平成26・27年度 医療関係者検討委員会報告書

平成26・27年度
医 療 関 係 者 検 討 委 員 会
報 告 書
平成28年4月
日 本 医 師 会
医療関係者検討委員会
平成28年4月
日本医師会
会長 横 倉 義 武 殿
医療関係者検討委員会
委員長 月 岡 鬨 夫
本委員会は、平成26年10月15日開催の第1回委員会において、貴職
より「地域包括ケアシステムにおける多職種連携の推進について ―多職種の
役割をいかに引き出すか―」について、検討するよう諮問を受けました。
これを受け、本委員会では2年間にわたり検討を重ね、審議結果を次のと
おり取りまとめましたので、ご報告申し上げます。
i
医 療 関 係 者 検 討 委 員 会 委 員
委 員 長
月
岡
鬨
夫(群馬県医師会会長)
副委員長
清
水
正
人(鳥取県医師会副会長)
委
天
木
〃
内
平
〃
神 田 益 太 郎(京都府医師会理事)
〃
北
野
明
宣(北海道医師会常任理事)
〃
志
田
正
典(佐賀県医師会専務理事)
〃
永
池
京
子(洛和会音羽病院看護部長)
〃
福
原
晶
子(山形県医師会監事)
〃
古 井 民 一 郎(神奈川県医師会理事)
〃
星
〃
堀
部
〃
内
藤
員
平成 27 年 8 月 4 日より
聡(東京都医師会理事)
信
北
子(防府医師会副議長)
斗(福島県医師会副会長)
廉(岐阜県医師会常務理事)
誠
二(前東京都医師会理事)
ii
平成 27 年 8 月 3 日まで
目
次
1.
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2.
地域包括ケアシステムにおける多職種連携の推進について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(1)顔の見える関係構築と医師会の役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
(2)地域支援事業における医療・介護連携の推進について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
(3)医師の在宅医療への取り組みと多職種連携について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
(4)医療・介護の連携の中心的な役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12
(5)多職種連携の課題(医療・介護の人材不足に直面して)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
(6)地域包括ケアシステムにおけるかかりつけ医のあるべき姿(地域との関わり) ・・・・・・14
(7)特定行為(特に在宅医療に関する行為)における医師の関わり・・・・・・・・・・・・・15
3.
2025 年に向けた看護職員の確保について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(1)看護職員養成の現状・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
(2)医師会立看護師・准看護師養成所が果たしている役割・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
(3)ナースセンターと医師会の協力による看護職員の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
(4)在宅医療を担う看護職員の確保・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・25
(5)地域包括ケアにおける准看護師の活用について
(看護師・准看護師の業務範囲及び指示のあり方について)・・・・・・・・・・・・・・・・・27
(6)医師会立看護師・准看護師養成所の課題と対策・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31
(7)看護師2年課程通信制の入学要件の見直しについて・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・35
4.
おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・41
iii
1.はじめに
今期委員会の諮問は、
「地域包括ケアシステムにおける多職種連携の推進に
ついて―多職種の役割をいかに引き出すか―」である。
団 塊 の 世 代 が 75 歳 以 上 と な る 2025 年 に 向 け て 、 病 気 や 介 護 が 必 要 な 状 態
になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることがで
きるよう、医療・介護・介護予防・住まい・生活支援が一体的に提供される
地域包括ケアシステムの構築が求められている。
地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム で は 、地 域 包 括 支 援 セ ン タ ー や 地 域 の 病 院・診 療 所 、
訪問看護ステーション、介護事業所など、様々な機関の連携が求められる。
それはすなわち、そこで働く多職種の連携がいかにうまく行われるかにかか
っていると言っても過言ではない。
本委員会では、多職種連携のために、医師や医師会が果たす役割について
検 討 す る と と も に 、 2025 年 の 医 療 提 供 体 制 に お け る 看 護 職 員 の 確 保 の た め に
必要な施策等についても検討を行った。
1
2.地域包括ケアシステムにおける多職種連携の推進について
地 域 包括ケ ア システ ムの構築に向 け、各地で取 り組 みが 進め られ てい る が 、地
域 によ っ てその 進捗 状況は 異 なる。
地 域 包括ケ ア システ ムは 、人口 や世帯構成 、医療・介 護資源等の状況 、さら に
は 住民 の ニー ズや 考え 方等地域 の状況 に応じ て進める必 要があるため、市区町 村
行 政と 地 域の 医師 会が両輪 とな って、様々な関 係者、住民が地 域ぐ るみ で取 り組
ん でい く 必要 がある 。
こ こ では、特に医 療 と介護の連携、多職 種連 携の あり方につ いて述 べること と
す る。
(1)顔の見える関係構築と医師会の役割
地 域 に お け る多 職 種 連 携 の第 一 歩は 、「 顔 の 見え る 関 係 」を 築 く こと で ある と
言 われ る 。関係 者間で コミ ュニケー ション が十 分に取れな いと、様々な問 題 が生
じ るお そ れがあ る こと から 、まず は顔の見え る関係 を構築していく ことが 必要 で
あ る。特 に 、医療 関係 者と介 護 関係者との間 には職種間 の壁も指摘されること か
ら 、そ れぞ れの専 門 性と地域包括ケアシステムの中で果たしている役割につい て、
相 互理 解 を進 め ていく こと が必要 である。
そ の ため、各地 域 では 医師 会を中 心とした在宅医療・介護連携 推進事業や 、地
域 包括 支 援セ ン ターによる 地域 ケア会 議等の取り 組みが 進められて いる。
< 事例 1 >
山形 県
鶴岡 地区 医 師会
山形県鶴岡地区医師会における多職種連携の取り組みについて述べてみ
る 。ま ず 第一に 、地域 的背景が 問題 とな る。診 療圏 は人 口約 14 万人で 、面積
は 東 北一広 い 面積( 全国では 7 番目) であり、病 院 5、診療所 30、その他 介
護 施 設・薬 局 等を含 め計 104 の関係機関が カバー している。 基幹病院 であ る
鶴 岡 市立荘 内 病院(520 床) は 、救急搬送 の約 85%を受け 入れて いる。す な
わ ち 、1)高齢化 率 が 高く(30.8%)、2)医 療資源が 限られ てい て、在 宅医 療
が 必 要とさ れ 、3)中核 病院の 負担が大き いこ とか ら、医療連携・多職種連 携
を推進していかなければ今後の医療提供が困難になる、という現状があるこ
と が 前提と な ってい る。
2
第二として、以前から顔の見える関係を築いている、という土台がある。
先進的と言われる鶴岡地区の医療連携であるが、一朝一夕にでき上がったわ
け で はない 。元々 、鶴岡地区医師会では 1997 年から会 員相互 のイントラネ ッ
ト 運 用をは じ めとし て、積極的に IT 化を 進めてきた 。2001 年には経 済産 業
省 モ デ ル 事 業 を 受 託 し 、 地 域 電 子 カ ル テ 「 Net4U」 を 開 発 ・ 運 用 開 始 し 、 地
域 連 携パス を IT で運 用する な ど、様 々な 事業 を IT 化して きた。その 実施 に
際 し て、当 初 からう まく運用でき たわ けで はな く、 IT 化を主導 してき たリ ー
ダー的な現医師会長とそれを成功させようとした仲間たちの存在、さらに、
運 用 資金を 含 め IT 化を 支援し続 けた医 師会 執行 部の 協力 なく して は実 現で き
な か ったと 思 われる 。しかしながら、IT 化を推し 進める に当たっては、常 々、
「IT は一 つの 手段で あ り、一番重要なことは、直接顔と顔を合わせての関 係
作り」を大事にしてきた。そのような考え方が、その後の医療連携・多職種
連 携 の基礎 に なって いるものと思 われ る。
医 療 関係者 間 での連 携はある程 度で きて はい たが 、そ の後 、2007 年厚生労
働 省 の研究 事 業であ る緩和ケア普 及の た め の地 域プ ロジ ェク ト「 OPTIM」に
よ り 、全国 4 か 所のモ デル地域 の中、 緩和 ケア の提 供体 制が 未整備な地域と
し て 採択さ れ 、
「庄 内 プロジェクト」と命名され スタ ート する 。多 職種 連携 は、
この「庄内プロジェクト」と地域連携パス(大腿骨近位部骨折連携パス、脳
卒 中 地域連 携 パス、 糖尿病地域連 携パ ス、 急性 心筋 梗塞 地域 連携 パス )を IT
化して運用することで、驚異的に発展することになる。庄内プロジェクトの
活 動 の一環 と して、 地域連携 WG が設置 され、職種 ごとに多くの会が設立さ
れ、活発な活動が展開されることとなった。それまで、医師同士の病診・診
診 連 携ツー ル として 活用されてい た Net4U は、看護師 や PT・OT 等のリハ ス
タッフ、ケアマネなどの介護系職種までもが利用するようになり、多職種連
携 に 大いに 役 立つこ とになる。
このように、多職種連携は主に医師以外の職種を中心に広がっていくが、
各職種での小規模な連携がたくさんでき、それぞれの連携ごとの係わり合い
や情報共有などはなかなかできづらい状況にあった。そのような中、鶴岡地
区 医 師会で は 2011 年に 在宅 医療連携 拠点事業を受託、鶴 岡地 区医師会内に地
域 医 療連携 室 「ほた る」を設置し 、「ほたる 」が 数多 くの 雑多 な連 携を 整理 ・
支 援 してい っ た。各 種研修会の情報を整理し 、ホー ムペ ージ 上に 集約 した り、
ショートステイの空き情報を提供することなど、情報を一本化し、多職種が
一つにまとまりやすい環境を整備していった。また「ほたる」では、総合相
3
談窓口業務として、医療・介護の専門職向けの相談から始まり、現在では地
域 住 民の相 談 にも応 じている。そこでは、ど のよ うな 相談 でも 受け 付け 、「ほ
たる」で対応できないものは適切な機関等へつないでいる。そのような状況
から、新たに歯科医師会・薬剤師会との連携も生まれ、在宅医療の充実に一
役 買 ってい る 。
また長年、行政と良好な関係を築いていることも大変重要な要因となって
いる。鶴岡地区医師会では、健診センター、リハビリテーション病院、介護
老人保健施設、准看護学院などの事業を手掛けており、経済的な基盤がしっ
かりしていて、補助金収入が見込めなくなっても事業を継続していくことが
可能であり、行政に経済的な負担をかけずに、お互いの役割を明確化しなが
ら、車の両輪のごとく一緒に種々の事業に関与している。さらに、ここでも
定 期 的なミ ー ティン グを行うなど 、顔の 見え る関 係が 上手 く構 築さ れて いる 。
以上まとめると、鶴岡地区での医療連携・多職種連携が成功している要因
と し て、1)リ ーダー に なり得る人材 がいたこと と、そ の人 材を 支え 協力 す る
周 囲 の人間 が いたこ と、2)何が あっても人材を活用し ていこう とする医師 会
執 行 部 の 姿 勢 、 3) 事 業 を 継 続 し て い く た め の 安 定 し た 財 政 基 盤 、 4) 行 政 と
の 良 好な関 係 が築け ていたこと、 が挙 げら れる 。
ま た 、今後 の課題 と しては、1)多 職種連携が 必要で ある とい う、医師側の
