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100hue testに於ける光源と加齢の効果
行田, 尚義
鹿児島大学工学部研究報告, 33: 267-272
1991-09-27
http://hdl.handle.net/10232/11574
http://ir.kagoshima-u.ac.jp
lOOhuetestに於ける光源と加齢の効果
行田尚義
(受理平成3年5月31日)
LIGHTSOURCEANDAGEEFFECTINTHE100HUETEST
ProfDr・NaoyoshiNAMEDA
Thispaperreportstheresultsofaninvestigationonlightsourcesandagesofsubjectsforthe
lOOhuetest・ThelOOhuetestismainlyusedintheeyecheckfieldforcolordealinginspectorsand
forclinicalusageinophthalmology・Thecolorspecimensusedforthetest,producedbytheJapanese
ColorResearchlnstitute,arealmostthesameastheFarnswarth-MunselllOOhuetestspecimens,
whicharewidelyusedthroughouttheworld、Forlightsources,awhitecolorfluorescentlamp,aspe-
ciallycolorimprovedD65fluorescentlamp,atri-phospherfluorescentlampandanincandescentlamp,
wereused・Subjectsweresegregatedintotwogroups,Onewasayoungpersonsgorup,whosetwo
memberswere20yearsofage・Anotherwasanolderpersonsgroup,includingtwomembers,onewas
50yearold,whileanotherwas60yearold・ThebestcoloI、discriminationpropertywaspresentedbya
lampwhichhashighcolorrenseringindexandhasacomponentforcontinuousspectraldistributed
energy,Themosteffectivefactorinvolvedhumanvisualproperties,especiallyanagedperlon,seye・
Deteriorationincolordiscriminationforanagedpersonseye,seemstodependoneyelenscolor−
ingandaccomodationtopoweI・decrease・Thecolordiscriminationabilityisconsideredapproximately
9
9
,
asthecolorhuediscrimination・
Therefore,thecolordiscriminationabilityisestimatedfrommetrichueanglesbetweenthecolor
s
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l
u
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b
y
a
l
a
m
p
.
1.緒巨
本論文はlOOhuetestにおける光源と加齢の効果を
こで注意しなければならないのは色相の問題(例えば
特定の色相の領域にエラースコアが大きい問題など)
は光源の問題ばかりではない。北原[4]や市川[5]によ
調査した結果を報告するものである。関東地方では
ると正常眼の特徴としてFarnsworth-Munsellの
lOOhuetestに普通型の白色蛍光ランプが使用されて
lOOhuetest(本実験とは若干異なる色票を用いたテ
いるケースがある。ところが,蛍光ランプには演色性
ストであるが基本的には同じ)の色象限(3)群,(5)群に
[1]に問題があることがある。また黒体放射に近い連
エラースコアが多いと報告されている。また内川ら[6]
続スペクトルの光源であっても色票の設計時と異なる
はスペクトル光の波長に対する波長分離能力を測定し
色温度では色の恒常性が若干崩れてくる[2]ことがあ
ているが,特定の波長領域に分離能力の低い領域があ
る。l00huetestのような純度の低い僅かの色差を問
ることを報告している。一方,人間サイドの問題ばか
題にする場合は無視出来ない問題になる。そこで,
りでなく色票の製造バラツキも問題があろう。“特定
lOOhuetestを行って加齢の効果を含めた光源の影響
の色相にエラースコアが多い問題”にはこれらの問題
を検討することにした。l00huetestと光源の関係に
が複雑にからみあっている。
ついては1977年にboyceらの研究が報告されている
そこで実験室の暗室内で,照明光源を白色蛍光ラン
[3]。しかし,boyceらの報告の中には色相について
