8 眉毛を切る ソフィーがぜひほしいと願っていたもうひとつのものは、濃い

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眉毛を切る
ソフィーがぜひほしいと願っていたもうひとつのものは、濃い眉毛でした。ある日だれかが、ルイ
ーズ・ド・ベルグちゃんに眉毛があったらかわいいのに、と言ったのです。ソフィーには眉毛が少し
しかないうえにブロンドだったので、あまり見えなかったのです。ソフィーはまた、髪を濃く伸ばそ
うとしたら、しばしば切るといい、という話も聞いたことがありました。
ある日、ソフィーは鏡で自分の顔を見て、眉毛がひどく薄いと思いました。
「髪の毛は切ったらもっと濃くなるのだったら」とソフィーは言いました。「眉毛も小さな髪の毛
なんだから、同じようにすればいいのよ。だから、もっと濃くなるように切ってしまいましょう。」
それでソフィーは、はさみを取り、眉毛をできるかぎり短く切ってしまいました。ところが、鏡を
見ると、なんともおかしな顔になっていたので、客間にもどる勇気がでてきませんでした。
「食事が用意されるまで待つことにしよう」とソフィーは言いました。「食事のあいだは、みんな、
私を見ようなんて思わないでしょうから。」
でも、ソフィーが来ないので、ママがいとこのポールを呼びにやりました。
「ソフィー、ソフィー、そこにいるの?」とポールが叫びながら入ってきました。「何してるの?
食事においでよ。」
「ええ、ええ、行くわよ」とソフィーは、ポールに眉毛を切ったのを見られないように、後ずさり
しながら答えました。
ソフィーはドアを開け、入っていきます。
ところが、ソフィーが客間に足をふみ入れたとたん、みながソフィーを見て、どっと笑いました。
「なんて顔だ!」とレアン氏が言いました。
「眉毛を切ってしまったのね」とレアン夫人が言います。
「おかしな顔!
おかしいな!」とポール。
「眉毛を切ってしまうとびっくりするくらい顔が変わるものだ」とポールのお父さんのオーベール氏
が言いました。
「こんなに変わった顔は見たことがありませんわ」とオーベール夫人。
ソフィーは腕をたらし、うなだれたままで、穴があったら入りたい気持ちでした。だから、ママに
こういわれたときは、むしろうれしかったくらいです。
「自分の部屋に行きなさい、ソフィーはばかなことしかしないのだから。行きなさい、今夜はもうあ
なたの顔を見たくありません。」
ソフィーは自分の部屋に行きました。すると今度はばあやが、眉毛がなく真っ赤になっているソフ
ィーの大きな顔を見たとたん、笑い出しました。ソフィーがいくら怒ってもむだでした。ソフィーを
見た人がみな大笑いし、眉毛があった場所に墨で眉をかいたらいいと言うのです。ある日、ポールが
しっかり封をしてひもで結んだ小箱をもってきました。
「ほら、ソフィー、パパから君へのプレゼントだよ」とポールはいたずらっぽく言いました。
「なにかしら?」と言いながら、ソフィーはいそいで箱を手に取りました。
箱を開けてみると、中には黒々とした濃くて大きな眉毛がふたつ入っていました。
「これを眉毛があった場所にくっつけるといいよ」とポールが言いました。
ソフィーは真っ赤になって怒り、それをポールの鼻先に投げつけると、ポールは笑いながら逃げて
いきました。
ソフィーの眉毛がまた生えてくるまで半年以上もかかりましたが、ソフィーが望んだように濃い眉
にはなりませんでした。それで、このとき以来、ソフィーはもうきれいな眉毛がほしいなんて思わな
くなりました。