Microsoft Partner

国立がん研究センター東病院
グローバルで使える
セキュアな新薬開発基盤を支える Microsoft Azure
Microsoft のソリューションをフル活用し、
治験業務負荷とコストの大幅削減を実現
ソリューション概要
○プロファイル
国立がん研究センター東病院は、1992 年に千葉
県柏市に開設されたがん専門病院です。国立病
院では初めて緩和ケアに取り組み、日本で最初
に陽子線治療を開発・導入するなど、日本のが
ん治療・研究をリードしています。「こころとか
らだにやさしいがん診療」の実現をモットーに、
患 者 さん のた め の「 あしたの がん 医 療 」を 創
る研究・開発に取り組んでいます。
○導入製品とサービス
・Microsoft Azure
- Virtual Machines
- Multi-Factor Authentication
・Microsoft Intune
・Windows To Go
がん 専 門 病 院として、 1992 年に設 立さ れ た国 立 がん 研 究センター東 病 院。研 究 開 発を 重
視する同 院にとって、 新しい 薬 を開 発し、 国 の 承 認を 受けるた め の 臨 床 試 験「 治 験 」の 実
施は重 要 な 業 務 に位 置 付 けら れてい ま す。 しかし、 治 験 に 関 する記 録 や 報 告を カ ル テな
ど の 原 資 料 と 照 合・検 証 す る「 SDV (Source
Data Verification、または Source Document
Verification) 」という 作 業 には 非 効 率 な 面も
多く、これまで膨大な手間とコストがかかって
いました。そこで同院では、院 外からの SDV
を可 能 に する「 リモ ート SDV シス テム 」を、
Microsoft Azure を基盤として開発し、大幅な
効率化とコスト削減を実現しました。
国立がん研究センター東病院 正面玄関
○パートナー企業
株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ
Microsoft Partner
Gold Cloud Platform
富士通株式会社
Microsoft Partner
Gold Cloud Platform
Gold Cloud Productivity
Gold Data Platform
○導入メリット
・ クラウド上の治験データへの外部からの安全な
アクセスを実現
・ 治験の SDV にかかる企業側、病院側の手間とコス
トを削減
・ 治験のグローバル化への対応
・ 電子カルテ情報を含む医療データのクラウド
への移行に向けて基盤を整備
○ユーザー コメント
「当初から、システム メンテナンスの簡素化・耐
障害性、セキュリティ維持の観点からパブリック
クラウド を 使う予定 でした が、 我々が 求 め る
セキュリティ、および医薬品や医療機器の開発・
製造に必要なガイドラインに関する情報をいち
早く提供していたのが Azure でした 」
国立がん研究センター
研究支援センター
研究推進部データ管理室
東病院 臨床研究支援部門データ管理室
青柳 吉博 氏
導入背景とねらい
新薬開発に不可欠な治験のコスト削減と効率化を目指す
国立がん研究センターは、旧厚生省 ( 現在の厚生労働省 ) により、6 施設ある国立高度専門医
療研究センターの 1 つとして 1962 年に創設されました。2015 年 4 月には国立研究開発法人
へ移行し、
「がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会をめざす」を標語に、がんの
治療・研究に取り組んでいます。
1992 年には、千葉県柏市に国立がん研究センター東病院 ( 以下、東病院 ) が開院。創設時に
開院した築地の中央病院とは少し性格が異なり、新しい診断や治療法の開発に重きを置いた
運営が行われています。このため、東 病院においては「治験」が重要な位置を占めています。
東病院 前病院長の西田 俊朗 氏は、次のように説明します。
「新薬の開発には 5 年~ 10 年という長い年月がかかります。シーズの段階から動物実験で安全
性や効果を確認し、そのあと臨床試験を行います。治験とは厚生労働省の承認を得るための