プ,3波長タイプ蛍光ランプ,D65純正色蛍光ランプ
の検討が不十分と思われたので本研究を計画した。こ
と白熱電球の4種類の光源について100huetestを
268
鹿児島大学工学部研究報告第33号(1991)
行った。その結果,試験目的によっては光源の影響が
測定は白色蛍光ランプ(以後FL.Wと略称する),
無視出来ないことが明らかになった。実際には本則定
D65純正色蛍光ランプ(FL・D65と略称),3波長タイ
器を供給する日本色研ではC光源か演色性の良い蛍光
プ蛍光ランプ(FL。Mと略称),白熱電球(ILと略称)
ランプを使用するように推奨している。l00huetest
の4種類の照明光で作業面の照度を5001xにして測定
は演色性の良い連続スペクトル成分を含む光源を使え
した。測定は各条件で3回ずつ行いエラースコアの最
ばかなりの程度まで光源色による偏りが少なく測定出
小の値をとった。被験者は24歳の女子TN,24歳の男
来ると考える。それに人間の個人差や加齢の効果が大
子FJ,53歳の男子NN,61歳の男子SYの4名であった。
きい,これらが色票にたいするエラースコアの主な原
全員色覚異常検査票(石原式)で色覚検査を行って色
感覚は正常であることを確かめた。また万国式近点検
因と考えられる。
査表で矯正後近距離視力が1.0以上であることも確か
2.方法
めた。
lOOhuetestに使った検査器は1978年に入手した財
団法人日本色彩研究所製“日本色研100色相配列検査
2.1光源と色票
色票はC光源(色温度6774Kの平均昼光)で照明し
器(ND-100)”である[7]・使用回数が少なかったの
た時にL*U*V*色空間(1964年CIEで設定された
で色票面は色の変化や損傷も無い新品同様の試験器で
均質色空間[8])上で等輝度で色差が1になるように
あった。色相の異なる100個の色コマ(色票は直径
設計すると周辺長が色差100の円になる。そこで100個
23mm,高さ14mmの黒色プラスチックの円筒の上面に
の色票の軌跡は半径15.93になるが,実際の製品には
取付けられている。本文ではこれを色コマと称する)
製造バラツキが入るのでその広がりの状態をチェック
が25個ずつ4本(4本を各々(1),(2),(3),(4)の4象限
しておく必要がある。そこでD65ランプで照明した色
と表現することがある)のさお型操作板に収納されて
コマを被験者の観察する角度45度上方からTOPCON
いる。試験方法は各さお型操作板毎に色コマをバラバ
SR-l型色彩輝度計で10色コマおきに分光エネルギー
ラにした後,決められた基準に従って並べ直してから
分布を測定し,それから分光反射率を求めた。この分
その誤りの数を求めるものである。正規の試験方法で
光反射率を使ってc光源で照明した時の10コマ置きの
は並べ直すに要する時間が決められているが本測定で
色票の色度を計算した。図2はU*V*色座標上にプ
は被験者が納得するまで充分の時間を与えた。そうす
ることで被験者の色弁別能力を充分に引出そうと考え
た。ここでエラースコアの算出の仕方を説明する。図
lのように並べられた色コマがあったとして,その配
Originalcolordiscorder
99100●1234567891011
MmberofcolordiscspIaced→99100.l235467891011
Undertest・
Differencebetweenadlacent
discnLmbers,
SLmofdifferences、
】
L
VVVVVVVVVVVV
→’11121211111
VVvVゾゾVVVVV
22233332222
11111111111
Subtract2(Errorscore).OOOllllOOOO
図1エラースコアの計算例
*印はdiscorderNo、1から計算するとき0と見なす。
列の一部の順序が乱れていたとする。まず色コマに予
め付けられている番号の隣同士の差をとる。この場合
図2C光源で照明した10コマ置きの色票の色度(U
*
v
*
)
±に関係なく絶対値をとる。次に求められた隣合った
ロットとした10コマ置きの色票の色度を結んだ軌跡を
差同士を合計して2を引くと求められるエラースコア
示している。図中に描かれた円は色票の設計上の色度
になる。この方法では色差を判別出来なかった点を特
軌跡であるが,製造された検査器の色票は円に添って
定出来ないが,誤り易い色コマの領域と誤りの程度を
広がっていることが分かる。使用した全部の光源の比
示すことになる。
分光エネルギー分布を図3に示す。また各光源の相関
司田函]S言の房いこい章二が沫読代言蔀S違湘
王jE
ゆ○○﹁の
■■■■■■■■■
○]○凶︺凶○心○、○
■■■■■■■■
○
○
■■■■
﹃○︽①一
m﹁﹃○﹁
■■■■■■呂
■■■■■■呂
rrorScores
凧雇
OI
︶ひ
毒
o−n。“今○−八Jい)心
I
、
)
ー
I
、
)
や○○、○○①○○﹃○○︵.﹁ゴ︶
産
1
冒齢扇’’十→’三難溺
憩扇
﹁F・くく
壁
冒
下
画の④
﹃○②○
﹄○
]8
○○一○﹁Q扇nコ亡﹃ゴロの﹃の、“﹁﹂
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﹂○○m○○⑥○○
一可
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−1
