第18回日本NPO学会年次大会に参加・発表結果

3 月 13
[npo -net:00458]
F4 「 地 域 の リ ス ク マ ネ ジ メ ン ト 」 論 点 整 理 と ま と め
モデレータ李 妍焱駒澤大学教授
登壇者:
・ 有 岡 正 樹 「 社 会 資 本 的 課 題 に 関 わ る シ ビ ル NPO 法 人 中 間 支 援 組 織 活 動 へ の 挑 戦 」
・木村尚「自主防災組織が地域の減災に与える影響に関する研究」
コメンテーター:岡本仁宏
モデレーター:李
妍焱
まとめ:
本 セ ッ シ ョ ン 3 本 の 報 告 は い ず れ も 3 ・ 11 以 降 、 私 た ち の 前 に 突 き つ け ら れ た 根 本 的 か
つ深刻な問題、すなわち、震災前に当たり前と思われていた生き方、暮らし方、まちの作
り方そのものを、どう私たちが反省し、問い直し、オルタナティブを求めていくことがで
きるか、という問題に関わる取り組みを紹介し、考察している。
有岡さんは、自らが理事長を務める社会基盤ライフサイクルマネジメント研究会が震災
後 、 盛 ん に 政 策 提 言 を 試 み た Green Hill の 構 想 を 紹 介 し 、 が れ き 処 理 を 効 果 的 に 、 低 コ ス
トで進められるこの「がれきで造る防潮堤」が、残念ながら全く政策に影響を与えられな
か っ た こ と に つ い て 、 単 一 の NPO 法 人 で 提 案 す る こ と の 限 界 を 認 識 し 、 土 木 学 会 と 連 携
し た 中 間 支 援 組 織 シ ビ ル NPO 連 携 プ ラ ッ ト ホ ー ム の 設 立 に 至 っ た 経 緯 を 報 告 し て く だ さ
った。小松さんは日本イラク医療支援ネットワークによる福島での放射能リテラシー向上
支援活動を取り上げ、市民自身による測定所の支援状況と現在の困難を説明した。市民の
手による「市民科学」の重要性が明らかとなった一方で、他方では行政による測定所の増
加と市民測定所の減少が目立ってきたことを紹介している。木村さんは大津市の自主防災
組織を事例に取り上げ、平常時と発災時の相関の有無を確認し、いかに平常時の取り組み
(特に訓練)が大切かを論じ、自主防災組織自主防災組織の機能を強化する重要性と、そ
の た め に は ア メ リ カ の CERT を 参 照 に す べ き と の 見 解 を 述 べ た 。
重 要 な 論 点 と し て 提 起 さ れ た の は 、「生き方、暮らし方、まちの作り方を問い直すという
のは、私たち自身が当事者として、どれだけ決定権を取り戻し、選択可能な範囲を広げる
ことができるのか、ということを意味する」点である。震災後どのような防潮堤を造るの
か、放射能汚染をどんな形で測り、それをどのように生かすのか、災害時の救援体制をど
のようにつくり、いざというときに誰を救い、誰に救ってもらうのか、私たちの命と暮ら
しの根本に関わるこれらの問題において、如何に私たちは「当事者」から外れ、決定に参
加できず、選択する余地がないのか、という問題が明らかとなった。
そ の 延 長 上 で 、「当事者」として決定権を取り戻し、選択可能な範囲を広げるには、「市
民科学」が如何に重要か、という点が議論された。市民と科学の結合が具体的にどのよう
に 可 能 と な る の か 、 他 の 各 種 専 門 学 会 と NPO 学 会 と の 連 携 か ら ま ず 始 め る 必 要 が あ る の
ではないかと思われる。
さ ら に 、「当事者」として政策や情勢に影響を与えるためには、個々の組織もしくは特定
の業界の連合体のみでは極めて不充分であるのは明らかであり、ここでも戦略的な「中間
支援」の必要性が強調されることとなった。