臨床試験のことで、安全性を確認するフェーズⅠ、効果を確認するフェーズⅡ、既存の治療法と
比較するフェーズⅢに分かれています。当病院では、なかでも特にフェーズⅠに力を入れてきま
した 」( 西田氏 )
治験においては、治験を依頼した製薬会社と病院との情報の共有・確認が重要です。ただし、
試験内容を記録したカルテを院外に持ち出すことはできません。そこで、製薬会社の担当者が
病院に出向き、SDV 作業を行います。東病院 現病院長 先端医療開発センター長 大津 敦 氏は、
次のように説明します。
「SDV は治験における重要な記録や報告を、医療機関が保存するカルテなどの原資料を直接閲
覧して照合・確認する作業です。当病院では、年間 100 件程度の治験を請け負っており、SDV
用に 12 の専用の部屋を用意していますが、部屋はつねに埋まっている状態です」( 大津氏 )
国立がん研究センター東病院
国立がん研究センター東病院
前病院長
西田 俊朗 氏
国立がん研究センター東病院
現病院長
先端医療開発センター長
大津 敦 氏
国立がん研究センター東病院
治験管理室
治験コーディネーター
原田 裕紀 氏
国立がん研究センター東病院
臨床研究支援部門
データ管理室
青柳 吉博 氏
国立がん研究センター東病院
副院長
先端医療科長
土井 俊彦 氏
治験に不可欠な SDV ですが、製薬会社にとっても病院にとっても、けっ
および医薬品や医療機器の開発・製造に必要なガイドラインに関する
して負担は軽くありません。
情報をいち早く提供していたのが Azure でした 」( 青柳氏 )
「電子カルテを製薬会社の担当者に見せる際、病院側では専任の担当者
また、
「リモート SDV システム 」の開発を担当した株式会社インテリ
をつけなければなりません。製薬会社も人件費や交通費がかかります。
ジェンス ビジネスソリューションズ システムソリューション第 2 事業部
治験によっては、毎週、SDV が必要な場合もあり、その時間・コスト
ゼネラルマネジャー 小浦 文勝 氏は、Azure の技術的な優位性を次のよ
は膨大です。概算すれば、製薬会社は 1 つの治験で数千万円単位の
うに説明します。
コストが必要になります」( 大津氏 )
導入の経緯
Azure 上の「治験の原データ管理システム」に外部から
アクセスする「リモート SDV システム」を構築
こうした SDV の課題を解決するために開発されたのが「リモート SDV
システム」です。じつは、東病院では、富士通をパートナーとして、2013 年に
電子カルテ システムをリプレースしています。また、2014 年には、治験データ
を管理する「治験原データ管理システム」を構築しました。これは、治験デー
タとしての真正性を確保したうえで、院内に治験データのコピーを保管す
るシステムです。東病院 治験管理室 治験コーディネーター 原田 裕紀 氏
はシステムの概要について次のように説明します。
「Azure には、通常の LAN 環境と同様にサブネットごとにアクセス権を
設定できるネットワーク・セキュリティ・グループ (NSG) という機能が
あります。NSG を利用することで、インターネットに出ていけないネット
ワークを構築したり、外部からのアクセスを適切に制御したりできます。
クラウド上でこうしたセキュリティを設定できることは、リモート SDV
システムを開発するうえで非常に重要でした 」( 小浦氏 )
導入の成果
治験の業務負荷・コスト削減の実現と
治験のグローバル化への対応
現在、
「リモート SDV システム 」は開発を完了し、製薬会社へのデモ・
説明会が実施されている段階です。製薬会社担当者の具体的な利用
「
『リモート SDV システム 』は、この院内の『治験原データ管理システム 』
方法について、富士通株式会社 ヘルスケアシステム事業本部ライフ
を外部から参照するシステムです。リモート SDV システムを使えば、製薬
イノベーション事業部 ライフイノベーション開発部 小林 義規 氏は次
会社の担当者は、病院を訪れることなく、必要なときにいつでも SDV を
のように説明します。
実施することが可能になります」( 原田氏 )
「製薬会社の担当者には、病院が用意した Windows To Go の USB
そして、
この
