堺市報道提供資料 平成 28 年 4 月 5 日提供 担当課 直 通 内 線 FAX 問い合わせ先 監査委員事務局 監査課 072-228-7899 6705、6706 072-222-0333 住民監査請求監査結果の概要について (政務活動費の返還請求について①) 標記について、地方自治法第 242 条第 4 項の規定に基づき監査を行いましたので、その概要を お知らせします。 1 請求人 …………………… 2 請求の提出年月日 ……… 3 監査結果の通知年月日…… 4 監査請求書の記載内容 第1 監査請求の趣旨 1名 平 成 28 年 2 月 5 日 平 成 28 年 4 月 5 日 大毛十一郎堺市議会議員に対して支出した政務活動費のうち、下記の部分については違法 かつ不当であるため、監査委員より下記金額の返還をするように市長への勧告を求めます。 第2 監査請求の理由 1.平成 27 年 3 月 6 日の市政だより 1,276,560 円について 市政だより代(甲 1 号証、甲 2 号証、甲 3 号証) ① 見積もり内容に不明な点が多く、6 万枚の市政だよりとしては、他の市議のチラシに 比べ印刷代等の費用が異常に高く、他の印刷業者と見積もり合わせをした形跡もなく、 また配布実態が不明である。 ・ 見積書よりデータ 文字、写真、レイアウト、校正代金の 268,000 円は添付されて いる市政だよりに対して非常に高額である。1 ページ当たりの校正代が 67,000 円はあ りえない。 ・ 用紙(コート 46.5g)代が 272,000 円計上されているが用紙代を別途見積もるのは 通常考えられない。また用紙代としても高額である。 ・ 製版 面付け、色校正は通常数万円で収まるが 184,000 円と高額である。 ・ 運賃 横持ち運搬代金、36,000 円は印刷会社から納品場所までの運賃と考えられる が高額である。 ・ 新聞折込代金 182,000 円は、新聞折込数量 4 万枚の対価として計上されているが、 4 万枚の見積もりの枚数通りであり端数がなく不自然である。また、新聞折込であれ ば一枚当たり通常 3 円前後であり、4.55 円と値段が高すぎる。 折り込み実態が不明であるので、監査委員は取次店を確認できる書類、実施報告書 等を提出させるべきである。 ・ 折込代金を除くチラシの印刷と運送費でぴったり 100 万円である。一回のチラシ印 刷代金としては法外に高額である。また、ぴったり 100 万円は偶然かもわからないが、 意図的な金額設定であると強く感じる。 ② 請負業者 infinity 資料の所在地が住居用マンション(A マンション)であり、(甲 4 1 号証) 、集合ポストには古いシールなのか、かすかに社名が見て取れるが(甲 5、6 号証)、 部屋には個人名の表札は掛けられているが社名を記載した看板等は無い(甲 7 号証)。 またインターネットで業者名 infinity 資料を検索しても全く検索できず営業実態のみ ならず存在自体が不明である。大毛市議と請負業者 infinity 資料の関係は分からない が、6 万枚の市政だよりならば、他の印刷会社を当れば 3 分の 1 程度の支払いで納品で きる業者は探せば簡単に見つかるはずであり、市民の税金をもって市政だよりを発行す る以上これほどの高額な支払は市議としての認識が欠如している。当印刷業者の外見を 考えると広く印刷業務を営んでいる印刷業者とは思えず、大毛市議お抱えの印刷業者と の印象を受け、他の業者と相見積もりをしないのは大毛市議が業者と共謀して政務活動 費を詐取する意図があるものと疑問を持つ。 ③ 印刷部数が 6 万枚、新聞折込が 4 万枚とすれば残り 2 万枚だが、2 万枚について配布 実態が全く不明であり監査委員は配布実態を証明する書類の提出を求め監査頂きたい。 ④ 見積書と領収書の日付が共に平成 27 年 3 月 6 日と同じであるが、同じ日であること は通常ありえない。 以上のように、当該市政だよりは、市民の税金を使って発行するにもかかわらず、他の 業者と金額の比較をするなどの形跡は認められず、 6 万枚程度の広報紙の印刷代として 100 万円という金額は、他の議員の広報紙の印刷代金と比較して 3 倍程度の代金であり異常に 高額すぎる。 請負業者の実態が不明である。 新聞折込以外の 2 万枚の配布実態が全く確認できない。 