LNG - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

中国の天然ガス(LNG)需給動向
2016年4月21日
JOGMEC調査部
竹原 美佳
1
本日の内容
 天然ガス需給の現状
 2015年の需給実績、政府目標とのかい離
 国産ガス供給、輸入(パイプライン・LNG)
 今後の見通し
 非国有石油企業のLNG輸入事業への参加
 需要の不確実性
 市場創設、アジア消費国連携の動き
 まとめ
2
天然ガス需給の現状
天然ガス需給推移(2000~2015年)
天然ガス需給(2015年)
30%
2,400
生産
1,273億m3≒12.3Bcfd
(前年比1.6%増)
見かけ消費
1,844億m3
≒17.8Bcfd
(同1.6%増)
純輸入
571億m3
≒5.5Bcfd
(同2.4%増)
25%
1,900
20%
1,400
15%
900
10%
400
5%
輸入依存度 31%
(100) 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 0%
新華社、ICIS等に基づき作成
CBM・CMM)は含まない
(億m3/年)
国産ガス
LNG
輸入パイプラインガス
輸出
消費成長(%)
China LNG Weekly、新華社China OGP等に基づき作成
2015年は経済減速、硬直的な統制価格により価格競争力が低下、
消費の伸びが減速。長期契約による新規供給が需要の伸びを上回
り供給過剰に。
3
天然ガスは環境(大気汚染改善)政策により過去10年来
暖房(発電)、交通輸送、家庭用の利用が伸長
100%
2000
1800
億m3
80%
1600
1400
1200
家庭用, 17%
家庭用, 18%
交通輸送, 8%
電力・熱
等, 6%
交通輸送, 11%
60%
電力・熱
等, 15%
1000
800
40%
製造業, 47%
600
製造業, 42%
400
20%
200
採掘業, 18%
0
2005年
2014年
0%
2005年
採掘業, 9%
2014年
消費は2005年から2014年にかけて4倍の1,870億m3に増加。発
電・熱供給、交通輸送、家庭用の消費が伸長。製造業の比率が
高く経済減速の影響大。
4
参考:エネルギー源別消費弾性値
エネルギー源別消費弾性値
2.5
2.0
天然ガス
1.79
1.5
石油
0.83
石油0.91
0.5 エネルギー
0.54
石炭
0.0
0.17
天然ガス
0.65
1.0
エネルギー
0.14
石炭
‐0.22
‐0.5
石炭
石油
天然ガス
一次エネルギー
天然ガスは石油に比べ“新常態”(経済減速や産業構造調
整)の影響が大きい
5
政府目標と供給実績
単位:億m3
2015年(実績)
エネルギー発展戦
政府天然ガス供給目標
略行動計画
エネルギー産業の大気汚染防止作業
(14年11月公示)
計画に関する通知(14年5月公示)
2015年(目標)
2017年
2020年
1次エネルギー消費に占める
天然ガス(CBM・CMMを除く)
天然ガス供給(在来型、タイト
ガスを含む)
シェールガス供給
5.90%
7%
9%
10%以上
1,228
1,385
1,650
1,850
45
65
100
300
天然ガス供給計
1,273
1,450
1,750
2,150
輸入(パイプライン)長期契約
336
450
650
輸入(LNG長期契約)
輸出(パイプライン)
天然ガス供給(国産・輸入)
参考:CBM・CMM利用量
参考:供給計(CBM・CMM利
用量を含む)
参考:石炭合成ガス(CTG)供
給
268
-32
1,844
88
1,932
345
469
2,245
100
2,345
2,869
170
3,039
15
90
320
政府目標(2015年)未達。需要低迷や投資縮小で生産が減少
した他、非在来型ガスの開発が低調。
240
参考:中国のシェールガス開発
涪陵(Fuling)Jiaoshiba
Fuling
時期、発見井、生産量
発見
2012年11月、蕉頁(Jiaoye)1HF、
7.2MMcfd(シルル系Longmaxi)
生産開始
2014年3月
開発計画(1期)
2015年35億m3(0.3Bcfd)、2017年70億m3(0.7Bcfd)
Sinopecの涪陵(Fuling)シェールガスを除き開発は低調
7
参考:中国のCBM資源
中国のCBM資源分布
CBM/CMM利用量計
億m3
100
80
60
China OGPにもとづき作成
