平成 26 年度

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Title
平成26年度
Author(s)
国立大学法人 奈良女子大学 男女共同参画推進機構 女性研究者
共助支援事業本部
Citation
女性研究者共助支援事業本部活動報告書 平成26年度, pp.1-146
Issue Date
2015-03
Description
URL
http://hdl.handle.net/10935/4156
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は
じ
め
に
女性研究者共助支援事業本部は、平成 18 年度科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」
に採択されたことを契機に同じ年度に設置されました。「共助」の名称は、採択課題「生涯にわたる
女性研究者共助支援システムの構築」からとられたものですが、本学の女性研究者支援に対する基本
的な考え方を表しています。この共助の精神に基づいて、採択期間の 3 年間(平成 18 年度~20 年度)
に、本学独自の子育て支援システムや、出産・育児・介護に携わる女性教員の教育研究活動を支援す
るための教育研究支援員制度等が整備されました。採択期間終了後の平成 21 年度からは、大学の重
要な事業として位置づけられ、継続実施されています。
平成 18 年度の「女性研究者支援モデル育成」の目的には「優れた女性研究者がその能力を最大限
発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として女性研究者が出産・育児等を両立し、
環境整備や意識改革など研究活動を継続できる仕組みを構築するモデルとなる優れた取組を支援す
る」とありました。そして本学の女性研究者支援の取組は多くの研究機関から訪問調査を受け、「女
性研究者支援モデル育成」に採択された事業としての役割を果たしてきました。本部活動を支えるコ
ーディネーターと教員達の優れた能力と献身的な弛まぬ努力により、共助支援の内容は見直しが行わ
れ、改善されて、今日に至っています。
本学の女性研究者共助支援事業を含む男女共同参画推進活動は高く評価されています。平成 26 年
11 月に開かれた「女性研究者研究活動支援事業 シンポジウム 2014」において、文部科学省より、
平成 18 年度に採択された機関の評価については、現在の評価基準で評価したものとなることが発表
され、本学の「女性研究者支援モデル育成事業」は「A 評価」となりました。本学のこの事業にかけ
た努力と成果が認められたといえます。また、本学は、独立行政法人大学評価・学位授与機構による
平成 25 年度実施大学機関別認証評価を受け、平成 26 年 3 月 26 日、「奈良女子大学は、大学評価・
学位授与機構が定める大学評価基準を満たしている」と評価されました。その評価書の冒頭に主な優
れた点が挙げられており、その一つとして「教育研究支援員制度や若手研究者サポートシステム、ス
タートアップ研究費や研究スキルアップ経費の配分等、女性教員の育児と教育研究活動の両立及びポ
ストドクターと博士後期課程学生のキャリア形成支援のために多様な体制を整備するとともに、子育
て中の男女教職員のための一時預かり施設(ならっこルーム)設置等、男女共同参画社会における大
学構成員の課題解決のために積極的に取り組んでいる。
」と記載されています。男女共同参画推進室、
女性研究者共助支援事業本部の設置当時より、歴代の学長のご理解とご指示をいただき、そして教職
員の皆様の協力を得ながら、活動を推進してきた結果であると思います。
平成 24 年 12 月、
「男女共同参画推進室」は「男女共同参画推進機構」に組織の名称があらためら
れ、女性研究者共助支援事業本部は機構の一本部として活動しています。平成 26 年度も、他の組織
や本部と連携しながら、その活動を推進し、改善すべき課題を整理し、大学の持つ資源の中で解決策
を検討し実施しました。本報告書において、実施結果と効果の検証を行っています。共助支援活動、
及び関連する活動の PDCA サイクルの記録です。今後も、多くの方々のご協力やご支援を仰ぎなが
ら、諸課題に対し真摯に向き合い、可能な解決策を提案していきたいと思います。
平成 27 年 3 月 奈良女子大学男女共同参画推進機構 女性研究者共助支援事業本部長 春本晃江
1
目
次
第 1 章 男女共同参画推進機構と女性研究者共助支援事業本部 .......................................................... 4
( 1 - 1 )女性研究者共助支援事業本部の活動の変遷 ................................................................... 4
( 1 - 2 )事業実施年表................................................................................................................... 6
第 2 章 子育て支援システム ...............................................................................................................11
( 2 - 1 )Web システム「ならっこネット」の見直し および 再構築 .........................................11
( 2 - 2 )ならっこネット利用状況 .............................................................................................. 13
( 2 - 3 )育児奨学金制度・育児支援金制度への協力 ................................................................. 20
( 2 - 4 )イベント託児システムの利用状況 ................................................................................ 22
( 2 - 5 )子育て支援システムの整備........................................................................................... 27
( 2 - 6 )ならっこルームの利用状況........................................................................................... 34
( 2 - 7 )子育て支援サポーター養成講座(基礎講座・ブラッシュアップ講座・基礎研修) ... 36
( 2 - 8 )ならっこネット通信・ならっこニュース・サポーター通信........................................ 52
( 2 - 9 )子育て支援システムの保険について ............................................................................ 56
( 2 - 1 0 )子育て支援に係わるハード面の整備 ......................................................................... 60
第 3 章 母性支援相談室、母性支援カウンセラー.............................................................................. 62
( 3 - 1 )今年度の利用状況活動報告........................................................................................... 62
( 3- 2)
「キャリア形成支援システム」への協力....................................................................... 74
( 3 - 3 )母性支援相談室だよりの発行 ....................................................................................... 75
( 3 - 4 )母性に関する体験講座(全 3 回) ................................................................................... 76
第 4 章 教育研究支援員制度 .............................................................................................................. 80
( 4 - 1 )実施経過と総括 ............................................................................................................. 80
( 4 - 2 )実績報告書 .................................................................................................................... 82
第 5 章 意識啓発活動 ......................................................................................................................... 92
( 5- 1)
「知る・学ぶ・伝える 連続講座『心を元気にするヒント~あるがままの自分を生きる
~』
」事業報告 .................................................................................................................................. 92
( 5 - 2 )男女共同参画推進の意識啓発のための講演会(10 月)................................................ 102
( 5 - 3 )新入生向け科目「大学生活入門」での本事業の取り組み紹介 .................................. 104
( 5 - 4 )関西圏の女子大学合同公開シンポジウム-女性の力を今こそ- .............................. 105
( 5 - 5 )女性研究者研究活動支援事業シンポジウム 2014 ........................................................110
( 5 - 6 )他研究機関からの訪問調査..........................................................................................118
第 6 章 広報活動 ............................................................................................................................... 120
( 6 - 1 )ホームページ............................................................................................................... 120
( 6 - 2 )学内外配布資料、ポスター、チラシなど ................................................................... 122
( 6 - 3 )男女共同参画推進機構のリーフレット ...................................................................... 124
第 7 章 学内外の組織との連携 ......................................................................................................... 126
( 7 - 1 )女性研究者ネットワークの構築 ................................................................................. 126
( 7 - 2 )関西圏女子大学との連携 ............................................................................................ 129
第 8 章 事業本部メンバー紹介 ......................................................................................................... 130
2
第9章 総
括 ............................................................................................................................... 131
( 9 - 1 )平成 26 年度総括 ......................................................................................................... 131
( 9 - 2 )男女共同参画推進関連年表・女性教員比率推移 ........................................................ 140
3
第1章
男女共同参画推進機構と女性研究者共助支援事業本部
( 1 - 1 )女性研究者共助支援事業本部の活動の変遷
平成 17 年 11 月、本学に初めて男女共同参画推進室が設置された。男女共同参画推進室では、平成
18 年度科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」に応募することとし、その内容について
検討を重ね、本学独自の女性研究者支援システム案を作成した。平成 18 年 5 月、本学の提案課題「生
涯にわたる女性研究者共助支援システムの構築」が採択され、これに伴って女性研究者共助支援事業
本部が設置された。学長が本部長に就任され、事業統括責任者は男女共同参画推進室長であり、男女
共同参画推進室員を中心にして本部の組織が作られた。提案課題の内容に従って、次のような活動が
開始された。
① 子育て支援 Web システムの構築と運用
② 子育て支援サポーター養成講座の企画と実施
③ 母性支援相談室の設置と運営
④ 教育研究支援員制度の構築と運用
⑤ 男女共同参画推進のための意識啓発活動
⑥ キャリア形成支援(大学院修了生ネットワーク構築と運用、キャリア支援メーリングリスト
運用)
⑦ 若年層を対象とした科学講座の企画と実施
女性研究者共助支援事業本部では、支援を必要とする人、そして場合によってはその支援に従事する
人と直接向き合って、その活動を行う必要がある。このために、数名のコーディネーターを雇用し、
総合研究棟 H 棟 4 階に「女性研究者共助支援事業本部」
(組織と同じ名称)を開設して、コーディネ
ーターの活動の拠点とした。
子育て支援 Web システムは、平成 18 年度は基本部分の実装を終え、平成 20 年 2 月~3 月に試験
運用を行い、同年 4 月より本運用を開始した。この Web システムは、現在では「ならっこネット」
として親しまれ、教職員・学生達に利用されている。平成 21 年 11 月には、本学初めての学内託児施
設「ならっこルーム」も完成し、こどもの預かり支援の場所として活用されている。
本学の子育て支援システムは、近隣に居住の方々や学生達からなる「サポーター」集団によって支
えられている。採択年度の平成 18 年よりサポーター養成講座を開講し、毎年その内容を検討し改善
に努め、現在では、サポーターの養成を目的とした「基礎講座」とサポーターの知識・技量アップを
目的とした「ブラッシュアップ講座」に分けて開講している。本学のサポーターの能力は高く、それ
をイベント託児(学会等において実施される託児)に活用することとして、平成 22 年 9 月から試験
運用を行い、平成 23 年 4 月から本運用を開始した。
平成 18 年 11 月に「母性支援相談室」を保健管理センター内に開設し、相談業務を開始した。その
後、平成 20 年 5 月に H 棟 4 階に移動し、現在、助産師と産婦人科医師が、思春期から更年期までの
こころとからだの健康相談や妊娠・出産・育児・家族に関する相談に応じている。
教育研究支援員制度は、平成 18 年度に規程が整備され、運用が開始された。出産・育児・介護等
に関わる女性教員の教育研究活動の支援のために、主に博士後期課程修了者を支援員として採用する
システムである。本制度を利用された多くの方々が、外部資金獲得等の実績をあげており、本制度が
女性研究者の研究力向上に寄与していることがわかる。
4
平成 18 年度~20 年度の採択期間に、⑤、⑥、⑦の活動も、学内外の組織との連携の下で女性研究
者共助支援事業本部において実施された。
「女性研究者支援モデル育成」採択期間終了後の平成 21 年度以降も、上記の 7 つの活動がすべて
継続実施されることになった。その中で、上記の①~⑤の活動が男女共同参画推進室と女性研究者共
助支援事業本部において引き続き実施されることになった。上記⑥の活動は当時の就職支援室に引き
継がれ、活動内容の拡充が図られることになった。そして、現在では、学部卒業生、大学院在学生•
修了生を対象にしたキャリア形成支援システム(学生生活課において運用)へと拡張され、多くのキ
ャリア情報の配信が行われている。なお、卒業生・修了生が育児や介護で困難に直面した場合には、
このキャリア形成支援システムを介して、本学の母性支援相談室に相談することができるようになっ
ている。上記⑦の活動は、科学普及活動だけでなく、そのような活動を行うネットワークづくりへと
発展し、他の研究機関との連携のもとで実施する大きな活動へと発展している。
平成 21 年度以降、男女共同参画推進室員が女性研究者共助支援事業本部員を兼ね、男女共同参画
推進室と女性研究者共助支援事業本部は、学長直属の二つの組織として存在し、共同して上記の①~
⑤の活動を実施することとなった。
本学は平成 22 年度科学技術振興調整費「女性研究者養成システム改革加速」に採択された。この
採択課題「伝統と改革が創る次世代女性研究者養成拠点」の提案内容を実施するために、平成 22 年
7 月に男女共同参画推進室が改編され、推進室の中に 3 本部(男女共同参画推進本部、女性研究者共
助支援事業本部、女性研究者養成システム改革推進本部)が設置された。更に、文学部、理学部、生
活環境学部に、男女共同参画推進委員会も設置された。男女共同参画推進本部では、各学部の男女共
同参画推進委員会との連携の下で、上記⑤を中心とする活動を実施することになった。そして、女性
研究者共助支援事業本部は、男女共同参画推進室の一本部として①~④の活動とその改善に向けた活
動を実施することになった。女性研究者養成システム改革推進本部では、女性研究者増加プログラム
に従って新たに採用される理工系女性教員と理工農系既在籍女性教員を対象とした研究力向上のた
めの支援を実施することになった。この改編により、対象が異なる支援活動の実施母体が分けられ、
必要な場合には連携を取りながら、3 つの本部が独自にその活動を展開できる体制となった。
平成 23 年度、本学は科学技術人材育成費補助事業「ポストドクター•インターンシップ推進事業」
に応募し採択された。本学の提案では、キャリアパス形成時期が出産•育児期と重なる女性ポストド
クターのキャリアの壁を打開して、高度な女性職業人として社会に貢献できる人材を育成することを
目指している。この事業を実施するための組織「キャリア開発支援本部」が、男女共同参画推進室の
4 番目の本部として設置されることになり、
平成 23 年 10 月に、
男女共同参画推進室は再度改編され、
4 本部体制になった。
平成 23 年 10 月以降、男女共同参画推進室は 4 本部を有する大きな組織となった。このために、平
成 24 年 12 月、組織の名称が「男女共同参画推進機構」に改められたが、男女共同参画推進に係る具
体的業務を実施するために 4 本部体制はそのままであり、現在に至っている。
女性研究者共助支援事業本部の活動は、本報告書だけでなく、ホームページや Newsletter で紹介
されている。それらの活動の大半は、他の組織等との協力のもとで実現されたものである。学内では
主に総務•企画課に、学外では奈良県女性支援課、奈良県教育委員会、奈良市教育委員会、各種支援
団体等に協力をいただいている(組織等の名称は平成 27 年 1 月現在のものである)
。これまでのご協
力に対して感謝を申し上げるとともに、これからもご協力をいただけるように、女性研究者共助支援
事業本部ではその活動の見直しを怠らず、そして自負と責任をもって活動を実施していく。
5
( 1 - 2 )事業実施年表
平成 26 年度の主な活動を下年表にまとめた。