意 識 改革、2)在 宅医 療に 関与す る医療機関が少なく、限 られ た医師に頼って
い る 状態の改 善 、3)特に介 護系職種に おける医療知識の充実の必要性などが
考 え られる 。
< 事例 2 >
東京 都
板橋 区医 師 会
急速な都市部の人口高齢化、受け入れ施設数不足は、急性期病院の平均在
院 日 数の短 縮 とあい まって、今後 20 年間、在 宅生活を余 儀なくされる要 介護
有病高齢者の急増が予想される。さらに、認知症高齢者、独居・高齢者世帯
対 策 も必要 で ある。 これからの 20 年を見据えた地 域医療 を構 築す るた めに 、
多職種による在宅医療・介護の連携推進は重要で、板橋区医師会は今日まで
多 く の在宅 療 養支援 を行ってきた 。
平 成 22 年 5 月に 区内 医療機関 の機能リストを作成したのを皮切りに、在 宅
で患者を支える上で多職種連携が必須であるとの認識から、医師会医療機関
だけでなく、在宅薬局情報、板橋区歯科医師会在宅機能情報を得るために、
4
板橋区薬剤師会、板橋区歯科医師会の協力のもと、それぞれの機能リストを
作成した。さらに、一般病院、診療所、訪問看護ステーション、薬局、歯科
診療所の位置を板橋区の地図上にプロットした板橋区内在宅連携マップも作
成した。これらを在宅医療に関する板橋区内連携機関機能リストとして小冊
子にまとめ、関係機関に配布している。しかし実際には、紙面上だけの情報
では積極連携まで導くことは困難であった。そこで、板橋区医師会では定期
開催していた医師、看護職、介護職など多職種参加型の地域医療研修会を発
展 的 に解消 し 、平成 22 年 3 月から は、顔の見え る多職 種の連携を構築するた
めに、多職種(板橋区医師会、板橋区歯科医師会、区内訪問看護ステーショ
ン 、 板橋区 薬 剤師会 、板橋区、地 域包 括支援 セン ター 、ケ アマ ネジ ャー の会 、
区内介護施設・介護職、病院連携室・相談室)の世話人で構成される在宅療
養 ネ ットワ ー ク懇話 会を医師会主 導で 立ち 上げ 、原 則 4 か月毎に担 当職種 が
輪 番 で企画 開 催して いる。
また、高齢化の進む区内高島平地域では地域住民との共学、協働を推進す
るため「キュア&ケアミーティング」を定期的に行っている。ここでは、地
域住 民 と医師 、 看護師 、薬剤師、 ケア マネジャー 、介護福 祉士、 社会福祉士、
ボ ラ ンティ ア 、民生 委員など毎回 40 人〜 50 人が一同 に集ま り、様々な事例 を
基 に した意 見 交換を 行っている。
平 成 24 年度 には 厚生労 働 省の在宅医療連携拠点事業に板橋区高島平モ デル
が採択され、地域住民の医療、介護、福祉の橋渡し的な役割を担う「療養相
談室」を板橋区医師会在宅医療センター内に設置した。事業当初は高島平地
区に限定していたが、現在は板橋区全域からの相談を受け付けている。療養
相 談 室の役 割 として は①医師会病 院と 協働 によ る早 期退 院支 援、 ② 24 時間 対
応をサポートするため「主治医・副主治医体制」の支援、③医療依存度の高
い利用者の退院支援やケアマネジメントの支援、④訪問可能な在宅医や専門
医の情報把握と相談支援、⑤訪問看護ステーション等の機能や空き情報把握
と相談支援、⑥薬剤師や歯科医師など専門職に対する情報把握と相談支援、
⑦ 医 療依存 度 の高い 方の受け入れ 可能 な施 設情 報の 把握 と相 談支 援、があ る。
在 宅 医療セ ン ターに は従来から地 域包 括支 援セ ンタ ー、居宅 介護 支援 事業 所、
訪問看護ステーションが設置されていたが、療養相談室の設置により医療と
介 護 をつな ぐ ワンス トップサ ービス 機能を持つ ことができた。
5
< 事例 3 >
山口 県
防府 医師 会
山 口 県防府 市 では、平成 22 年に行政 が主体 となって、高齢 者を 支援 する 仕
組みづくりを考える会として「はあとふるねっと」を立ち上げ、医師会がサ
ポ ー トする 形 で毎月 の定例会と年 3 回の全体 会が開 催されている。当初は 、
医師会・ケアマネジャー・地域包括支援センター・訪問看護ステーションが
定 期 的に顔 を 合わせ る会として発 足し たが 、平 成 24 年には、歯科医 師会・薬
剤師会・介護保険施設・訪問介護・通所介護・小規模多機能・居宅介護支援
事業所・社会福祉協議会・行政が加わって再スタートした。定例会メンバー
以 外 からも 広 く意見 を聞くために 、 全事業 所を対象と した全体会を年 3 回 開
催 し ている 。全体 会 には、平成 26 年から 民生委 員も参加し 、講演会、研修 会、
事例検討会などを開催しており、多職種が顔の見える関係を作る場となって
いる。
現在防府市では、厚生労働省老健局老人保健課より示された「在宅医療・
介 護 連携推 進 事業の 手引き」に した がっ て 、
「 8 つの在宅 医療・介 護連携事 業 」
について事業を展開しつつあり、防府医師会は主体的・積極的に関わってい
こ う という 考 えであ る。8 ページの 枠内に 示された(ア)~(ク)の事業のう
ち 、( ア )につ い てはす でにマ ップ を作 成し 、平成 28 年 4 月には公 表予定 で
あ る 。( イ)に つ い ては 、従来地域ケア 会議で 地域ごとの 懸案事項を 抽出し て
「 は あとふ る ねっと 」で検討することにより シス テム の向 上を 図っ てき たが 、
平 成 28 年度 は市内 4 つの 地域 包括支 援センターによる計 8 回の地域 ケア会 議
の 開 催が決 ま ってい る。(エ)につ いて は、防府 市独 自の 情 報 共有 ツー ルの 作
成 を 検討中 で ある。
こ の ように 、地域 の 医師会では在宅医療を推進 する ため 、多職 種連 携の 研修 会
や 講演 会 を数 多 く開催し、一定の成果は挙げているが、医師の参加は限られた メ
ン バ ー に 固 定 され て い る 。 多職 種 連携 の重 要 性 を医 師 に理 解し て も らう こ と と 、
医師側の敷居を低くすることで他職種からのアプローチがしやすい状況を作る
こ と、何 よ り 顔の見 え る良好な関係を築くことが、最も大事なことであると思 わ
れ る。
今 後 、地域 包括ケ アシス テム を推し進め ていくに当 たり 、医療と介護の連 携を
よ り一 層 強化す る ことが 必要となっ てく る。在宅 医療 連携 拠点 のよ うな 、地域 の
6
中 で 「 つ な ぐ 」「 頼れ る 」 役割 ・ 機 能 を 持 っ た 組 織 は 必須 であ る が 、多 職 種 連 携
の 核と な るの は 、は っ きりとした意識を持った医師であり、的確な指示やアド バ
イ スを 医 療者 や 介護職に出すことで、円滑で良好な連携が出来上がっていくこ と
を 自覚 し なけ れ ばならない。
7
( 2 ) 地 域 支 援事 業 に お け る 医療 ・ 介 護 連 携 の推 進 に つ い て
前述の事例は先駆的に取り組んでいる地域の例であるが、こうした事業は決
して特別なものではなく、今後全国で実施することが求められていることに注
意しなければならない。
在宅医療・介護連携の推進の要となる従来の在宅医療連携拠点が実施してき
た 取 り 組 み は 、平 成 27 年 4 月 か ら 介 護 保 険 の 地 域 支 援 事 業 と し て 制 度 化 さ れ た 。
地域支援事業には、在宅医療・介護連携推進事業として 8 つの事業(下記)が
あ り 、実 施 可 能 な 市 区 町 村 は 平 成 27 年 4 月 か ら 取 り 組 み を 開 始 し 、平 成 30 年
4 月には全市区町村で実施することとされており、郡市区医師会が事業を受託
するなど積極的に関与していくことが求められる。
<在宅医療・介護連携推進事業>
(ア)地域の医療・介護資源の把握
(イ)在宅医療・介護連携の課題の抽出と対応策の検討
(ウ)切れ目のない在宅医療と介護の提供体制の構築推進
(エ)医療・介護関係者の情報共有の支援
(オ)在宅医療・介護連携に関する相談支援
(カ)医療・介護関係者の研修
(キ)地域住民への普及啓発
(ク)在宅医療・介護連携に関する関係市区町村の連携
今 後 、 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携 を 推 進 す る た め に は 、「( オ ) 在 宅 医 療 ・ 介 護 連 携
に関する相談支援」を中心に 8 つの事業を展開することが得策と考える。各郡
市区医師会に、地域包括ケア推進室や相談窓口を設置し、専任の職員(できれ
ば看護師資格を有するケアマネジャー)を配置することにより、多職種との連
携も取りやすくなると考える。
以下に、地域支援事業の実施に向けての課題を整理する。
① 平 成 30 年 度 ま で に 全 市 区 町 村 が 実 施 す る こ と に な る が 、 で き る だ け 早 期 に
実 現 す る 必 要 が あ る と 考 え る 。な ぜ な ら 、多 職 種 連 携 を 中 心 と し た 在 宅 医 療
はすでに動き出しているからである。
② 「 相 談 支 援 」が 従 来 の 在 宅 医 療 連 携 拠 点 と 同 等 の 活 動 を す る と し た 場 合 、充
8
分運営が可能な介護保険地域支援事業交付金が必要である。
な お 、在 宅 医 療・介 護 連 携 の た め の 事 業 で( ア )~( ク )以 外 の 事 業 に つ い
て は 、地 域 医 療 介 護 総 合 確 保 基 金( 医 療 分 )の 基 金 を 活 用 す る こ と が 可 能 と
さ れ て い る( 在 宅 医 療・介 護 連 携 の た め の 相 談 員( コ ー デ ィ ネ ー タ ー )の 育
成 、 ICT に よ る 医 療 介 護 情 報 共 有 等 )。
③ 8 つ の 在 宅 医 療・介 護 連 携 の 推 進 事 業 は 、市 区 町 村 に よ っ て 格 差 を 生 じ る 可
能性がある。
これらの課題を整理し、多職種連携の中心的役割を担ってきた各郡市区医師
会に、この「相談支援」を中心とした在宅医療・介護連携推進事業の委託がな
され、円滑な事業実施が早期に実現されることを期待したい。
そ し て そ の た め に は 、都 道 府 県 医 師 会 に お い て も 事 業 を 支 援 す る 体 制 を 整 え 、
事業推進のための取り組みを進めていく必要があると考える。
9
( 3 ) 医 師 の 在宅 医 療 へ の 取 り組 み と 多 職 種 連携 に つ い て
医師の在宅医療への取り組みには温度差があり、在宅医療に対する医師の無
関心・消極性が多職種連携を妨げているとの指摘がある。医師と介護系の職員
とが同じレベルで話し合い連携を取るということの難しさも、現実の問題であ
ると考えられる。それらの解決のためには、医師の意識改革と多職種に対する
教育が必要である。ケアマネジャーや介護職員に対する研修・教育の場が必要
である。
医師に何でも話せる環境づくりは必要であるが、医師は常にリーダーでなけ
ればならないし、リーダーとして尊敬される存在であらねばならない。医師も
また、自己研鑽に努めるべきである。地域医師会は、医師を啓発するための研
修 会 な ど を 企 画 し 、参 加 を 促 し 、会 員 の 意 識 向 上 を 図 る べ き で あ る 。ま た 、
(6)
で述べるように、地域との関わりと医師会の支援も必要である。
佐賀県医師会では、会員へ在宅医療への関心、多職種との連携強化を促すた
め、
「 地 域 包 括 ケ ア シ ス テ ム に 関 わ る 医 師 の 心 得 」を 作 成 し 、全 会 員 に 送 付 し て
いる。その内容は、以下の通りである。
・ 医師は、多職種のリーダーとしての知識と人徳を磨くよう努力する。
・ 医 師 は 、協 働 者 の 専 門 性 を 尊 重 し 、尊 敬 の 念 を 持 っ て 接 す る と と も に 、互
いの顔が見える関係づくりに努める。
・ 医師は、それぞれの職種が持つ人的資源・社会的資源が有効に活用され、
患 者 の QOL 向 上 と 尊 厳 が 維 持 さ れ る よ う 努 め る 。
・ か か り つ け 医 は 、当 該 患 者 の 在 宅 医 療 に 携 わ る こ と が 望 ま し い が 、出 来 な
い 場 合 は 、患 者・家 族 の 希 望 を 尊 重 し て 、他 医 療 機 関 へ 紹 介 す る な ど 適 切
に対応する。
・ 在 宅 医 療 を 行 う 医 療 機 関 は 、自 ら 提 供 す る 医 療 お よ び ケ ア の 範 囲 を 随 時 公
開するよう努める。
しかし、残念ながら、医師の在宅医療への関心の温度差は大きく、佐賀市
医師会で年 2 回開催している「在宅医療推進研修会」への医師の参加割合は
参加者の1割にも満たず、むしろ、歯科医師、薬剤師の参加者の方が多いの
が現状である。
10