見積書と領収書の日付が同じであり見積書が後で作成された疑いがある。 以上から当該市政だよりについては違法かつ不当な支出であることは明らかであり、 1,276,560 円を返還請求するように市長への勧告を求めます。 2.平成 25 年度の政務活動費についても平成 26 年度と同様に1で指摘した同じ違法かつ不 当な支出が認められるため下記に指摘し返還請求するように市長への勧告を求めます。 平成 26 年 1 月 15 日の市政だより 1,321,740 円について(甲 8 号証) 平成 26 年 3 月 24 日の市政だより 1,121,918 円について(甲 9 号証) 以上 2 件は見積書および市政だより原本が添付されておらず詳細は把握できないが、1 で指摘した業者 infinity 資料が請け負っており、1と同様営業実態のみならず存在自体 が不明である。監査委員は上記 2 回の市政だより発行に関し、市政だより原本と見積書、 請求書、納品書、配布実態の分かる書類等実態を把握できる書類を提出させ監査頂きたい。 上記 2 回の広報紙の印刷は共に 100 万円を超えており、1で指摘した通り、1 回あたり の広報紙の発行としては異常に高額であり、また他の印刷業者と見積もり合わせをしたと は思えない。また領収書日付が平成 26 年 1 月 15 日、平成 26 年 3 月 24 日と年度末近くで あり約 2 か月と近接しており、印刷及び配布の実態が確認できないことから年度末に政務 活動費の残額を消化するための支出と推測され、2 か月間で 240 万円を超える広報紙の発 行は常識はずれであり、違法かつ不当な支出であることが明らかなため 1,321,740 円及び 1,121,918 円、合計 2,443,658 円を返還請求するように市長への勧告を求めます。 3.平成 25 年度人件費について 平成 25 年度ではあるが、領収書のあて先が「民主党堺市堺区支部」と政治団体宛の領 収書となっており、政治活動の対価として支払われたことが明らかであり、大毛市議の政 務活動が行われた対価としての人件費支出とは認められず違法かつ不当な支出である。 ・ 平成 25 年 4 月 25 日 4 月分給与 39,100 円(50%按分後)甲 10 号証 2 ・ ・ 平成 25 年 5 月 24 日 平成 25 年 6 月 25 日 5 月分給与 6 月分給与 28,687 円(50%按分後)甲 11 号証 42,925 円(50%按分後)甲 12 号証 ・ 平成 25 年 7 月 25 日 7 月分給与 36,125 円(50%按分後)甲 13 号証 ・ 平成 25 年 8 月 23 日 8 月分給与 39,100 円(50%按分後)甲 14 号証 ・ 平成 25 年 9 月 25 日 9 月分給与 40,375 円(50%按分後)甲 15 号証 ・ 平成 25 年 10 月 25 日 10 月分給与 43,350 円(50%按分後)甲 16 号証 ・ 平成 25 年 11 月 25 日 11 月分給与 38,250 円(50%按分後)甲 17 号証 ・ 平成 25 年 12 月 25 日 12 月分給与 38,675 円(50%按分後)甲 18 号証 ・ 平成 26 年 1 月 24 日 1 月分給与 31,025 円(50%按分後)甲 19 号証 ・ 平成 26 年 2 月 25 日 2 月分給与 41,225 円(50%按分後)甲 20 号証 ・ 平成 26 年 3 月 25 日 3 月分給与 38,250 円(50%按分後)甲 21 号証 合計 457,087 円 平成 25 年度ではあるが明らかに違法かつ不当な支出であるため上記金額を返還請求す るように市長への勧告を求めます。 4.平成 26 年度人件費について 平成 26 年度人件費は領収書のあて先は「大毛十一郎事務所」となっているが、25 年度 の「民主党堺市堺区支部」という政治団体宛の領収書と筆跡は同じであり同一人物が従事 していると思われる。 月々の人件費及び年間の人件費合計も同程度の金額であり、単に領収書のあて先を「民 主党堺市堺区支部」から「大毛十一郎事務所」に変更したのみと考えられ、平成 25 年度 が明らかに政務活動費として認められない以上、平成 26 年度も政務活動費としては認め られないため、下記金額を返還請求するように市長への勧告を求めます。 ・ 平成 26 年 4 月 25 日 4 月分給与 33,150 円(50%按分後)甲 22 号証 ・ 平成 26 年 5 月 23 日 5 月分給与 36,550 円(50%按分後)甲 23 号証 ・ 平成 26 年 6 月 25 日 6 月分給与 38,675 円(50%按分後)甲 24 号証 ・ 平成 26 年 7 月 25 日 7 月分給与 48,450 円(50%按分後)甲 25 号証 ・ 平成 26 年 8 月 25 日 8 月分給与 36,125 円(50%按分後)甲 26 号証 ・ 平成 26 年 9 月 25 日 9 月分給与 39,525 円(50%按分後)甲 27 号証 ・ 平成 26 年 10 月 24 日 10 月分給与 34,425 円(50%按分後)甲 28 号証 ・ ・ 平成 26 年 11 月 25 日 平成 26 年 12 月 25 日 11 月分給与 12 月分給与 43,775 円(50%按分後)甲 29 号証 34,850 円(50%按分後)甲 30 号証 ・ ・ 平成 27 年 1 月 23 日 平成 27 年 2 月 25 日 1 月分給与 2 月分給与 27,625 円(50%按分後)甲 31 号証 29,750 円(50%按分後)甲 32 号証 ・ 平成 27 年 3 月 25 日 3 月分給与 36,975 円(50%按分後)甲 33 号証 合計 439,875 円 第3 結論 以上のことから、大毛十一郎市議が政務活動として支出したとされる上記金額はそれぞれ 違法かつ不当な支出であることが明らかなため、監査委員は下記金額を返還請求するように 市長への勧告を求めます。 1.広報・広聴費 1,276,560 円 2.広報・広聴費 3.人件費 4.人件費 2,443,658 円 457,087 円 439,875 円 3 合計 4,617,180 円 以上の通り、地方自治法 242 条 1 項に基づき、事実証明書を付して監査委員に対し、本請 求をする次第である。 第4 事実証明資料 甲 1 号証 市政だより領収書 甲 2 号証 市政だより見積書 甲 3 号証 市政だよりコピー 甲 4 号証 A マンション全景写真 甲 5 号証 集合ポスト写真 甲 6 号証 210 号室ポスト写真 甲 7 号証 210 号部屋前写真 甲 8 号証 市政だより領収書 甲 9 号証 市政だより領収書 甲 10 号証 平成 25 年 4 月分人件費領収書 甲 11 号証 平成 25 年 5 月分人件費領収書 甲 12 号証 平成 25 年 6 月分人件費領収書 甲 13 号証 平成 25 年 7 月分人件費領収書 甲 14 号証 平成 25 年 8 月分人件費領収書 甲 15 号証 平成 25 年 9 月分人件費領収書 甲 16 号証 平成 25 年 10 月分人件費領収書 甲 17 号証 平成 25 年 11 月分人件費領収書 甲 18 号証 平成 25 年 12 月分人件費領収書 甲 19 号証 平成 26 年 1 月分人件費領収書 甲 20 号証 平成 26 年 2 月分人件費領収書 甲 21 号証 平成 26 年 3 月分人件費領収書 甲 22 号証 平成 26 年 4 月分人件費領収書 甲 23 号証 平成 26 年 5 月分人件費領収書 甲 24 号証 平成 26 年 6 月分人件費領収書 甲 25 号証 平成 26 年 7 月分人件費領収書 甲 26 号証 平成 26 年 8 月分人件費領収書 甲 27 号証 平成 26 年 9 月分人件費領収書 甲 28 号証 平成 26 年 10 月分人件費領収書 甲 29 号証 平成 26 年 11 月分人件費領収書 甲 30 号証 平成 26 年 12 月分人件費領収書 甲 31 号証 平成 27 年 1 月分人件費領収書 甲 32 号証 平成 27 年 2 月分人件費領収書 甲 33 号証 平成 27 年 3 月分人件費領収書 (市政だより印刷等の請負事業者の所在地のマンション名を「A」と記したほかは、原文のとお り。なお、資料は省略。 ) 5 監査の結果 1 本件の監査対象事項 住民監査請求書の記載から、請求人は、請求人の示す大毛議員の政務活動費(以下「本件 4 政務活動費」という。)は、違法不当に支出されたものであるとして、監査委員が市長に対 し違法不当な支出の返還を求めるなど必要な措置を講ずる勧告をするよう求めている。 