平成26年度(2014年度)女性研究者共助支援事業本部関連年表
(男女共同参画推進活動を含む)
月
4
5
6
日
曜日
活動内容
1
月
2
水
4
金
10
木
11
金
平成 26 年度第 2 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
16
水
第 1 回サポーター養成基礎講座
25
金
平成 26 年度第 3 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
1
木
2
金
平成 26 年度第 4 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
9
金
平成 26 年度第 5 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
12
月
奈良女子大学女性研究者ネットワーク発足
14
水
第 2 回サポーター養成基礎講座
16
金
平成 26 年度第 6 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
23
金
平成 26 年度第 7 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
27
木
第 3 回サポーター養成基礎講座(希望者キャンセルのため中止)
29
木
『ならっこネットニュース vol.37』メルマガ配信
30
金
平成 26 年度第 8 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
3
火
平成 26 年度母性支援相談室開室
『ならっこネット通信 vol.42』メルマガ配信
『ならっこネットニュース vol.36』メルマガ配信
平成 26 年度第 1 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
平成 26 年度第 1 回女性研究者共助支援事業本部(教員)会議開催
平成 26 年度第 1 回子育て支援システム運営委員会
平成 26 年度教育研究支援員 I 期活動開始
教育研究支援員相談体制を整備
第 4 回サポーター養成基礎講座
『女性研究者ネットワーク Newsletter 』メルマガ配信
6
7
8
9
13
金
平成 26 年度第 9 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
19
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
21
土
関西圏の女子大学合同公開シンポジウム「女性の力を今こそ」参加
25
水
サポーター勉強会「 超簡単・楽しいゲーム/ならっこネット制度の改良について検討会 」
27
金
平成 26 年度第 10 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
1
火
11
金
平成 26 年度第 11 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
14
月
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
23
水
『ならっこネットニュース vol.38』メルマガ配信
25
金
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
31
木
『サポーター通信 vol.12』発行
1
金
平成 26 年度第 12 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
7
木
平成 26 年度教育研究支援員Ⅱ期募集開始
8
金
『ならっこネットニュース vol.39』メルマガ配信
12
火
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
18
月
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
20
水
第 5 回サポーター養成基礎講座
22
金
26
火
大阪市立大学からの視察
27
水
子育て支援サポーター基礎研修Ⅰ「小さい子どもの預かり支援」
29
金
平成 26 年度第 14 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
3
水
母性支援相談室だより Vol.4 発行
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
平成 26 年度第 13 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
『ならっこネットニュース vol.40』メルマガ配信
平成 26 年度第 2 回女性研究者共助支援事業本部(教員)会議開催
平成 26 年度第 2 回子育て支援システム運営委員会
7
『ならっこネットニュース vol.41』メルマガ配信
4
木
5
金
平成 26 年度第 15 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
8
月
『ならっこネット通信 vol.43』メルマガ配信
11
木
第 6 回サポーター養成基礎講座
12
金
『ならっこネットニュース vol.42』メルマガ配信
13
土
地域貢献事業 equality 講座 「心を元気にするヒント」第 1 回講座 「〈いのち〉の力」
16
火
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
17
水
第 1 回サポーター養成ブラッシュアップ講座「体験!保育の現場@奈良こども館」
19
金
平成 26 年度第 16 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
26
金
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
27
土
地域貢献事業 equality 講座 「心を元気にするヒント」第 2 回講座 「インディアンの教え」
30
月
平成 26 年度教育研究支援員 I 期活動終了
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
平成 26 年度教育研究支援員Ⅱ期活動開始
10
1
水
『ならっこネットニュース vol.43』メルマガ配信
母性支援相談室だより Vol.5 発行
2
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
8
水
『ならっこネットニュース vol.44』メルマガ配信
10
金
平成 26 年度第 17 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
14
火
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
17
金
第 2 回サポーター養成ブラッシュアップ講座「基礎からの防災」
20
月
第 1 回母性に関する体験講座
21
火
第 7 回サポーター養成基礎講座
24
金
平成 26 年度第 18 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
8
11
12
1
28
火
男女共同参画推進の意識啓発のための講演会「女性のキャリア形成:女子大学の現代的機能」
29
水
第 8 回サポーター養成基礎講座
30
木
4
火
『ならっこネットニュース vol.45』メルマガ配信
7
金
平成 26 年度第 19 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
12
水
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
14
金
平成 26 年度第 20 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
17
月
第 2 回母性に関する体験講座
21
金
26
水
28
金
平成 26 年度第 21 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
1
月
第 3 回母性に関する体験講座
2
火
『ならっこネットニュース vol.46』メルマガ配信
4
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
5
金
平成 26 年度第 22 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
8
月
10
水
『ならっこネットニュース vol.47』メルマガ配信
12
金
平成 26 年度第 23 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
19
金
平成 26 年度第 24 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
9
金
平成 26 年度第 25 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
15
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
16
金
平成 26 年度第 26 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
大阪教育大学からの視察
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
第 3 回サポーター養成ブラッシュアップ講座「伝わる言葉と伝わらない言葉-コンフリクトマネジメ
ントの基礎-」
女性研究者研究活動支援事業シンポジウム2014「女性研究者支援とダイバーシティ・マネジメ
ント」参加
第 4 回サポーター養成ブラッシュアップ講座「子どものいいたいこと!やりたいこと!-特性のあ
る子どもと一緒に楽しむコツ-」
9
2
3
23
金
平成 26 年度第 27 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
27
火
第 9 回サポーター養成基礎講座
29
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
6
金
平成 26 年度第 28 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
13
金
平成 26 年度第 29 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
18
水
第 10 回サポーター養成基礎講座
19
木
『女性研究者ネットワーク Newsletter』メルマガ配信
20
金
子育て支援サポーター基礎研修Ⅰ「小さい子どもの預かり支援」
27
金
平成 26 年度第 30 回女性研究者共助支援事業本部メンバースタッフ会議開催
6
金
第 5 回サポーター養成ブラッシュアップ講座「子どもの心肺蘇生法」
9
月
男女共同参画推進機構シンポジウム「「女性研究者養成システム改革加速」の本学における取
組-総括と課題」(予定)
『サポーター通信 vol.13』発行(予定)
平成 27 年度教育研究支援員Ⅰ期募集開始
27
金
31
月
サポーター勉強会(開催予定)
平成 26 年度教育研究支援員Ⅱ期活動終了
平成 26 年度母性支援相談室閉室
10
第2章
子育て支援システム
( 2 - 1 )Web システム「ならっこネット」の見直し および 再構築
平成 20 年度から運用を開始した Web システム「ならっこネット」は、長年の使用の中でシステム
の不具合点が顕在化してきた。この不具合点の改良だけでなく、Web システムを子育て支援システム
全体の中で更に活用するために、新たな機能追加・セキュリティー強化を行い、再構築に取り組んだ。
まず、現行のシステムによる支援フローの全体の見直しを行った。現行のシステムが行っている支
援フローは、
「預かり支援」
「送迎支援」フローで、おおまかに「利用者の支援依頼→利用者に配属さ
れたサポーターへ支援要請→サポーター立候補→支援サポーター決定→支援開始→支援終了→承認」
までをシステムで管理している。支援終了までのフロー内で問題が発生した場合は「緊急対応」とし
てフローが停止し、女性研究者共助支援事業本部スタッフ(以下「スタッフ」という)が状況確認な
ど介入を行い、それ以降はシステムによる管理は停止する。
このフローが停止する原因の多くは、サポーターが支援を行うためのシステムとのやり取りに使わ
れる煩雑なメールへの返信忘れである。これらを踏まえ、フロー全体を見直した。
Web システム「ならっこネット」の大きな変更点の一つは、今までは「緊急対応」になった場合、
システムによる管理が停止し、スタッフの介入により支援終了となっていたが、新システムでは、ス
タッフの介入後、単なるメールの返信忘れなど、支援続行に問題が無いと判断された場合「緊急対応」
のフローで終了せず、通常の支援フローへ復帰できる機能を追加したことである。支援終了までをで
きるだけシステムによって管理できる様に改良を行った。また、不要と思われるフロー部分を削除し、
メールでの確認回数を減らし、サポーターの負担を軽減させた。更に、共助サポーター全員が支援不
可となった場合、現行システムでは支援をキャンセルしシステム管理外で支援されていたものを、新
システムでは一時的に他のサポーターを配属させて登録し、支援を管理できる機能を追加した。
大きな変更点の二つ目は、システムとサポーター間でやり取りされるメールついても、変更を加え
た点である。今までは「Yes であるなら返信」としていたが、
「Yes」「No」などの状況に応じた返信
先を設定することで、システムに多様性を持たせることとした。特に、これまで「立候補します(Yes)」
だけしかサポーターに返信してもらわず、返信の無い方について「立候補しません(No)」なのか、メ
ールを読まれていないのか、判断に困る場合があったものを、
「立候補します」
「立候補しません」と
サポーターから明確な意思を返信していただくことで、細かい状況を確認できる様にした。その上、
今まで預かり支援において、利用者都合による利用時間延長などで、支援終了時刻を過ぎても「終了」
の返信ができない事により「緊急対応」となるしかなかったフローに、「終了」だけでなく「延長」
のフローを追加し、サポーターが「終了」以外の「延長」返信を行える機能を追加した。サポーター
の不可抗力による「緊急対応」になる状態を減らす様にした。
大きな変更点の三つ目は、子育て支援システムの柱の一つである「イベント託児システム」でも
Web システムを活用できる様にしたことである。現在スタッフが手動で行っているイベント託児の募
集・立候補管理において、託児サポーター募集メール配信と立候補受付、立候補状況管理などが行え
るシステムを新規に開発した。これにより、Web を見ることができる環境であれば、情報を共有する
ことができ、スタッフの勤務時間外などでのサポーターの急なキャンセルにも対応できる様になる。
新システムでは、メールでの返信方法やフローの流れが現行のシステムと大きく変更されているた
め、サポーター・スタッフへの周知と利用方法の確認を徹底する必要がある。
11
大きな変更点の四つ目は、現行システムにはないメールの管理を行える様にしたことである。シス
テムが送受信したメールについて、現行システムでは、システムとサポーター間の送受信状況を把握
する手段がなく、メール不具合などについてもスタッフが解決策を出せず、システムに任せるしかな
かったものを、システムにおけるメール送受信状況を一覧表として表示する機能を追加した。これに
より、システムが送信した内容だけでなく、システムが受信したメールを確認できる様になり、送信
エラーなどのサポーターとのメールのやり取りにおける問題点を解決するだけではなく、システムの
不具合が発生した場合の問題も解決する。極めて重要な機能である。それと共に、現行システムでは、
システムが必要に応じて自動でメールを作成し送信する機能しかなかったが、新システムでは、スタ
ッフがイベント託児の募集などの任意のメールを作成し、サポーターへ送信できる機能も追加した。
更に、新システムでは、固定されたメールアドレスからすべてのメールを送信することにした。現行
のシステムでは、送信されるメールのアドレスが長い上に、支援によって細かく変化するメールアド
レスが用いられており、サポーターの携帯電話の機能が作動してウイルスメールと判断され、メール
が届かないという場合が起きたりしていたが、新システムでは、この問題を解決することができる。
上記以外に、現行システムでは、支援のキャンセルは、利用者が支援登録から支援開始までの間に、
登録した利用者のみキャンセル可能だったものを、スタッフが必要に応じてどの時点でもキャンセル
可能にし、どちらのキャンセルの場合にもサポーターへメッセージを入力できる様にした。これは、
現行のシステムで支援をキャンセルした場合、サポーターに対しシステムから「キャンセルになりま
した」という機械的なメールだけしか届かす、サポーターに対しての感謝の気持ちやキャンセル理由
を伝えたいといった、利用者の方からの要望を受けて追加した機能である。
また、
「ならっこネット」がインターネットを利用した Web システムであるため、万が一の個人情
報の漏えいを避けるために、サーバーシステム本体へのアクセスできる端末を制限し、登録する個人
情報項目を削減した。現行システムと同様に Web 上でのサーバーとユーザとの情報のやり取りを暗
号化する SSL 証明書と、ウイルス対策ソフトを導入した。
それと共に、ハード面での整備として、落雷による雷サージ対策と、突発的に発生した電源断によ
りサーバー本体への被害を防ぐため、UPS(Uninterruptible Power Supply:無停電電源)装置の設置
を行った。これは、停電などで電源入力断になった場合、一定時間接続されている機器に停電するこ
となく電力を供給できるだけではなく、サーバーへ自動でシャットダウン処理を行う機能がある装置
で、電源が原因となる故障を回避することができる。また、サーバーは 2 台のハードディスクを持ち、
交互にアクティブ化しミラーリングすることにより、片方のハードディスクが故障をしてもシステム
を正常に維持できる様になっているが、新システムでは、さらにシステムそのものが保存された予備
の交換用ハードディスクを常備することとした。日々更新されるデータは、自動的にサーバーに接続
された別ハードディスクにバックアップする設定を行うことにより、万が一両系が故障した際も、迅
速にシステムを復旧できる様な環境を整えた。
細かいところでは、現行システムでは管理者として登録しているスタッフ情報は、スタッフが削除
やパスワードを忘れた際の救済処理などが出来ず、長年問題となっていたが、新システムでは、スタ
ッフ情報についても管理できる機能を追加した。
今後は、現用に向けた通常・負荷試験を行い、問題点の修正・改良を行い、新しい Web システム
「ならっこネット」として子育て支援システムにおける役割をさらに担えるようにする。なお、新と
旧のシステムを区別するために、今回構築を行った新 Web システムの名称を「Web ならっこ」とす
ることとした。
12
( 2 - 2 )ならっこネット利用状況
ならっこネット運営 7 年目の今年度、新規利用者・サポーターの登録が 25 名あり、ならっこネッ
トの利用も 66 件あった。順調ではあるが、利用状況を詳しく分析したところ、登録後に利用がない
利用者がかなりおられた。また、全く連絡のつかない利用者が複数おられることが以前から懸案とな
っていた。そこで今年度は利用者の見直しを行い、利用者資格のない方を登録抹消し、形骸化したマ
ッチングの整理を行っている。今回はそれらを反映した数値を報告する。
また今年度は面談担当者が代わり、登録書類の改訂もあり、登録者の個々の状況をいかにスタッフ
間で共有するかを考えた年となった。4 月から徐々に登録や面談に関する書類を整え、データベース
を作成し、10 月からは改訂した登録書類により登録者の詳細な情報を得て、マッチングに反映させ
るようにしている。まだまだ中途であるが、スタッフが代わっても安定して利用者・サポーターを支
えていけるよう、仕組みを作っていかなくてはならない。
1.利用者登録とマッチング
利用者登録に関する履歴
月
利用者登録 (名)
利用者面談(件)
マッチング(件)
他(相談など)
(件)
1
1
2
-
4
1
1
4
-
5
2
2
1
-
6
-
1
2
-
8
2
2
-
-
9
-
-
2
-
10
1
1
1
-
11
1
1
1
-
12
-
-
-
1
1
1
1
-
-
合計
9
10
13
1
平成 25 年度
3
平成 26 年度
13
昨年度報告書で(同年度 2 月まで報告済み)以降、平成 27 年 1 月現在まで、新規の利用者登録は
9 名であった。いずれの方も、教員・PD・学生として本学に新たに来られた方である。今年度は利用
者募集のチラシなどの配布を行っていないが、本学関係者に事業の存在を教えられたり、HP で知っ
て、利用者自身が問い合わせてこられた。いずれも登録同日に面談を行い、支援の希望を伺った。
1 名を除き、新規利用者には 1〜4 名の共助サポーターを配置することとなり、同月か翌月中に共
助サポーター候補とマッチングのための面談を行った。候補者が複数いる場合、なるべく全員で面談
を行うようにセッティングした。共助サポーターどうしも見知っておく方が、何かと風通しがよくな
るからである。サポーターの都合がつかない場合、多忙な利用者には申し訳ないが、サポーターごと
に複数回面談を行った。登録から依頼日まで間がないときは、利用者・担当サポーターに支援初日に
少し早めに来ていただき、スタッフが立ち会って短時間での面談を行った。
26 年 3 月〜27 年 1 月利用者登録された方の内訳
(単位:名)
教員
教員以外職員
学生・PD
その他
3
0
5
1
今年度の特記事項は以下のとおり。