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、○○﹁の
∼
9
,
LU
画=== 軍国==
■■■■
酉■ロロ﹃画画一
■■■■■■■■
ー■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■・
I
■■■■■■■■
一Errorscores
国令
m﹃﹃○﹁
■■■■■■■■■■画■■■■画■・
①○
﹃○
四○①○]○○
z之
HJl〆u剤S室柵訴湘︵露癖雌国.zz︶
欝癖雌国再四回庁楊HJIご吻蒲ぐ︾・露癖鮒zz
再回嫁畔倒廿が庁鮒弔罫眺登極①芦が。糊肝叫
が壷司再苓嫌ご易叫哩へバラが。
ー
I
、
)
9OO︵コョ
、−〆
一F
o−IuQJやO−fuQJぃOーい・Jや
I
、
)
﹁戸・亘
骨
RelatIveenergy
骨
豆
: i
↑○○印○○①○○﹃○○︵.﹁ゴ︶
﹁○言①一
■■■■■。■
計。四口四回庁醍HJI︾鋤#ごj計。簿癖鮒国S節
の畔月缶乞庁斗い庁zzSHJIS説併存孟沸S澗洲
P○○m○○①○○﹃○○︵.﹁ゴ︶
萱針が庁鮒神①芦が。洞.継畷響飛び針が庁蝋沖①芦
が。小、感刈I室叶い回S国即今SHJIxu剖叶碧
乏①くの一の.、汁ゴ
片弓が、堂nF計。HJIS撫肝S熱醗号炉nu4S
因哩詳論S汗卑沫H制寺社I津計
一画母SXu剤簿貯ご錫・針が溌困畔議s計画J藍蕊葦
庁帥ぐ︺庁鮒洲八Su4畔怯寓一nHJIXu剖叶の聖F
州]洲簿行商通F計味読S、鋪詳
ロ①、護円陣跡詐JY4
削叩
≦
沫諭S 蔵 錨 ︵ 暴 善 ︶
田⑭母沫 J に 叱 令 戸 ・ 乏 ︶
olmoFI︷︺①、
計。ns鍬洲師勝空S沫読庁露癖雌汽感逓庁八乱1町
茄温⑨前岡実︶ 判避溺耐判官醤
mxI z
①、○○
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m○○○
、今
州画S詳論・露癖雌・nu4畔囲弔庁F計渦簿斗国
い、、①
﹄○○
諒S函削認硫三s申窪津葦吋司0吋︵州②︶。小S訴
︵﹁F・重︶
田饗燭 昇 ︵ 一 F ︶
舎州澗
①山
︵﹁Floom︶
些溺恥奄当乱母沫Jに匙
叩升与計S強酬い執針が。
PmOO
湘簿癖坤庁nu4鷲]誤S帥扉偶執卦湖.沫萄ごぷ誤
n節岡.判芯薗n判雪蝉畔州こい引斗。
禦刈癖討細
S帥扉偶徽対軸.欝癖雌代nu4S別阿寺翌ごぷまS
帥扉掛a封醐庁舜O汁。国。旨①①我司0吋貯窒nnu
4蹄嬰−,0ぐシバHJIXu剥畔の聖守八露癖雌聖S
己霊J、山一noぐシバ簿癖雌zz斤露簿鮒ごS節のS
刊1町畔蕊粥叫が庁国.弓二代zz・の屋S国OS、
竺削訴飛師図室n引斗萱.z室畔HJIS説肝斗が圃
︶でI乱S亜丙謡蛸舜嚇ご鋤劉s①芦が。僻計画庁弓z庁
弓強I削哉再録︿感脹舜Rござ畔或Oバラバ.回簿畔
執再汁洲ご吻舜ぐさ鋤.zz庁いく俄碑zzS計卦吻特蔀ご吻鮒
熊が一no芦八HJIXu剖己彰熟O八︿が、庁強申ご’
s−n屋己さ咳き①姥ぐ︾冷芦S節の傷の邑片sHJ︲〆u
鹿児島大学工学部研究報告第33号(1991)
270
表210色コマ単位にまとめたエラースコア
Colordisc
色コマNC
FJ
TN
NN
SY FJ
TN
NN
SY
FJ
TN NN
Dom inant
│Lランプ
Mランプ
D65ランプ
Wランプ
number
SY
FJ
NN
TN
wave
length
(m、)
SY
l−lO
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
1
584へJ700
11−20
0
4
4
0
0
0
4
0
0
0
4
0
0
0
4
0
574∼584
21−30
0
0
0
4
0
0
0
0
0
4
0
0
0
7
0
4
564へ575
31−40
4
0
0
4
0
0
0
0
0
0
4
0
0
1
4
4
545∼565
41−50
0
4
0
8
0
0
0
3
0
0
0
0
4
0
4
8
495 545
51−60
0
0
6
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
4
0
483∼495
61−70
0
0
0
0
0
0
4
0
0
0
0
0
0
0
0
0
471∼483
71−80
0
0
7
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
9
0
0
400−,471
81−90
0
0
3
0
0
0
5
6
0
0
2
4
4
4
6
0
91−100
0
4
8
7
0
0
4
2
4
4
1
1
8
0
0
7
7
4
12
28
24
0
0
17
12
4
8
22
12
8
2
1
29
Total
Error
Scores
表3色コマ,光源,被験者の3元配置の分散分析表
要 因
自由度f
色コマ(A)
9
平方和S
209.8
V=S/f
23.3
の生ずる位置が燈色と青緑であるところから加齢に伴
**
10
3
26.9
8.9
3.8
被験者(C)
3
102.6
34.2
14.7
描いた図である。色コマの色相から推定した主波長を
横軸にして図5下を描きなおすと図6になる。エラー
F
光源源(B)
*
う水晶体の着色による色弁別能力の低下が原因ではな
**
交互作用
A×B
27
110.3
4.1
1.75
A×C
27
233.6
8.7
3.7
B×C
9
10.4
1
.
