地域の特別支援教育ネットワーク拡充をめざして 兵庫県立西はりま特別支援学校 主 幹 教 諭 1 手島 理津子 取組の内容・方法 (1) はじめに 本校は、平成17年4月、兵庫県南西部の播磨科学公園都市に知的障害を持つ児童生 徒を教育対象として開校した。平成19年度からは兵庫県立西はりま特別支援学校と校 名変更され、来年度開校10周年を迎える。通学区域は西播磨地域の3市3町で、本校 はその特別支援教育センター的役割を担っている。 初年度は、教職員も児童・生徒もほとんどが初対面であったが、戸惑いながらも、皆 が一丸となって「活気ある学校にしよう」と取り組んできた。 支援部は、開校当初から校務分掌に位置づけられ、コーディネーターが校内支援と共 に地域との窓口としての役割を担当してきた。 私は平成21年度から前任者より支援部を引き継ぎ、専任で校内外支援を担当する ことになった。当初は地域の実情を十分に把握しないまま、相談を受けたり要請に応じ て研修会に講師として参加したりしていたが、そんな中でも地域の多くの先生方との出 会いにより、年々繋がりが広がっていった。 この間、地域の実情を知る一つの方法として、学校生活支援教員との連携を目的に「西 播磨連携研修会」を企画・運営してきた。また、一つの地域との関係を充実させること により、地域全体の支援拡充がはかれると考え、年度ごとに地域を絞って重点的に取組 を進めてきた。 (2) 地域のネットワークを拡充する取組 ①「西播磨地域連携研修会」による学校生活支援教員との連携 西播磨地域の学校生活支援教員と特別支援学校が連携することによって地域におけ る特別支援教育ネットワーク作りを図ることを目的に企画運営した。平成21年度から 25年度に実施した内容は以下の通りである。 日 1/18 H 21 対象者 内容 5名 各地域の現状報告、情報交換 2/25 サポートファイル等について、情報交換、 「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」活用状況 3/11 *播磨西教育事務所 3/29 指導主事より指導助言 通級指導教室の施設・設備見学*赤穂市立城西小学校 H 5/11 5名(代表者) (代表者会)各地域の現状報告、今年度の研修計画 22 6/18 14名 (全体会)各学校の実践状況、 10/15 5名 (代表者会)各地域での実践状況、事例検討 12/7 5名 (代表者会)各地域での実践状況、事例検討 1/25 5名 (代表者会)各地域での実践状況、事例検討 2/28 14名 (全体会)実践報告、情報交換、次年度に向けての方向性 14名 (全体会)通級指導教室の施設・設備見学*たつの市立小宅小学 3/17 6/17 H 8/5 23 8/17 1/17 H 24 9/27 6/27 H 25 年 7/2 12/5 3/3 校 15名 各地域の情報交換、今年度の研修計画 15名 講演会「気になる児童・生徒の校内支援体制について」 *講師:兵庫教育大学 15名 島崎まゆみ先生 講演会「発達障害の特性に応じた指導について」 *講師:神戸市立たまも園 松本恵美子先生 15名 各地域での情報交換、引き継ぎネットワーク作り 16名 各地域での情報交換、 9名 小学校の学校生活支援教員の取組情報交換 8名 研修会「中学校の学校生活支援教員の取組について」 講師:三木市立緑が丘中学校 佐藤豊先生 17名 ワールドカフェ方式による情報交換(指導内容等) 17名 携帯端末を活用した学習支援について (本校研究研修部より情報提供) ② A町との連携 A町は人口2万人弱で、小学校10校、中学校4校のほとんどが小規規模校である。 本校から比較的近いこともあり、開校当時から学校間交流等で関わりが続いている。 センター的機能における関係は、○小中学校教員からの相談、○研修会協力、○施設設 備等の提供、○特別支援教育に関する情報提供など、さらに継続的に支援学級担当者と の関わりが続いている学校もある。また、本校内の課題事例について、町の福祉機関や 施設関係、医療関係者と連携して継続した支援のつながりもある。 A町の個々の機関や関係者と本校とのつながりは広がってきているものの、小中学校 園においては関係機関と連携した支援体制が充実してきているという実感は少ないので、 A町の協力を得て連携を深める取組を進めた。 取組内容と成果は、以下の通りである。 ・「特別支援教育研修会」では、小中学校・障害種別ごとのグループ研修を行い、 「ネッ トワーク会議及び発達障害児等支援連絡会議合同研修会」では、中学校区ごとのグル ープ研修を、それぞれ少人数で協議する機会を持つ工夫をした。それにより、各学校 園の特別支援コーディネーターや地域の関係者が、顔を合わせて具体的な話ができる 機会になった。 ・学校の学校生活支援教員が集まり、お互いの取組状況を報告し、情報交換をする会を 実施した。