新規登録者のうち PD3 名は本学での在籍期間が 3~6 ヶ月であり、その間のみ利用をされた。
年度内に籍がなくなったことで利用者資格を失われた。

学部学生の利用者登録があった。保育園に入所できなかったため支援が必要であるが、頻繁に利
用することは難しく、試験時等の必須のときに育児奨学金が充てられる範囲で利用された。育児
奨学金はならっこネットでの支援の経費に充てられるが、サポーターの交通費に充てることはで
きない。そのため、共助サポーターはバスの代わりに自転車で来られる方にお願いし、利用者の
負担が減るようにした。初めての育児奨学金の利用案件となった。

大学院生の利用者登録があった。出産直前で、出産後の復学時からの利用を希望された。面談で
話しあった当初の予定通りには進まず、復学の時期に合わせて適切な支援ができるよう、メール
でやり取りをしながら調整を行った。

県外在住で本学への通勤に 1 時間以上かかる方が登録され、自宅での預かりを希望された。遠
方可の共助サポーターを 2 名配置した。マッチング面談では、交通路の確認など詳細を話し合
った。主に子どもの体調不良時や警報発令時を想定しており、奈良在住のサポーターがどんなに
頑張っても駆けつけるまでに 2 時間近くかかる。もう少し安心材料がほしいとのことから利用
者自宅近隣にサポーターを探し、1 名候補がみつかった。スタッフが自宅に伺って基礎講座を実
施した後サポーター登録をお願いする予定になっていたが、直前になり先方の家庭の事情で延期
された。そのまま懸案となっており、他にサポーターを探すことを検討している。

食物アレルギーのある子どもの登録があった。利用者は奈良へ転勤されて間もなく、保育所を探
している段階で、スタッフがアレルギーに対応可能な保育施設などの情報を伝えた。アレルギー
の子どもを見た経験のあるサポーターを配置する予定である。

本学に留学を希望されている方から、ならっこネットの利用についての相談があった。仲介され
た方から、留学生は経済的に厳しい状況に置かれていることから、頻度の高い利用が難しいとの
話があった。長時間の利用や頻度の高い利用の際の経費については、今後の検討課題としたい。
14
今年度新規に登録された子ども 13 名のうち 7 名が 0〜1 歳児であった。うち 2 名は誕生の前後

に利用者登録されており、特に乳児の経験のある方を共助サポーターに配置した。

学生を共助サポーターとして配置した。大学院生が小学生の送迎を担当した。年齢が比較的近い
こともあり、子どもと親密に過ごせたようだ。預かりを希望する利用者の中には、学生に担当し
てもらってよいという方もおられる。ロールモデルとなる先輩に学ぶ機会でもあるので、積極的
に学生を活用したい。
2.サポーター登録
昨年度報告書(同年度 2 月分まで報告済み)以降、平成 27 年 1 月現在まで、新規のサポーター登
録は 16 名であった。サポーターとして登録するにはサポーター養成基礎講座の受講が必要で、講座
終了後登録希望に登録申請をしていただき、サポーター面談を実施する。今年度は全員が基礎講座修
了後そのまま登録面談に臨まれた。
基礎講座はスタッフ 2 名が担当し、受講の様子を記した報告書を作成している。これをもとに審査
を行い、受講態度に問題がなく、登録情報に虚偽の可能性がみられない場合、またサポーター面談で
の態度が良好である場合を合格としている。
サポーター登録に関する履歴
月
基礎講座実施数(回) 基礎講座受講者数(名) サポーター登録者数(名) サポーター面談(件)
平成 25 年度
1
2
2
2
4
1
3
3
4
5
1
3
3
3
6
1
2
2
2
8
1
2
2
2
9
1
1
1
1
10
2
2
2
2
1
1
1
1
1
合計
9
16
16
17
3
平成 26 年度

学生の受講があり、大学院生 3 名、学部生 1 名、科目等履修生 1 名の登録があった。また他大
学の子ども関係の学部に在籍する学生 1 名の登録があった。

男性が 1 名登録された。男性の受講は開講以来 3 人目、登録は 2 人目である。現在登録されて
いる男性はこの方のみである。リタイア後、子ども達ともっと触れ合いたいとの希望でお越しに
なった。男性登録者が他にないと知りがっかりされていたが、
「黒一点にはもう慣れました」そ
15
うである。スタッフとしても
スタッフとしても体力のある男性の参加は歓迎するところであり
するところであり、これを機に、男性
に積極的に声をかけてみることも
をかけてみることも検討したい。
3.現在の登録者数
合計
内訳
利用者
41
教職員
子ども
57
未就園児
9 保育園・幼稚園児 13
サポーター
57
本学学生
7
27
12
学生・PD
他大学学生
その他
2
小学 1-3 年生
20
その他
49
1
男性
4
女性
37
小学 4-6 年生
15
(単位:名)
今年度の利用者数は、新規登録者
新規登録者があったにもかかわらず昨年度報告の 44 名
名より減少している。
その理由は、本学に籍がなくなった
がなくなった後連絡の取れなくなった方の登録抹消を行ったからである
ったからである。特に
学生の場合、卒業・修了などにより
などにより必ず学籍がなくなるが、その際に連絡のないことが
のないことが多い。登録さ
れた住所や電話番号で連絡できない
できない場合、連絡を待つしかなく、ここまで放置されてきた
されてきた。今年度利
用者の見直しを進める中で、卒業
卒業が確認できた方については登録を抹消した。非常勤勤務等
非常勤勤務等で連絡の
ない方については現在在籍状況を
を確認中である。
支援を受ける子どもが全て小学校
小学校を卒業した場合も利用者登録の資格を失う。子どもの卒業時には
申告していただくことになっているが
していただくことになっているが、放置されているケースがあった。登録された
された子どもの現在の
年齢から利用者資格がないと確認
確認された方について、登録を抹消した。中には、
、未登録の下の子ども
がおられる方があり、その場合は
は下の子どもを登録し引き続き利用者として登録
登録されるように勧めて
いる。
今回だいぶ整理されたが、それにはかなりの
それにはかなりの手間と時間を要した。今後は、年度末
年度末・年始始めの登
録内容の確認・更新を確実に行い
い、利用者資格のなくなった方の把握に努める。
4.ならっこネットの利用状況
①今年度の依頼件数
今年度(1 月まで)は 74 件の依頼
依頼が
件
数
14
12
10
8
キャンセル
6
事前報告書
支援が実施された。例年通り、夏季
夏季の
4
Web
利用が少なかった。
2
ーに依頼し事前報告書を提出する
する形で
26 年度の月別依頼件数
16
1月
12月
11月
9月
10月
4月
テムを使わずに利用者が直接サポータ
サポータ
8月
0
利用して行われたが、3 件は Web シス
7月
支援依頼は大部分が Web システムを
6月
によるキャンセル 3 件を除き、66
66 件の
5月
あった(右表参照)
。利用者の自己都合
自己都合
行われた。Web システムを使わなかった
わなかった理由は、システムダウン 1 件、利用者登録
利用者登録の翌日の利用で
Web システムへの登録が間にあわなかったものが
にあわなかったものが 1 件、共助サポーター(利用者専属
利用者専属のサポーター)
が担当できないことがわかっていたため
できないことがわかっていたため最初から代替サポーターに依頼したものが
したものが 1 件となっている。
Web システムによる支援件数の
の中にも、途中から事前報告書に切り替えたケースが
たケースが 8 件あった。内
訳は、共助サポーターの立候補がなかったために
がなかったために代替サポーターに切り替えたものが
えたものが 6 件、共助サポ
ーターの携帯電話がメールを受信
受信できなかったために事前報告書に切り替えたものが
えたものが 2 件である。
Web システムでは、依頼は共助サポーターに
サポーターに対してしか行えないため、共助サポーターが
サポーターが担当できな
い場合はスタッフがサポーターを
はスタッフがサポーターを探す。利用者にとっては、スタッフとメールや
スタッフとメールや電話でやり取りする
ほか、Web システムのキャンセルや
システムのキャンセルや事前報告書の提出など、手間が増えることになる
えることになる。支援まで時間
が少ない場合が多いので、この手間
手間を減らしてくことが課題である。なお、当日
当日に初めて子供と顔を
あわせるサポーターによる支援が
が数件行われたが、事前の連絡がいき届いており
いており、トラブルはなかっ
た。
②例年との比較
ならっこネット運営開始以降
運営開始以降
の年度別の支援件数を比較する
する
と、昨年度が最も少なく、51 件
である(右表参照)。今年度(1
1
350
300
250
200
は少ない。しかし、初期には少数
少数
件 150
数
100
の利用者に利用が集中していた
していた
50
が、最近は 1 利用者の利用件数は
は
0
月現在)では、それに次いで件数
件数
少ないもののより多くの利用者
利用者
キャンセル
支援件数
20
21
が利用するように傾向が変わっ
わっ
てきており、利用の幅が広がっていると
っていると言える。
22
23 24
年度
25
26
年度別依頼件数
③データで見る今年度の支援内容
支援内容(章末の資料参照)
利用者内訳をみると、学生・PD
PD の利用が増え、教員・事務員の利用が減っている
っている。初期には教職
員の利用が多かったが、その子どもたちが
どもたちが大きくなり、頻繁な利用が不要になっていることを
になっていることを反映し
ていると思われる。逆に、学生・PD
PD には周知が進み、奨学金制度も後押しして、
、利用が伸びている。
支援された子どもは、保育園に
に入所していない 0-1 歳児が最も多く、ならっこルームで
ならっこルームで数時間預
けられるケースが多かった。小学生
小学生では送迎が中心で、学童保育から習い事先への
への送迎、学童保育へ
お迎えに行きならっこルームで預
預かり、といったケースがあった。
支援曜日はほとんどが平日である
である。今年度は特に週末の利用が少なかった。時間帯
時間帯は 9-18 時が最
多。18 時以降の時間帯は送迎後の
の預かりが多かった。時間数は 2-3 時間程度が
が最も多く、最長で 6
時間程度であった。
午前 9 時からの
からの 1 限目の講義に出席するため、
8 時台からの預
預かりが数件あった。
支援内容は預かり、預かり+送迎
送迎が 9 割近くを占めた。ほとんどがならっこルームでの
ほとんどがならっこルームでの預かりで、
サポーター自宅での預かりが 1 件
件あった。このケースでは、子どもが 1 歳の時から
から長らく共助サポー
ターとして担当してくださっているサポーターが
してくださっているサポーターが、担当している子どもが小学生
小学生になったことから、
子どもへの配慮のない自宅でも大丈夫
大丈夫だろうということで、自宅預かりを実施して
して下さった。ならっ
17
こルームまで来るより自宅周辺で預かっていただく方が負担感が少ない場合があるので、自宅での預
かり体制を整え、必要に応じて選べるようにしておきたい。
今年度の送迎はほとんどが近隣で行われたが、電車で 1 時間ほどかかる習い事先への送迎依頼もあ
った。送り届けたらとんぼ返りで戻ってくることからサポーターには時間の取られる支援であるが、
学生が快く引き受けて下さった。
④トラブル
支援中に Web システムで「緊急対応」となった案件が 12 あった。いずれの「緊急対応」も事件・
事故ではなかった。うち 8 件がサポーターの返信忘れで、web システムからスタッフに確認を促すメ
ールが届き、スタッフが電話で安否を確認した。Web システムが支援活動の遂行をチェックしている
が、並行してスタッフも Web システムをチェックしているので、その他の異状に対しても迅速に対
応できた。
今年度は、サポーターが Web システムからのメールを受け取れないケースが特に多く、スタッフ
が振り回された。ならっこネットでの依頼や、共助本部からサポーターへの連絡は基本的にメールで
行う。そのため、共助本部のアドレスも含めてサポーター登録時にメールが相互に受信できることを
確認しているが、登録後にトラブルが発生している。ならっこネットでの立候補が全くないので、電
話で事情を確認したらメールが届いていなかった、ということがしばしばあった。
原因を追及すると、セキュリティを強化したときに受信拒否にしてしまったケースや、いつの間に
か迷惑メールに分類されていたケースがあった。その度にスタッフが電話で確認し、受信可能になる
まで対応した。サポーターに何度も携帯電話ショップに通っていただいて受信可能になることもあれ
ば、原因不明でどうしても受信できないケースもあった。後者の場合、スマートフォンであったので、
G-mail を用いてメールを受け取れるように対応した。
Web システムからのメールの受信不能に関連して、トラブルが 1 件発生した。ある支援依頼が Web
システムで行われた際、担当サポーターの携帯電話が Web からのメールをどうしても受信できなか
った。そこで、Web システムでの依頼をやめて、事前報告書に切り替えた。こうした場合の通常の手
続きとして利用者に Web システムのキャンセルを行ってもらったところ、キャンセルを知らせる
Web システムのメールがなぜか当該サポーターに届いてしまった。サポーターは支援がキャンセルに
なったと誤解し、準備をしていなかった。当日の朝、利用者が念のためサポーターに電話をして発覚、
雨の中サポーターが自転車を飛ばしてくださってなんとか支援が実施できた。
スタッフは共助本部が閉室している時間帯も自宅から Web システムをチェックすることができ、
なにかあれば携帯電話で連絡が取れるようにしている。が、このようなケースはスタッフには把握し
ようがなく、当日の朝、利用者からの連絡で初めて知ることとなった。Web システムからのメールの
受信がなぜ突然可能になったのかわからないが、大変悪いタイミングで受信可になることが実際に起
こった。対策の立てようがないケースであるが、Web システムの仕組みを関係者に周知して、不審な
場合は必ず共助本部に確認してもらうことを徹底していくことで防いでいくしかないと思われる。
18
26 年度(1 月まで)の支援の詳細
利用者内訳 (延べ)(名)
支援された子ども内訳(延べ)(名)
教員
事務職員
学生・PD 等
その他
未就園児
6
0
59
1
46
支援日
(回)
土曜
日祝
64
1
1
送迎のみ
9
小学校
小学校
幼稚園児
1~3 年生
4~6 年生
2
13
6
支援時間数
支援時間帯(複数回答)(回)
平日
支援内容
保育園
7:30
-9:00
5
9:00
18:00
-18:00 -22:00
61
(回)
2 時間未満
13
預かり
送迎
ならっこ
のみ
+預かり
ルーム
48
9
56
緊急対応
ならっこル
ーム以外の
学内
0
(回)
返信忘れ
サポーターなし
キャンセル
その他
8
2
1
1
19
2 時間~
5 時間未満
23
預かり場所内訳
(回)
5 時間以上
36
7
外出
他
0
0
(回)
利用者
サポーター
自宅
自宅
0
1
( 2 - 3 )育児奨学金制度・育児支援金制度への協力
平成 23 年度に採択された、科学技術人材育成費補助事業「ポストドクター・インターンシップ推
進事業」に基づいて、ポストドクター対象の支援事業の一環として、育児支援金制度が開始された。
育児中の本学のポストドクター達が、自分のキャリアパス形成への意欲を持続できるような環境の整
備を目的として実施されるものである。
「ポストドクター・インターンシップ推進事業」に参加する
ポストドクターで、子育て支援 Web システム「ならっこネット」を利用した場合に、その利用経費
への支援が行われる。申請手続きにあたっては、キャリア開発支援本部において手続きを行う必要が
ある。女性研究者共助支援事業本部では、実際に「ならっこネット」を利用して子どもの送迎や預か
り支援が実施されたことの証明を行い、ポストドクター達の育児支援金申請の手伝いを行う。
上記のポストドクター対象の育児支援金制度制定から 1 年遅れて、平成 24 年度より学生・院生を対
象とした育児奨学金制度が開始された。この育児奨学金制度でも、学生・院生が子育て支援 Web シ
ステム「ならっこネット」を利用した場合に、その利用経費への支援が行われる。そして、女性研究
者共助支援事業本部は、
「ならっこネット」を利用して子どもの送迎や預かり支援が実施されたこと
の証明を行い、学生・院生の育児奨学金申請の手伝いを行う。これらのことは「ならっこネット」が
本学関係者の子育て支援システムとして重要な役割を果たしていることを示しており、女性研究者共
助支援事業本部の役割が益々重要になっていることを示している。
利用実績は、ポストドクター育児支援金制度については、平成 24 年度は 0 名、平成 25 年度は 2 名、
平成 26 年度は 3 名である。育児奨学金制度については、平成 25 年度までは 0 名、平成 26 年度は 1
名である。
これらの育児支援金制度・育児奨学金制度は、学内規程のもとで実施されている。育児奨学金規程
には、規程制定以来、申請資格として次のように記載されていた。
第2条 育児奨学金に申請できる者は、本学の正規学生で本学子育て支援Webシステム「ならっ
こネット」に登録を許可され,別表1の対象期間に「ならっこネット」の利用がある者とし,次
の各号の一に該当する場合は対象外とする。
一 休日・休業期間及び休学中の利用である場合
二 利用者の子が小学4年生以上である場合
三 標準修業年限(長期履修生は許可された年限)を超える者である場合
本年度、制度利用者数の増加を図るために、規程の改正が検討され、平成27年度より第2条の三が削
除されることになった(
「奈良女子大学職員掲示板システム 2015/02/26 13:47」)。これにより、来年
度以降、育児奨学金制度利用者が増加することを期待したい。
○奈良女子大学ポストドクター育児支援金規程(平成 24 年2月 15 日規程第 54 号)

