アスベスト含有建材の不適切な取扱いに係る 再発防止対策の策定と取組

アスベスト含有建材
アスベスト含有建材の
含有建材の不適切な
不適切な取扱い
取扱いに係る
再発防止対策の
再発防止対策の策定と
策定と取組について
取組について
○
東京都住宅供給公社は、アスベストが含有されているひる石が天井に吹き付けられ
た、都営住宅のあき家補修工事において、あき家補修に先立って天井にボード張りを
行う囲い込み工事を実施すべきところ、アスベストの含有を認識せずに通常のあき家
補修工事として天井ひる石の撤去等を行い、撤去等を行うのであれば、法令等で定め
られた届出及び飛散防止対策が必要であったにもかかわらず、これを行わずに工事を
実施し、また、適正な廃棄物処理を行わなかった。
○ 公社では、こうしたアスベストの不適切な取扱いが判明した平成27年5月以降、事
実を公表するとともに、この事態に対し全社を挙げて的確に対応することとして、理
事長を委員長、全役員及び部長、関係課長、全窓口センター所長等を委員とする「ア
スベスト含有建材の不適切な取扱いに係る再発防止対策推進委員会」を設置し、原因・
背景等を調査するとともに、再発防止対策の検討・実施に取り組んできた。
○ 当該委員会では、不適切な取扱いがあったあき家補修工事に携わった窓口センター
の職員や、窓口センターに指示・情報提供を行う本社の担当部署の職員にヒアリング
等の調査を実施するとともに、直接関係のない部署も含めたすべての部署で職場討議
を実施して、不適切な取扱いの発生原因や職員の認識不足等が生じた背景等を調査、
分析し、再発防止対策を策定した。
1 不適切な
不適切な取扱いの
取扱いの原因
いの原因・
原因・背景等
(1) 不適切な取扱いの原因
・ アスベストの不適切な取扱いの個々の事態は、あき家補修工事の担当職員にアスベ
ストや関係法令等に対する理解・認識が不足していたこと、業務上のルールが周知徹
底されていなかったことなどにより発生した。
・ こうした認識不足等に加え、本社が窓口センターに天井囲い込み工事が必要な住棟
リストを配付した際、業務の処理方法等の指示が適切に行われず、また、各窓口セン
ターにおいても周知徹底されていなかったため、リストの確認が疎かになっていた。
・ また、担当職員が使用する電算システム上で注意喚起する機能やダブルチェックを
行う統一的なルールなど、ヒューマンエラーを防止する仕組が不十分だった。
・ さらに、工事を発注する工事店に対し、アスベストに関する注意喚起や情報提供が
不足していた。
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(2) 不適切な取扱いの背景等
【業務上の問題】
・ アスベストが含有されているひる石が天井に吹き付けられた、都営住宅のあき家の
取扱い及び天井囲い込み工事について、担当者会議等において本社から窓口センター
に指示や情報提供を行った際、他の議題や伝達事項が多くあった中で、アスベストの
重要性、特別性を強調して知らせるなどの配慮をしていなかったため、担当者に十分
伝わっていなかった。
・ あき家補修工事を担当する窓口センター営繕係において、囲い込み工事が必要な住
棟リストや、これに関連する情報を職員間で十分に共有していないケース、人事異動
等で新たに着任した職員に対する引継ぎや指導ができていないケースなど、職員間の
コミュニケーション、情報共有の不足が生じていた。
・ 工事店との契約において、アスベストに係る行政手続等に関する仕様書等の記述が
不明確だった。
【組織・人事上の問題】
・ あき家補修工事の業務においては、仕様変更や法令等の改正に伴い、現場調査の際
にチェックすべき項目が数多くあるが、この業務を担ってきた団塊世代が退職時期を
迎える際、ノウハウや知識を持った多くの職員が退職または雇用形態・勤務場所を変
更することが予想できたにもかかわらず、公社として組織的な対応を徹底せず、結果
としてノウハウ等の継承が十分になされていなかった。