以上のことから、本件政務活動費は違法不当に支出されたものかどうか、その結果、市長 は大毛議員に返還請求をすべきかどうかを監査対象事項とした。 2 政務活動費の制度について (1) 政務活動費の規定について ア 地方自治制度において対等の立場で相互のチェック・アンド・バランスにより行政運 営を行う首長と議会の関係からすると、議会や議員の活動は、首長の支配、干渉を受け ないことが保障されなければならない。よって、地方議会の活性化のために議員の調査 研究その他の活動の基盤の充実を図る観点から制度化された政務活動費の使途につい ては、会派や議員の自主的な判断に委ねられ、広範な裁量が認められていると考えられ る。 イ 堺市議会政務活動費の交付に関する条例(以下「条例」という。)においては、(ア) 政 務活動費は、本市議会議員の調査研究その他の活動に資するため必要な経費の一部とし て議会における会派(所属する議員が 1 人の場合を含む。)又は議員に対して、議員 1 人当たり月額 30 万円が交付されること(条例第 1 条、第 2 条及び第 3 条第 1 項)、(イ) 会 派及び議員は、政務活動費を、調査研究、研修、広報、広聴、住民相談、要請、陳情、 各種会議への参加等市政の課題及び市民の意思を把握し、市政に反映させる活動その他 住民福祉の増進を図るために必要な活動に要する経費に充てることができるものとし、 交際費、選挙活動経費、政党活動経費、後援会活動経費、私的活動経費に充ててはなら ないこと(条例第 5 条第 1 項、第 2 項及び第 3 項)が規定されている。 ウ そして、政務活動費の交付を受けた会派の代表者及び経理責任者並びに議員は、規則 で定める様式により、前年度の交付に係る政務活動費に係る収入及び支出の報告書(以 下「収支報告書」という。)を作成し、その支出に係る領収書の写しその他の証拠書類 の写しとともに、毎年 5 月 10 日までに議長に提出しなければならず(条例第 7 条第 1 項及び第 2 項) 、議長は速やかにその写しを市長に送付しなければならない(条例第 7 条第 4 項)とされている。 エ 市長は、政務活動費の交付を受けた会派又は議員がその年度において交付を受けた政 務活動費の総額からその年度において第 5 条に定める政務活動に充てることができる経 費として支出した総額を控除して残余の額がある場合は、当該額に相当する額の政務活 動費の返還を当該会派又は議員に命じなければならない(条例第 8 条第 1 項)とされて いる。 また、市長は、政務活動費の交付を受けた会派又は議員の政務活動費の使途が、条例 第 5 条の規定に明らかに違反していると認める場合は、当該違反して支出された額に相 当する額の政務活動費の返還を当該会派又は議員に命じなければならない(条例第 8 条 第 2 項)とされている。 オ これらの規定から、本市において政務活動費の支出が違法不当となるのは、政務活動 費の使途が条例第 5 条の規定に明らかに違反している場合であると考える。 3 本件政務活動費について (1) 本件政務活動費についての検討 ア 広報・広聴費の市政だよりほか 2 件(合計 461 万 7,180 円)について 本件政務活動費について、関係人調査を実施し、大毛議員から文書回答及び挙証資料 の提出を平成 28 年 2 月 26 日、同年 3 月 2 日及び 4 日に受けるとともに、同年 3 月 4 日 5 に対面による聴き取りを行った。 これらを確認した結果は以下のとおりである。 (ア) 広報・広聴費の市政だより(平成 26 年度 整理番号 123、127 万 6,560 円)につい て 広報・広聴費の市政だよりについては、infinity 資料に対して 127 万 6,560 円で発 注しており、按分率 100%、政務活動費としての支出額は 127 万 6,560 円となってい た。 同議員から、平成 28 年 2 月 26 日の文書回答とともに、平成 27 年 3 月 7 日付けの 市政だよりとその見積書、納品書、請求書及び新聞折込広告配布報告書、市政だより 印刷等の請負事業者の経歴書、堺市立中学校が同請負事業者に印刷物作成を発注した 際の学校園予算執行伺書兼報告書、同請負事業者が作成した他の顧客の印刷物、JAM 大阪加盟組合名簿の提出を受けた。 