改正 平成 24 年4月 18 日規程第8号(大学院人間文化研究科の講義科目名の変更に伴う改正)

改正 平成 25 年6月 12 日規程第 15 号(男女共同参画推進室から男女共同参画推進機構へ
の名称変更に伴う改正)
○奈良女子大学育児奨学金規程(平成 23 年 12 月 21 日規程第 41 号)
20

改正 平成 26 年1月 22 日規程第 76 号(学生生活支援室から学生支援室への名称変更に伴う
改正)

「奈良女子大学職員掲示板システム 2015/02/26 13:47」
奈良女子大学育児奨学金規程の一部改正(規程第 47 号)
改正理由:申請資格要件を緩和して申請者の増加・制度の向上を図るため
改正内容:第2条の三の削除。平成27年4月1日から施行。
奈良女子大学育児奨学金規程
(略)
(申請資格)
第2条 育児奨学金に申請できる者は、本学の正規学生で本学子育て支援Webシステム「ならっこ
ネット」に登録を許可され,別表1の対象期間に「ならっこネット」の利用がある者とし,次の各号
の一に該当する場合は対象外とする。
一 休日・休業期間及び休学中の利用である場合
二 利用者の子が小学4年生以上である場合
三 (削除)
(略)
附 則
この規程は,平成27 年4月1日から施行する。
21
( 2 - 4 )イベント託児システムの
システムの利用状況
イベント託児システムは運用を
を始めてから 4 年半を超え、安定したシステムとなり
したシステムとなり、今年度は特に
変更点はない。
附属学校園における集団託児の状況を合わせて報告
報告する。
イベント託児の利用状況と附属学校園
1.イベント託児の実施状況
月)と、昨年度の報告書では 1 月までだった 25 年度分について年度
平成 26 年度(4 月~27 年 1 月
末までの実績を合わせて報告する
する。
依頼件数
依頼件数は、25 年度が 36 件、
<依頼状況>
(単位:件)
26 年度は
は 1 月末時点で 35 件と
未実施
30 件を超
超えている。そのうち
(2 月・3 月)
実施した
した件数は 25 年度が 32
<依頼件数>
依頼
実施
キャンセ
キャンセル
25 年度
36
32
4
26 年度
35
27
5
件、26 年度
年度が 27 件となった。
今年度
今年度の相談案件として、来
3
年度の 9 月に 3 日に渡って行
※26 年度は 1 月末まで
われるイベントでの
われるイベントでの託児相談
<26 年度 相談件数>
があった
があった。9 月に学内の女性研
((単位:件)
究者宛てに
てに配信されている『女
児システムの問い合わせ
1
具体的なイベントについての相談
相談
1
申込み前の段階まで進んだ相談
相談
2
システムについてのメールマ
※1 月末まで
ガジンが配信されたことによ
ガジンが
性研究者ネットワーク
Newsletter』で当本部の託児
Newsletter
りイベント
イベント託児を知って頂い
<実施月ごとの依頼件数>
1
附属学校園
1
その他イベント
3
じ時期に
に行われることも多い
25年度
26年度
25年度
26年度
25年度
26年度
1
25年度
26年度
11
0
11
25年度
26年度
00
11
2
4月
5月
6月
7月
8月
9月 10月 11月 12月 1月
ことから、
ことから 1 年前という早い段
階で相談
相談をして頂けたのだろ
1
1
25年度
26年度
11
22
2
う。また
また、それとは逆に、個別
3
1
25年度
26年度
22
1
0
25年度
26年度
00
2
25年度
26年度
5
1
25年度
26年度
2
25年度
26年度
2
25年度
26年度
4
ける事が
が多いが、学術的なイベ
ントは準備期間
準備期間も長く、毎年同
11
1
0
よそ 1 か月前に託児依頼を受
か
5
3
4
22
たようだ。
たようだ 集団託児では、おお
2月 3月
託児は 1 日前(平日の場合)のキ
ャンセルまでキャンセル
ャンセルまでキャンセル料が
発生しないことから
しないことから、仮申込み
をされたものの
をされたものの託児希望がな
く、キャンセルになることが
キャンセルになることが多
い。申込不要のイベントでは、参加者
参加者の人数や年齢構成などが把握しにくく、無料
無料のイベントにも関
わらず託児料がサポーターの交通費
交通費を合わせ 2000 円近く(700 円×2 時間+往復交通費
往復交通費)を利用者が負
22
担することになり、主催者に問い合わせがあっても申込に至らないケースがあるようだ。その他、京
都に留学中の夫と共に来日中のアフガニスタン人が、本学に進学したい意向で本学にいる間だけ個別
託児を利用し 1 歳の子どもを預かって欲しいとの相談があった。今年度はその準備のため本学に来ら
れるとのことで、聴講の際に、学外者だが仲介して頂いている本学教授と共に利用することとして、
夫と子どもがならっこルームを利用された。来年度以降については進学が決まった段階で具体的に進
めていくことになる。
<イベントの内訳>
学術的
毎年の傾向として、年度初めと
(単位:件)
非学術的
学内向け
一般向け 附属学校園
年度末は学内で開催されるイ
入試
25 年度
9
2
5
20
0
26 年度
11
5
2
16
1
ベントが少なく、育友会総会や
クラス懇談会が開かれる附属
学校園の託児が多くを占めて
いる。
今年度のイベントの利用内
<実施曜日>
(単位:件)
訳として、集団託児が定着した
附属学校園が最も多いが、学術
平日
土曜日
日・祝日
25 年度
26
9
1
26 年度
22
8
5
的・非学術的学内向けイベント
での依頼件数が増えた。学会や
シンポジウムなどの学術的イ
ベントは予め参加者が分かっ
ており、演者として来学される学外者の子どもを預かって欲しいという希望も多いので少人数の集団
託児や個別託児を実施することが多い。同じ学会で 2 人の学外者より託児を依頼されたケースでは、
一人は学会前日の打ち合わせの間と 2 日に渡る学会日の 3 日を希望、もう一人は学会日の 2 日を希望
された。また、大学院入学試験時の託児の依頼も今年度初めて受けた。
<実施内容>
<規模>
<時間>
(単位:件)
(単位:件)
1~3 人
4~9 人
10 人以上
25 年度
9
9
14
25 年度
2
27
3
26 年度
9
7
11
26 年度
4
17
6
<託児室>
2.5 時間未満 2.5-6 時間
(単位:件)
ならっこルーム
学内
(ならっこルーム以外)
学外
25 年度
11
1
20
26 年度
11
0
16
23
6 時間以上
<動員数>
(単位:名)
子ども
1歳
1-2 歳
未満
未満
全体
5
(附属学校園)
小学
小学
利用者
サポー
ター
2-4 歳
5-6 歳
37
32
7
473
117
671
632
134
0
26
26
0
469
115
636
603
110
全体
1
19
31
5
440
106
602
564
107
(附属学校園)
0
12
18
0
437
104
571
540
85
1-3 年生 4-6 年生
合計
25 年度
26 年度
※以上、26 年度分については平成 27 年 1 月末までの集計
実施した託児の内容についてまとめておく。託児の規模は個別託児などの 1 人~3 人、集団託児の
4 人~9 人、附属小学校での 10 人以上で大きな偏りはなかった。時間を見るとシンポジウムや大学院
入学試験など終日のイベントでほぼ 1 日預かる個別託児があったので、6 時間以上が 6 件と増えた。
2 人の学外者より学会開催時の個別託児を依頼されたケースでは、3 日間の託児を希望された利用
者の子どもが中耳炎の病後であったため、大事をとって前日の託児はキャンセルされたが、2 人とも
学会日の 2 日間託児を実施した。それぞれ 2 日とも同じサポーターが預かった方が子どもは慣れ安心
するのだろうが、1 日 6 時間を超える託児のため、別のサポーターにお願いすることにした。
また、入試は毎年年度初めから日が決まっている為、教職員向けに託児の案内を出してはいるが預
け先を確保されているのかこれまで依頼がなかった。しかし今年は大学院入学試験の際に依頼があっ
た。9:00~18:30 という長時間の予定だったため、利用者より子どもの好きな遊びや 1 日の過ごし方
などを細かくメモにして頂いていたが、実際に顔を合せてからだと目を通す時間がなく、利用者の要
望通りにはいかなかったようだ。しかし、大学近くの奈良公園へ散歩に行ったり退屈しないように工
夫して過ごしてもらえたようだ。
一般向けのイベントでは、昨年度実施した集団託児で《当日の託児受付の際に会場で受付け⇒託児
室へ子どもを連れて行く⇒会場へ戻る》という往復が煩わしい(真夏の炎天下だったこともあり)と
の意見があったため、託児の詳細を案内する文書を事前に送る仕組みを整え、託児室へ直接来て頂き
受付を済ませ子どもを預けてから会場へ行ってもらうようにした。これにより、スムーズな運営が出
来たと主催者から喜びの声を頂けた。イベント託児では、託児室と会場の移動やサポーターとの引き
渡し等の時間を考慮して前後 30 分をプラスした時間を託児時間としていただいている。講演会は
14:00~16:30 で 2 時間半だが、託児時間が 13:30~17:00 となるものがあり、おやつなしで実施する
予定であった集団託児では、1 歳から 4 歳と比較的小さな子どもが多くお腹が減ってぐずってきたの
で、利用者に確認の上、主催者の判断でおやつの時間を設けることとした。幸い皆がおやつを持って
来ていたので実施することが出来た。しかし、サポーターが気付く前に他の子どもへおやつを渡して
しまったということがあった。おやつをもらった子どもはアレルギーがなく、預かり時にアレルギー
がないことをサポーターが確認しており、もらった子どもも最後まで元気に遊んで、お迎えに来られ
た利用者も「大丈夫です」と言って頂いたため大事には至らなかった。この件から、小さなお弁当箱
を託児室に用意し、一人ずつおやつを出すようにルールを作り、貼紙をした。
24
託児室の表で「学外」となっているのは 25 年 26 年ともに附属学校園である。学内でのイベントの
際はならっこルームを利用される。中耳炎の病後で預かった個別託児のケースでは、もう 1 人の子ど
もとともに過ごすことになるので、別室を用意した。ならっこルームの近くで用意をしたかったのだ
が、直前だったため予約が既に入っていた。しかし主催者がコラボレーションセンター内に研究室を
持っておられたため、部屋の隅にウレタンマットを敷かせていただき、12 月なので暖房も予め入れ
ていただいて具合が悪くなった時に横になれるように用意をした。幸い元気に過ごしてもらえたため、
利用することはなかった。
託児の動員数は、両年ともほぼ同数である。利用者数は、今年度分は 1 月までしか集計していない
が 2 月 3 月実施予定分を合わせると 600 人を超す予定で、サポーターは 100 人を越した。学内イベ
ントでは小学生未満の子どもを預かることが多かった。
今年度も 500 人を超える親子に利用され、イベント託児は安定したシステムとなっていると言える。
サポーターには毎回の託児で報告書の記入をお願いしている。主に活動内容や連絡事項を記入して頂
くのだが、子どもの様子が詳しく記入されているため、「丁寧な支援をしてもらえて感謝している」
との声もあり、利用者だけでなく主催者にも喜んでいただけている。
2.附属学校園における集団託児
