児童虐待による死亡事例検証報告書(概要版) 第1 検証の目的 本報告は、平成 25 年度及び平成 26 年度に発生した 2 つの事例について、事実の把握や発生要因の分 析等を行い、事例検証から省みられた課題を提示し再発防止策の提言を行う。 第2 関 係 機 関 検証事例の概要及び課題 事例Ⅰ(平成 25 年 8 月発生 4 か月児死亡事例) 事例Ⅱ(平成 26 年 11 月発生 0 日児死亡事例) 保健センター、医療機関 医療機関 実母が、自宅で生後 4 か月の長女の口や鼻をタ オルで塞ぎ殺害。平成 26 年 11 月第 1 審判決、懲 要 役 4 年 6 か月(執行猶予なし)が言い渡され、確定 概 実母が、自宅で出産し、死亡した男児を押入れ に隠した。平成 27 年 2 月第 1 審判決、懲役 2 年 6 か月(執行猶予 4 年。死体遺棄と窃盗の併合罪。殺人容 疑については証拠不十分で不起訴)が言い渡され、確 定 1 出産後、実母が子育てを 1 人で抱え込み、周囲 の助言等も悩みの解決には至らなかった。また、 保健センターにおいて、母子健康手帳交付時に 緊急性が低いながらもハイリスク妊婦(注意深く 実母が妊娠を一人で抱え込み、周囲に相談でき 課 見守るべき妊婦)としていたものの、もう一歩踏み 込んだ対応をとることができなかった。 ず、サポートが十分に得られなかった可能性が推 題 2 家庭訪問に不同意、また、地域等との関わりも 測される。 なかった。 3 複数の医療機関を何度も受診しているが、特に 異常は見られなかったため、保健センターに連 絡を行うに至るケースにはならなかった。 第3 提言 1 相談しやすい体制づくり 従来からの相談・支援に加え、今年度から開始した妊娠・出産包括支援事業(母子保健相談支援事業、 産前・産後サポート事業、産後ケア事業)による、妊娠期から出産期、子育て期にわたる切れ目のない相談 支援体制をより充実させていくこと。 2 相談支援体制の強化 特定妊婦(支援を行うことが特に必要と認められる妊婦)のチェックのあり方を随時、見直していくほか、 根本的には、母子保健相談支援事業と相まって、保健師等の十分な配置等、体制強化を図ること。 母子健康手帳交付や新生児訪問指導の際、心療内科の受診歴等を含めた既往歴、家族の状況、家族 との関係及び産後の母親の精神状態の把握等をより丁寧に実施していくほか、職員の資質向上に向け た研修体制の強化や研修成果等の共有方法を検討すること。 3 妊産婦との接点の強化 ⑴ こんにちは赤ちゃん事業による訪問に不同意の世帯等については、速やかに新生児家庭訪問指導 事業による訪問や妊娠・出産包括支援事業等による支援を実施するなど、リスク等を踏まえつつ、 きめ細やかに接点を設けていく取組を推進していくこと。 ⑵ オープンスペース(地域における子育て親子の身近な交流・相談の場)の設置を促進するほか、子育て家 庭を支え、子育て支援の裾野を広げる機能を強化していく方策を検討すること。また、妊娠の段階 からの相談・サポートについて、広島県の取組との連携も含め検討するとともに、妊婦本人のみな らず、家族をはじめとした周囲の人も含めた啓発を行っていくこと。 4 家族その他周囲のサポート 育児における父親の役割等育児全般の啓発の取組をより一層進めていくこと。 5 医療機関との連携 医療機関との連携について改めて周知するほか、広島県・広島市の連携の下で、医療機関をはじめ とする関係機関との情報共有等に関する連携の推進策を検討すること。また、精神保健分野及び精神 科医療機関との連携強化について検討すること。 6 広報・普及啓発等の充実 ⑴ 近年、子育て世代が日常的にインターネットやスマートフォン等を活用する実態に対応した手法 について検討すること。 ⑵ 思春期に乳幼児と触れ合う機会を設ける取組をより一層進めていくこと。 小中学生、高校生のみならず大学生等の世代の男女共に、妊娠・出産に関する正しい知識及び家 族その他周囲のサポートの必要性を普及啓発していく方策を検討すること。
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