「治験原データ管理システム 」および「リモート SDV システム 」
メモリが配布されます。USB メモリを PC に接続すると、USB メモリ
で利用されたクラウドが、Microsoft Azure でした。Azure を選択した理
内の Windows が立ち上がってデスクトップが表示されます。そこから
由を、東病院 臨床研究支援部門 データ管理室 青柳 吉博 氏は次のように
リモート デスクトップを起動すると ID とパスワードで認証が行われ
説明します。
ますが、その際、Azure Multi-Factor Authentication (MFA) により
ユーザーの携帯電話に 6 桁の PIN コードが送信され、それを入力して
「システム メンテナンスの簡素化・耐障害性、
セキュリティ維持の観点から、
はじめてログインが完了します。あとはリモートで接続した Microsoft
当初からパブリック クラウドを予定していました。Azure の他に競合サー
Azure 上の端末から、ビューアを使って治験データを閲覧するしくみ
ビスも検討しましたが、選定していた当時、我々が求めるセキュリティ、
です」( 小林氏 )
国立がん研究センター東病院
「以前は、大きいテープで保存していましたが、その後、サイズの小さい
CD になり、次にハードディスクになりました。ただし、ハードディスクで
も、耐用年数がきたらデータ移行が必要になりますので、そのたびに膨
大なコストがかかります。しかし、クラウドに保存できれば、こうしたデー
タ移行の手間・コストは不要になります」( 土井氏 )
その際にも、Microsoft Azure が大いに活躍することになりそうです。特
に青柳氏は、オンプレミスのシステムで Azure 環境を構築できる Azure
株 式会社インテリジェンス
ビジネスソリューションズ
システムソリューション
第 2 事業部
ゼネラルマネジャー
小浦 文勝 氏
富士通株式会社
ヘ ルスケアシステム事業 本部
ライフイノベーション事業部 ライフイノベーション開 発 部
小林 義規 氏
Stack、そしてハイブリッド クラウド環境を管理できる OMS (Operations
Management Suite) に期待を寄せます。
「いきなりクラウドに移行するのはハードルが高いと思いますが、Azure
Stack を使えば、Azure と同じ環境をオンプレミスで構築して運用できる
ので、適切なタイミングでクラウドに移行することも容易になると期待し
もちろん、配布される USB メモリは BitLocker で暗号化されています。
また、 Windows To Go の仮想デバイスは Microsoft Intune で管理
されているため、更新ブログラムの適用やマルウェア対策も問題あり
ません。
デモを見た製薬会社からは「医療機関を訪問して SDV をする時間と費
用が削減できる」「病院職員の業務時間外でも参照できる」など、非常
に前向きな評価を受けています。病院側としても、SDV のたびに担当
者をつける必要も、部屋数の制約もなくなり、製薬会社、病院両社と
もに治験業務の負担を大幅に削減できます。業務効率化とコスト削減
によって、製薬会社はその分のリソースを新薬開発に注ぐことが可能
になります。リモート SDV の活用によって新薬開発を盛り上げること
は、病院の収益増だけではなく、社会への多大なる貢献にもつながる
ています。また、現在、クラウド環境の管理用に OMS を検証中ですが、
オンプレミスで利用している System Center とも親和性があり、非常に
使いやすいと思います」( 青柳氏 )
なお、現時点では、Azure 経由で参照できるのは治験のデータだけです
が、将来的にデータをクラウド上にあげることができれば意義は大きいと、
土井氏は次のように語ります。
「クラウド上の治験データを原資料として定義できるなら、クラウド上で
共通のフォーマットで閲覧することもできるはずです。つまり、世界共通
の電子カルテとして利用可能です。世界中の医療関係者や研究者が閲覧
できて、さらにゲノム情報と組み合わせて研究開発にも活用できるように
なればすばらしいですね。こういう話をすると、いつも夢物語といわれる
と、同院では期待を寄せています。
のですが…」( 土井氏 )
また、本システムによって、海外からのリモート SDV も可能になりま