イベント託児の一環としての附属小学校と附属幼稚園における集団託児は、平成 24 年度から本格
的に運用され、教員はもとより保護者にも定着化し、平成 26 年度も多数の利用があった。
附属幼稚園では 1 歳以上の弟妹を預かるが、1 歳~2 歳児が多く、母親から離れて過ごすという経験
が少ない子どもがほとんどで、
「泣きっぱなしだった」という子どももしばしばである。ただ、毎回
同じ方にお願いすることはないが何度も参加して下さるサポーターが多いため、1 年を通し子供たち
もサポーターと慣れ親しみ、だんだんママ離れが出来ているようだ。3 時間近くの長時間ということ
と低年齢児が多いので、サポーターとほぼマンツーマンでの託児となっている。
クラス懇談会の際に託児利用があるが、年少・年中組は 1 日目、年長組を 2 日目というように 2 日
に分けて行われることが多く、子どもは多くて 6 人くらいになることが多い。今年度は同じ日に全学
年のクラス懇談会が行われた日があった。各保育室と遊戯室が使用されているため、他の部屋を利用
することができなかったこともあり、その日の子ども数は 13 人・サポーターが 11 人と合わせて 24
人が託児室となっている部屋に入ることになった。幼稚園からも前もって少し外に出て遊んでもいい
と許可を得ていたため、12 月で少し寒くなってきていたが、気分転換をしながら過ごすことが出来
たようだ。
小学校では、2 部屋に分かれて託児をすることが多く、学年ごとに部屋割りをされていた。しかし、
宿題が終わった子どもがはしゃいだり、忘れ物を教室へ取りに行くたびにサポーターが付いて行くた
め、託児室のサポートが手薄になるなど、問題点がいくつかあった。小学校側と相談し、同学年の横
割りではなく、クラスごとの縦割り(例:①1 年星・2 年星・3 年星組、②1 年月・2 年月・3 年月)
に変えてみたところ、はしゃぐ子どもが減ったため、この改善策は有効であった。また、忘れ物に関
しては、保護者が迎えに来てから保護者と共に取りに行ってもらうようにした。
80 人を越し 3 部屋に分かれる託児もあった。70 人以上の託児が 5 回もあり、利用者である保護者
にも安心感や満足度が高まってきている事を表しているのだろう。
25
小学校からの下校時や下校後に子どもが一人で遊んでいる時に殺害される事件が相次いで報道さ
れており、子どもを一人で帰らせる事に不安を抱く保護者は多いはずである。特に低学年の子どもの
利用が多いのは、そういった背景もあるのだろう。
年々増える託児数だが、募集の度に毎回多くのサポーターに立候補をして頂け、幼稚園・小学校側
から依頼されるサポーター数を減らすことなく確保出来ている。このことも、幼小の教員・保護者へ
の安心感につながっている。1 日だけの集団託児と異なり何度も利用する保護者が多いため、子ども
の成長する姿も見られることもサポーターのモチベーション UP につながるのかもしれない。学生サ
ポーターも立候補してくれ、このシステムを支えてくれている。
3.イベント託児システム利用者の声
イベント託児を利用された方の声の掲載する。
●集団託児主催者
スタッフの方には、託児利用の申込みが多い時にも少ない時にも、どのような状況でも柔軟に対応
していただいて、安心できました。本当に有難かったです。託児サポーターさんも、誠実に愛情深く
お子さんに接して下さり、感謝しています。利用された保護者の方からも、「託児サービスがあった
から講座に参加することが出来て嬉しかった」というような感謝と喜びの声を沢山いただきました。
●個別託児主催者
申込みが全くなくてキャンセルになった時にも、前日までキャンセルの対応をしてもらえる事を聞
いていたので、助かりました。
●附属学校園の利用者
懇談会がある時に利用しています。近くに両親が住んでいても、幼稚園が始まる前に預けてから登
園し、また迎えに行くのは大変ですが、一緒に幼稚園に連れて行き、懇談終了と同時に下の子を引き
とれるのは、子どもと離れる時間も少なく、色々な面で負担が少なく有りがたいです。また、サポー
ターの方に段々慣れて、預ける時は不安そうな顔でも迎えに行くときには笑顔になっています。お絵
描きや簡単な工作もしてもらっているようで、新聞のカバンをもらいました。
26
( 2 - 5 )子育て支援システムの整備
今年度見直しに努めた子育て支援システムの問題点とその解決について報告する。
1. 子育て支援システムの問題点
1-1.情報管理
「ならっこネット」
「イベント託児システム」を含む「子育て支援システム」は、平成 20 年度から
運用を開始し、7 年目を迎えている。その間、登録した利用者・サポーター数は 200 名近く、その管
理を適切に行うことが重要となってきた。特に子どもは所属学校園や放課後の過ごし方が変わること
が多く、登録内容の更新が頻繁にあり、細かな管理が必要である。スタッフがその都度、表作成ソフ
トを駆使して管理表をいくつも作成して対応してきた。が、いくつもファイルを作成すると、ファイ
ル間で齟齬が生じる、個人情報の管理が難しい、更新の履歴をたどることが難しい等、問題が出てき
た。
そこで今年度は登録者情報に関するデータベースを作成し、情報を一元的に管理するシステムを構
築することにした。旧来は Web システム・ならっこネットの登録情報を基本情報として扱ってきた
が、今後はデータベースを基本情報とし、そこから適宜必要な情報をならっこネットに移すこととす
る。統計処理などに必要な新規項目も、今後必要に応じてデータベース上に作成していく。
データベース作成に伴い、これまでの登録書類では必要な情報が十分得られないことから、改訂を
行うこととなった。
1-2.登録者見直し
ならっこネットの依頼件数は、25 年度までの 6 年間で 1035 件(うちキャンセルが 138 件)に達し
たことを、昨年度の報告書で報告した。その後、利用者各々の利用状況を調べたところ、全く利用の
ない利用者も多いことが判明した。長い方では 6 年間利用がなく、共助サポーターとも疎遠になって
いた。こうなると共助サポーターへ依頼がしづらくなり、結果的にならっこネットの利用を敬遠する
ことになると想像される。サポーターにとっても、全く依頼のない利用者とマッチングされていると
他の方とマッチングが進められず、不都合である。
これまで特に要望がなければマッチングの見直しを行っておらず、改めて確認すると多くのマッチ
ングが膠着状態になっていた。ちょうどデータベース作成を検討しているときであり、合わせて全利
用者の登録内容・支援依頼内容を確認し、内容の合わなくなった方には変更を勧めていくことにした。
変更に際しては、単に共助サポーターの配置を変えるだけでは不十分で、利用頻度の低い利用者が
使いやすい仕組みがなければならない。本システムでは現在、顔なじみのサポーターの方がより安心
であることから、専任である共助サポーターを配置している。配置にあたっては 2-4 名程度のサポ
ーターと面談を行い、両者が了解したらマッチング成立、その後両者がならっこネットに登録されて
初めて依頼できるという手順を踏む。このシステムは利用頻度が高い利用者には安心できるよい仕組
みであるが、利用頻度が低い利用者にとっては必ずしも利用しやすいものではない。イベント託児シ
ステムで実施している個別託児では 1 件ごとにサポーターが異なるが、問題なく運用されている。こ
れに倣い、本システムにも共助サポーターを配置せずに一度限りの臨時の依頼を受けられる仕組みを
設けることにした。
「
「臨時の預かり・送迎の依頼」(仮称)では Web システム・ならっこネットを用いず、利用者が共
27
助本部に直接申し込み、共助本部が全サポーターに立候補を呼びかけて、担当サポーターを決定する。
実施は年度末か、来年度になる予定である。
1-3.緊急サポートのできるサポーターの養成
本システムでは体調が悪い子どもへの取り決めは特にない。共助サポーターによる送迎や預かりは
健康な子どもを想定したものである。また、警報発令時など緊急で一斉に生じる支援について、運用
開始時はできるだけ利用しないように利用者に呼びかけてきた。それでも利用者の要望があり、現在
は希望のある利用者に対して共助サポーターにスキルや経験がある場合に限り、面談を実施したうえ
で、体調不要時の預かりや警報発令時のお迎えの依頼を設定している。
育児と仕事の両立に奮闘する方にとって当然ながらこうした緊急サポートへのニーズは高く、緊急
サポートネットワーク事業を展開している自治体も多い。本事業でもサポーターの資質によって実施
したりしなかったりといった不安定な対応ではなく、どの利用者にも使えるような仕組みを整えるこ
とが必要である。緊急サポートの制度を検討するとともに、これらに対応できるサポーターの養成も
検討を始めた。
また、本事業の最近の傾向として、0-1 歳児の支援を求められることが増えてきた。おむつ交換
やミルク・離乳食を与える、睡眠時の管理などサポーターにスキルが求められる。現在の登録サポー
ターには経験者が限られており、こちらのスキルアップも急務である。
以上のことから、サポーターのスキルアップがこれまで以上に必要となってきた。これまではサポ
ーターに対してブラッシュアップ講座への自主的な参加を求めるに留めてきたが、これでは不十分で
ある。必修のスキルや知識を習得するための「研修」を設定し、スキルアップを認定する制度「サポ
ーター★制度」を設定することとした。
2.問題の解決
2-1.データベースの導入
子育て支援システムは平成 20 年度から運用を開始し、利用者やサポーター情報の管理はエクセル
データで行っていた。サポーターだけでも氏名や住所等の基本情報、サポーター証の更新履歴、イベ
ント託児の支援立候補履歴・・・と別々のファイルに保存していたため、新規登録や辞退申し出があ
る度にいくつものエクセルファイルを更新しなければならず、データの記入漏れがあったり、履歴を
検索するにも不便なことが多かった。そこで複数に分かれていたエクセルデータをアクセスに移行し、
利用者台帳、サポーター台帳を作成した。
2-2.登録書類の改訂
利用者およびサポーターの登録に関する全書類を改訂した。改訂のポイントは以下の通り。新規書
類は 26 年 10 月より使用している。新規の登録申請書および支援内容作成書・確認書の縮小版を章末
に掲載する。

旧来の書類では、登録申請と登録情報を同一の書類で扱ってきたため、管理がしにくかった。
改訂では、登録書類(同意事項への同意の署名を含む)(様式 1-1、2)とプロフィールを別に
作成した。

利用者について:プロフィールには記入欄を増やし、登録情報の更新に対応できるようにした。
28
また子どもにもプロフィールを作成し、登録状況の更新に対応できるようにした。その他面談等
のメモも含め、利用者毎に全書類をファイルして管理する形式を調えた。

サポーターについて:プロフィールが登録情報の更新に対応できるようにし、また活動状況記
録も作成。紙ベースでも各サポーターの状況が確認できるようにし、共助サポーター選出時に参
照しやすくした。

特別な利用者の登録:学外者であるが研究や業務で本学に来学する方で子育て支援の必要な方
は、本部長が容認することにより子育て支援システムへの登録が可能になる。そのための書式を
この度の改正に合わせて改変した(様式 1-2)
。また、本学を離れた後に子育て支援がなくなる
ことで研究活動に支障をきたす恐れがあるとの相談があり、こうしたケースに対しても本部長の
容認により子育て支援システムへの登録が可能となるよう、
書式を新たに作成した
(様式 1-3)
。