a 印刷代等の費用について 請求人は、6 万枚の市政だよりとしては、他の市議のチラシに比べ印刷代等の費用 が異常に高いと主張している。 しかし、同議員の市政だよりと他の市議のチラシは、仕様が全く同じものであると は考えらえず、単純な金額の比較はできない。なお、この主張に係る事実証明書は監 査請求書に添付されていなかった。 b 請負事業者について 同議員によると、印刷等の請負事業者である infinity 資料については、過去の業 務におけるサービスや品質等の実績及び地理的な優位性等を総合的に勘案して選ん でいるため、見積り合わせは行っていないとのことである。また、見積書と領収書の 日付が同じ日であることに関しては、金額は口頭で合意していたが確認のため後日領 収書に併せて見積書を受け取ったため、同一日になったとのことであった。 請負事業者が発注者である議員の親族等であるというような特別な関係にある場 合は、見積り合わせ等により他業者の料金と比較検討を行い、契約の正当性を明らか にすることが強く求められるところであるが、本件のように特別な関係が認められな い場合には見積り合わせを行わないことも許容できるものと考える。また、見積書を 受け取らずに金額について口頭で合意し、後日になって見積書を受け取ること自体は 適切であるとはいえないものの、不当な契約であるとまでいうことはできない。 請求人は、請負事業者の営業実態のみならず存在自体が不明であると主張するが、 同議員から、同議員以外の他の発注者と infinity 資料の取引に基づく印刷物などの 提出を受け、 それらによって、請負事業者の存在及び営業の実態に関する心証を得た。 よって、請求人が主張するように、請負事業者の実態が不明であるとはいえない。 c 市政だよりの配布実態について 新聞折込広告配布報告書では、折込広告の事業者が読売新聞、朝日新聞、毎日新聞 及び産経新聞の堺区内の販売店 19 か所へ大毛十一郎市政だより合計 4 万部を配布し た内容が記載されており、 印刷部数 6 万部のうち新聞折込み 4 万部の配布実態は確認 することができた。 同議員によると、新聞折込み以外の 2 万部については、産業別労働組合である JAM 大阪、構成人員数約 4 万 5,000 人、及びその傘下の地域別下部組織である堺阪南地区 協議会、通称 JAM 堺・阪南、構成人員数約 9,600 人を中心に堺市政に関心のある組織 を通じて配布しているとのことであった。JAM 堺・阪南の会合がある時はそちらに届 けて各組合員に持って帰ってもらったり、直接、組合の所在地に届けたりしており、 必ずしも一つのルールで配っているものではないとのことであった。 6 同議員から提出を受けた JAM 大阪加盟組合名簿には、単位組合の名称、組合員数、 住所、電話番号、代表者名等が記載されている。しかし、同名簿では、同議員の市政 だよりをどこに何枚配布したかが明らかでなく、同議員から同名簿以外に配布実態を 説明する資料の提出はなかった。 以上のことから、新聞折込み以外の 2 万部については、提出資料によって、政務活 動費を充てることができる経費としての配布実態を確認することができなかった。 見積書では、市政だよりの金額として、新聞折込み 18 万 2,000 円、その他の項目 の小計 100 万円、消費税 9 万 4,560 円、合計 127 万 6,560 円と記載されている。印刷 部数 6 万部のうち新聞折込み以外の 2 万部については、配布実態を確認することがで きなかったため、その他の項目の小計 100 万円とそれに係る消費税 8 万円の合計 108 万円を 6 万部で除して 2 万部を乗じた 36 万円が、政務活動費を充てることができる 経費に支出していることが確認できなかった金額となる。また、市政だよりの支出額 127 万 6,560 円から 36 万円を減じた 91 万 6,560 円が、政務活動費を充てることがで きる経費に支出していることが確認できた金額となる。 (イ) 広報・広聴費の市政だより(平成 25 年度 整理番号 114、144、計 244 万 3,658 円) について 広報・広聴費の市政だよりについては、infinity 資料に対して、整理番号 114 は 132 万 1,740 円で発注しており、按分率 100%、政務活動費としての支出額は 132 万 1,740 円、整理番号 144 は 112 万 1,918 円で発注しており、按分率 100%、政務活動費とし ての支出額は 112 万 1,918 円となっていた。 