・ 営繕業務に関連する法令等の改正内容の社内周知、情報伝達について、伝達手段が
メールや書類の回付だけにとどまるなど、関係職員のすべてが趣旨や内容を十分に理
解できるような仕組になっていなかった。
【職員の意識・人材育成上の問題】
・ 法令等やコンプライアンス、個々の業務に対する職員の理解・認識不足があった。
・ また、全職員を対象に毎年度実施しているコンプライアンス研修では、人権問題や
汚職等非行防止に重点が置かれ、職員が日常行っている業務が法令と密接に結びつい
ているという意識を醸成する視点が不十分だった。
2 再発防止対策と
再発防止対策と取組状況
取組状況
○
アスベストの不適切な取扱いが発生した原因・背景等を踏まえ、次のとおり再発防
止対策を講じて取り組んでおり、今後も、引き続き取組を進めていく。
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(1) 住棟、住戸リスト、マニュアルの整備
・ 平成 27 年6月、天井ひる石にアスベストが含有され囲い込み工事が必要な住棟リ
ストを使いやすい形に改定するとともに、住戸リストを新たに作成して各窓口センタ
ー及び本社関係部署に配付した。当該リストは、各窓口センター営繕係の全職員が所
持するとともに、執務室に備え付け、必ずチェックを行うよう周知徹底した。
・ 同年9月、
「都営住宅等のあき家補修工事及び囲い込み工事等に係るアスベスト飛
散防止対策マニュアル」を、公社内向け、工事店向けの2種作成し、各窓口センター
営繕係の全職員及び工事店に配付した。今後、マニュアルに基づく工事の施工を徹底
していくとともに、必要に応じてマニュアルの改訂を行っていく。
(2) 公社内・工事店への周知徹底
・ 平成 27 年9月、窓口センター営繕係職員に対し、担当者会議を実施してマニュア
ル等の詳細な説明を行った。今後は、毎年度当初に担当者会議を実施し、アスベス
ト対策の重要性等について注意喚起するとともに、マニュアルの周知徹底を図って
いく。
・ 工事店に対しては、同年9月に本社において全体会議を、9月から 11 月にかけて
各窓口センターにおいて各窓口センター担当工事店の会議をそれぞれ開催し、工事
店向けマニュアルを配付して必要な行政手続の説明等を行った。今後は、毎年度2
回、同様の説明会を実施し、マニュアルの周知徹底を図っていく。
(3) あき家補修工事の際の確実なチェックの実施
・ あき家補修工事の発注の際に使用するシステムの各画面及び出力される担当者用書
類に、当該住戸が囲い込み工事の必要な住戸である旨のメッセージを表示するようシ
ステムを改修し、平成 27 年7月、運用を開始した。
・ あわせて、天井の確認を含めて多岐にわたる現場でのチェック項目を網羅したチェ
ックリストが出力されるようシステムを改修し、あき家補修工事の査定の際、必ず現
場に持参して確認漏れを防止することとした。
・ これらについては、同年9月に実施した窓口センター営繕係担当者会議において周
知徹底を図った。今後も、担当者会議において、定期的に業務方法の再確認を行って
いく。
(4) 進行管理及びチェックの徹底
・ 平成 27 年8月から、あき家補修工事に関係する職員の確認漏れを防止するため、
居住者から提出された住宅返還に係る書類に「アスベスト含有住棟」の印を押印し、
明確に表示するとともに、返却された鍵に色付きの荷札を取り付けることとした。
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・ アスベスト含有住棟の住戸にあき家が発生した場合、窓口センターは、住棟リスト、
住戸リストを確認して進行管理用システムに入力することとし、同年9月から、この
入力データを窓口センターと本社の双方で確認・共有することでダブルチェックを行
うこととした。
・ 進行管理用システムには、住戸ごとの工事発注日、各種届出、マニュフェスト、空
気環境測定等の実施状況を入力し、窓口センターと本社がデータを確認しながら業務