面談時の書類:利用者面談において、円滑にもれなく支援内容を確認できるよう書式を作成し
た(様式 6)
。

マッチング時の書類:利用者とサポーターのマッチング面談において、円滑に洩れなく支援内
容を確認できるよう書式を作成した(様式 7)。
2-3.利用者の見直し
データベース作成の情報を得るため、また支援依頼内容の確認・変更のため、26 年 10 月以前に登
録した利用者各々に対して書類を作成した。利用者に確認・修正の後返送してもらったものを、基本
情報としてデータベースに登録する。また、記入情報を元に支援内容を見直し、共助サポーターの変
更・取りやめや新規依頼内容の作成を行う。27 年 2 月現在、利用者に関係書類を送付する段階まで
進んでいる。
2-4.サポーター★制度
今年度は基本的な研修(小さい子どもの預かり支援)を設定し、この受講を必須とした(研修の内
容は、
(2―7)子育て支援サポーター養成講座の項参照)
。研修の内容についても、今後の検討が必要
である。来年度は緊急サポートの制度を整えつつ、病中病後児対応の研修を予定している。今年度は
座学のみになったが、今後は実技や見学なども検討していきたい。
サポーターに受講を周知しただけでは、趣旨を理解した積極的な参加は望めない。受講を確認し、
スキルアップを認定する制度として、サポーター★制度を設けることとした。この制度では、登録時
のサポーターを「★サポーター」と呼び、ベテランサポーターと一緒に行う集団託児への参加を可能
とする。研修の受講者(または同程度の実力のあるもの)を「★★サポーター」とし、マンツーマン
での子育て支援を可能とする。さらに病児やベビーケアを担当できる者を「★★★サポーター」とす
るが、研修などがまだ整っていないので、今年度は研修の受講を勧めて★★サポーターを増やすこと
を目的とするにとどめた。
サポーターには 6 月に実施した勉強会で、★制度の概要を伝え、意見を集めた。特に反対する意見
はなかった。また 8 月に発行した会誌『サポーター通信 vol.12』でも詳細を説明した(下に『サポー
ター通信』より図を転載)
。基礎講座受講者に対しても説明を行っており、制度の浸透を図っている。
サポーターにとっても★制度により支援可能な対象が把握でき、モチベーションをあげる一助にな
るかと思われる。支援や養成講座の様子を観察していると、サポーターどうしで遠慮があり譲り合い
をする場面がよくみられる。ベテランに対しては、初心者にアドバイスしたり、率先して行動しても
29
らえたらと思うことも少なくない。★の数を互いに確認することで、積極的に助け合える行動につな
がることを期待したい。
30
利用者・サポーターの登録申請書(様式 1-1、1-2、1-3、2)
31
支援内容作成書(様式 6)
32
支援内容確認書(様式 7)
(抜粋)
33
( 2 - 6 )ならっこルームの利用状況
利用状況
ならっこルームは 21 年度の開設以来
開設以来、子育て支援システムの活動拠点として
として利用されている。本
年度 1 月現在の利用状況と、昨年度報告書
昨年度報告書では同年度 1 月までの状況しか報告
報告されていないため、2
-3 月分を含めた 25 年度分も合わせて
わせて報告する。
月までの利用件数
右に示すように、今年度の 1 月
が昨年度を大きく上回った。26 年 4 月~26 年 1
月の 10 ヶ月間の利用は、申込件数
申込件数 111 件、うち
利用件数 97 件である。キャンセル 14 件は、いず
れも預かり支援や託児がキャンセルとなったこ
がキャンセルとなったこ
とによる。キャンセルの内訳は、
、ならっこネット
でのキャンセルが最も多く 8 件、
、次いで個別託児
でのキャンセルが 5 件であった。
。キャンセルの理
由には、ならっこネット利用前の
の下見を兼ねて利
(件)
18
16
用者自身で利用したいとの希望
希望が台風の為でき
14
なかった、というものもあった。
。キャンセルを含
12
むとはいえ、ならっこルームの
ならっこルームの利用申し込みが
10
100 件を超えたことは開設以来初
開設以来初めてで、利用が
定着してきたと言えるだろう。
キャンセル
日・祝
土
平日
8
6
1月
12月
11月
10月
9月
8月
7月
要が少ない時期であるからである
であるからである。他の月はほぼ
6月
0
5月
2
これは大学の夏季休暇中にあたり
にあたり、二次保育の需
4月
4
月ごとの利用件数をみると、
8-
-9 月が少ない。
10 件以上の利用があった。
月ごとの利用件数は、例年比較
例年比較しているが、夏期
のいずれかの月での利用が少ないことを
ないことを除くと、特
に際立った傾向はない。昨年度は
は 8・11 月に集団託
児が多くあり突出したし、今年度
今年度はならっこネット
での利用が毎月コンスタントにあった
コンスタントにあった。その年度ご
とに、様々に利用されているといえる
されているといえる。
共通するのは、毎年度平日の利用
利用が最も多いこと
である。講演会や学会などのイベントでの
などのイベントでの託児は週
末に集中するが、件数としては平日
平日の利用が多く、
その大部分がならっこネットによるものである
がならっこネットによるものである。都
合により平日に子どもを連れて大学
大学に来ざるを得
ない方が多くいることが伺える。
。
利用目的をみると、25・26 年度
年度とも、ならっこ
ネットによる預かり支援での利用
利用が最も多い。次い
で多いのが、利用者の個人的な利用
利用である。これは、
利用者が個人的にならっこルームを
ムを借り、自身や家
34
上:利用件数 25・
・26 年度の比較
中:利用件数 26 年度月ごとの比較
年度月
下:利用目的 25・
・26 年度の比較
族・友人等誰かしら大人と子どもが過ごす場合である。今年度は、ならっこルームに慣れた親子が、
わざわざ「このお部屋で遊びたい」と利用されたケースがあった。
部外者利用は今年度初めてあった。これは子育て支援システムに関係しない方による利用で、例え
ばシッターを同伴して学会に来られた方などの利用などを想定している。利用に際しては、使用許可
申請書の提出が必要である。今回は、本学への留学を考えておられる海外の方のご家族が、受け入れ
先の教授とともに利用された。
共助本部による利用では、子どもを連れての利用者面談が 3 件あった。面談は通常、共助本部面談
室で行っているが、丁寧に話を聞くとなると 1 時間以上かかってしまい、子どもが我慢できない。子
ども同伴の場合はならっこルームに移動して、子どもと遊びながら聞き取りを行うようにした。利用
者親子にならっこルームに慣れてもらうこともでき、一石二鳥であった。
左表より、今年度ならっこルーム
を利用した人数は 289 名で、昨年を
大きく上回った。今年度は規模の大
きい集団託児がなかったので、基本
的にマンツーマンでの利用が積み
重なってこの人数になったといえ
る。利用する大人には、昼休みにな
らっこルームで子どもと一緒に食
事を取ったり、預かり支援終了後に
ならっこルームで子どもと過ごす
利用者もいるが、報告書に記入され
ないため人数としてはカウントさ
動員数と利用時間 25・26 年度の比較
れていない。
利用時間数は 25・26 年度とも、2
時間以上 5 時間未満の利用が最も多い。今年度最も多かったのは 2.5 時間で 27 件あった。ちょっと
預かってもらえると助かるという利用が多いようである。2 時間未満の利用では、学生が講義 1 コマ
90 分の間の預かりを依頼したり、日帰り出張中の利用者の帰りを学童保育に送迎に行った後ならっ
こルームで待つといった利用があった。最も長い時間数の利用は 2 日続けて 2 件あり、8 時間 15 分
だった。学会での託児で、午前のセッションの始まる前から夕方の終了までの利用であった。
35
( 2 - 7 )子育て支援サポーター養成講座(基礎講座・ブラッシュアップ講座・基礎研修)
研修制度の設立
本事業では、子育て支援サポーターを養成する目的でサポーター養成講座を実施している。養成講
座は平成 18 年度に始まり、当初は 16 講義程度を集中して開講し、修了者にサポーター資格を与えて
いた。その後、この形式では受講者が集まりにくいことから、平成 20 年度に現在の「基礎講座」受
講後にサポーター登録、
「ブラッシュアップ講座」によりスキルアップを図る方式に変更した。この
方式は、受講後も毎年度スキルアップに努められる点で優れている。しかし、熱心なサポーターは毎
年度繰り返し参加するが、ほとんど受講しないサポーターもおり、サポーターの質にばらつきが生じ
ることが欠点である。
また、ブラッシュアップ講座のテーマはコミュニケーションや医学・心理学など多岐に渡っており、
幅広い学びが得られると評価していただいているが、その年にテーマがないと学べない欠点がある。
たとえば、過去には子どもの心理やアレルギーについての講座があったが、今年度は実施していない。
毎年新たに登録するサポーターには学ぶ機会が与えられないことになる。
本事業でのサポーターに求める資質としては、民間企業のシッターとは異なり、均質に高水準な専
門家である必要はないと考えている。赤ちゃんや体調の悪い子どもの預かりをスキルのない者に任せ
ることはできないが、小学生の送迎や集団託児の場では学生や経験の浅い方にも活躍の余地がある。
わずかでも子育て支援経験をもつことにより、女性の社会進出やワーク・ライフ・バランスに関心を
持ち理解を示す方が増えることは、子育て支援のすそ野を広げる意味でも重要である。スタッフが、
利用者や集団託児の主催団体のニーズに合わせてサポーターを適材適所に配置することで、スキルが
高水準でなくても、多くの方にこの活動に参加していただけると考えて実施してきた。
しかし、本事業では現在乳幼児の支援依頼が増えていることもあり、安心して任せられるサポータ
ーを増やす必要が生じた。また「緊急サポート」への対応を進めることになり、これらの場面で活躍
できるスキルや意識の高いサポーターの育成が急務となった。そこで、ブラッシュアップ講座のほか
に直接のスキルアップに繋がる「研修」を設けることになった。詳細は((2-5)子育て支援システ
ムの整備の項参照)に示したが、来年度よりサポーター★制度を実施することになり、研修に参加す
ることは、★★サポーターになるための必須条件とした。
★★サポーターはマンツーマンでの支援ができる。そのために必要な乳幼児のケアや体調の悪い子
どもの扱いなどを順次学ぶ「基礎研修」を、今年度まず実施した。来年度以降は病児のケアや簡単な
実習も含めた上級者向けの研修を予定しており、受講者は★★★サポーターとして病中病後児のケア
などにあたっていただく。基礎研修はベテランサポーターにとっても最新の考え方などを学んでもら
う好機であるので原則サポーター必修とした。
今年度の基礎研修は初回であることから、同じ内容を 8 月と 2 月に実施し、参加の機会を増やすこ
とにした。両日に参加できない方には、録画を見ていただくことでこれに代えることも可能である。
今年度の講師は、子ども看護学専門家の新谷先生にお願いした。
「赤ちゃんのケア」
「体調が悪い時
のケア」をそれぞれ 1 時間、合計 2 時間の講義を組んでいただいた。
ブラッシュアップ講座の構成
本講座は、基礎講座の 90 分では伝えられない技能や知識を、専門家に学ぶことが目的である。サ
ポーターに身につけてほしい様々な素養を毎年度いくつかピックアップし、90 分~3 時間の講座であ
36
る程度の知見を得られるようにセットしている。一つの技能・知識を習得するには、一度講座に出席
しだらよいというものではない。ブラッシュアップ講座という名称には、繰り返し何度も学んでほし
いという意味を込めている。しかし、熱意のあるサポーターであっても、毎年度多く講座に参加を続
けることは、なかなか難しい。同じテーマでも講師や視点を変える、毎年レベルアップする、シリー
ズ化するなど様々な工夫をし、参加意欲を高めている。この点については毎年々々試行錯誤を繰り返
しているが、今年度は以下のような観点で講座を構成した。なお、今年度は研修を設けたことで、ブ
ラッシュアップ講座の講座数を、前年度の 7 つから 5 つに減らしている。
①
サポーターにとって必須の技能は、毎年必ず学ぶ機会を設ける:心肺蘇生法を含む応急手当
がこれにあたり、毎年奈良市防災センターの協力を得て実施している。毎年必ず講座を設ける
ことで必要性をサポーターに伝えているが、現在は心肺蘇生法を学ぶ機会が多いことも手伝い、
参加率はそう高くはならない。そこで、今年度は例年の 3 時間の講習ではなく、90 分の簡易
講習にシミュレーション体験や DVD 鑑賞を加えたプログラムを、防災センターに作成してい
ただいた(実施は 3 月の予定)
。年度毎にメリハリをつけることも、興味をもっていただくた
めには重要と思われる
②
子どもについて学ぶ現場体験の機会を設ける:奈良市内の認可外保育施設・奈良こども館で
の保育体験がこれにあたる。館長の森田先生のご厚意で、平成 22 年度以降実施している。毎
年度同じプログラムであるが、年度毎に担当するクラスを変えたり、同じクラスを担当して昨
年度と比較したりと、受講者自身の工夫により多くの学びが得られる。事前にそのように PR
することで、リピーターが増えてきている。
③
年度ごとにテーマを設定し、それに合わせた講座を複数用意する:出席者に対するアンケー
トの結果などから、ここ数年はコミュニケーションスキルに取り組んでいる。今年度は2つの
講座を設けた。大人どうし(今年度はサポーター―サポーター間)のコミュニケーションにつ
いて、紛争解決のスペシャリストである前田先生にお願いした。サポーターと子どものコミュ
ニケーションについては、発達障がい児サポートの専門家である金山先生にお願いした。前田
先生は今年度で 3 年目、金山先生は 5 年目で、「初めて参加した方からリピーターまで何かし
ら学びを得られる講座にしてほしい」という無理なお願いに応え、様々な工夫をしてくださっ
ている。まさに、かゆいところに手が届くような講座で、続けて参加する熱心なサポーターも
増えてきている。講座の様子を見ていると、年度毎にサポーターのスキルが上がってきている
ことを実感できる。また講座のロールプレイなどを通じて、サポーターどうしも親密になり、
集団託児などでプラスに働いている。
もう一つ、今年度は防災もテーマとし「防災力アップ企画」を設けた。
「支援時に大災害に遭
遇したら」という不安をもつサポーターも多く、アンケートにも声が多かった。そこで、日本
赤十字社の松本先生に、子どもと支援者の被災というテーマでご指導いただいた。松本先生に
は昨年は子どもの事故予防についてお話をしていただいたが、こちらのニーズに合わせて細か
く講座内容を設定していただけるとのことで、今年度の実施がかなった。また、3 月に奈良市
防災センターでの応急手当講座を予定しているが、ここにも(脱マンネリ化のねらいも含めて)
防災体験を加えることで、防災を考える雰囲気作りに努めた。
サポーター勉強会
サポーターには子育て支援の経歴をもつものが多く、それぞれ豊かな経験を持つ。このノウハウ
37