1
0.5
81
189.2
2.3
5
釧
碧
僻
臓
鋤
I
岸
"
、1ハゴ
*
、
差e
24
5
アが大きい。これは年齢とともに個人差も存在するこ
とを示している。しかし,その差よりもVerriestら
[10]のデータと比較して考えると20歳台と50歳∼60歳
台の年齢によるグループ分けをする方が適切と思われ
る。そこで表2よりFJ・TNとNN・SYの2グループ
の関係を求めた(図5)。NN・SYグループ(高齢者
グループ)からFJ・TNグループ(若者グループ)を
引くと図の斜線を付した部分が残るが,FL。Wと
←OlOG
PerSOn
PerSOn
I
L
型Ii拠辿醒洞仁上
号youngperson
−Golderperson
Averaged
△
雷
と
竺
里
三
塁
▽
ど
ご
difference
between
youngとjndolder
l∼11∼21∼31∼41∼51∼61∼71∼81∼91∼
lO2030405060708090100
る。これは分光エネルギー分布の違いにもとづくと思
図5下はこの老若差を全部の光源について平均して
perSOr1
PerSOnCrrOrSCOreS
FL・D65は似ているが,FL.MとILは多少異なってい
われる。
perSOn
、ムーOldE
とユハノ、
if山幽凸倒&皿途司△一△一山0(
420老
のそれぞれを平均して,色コマに対するエラースコア
▽
血
'
榊
血
;
皿
I
55
*Significant(p<0.05)
︵、①﹂○.吻○﹃↑○戸目の︶①﹄○Uの﹂○﹄﹄山
**Significant(p<0.01)
−−Coiordiscnumbers
図5
各種の光源Iこ対する老若被験者に対するエラー
スコア
行田:lOOhuetestに於ける光源と加齢の効果
271
プと若者グループに別けて,エラースコアの平均値を
横軸にとり縦軸に10コマ分のメトリック色相角をとる
3210乱
と図8になった。図中の実線は高齢者の場合を示し,
▼FLoD65;yα」r週persm
▽FL・D65;olderperson
﹃︺
図6
Vn対四
Dominantwavelength
●FL。W;yα」ngperson
○FLow;oIderperSaT
ぅ=、eでうじ6
p'L:にt:M1緋鰯W
へ■
へI
l
L;
LycmgpersOn
▽吟
500600(nm)
mU切一ロ﹄○一○U○﹃﹄O↑い①|凶仁の
400
釦印如犯
①。こ①﹂①仁一ロ①﹂○Uの﹂○﹄﹂のロ①凶の﹄①ンく
帆↑。①−,コい﹂①ロ一○℃仁①叩仁.○弟c①①へ三﹄①。
差を弁別していると考えたことによる。高齢者グルー
1
・
坐
、
こ
:
ご
〃oヘヘヘ、wへ
堂
F
;
i
=
ご
雨
サ
ー
、
、
の三
主波長に対する老若カラースコア差
□lL;olderpersa1
いかと推察される。一方,赤紫の領域は主波長が求め
収差を生じている[11]ことを考慮すると水晶体の調節
、
、
、
、
、
、
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 0
ErrorscoresforlOcolordiscs
られないがエラースコアの一番大きな値の所である。
この理由は眼球内部で赤と青で約2ディオプターの色
、
図810色コマ分のエラースコアとメトリック色相角
の関係
力不足による色情報の不完全さから来ると考えられ
点線は若者の場合を示している。いずれの場合にも最
る。
大の色相角と最小の色相角が求められるが,両者とも
次に,色票の色差と弁別能力を検討した。正確には
この2つのグループの間のエラースコア0線上の差は
各光源による100個全部の色票の色度を求めて検討す
ほぼ同じ5.であった(最大の色相角は老若差が無いと
べきではあるが,今回は10コマ置きに測定した分光反
みることも出来る)。しかし,最大の色相角について
射率から計算した各光源の色度をCIE1976年のa*b*
エラースコアが増えるにつれて差が広がって来る傾向
色座標上にプロットし(図7),その図からメトリッ
があり,色度差を弁別出来ない最小の色相角(エラー
スコアが10の点でエラースコアがlづつ10こま均一に
OlZU
分布した.と仮定する。:図中の矢印の箇所)になると
皿‘〆4霧誘