同議員から、平成 28 年 2 月 26 日の文書回答とともに、平成 26 年 1 月 15 日付け及 び同年 3 月 31 日付けの市政だよりとその見積書、納品書、請求書及び新聞折込広告 配布報告書等の提出を受けた。 前記(ア)に記載したとおり、同議員の説明及び提出資料により、請求人が主張するよ うに、市政だより印刷等の請負事業者の実態が不明であるとはいえないと考えられる。 しかし、前記(ア)と同様に、印刷部数 4 万 8,000 部及び 5 万 4,000 部のうち新聞折込 みの 4 万 2,000 部及び 4 万 5,000 部については配布実態を確認することができたもの の、新聞折込み以外の 6,000 部及び 9,000 部については、提出資料によって、政務活 動費を充てることができる経費としての配布実態を確認することができなかった。 平成 26 年 1 月 15 日付けの市政だよりの見積書では、新聞折込み 29 万 4,000 円、 その他の項目の小計 96 万 4,800 円、消費税 6 万 2,940 円、合計 132 万 1,740 円と記 載されている。印刷部数 4 万 8,000 部のうち新聞折込み以外の 6,000 部については、 配布実態を確認することができなかったため、その他の項目の小計 96 万 4,800 円と それに係る消費税 4 万 8,240 円の合計 101 万 3,040 円を 4 万 8,000 部で除して 6,000 部を乗じた 12 万 6,630 円が、政務活動費を充てることができる経費に支出している ことが確認できなかった金額となる。また、市政だよりの支出額 132 万 1,740 円から 12 万 6,630 円を減じた 119 万 5,110 円が、政務活動費を充てることができる経費に支 出していることが確認できた金額となる。 次に、平成 26 年 3 月 31 日付けの市政だよりの見積書では、新聞折込み 20 万 4,750 円、その他の項目の小計 86 万 6,600 円、消費税 5 万 3,568 円、見積金額 112 万 4,918 円と記載されており、請求書では、値引(運賃)3,000 円、請求金額 112 万 1,918 円 と記載されている。印刷部数 5 万 4,000 部のうち新聞折込み以外の 9,000 部について は、配布実態を確認することができなかったため、その他の項目の小計 86 万 6,600 円とそれに係る消費税 4 万 3,330 円の合計 90 万 9,930 円から値引(運賃)3,000 円を 減じた 90 万 6,930 円を、5 万 4,000 部で除して 9,000 部を乗じた 15 万 1,155 円が、 7 政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できなかった金額 となる。また、市政だよりの支出額 112 万 1,918 円から 15 万 1,155 円を減じた 97 万 763 円が、政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できた金 額となる。 (ウ) 人件費(平成 25 年度 整理番号 9、20、34、48、57、69、83、94、109、123、134、 145、平成 26 年度 整理番号 9、19、31、42、51、63、74、85、97、105、119、130、 計 89 万 6,962 円)について 平成 25 年度の人件費については、民主党堺市堺区支部から年額 91 万 4,175 円を支 払っており、按分率 50%、政務活動費としての支出額は 45 万 7,087 円となっていた。 平成 26 年度の人件費については、大毛十一郎事務所から年額 87 万 9,750 円を支払 っており、按分率 50%、政務活動費としての支出額は 43 万 9,875 円となっていた。 同議員から、平成 28 年 2 月 26 日の文書回答とともに、平成 25 年分及び平成 26 年 分の民主党堺市堺区支部の収支報告書及び人件費の内訳表、B 事務員の平成 25 年度及 び平成 26 年度の勤怠表の提出を受け、同年 3 月 2 日及び 4 日に、平成 27 年度に B 事 務員と議会事務局との間で交わされた電子メールの写し、B 事務員の平成 27 年度の雇 用契約書並びに平成 25 年及び平成 26 年の給与に係る金融機関の振込金受取書の提出 を受けた。 