を活かせるよう、サポーターどうしが知恵の交換をする場として始まった。あるいは、スタッフが支
援に役立つツールの作り方やちょっとしたゲーム遊び等を紹介し、実際に工作やゲーム大会を行う。
実際にやってみるところがポイントで、経験することにより実際に子どもと行うときの敷居を下げる
ことができる。協力して行うことで、サポーターどうしも親密になれ、交流会も兼ねられる。
また本事業では常に事業の改善を行っており、何かと改正事項が多い。『サポーター通信』やML
『ならっこニュース』で周知はしているが、口頭で正確に伝え意見を集める場が必要で、勉強会がそ
のための場として大変役立っている。
最後にはお茶の時間を設け、サポーターどうしでお喋りを楽しむ。集団託児等で面識のある方同士
はすぐに打ち解けるし、サポーターに登録したばかりの方も輪に引きこまれるうちに不安が解消され
るようである。
今年度は6月に実施した。秋以降はブラッシュアップ講座が始まるので、初夏~夏の開催を考えた。
前回は昨年9月実施で、この間9ヶ月開いている。この間隔や回数が適切か、検討が必要である。なお、
今年度は3月にも予定している。この時期の開催だと、年度内の活動や次年度の予定などを報告でき
る。これから予定している事業についても、サポーターの声を聞き、反映させることができる。また
年度末はサポーター証の更新時期でもあり、当日参加者にはその場で更新でき、事務作業も大きく減
らすことができる。
基礎講座のカリキュラム
研修を設けたことで、全体のカリキュラムの見直しを行った。基礎講座での講義内容の重なる部分
を減らし、制度やサポーターとしてもつべき姿勢などの説明に充てることになった。しかし、今年度
は時間が取れず、充分に取り組めなかった。暫定的な処置として『サポーター心得帳』を作製し、こ
れを用いた説明の時間を設けた(心得帳は、8 月に全サポーターにも配布)
。サポーター登録時に配布
する手引き類も内容が古くなってきていることから、改訂が必要である。基礎講座での説明事項と分
担してもれなく必要な情報が渡るための調整を、来年度以降行う必要がある。
今年度の基礎講座では、以下の資料を用いた(次ページに縮小版を掲載)
。
・基礎講座案内
・
『子育てサポートの基本』
・
『サポーター心得帳』
・
『女性研究者支援と奈良女子大学の子育て支援』(パワーポイントプレゼンテーションの縮小版)
各講座での託児
昨年度は養成講座で託児を 4 件実施し、
7 名の子どもを預かった。
子ども同伴可の講座が 3 つあり、
延べ 12 名の子どもが参加した。うち 2 講座は、最終的にはスタッフが子どもの面倒をみた。子育て
中の親にとっても役立つ講座であり、託児のおかげでじっくり参加できたと感謝の声をいただいた。
今年度開催にあたり、託児の実施を検討した。地域貢献の面からは是非実施したいところであるが、
預かりにあたるスタッフのやり繰りが難しく、今年度は見送ることとした。3 月実施予定の防災セン
ターでの心肺蘇生法実習と災害体験のみ、子ども連れの参加を受け付けることとし(要相談)、ポス
ターにその旨記載した。しかし 10 月の講座にきょうだい 2 名の申し込みがあり、この回に限り人員
に余裕があったので、受け付けた。当日は 0 歳児・3 歳児をスタッフ 1 名がならっこルームで預かっ
た。なお、基礎講座での託児申し込みはなかった。
38
今年度の実施講座一覧
基礎講座
対象
実施回数
時間
総受講者数
サポーターに
8回
90 分
14 名
なりたい一般
(受講希望が
の方や学生
あった場合に
90 分~3 時間
77 名
備考
個別に実施)
ブラッシュ
サポーター
アップ講座
一般の方
5回
1 講 座 は 未実
施(3 月実施予
定)
研修
サポーター
2回
2 時間
33 名
2~3 時間
19 名
(同じ内容を
2 回実施)
サポーター
サポーター
1回
勉強会
3 月 末 に も実
施予定
*受講者数は 2 月末現在のもの
基礎講座配布資料
39
40
パワーポイントでのプレゼンテーション画面
(抜粋)
41
基礎講座
開催日:3/5、4/16、5/14、6/3、8/20、9/11、10/21、10/29、1/27
開催場所:本部 404 室
講師:本部スタッフ
延べ受講者数:16 名
講座概要:子育て支援の基礎
今年度の講座開催日程は、ホームページ上に受講可能日をあげ、受講希望者に日程を選んでもらう
形にした。各回1-3名が受講した。1昨年までは月に1度程度不定期に日時を決めた開催であったが、
受講者のない月や申し込み後のキャンセルが結構あった。開催日時の決め方については試行錯誤中だ
が、本事業程度の規模であれば、今年度のような個別の対応が適当かと思われる。また、講座終了後、
登録希望者はそのまま面談に移れる点でも都合がよい。
昨年度3月には2名、今年度は平成27年1月現在で14名の参加があり、昨年度報告以降計16名が受講
した、そのうち8名は学生(本学学生7名、他大学学生1名)であった。講座終了後に登録申請書を提出
し、時間があれば講座終了後登録してくださる方が殆どであった。
サポーター養成基礎講座は、子育て支援サポーターとしての心得の習得が必要ではあるが、支援を
する子どもたちの年齢が乳幼児と児童であることから、子どもの発達や育ちそのものを理解し、その
上で、支援利用者にも良い感化を及ぼすサポートをしてほしいと願っている。
そこで小学校教育以降も見据えた幼児教育経験者を講師とし、1 時間ほど子育て支援として必要な
子どもの教育について語り、その後別のスタッフが奈良女子大学の状況や子育て支援システムの概要、
サポーターの心得について説明している。今年度も前年度同様、子育てサポートの基本と、近年様々
な天災が続いているので、様々な報道事項を取り入れての防災(減災)教育やできることからのエコ
生活などにも触れた話をした。さらに子どもの教育に関しては、子どもや親子の生活全般から考えら
れる課題とともに生活の中で乳幼児期に大切にしてほしい事柄を中心にした話を継続しているので、
サポーターの心得とともにそのことも意識してサポートしてほしいと願っている。
サポーターという立場(親でも祖父母でも親戚でも近所の人でもないが、預かった子どもの良き生
活のために尽力してくれる人であり、日頃から近しい人とは違った接し方や見方考え方ができる)を
活かして、利用者である保護者が我が子の知らなかった良い面をサポーターから伝えてもらうことは、
嬉しいし子育てに役立つはずである。子ども側の立場からもいろいろな年齢の様々な職種のしかも自
分を大切に思ってくれる人に出会うことは誠に幸せなことである。今後も時代の流れや出来事を把握
しながら、人生を歩み始めて間もない子どもたちの幸せにつながることをめざし、利用者の良き理解
者であり温かい支援者であるサポーターの養成に努力したいと思う。
○特記事項
・基礎講座は、今年度は個別としたが少人数のため講座後の登録に進みやすい利点があった。地域
のボランティアに登録している方・子育てを終えた方・学生など幅広い年齢層にわたっているが、
今年度は他大学の学生の希望がありサポーター登録もしてもらった。並足ではあるが若い世代
(学生)への周知効果がうかがえる。更に男性の希望者(1名)もあり快くサポーター登録しても
らったが、男性意識改革につながるので今後も関心を持つ男性が増えていくことを願っている。
42
ブラッシュアップ講座
体験!保育の現場@奈良こども館
日
時:平成 26 年 9 月 17 日(水)
10:00-12:00
開催場所:奈良こども館(奈良市三条宮前町)
講
師:奈良こども館 館長
受講者数:14 名
森田一雄
(スタッフ 3 名を含む)
講座概要:
平成 22 年度以降毎年度ブラッシュアップ講座にて、奈良こども館での保育を体験させていただい
ており、今年度は 5 回目、恒例の講座となっている。今年度も森田先生はじめ保育士の皆さんに大変
お世話になり、充実した 2 時間を過ごさせていただいた。
奈良こども館は隣接する情報産業専門学校の校舎の一角にある。廊下や各室の広さは十分あり、子
どもたちは年齢ごとに部屋に分かれて、ゆったりと過ごしている。トイレや洗面所も広く、大人用の
設備は子どもが使いよいように改造してある。一日や数時間の預かりが頼め、配達弁当も当日申し込
みが出来るなど、預ける側にとっては至れり尽くせりであるが、それでも認可外施設である。まず、
園庭がない、壁や廊下のクッション素材が難燃性でないといった構造的な問題があるとのことである。
森田先生は夕方になると自らが運転する車で学童保育に子どもを迎えに行き、8 時の閉園時間に迎
えに来られない保護者がいても待ち続ける。こうした真に保護者に寄り添った保育を行うためには、
保育士の勤務状況への規則の厳しい認可園であるより、認可外の方がやりやすい。認可園を目指すよ
りも、認可外施設として最大限機能するように努力しておられるのが奈良こども館である。
本講座に初めて参加した方は、奈良こども館が認可外保育施設のイメージとあまりにかけ離れてい
ることに驚く。講座は森田先生の講義から始まるが、認可園と認可外施設の違いや相関関係について
説明されると、徐々に納得した表情となる。認可外施設は、認可園に入れなかった子の受け皿だけで
なく、認可園がフォローできない夜間の保育、専業主婦が子育てに行き詰ったときの息抜きと、様々
なニーズに応える施設なのである。
奈良こども館では日々子どもが入れ替わることから、認可園のように 1 年を通じたスケジュールが
たてづらい。その中でいかにして子ども 1 人ひとりに応じた日課を過ごさせるか、様々な工夫を行っ
ている。たとえば子どもに注意するという行為でも保育士の態度を統一できるよう、引き継ぎノート
に逐一記入し、出勤時には必ず目を通すことを義務づける。保育士間で「年配や年長者が正しい」と
いう考えに陥りがちなので、意見交換を行うようにする。保育計画ノートを作成し、誰にどのような
遊びをさせたか記入し、同じ遊びが重ならないように配慮する。毎日数十人の子どもにそれを行うだ
けでも大変なことであるが、さらに保護者へのちょっとしたアドバイスや注意もすんなりできるよう、
コミュニケーションづくりにも力を入れている。こうした努力が保護者にとって有り難いものである
ことは、大々的な宣伝を行わなくても口コミで利用者が集まり、しかもリピーターが多くいることか
らも自明である。
「子どもに楽しく過ごしてもらって保護者に返す + 成長のための何かが出来たら
いいと思います」という森田先生の発言に、サポーターは盛んに頷いていた。
講義の後は、サポーターは 3 つの部屋に分かれて、それぞれ保育を体験した。0~1 歳児・2 歳児ク
ラスではほとんど座っていたが、3 歳児クラスは走り回っての保育で、1 時間はなかなかハードであ
った。子どもに応じて一つの遊びを様々に発展させて飽きさせない保育士さんに、感心したサポータ
ーもあった。終了後の反省で各自の体験を思い起こし、発達段階や個性の違いを実感することができ
た。座学では身につかない、貴重な経験となった。
43
基礎からの防災 -子どもと一緒の避難を学ぶ-
日
時:平成 26 年 10 月 17 日(金)
13:00-15:00
開催場所:コラボレーションセンター2F
講
師:日本赤十字社 松本
受講者数:18 名(サポーター14 名、一般 4 名)
託児利用者 1 名(子ども 2 名)
講座概要:
近年、地震や台風・土砂災害など、私たちの想像をはるかに超える甚大な災害が日本各地で起こっ
ており、被災者が「何十年も生きてきて、一番すごい被害だった」とインタビューで答えている姿を
よく見る。今回は、災害救助に大きな役割を果たしている日本赤十字社にいつ起こるか分からない災
害に備えた心構えや準備、基礎知識、子どもを連れての避難のポイントを教えて頂いた。
この講座が開かれる直近にも 2 週連続で巨大台風が日本列島を襲ったが、幸いにも我々の住む奈良
北部は大きな被害もなく、当本部内でも「やっぱり今回も何もなく通り過ぎたね」という会話を交わ
していた。被災県の方から「奈良の人は災害に対する危機感が低い」と言われるそうだ。自宅周辺だ
けでなく、旅行中に遠方で災害に巻き込まれることもあると想定して、備えておかなければならない。
海なし県である奈良は津波の心配はないが、盆地は元々田んぼなどであったため、地下に水を多く
含んでおり液状化が心配される。災害時の支援は沿岸部から始まるため、山に囲まれた奈良は支援の
手が届くのは遅い事が予想され、通常『3 日分の非常持ち出し品を蓄えておく』というところを、日
赤奈良支部では『1 週間分』に修正されたそうだ。
実際に被災地へ行かれた際の経験談を交えて教えていただいた。
赤ちゃんを連れている親は抱っこ紐などを持っている方が多く、抱えて逃げられ
るが、要援護者(一人で逃げる事が出来ない人)である、子どもや年配の方・けが
人・病人を連れて逃げる事を想定して、浴衣や着物の帯をおんぶ紐に代用した両手
が使える『おんぶ』の仕方を教えて頂いた。また、毛布をガウンに変身させる方法
(写真参照)では、着物の要領で腰から下の丈を決めてからウエストを紐でくくり、
余った部分は腰にたるませる。これで腰部分はダブついた毛布で 3 重になり温かく、
胸の合わせ部分もはだけることなく両手が使え、動きを妨げることなく暖がとれる。
肩から毛布をかけるだけでは隙間が多く、教わった日から避難所の人たち皆がこの
スタイルになったそうだ。
↑
両手が使えず、
足元も寒そう
両手は自由に動き、
足首まで温かい
↓
避難所への物資や食べ物などの支援はもちろんありがたいのだが、少しでも役に
立てば・・・と我々が思う衣服等は、サイズの確認等の仕分けに人手をとられ、き
れいなものばかりが送られてくるとは限らず、更なるゴミを生み出すことになるそ
うだ。また、避難所では簡易トイレが設置されるが、最近は洋式トイレが多くなり
和式トイレに慣れていない子どもは排泄をすることが出来ないことがあるそうだ。
発砲スチロールを繰り抜いてビニール袋を充て、新聞紙をくしゃくしゃにして入れ
ると、ポータブルトイレが完成する。それだと、自分の排泄物が入っていても新聞で隠れているので
いやがらない。
防災意識だけでなく、日頃からの人や物との関わりも備えておかなければいけない事を教えていた
だき、驚きや考えさせられることも多い時間となった。
サポーターによる支援の最中に災害にあった場合等を想定した避難指針の作成を急がなければな
らないだろう。
44
伝わる言葉と伝わらない言葉-コンフリクトマネジメントの基礎
日
時:平成 26 年 11 月 21 日(金)
13:00-16:00
開催場所:奈良女子大学 コラボレーションセンター
講
師:前田
道利 先生
(司法書士)
受講者数:23 名 (サポーター19 名、一般 4 名)
講座概要;
前田先生の講座は毎年好評で 3 回目を迎えたが、当本部のサポーターの様々な実態に合わせて必要
と思われる事項をテーマにし、毎年創意工夫された形で実施されてきた。当本部の事業が試行や開設
の時期とは異なる充実期に向かう中で起こってくる課題解決のため、今回はサポーター間のよりよい
人間関係つくりのための一つの方策として、寸劇風の場面を入れてかなり具体的な事例をもとにした
講座となった。今年度も 3 時間の講座となり、長時間になるため託児は無しとした。