今後の地域包括ケアシステムの構築のためには、医師もできる範囲で在宅
医療に取り組んでいくことが必要である。言わば、かかりつけ医の外来の延
長としての在宅医療の推進である。内科に限らず、他の診療科においても、
患者が外来に通うことができなくなった場合には訪問診療を行うことも進め
ていかなければならないだろう。
ただ、実際には、皮膚科などの診療所では、ほとんどの医師が手一杯の状
態で日常診療をこなしているため、在宅医療に取り組む余裕がないのが現状
である。しかし、褥瘡をはじめとして皮膚疾患に対する往診を求められる事
はしばしばある。医師が少ない診療科では、地域の医師がチームを組んで当
番制の在宅医療体制の構築に取り組む工夫も必要かと思われる。
また診療報酬面では、現在「在宅時医学総合管理料」を算定できる医療機
関は、当該患者に対して主として診療を行っている医師が属する一つの医療
機関のみとなっており、内科系がその中心となっている。したがって、他科
の訪問診療についても、インセンティブが働くような診療報酬上の算定を国
に要望していく必要がある。
在 宅 医 療 は 24 時 間 365 日 縛 ら れ る と い う 意 識 か ら 敬 遠 し て い る 医 師 も い る
が 、 訪 問 看 護 ス テ ー シ ョ ン の 活 用 や 、 ICT を 活 用 し た 各 職 種 と の 連 携 、 ま た
医師会が中心となってかかりつけ医を支援する体制を整備すること等により
対応可能と思われる。その意味でも、医師自身が在宅医療の研究会等に参加
し、医師同士、そして多職種との積極的な関係構築を進めていくことが重要
である。
また、実際には全て在宅医療で対応することは困難である。日本は、中小
病 院 や 有 床 診 療 所 も 多 い こ と か ら 、 こ れ ら を 有 効 に 活 用 し 、「 と き ど き 入 院 、
ほぼ在宅」という形で、具合が悪くなった場合には入院できるようにするこ
とが必要である。それが、患者・家族にとって、無理のない在宅医療につな
がる。
11
(4)医療・介護の連携の中心的な役割
医 療・介護の 連 携の中 心的な役 割は 誰が果たす べきか 。医師 は、かか りつけ 医
と して 当 然患者 の 状態を 把 握し、適切な医療サービ ス、介護サービスの提供が な
さ れる よ う、患者 を 中心とした多職種チームのリーダーとしての役割を果たし て
い かな け れば な らない。
た だ 、実際 には医 師 が現場 に立ち 会え ない こと もあ るの で 、具 体的な連 携の 中
心 的 役 割は訪問 看護 師が担 うの がよいと考 える。訪問看 護師 は、患者と家 族 、ケ
ア マネ ジ ャー との 接点が多 い。また、医 師と介護 系の職種との間では 、医療的 知
識 をは じ めと し た「 共通言語の理解」が 難しい ため、看 護師 が間に立って対応す
る こと で 、より スム ーズに 連携 を図る ことができる 。
さ ら に、現在 は介 護系 のケア マネ ジャーが多 いが、医療依存 度の高い利 用者 が
増 えて い る中で 、ケア プ ランに 充 分医 療サ ービ スが 取り 入れら れていない との声
も ある 。介 護系 のケア マ ネジャーの場合、例えば訪問看護を 1回入れる よりも 料
金 の安 い 訪問 介 護を 2 回入 れた方が よいと いう 発想 にな りが ちで 、支給限度 額 の
調 整の 中 で介 護 サービスを優先してしまうケースが多い という話 が聞か れる 。し
か し、早 い 段階 で 看護 師が関 わ ること がで きれ ば、今後の状態の 変化 を予 測し て
対 応す る こと に より状態 の悪 化を防ぐ ことができる 。ケアマネ ジャー には、訪 問
看 護師 と 十分 に連携 し、医療 的視点を持っ てもらい、早 い段 階で 医療サー ビ スを
組 み込 む こと の重要 性を理 解 してもら うことが必 要であ る。
前 述 の鶴岡 地 区医師 会や板橋区医 師会 のよ うに 、医療・介 護の 相談 窓口 を設 置
し 、ケ ア マネ ジ ャー等からの相 談 を 受 け ら れ る 体 制 を 整 え る こ と も 重 要 で あ る 。
ま た 、看護 職 員の役 割として、日 頃の 介 護 を担 う介 護職 員に 対し 、例え ば食 事
の 摂取 量 の減 少 や、日 中の活動量の減少等の体調の変化について、看護 職員に 伝
え るよ う な働 き かけをすることも重要であろう。介護職員に観察のポイントを 伝
え てお く こと に より、大きな変化となる前に医療的介入を行い、悪化を防ぐこ と
が でき る 。
12
(5)多職種連携の課題(医療・介護の人材不足に直面して)
平 成 24 年の 介護 保険法の改 正 で、定期巡 回・ 随時対応 型訪問 介護看護と看 護
小 規模 多 機能 型 居宅介護(複合 型サービ ス)は、地 域包括ケ ア システム構築の た
め の目 玉 とな る 制度として創設されたはずであった。ところが 、両者は当 初 思い
描 いて い たよ う には機能していない。
そ の 要因は 、介 護報 酬の問題だけではなく、医 療・介護 の人 材不 足が 挙げら れ
る。
医 療・介 護の人 材 不 足の中、多職種 連携 を推 進す るこ とは 容易 なこ とで はな い。
確 かに こ こ数 年 は、多職種連携を 1つの箱と して、す なわち 集団としては、研修
会 ・ 講 演 会 な ども 多 く 開 催 され 、 顔の 見え る 連 携も 確 立さ れて き た よう に 思 う 。
し か し 、 現 場 では 医 療 職 ・ 介護 職 とも に、 日 々 の自 分 達の 仕事 に 追 われ て い て 、
多 職種 間 の連 携 のために時間を優先させる余裕がなく、このため、地域包括 ケア
システムに対する問題意識を共有することはなかなかできないのではないだろ
う か。
国 は 2025 年ま でに 、介 護人材は 約 100 万人の増加 が必要と推計して いる 。し
か し、 最 近の 景 気回復の影響で 介護職 の就職希望 は減り、2025 年どこ ろか、 今
ま さに 現 場は 介 護人材の不足に直面している。介護職は 、業務は ハードで あ るに
も かか わ らず 給 与は低く、そ のため 離職が後を 絶た ず、人手不足のため残され た
職 員が ま すま す 疲弊して 辞めて いくと いう悪循環 に陥 って いる 。介護職員 た ちが 、
専 門職 と いう 自 覚と誇りを持って働き続けるためには、専門職としてのトレー ニ
ン グも 必 要だ が 、何よりも現場 で 頑 張 る に 足 る だ け の 待 遇 の 改 善 が 必 要 で あ る 。
こ の ように 、人材 の 確 保が 困難な状況下で はある が、多職 種 連携、ひい ては 地
域 包括 ケ アシ ス テムの構築は前進させなくてはならない。では我々医師ができ る
こ とは 何 か、 時 間に追われる多職種の人達とどう関わっていくべきか。
ま ず は、医師 自身 が在宅 医 療・介 護の「現場 」を理解す ること から始まり、現
場 で働 く 多職種 の 人達に 思いやりを 持っ て協 力す るこ とが 大切 であ る。場合に よ
っ ては 、はじめか ら リーダ ー シップを取 る必要 は な く 、医 師 の 在 宅 医 療 の 知 識 ・
経 験、 そ して 専 門性を活 かし た連携は それか らで ある と考 える 。
多 職 種の人 達 は医師 の言葉 1 つ1つに支 えられてい るはずである。医師は 多職
種 の人 達 に対 し て、共 通言語をツールとして、相互理解を深めるための取り組 み
を 進め る こと が 必要であり、医師の一層の関わりが、多職種連携を推進するた め
の 近道 で ある 。
13
(6)地域包括ケアシステムにおけるかかりつけ医のあるべき姿
(地域との関わり)
これまで述べてき た通り、かかりつけ 医は地域包括ケアシステムの中で中心的
な役割を担う。かかりつけ医は、行政・地域包括支援センタ ー・社会福祉協議会 ・
地域医療コーディネ ーター等と連携を密にし、ケアマネジャーはじめ地域住民 へ
の教育・啓発を含め た、地域づくりに関わっていくことが重要である。高齢化 率
が増加し、独居や夫 婦だけの高齢者世帯が今後さらに増加することが見込まれ る
状況において、地域 住民を巻き込んだ形で高齢者を見守る体制作りが欠かせな い
からである。
元来、地域のかかりつけ医が多くを占める医師会員は、妊婦健診、乳幼児健診、
園医・学校医、特定 健診、がん検診、産業医など、赤ちゃんからお年寄りまで 住
民に向けて、疾病予防・健康増進・公衆衛生・初期救急・保健・福祉・介護等様々
な活動を、自律的な医師会活動として、あるいは行政や地域 から求められて行 っ
ている。
今後は、民生委員 、老人クラブや婦人 会等のインフォーマ ルな集まりにも積極
的に参加し、持てる医学的な知識・社会情報・人生訓・死生観等役に立つ情報を、
専門的視点ではなくわかりやすい言葉で、絶えず啓発・発信していくことが大切
である。地域住民の様々な相談を受けるとともに、この「機」を利用して家族 も
含めて健診・がん検診等の重要性を訴え、医療費ばかりでなく家族の健康づく り
なども守っていると の自覚を持ちたい。それが、疾病の早期 発見と早期治療にも
結びつく。
また、認知症・引 きこもり・サルコペニ ア・フレイル・ロコモティブシンドロ
ーム・生活習慣病などは、早期からの介入対策がなければ予 防・軽症化が図れな
い。健康寿命を保ち 、延伸する対策が必要であることを、行 政にも訴えなけれ ば
ならない。
子育て支援から地 域づくりに関わるこ ともある。障がい児 に対する地域での啓
発理解なども大事である。
警察や消防(救急搬送)、交通部局や住宅部局など、保健・医療・福祉以外の行
政機関との連携や、 スーパー、新聞などの配達業や宅配業者といった地域住民 と
接点のある事業者を交えた見守り体制も考えられる。
そうした取り組み は、個々の医師の努 力では難しく、地域 医師会による役割が
期待される。啓発・教育・解説資料を医師会が作ることで取り組みやすくなる 。
また、ICT による発信、医療・介護・福祉のマップ作りやそのツールを利用して
もらうための啓発も欠かせない。
以上、言い換えれ ば「ノーマライゼーションとヘルスプロモ ーション」を自ら
実践し地域に根付かせることが、かかりつけ医としての最も大切な使命と考える。
14
(7)特定行為(特に在宅医療に関する行為)における医師の関わり
保 健 師助産 師 看護師 法の改正によ り 、看護師の 特定行 為に係る研修制度が 創 設
さ れ、平 成 27 年 10 月よ り施 行された 。特定行 為は、医 師が患 者と 看護 師を 特定
し た 上 で、手順 書によ る 実施を 指示し、看護師が 患者の病態 を確 認し て実 施 す る
も ので あ る。
こ れ までも 、現場 で 実施されてきた行為もある と思 われ るが 、系統 だっ た教 育
を 受け て 実施 す ることにより、より医療安全に配慮した形で実施することが可 能
と なる 。
ただ し 、特定 行 為 は「 実践 的な理解 力 、思考 力及 び判 断力 並び に高 度か つ専門
的 な知 識 及び 技 能が特に必要とされる行為」であることから、医師が特 定行為 の
実 施を 指 示す る に当たっては、看護師に全てを任せるのではなく、自 らが行う の
と 同等 の 注意 を もって、 患者 の状態を 把握し てお くこ とが 必要 であ る。
地 域 の中小 病院 や 診療 所にと っ ては、特に在宅医 療関係の行 為が関わってく る
が 、医師 も 在 宅医療 や 終末期医療に関する最 新の 知識・技術を 高めていく こと が
必 要で あ る。 平成 28 年 4 月か ら「日医か かりつ け医機能 研修制度 」がス ター ト
す るが 、 そう し た在宅医療の研修会に積極的に参加していくことが望まれる 。
一 方 、特定 行為研 修 は共通科目 315 時間に加え、各区分 の科 目も あるた め、か
な りの 研 修時 間 となる。これらの研修が大学院や大 病院を中 心とし て行われるよ
う では 、研 修 を受け る 看護師は増えないであ ろう。働 きながら 研修が 受けら れる
よ うな 仕 組み が 提供される必要がある。
厚 生 労働省 は 2025 年に 向けて 十数万人の 研修修 了者が必要 と推計している が、
研 修を 普 及さ せ るためには、座学は e ラー ニングを活 用し、演 習や 実習 はな るべ
く 近く の 医療 機 関で実施できるようにすることが必要であ る 。特 に、在宅 医 療に
従 事す る 看護 師 が身近なところで受けられるよう、地域の 病院、診 療所が 実施 主
体 とな っ て研 修 に取り組む他、看護学校の活用など地域ぐるみで協力していく こ
と が必 要 であ る 。
さ らに 普及を 図 るため に は抜本的な見直しも必要であり、共通科目の時間数 も