山西省を中心に開発・利用が
進むが政府目標は未達
40
20
0
2010年
2011年
2012年
2013年
2014年
2015年
8
参考:石炭合成ガス(CTG)の開発
【生産中】
新疆
慶華伊犂
内モンゴル
大唐克旗
古匯能化工
【政府承認】
Sinopec
新疆-広東-浙
江CTGパイプライ
ン
総延長:
約8,000km
輸送能力:
300億m3
2015年6月環境影
響評価取得
2015年
生産能力
:約30億m3
生産量
:約15億m3
*パイプラインルート詳細は不明
CTG開発は地方振興と低品位炭の活用という観点で一時脚光を浴び、計画中
プロジェクトの生産能力は約1,000億m3/年、長距離パイプライン計画も進行
中だが、政府は経済性や環境懸念から2014年7月以降許認可に慎重姿勢。
出所:「ガスビジョン2030と石炭代替天然ガスの検討」
総合資源エネルギー調査会鉱業分科会第三回クリーンコール部会 資料8
(平成21年4月、(社)日本ガス協会)
9
10
参考:都市ガスの石炭ガスから天然ガ
スへの転換進展
1,200
億m3
石炭ガス
2005年256億m3
↓
2014年56億m3
5分の1に減少
964
1,000
800
600
400
140
200
56
0
2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
石炭ガス
消費量(億m3)
天然ガス
消費量
(億m3)
LPG消費
(億m3)*
天然ガス
2005年210億m3
↓
2014年964億m3
4.6倍に増加
都市ガスは石炭ガス(石炭を蒸し焼きにして製造)
から天然ガスへの転換が進んでいる
11
天然ガスの国別輸入比率
ミャン パプアニュー
マー ギニア
4%
カザフ 6%
スタン
1%
ポートフォリ
オ・スポット
4%
豪州
マレーシア
12%
7%
ウズベキ
スタン
3%
インドネシア
6%
トルクメニス
タン
46%
カタール
11%
天然ガス輸入量(2015年)603億m3
China LNG Weekly、新華社China OGP等に基づき作成
パイプライン輸入が輸入全体の56%、LNGは44%
12
パイプラインガス輸入:輸入量増加、伸び
は鈍化
国別パイプラインガス輸入(2010~2015年)
400
カザフスタン
1%
ウズベキスタ
ン
9%
ミャンマー
11%
億m3
300
200
トルクメニスタ
ン
79%
100
0
2010年
パイプラインガス輸入量
(2015年)336億m3
2011年
トルクメニスタン
2012年
ウズベキスタン
2013年
2014年
カザフスタン
2015年
ミャンマー
China LNG Weekly、新華社China OGP等に基づき作成
パイプライン輸入:輸入量は増加したが伸び率は鈍化。ウズベキスタ
ンは国内需要増で輸出抑制、カザフスタンは上流権益を保有する広
匯(Guanghui)が国産LNG向けに独自調達、競争力低下で抑制。
13
LNG輸入:日韓に次ぐ世界3位のLNG輸入
国だが初の前年割れ
主要契約相手国別LNG輸入(2010~2015年)
スポット・ポート
フォリオ
パプアニューギ
8%
ニア
8%
2,500
万t/年
2,000
豪州
28%
1,500
1,000
カタール
24%
マレーシア
17%
インドネシア
15%
LNG輸入量
(2015年)1,967万トン
500
0
2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年
豪州
マレーシア
インドネシア
カタール
パプアニューギニア
スポット・ポートフォリオ
China LNG Weekly、新華社China OGP等に基づき作成
LNG輸入:世界3位の輸入国(シェア8%)だが輸入開始以来初の前
年割れ。スポット等の調達抑制や長期契約の見直し、調整を実施し
た模様。国有石油企業に出資事業持ち分LNG入札、転売の動き。
14
LNG長期契約の調達抑制・調整
万トン
カタールからのLNG輸入(2014年1月~2016年2月)
140
120
100
80
60
40
20
0
長期契約の調達を見直し、調達時期を需要期に合わせ調整
15
LNG長期契約の追加供給続く
露Yamal
加Pacific
Northwest
豪AP
パプアニュ 豪Curtis
ーギニア
カタール・ PNG
Qatargas3
インドネシア・ Qatargas4
豪Gorgon
供給過剰、受入基地建設遅
延により、豪Curtisに続き、豪
AP LNGも調整が必要か?