全員が今年度初めて担当した先生ばかりで、いろんな悩みが出されたが、 小学校の経験教員から具体的な指導方法の提案など貴重な助言がもらえた。 ・A小学校、 、C小学校の の取組を通し して、複数の の担任が協力 力して授業を を組み立てた たり、本 校を授業に に利用したり りする道筋が ができた。 ・保育所への の巡回相談に に参加できた たことで、保 保健師と面識 識ができ、就 就学前の相談 談支援の 現状などの の情報を得る ることができ きた。また、本校のセン ンター的役割 割について理 理解され る機会とな なった。 ・高等学校の の担当者と面 面識ができ、お互いの情 情報交換をし したり、課題 題を見つけた たりする 機会となっ った。 ・児童発達支 支援センター ーとは、定期 期的に情報交 交換をする機 機会を持ち、必要な情報 報を共有 できるよう共通理解が ができてきて ている。 ・その他 磨地区特別支 支援学校地域 域連携協議会 会(六校連携 携)で得た情 情報を地域の の担当者 中・西播磨 に伝え、新 新しいつなが がり方を提案 案することが ができた。 ③ 本校が実施 施しているセ センター的機 機能は、○小 小中学校教員 員からの相談 談、○研修会協力、 ○施設設備 備等の提供、○特別支援 援教育に関す する情報提供 供などで、平 平成25年度に実施 した外部か からの相談や や学校訪問等 等の実施件数 数は、以下の の通りである。 外部からの の相談件数( (143件) <学校見学件数を含む> 高等学 その の他 校 幼稚園 園 中学 学校 2 小学校 校 学校訪問・研 学 研修会講師等 等(59件) 高等学 その他 校 幼稚園 園 中学校 校 小学校 校 取 取組の成果 支 支援部を任さ された当初は は手探りであ あった取組も も、 「西播磨連 連携研修会」で学校生活 活支援教 員と繋がること とで、地域の の実態や課題 題の一部を知 知ることがで できた。サポ ポートファイル一つ にしても市町に により発行や や記入・保管 管の仕方が違 違うことがわ わかり、本校 校の児童生徒 徒だけで なく地域支援の の場で生かす すことができ きた。 本 本校ができる る地域支援の の課題を考え えるとき、3 3市3町地域 域ごとの違い いを知ったことで、 全体 体に提案でき きる課題と、市町ごとに に優先的に提 提案できる課 課題があることを知ることがで きた たのも大きな な成果であっ った。 ま まず、一つの の市町と一定 定期間深く繋 繋がることで で、その成果 果を他市町へ へ還元したいと考え 取組 組を進めたの のがA町との の連携である る。 その結果、それぞれの取組の中で、情報提供をしたり連携方法についての提案をしたり する機会が増え、本校に対する理解も進み、お互いに顔の見える関係性が広がった。取組 を通して、町と本校とのつながりが深くなった実感はあり、連携体制が構築されつつある ものの、これらの成果を共有するシステムにまでは至っていない。 A町での成果を、機会があるごとに他の地域に伝えることで、本校に対する理解も進ん できており、相談内容が多岐にわたってきている。 3 課題及び今後の取組の方向 本校は、次年度開校10周年を迎える。 学校全体の存在はもとより、特別支援教育のセンター的役割においても、この間の様々 な取組を通して、西播磨地域3市3町にかなり周知される存在になってきたと自負してい る。しかし、各学校や関係機関との関係について俯瞰的に見ると、広く浅く広がっている 印象がぬぐえない。その原因の一つとして、本校の「立ち位置」がはっきりしていないこ とがあるのではないかと思っている。 特別支援学校のコーディネーターが地域の関係機関との連絡・調整連携とネットワーク を構築をするためには「地域の関係機関の情報を集め、関係者間をつなぎ、支援のための ネットワークを形成する力」が必要である。そのための資質や知識・技能としては「情報 収集・活用の技能」 「交渉する力」 「ファシリテーション技能」 「人間関係を調整する力」が 求められる。地域からの様々な相談について、本校が全てを網羅する事は不可能なので、 相談内容によって、きちんと整理して各機関の連携システムを構築することが必要である。 そのために本校は、的確な情報発信をする事が求められ、それを果たすことによってセン ター的機能をいっそう充実させることにつながると考えている。 今後は、これまでの経験を若い世代に伝えるとともにさらに研鑚を積みあげ、繋がる力 を充実させていきたい。 今ここに、支援部としての5年間の取組の一部を整理するにあたり、校内において管理 職を始め周囲の先生方の理解と協力、支えがあってこそ努められたものと改めて感謝して いる。
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