早 急に 見 直し を 検討すべきである。その際、内容 の一部の 看護基礎 教育への移 行
や 、各 医 療機関 で 実施されている卒 後教育と の連動など 柔軟な発想が求められ る 。
15
3.2025 年に向けた看護職員の確保について
(1)看護職員養成の現状
平成 26 年現在、看護師は約 108.7 万人、准看護師は約 34 万人が就業している
(図1)。看護師の就業者数は増えている一方で、准看護師の就業者数は減ってい
る。これは、准看護 師の新規養成が減っていることと、准看護師の年齢構成が高
いため、退職等の影響によるものと考えられる。
【図1】看護師・准看護師就業者数
1400000
1200000
1000000
800000
760221
811972
877182
952723
1015744
1086779
看護師
600000
准看護師
400000
200000
385960
382149
375042
368148
357777
340153
0
平成16年 平成18年 平成20年 平成22年 平成24年 平成26年
出典:衛生行政報告例
平成元年以降の看護職員の養成状況を図2に示す。平成元年から平成 10 年にか
けては、卒業生の総 数は増加していた。しかしながら、当時の准看護師養成停 止
運動を背景に、平成 11 年に准看護師課程の専任教員の増員やカリキュラム時間数
の増加等の指定規則の改正が行われ(平成 14 年施行)、准看護師養成所は著しく
減少した。その後も、補助金の減額や専任教員や実習施設の確保困難等により閉
校が続き、平成 26 年度の卒業生は 9,843 人で、平成元年に比べ 2 万人以上も減少
している。地域に根ざして准看護師を輩出してきた医師会立養成所の減少が、 地
域の中小病院、有床 診療所を中心に大きな打撃を与えていることは言うまでも な
い。さらに、准看護 師養成所の減少に伴い看護師2年課程も減少し、看護師の 確
保にも影響を与えている。
16
一方で、看護大学は急増しているものの、その卒業生の県内就業率は 5~6 割に
とどまり(低い県では 4 割程度)、さらには県内での地域偏在や、中小病院や有床
診療所といった医療機関への就業はほとんど期待できない状況が続いている。
【図2】看護師・准看護師学校養成所
卒業者数の推移
このような状況の中で、2025 年に向けては約 200 万人程度の看護職員(保健師、
助産師を含む)が必 要になると推計されており、現在の養成数や離職・退職者 数
の状況では、十数万人が不足する見込みである。
今後の在宅医療を支える人材の確保には、相当の対策が必要である。
17
(2)医師会立看護師・准看護師養成所が果たしている役割
1 ) 地 域に 密 着 した 看 護 職員の 養成
地 域 の看護 職員 不足は 著 しく、中小病院 や有床 診療所では病床の維 持も困 難
な 事態 とな って いる。
地 域 の看護 職 員を 確保 する ために は、いかにそ の地域 の人材を看護職員に育
て るか にかか っ ている。同じ 県内で も、都市部から郡 部に時間を かけて通う と
い うこ とはま ず ないため 、その 地域に 住んでいる 方に看護師、准 看護 師資 格 を
取 得し てもら う ことが必要である 。地域の 医師会が 運営する看護師・准看護 師
養 成所 の卒業 生 の地元定着率は高く、准看護師は、特に中小病院、有床診療所 、
無 床診 療所な ど を中心に、地域の医療提供体制を支えている。
山 口 県健康 福 祉部の 資料による と、 平成 26 年 3 月大学 卒業の看護 師 232 人
の うち 県内就 業 率は 41.4%で ある。
山 口 県医師 会 の資料 によると、 平成 26 年 4 月現在 で、医師会 立看護師養成
所 の卒 業生 169 人のう ち 78.1% が県内に就 業して いる 。
准 看 護師に 関 しては 、准看護師養成所卒業生 261 人中 106 人が准看 護師と し
て 県内 就業、 県 内に就業しながらの進学者が 85 人、県内 医師会 立以外への進
学 者は 42 人で あった。医 師 会立以外の看護学校に進学した者であっても 准看
護 師と して就 業 可能なため、これら学生のマンパワーに対する地元・地域の 期
待 は大 きく、このほ と んどは求められて、地元で准看護師として休日や 夜 間の
診 療に 携わっ て いる。医師会立以外への進学者を入れると、卒業生の 89.3% が
県 内で 就業し て いることになる。
このように、医師会立養成所の卒業生は高い地元への定着率を示している。
2 )看 護 師等 養 成 所運 営 費 補 助金 につ いて
医 師 会立の 看 護師・准看護師養成所は、他 の養 成機 関と 同等 の資 格試 験合 格
率 を達 成して お り、前 述の通り、大学等他の養成校に比べて 地元医療機 関へ の
就 業率 が高く 、 地域医療に貢献している。
にもかかわらず、補助金による支援は、課程によって格差がある。例えば、
平 成 26 年 度の 山口県 か らの「養成所 1 か所あた り」の補助基準 額は、 通信 制
看 護師 2 年課 程にもっ とも手 厚く 、以下 、全日 制看 護師 3 年課 程、全 日制看 護
師 2 年 課 程、 定時制看 護師 2 年課程、 准看護 師課程の順に下げられている。
18
看護職員養成にかかるコストの赤字部分を地域の医師会が補填しているの
が 現状 であり 、この こ とも医師会立 看護師・准看護師 養成所の存続が困難な 要
因の一つとなっている。課程による教員数等の違いは考慮する必要があるが、
地 域に 根ざし た看護 職員 を多く輩出 してい る医師会立看護師・准看護師 養成 所
へ の補 助金が低 く抑 えられ て いる のは不合理で あり、 是正すべき である。
看 護 師等養 成 所の 運営 費補 助金は 、国庫補助 事業 から地域医療介護 総合確 保
基 金に 移行 した ため、都 道 府県計画 により交付 され ることに なって いるが 、実
際 には 、従前 の国の 補 助基準額に準じていることから、なかなか改善が進 まな
い 。各 都道府 県 におい て は、養成所 に対する補 助金( 基準 額)の格差を是 正す
る とと もに、地元定 着 率の高い養成所に対する加算を設けるなど、地域の看 護
職 員の 確保に 貢 献している養成所に対する 支援を強 化すべ きである。
3 ) 社 会 人等 の 受 け入 れと 看護師 ・准 看護 師課 程の多 様性
少子化が進む中で、高校新卒者だけに頼っていては超高齢社会を支える看
護・介護人 材 の確 保 は 望めな い。したが って、社会人 経験者や主 婦を巻き込ん
だ 形で の養成 を進 めてい か なければならない 。例えば 育児を終え た方々など も、
卒 業後 10~20 年超高齢社 会 を支える 人材として活躍 しても らうことが 可 能で
あ り 、 看護職 の 魅力を アピールし てい く必 要が ある 。
社 会 人経験 者 等で、経 済的な 理由 で働 きな がら 資格 取得 を希 望す る者 にと っ
て は、准 看 護師課 程 の存在が資格取得への後押しとなっている。看護職を 希望
す る者 が全て 、大学 や 3年課程に進めるわけでは ない。准看護師 課程は 、看護
師 への 第一歩 と しての役割も果たしており、今後も看護職への門戸は広く開 い
て おく べきで あ る。
大卒あるいは他職種に就業したのちに、准看護師課程に入学してくる方は、
目 的意 識が高 い方 も多く 、現 場での患 者さ んた ちと のコ ミュ ニケ ーシ ョン も非
常 に良 好であ る 。今後も社会人経験者等の受け入れを積極的に行っていくべ き
で ある 。
4 ) 日 本准看 護師 連 絡協 議会に つい て
日 本 精神科 病院 協会を 中 心に日本 病院 会、全日本病院協会 、日本 医療 法人 協
会 ( 以 上 、 四 病 院 団 体 協 議 会 )、 及 び 日 本 医 師 会 の 支 援 の 下 、 日 本 准 看 護 師 連
絡 協議 会が設 立 された。
設 立 におい て、准看 護師を 取り巻く現 状と 問題 点と して 、
19
① 准 看 護師は 平 成 26 年現 在、約 34 万人が就労し、看護 職員 の約 22%を占 め
る。
② 准 看 護師は 診 療 所 、中 小 病院 、 精 神 科 病院に おい て なく て は なら ない存在
で あ る とと も に、 今 後 の少 子高 齢 化社 会 に向け 介護 施設等 に お いて もよ り
一 層 必要と さ れる 。
③ 准 看 護師養 成 校 は カリ キ ュラ ム の 見 直 し、 補 助 金の 減額 な ど から 減少 の一
途 を たどっ て いる 。
④ 医 療 安全対 策 、 院 内感 染 対策 等 の 充 実 がよ り 一 層求 めら れ る よう にな った
が 、 看 護教 育 研修 等 は、ほ とん どが看 護 師を対 象と する も の で准 看 護 師の
教 育 研修の 場 が少な い。
が 挙げ られて い る。全国 レベル で准看護師 のさ らな る能 力向 上を 目指 し、生 涯
教 育研 修体制 を 確立するために設立された「日本 准看護師連 絡協議会」の今 後
の 展開 に注目 し ていきたい。
准 看 護師の 生 涯教育 研修体制を 確保していく ために は、都道府県医師会や地
域 の医 師会、看護学 校 の役割も欠かせない。既に准看護師を対象とした研修 会
を 開催 してい る 都道府県医師会もあるが、全体としてはまだ少ないようであ る。
定 期的 に准看 護 師を対象とした研修会を開き、准看護師の資質の向上を支援 し
て いく ことが 重 要である。
東 京 都医師 会 では、年に 2 回、准看護師の生涯教育 の場 とし て准 看護 師卒 後
教 育講 習会を 開催 してお り 、昨 年 12 月に は第 74 回目の講習会を 開催し たと こ
ろ であ る。参考 とし て、 直近 5 回分の 講演演題を 示す 。
20
21
(3)ナースセンターと医師会の協力による看護職員の確保
看 護 職員確 保 対策の 強化のため、 平成 26 年 6 月の医療介護総合確保 推進法の
成 立に よ り「看 護 師 の人 材確保の 促進 に関 する 法律 」が改 正 さ れ、看 護職 員が病
院・診療 所 等 を離職 した 場合 や看護職員の 業務に 従事 しな くな った 場合 に、都 道
府 県ナ ー スセン タ ーに届 け出る制度 が創 設さ れた 。これは 、都道府 県ナー スセ ン
タ ーが 、離 職者 や潜在 看 護職員の情報を 把握し、届出者 への情報提 供や就業に向
け た働 き かけ を 行うことにより、円滑な復職を促進し、看護職員の確保につな げ
る もの で ある 。
こ の 届 出 制 度を 現 実 に 機 能さ せ 復職 につ な げ るた め には 、看 護 学 生時 代 か ら 、
折 に触 れ て制 度 について周知を図ることが重要である。医師会立看護師・准看 護
師 養 成 所にお い ても、入 学時のオ リエ ン テ ーシ ョン や、各 年 次 の始 業時 、そして
卒 業時 等 に繰 り 返し説明し、周 知 を 図 る 役 割 を 果 た し て い く こ と が 重 要 で あ る 。
ナ ー スセン タ ーはこ れまでも無料 職業 紹介 事業 を行ってきたが 、実際 の実績 は
十 分と は 言え な い状況であった。ナース センターの 機能強 化を図るた め、その 運
営 に関 し て、今後 は医師 会や病 院団体等の 地域 の医 療関 係団 体、都 道府 県労 働局
等の関係行政機関等を構成員とした協議会で十分に協議して進めることとされ
た。
現状ではハローワークやナースセンターからの紹介による看護職員の確保が
期 待で き ない た め、民間企業 の有 料職業 紹介事業者 に頼 らざ るを 得な い医 療機 関
も 多い 。民 間 企業 の職 業紹介 事 業者は 、必要な場合に迅速に人材 を紹 介し てく れ
る メリ ッ トが あ る一方で、高額な紹介料の問題や紹介された人材の早期離職や 能
力 不足 な どの 問 題も指摘されている。
民間企業の職業紹介事業者に頼らずとも看護職員が確保できるようにするた
め には 、ハ ロ ーワー ク やナースセンターが十分機能することが必要である。ナ ー
ス セン タ ーへ の 登録は、これまでは求職者が自らの意思によって登録する形で あ
っ たが 、今回努 力 義 務とされたことで、登録数が伸びていくであろう。医療機関
も その 存 在を 改 めて認識し、活用していくことで、民間 企業の職業紹介 事業者 に
頼 って い る現 状 を改善していきたい。
22
<事例>
東京都
東 京都ナ ー スプラ ザ( ナースセンター)では 、求人施設 と求職 者とが気 楽
に 相 談・面 接や情 報 収集がで きる 自由 な交 流の 場と して 、ふ れあ いナ ース バ
ン ク「 再就職 相 談会 」をナースバンク東 京(飯 田橋 )とナ ー ス バン ク立 川の