タングー
マレーシア・
MLNG
豪NWS
2006
2009
2011
2013
2014
2016 2017~
SPAのみ(ポートフォリオ・短期契約を除く) 赤字は2015年転売対象
16
【2015年のLNG入札・転売事例】
供給
売買契約・仕向け先
豪QC LNG(CBM)
液化能力(1系列):425万トン/年
生産開始:2014年
事業者:BG(50%)、CNOOC:50%出資
売買契約:360万トン/年(14~34年)
2015年LNGを入札、転売
広東・珠海(Zhuhai):350万トン/年
操業中、事業者:CNOOC他
【2016年に供給を開始するLNG】
供給
契約量・仕向け先
豪AP LNG(CBM)
液化能力(1・2系列):860万トン/年
生産開始:2015年
事業者:Origin Energy(37.5%)、
Sinopec:25%出資
売買契約:760万トン/年(15~35年)
①広西・北海(Beihai):350万トン/年
操業中、事業者:Sinopec他
②天津(Tianjin):300万トン/年
事業者:Sinopec他
建設遅延(2017年以降)
豪Gorgon
液化能力(1~3系列):1,560万トン/年
生産開始:2016年(予定)
事業者:Chevron、Shell、ExxonMobil
売買契約:425万トン/年(15~35年)
①河北・唐山(Tangshan):350万トン/年
操業中、事業者:PetroChina他
②大連(Dalian):300→600万トン/年
拡張工事中、事業者:PetroChina他
売買契約の見直し、調達の調整あるいは余剰のLNGを入札に付す可能性
参考:13次五か年計画の方向性
石炭:1次エネルギーにおける消費を66%→60%以下 抑制の重点は経済発展地域
(大気汚染防止)
石油・天然ガス:能源局は石油天然ガス体制改革総合計画案を作成。13・5期間中
、油ガス産業は上下流で市場化改革を進める。探鉱開発から輸入分野に至る分野
の開放、パイプライン網の独立、価格の市場化を形成。
電力:増加の余地がある。全国的に統一された計画の下、高効率、インテリジェン
ス、安全の現代的な電力システムを構築する。系統効率を向上させ、経済効率と
環境レベルのバランスを図る。
原子力:主に東部沿海地域で発展させる。安全と緊急時対応、技術レベルを向上
させる。
水力:大型の水力発電基地の重点的な建設を行う。13の水力発電基地の開発ペ
ースを2015年の55%から70%に高める。
風力:出力抑制、補助金、棄風限電問題の解決など政策の調整を図る。
能力増強・電力価格などはまだ決定していないが12・5期を下回らない目標とする。
また電力抑制の必要がない地域における建設は上限を設けない。
太陽光:引き続き発展を図る。効率の向上、コスト低下、産業チェーンの競争力拡
大を図る。補助金への高い依存からの脱却を図る。
(15/10/28中国証券網、10/26人民網他)
中国共産党第18期中央委員会第5回全体会議(五中全会)10月26日~29日@北京
13次五か年計画(2016~2020年)が中心議題
参考:国有企業改革(独占業種打破)
18期三中全会「決定」における石油・天然ガス
関連項目(2013年11月)
国家発展改革委員会/国 非国有石油企業の動き
家能源局
・Sinopec Corpの石油製品販
売への出資
・PetroChinaのシェール開発
事業への参加
混合所有制の発展
(国有企業への国有
〈異業種〉、集団、民間
企業による資本参加)
競争的業務の自由化
電力、鉄道、通信、石
油・天然ガスパイプラ
インなどの整備・運営
部門の分離
パイプラインの開放管理
法試行(2014年2月)
LNG受入基地第三者アク
セス(2014年~)
非国有石油企業のLNG受
入基地建設承認(2014年
~)
非国有石油企業への原油
輸入ライセンス付与(2015
年~)
・PetroChinaパイプライン資産
の取得
・PetroChinaのLNG受入基地
を利用したスポットLNGの調達
・独自のLNG受入基地建設・
計画
・原油輸入ライセンス取得
資源価格の市場価格
化
水、石油、天然ガス、
電力、交通、通信の
価格
非民生天然ガス卸価格改
革(2015年11月他)
-
政府ウェブサイト等に基づきJOGMEC作成
19
国有独占打破政策に伴う非国有石油企業のLNG輸
入事業への参加
LNG受入基地への第三者アクセス(2014~2015年)
受け入れ基地
出資国有石油企業
利用企業
江蘇・如東
Jiangsu・Rudong
PetroChina
上海申能(Shenergy)、新奥
(ENN)、太平洋油気(Pacific
Oil & Gas)*
河北・唐山
Hebei・Tangshan
北京燃気*
遼寧・大連
Laioning・Dalian
広匯
