Special ●トップインタビュー いちごホテルリート投資法人 いちご不動産投資顧問株式会社 代表執行役社長 織井 渉氏に聞く いちごホテルリート投資法人(証券コード:3463 ) が 、2015 年 11 月30 日 、東京証券取引所に上場し ました。本投資法人は、ホテル特化型リートで 、いちごグループの不動産再生を軸としたビジネスモデルを 最大限活用してホテル用不動産等に投資を行います。 資産運用会社となる、いちご不動産投資顧問株式会社 代表執行役社長 織井 渉氏にお話を伺いました。 (インタビューは2016 年 3 月に実施 ) ―上場までの経緯を教えてください。 要の双方を取り込める好立地の宿泊主体・特化型ホ いちごグループは、アセットマネジメント、不動産再 テルを対象としており、9 物件 、204 億円と規模的に 生 、クリーンエネルギー関連の3つの事業を展開して は大きくありませんが、投資家にとって魅力的なポート います。アセットマネジメントでは、上場しているいち フォリオが作れたのではないかと思っています。 ごオフィスリート投資法人および私募ファンドの運用を 行っています。不動産再生事業では、いちごグルー プが持つ不動産技術とこれまで培ってきたノウハウを ホテルセクターが好調であることおよび先行するホ 活かすことで資産価値の向上を図り、既存不動産の テル特化型リートも好調であることから、全般的に非 有効活用を進めてきました。 常に高い関心を持って頂いたと感じています。同時 これまでオフィスビルや商業施設には多くの再生実 に、上場時の資産規模が204 億円ということから、今 績を持っており、再生した既存不動産をリートで運用 後の成長戦略について多くのご質問を頂きました。 するビジネスモデルを確立しておりますが、ホテルも再 今後の外部成長については、いちごグループのソー 生事業の対象となると考え、約 3 年前からホテルへの シング実績 、スポンサーのパイプライン等をご説明さ 投資と再生を本格的に開始しました。物件取得後に せて頂きました。物件取得競争が過熱気味となって 効果的かつ戦略的な CAPEXの実施 、オペレーター いる中、独自のソーシング力による取得実績があり、 変更によるリブランド、賃貸借契約の見直し等によるバ IPO以降にクローズした案件を含めると約 500 億円程 リューアップを行い再生のトラックレコードを積み上げ 度のパイプラインを持っています。今後タイミングを見 ていく中で、資産価値を向上させたホテルをリートで てリートへの組み入れが可能になると考えています。 中長期的に運用することが可能と考えていました。 26 ―IPOの際 、投資家の反応はいかがでしたか。 また上場当初は宿泊主体・特化型ホテルに優先的 ホテル再生の実績とノウハウを蓄積し、シード物件 に投資を行い、成長に向けた基盤をしっかりと作るス も仕上がってきたので、約 1 年前よりホテル特化型リー トーリーについても評価を頂いたと感じています。パ トの上場を計画しその準備を進めてきました。当初 イプラインとして持っているホテルも宿泊主体・特化型 組入れ資産は、ビジネス需要と国内外のレジャー需 ホテルであり、IPOの際に投資家に説明させて頂い ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.30 トップインタビュー: いちごホテルリート投資法人 いちご不動産投資顧問株式会社 代表執行役社長 織井 渉氏に聞く いちご不動産投資顧問株式会社 代表執行役社長 織井 渉氏 た成長戦略に沿った規模の拡大と内部成長の継続 います。当初のポートフォリオに組み入れることは出来 を目指してまいります。 ませんでしたが、スポンサーが保有するパイプライン 本投資法人の特徴を出して運用し、併せて着実に には東京の物件も複数含まれているので、今後タイミ 資産規模を成長させていくことが重要だと考えていま ングを見て組入れを検討していく予定です。大阪・京 す。いちごグループが持つ不動産再生のノウハウを 都の関西地区は、インバウンド旅行者の需要が多く、 最大限活用して、物件取得 、資産価値向上 、価値 市場全体で稼働率 、ADR共に大幅に伸びています。 の向上と改善を維持した中長期的な運用を行えるこ 東京・大阪・京都以外でも、 日本には多くの観光資源 とは、本投資法人の特徴であり大きな強みとなってい があるので、 ビジネス・レジャーの観点で集客力がある ます。 場所にある物件であれば、取得を積極的に検討した いと思っています。 ―不動産ポートフォリオでは関西地区が過半を占 築年数が経っている物件であっても、上述の物件 めます。ホテル需要をどのようにご覧になりま 選定基準を個別案件毎に分析した上で投資対象を すか。