会 場 で開催 し てきた 。平成 26 年度か らは、それ に加えて、より地域に密 着
し た 看護職 の 就職支 援として、地 域に おけ る「看 護職 の就 職相 談会 」を行っ
て い る。地域医 師 会 はこれに協力し、地 域に おけ る病 院・診療 所・訪問看護
ス テ ーショ ン 、介護 老人保健施 設等 に働 きか け、 今ま でに 渋谷 区、 板橋 区、
調 布 市、八 王 子市、 江戸川区な どで 開催 され た。
地 域に密 着 した就 職 相談会は 、地元に 住む看護職 と地元の 医療機関 等 の距
離 を 縮める と いう意 味で重要と 考え る。
東 京都で は、平成 23 年度から「看 護職員 確保 に向 けた 取組 支援 」と して
「中 小病院巡 回 訪問」等 を行ってきた が、平成 27 年度か らそれを見 直し 、
「 看 護職員 定 着促進 のための巡 回訪 問事 業」 を公 益社 団法 人東 京都 看護 協
会・東京都 ナ ースプ ラザに委 託、開 始し た。こ れは 二次 医療 圏毎 に東 京都看
護 師 等就業 協 力員を 配置し、各施 設が 実施 する 看護 職員 確保 に向 けた 取 り組
みを 支援する こ とによ り、看護職が就業を継続で きる 仕組 みを 構築 し、都内
の 看 護職員 の 確保促 進を図る目 的で ある 。実際 には 東京 都看 護師 等就 業協 力
員 ※ が中 小病 院を巡 回 訪問し、勤務環境改善や研修体制構築に向けた施設 の
取り 組みに対 して 、助言・指導等を実施 する。看護職員地域確保支援事 業で
実 施 する復 職 支援研 修において 、東京都看護 師等 就 業協力員が 、離 職中 の看
護 職 の経験 や スキル に応じたき めの 細か な「 復職 研修 」や 勤務 条件 等の ニー
ズ に 沿った「 再 就業 相談」を支援してい る。東京 都医 師会 は 、こ の事 業を後
援 し ている 。
※ 看護師等就業協力員:看護職や看護管理に携わってきた経験豊かな看護職員を東
京都が任命。
ま た、
「東 京 都看護 職 員地域確保支援事業」は 平成 28 年度か ら東京 都看 護
協 会・東 京都ナ ー ス プラザに委託予定で、離職 した 看護 職が 身近 な地 域に お
い て 、個々の 有 する知 識及び 経験 等に 応じ た再 就職 支援 研修 並び に就 業相 談
を 受 けられ る 仕組み を整備し、 潜在 看護 職の 就業 意欲 を喚 起す ると とも に、
23
離 職者の潜 在化 を防止 す るなど、看護職の再就職促進を図る目的で開始さ れ
る 。東 京都看 護 職員地 域就業 支援 病院 は地 域の 看護 職員 確保 対策 の拠 点と な
り 、東 京都看 護 師等 就 業協 力員(支援 病 院協力員)を設置し て、再就職を希
望 す る看護 職 に対す る復職支援 研修 及び 再就 職支 援相 談を 行う 。
復 職支援 研 修とし て は、標準コース、訪問看 護ステーションコース、介護
老 人 保健施 設 ・クリ ニック等に おけ る研 修な どが ある 。
東 京都医 師 会は、これ ら東京 都ナースプ ラザ の事 業に 、地区医師 会が積 極
的 に働きかけ る ように 後 援を行っている。
24
(4)在宅医療を担う看護職員の確保
国 と して在 宅 医療の 推進を 図ることとし ている が、そのため には、在宅医療 を
担 う看 護 職員 を 確保していく 必要があ る。
訪 問 看護ス テ ーショ ンに従事 す る看護師・准 看護師数(常勤換 算)の推移を 以
下 に示 し た。
【 図3 】訪問看 護 ステー シ ョンにおける看護師・准看護師就業者数の推移
(常勤 換算 ,小数 第一位四 捨五入)
35000
29700
30000
25000
20000
3069
2219
2233
2966
2500
准看護師
看護師
30120
15000
10000
32000
19566
20217
22318
280
平成18年
246
平成20年
239
平成22年
24768
保健師
需給見通し
5000
0
216
平成24年
236
平成26年
出典:衛生行政報告例
第7次看護職員需給見通し
就 業 者数は 年 々増加 しており、 平成 26 年は第 7次需給見 通しにおける需要
数 も満 たして い る。
し か し、わが 国の高 齢 化率は 、2014 年の 26%から 2035 年に は 33.4%に 上
昇 する と推計 さ れており、今後高齢者を中心に医療ケアを必要とする在宅療 養
者 数は 大 幅な増 加 が 見込まれる 。 24 時 間対 応や緊 急訪 問 、 看取 りな ど の ニー
ズ を考 えれば 、訪問 看護に 従 事する 人材確保は 喫緊の課題 である。
訪 問 看護は 、病棟 で の看護とは大きく異なり 、病 棟の よう なチ ーム 体制 や設
備・機 材 も なく、オ ンコール体制(当番)や緊急時の対応など、精神的・身 体
的 負担 は重い 。そ の上、小規 模な訪問看 護ステーシ ョンが多く 、個人に かか る
負 担 も 大き くな る懸念 か ら、訪問看護業務を敬遠する 人 が多いと思わ れる 。
し か し訪問 看 護には 、病棟勤 務で は経 験す るこ との でき ない 看護 の 魅力が あ
る 。在 宅療養中 の 患 者(利 用者)宅を訪 問し 看護するこ とは、まさしく利用 者
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の 人生 に寄り 添 う看護が体験できる。入院中の複数の患者の 中 の一人で は なく 、
そ の人 だけに 看 護を提供する場面が確保できる。
医療施設とは異なり十分な機材がない反面、本人や家族の意向に添うよう
「 生活 を基盤 と したケアをデザインする」ことができる魅力が 、訪問看 護に は
あ る。ア セ スメン ト 能力に始まり、ケアの実践からマネジメント能力を活か す
機 会で もある 。ま た経験を重ねるなか で、人間理 解や愛 着が深まり、看護 専門
職としての成長のみならず人間的成長を実感できる職業の1つが訪問看護師
で ある とも言 え る。
オ ン コール 体 制が今 後ますます 求め られ る状 況に はあ るも のの 、日勤 で働 け
る こと 、あ るいは ワ ークライフバランスを大切にしながら働けるという融通 さ
が あ る 。 し かし な が ら 、 訪問 看 護 ス テ ーシ ョ ンが 小 規 模 施 設で あ る こ と から 、
院 内保 育所の 設 置や福利厚生は、大規模施設に劣るのが現実である。人材 の確
保 につ ながる ワ ークライフバランスの取り組みが必要となる。
今 後 の訪問 看 護を担 う人材を確 保す るた めに は、例え ば、病院勤務 の看護 職
員 が 訪 問看護 ス テーシ ョ ンに出向して訪問看護を経験 すること により 、徐々 に
訪 問看 護への 理 解、興 味を喚起することが考えられるが、訪問看 護を希望す る
看 護 師 の 中 には 、「経 験 年数 が ない と 働け な い」 と の印 象 を持 つ 者も 少 な か ら
ず 存在 する。
そ こ で、将来 的には 、看 護職員の キャ リア パス の一 環と して 、病院 等と訪 問
看護ステーションとを行き来できるような仕組みを考えることも必要ではな
い か。新 任の 訪問看 護師 を対 象と した教 育計画を普及させながら、また指導 体
制 を強 化する 。加え て 質の保障の観点からすると、実践だけでなく教育に も必
要 とな る看護 基 準・手 順等のケアマニュアルの整備は欠かせない。この点 が進
む こと で、新卒 看護 師も訪 問 看護からキャリアをスタートさせることが可 能に
な ろう 。
一 方 で、現職 の訪問 看 護に従事 する 看護 職 の人材 育成には課題が ある。小規
模 なス テーシ ョ ンでは、看護師の研修参加を支援するだけの人的・金銭的 ゆと
り がな い。自ステ ー ションが教育システムを構築する余裕もないところが多 い。
同 行訪 問など 診 療報酬上の評価に対す る配慮・工 夫の点 において対策が急務と
思 われ る。
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(5)地域包括ケアにおける准看護師の活用について
(看護師・准看護師の業務範囲及び指示のあり方について)
看 護 師のみ な らず約 34 万人 を占 める准 看護師も、今日の地 域医療 、特に診療
所 や中 小 病院 、精神 科 病院を支える重要な 担い手 である。しかしな がら適正な 評
価 がな さ れな い まま、診療報酬体系の見直しや准看護師養成 所に対する 補助金 の
減 額等 が 行わ れ 、准 看 護師を巡る情勢は厳しくなってきている。准看護師 がも っ
と 活用 さ れな け れば、2025 年に 向けて地域包括ケ アシ ステ ムを 構築 して いく こ
と は困 難 と考 える 。
そ こ で、本 委員会 で は、これま で触 れ られて来な かった看護 師と准看護師の 業
務 範 囲 及 び 指 示の あ り 方 に つい て 検討 し、 以 下 の通 り 問題 提起 す る こと と し た 。
な お本 稿 の目 的 は、現在 准看 護師が現場 で行ってい る業務範囲を 限定・縮小し よ
う とす る もので は なく、新 たな時 代に 向 け 、准看 護師 の位 置 づ けを 高め 、活躍の
場 を広 げ よう と いうものである。
保 健 師助産 師 看護師 法第 5 条による と、 看護師とは、「傷病者若 しくは じょ く
婦 に対 す る療 養 上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者 」とされ 、同 法
第 6 条 で 准 看 護師 とは 、「 医師 、 歯科 医師 又 は 看護 師 の指 示を 受 け て、 前 条 に 規
定 する こ とを 行 うことを業とする者 」とあり 、いず れも「療養上 の世話」と「診
療 の補 助 」を行 うも のと 定 められて いる 。この よう に、看護 師 と准看護師 の 名 称
の 違 いと 指示の あ り方は法 律上 明らか であるものの 、両者間の 業務範 囲の考 え方
を 示す 規 定は な い。ま た実際 の医療現場で は、看護 師も 准看 護師 も同 じ仕事を し
て いる と 感じ て いる場合が少なくなく、社会的にもそれらの違いが はっき りと 認
知 され て いる と は言い難 い。
診 療 の補助 と しての 医行 為を含む看護行 為には、高度の 知識・判断・技能を 要
す るも の がある 。看 護 過程の展開 には、看護のアセスメ ント や、看護診 断、看 護
計 画、看 護 介入、看護評価・修正など があり、看護 の専門性 が必要 となる。准 看
護 師の 教 育内 容 に鑑み、准看護師が看護師と同じ業務を同じ程度実施できると は
限 らず 、実 態 から推 察 するに、前述した高度な看護行為の実践や一連の看護 過 程
の 展開 は 、看護 師 が担 当す る業務と考えら れる。
一 方 、准看護 師 は、医師、歯科医師または看 護師 の指 示を 受け て、療 養上 の世
話 又は 診 療の 補 助を行うとされているが、このことが医療現場における准看護 師
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の 果た す 役割 を 狭めるのではなく、役割の拡大につなげなければならない。例 え
ば 、看 護 の基 礎 的知 識や技能で行える行為については、医師 や看護師の監督(コ
ン トロ ー ル)又は 包 括的指示の下に准看護師自身の判断で行 うことがで きる仕 組
み を活 用 する こ とは、人材活用の有益な方法であるとともに、看護師が看護師 で
な けれ ば でき な い業務に専念できる方法と考えられる。
と こ ろで、
「 2025 年に向け て、さらな る在宅医療 等の 推進 を図 って いく ため に
は 、個 別 に 熟練し た 看護師のみでは足りず、医師又は歯科医師の判断を待たずに 、
手 順 書 に よ り 、 一 定 の 診 療 の 補 助 [例 え ば 脱 水 時 の 点 滴 ( 脱 水 の 程 度 の 判 断 と 輸
液 に よ る 補 正 ) な ど ]を 行 う 看 護 師 を 養 成 し 、 確 保 し て い く 必 要 が あ る 」 と の 趣
旨 で、 看 護師 の 行う高度な医行為として、保健師助産師看護師法第 37 条の 2 第
2 項 第 1 号 に「特定行 為 」が定 め られ、38 の特定 行為について研修が始まっ てい
る 。同様 の 考え 方が 、研鑽 を重 ね優れた 技能や知識を習得した 准看護師 につい て
も 考 慮 さ れ る べき で 、“ さ らな る 在宅 医療 等 の 推進 ” のた め 、 あ る 条 件 下 では 准
看護師が自分の判断で実施できる行為が定められることが必須ではないだろう