*太平洋油気は如東基地に35%出資、北京燃気親会社北京控股は唐山基地に
29%出資
非国有石油企業は国有石油企業操業のLNG受け入れ基地を
通じスポットLNGを調達。ただし課題があり調達は限定的。
20
輸入パイプライン:操業中(中央アジア、ミャンマー)、輸送能力
650億m3
LNG受入基地:操業中13基地、受入能力4,180万t≒570億m3
非国有石油企業の主なLNG受入基地(
建設・計画中)
企業
操業中
建設中
計画中
九豊
(Jovo)
広匯能源
(Guanghui)
新奥
(ENN)
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
華電
(Huandian)
稼働・建設・計画計
立地
広東・東莞
(Guangdong
Dongguang)
江蘇・啓東
(Jiangsu Qidong)
浙江・舟山
(Zhejiang・
Zhoushan)
江蘇・赣榆
(Jiangsu Ganyu)
広東・汕頭
(Guangdong
Shantou)
広東・江門
(Guangdong
Jiangmen)
海南・澄迈
(Hainan
Chenmai)
受入能力
(万t/年)
稼働開始
100
稼働中
60 2018年(見込み)
300 2018年(見込み)
600 未定
150 未定
300 未定
300 未定
1,810
非国有石油企業は独自に受入基地の建設、計画を進める。
22
非国有石油企業のLNG調達(合意)
数量
(万トン/年)
広匯能源
(Guanghui)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
新奥
(ENN)
華電
(Huandian)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
Chevron
(Gorgon)
Total
(ポートフォリオ)
豪Origin Energy
(GLNG他ポート
フォリオ)
Petronas
(加Pacific
NorthWest
LNG)
華電
(Huandian)
BP
華電
(Huandian)
Chevron
合計
合意時期
2015年12月
N.A HoA
最大50 2016年1月
50
2016年2月
Binding HoA
最大50 2016年3月
80 2015年4月
2015年10月
100 non-bingding
HoA
2015年12月
最大100 HoA
契約開始時期
契約期間
契約開始年
N.A
2018年~2019
年
10年
2018年
10年
2018~2019年
10年
契約開始年
20年
契約開始年
20年
2020年
10年
430万トン前後
非国有石油企業はLNGの調達を進めており、実現すれば
2020年頃のLNG輸入の1割程度に達する可能性
23
非国有石油企業によるガス関連企業
M&Aの動き
新奥(ENN)、豪Santosの株式取得、筆頭株主に(2016年3月)
2016年3月、中国河北省の新奥集団(ENNグループ)子会社新奥
生態控股股分有限公司(ENN Ecological Holdings Co., Ltd)は、
Santos株式11.7%を7億5,000万ドルで取得、筆頭株主になった。
今回の戦略的な株式取得は、今般の株式取得は同社のクリーン
エネルギー産業チェーンにおける上流事業の多角化、業務の国
際展開戦略に合致したもの。
(http://www.enn‐ec.com.cn/sy)
2015年1~6月
主要事業
石炭、石炭化学、LNG、バイオ
売上
410.11百万ドル
純利益
40.97百万ドル
総資産
1657.31百万ドル
24
天然ガス需給見通し(IEA)
7000
億m3
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
2013年
2020年
2025年
生産
2030年
2035年
2040年
需要
IEA WEO2015 にもとづき作成
需要
年平均成長(13~40
年):4.7%増
20年315BCM
30年419BCM
供給
年平均成長(13~40
年):4.1%増
20年172BCM
30年260BCM
ギャップ
20年143BCM
30年159BCM
環境・排出抑制政策に伴い天然ガスの潜在需要は高いが、
供給、統制価格、電気自動車などの不確実性が存在
25
参考:エネルギー長期見通し
(能源研究会・IEA成長率を参照しJOGMEC試算)
石油換算
万トン
中国長期エネルギー見通し
(能源研究会・IEAを参照しJOGMEC試算)
400,000
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2015年
石炭
2020年
原油
天然ガス
2030年
非化石
(能源研究会予測の石
炭・非化石のエネルギ