請求人は、平成 25 年度の領収証の宛名が民主党堺市堺区支部という政治団体にな っており、同議員の政務活動が行われた対価としての人件費支出とは認められないと 主張している。また、平成 26 年度の領収証の宛名は大毛十一郎事務所になっている が、同一人物が従事していると思われ、政務活動費としては認められないとも主張し ている。 同議員によると、B 事務員は市民相談の受付、ホームページの市政だより更新作業、 政策資料の収集、政務活動の会計処理等の政務活動に係る仕事と民主党堺市堺区支部 の仕事を行っており、人件費をそれぞれ 50%に按分して支払っているとのことであっ た。また、B 事務員という同一人物を雇用しているが、政務活動費の添付資料を市民 が見て分かりやすいものにするため、平成 26 年度に領収証の宛名を民主党堺市堺区 支部から大毛十一郎事務所に変えたとのことであった。 同議員は B 事務員の給料を政務活動費と民主党堺市堺区支部の経費で按分して支払 っており、このことは、民主党堺市堺区支部の収支報告書、人件費の内訳表、領収書 等貼付用紙等によって確認することができた。よって、領収証の宛名が政治団体にな っているという理由のみで、政務活動費を充てることができる経費として認められな いとまではいえないと考える。 同議員から提出を受けた勤怠表では、前月 16 日から当月 15 日までの労働時間が月 毎に集計され、その労働時間に時給 850 円を乗じた額が記載されていた。また、金融 機関の振込金受取書では、同議員から B 事務員への振込金として、勤怠表の額及び領 収書等貼付用紙に貼付された領収証の額と同額が記載されていた。 これらの資料から、同議員が B 事務員を雇用し、給与を支払っていることは一定確 認することができた。 しかしながら、政務活動費から人件費を支出する以上、政務活動費を充てることが できる経費としての勤務実態、業務実態がなければならない。この点に関して同議員 によれば、業務の内容を挙証できるだけの記録、報告書、成果物等の資料はないとの ことであり、提出を受けた電子メールの写しも監査対象年度のものではなかった。 以上のことから、提出資料によって政務活動費を充てることができる経費としての 勤務実態、業務実態を確認することはできなかった。 8 イ 小括 以上の検討の結果は、次のとおりである。 (ア) 政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できたもの (前記ア(ア)及び(イ)の一部) (計 308 万 2,433 円) (イ) 政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できなかったも の(前記ア(ア)及び(イ)の一部、(ウ)) (ア)及び(イ)の合計額(本件請求の対象額) ウ (計 153 万 4,747 円) (合計 461 万 7,180 円) 政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できなかったもの の平成 25 年度及び平成 26 年度の内訳は以下のとおりである。 (ア) 平成 25 年度 a 広報・広聴費の市政だより(整理番号 114)ほか 1 件 27 万 7,785 円 b 人件費(整理番号 9)ほか 11 件 45 万 7,087 円 (イ) 平成 26 年度 エ a 広報・広聴費の市政だより(整理番号 123) 36 万円 b 人件費(整理番号 9)ほか 11 件 43 万 9,875 円 一方、同議員の収支報告書等の平成 25 年度及び平成 26 年度の政務活動費の支出決算 額は以下のとおりとなっている。 平成 25 年度 359 万 1,488 円 平成 26 年度 236 万 789 円 また、同議員の収支報告書等の平成 25 年度及び平成 26 年度の政務活動費の支出決算 額のうち政務活動費充当額は、支出決算額と同額となっている。 (ア) 平成 25 年度について 平成 25 年度の同議員の政務活動費充当額は 359 万 1,488 円となっていたが、この うち政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できなかった もの(計 73 万 4,872 円)については、政務活動費を充てることができる経費として 認めることができない。平成 25 年度の政務活動費充当額と支出決算額は同額となっ ていることから 73 万 4,872 円を市長に返還すべきこととなる。 (イ) 平成 26 年度について 平成 26 年度の同議員の政務活動費充当額は 236 万 789 円となっていたが、このう ち政務活動費を充てることができる経費に支出していることが確認できなかったも の(計 79 万 9,875 円)については、政務活動費を充てることができる経費として認 めることができない。平成 26 年度の政務活動費充当額と支出決算額は同額となって いることから 79 万 9,875 円を市長に返還すべきこととなる。 (ウ) 遅延損害金について 前記のとおり、同議員が政務活動費として認められない経費を政務活動費に充当し た収支報告書等を提出したことは、少なくとも過失による不法行為に該当すると認め られる。したがって、市長は、同議員に対し、民法第 709 条(不法行為)に基づく損 害賠償請求として、当該金額 153 万 4,747 円(平成 25 年度 73 万 4,872 円、平成 26 年度 79 万 9,875 円)及びこれに対する遅延損害金を請求すべきである。 条例第 7 条第 2 項では、前年度の交付に係る政務活動費について、毎年 5 月 10 日 までに収支報告書等を提出しなければならないとされており、収支報告書等の提出期 限を課しているが、この提出期限までに議員は収支報告等の内容を確定すべきであり、 実際の支出から提出期限までは、議員が市長に返還すべき金銭について一律に期限の 利益を与えたものと解することができる。よって、遅延損害金の算出に当たっては、 不法行為の後である提出期限の翌日から支払済みまで民法所定の年 5 分の割合による 9 金員の支払を求めるのが相当である。 4 結 論 以上のとおり検討した結果、請求人の主張に一部理由があるものと認め、地方自治法第 242 条第 4 項の規定により、次のとおり勧告する。 なお、措置を講じたときは、地方自治法第 242 条第 9 項の規定により、その旨を通知され たい。 勧 告 市長は、大毛議員に、本件政務活動費のうち、過払いとなっている金額相当額(153 万 4,747 円)及びこれに対する収支報告書等の提出期限の翌日から支払済みまで民法所定の年 5 分の 割合による遅延損害金を平成 28 年 5 月 31 日までに請求する措置を講じるよう勧告する。 これまで政務活動費の返還請求に係る住民監査請求監査を実施してきたが、それらを踏まえ、 今回の監査結果において以下のように意見を付す。 (意見) 地方自治制度において対等の立場で相互のチェック・アンド・バランスにより行政運営を行 う首長と議会の関係からすると、議会や議員の活動は、首長の支配、干渉を受けないことが保 障されなければならない。 したがって、議員に対して広範な裁量が認められている政務活動費に関して、その使途は、 会派や議員の見識に基づく自主的な判断に委ねられるべきである。 こうした前提の下、本市においては、政務活動費の交付について、堺市議会政務活動費の交 付に関する条例、堺市議会政務活動費の交付に関する条例施行規則に規定されており、また、 政務活動費の支出に当たり、議会として一定の統一的基準を持つことを目的として、使途基準 の基本方針や使途基準に関する細則などを示した政務活動費の運用指針(以下「運用指針」と いう。 )が作成されている。 しかしながら、近年、政務活動費の返還請求に係る住民監査請求が連続しており、監査の結 果、議員に対して返還を請求するよう市長に勧告を行った事例が相次いでいる。 このような現状を踏まえれば、議会の自主性を尊重するとしても、より明確に市民への説明 責任を果たし、もって議員の政務活動を更に充実させるためにも、現行の運用指針をより具体 的なものにならしめることが賢明であろうと思料する。 市長は、運用指針を見直すことを議会に求められたい。 以上 10
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