各論7.農林水産

各論7.農林水産
(1)農業生産・農業構造の現状
農業総産出額は近年減少傾向にあり、平成25年の総産出額は約8.5兆円で、平成5年に比べる
と約2兆円(19%)減少している。農業の総産出額(約8.5兆円)のうち、畜産が3割、米が2
割、野菜が4分の1程度を占めている。
資料:農林水産省「生産農業所得統計」
注1:耕種のその他は、麦類、雑穀、豆類、いも類、花き、工芸農作物及びその他作物の合計である。
注2:乳用牛には生乳、鶏には鶏卵及びブロイラーを含む。
注3:四捨五入の関係で内訳と計が一致しない場合がある。
参考:「農業総産出額」の推計範囲には、農業サービス(稲作共同育苗、青果物共同選果等)及び中間生産物(種苗、自給牧草等)は含まれない。
農家戸数、農業就業人口が減少してきている中、高齢化が大きく進んでいる。
農家戸数、農業就業人口の推移
年齢階層別の基幹的農業従事者数(平成26年)
(万人)
45
55
606
540
466
…
…
…
昭35年
農家戸数(万戸)
販売農家(万戸)
(割合)
主業農家(万戸)
(割合)
農業就業人口(万人)
うち65歳以上人口(万人)
(割合)
12
17
22
383
312
285
253
100
297
(77.5)
234
(74.9)
196
(68.9)
163
(64.5)
80
平2年
(%)
47.1
120
50
基幹的農業従事者数 168万人
平均年齢 66.8歳
40
30.4
30
…
…
…
82
(21.4)
50
(16.0)
43
(15.1)
36
(14.2)
60
1,454
1,035
697
482
389
335
261
40
…
…
171
(24.5)
160
(33.1)
206
(52.9)
195
(58.2)
161
(61.6)
20
基幹的農業従事者数全体に
占める割合(右目盛)
79.1
20
12.4
51.0
資料:農林水産省「農林業センサス」
10
0.0
0.08
1.4
2.3
15~19歳
20~29
0
注1:平成2年以降の農業就業人口は、販売農家の数値である。
注2:販売農家割合と主業農家割合は、総農家に占める割合である。
※ 販売農家:経営耕地面積が30a以上または農産物販売金額が年間50万円
以上の農家。
※ 主業農家:農業所得が主(農家所得の50%以上が農業所得)で、1年間に
60日以上自営農業に従事している65歳未満の世帯員がいる農家。
3.5
5.1
5.9
8.6
30~39
40~49
20.9
0
50~59
資料:農林水産省「農業構造動態調査」(組替集計)
1
60~69
70歳以上
(2)水田農業の構造改革
①背景
稲作については、経営規模の拡大が遅れており、構造改革の余地が大きい。
(注1)
(注2)
(注3)
(注4)
国家貿易によらない場合。また、農林水産省が徴収する納付金が含まれる。
WTO農業交渉(’00~)において、非従価税の関税削減幅を決定するために、基準時(’99-’01)の輸入価格及び国際価格を基に算出された数値。
野菜の一戸当たりの平均経営規模については、「耕地及び作付面積統計」における野菜の延べ作付面積を販売農家数(露地野菜)で除して試算した。
課税価格<67.93円/kg の場合。 67.93円/kg ≦課税価格≦73.7円/kgの場合の関税は「73.7円/kg-課税価格」、 73.7円/kg<課税価格の場合の関税は「無税」。(暫定税率)
出典:農林水産省「農林業センサス」、「生産農業所得統計」、「農業経営統計調査(経営形態別経営統計(個別経営))(組替集計)」、「耕地及び作付面積統計」、「家畜の飼養動向」、 財務省「実行関税率表」
<財政制度等審議会「平成28年度予算の編成等に関する建議(平成27年11月24日)」>
農業において最も改革が求められるのが、水田農業である。畜産を含め多くの品目
では主業農家が生産の大宗を担っているが、米は小規模農家が多く、高コスト構造が
続いている。こうした構造が継続してきた背景には、需要量の減少に合わせて、国が
主導して米の生産量を抑制する生産調整、いわゆる「減反」政策が行われてきたこと
がある。個々の農家まで生産量の上限を配分するとともに、その上限を毎年引き下げ
てきた。農家が転作を行えば、赤字となる作物でも主食用米と同程度の所得が確保さ
れるよう、転作に対する助成が行われている。こうした政策が、需要に応じた生産や
農家の収入拡大・コスト削減に取り組む経営マインドを、結果として阻害してきた。
2
②米の転作に対する助成の在り方
米の転作に対しては、主食用米を作付した場合との所得差が生じないようにすることを基本と
して、助成している。
主食用米・飼料用米・小麦における所得比較(10a当たりのイメージ)
農林水産省パンフレット「経営所得安定対策等の概要(平成27年度版)」で示されている数値
注1) 小麦及び主食用米は、平成23年産生産費統計(全階層平均、主産物)を用いて算定。
注2) 飼料用米は、取組事例のデータを用いて算定。
注3) 飼料用米の水田活用の交付金の単価は、標準単収値の収量が得られた際の単価を8万円/10aとして、収量に応じて下限5.5万円/10aから上限10.5万円/10aの範囲で変動。
注4) 飼料用米の単収が標準単収値と同じとなる場合の経営費は、主食用米の機械を活用するため、主食用米の経営費から農機具費及び自動車費の償却費を控除。
注5) 飼料用米について、多収性専用品種に取り組み、単収が標準単収値+150kg/10aになった場合、多収性専用品種での取組による1.2万円/10aの産地交付金の追加配分が
加算され、戦略作物助成の収量に応じた上限単価10.5万円/10aが適用されるとして算定。また、経営費及び労働時間は、標準単収値の経営費から、150kgあたりの施肥及
び収穫・調製等に係る費用及び労働時間を加えて算定。
<財政制度等審議会「平成28年度予算の編成等に関する建議(平成27年11月24日)」>
「平成30年産を目途に、行政による生産数量目標の配分に頼らずとも、需要に応じ
た生産が行える状況になるように取り組む」という「減反の廃止」が、平成25年に決
定されている。他方で、赤字となる作物でも主食用米と同程度の所得が得られるよう
に助成して、転作の拡大を推進する政策が継続している。例えば、飼料用米は助成額
が販売収入の10倍程度にもなっている。これは「減反の廃止」が本来目指すべき農業
の在り方に逆行し、輸出の拡大や高収益作物への転換といった経営努力を阻害するも
のである。しかも、転作拡大に伴って国民負担が増大していく見通しとなっている。
「減反の廃止」を強い水田農業の実現に結び付けるためには、農家の自立的な経営判
断に基づく生産を促す政策に転換しなければならない。そのためには、主食用米並み
の所得を得られるように助成するという考え方から脱却することが不可欠である。
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