ーミックス比率は変えず
、石油と天然ガスはIEA
年平均成長率をベース
に試算)
2015年
2020年
2030年
15/20成長
20/30成
長
原油(万b/d)
1,100
1,250
1,400
2.6%
2.3%
天然ガス(億m3)
2,000
2,250
3,500
2.4%
9.2%
26
供給の不確実性:国産・輸入ガス
2,500
億m3
2,000
ロシア(PNG)
カザフスタン
ミャンマー
ウズベキスタン
1,500
トルクメニスタン
ポートフォリオ・スポットLNG
ロシア(LNG)
1,000
カナダ
パプアニューギニア
カタール
マレーシア
500
インドネシア
2020年の需給ギャップ
(IEA WEO2015ベース)
約1,400億m3を上回る
約2,150億m3について
調達済み(ロシア西ル
ートを含む)
豪州
0
2015年
億m3
2020年
長期契約
国産ガス(非在来型を含む)供給、輸入ガス(特にパイプライ
ン)の供給に不確実性あり
27
参考:天然ガス価格改革(2011年~
2015年11月)
価格改革の概要
2011年12月
2013年7月
2014年9月
2015年4月
2015年11月
南部(広東・広西)で非民生卸価格の市場連動を試行
油価連動:上海の代替燃料(重油・LPG)の2010年輸入価格(重油60%、LPG40%の加
重平均)
割引率(10%):石油製品から天然ガスへの転換を促進するため1割割り引く
上海ネットバック:上海を基準市場とし各地のシティゲート価格を決定する
熱量(低位):重油1万kcal、LPG1万2000kcal、天然ガス8,000kcal
全国の非民生卸価格見直し
二段階の価格
①前年消費
②増加分(2011年に南部で試行した制度を適用、ただし代替燃料の輸入価格は2012
年、割引率は15%)
全国の非民生卸価格見直し
①前年消費(価格は平均18%上昇)
②増加分(価格は据え置き)
非民生卸価格見直し
前年消費と増加分価格を統合
①前年消費(価格は平均20%上昇)
②増加分(価格は平均15%下落)
直送価格(化学肥料を除く)の自由化試行
非民生卸価格見直し
①値下げ(30%)
②シティゲート価格を上限価格から基準価格に切り替え、基準価格から上下20%の変動
を認める
前年消費
価格
ドル/
MMBtu
増加分価
格
ドル/
MMBtu
-
-
9.0
12.7
10.6
12.7
10.6
7.7
28
参考:天然ガス価格統制の変遷
環境(大気汚染、気
候変動)対策
輸入ガス増加
油価連動 油価上
昇で輸入価格↑
天然ガス利用促進
石炭・石油代替
卸価格統制
石油より割安
事業者逆ザヤ拡大
卸価格統制
石油より割安
卸価格見直し↑
(13年7月・14年9月)
輸入ガス増加
油価連動 油価下
落で輸入価格↓
卸価格統制
石油より割高
価格競争力低下
卸価格見直し↓
(15年4月・11月)
29
参考:天然ガス価格推移
天然ガス卸・輸入価格(2013年1月~2015年12月、ドル/MMBtu)
18
16
14
12
10
8
6
4
2
2013年1月
2月
3月
4月
5月
6月
2013年7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
2014年9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
2015年4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
0
卸価格(前年消費)
卸価格(増加分、15年4月以降は統合)
パイプライン輸入(国境、加重平均)
LNG輸入(CIF平均)
参考:日本JLC
2015年11月の
見直しで卸価
格に上下20%
の変動
基準価格7.7ド
ル/MMBtu
に対し、6.1~
9.2ドルの変動
30
天然ガス需給(2014年~2016年2月)
硬直的な統制価格により油価下落後価格競争力が低下、15
年11月の見直し後復調、ただし需要喚起には更なる卸価格
の値下げ、柔軟性向上に向けた価格改革が必要
31
電気自動車普及拡大政策
中国政府は2020年までに新エネルギー車*の累計販売台数を500
万台とする政策
*新エネルギー車:電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド(PHV)
2015年の販売台数は33万台(BEV前年比4.5倍の24.7万台、PHV前
年比1.8倍の8.4万台)
2014年の天然ガス消費の約1割(約215億m3)が交通輸送向け
中国のバスとタクシーの5%は天然ガス自動車(NGV)**
**NGVの多くはCNG(圧縮天然ガス)、2014年末現在CNG車は441万
台、LNG車は18.4万台(WGI 2015/9/24)