若者の場合5。(隣同士の色コマの場合はl/10で0.5°に
「、
L
〕(上
﹁]
虹】
﹃︺
4
J
【
】
なり色弁別能力がかなり高いことを示している),高
65
齢者の場合15°(隣同士の色コマの場合は1.5.でかな
:
〕
(
】
4
J
[
」
り色弁別能力が弱くなっていることを示している)に
なった。
。JN5C
JOI−51,lU
次に光源の影響を考察する。FL・D65は若者グルー
プではエラーが出なかったのは上述の色弁別能力から
考えて10コマ単位の最小メトリック色相角が25.以上
ヨUu9c
であったことから領けることである。表1に示すよう
にランプの特性を示す平均演色評価数もFL・D65は一
o 可需、冬_ノEC
番高い。次に,FL。MとFL.Wがほぼ同一の値になっ
た。FL.Mは平均演色評価数が高いにもかかわらずエ
図7L*a*b*座標上にプロットした色票の色度
図中のマークに付した番号は色コマの番号
続的でない分光エネルギー分布によると考える。10コ
ク色相角を求めた。10等分すれば色コマ間の色度差の
マ単位のメトリック色相角が比較的大きいにもかかわ
ラーが大きい。これはBoyceらも指摘しているが連
目安とすることが出来る。L*a*b*色空間を採用した
らずエラーの大きいIL(白熱電球2856K)の場合は検
のは人間の色覚上の色空間と良く合うと報告した森ら
査器の色票の設計時の光源(C光源:6774K)と色温
[12]の実験結果を参考としたことによる。メトリック
度の差が大きいためにHelson効果による色覚の‘恒常
色相角を採用したのは色票の弁別作業は大半は色相の
性のずれが生じた結果と考える。
鹿児島大学工学部研究報告第33号(1991)
272
今後,機会があったら100個の色票の分光反射率を
4)北原健二:後天性色覚異常のFarnsworth‐
全て測定し被験者の数も増やして検討したい。また本
MunselllOOhuetestによる検討,臨床眼科学会
実験では照度を500lx一定で行ったが,Boyceらの実
誌,Vol、36,No.9,(1982),1085-1089
験では高齢者には照度が大きく影響すると報告してい
るので照度と色覚の問題も確認したい。
一三口
︿冊
5.結
以上の研究の結果次のことが分かった。
(1)l00huetestに使用する光源は検査器の設計した
時の色温度と近い色温度を有して,連続的な分光エネ
ルギー分布があり,演色評価数の高い光源を選択する
ことが望ましい。今回の実験ではD65純正色傾向ラン
プが一番良い結果となった。
(2)若者と高齢者には色弁別能力に大きな差がある。
その原因は水晶体の黄色化と調節力の減少が原因と推
定される。
(3)色弁別能力はL*a*,b*色空間上のメトリック
色相角で概ね推定できるのではないかと考える。
6.文献
1)進藤貞和他:照明ハンドブック,オーム社,(1978)
,pp、91-97
2)HelsonH.,JuddDB.,andWarrenM.H、:Object‐
ColorChangesFromDaylighttolncandescent
Filamentlllumination,Illum・Eng・Vol、47,No.3,
(1953),221-233
3)BoyceP・RandSimonsR.H:HueDiscrimination
andLightSources,Light・Res・Technol・Vol、9,
No.3,(1977),125-140
5)市川宏:色相配列による色覚検査法(小尾氏)に
ついて,Vol,10,(1956),405
6)UchikawaKandlkedaM.:WavelengthDiscri‐
minationwithaChromaticallyAltenatingStimulus;ColorResearchandApplication,Vol・'0,No.
4,Winter,(1985),204-209
7)川上元郎,平井敏夫,渡辺幸次,島善一郎,福井
哲夫:日本色研100色相配列検査器(NDlOO),
Vol、22,No.2,(1975),24-35
8)森礼於他:新編色彩科学ハンドブック,(財)東
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