か 。た だ し、特定 行為は 高度 な行為 であって“手順 書に沿って ”行わ れる が、准
看護師が行う行為はそのような厳密な環境下で行われるとは限らないことは十
分 に考 慮 すべ き である。
准 看 護師が 、ある 程 度自分 で判断して行うた めには、看護 行為の範囲に おい て
准 看護 師 が担 う業 務を明 確に 示し、看護 師の 業務との 整合性を とるこ とが1つ の
具 体策 と 思われ る 。
こ こ で、日本 の看護 師と 准看護 師に相当するものとして、そ れぞれ Registered
Nurse( RN)と Licensed Vocational Nurse( LVN)
( あ るいは、Licensed Practical
Nurse (LPN))が存在 す る米国 の 状況が参考になる。アメリカ合衆国労働省統 計
局 (Bureau of Labor Statistics, United States Department of Labor)によ る
職 業案 内 ハン ド ブック( Occupational Outlook Handbook)に、 看護師( RN)
の 業務 と 准看 護 師(LVN または LPN)の業務が述 べられ ている。
米 国 の看護 師 は看護 学士( Bachelor of Science degree in nursing (BSN))を
有 する NCLEX-RN(看 護師国 家 試験に 相当 )合格者で ある。 その業務は、患 者
ケ アを 提 供・調整 し 、色々な状態の患者 教育や公衆教育を行い、患者やその家族
に 助言 と 精神 的 支援を提供することである。具体的 には、
病 歴や 症状の 記 録
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患 者へ の投薬 と 治療
患 者看 護のた め の計画の作成、作成済みの看護計画の運用
患 者の 観察と 観 察結果の記録
医 師や 他の医 療 専門職への相談と協力
医 療機 器の操 作 およびモニター
診 断テ ストの 実 施と結果分析の介助
病 気や 外傷の 管 理方法についての患者およびその家族への教育
治 療後 の自宅 で の過ごし方についての説明
な どが 主 なも の として記載されている。
米 国 の准看 護 師は、中等 教育 後の教育 機関から授与される卒業証書 及び約 1 年
間 ( あ る い は そ れ 以 上 ) の 州 認 可 の 教 育 プ ロ グ ラ ム 修 了 が 必 要 で 、 NCLEX-PN
( 准看 護 師国 家 試験に相当)の合格者である 。老 人ホームな どの介 護施 設に 就労
し てい る 割合 が 38%で最 も多い 。米国の准看 護師 は初歩的な 看護ケ アを提供する
が 、看 護 師ま た は医師の監督の下で働かなければならない。
具 体 的な 業務 とし ては、
患 者の 健康状 態 のモニター
― 血圧測定 など
包 帯交 換やカ テ ーテル挿入などの初歩的看護ケアの実践
入 浴介 助や着 衣 介助のような患者の基本的療養体制の提供
提供しているケアについての患者との話し合いと患者の思いについての傾
聴
患 者の 状態に つ いて看護師や医師への報告
患 者の 状態に つ いて記録
な どが 主 なも の として記載されている。看護師ま たは医 師の直接監督下でなけ れ
ば なら な い業 務 範囲については州条約で定め られ ており、業務範囲 は州に よっ て
異 なる 。例えば 、投 薬や点 滴 ができる州とできない州がある。経験豊富な准看 護
師 は、他の 准看護 師 や資格を持たないメディカルスタッフに 直接指 示を出すこ と
が でき る とす る 州もある。
2014 年 の 統 計 で は 、 米 国 の 看 護 師 の 就 労 者 数 は 2,751,000 人 、 准 看 護 師 は
719,900 人 であ った。米国 には日本 のおよ そ 3 倍の看護 師と 2 倍の准看 護師が 就
業 して お り、医療 文化 は異な る が、米 国 の 看 護 師・准 看 護 師 は 、日 本 の 看 護 師 ・
准 看護 師 の関 係 にかなり近い ように思 われる。業務 の明確 化、そし て州条例に よ
っ て准 看 護師 が行う 業務 範囲 を定めて いるこ とは参考になるであろう。
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米 国で は 、准看 護師 の雇用 は 2014 年から 2024 年に かけて 16%増加す ると 予
測 され て いる 。その 要因 の1つ は、ベビーブ ーム世 代の高齢化に 伴う医療サー ビ
ス の増 加 が見 込ま れるこ と である。准看 護師 は、介護施設や在宅医療におけ る高
齢 者ケ ア の担 い 手として必要とされるとしている。
日 本 におい て も、2025 年に 向けて地域包 括ケア システム を構築す るために は、
今 まで 以 上の 看 護人材が量的にも質的にも求められている。病床機能の 分化が 進
む なか 、高 度急性 期・急性 期の看護 、中小病院 や診療 所の看護、介護施設の看 護
な ど、各 機関・施設 の 機能に応じた看護の役割が明確となる。そこで 、次の 段階
と して 、准 看護 師への 業 務の委譲及び指示のあり方について早急に検討し、看 護
師・准看 護師の 相 互の関係性と看護行為の範囲を示し、看護 師・准看護師の 業務
を 明確 化 する 必 要がある。つまり、准看護師 が医師 や看護師の監督下において 自
分 の判 断 で実 施 できる、すなわち単独でできる行為を明らかにし、看護チ ーム に
加 わり 、 看護 全 体としての シナ ジー効 果の発揮を期待 するも のである。
看 護 の 実践 者 に は、 准 看 護 師・ 看 護 師・ 認 定 看 護 師 ・ 専 門看 護 師 な どが あ り 、
そ れぞ れ の教 育 背景に応じた看護のスキルがある。そのスキルを有効に活用す る
看 護職 の スキ ル ミクス体制が、地域包括ケアシステムを支える看護の新たな姿 と
言 える の では な いだろうか。ジェネラリストとしての看護師のスキルに加え特 定
行 為を 行 う看 護 師のスキル、看護スペシャリストとしての認定看護師・専門 看護
師 のス キ ル、さらに は 准看護師のスキルをもって、地域包括ケアシステムの多 様
な 場面 や 状況 下 において看護人材が有効に活用されることが 望まし い。看護師 と
准 看護 師 の新 た な関係性を構築する時期が到来しているのではな いだろ うか 。
参考:
1) http://www.bls.gov/ooh/healthcare/home.htm
2) http://www.bls.gov/ooh/healthcare/registered-nurses.htm#tab-1
3) http://www.bls.gov/ooh/healthcare/licensed-practical-and-licensed-vocational-nur
ses.htm#tab-1
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(6)医師会立看護師・准看護師養成所の課題と対策
1)専任教員の確保
養 成 所にと っ て、専任 教員の 確保 は学 校の 運営 を左 右す る 大きな問 題の1 つ
で ある 。専任 教 員養成講習会 は、開催箇 所が 非常に少ない ため(平成 27 年 度
は 12 都 道府 県で開催 )、地元 での開 催がない場 合、他都道府 県での 受講を強 い
られる。しかし、8か月以上にもわたる講習を他都道府県で受講することは、
教 員本 人にも 負 担になるとともに、養成所にとっても派遣費用や代替教員の 確
保 等 大 きな負 担 となっ て いる。
① 専 任 教員養 成 講 習会 の改 善
ま ず は、専 任教員 養 成講習会の開催箇所を増や す必 要が ある 。都道 府県 行政
に 対し 開催を 要 望しても、受講人数が集まらないことなどを理由に、開催 しな
い 都 道 府県も見 受け られる 。例えば、 群馬県で は定員 20 名と小 規模で も開 催
し て お り、近隣 県への 働 きかけ や隔 年で の開 催 、あるいは近 隣県と の持 ち回 り
開 催 な ども検 討 すべき で ある。そのた めには、隣接する 都道 府県 医師 会が 共 同
し て都 道府県 行 政に働きかけることが重要である。
ま た 、講習 会の 期間は 都 道府県によって 8 か 月~1 年とまちまちで あるが、
密度の濃い授業内容とし、受講期間の短縮を図ることを検討すべきである。e
ラ ーニ ングも 一 部科目で活用できることになっているが、その導入は都道府 県
に 任さ れてい る ため、あまり 導入が進ん でいない(平成 27 年度は 12 都道府 県
中 5府 県で活 用 )。e ラー ニングの 活用を 進め ると とも に、単位制 にするなど し
て 、講 習を分 け て受講できる ような体制 も検討 すべきであ る。
今 後 の高齢 社 会にお ける看護職 員の 確保 を考 えれ ば、少 なく とも 新規 養成 の
継 続は 必須で あ ることを都道府県行政は認識し 、対応すべ きであ る。
ま た 、厚 生労働 省 においては、現 場で 働く 看護 師に 対し て看 護教 員へ の道 を
紹 介し 、専任 教員養 成 講習会の受講者を増やす努力をすべきである。現場 の看
護 師に 受講し て もらえれば、講習会の受講者を増やすことにつながり、講 習会
が 開催 されや す くなる。また、教員資格を有する看護師を増やせば、看護 師・
准 看護 師養成 所 にとって採用時に講習済みの教員を確保することができ、上 記
の 問題 も緩和 さ れることになる。
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2)実習施設の確保
実 習 施設の 確 保も非 常に大 きな問題で あり 、各養成所は苦慮し てい る 。自 県
内 に看 護系大 学や私 立全日 制 看護学 校が新設さ れ、そ のあお りを 受け て、医 師
会 立養 成所の 実 習施設の確保が困難となっている。
① 実 習 指導者 講習 会 の 改善
実 習 には実 習 指 導 者の配 置が必 要 で あ るため 、実習 施設 を 増やす に は 、病
院 側で 実習指 導 者 講 習会を 受講し た看 護 師を確 保 して もら う 必要が あ る 。実
習 指導 者講習 会 は 240 時間 (8 週間)のカリキ ュラムとなっているが、病 院
側 も看 護体制 に 余 裕 がないため 、8 週間 の講 習に派 遣 す るこ とは容易で はな
い。
看 護 教育に お け る 実習 の 重要性 は理 解 し てお り、指 導者 も 相応の 講 習 が必
要 であ ること はわ か るが、 カリ キ ュラ ム の 内容 を精査 し、 病 院 側が 受講し や
す い形 にすべ きで ある。
実 習 指導者 達 は、講 習を受けなくてもすでにス キル は身 につ けて いる ので 、
e ラ ー ニング を 導入し 、1~ 2 日のス クーリング を受けることとすれば、 講習
会 は大 幅に改 善 されると思われる。
② 実習 施設の 謝 金 の問 題
近 年 の問題 と し て 、実 習 施設 か ら 実 習 謝金 の 値 上げ を要 請 さ れる ケー スが
増 えて いる。 こ れ は 、看護 系大学 や私 立 全日制 看護 学 校 が 支 払 う実 習謝金 が
高 額で あるた め 、 そ の 影響 を受 け て 、 医 師会立 養成所 への 謝 金の値 上げ要 求
に つな がって い る部分が ある。ある県で は、1 人 1 日 当たりの謝金について 、
現 在の 3倍の額 を要 求され た例もある という。
実 習 謝金の 高 騰 は 養成 所 の運 営 に 直 接 的に 影 響 を及 ぼす も のであ り、非 常
に 大き な問題 で ある。
高 額 の実習 謝 金を要 求する実 習施 設は 、国公立 その 他の 総合 病院 であ って 、
実 習施 設側の 言 い 分 は、多 数の看 護学 校 からの 実習を 受け て いる中 で医 師会
立 の看 護学校 の 実 習 謝金の みを 低 くす る 理 由は ないの で、 ど の学校 にも一律
の 実習 費を支 払 っ て ほしい という もの で ある。 実習を 受け 入 れて も らって い
る 学校 は弱い 立 場 で あり、 実習施 設の 要 求を受 け入れ なけ れ ば大切 な総 合病
院 での 実習を 失 うのではないかという不安を常に抱えている。
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一 方 、 医師 会 立の 養 成所で は、 ほとん ど の実習 施設 は医 師 会 内の 施 設 であ