電気自動車躍進の場合、天然ガス自動車(NGV)からの代替が進
み、ガソリン・軽油自動車よりも影響が大きい(インフラ、地方公共
輸送機関、タクシー)
32
エネルギー(電源構成)と天然ガス
「エネルギー産業の大気汚染防止作業計画」(発改委2014年5月)、「エネルギー発展戦略行動計画」(国務院2014年11月)、13次五か
年計画(2016年3月)、中国能源研究会(2016年3月)にもとづき作成。2015年実績は国家統計局等にもとづき作成
中長期的に石炭を抑制、非化石エネルギーを増加させる政策
33
参考:中国の発電電力量長期予測
100,000
100000
億kWh
億kWh
85,000 80000
80,000
68,000 60000
60,000
51,257 40000
40,000
20000
20,000
0
2015年1‐11月
(実績)
0
2015年1‐11月
(実績)
2020年予測
(能源研究会)
2030年予測
(能源研究会)
水力
2015年1‐11月
2020年
2030年
水力
18.1%
18.8%
16.9%
風力
3.2%
5.4%
10.6%
原子力
3.0%
5.6%
11.8%
非化石計
25.4%
34.8%
44.3%
火力
2020年予測
(能源研究会)
原子力
風力
2030年予測
(能源研究会)
太陽光他
ガス火力はピー
ク調整対応だが
石炭や非化石
の不確実性に
対し柔軟性が求
められる
34
公開・透明性のある市場創設に向けた
動き
上海石油天然気交易中心
(SHPGX)の設立
2015年3月上海自由貿易区で設立
出資企業は10社、資本金は10億
元
・国営通信社:新華社(価格等のデ
ータを発行)
・三大国有石油会社:PetroChina、
Sinopec、CNOOC
・国有、地方、民間発電・都市ガス
企業:申能(Shenergy)、北京燃気
、新奥(ENN)、中国ガス、香港中
華ガス、華能
政府主導で天然ガス(LNG)取引所を設立
35
天然ガス価格改革(2011~2016年)
価
格
政
策
上海ネットバッ
ク価格試行
(11年12月)
資源価格見直し
(11年3月、12次
五か年計画)
上海ネットバック
価格全国展開
(13年7月)
価格見直し
(14年9月、15年4
月、15年11月)
価格の市場化推進
(13年11月、18期三
中全会、国家発展
改革委員会)
取引価格を形成し、2~3年
以内に非民生ガスの公開・
透明な取引を行うことを目
指す
2011年
取
引
市
場
2016年
上海石油天然ガス
取引センター(
SHPGX)設立
(15年3月)
16年1月~現物
取引本格運用開
始、将来先物取
引を計画
現物取引試験運用
(15年7~12月)
36
政府の目的・戦略
出所:上海石油天然気交易中心
天然ガス価格の市場化政策に基づく中国の需給を反映した指
標価格の形成、アジアにおける価格指標(上海ハブ)の確立。
課題(統制価格、市場流動性、法規制、貯蔵インフラ整備など)
はあるが公開・透明性のある市場創設に向けた動きとして注目
37
アジアLNG消費国間連携の動き
JERAによるアジアLNG消費国との覚書
2015年7月 タイ発電公社EGATとの「LNG事業」の協働検討に
関する覚書
2015年10月 シンガポールのパビリオンガスとのLNGビジネス
に関する覚書
2016年2月(交渉中、報道ベース)
韓国Kogas、中国CNOOC(それぞれの国の最大のLNG需要家
)とLNGの調達提携について交渉中。
JERA-Kogas-CNOOCの3社を合わせ調達量は8,000万t/y(世
界のLNG需要の3分の1に相当)
日中韓のLNG大口購入者(JERA、CNOOC、Kogas)にLNG調達で
提携の動き。不確実性の高い天然ガス調達への対応はアジア
共通の課題。仕向地条項緩和などLNG市場の流動性向上に向
けたアジア消費国間の連携として注目に値する。
38
まとめ
 天然ガスは経済減速、価格競争力低下で供給過剰。
 LNG輸入量は輸入開始以来初の前年割れ。スポットや長期契
約の調達抑制、調達の調整、持ち分LNGの転売などで対応。
 国有独占打破政策により非国有石油企業がLNG基地の建設や
調達を進めている。
 環境・排出抑制政策に伴い天然ガスの潜在需要は高いが供給
、価格、電気自動車などの不確実性が存在。エネルギーミック
スの調整役としても価格や調達の柔軟性向上、政策的支援が
求められる。
 政府主導で設立した天然ガス取引所は課題もあるが公開・透
明性のある市場創設、アジアの価格指標確立に向けた動きとし
て注目。
 不確実性の高い天然ガス調達への対応はアジア共通の課題。
仕向地条項緩和などLNG市場の流動性向上に向けたアジア消
費国間の連携は要注目。
39
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