産品
(c) 非原産材料をその全部又は一部につき使用して当該締約
国において完全に生産される産品であって、附属書2に定
める品目別規則及びこの章の他のすべての関連する要件
を満たすもの
実質的変更基準を満たす産品
⇒(a)~(c)のいずれかであれば、特恵待遇を要求できる。
*他のEPAにおいてもほぼ同様の規定あり
13
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
① 完全生産品
1次材料
マレーシア
マンゴー
マンゴージャム
第2007.99号
2次材料
日本
りんご
ペクチン
第20類
その「生産」に1ヵ国のみが関与する(=「生産」が1ヵ国で完結して
いる)産品
タイプ1:農水産品、鉱業品の一次産品
タイプ2:くず、廃棄物やそれらから回収される物品
タイプ3:完全生産品のみから生産される物品
14
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
② 原産材料のみから生産される産品
1次材料
マレーシア
マンゴー
マンゴージャム
第2007.99号
2次材料
A国
りんご
日本
ペクチン
第20類
生産に直接使用された材料(1次材料)はすべて原産材料であり
外見上は1ヵ国で生産が完結しているように見えるが、2次材料、
3次材料・・と遡っていくとどこかに他の国の材料が使用されて
いるもの。
15
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
③ 実質的変更基準を満たす産品
1次材料
マレーシア
A国
マンゴージャム
マンゴー
第2007.99号
ペクチン
大きな
変化
日本
第20類
他の国の材料(非原産材料)を直接使用し、「大きな変化」を伴う
加工が行われ製造された物品。
16
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
【原産品としての3つのカテゴリーの違い】
二次材料以前
(a)完全生産品
原産材
料R3
材料をどこまで遡っても
原産材料のみ
(b)原産材料のみから
生産される産品
一次材料は全て原産材料だが、
二次、三次材料…と遡ってい
くとどこかで非原産材料が出
てくる
一次材料
原産材
料R1
産品
原産材
料R2
非原産
材料R3
原産材
料R1
X国
産品
原産材
料R2
(c)実質的変更基準を
満たす産品
原産材
料R1
一次材料のうち少なくとも
1つは非原産材料
原産材
料R2
※一次材料・・・産品に直接使用される材料
二次材料・・・一次材料の材料
X国
X国
産品
非原産
材料R3
17
再掲
特恵税率が
設定されて
いること
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
原産地規則の構成(概略)
原産地規則の
3大構成要素
3種類の原産品
完全生産品
(材料:[自然]または完全生産品のみ)
原産地基準
原産材料のみから
生産される産品
(材料:原産材料のみ)
原産地規則
実質的変更基準
積送基準
実質的変更基準を
満たす産品
関税分類変更基準
付加価値基準
(材料:非原産材料を使用)
加工工程基準
手続的規定
原産地証明書等
運送要件証明書
実質的変更基準の例外
累積(EPAのみ)
自国関与 (GSPのみ)
僅少の非原産材料
原産資格を与えるこ
ととならない作業
18
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
実質的変更基準の種類
• 「大きな変化」=「実質的変更」には、以下の3つ
の基準が存在する。
(1)関税分類変更基準
HS番号の変化に着目!
(2)付加価値基準
付加価値の増加に着目!
(3)加工工程基準
加工工程に着目!