り 安い 実習謝 金 で 受 け入れ てもら って い るため 、それ らの 総 合病院 にの み高
額 の謝 金を支 払 うことにな ると 、他施 設に対する説明ができなくなる。
医 師 会立養 成 所 は 、地 域 の看 護 職 員 を 確保 す る ため 、医 師 会 本体 から の繰
り 入れ を行い 、講 師 も ほと んど ボ ラ ン テ ィア の よ うな 形で 協 力して いる状 況
で ある 。 看護 大学 や 私 立全 日制 看 護 学 校 のよう に高額 な学 費 を 取っ てい るわ
け でも ない。医 師会立 養 成所が果たしている公益 性は 考慮 され るべ きで ある 。
そ のこ とを理 由 に 、 医師会 立養成 所は 実 習施設 側と謝 金に つ いて交 渉す べき
で ある と思う 。 ま た 、国・ 都道府 県は 医 師会が 看護 職 員 を 養 成し て い るこ と
に 対し て感謝 を し、もっと支援をすべきではないか。
1つ の 解決 策と し て 、山 口県医 師会 の 主催す る 「看 護学 校 担 当理 事・ 教務
主 任合 同協議 会 」 に おいて 、山口 県 行 政 に対し て、実 習施 設 の 要求 額と 医師
会 立養 成所の 希 望 額 との調 整を図 るた め 行政か ら補助 金を 出 しては どう かと
提 案し ていると こ ろである 。
3)入学定員の超過
各 養 成所は 、入試 の 合格者発表では、入学 辞退 者 や途中で の退学 者を見 越し
て 、 定 員より 若干多め に合格 者を出すの が通 例で ある 。
し か し、結果 とし て実際 の 入学者が定員 を超過した場合 には都 道府県から厳
し い指 導がな さ れる。厚 生 労働省は 、入 学 辞退 者の 見込 みが 実際 とは 異な った
場 合や 留年者 や 復学者があった場合はやむを得ないが、複数年にわたり大幅 に
定 員を 超えて い る場合には、定員の増員で対応してほしいとの考えである 。
定 員 を増や す ことが できれば良 いが 、定員 の増 加は 実習 室の 面積 要件 等に も
関 わる ため、 簡 単に増やせない場合もある。
定 員 を若干 超 えて入 学させた場 合に おい ても 、養成 所と して 、入学 者の 学習
環 境に 影響を 与 えないよう配慮することは当然である。都道府県 行政は 、単純
に 数 字 だけを 見 て判断 するのでは なく 、実際 の教 育環 境に 影響 を与 えて いる か
ど うか 等を見 た上 で判断 す べきである。
大 学 では入 学 定員を 超えての入 学は 当た り前 のよ うに 行わ れて お り、1.5~2
倍 近 く 入学 させ ている と ころもある。専門学校のみがこのような指導を受 ける
の は 不 合理で あ る。
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4 ) 医 師 会 立 養 成 所を 魅力 あるも の と す る た め に
高 校 新 卒者 の大 学 志 向 が強 まる 中で 、 専 門 学校 の魅 力を アピ ー ルし てい かな
け れば な らな い 。従来 から 、大学に 比べて 1 年短い養 成期間 で国家資格が得ら
れ る こ と や、 学 費 の面 で の メ リッ ト、 そし て 実践 力が 身に 付き 即 戦力 とし て活
躍 でき る 等の 特徴 がある 。
地 域 に 根ざ し た 専門 学 校の 良さ に、 さら に 付 加 価 値 を 付 け る 新 たな 取 り 組み
も 行 わ れてい る 。蕨戸田 市 医師会 看護専門学校(看護師 3 年課程 )は、平成 27
年 から 4 年間 の 修業期間とし、ゆとりをもって学習できるようにするととも に、
① 高度 専 門士 ( 4年修業 3,400 時間以上のカリ キュラムを修了した者に与え ら
れ る も の )の 取 得 や、 ② ダブ ルス クー ル制 で 大学 に入 学し 、学 士 が取 得 で き る
体 制 を 整 えて い る 。4 年 間 の 修業 期間 には な るも のの 、こ うし た 取り 組み は 、
実 践 力 を 身に 付 け られ る 専 門 学校 の良 さと 、 学生 の高 学歴 志向 に 適う もの と し
て 、注 目 した い 。
ま た 、 福島 県で は、 県 中地 区に ある 医療 ・ 福祉 系の 大学 や専 門 学校 の関 係者
が 集ま っ て、看 護 教育機関だけでなく、薬剤師や理学療法士等リハビリ関係職 、
臨 床 工 学 技士 、 管 理栄 養 士、 介護 福祉 士等 様 々な 養成 機関 が連 携 する 取り 組み
が 検 討 さ れて い る 。既 に 医 療 系の 総合 大学 で は、 学部 を 横 断し て チー ム医 療教
育 が 行 わ れて い る とこ ろ があ るが 、専 門 学 校 等に おい ても 地域 の 養 成 機 関 が 連
携 す る こ とで 、 学 生時 代 から チー ム医 療を 経 験で きれ ば、 学生 に と っ て大 き な
財 産 と な る。 これ らの 取 り組 みは 、入 学生 の 増 加 、 ひ い て は地 域 の医 療人 材 の
確 保に つ なが る ものと考えられる。
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(7)看護師2年課程通信制の入学要件の見直しについて
平 成 27 年 3 月に国家 戦略特 別 区域諮 問会 議か ら、 看護師2 年課程 通信制 の入
学 要件 で ある業 務 経験年 数 の短縮について検討することと され、さらに6月に は
政 府の 「 日本 再 興戦略
改定 2015」において、大幅に 短縮するこ とについて検
討 する 方 針が 打 ち出された(下記)。
「 国 家 戦略 特 区に お ける 追 加 の規 制 改革 事 項等 に つ いて 」( 27 年 3 月 19 日 )
通 信 制 看護 師 学校 養 成所 の 入 学基 準 の緩 和
・ 地域医療体制の充実に向けた看護師養成のため、通信制看護師学校養成所の
入学基準について、准看護師としての業務経験年数を短縮することについて
検 討 し 、今 年 中に 結 論を 得 て 、速 や かに 措 置す る 。
「 日 本 再興 戦 略
改定 2015」( 27 年 6 月 30 日 )
通 信 制 看護 師 学校 養 成所 の 入 学基 準 の緩 和
・ 地域医療体制の充実に向けた看護師養成のため、通信制看護師学校養成所の
入 学 基 準に つ いて 、准 看 護 師 と し て の 業 務 経 験 年 数 を 現 行 の 10 年 か ら 大 幅
に短縮することについて全国的な措置として検討し、本年中に結論を得て、
速やかに措置する。
通 信 制の入 学 要件を 現行の「業務 経験 年数 10 年以上 」から大幅 に短縮する こ
と は、既存 の2年 課 程全日制や定時制に大きな影響を与えることが懸念される た
め 、日 本 医師会 で は医師 会立 看護師 養成所 2 年課程( 全日制・定時制)に対して、
調 査を 行 った 。
< 調 査 結 果 ( 抜 粋) >
各 養 成所か ら は、現行 の通信 制のカリキ ュラ ムに つい て、改善を 求め る声 が
多 く寄 せられ た 。特に臨地実習の内容が紙上事例演習( 24 事例)、病院 見 学実
習( 16 日)、面接 授業( 24 日)と大 幅に緩 和されており、この 内容 では 、看護
過程の展開など十分な教育ができていないのではないかとの指摘が多かった。
実 際、 看護師 国 家試験の合格率にも差が出ている。
従 っ て、現 行のカ リ キュラムのまま業務経験年 数が 短縮 され た場 合に は、看
護 の質 の低下 を 招くことが懸念されるため、業務経験年数を短縮する場合に は
カ リキ ュラム の 見直しが必須であるとまとめている。
ま た 、全日 制・ 定時制 養 成所への影響については、 仮に業務 経験が 7~8 年
に なっ た場合 に は、学生の応募が 「大幅に 減少する」と答えた 学校が 17.8% 、
35
「 減 少 する」と答 えた 学校が 41.8%で、約 6 割の学校 が影響があるとの回答 で
あ った 。さら に 、5~6 年に 短縮され た場合 につ いて は、「大幅に 減少する」と
答 えた 学校は 43.8%、「減少 す る」と答えた学校は 34.2%で、約 8 割の学校 が
影 響が あると 考 えていることがわかった。
実 際 に、入 学要件 の 見直しが新聞報道されたこ とに より 、学生か らは通 信制
を 考え るとい う 発言も聞こえてくるという。
< 7~ 8 年に 短縮され た場合 >
<5~6 年に短 縮された場 合>
わからな
い, 5.5%
変わらな
い, 35.6%
わからな
い, 5.5%
大幅に減少
する,
17.8%
変わらな
い, 16.4%
減少する,
41.8%
大幅に減
少する,
43.8%
減少する,
34.2%
既 存 の 2 年課 程全 日制・定時制 は入 学者 の 8 割が准 看護師養成 所卒業後す ぐ
の 入学 である た め、現行の通信制の入学要件「業務経験年数 10 年」の場 合 に
は対象者は重ならない。しかし、業務経験年数が大幅に短縮された場合には、
臨 地実 習が簡 易 で、時間的制約や経済的な面でも有利な通信制に学生が流れ る
こ とが 予想さ れ 、全 日 制・定時制養成所の存続も左右するおそれがあると して
い る。
< 医道 審 議 会 保 健 師助 産師 看護師 分科 会の 取り まとめ >
本 件 は、平成 27 年 12 月 の医道 審議会 保健師助産 師看 護師 分科 会に おい て 検 討
が 行わ れ 、以 下 のような 取りま とめが なされた。
< 入 学 要件 に おけ る 就業 経 験 年数 の 短縮 に つい て >
・ 2 年 課 程 ( 通信 制 )の入 学 要 件に つ いて 、 激変 緩 和 措置 と して 、 まず は 就 業経 験 年
数 を 7 年 以 上 に 短縮 する 。
< 入 学 要件 の 見直 し に伴 う 教 育の 充 実に つ いて >
・ 就 業 経 験年 数 の要 件 短縮 に 当 たっ て は、入 学生 の 実 技能 力 、必 要 な知 識 や 思考 過程
を 確 認 した 上 で、身 に付 け る べき 技 術を 学 生が 習 得 でき る よう 、学校 養 成 所に おけ
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る 教 育 の充 実 を図 る こと と す る。
・ 具 体 的 には 、
① 対 面 によ る 授業 日 数を 10 日 間 追 加し 、 フィ ジ カ ルア セ スメ ン ト、 根 拠 に基づ
い た 看 護 を 実 践 す るため の 問 題 解 決 プ ロ セスを 学 ぶ 内 容 や 、 健 康教育 に お い て 効
果 的 な コミ ュ ニケ ー ショ ン に つい て 学ぶ 内 容を 含 む もの と して 実 施す る 。
② 対 面 によ る 授業 の 充実 の た め、 専 任教 員 の定 数 を 現行 の 7 人 から 10 人に 増員
す る 。 ただ し 、学 生 総定 員 が 300 人 以 下 の場 合 は 、 8 人と す る。
③ 准 看 護 師 と し て のこれ ま で の 就 業 形 態 、就業 場 所 、 就 業 日 数 ・時間 に つ い て 、
学 校 養 成所 で 入学 時 に把 握 し 、個 々 の学 生 の教 育 内 容に 生 かし て いく こ と とする。
< 施 行 時期 等 につ い て>
・ 入 学 要 件に お ける 就 業経 験 年 数の 短 縮を 行 うた め に は、前述 の 通り教 育 内 容の 見 直
し が 必 要で あ り、学校養 成 所 にお け る体 制 整備 等 に 一定 の 時間 を 要す る と 考え ら れ
る こ と から 、 その 施 行時 期 は 平 成 30 年 4 月 1 日 と す る 。
・ 施 行 後、2 年 課 程へ の入 学 者 の動 向、今 後の教 育 の 内容 の 見直 し の状 況 等 を勘 案 し 、
入 学 要 件に お ける 就 業経 験 年 数 を 5 年 以上 とす る こ とも 含 めて 検 討し 、そ の 結 果に
基 づ い て、 施 行 後 3 年を 目 途 に必 要 な見 直 しを 行 う もの と する 。
<本委員会としての意見>
1 ) 通 信 制の 検証 につ いて
通 信 制は、も とも とは平 成 11 年に取 りまとめら れた「准看護婦 の移行教育に
関 する 検 討会 報 告書」にお いて 、就業経験の長い准 看護師に対する移行教育( 31
単 位 930 時間 、5 年の時 限 措置)が 提言 され たも のの 、既 に 2 年課程が ある中 で
制 度化 が 困難 であ ること から 、制度として は存在して いた 通信 制を改正し 、臨 地