を進める仕組とした。今後も、窓口センター営繕係担当者会議において、定期的に業
務方法の再確認を行っていく。
(5) 業務組織運営の改善
・ 平成 27 年8月及び 11 月、あき家補修工事に密接に関係する住宅営繕部と窓口運営
部が共同し、窓口センター等に送付した通知の内容確認や技術情報の共有を目的とし
て「業務連絡会」を実施した。今後も、両部の情報共有、調整の場として、四半期ご
とに連絡会を実施していく。
・ 同年10月、本社の技術・指導相談員が、天井囲い込み工事を実施中の現場において、
窓口センター担当者等に実際の施工状況を確認させながら指導を行った。また、同年
10月から平成28年2月にかけて、東京都環境局によるアスベスト工事に係る研修が10
か所の窓口センター全てで実施され、各窓口センターの職員及び工事店が受講した。
・ 各窓口センターでは、一層のコミュニケーションの促進、情報の共有化、連携の強
化に向けて、平成 27 年7月から、係内のミーティングを定例化して週1回実施する
こととした。
(6) 工事店との契約等の見直し
・ 平成 27 年9月、工事店が契約時に提出する業務計画書に、必要な行政手続を記載
することに改めるなど、法令等が確実に遵守されるよう契約内容等の検証・見直しを
行った。今後、法令改正等の動きを注視し、必要な対応を行っていく。
・ アスベストの不適切な取扱いに関係した工事店に対して、同年 12 月に研修会を実
施し、適正に工事を行うよう、改めて注意喚起した。
(7) コンプライアンスの徹底
・ 業務関係法令や社内規程遵守の重要性等を職員に再認識させるため、平成 27 年7
月から 12 月にかけて、全役職員を対象として、コンプライアンス研修を実施した。
今後も、職員の業務に対する意識や組織全体のコンプライアンス意識の向上に向けて、
定期的に研修を実施していく。
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・ 「石綿作業主任者技能研修」「特別管理産業廃棄物管理責任者に関する講習会」な
ど、アスベストの取扱いに関連する資格取得に係る費用助成制度を整備し、平成 28
年4月から運用を開始する。今後は、制度の内容について職員に周知するとともに、
担当者会議や研修等において、積極的な活用を促していく。
3 今後の
今後の対応
○ 今後も、再発防止対策の取組状況を進行管理するとともに、効果の検証、より効果
的な対策の検討・実施に取り組んでいく。
(1) 再発防止対策の推進と責任体制の明確化
・ 不適切な取扱いによる事態を風化させず、再発防止対策を確実に実行・継続するた
め、総務部総務課に「アスベスト問題対応担当課長」を新設する。
・ アスベストの取扱いに係る監査や検査を総務部の分掌事務とし、今後、総務部が中
心となって監査等を実施していく。
(2) 囲い込み工事の促進
・ これまで天井囲い込み工事の実施に応じていただけず、引き続き居住されている方
(平成28年2月末現在 69団地・113棟・655戸)に対して、再度、工事の実施を促し、
同意が得られた世帯から順に工事を実施する。
(3) 健康不安等に対する対応
・ アスベストの不適切な取扱いがあった住戸の入居者の方、ひる石撤去等の作業従事
者の方の名簿を保存する。
・ これらの方々から健康不安等に関する相談があった場合に適切に対応できるよう、
相談窓口を総務部総務課に一元化する。
・ ひる石撤去等の作業従事者の方に対しては、毎年、工事店(その後契約していない
工事店を含む。
)を通じて、状況を確認する。
(4) 風化防止の取組
・ アスベストの不適切な取扱いによる事態を風化させないため、不適切な取扱いに関
する公文書をはじめ、工事記録、写真、データ等を集約して保存し、研修等に使用し
ていくとともに、毎年度、定期的に公社のコンプライアンスに対する取組や公益通報
制度について、職員に周知徹底していく。
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