EPAごと、HS番号ごと
に定められている
いずれの基準を適用するかは品目別規則に規定
19
(1)関税分類変更基準
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
全ての非原産材料と製造された産品の間で、HS番号が一定以上変わっ
ていれば大きな変化があったとする基準。
日インドネシアEPA 第42.02項 品目別規則:第42.02項への他の類の材料からの変更
A国
牛革
インドネシア
財布
非原産材料について
のみ考慮する。
第42.02項
日本
第41.07項
B国
その他インドネシア原産材料
卑金属製バックル
第83.07項
縫糸
第54.01項
非原産材料である牛革、卑金属製バックル及び縫糸は、財布
の属する類(42類)ではない他の類の材料であることから、財
布は日インドネシアEPA上のインドネシアの原産品と認めら
れる。
20
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
(2)付加価値基準
その国で付加された価値の割合(原産資格割合)が一定以上であれば
大きな変化があったとする基準。
日タイEPA 第23.09項 品目別規則:原産資格割合が40%以上であること。(第23.09項の
産品への関税分類の変更を必要としない。)。
中国
タイ
CIF $20
非原産材料価額
日本
ペットフード
肉
FOB $50
付加され
た価値
原産材
料価額
労務費
製造
経費
利
益
その
他
産品の価額
原産資格割合 =
産品の価額(FOB $50)-非原産材料価額(CIF $20)
産品の価額(FOB $50)
= 60%
ペットフードは日タイEPA上のタイの原産品と認められる。
21
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
(3)加工工程基準
非原産材料に「ある特定の加工・作業」が行われた場合、大きな変化が
あったとする基準。
日タイEPA 第2916.12号品目別規則:使用される非原産材料について(中略)化学反応、
(抜粋)
精製、異性体分離の各工程若しくは生物学的工程
を経ること(後略) 。
中国
アクリル酸
CH2CHCOOH
第2916.11号
韓国
非原産材料
のみ考慮
タイ
日本
アクリル酸
エチル
CH2CHCOOC2H5
第2916.12号
エタノール
C2H5OH
第2207.10号
→化学式が変化している。→化学反応が生じている。
→アクリル酸エチルは日タイEPA上のタイの原産品と
認められる。
22
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
品目別規則の読み方
三
九
・
一
六
3916~3926に分類される貨物の
品目別規則は・・
②原産資格割合40%以上
→付加価値基準
③化学反応、精製、異性体分離
等
→加工工程基準
の3つの基準で構成されている
が、各基準が「又は」で繋がれて
いることから①、②、③のいずれ
かを満たせばよい。
使用されている非原産
材料が満たすべき条件
産
品
へ
の
関
税
分
類
の
変
更
を
必
要
と
し
な
い
。
)
三
九
・
一
六
項
か
ら
第
三
九
・
二
六
項
ま
で
の
各
項
の
工
程
若
し
く
は
生
物
工
学
的
工
程
を
経
る
こ
と
(
第
約
国
に
お
い
て
化
学
反
応
、
精
製
、
異
性
体
分
離
の
各
③
使
用
さ
れ
る
非
原
産
材
料
に
つ
い
て
い
ず
れ
か
の
締
い
。
)
又
は
、
-
①項の変更
→関税分類変更基準
輸入する産品
のHS番号
三
九
・
二
六
②更
①
各
項
の
産
品
へ
の
関
税
分
類
の
変
更
を
必
要
と
し
な
と
(
第
三
九
・
一
六
項
か
ら
第
三
九
・
二
六
項
ま
で
の
項
原 、 の
産
産
資
品
格
へ
の
割
当
合
該
が
各
四
項
十
以
パ
外
ー
の
セ
項
ン
の
ト
材
以
料
上
か
で
ら
あ
の
る
変
こ
第
三
九
・
一
六
項
か
ら
第
三
九
・
二
六
項
ま
で
の
各
【
日
タ
イ
E
P
A
品
目
別
規
則
】
23
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
品目別規則の読み方
(スイスからのワインの場合)
スイス
ぶどう
(8類)
ぶどうを醸造
→ワイン(22類)
ぶどうをフランスから調達し、スイ
スで醸造しても、日スイスEPAの
品目別規則を満たさない
-
フランス
輸入する産品
のHS番号
二
二
二・
○
二四
・
○
六
更
をC
C
除(
く第
。八
CCとは、各類、項、
)類
号の産品への他
又
の類の材料からの
は
変更を示す。
第
二
○
類
使用されている非
か
原産材料が満たす ら
べき条件
の
変
【
日
ス
イ
ス
E
P
A
品
目
別
規
則
】
24
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
各EPAの品目別規則の内容はこちらから確認できます
参考
①『輸出入の手続き』をクリック
税関ホームページ
http://www.customs.go.jp/
25
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
各EPAの品目別規則の内容はこちらから確認できます
参考
①『輸出入の手続き』をクリック
②『原産地規則ポータル』をクリック
税関ホームページ
http://www.customs.go.jp/
26
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
各EPAの品目別規則の内容はこちらから確認できます
参考
③『協定・法令等』をクリック
原産地規則ポータル
原産地規則に関する各種情報や手引き等を
一括して掲載する専用ページ。
※原産地規則全般、EPA、GSP、事前教示、関連情報等
税関ホームページ
http://www.customs.go.jp/
27
EPA利用促進セミナー (2016年4月25日)
各EPAの品目別規則の内容はこちらから確認できます
参考
品目別原産地規則はこちら
(各協定毎に掲載)
記載要領の確認はこちら
(各協定毎に掲載)
税関ホームページ
http://www.customs.go.jp/
28