実 習を 大 幅に 緩 和することによって 、移行教 育的役割を 果たそうと したもので あ
る と言 え るだろ う 。
当 時 の流れ から すれば 、通信 制は様々な事 情によ り進学できなかった准看 護師
の 救 済 的 な 意 味 合 い が 強 か っ た と 思 わ れ る 。 そ の た め か 、 就 業 経 験 年 数 を 「 10
年 以上 」とし た明確 な根 拠はなく、カリ キュラムも 十分検討され たとは言 い難い 。
そ の ような 形 でスタ ートした 通信制 が、現在は 2 年 課程全体 の入学者の 3 分 の
1 程 度 を占 めるま で になって おり、当初の 意味合いは薄れ、 2 年課程 の 1 つの 類
型 とし て 認識 さ れている 。しか し 、前述の通 り、通信制と 全日 制・定 時制 のカ リ
キ ュラ ム は大 き く異なり、同等程度の教育が担保されている のか は大変疑問であ
る 。今 回 、就業経 験 年数の 見直しを 行う 前に 、まずは 通信制の 検証を 十分に行 い 、
カ リキ ュ ラム に ついてもしっかり検討す べきであ ったと 考える。
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国 と して、十分な 検討 もなく 短期間で就業経験年数の短縮を決めたことは 、非
常 に遺 憾 であ る。
2 )今 回 の見 直 し に対 する 評価 と 全 日 制・ 定時 制への 影響
「 日 本再興 戦 略 改定 2015」において「 現行の 10 年から 大幅に 短縮す るこ と
に つい て 全国 的な 措置と し て検討」とさ れた が、大幅な 短縮による 影響に つい て
十 分な 理 解も な いままに 方針 が打ち出 されたよう に思われる。そして 、厚生労 働
省 あ る い は審 議 会 にお い ても 、「 大幅 な短 縮 = 5 年 以上 」とい う 認 識 で検 討が な
さ れた こ とは 非 常に遺憾である。
そ も そも、准看 護師 が看護 師 になる道は広く開か れてい る。准看 護師資 格取 得
後 すぐ に 進学 で きる 2 年課 程全 日制・定時制があり、 10 年待たな ければ 進学 で
き ない わ けで は ない。地域の医師会が運営する全日制・定時制の 2 年課程 で は 、
主 に准 看 護師 資 格取得後 すぐ の入学生 を受け 入れ 、一方で 通信制は就 業経験 年数
10 年 以上 の准看 護師を入学要件とすることで、棲み分けがなされてきた。
そ の よ う な 状況 で 、 通 信 制の み を考 え、 業 務 経験 年 数の 大幅 な 短 縮を 図 れ ば 、
全 日制・定 時 制の学 生 の動向に 大きな影響を与 え、養成所が 運営で きなくなる お
そ れが あ る。もし 全 日 制・定 時制の養 成所が閉校にな れば、准看護師資 格取得後
す ぐに 進 学し よ うと考え てい る准看護 師まで 、数年 待っ て通 信制 を受 けな けれ ば
な らず 、逆に選 択 肢 を狭め る ことになる 。こ れでは本末転 倒 であ り、そのような
事 態は 絶 対に避 け なけれ ば ならない。
こ う した影 響 を十分 認識すること なく 、5 年以上 でよいとする主張 は、非常 に
無 責任 で ある と 言わざるを得ない。
今 回就 業経験 年 数を短 縮 するのであれば、カリキ ュラム 、特に臨地 実習の 見直
し は必 須 と考 えられ たが 、実際 には臨 地実習の見 直し はな く、教員 3 名の増員 と
面 接授 業 10 日 の増加のみにと ど まったことは、 非常に 不十分な対応である と 考
え る。そ の 他 に、
「 准看護師 と しての これまでの就業形態、就 業 場 所 、就 業 日 数 ・
時 間に つ いて 、学校 養 成所で入学時に把握し、個々の学生の教育内容に生かし て
い く」 と されて い るが、 1 学年 定員 が 150~280 名規模 の通信制に おいて、ど の
程 度対 応 でき る のか疑問である。
今 回 の見直 し は十分 な検討時間も なく 結論 が出 され たも ので あ る。今後の基 礎
教 育カ リ キュラ ム の見 直しの中 で、通 信制につ いても抜本 的な 見直 しを 行い 、教
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育 の質 の 担保 を 図るべきである。
今 回 の見直 し による 全日制・定時 制へ の影 響 につい ては、先の医師 会立看 護師
養 成所 2 年課 程を対 象 とした 調査結 果で は、就業経験が 7~ 8 年とさ れた場合に 、
影 響が 出 ると 答 えた学校は 6 割近く にのぼった 。
最 終 的には 5 年で はなく 7 年と された ことで、当初予想し ていた よりも影響 は
少 なく 済 む可能 性も ある もの の、一方で 今後就業経 験年数を 5 年以上と するこ と
も 含め て 検討 を加 え、その 結 果に基 づい て施 行後 3 年を目途に必要 な見直しを 行
う と さ れてい る ことか ら、そ の影響は 不透明であ り予断を許 さない。
3 ) 次 期 の見 直 し にあ たっ て留意 すべ き点
次 の 見直し の 際には 、通信 課程の教育の 質の変化、通 信制 で学 んだ 学生の 現場
で の評 価 、2 年課 程全体 へ の影響 につ いて 、検 証す る必 要 がある。
厚 生 労働省 は 、①改 正が施行され るま での 2 回( 平成 28、29 年度)と施行 後
の 3 回 ( 平成 30~32 年度 )の 入学生 の動向と、②平成 28 年度か らの看護基 礎
教育の見直しと新たな通信制における教育内容を踏まえて検討すると表明して
い る。
も し就 業経験 年 数を 5 年以 上とす るならば、抜本的 な見直し、すなわち見学 で
は ない 実 習を 相当 程度行 う ことが 求め られ る。
し か し、実 際に通 信 制の養成所からは、臨地 実習 を増 やす こと は困 難で ある と
の 意見 が 出て い る。そ うであれば、これ以上の短縮は無理であると言わざるを 得
な い。就 業経験 年 数 を短縮 す ることだけを考え、通信制を厳 しくした場合、今度
は 通信 制 の運 営 が困難になることを十分認識して検討すべきである。
ま た 、繰り返 し になる が、既存の 全日 制・定 時制 に大 きな 影響 を与 え、准 看護
師 がす ぐ に進 学 できる道が断たれることのないようにしなければならない。平 成
28 年 度~ 32 年度 まで の全日 制 ・定時制の学生の動向によっては、これ以上 の緩
和 は認 め られ ない こと を強く 主張した い。
さ ら に、今回は 医 道審議会保健師助産師看護 師分 科会 にお いて 検討 がな され た
が 、分 科 会委 員 は、大学 関係 者や病院 関係者が多 く、看護師養 成所 2 年課程に つ
い て十 分 な見 識 を持ち合わせてい るとは言 い難い 。次 回の見直し の際に は、十 分
な 検討 期 間を 確 保した上で別途 検討会 を設置し、看 護師 養成 所関 係者 等の 意見 を
聞 くこ と を求 めた い。
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4 ) 通 信 制の 位置 づ け につ いて
東 京 都医師 会 で開催 している准看 護師 卒後 教育 講習 会終 了後 に、通 信制 につ い
て アン ケ ート 調 査を行った。平成 27 年 12 月に行 ったアンケ ート結果のなか で、
准 看護 師 に対 し て看護師 への 移行を志望し ている かの質問に対して、86.2%の 回
答 者 が 看 護 師 へ の 移 行 を 「 志 望 し て い ない 」 ま た は 「 無 回 答」、 13.6% が 「 志 望
し てい る 」で あ った。志望している者の 65.2%が看 護師 2 年課程 (通信制) を
「 利用 し たい 」と 回 答している。生活の 糧として准看護師の仕事をしながら 、看
護 師に な るに は 通信制は選択肢の一つといえる。通学でき る範囲 に 2 年課程全 日
制・定 時制 がない 場 合でも、看護師になるための道としても必要な課程であろう 。
通 信 教育に は 、勤務 しながら自らのペースで 学習 がで きる こと 、全日 制・定時
制 に比 べ 費用 が 抑えられるというメリットがある。
し か し、通 信制と い う手段 には限界 があるこ とも、デメリッ トと して 認識 しな
け れば な らな い。全日 制・定時制と 比べ、技術面 の確認・演習がないこ とや臨 地
実 習が 数 日の 見学 にとど ま るため 、看護過程 の展開の学びが 十分 にできないと 考
え られ る 。学生 が演 習や 臨 地実習か ら得 るも のは 大き いが、全日制・定時制にお
い て 720 時間 行われる臨 地実習 と 、通 信制の紙上事例演習・病院見 学実 習・面接
授 業で は 比較 に ならないほどの差があると考える。
国 民 の生命・健康を 預かる 医療職 で、通信課 程で国家試 験受験資格を取 得で き
る のは 看 護師 の みである。やは り、全日 制・定時制において しっか り臨地実習 も
含 めて 学 ぶのが 本 来のあ る べき姿であると考える。
今 後 就業年 数 が 10 年か ら 7年 に短縮され た場合 、さらに通信制を利用し よ う
と する 准 看護師 は 増える と 考えられるが、通信制に おいて も 、全日制・定時制 と
同 等の 教 育の 質 が担保されることが必要である。現行の 通信制のカ リキュラムで
は 不十 分 であ り 、通信 制を卒 業 した者 が、自信を持って業務にあ たれ るよ うな カ
リ キュ ラ ムに す る必要がある。
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4.おわりに
今 期 委員会 で は、主 に地域包括ケ アシ ステ ムに おけ る多 職種 連携 と、 2025 年
に 向け た 看護 職 員の確保対策について検討した。
今 後 在宅医 療 にかか る多職種連携 をさ らに 進め てい くた めに は、地 域の 医師 会
に よる 医 療・介護 連 携推進事業の推進はもとより、医師の意 識改革・行動変 容が
強 く求 め られ て いることを指摘したい。現状では、地域の多職種が集まる研修 会
等 への 医 師の 参 加は少なく、医師の在宅医療への消極性が多職種連携を妨げて い
る との 指 摘も あ る。今後は、多くの医師 が 、できる範 囲で在 宅医療に取り組んで
い く必 要 があ り 、地 域の医師会が開催する在宅医療や多職種連携の研修会に積 極
的 に参 加 して い くことが求められる。こ うした研修会に参加し、医師同士、そ し
て 多職 種 との積 極的 な関係 構 築を進めていくことで、在宅医療にも取り組み やす
く なり 、地 域住民 に 信頼されるかかりつけ医としてさらに役割を果たすことが で
き るだ ろ う。
一 方 、看護 職員の 確 保は地域の医療提供体制を 左右 する 大き な問 題で あ り 、地
域 医療 構 想の 中 でも検討されている 。看護系 大学の増加 により全体の 養成数は 増
え て い る が 、 特に 地域 の 中 小病 院 、 診 療 所 の 深 刻 な 看 護職 員不 足 は 変わ ら ない 。
結 局、地 域の看護 職 員(特 に郡部など )を確保す るには、その地域 の人材 を看 護
職 員に 育 てる か にかかっている。その点 で、地域に根ざした 医師会立看護師・准
看 護師 養 成所が 果 たす役 割は 大きく、改めて医 師会立 看護師・准看護師養成所の
地 域医 療 への 貢 献度を評価し、 財 政 そ の 他 を 含 め た 支 援 が 行 わ れ る べ き で あ る 。
ま た 、今 期委員 会 では、地域包括ケアシステム における准看護師 の活用 とし て 、
准 看護 師 の業務 につ いて一 歩 踏み込んだ提言をし た。病床機能 の分化 が進む 中で、
各 医療 機 関・施設 の 機能に応じた看護の役割も明確とな る。次の段階 として 、看
護 師と 准 看護 師の 業務 分担を明 確化し、准看護師 が医師や 看護師 の監督下(コ ン
ト ロー ル )又は包 括 的指示の下に 自分の判断 で実施 できる行為 を明らかに す るこ
と で、地 域 包 括ケア シ ステムにおいて 、より准看 護師が 活躍できる 環境を整え る
こ とが で きる と 考える。これ は、現在 の 准 看護師の業務範囲を限定・縮小 しよ う
と する も ので は なく、新たな時代に向け 、准看護師の位置づ けを高め、活躍の場
を 広げ る 趣旨 で ある。今後 の議 論が期 待される。
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