また今後の戦略はいかがでしょうか。 厳選し、オペレーターとしっかり連携していくことが重 IPO時のポートフォリオでは関西地区の比重が大き 要と考えています。今後のポートフォリオ構築に当って くなっていますが、投資対象地域について特に限定 は、宿泊主体・特化型ホテルに優先的に投資を行い、 しているわけではありません。物件選定基準として、 早期に資産規模を1,000 億円にすることを目指してい ハード面では立地 、建物のクオリティやバリューアッ ます。資産規模がある程度大きくなった段階で、フル プ余地を、ソフト面では最適なオペレーターの選択や サービスホテルやリゾートホテルを取得することで、投 キャッシュフローの分析 、適正な賃貸借契約の設定な 資対象となる資産の多様化と分散を図り、安定性と どに着目し総合的に判断して投資を行います。 成長性を追求できるポートフォリオを構築したいと考え ホテル需要は今後も堅調に推移すると考えていま ています。 す。特に東京都心は需要が厚く、安定した稼働と高 い ADR( 平均客室単価 ) が今後も継続すると考えて March-April 2016 27 Special -内部成長の基本方針について 、具体的に教えて 28 -2 本目のリート上場となりました。 今後の戦略 ください。 をお聞かせください。 各ホテルの市場におけるポジションやポテンシャルを ホテルを取り巻く環境は、政府による観光立国強化 分析し、オペレーターとも運営方針を協議した上で、 に向けた政策によるインバウンド旅行者数の急増 、国 収益力の向上と安定化 、最大化を目指したリニューア 内レジャー需要の増加等を背景に客室稼働率が上が ル工事等を検討します。リニューアル工事等はリート り、それが ADRの上昇につながる好循環が続いて への組入れ以前に、いちごグループで行う場合もあり います。東京オリンピック開催に向けてホテル需要は ますが、効果的な CAPEXを通してバリューアップを さらに高まり、大きな付加価値を持つ資産タイプになる 行い資産価値および NOIの向上を目指します。 と考えています。 IPO以降 、ネストホテル札幌駅前では客室の改装 今後は物件の取得競争がさらに厳しくなり、キャッ が終了し、改装後の客室販売を昨年 12月より順次開 プ感含めて過熱していくことが想定されますが、現状 始しています。全客室 162 室の表層刷新とユニットバ のままでは投資法人が直接取得することが出来ない スの改修を行うと共に、 ツインルーム36室についてベッ 場合や、運営上の改善が必要な場合でもグループで ドをハリウッドサイズに入れ替え、3ベッドのトリプルルー 取得しパイプラインに加えることが出来ると考えていま ムにも対応できるようにしました。顧客満足度の向上 す。ウェアハウジング期間中に再生することにより投 と、レジャー需要の積極的な取り込みによる ADR 向 資法人の取得対象となり得る物件もあるため、集客 上を企図したものです。ヴァリエホテル天神では1 階 力のある立地でハード・ソフトの両面でバリューアップ のレストランエリアを全面改装しました。2月より朝食 余地があれば積極的に検討する方針です。 の提供を再開すると共にラウンジエリアを新設し、清 既存ホテルの取得に加え、新築ホテルの案件も増 潔で開放的にくつろげる空間をホテルゲストに提供し 加しており、集客力のある主要都市における宿泊施 ています。今後もホテルオペレーターと十分協議を行 設の増加傾向は、今後も継続すると考えています。 い、内部成長につながる効果的な CAPEXの実施を J-REIT が保有するホテル等の宿泊施設は、他の資 継続する方針です。 産に比べてまだ限定されており、J-REITの取得対象 また現在保有する9 物件のうち8 物件に変動賃料 資産として大きなポテンシャルがあります。今後は築 を導入しています。ポートフォリオ全体に占める変動 年数の経過したホテルの再生案件に加え、新築ホテ 賃料の比率は、賃料ベースで40%程度を目途に運用 ルの組入れ、サービスアパートメントやコンバージョン していく方針です。ホテルの運営状況を反映して、 案件の組入れ等も積極的に検討し、いちごグループ 投資家にアップサイドをとって頂ける賃料体系がホテ の強力なサポートと強みを最大限活用して、成長戦 ル特化型リートの大きな特徴であり、魅力の一つであ 略に沿った外部成長と内部成長の実現を目指してま ると思っています。 いります。 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.30
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