2013 年に導入された新しい「電子カルテ システム 」、それに続いて 2014
した。東病院 副院長 先端医療科長 土井 俊彦 氏は、その意義について、
次のように説明します。
「いまや、創薬をはじめとする研究はグローバル化しています。たとえ
ば、米国のある病院は台湾や上海、ポルトガル、ブラジルなどに系列の
年に開発された「治験原データ管理システム 」と今回の「リモート SDV シ
ステム 」は、国立がん研究センターが掲げる「がんにならない、がんに負
けない、がんと生きる社会をめざす」ための、着実な一歩といえそうです。
同病院の歩みを支える Microsoft Azure は、非常に重要な役割を担って
いくことでしょう。
病院を展開し、24 時間、治験を実施して、各病院のデータをリモート
で SDV できるしくみを提供しています。今回、開発したリモート SDV
は、今後、当病院がグローバルで治験に取り組むうえでも重要な一歩
です」( 土井氏 )
今後の展開
医療情報のクラウド化も視野に、クラウド上でのデータ
の長期保存とさらなるデータ活用を目指す
東病院では、将来、電子カルテ情報も含めて、すべての医療情報をクラ
ウドに置くことも検討しています。その理由の 1 つが、データの長期保存
が困難なことです。土井氏は、データの長期保存の問題点を次のように
説明します。
前列:国立がん研究センター東病院
後列:株式会社インテリジェンス ビジネスソリューションズ、富士通株式会社
国立がん研究センター東病院
システム概要図
Windows To Go デ バ イ ス の
更新プログラム管理 / マル
ウェア対策を行う
ネットワークセキュリティ
グループで仮想サブネット
ごとにアクセス制御を行う
病院
NSG
製薬会社
Microsoft Azure
Microsoft Intune
A 製薬会社
RDS ドメイン参加、証明書管
理やユーザー ID 管理を行う
※オンプレ AD とは分離
Windows To Go
NSG
仮想サブネット
NSG
リバース プロキシ
作業端末
B 製薬会社
電子カルテ システム
(治験原データ 管理システム)
•••••
Windows To Go
Site To Site
VPN
サーバー VDI
ADDS/DNS (冗長構成) ADCS
WAP
Point To Site
VPN
作業端末
C 製薬会社
電子カルテ
クライアント
AD DS
( オンプレ AD)
Windows To Go
RD接続ブローカー
RDセッションホスト
RDゲートウェイ
ADFS MFA
(多要素認証)
多要素認証による追加情報
を入力し、RemoteApp 接続
を行う
ユーザー アクセス
システム アクセス
リバースプロキシを置くこと
で W i n d o w s To G o から
https プロトコルのみでアク
セス許可とする。ADFS との
連携で事前認証を実施する
作業端末
Windows To Go デ バ イ ス
を利用することで利用端末
の環境に依存しないため、利
便性とセキュリティのバラ
ンスが維持できる
導入についてのお問い合わせ
本ケース スタディは、インターネット上でも参照できます。http://www.microsoft.com/ja-jp/casestudies/
本ケース スタディに記載された情報は制作当時 (2016 年 4 月 ) のものであり、閲覧される時点では、変更されている可能性があることをご了承ください。
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製品に関するお問い合わせは次のインフォメーションをご利用ください。
■インターネット ホームページ http://www.microsoft.com/ja-jp/
■マイクロソフト カスタマー インフォメーションセンター 0120-41-6755
(9:00 ~ 17:30 土日祝日、弊社指定休業日を除く )
※電話番号のおかけ間違いにご注意ください。
*記載されている、会社名、製品名、ロゴ等は、各社の登録商標または商標です。
*製品の仕様は、予告なく変更することがあります。予めご了承ください。
〒108-0075 東京都港区港南 2-16-3 品川グランドセントラルタワー
5944-WI1