参加者数については前田先生と相談して定員を設けたが当日の出欠もあり、参加者が 23 名となっ
た。本部スタッフは 3 名で会場を担当しグループに分かれる時に補充の形で参加した。また、今回は
前田先生が助手 1 名を同伴された。
講座は、自己紹介→葛藤についての解説→サポーター有志による寸劇→寸劇の分析と解説→グルー
プに分かれて理想のシナリオつくりと発表→今回の感想という形で進められた。自己紹介は参加者が
まず自分の好きな色で自分の呼んでほしい名前を書いたネームプレートをつけることから始まる。昨
年同様遊びも入れて参加者の心と体をほぐしながら互いの目や表情を読むことの大切さを確認する
中で自然になごやかな雰囲気が醸し出された。
その後、
「葛藤」という言葉からイメージされる事柄を発言し合い、先生
の解説を経て本日のメインである寸劇に入った。
寸劇のシナリオは、前もって前田先生と当スタッフがサポーター間の課題
をもとに作成し、出演するサポーター6 名についても事前に依頼し、当日早
めに来てもらって打合せをしてもらった。シナリオは本講座の資料に掲載さ
れている。また会場の設営も寸劇の場と見る場を分け、その後のグループ協
議もできるように工夫した。寸劇の内容は「集団託児後のミーティング風景」
である。 ベテランサポーターA 側(片づけ方が気になる)と新米サポータ
ーB 側(託児中の携帯電話での通話が気になる)に分かれて話し合う場面を
他の参加者が見る⇒資料に沿って出演者側の応答も含めた前田先生からの
解説⇒録音で再現された言葉を聴いてその都度出演者各自が「快 or 不快」の感情を表す⇒その結果
について前田先生が解説⇒各グループで理想のシナリオをつくり発表⇒一言ずつの感想で終了した
が、掲示された他のグループのシナリオも見てから満足した表情で退室される参加者が多かった。
・毎回参加している熱心なサポーターもいたが、今回は若い学生が 2 名参加(うち 1 名は出演者担当)
グループの話し合いでも積極的に意見を述べていた。このような事業を今後支えていく若い世代の
参加があったのは心強い一つの成果であった。
・ベテランサポーター(A)と新米サポーター(B)のそれぞれが感じた問題点が異なること、途中
で力関係が変わってくることで、ベテランも新米も託児中にいろいろな葛藤を抱えていることが観
察者側にも十分に伝わる名演技であった。快く出演していただいたサポーターにも感謝したい。
・伝わる言葉伝わらない言葉の背景としてトーン、声の大小、言い方、言葉そのものなどがあり、
winwin の関係になる望ましいコミュニケ―ションのあり方と心の調整を学ぶ貴重な講座となった。
45
子どもの言いたいこと!やりたいこと!―特性のある子どもと一緒に楽しむコツ―
日
時:平成 26 年 12 月 8 日(月)
13:00-14:30
開催場所:奈良女子大学コラボレーションセンターZ306 室
講
師:京都 YMCA サポートプログラムディレクター 金山 好美
受講者数:25 名(サポーター17 名、一般 8 名)
講座概要:
今年度で 5 回目を迎える人気講座である。昨年度は大雪のため当日キャンセルが相次ぎ、4 名しか
参加できなかった。講座を録画したものを後日希望者に見ていただくことでフォローしたが、残念な
結果となった。今年度はサポーターから「昨年度の分も楽しみにしています」という声を頂戴してお
り、早くから受講申し込みがあった。一般の方や子育て支援システム利用者の当日参加も 5 名あり、
賑やかな開催となった。
今回は昨年度の参加者がいなかったこともあり、昨年度の内容を再度確認する形で、理論の説明が
あった。子どもの困った行動が起きた場合、大人の「してほしかったこと」・子どもの「したかった
こと」を分析していくと目的は同じであるのに、大人は「大人のしてほしかった行動」「大人にとっ
て困った行動」に注目してしまう。困った行動には理由があり、環境に理由が存在し続けるとその行
動は強化されていく。理由を環境から探し出して取り除くと、問題行動がおさまる。逆に、子どもが
「したかったこと」のためにとった「よい行動」に目を向け、
「ほめる」
「ごほうび」などで正の強化
を行っていくと、よい行動が増えていく。問題行動の悪循環から抜け出し、好循環にするため、ほめ
上手な支援者を目指しましょう、と説明された。
金山先生は発達障がい児サポートプログラムで、実際に問題行動の解決に取り組んでおられる。例
年の講座では、金山先生の実践例をいくつか挙げていただき、発達障がいの子どもの行動改善につい
て考察してきた。今年度は、それらに加えて、実際に本事業のイベント託児で起きた事例を取り上げ
ていただいた。本事業の支援活動では、これまでサポーターが発達障がい児に接したことはほとんど
なかったが、対応の難しい子に接したケースはいくつかあった。そうしたケースの一つを金山先生の
手法で分析していただき、その上でどのような対応が望ましかったか全員で考えた。発達障がい児の
事例だとどうしても聞く態度に徹しがちだが、身近な例だと等身大で取り組め、活発な意見が出た。
今後の実践の場でも役に立つ有意義な取り組みとなった。
金山先生も、この取組みを歓迎された。発達障がいについての知識が一般に広まることを歓迎しつ
つも、
「あの子はアスペルガーではないか」
「自閉症っぽい」といった目で見る傾向のあることが気に
なっておられるそうである。診断がつかないグレーゾーンにもたくさんの子どもたちがいることを踏
まえ、発達障がいというカテゴリーに分けてレッテルを貼るのでなく、どんな子であっても、子ども
一人ひとりの特性にきちんと向き合うことが必要であると説かれた。
今年度は、ワークショップも取り入れた。2 名で組み、先生の指示ごとに話し合い、順に発表した。
こうした場面での発表を苦手とする方が多いのではないかと心配したが、この講座のリピーターも多
く、また、コミュニケーション系講座の出席経験も増えてきたせいか、活発に意見が出た。1つの意
見に対して、さらに深める意見や問いかけが出たり、共感できた場合は皆で頷きあったり、謎が解け
た時には「えー」と一斉に声が上がったりと、全体に非常によい雰囲気で進行した。
90 分があっと言う間に終わり、拍手で閉会となった。初参加の方にとってもリピーターにとって
も、実りの多い時間となった。
46
子育て支援サポーター基礎研修Ⅰ
― ちいさい子どもの預かり支援 ―
利用者の子どもの年齢が下がり乳児が増えてきた現状から、現在登録サポーターの乳児託児可能の
有無を確かめるとともに、登録サポーター全員に乳児託児のスキルを学び高めるための研修をサポー
ター必修として(欠席者には都合のよい時に DVD を見てもらう)今年度から取り入れた。幸い乳児
の健康に詳しく症例経験の豊富な講師を得たので、今年度は 2 回同内容で開催した。休憩を挟んで 2
時間 10 分の講座とし、1 限目は乳児の一般的な発達段階と段階ごとのケアのポイント、2 限目は子ど
もの体調不良に気がつくための基礎知識、気づいてからの対応、病気やけがの時の扱いについてで、
「子ども看護学」というものへの理解とともにサポーターに必要な医学知識の観点からの学びを目的
とした。この基礎研修が当事業の利用者のニーズを踏まえて計画中である病児保育につながることも
願っている。
1回目
日
時:平成 26 年 8 月 27 日(水) 10:00-12:10
受講者数:30 名(サポーター:29 名、一般 1 名)
2回目
日
時:平成 27 年 2 月 20 日(金) 13:00-15:10
受講者数:3 名(サポーター2 名、一般 1 名)
開催場所:奈良女子大学コラボレーションセンター
講
師:新谷まさこ先生
(子ども看護学専門家/看護師 子育てと仕事.com 代表)
研修概要:
1限目
赤ちゃんのケア [目標 ― 保育のときに赤ちゃんにしてはいけない事がわかる]
赤ちゃんの発達の基本として、上から下に・中枢から抹消へ・大から小へという発達の順序、赤ち
ゃんの呼び方と変化の特徴、頚がすわる・寝返り・お座り・独り立ちの 3 カ月ごとの発達変化のポイ
ント、胃腸の発達と栄養、赤ちゃんの感情の分化についての具体的な解説の後、赤ちゃんの保育でし
てはいけない 5 つの NG として①発達に合っていない抱き方や座らせ方をしない②親の了解のないも
のは食べさせない③保育者の都合で怒鳴らない無視しない④ずっと遊ばせない⑤月齢に合わない遊
びはしないことを学んだ。その後頚がすわるかすわらないかのめやすや入浴後の湯冷ましの良否など
サポーターからの質問を受けたので、講師がよくある質問として離乳食の開始時期、日光浴、抱き癖、
母親の就労時期、離乳食と体重の関係、レトルトや冷凍食品の利用をあげ明確な解答をした。
2 限目
体調が悪いときのケア [目標 ― 子どもが不調のときの判断基準をもつことができる]
なぜ病気になるのか、なぜ怪我をするのかの理由説明の後、子どもの重症度を測るチェックポイン
ト(食べる・寝る・遊ぶ・保育者の胸騒ぎ)と触れる・見る・聞くの状態把握による大丈夫かどうか
を一瞬で見極めるコツ、さらにおう吐の時の基本ケア・おう吐物の片づけ方法、頭を打った時の観察
と心配な状況・打撲の応急手当、アレルギー反応があった時の観察についての解説があった。次に子
どもの様子を見る時の基本のケアとしては安静と水分栄養補給と言葉による心の栄養補給があるこ
と、Who だれが/When いつから/Where どこで/What なにが/Why なぜ/How どのようにしたかの子
どもの状態や状況を説明する 5W1H について学んだ後、クイズ形式でミルクを飲まない・おう吐・
ソファーから落ちる・卵アレルギーの4児の例から、様子を見るのか保護者に連絡するのか病院に行
くのかの判断基準や応急手当の説明があった。子どもには自分で治る力があり、親や保育者はその力
を最高にサポートできる人であることに加えて、保育がうまくいく 3 つのルール(認めること・笑顔
にすること・わかりやすい言葉で伝えること)も学び有効な必修研修となった。
47
ブラッシュアップ講座 受講者からの
からの感想・意見/講座の様子など
第 1 回~第 4 回 受講者数
のべ 77 名
【講座の感想】
らないことが多かったので、勉強に
●認可外保育所について、知らないことが
なりました。もっと一般の人たちにも
たちにも知ってもらいたいと思いま
した。子どもたちと一緒に遊ぶのは
ぶのは、自分が楽しませてもらいま
した。
がよくわかり、子ども1人1人に会わせた
●認可外保育の必要性がよくわかり
保育をされていることも知りました
りました。
●現場の様子を実際に見ることができ
ることができ、
(3歳以上の)子どもって
こんな感じなんだなあと知ることができました
ることができました。同じ年齢でも子どもによって、
、雰囲気、大きさが違
っていて、個々人に応じた対応が
が必要なのだと感じました。
●心のケアの基本、日常使っている
っている物をいかに工夫するか、子ど
もへの関わりと、親への関わりから
わりから子どもを安定さえる大切な事
柄などなど、自らを守った後の支援
支援の学びとなりました。
●「何が必要ですか」を知ることの
ることの大切さを学びました。よい講
座でした!有難うございました。
。
●普段気をつけているつもりですが
をつけているつもりですが、災害は忘れたときにやって
くるという事を常に認識している
している事。実際の現場の方からのお話
で、とてもわかりやすかったです
とてもわかりやすかったです。支援の仕方にも考えさせられました。
(
(左)森田 一雄氏
(右)日本赤十字社
松本淳子氏
●話すとき、声のトーン、話し方で随分と受
受け取り方が違うと思
いました。今日は楽しく学ばせて頂きました
きました。ありがとうござい
ました。
●どんな学習かと楽しみに来ました。わかりやすく
わかりやすく、何より最後
のまとめを4人で話し合って書くことで、先生
先生の話されたことが
整理されていき、よかったです。
●小学校の自由研究みたいで、最後楽しかったです
しかったです。
48
●子どもの立場に立って向き合うことの大切
大切さを思いました。大
人の都合で叱ること、失敗を叱ることは私も
も気をつけていかない
といけませんネ。
●自分の感情で叱ってしまうこと、あるある
あるある!と思いましたが、
目線を変えたり、ほめることを忘れないようにと
れないようにと、また感じてし
まう講座でした。努力・勉強をまた続けたいと
けたいと思います。
●「収まりがつく」事は「解決する」事ではない
ではない、の言葉に、な
るほど!と思いました。
(左
左)前田道利氏
(右)金山好美氏
基礎研修 受講者からの感想・
・意見/研修の様子など
第 1 回・第 2 回 受講者数
のべ 33 名
新谷まさこ氏
【研修の感想】
●「昔との対応の仕方の違いがあることで
いがあることで、新情報を教えていただ
き、ありがとうございました。
●「子どもの突然の病気ケアについて
ケアについて、不安が解消できる、心強い
講義内容で、非常に参考になりました
になりました。
●乳児は自分からことばで表現できないので
できないので、とても不安がありま
す。今回は細かく説明していただき
していただき、とても参考になりました。あ
りがとうございます。
●子育ては経験したはずなのに、
、子どもの成長・発達を今どきの見
極め方でとてもわかりやすく説明
説明を受け、目からうろこのところも
あり、情報をたっぷりいただけました
をたっぷりいただけました。子ども看護学という捉え方
で、判断基準・見極め方などをわかりやすく
などをわかりやすく具体事例も交えて良い講座をしていただけた
をしていただけた。
【講座への要望】
乳幼児の保育体験(おむつ替え・トイレ
え・トイレ対応)や、音楽を取り入れたリズム遊
遊びを教えて欲しいな
ど、体験しサポートの現場ですぐに
ですぐに役立つ講座を望む声や、年齢ごとに注意する
する点・叱り方を教えて
欲しい、子どもとの避難での気を
を付ける場所・常時持っていればいい物を知りたい
りたい等の要望があった。
これまでの講座に加え、このような
このような要望にもこたえられる講座づくりを目指したい
したい。
49
サポーター勉強会
日
時:6 月 25 日(水)
会
場:奈良女子大学 G 棟 2 階 204 号室
内
13:30-16:00
容:超簡単・楽しいゲーム/お茶とおしゃべりの時間/ならっこネット制度の改良について検討会
参加者数:19 名
しばらく開催していなかったので、ブラッシュアップ講座開講前の 6 月に開催した。集団託児で子
どもとおとなしく遊ぶ方法について以前サポーターから相談があったことから、今回は室内ゲームを
テーマとした。幼稚園教諭経験のあるスタッフが、全員が輪になって行う「魚鳥木(ぎょちょうもく)
」、
数人で卓上などで行う「さいころことば遊び」、二人で向かいあって紙に書いて行う「三角陣取り」
の3つを紹介した。サポーターをグループ分けして、実際にゲームをしてもらった。一度サポーター
どうしで実施していると、託児の場で行うときにもスムーズに進むからである。
また、さいころは牛乳パックや折り紙で作っ
た物も用意し、手近な材料で準備できること
も知ってもらうようにした。
その後、冷たい飲み物とお菓子で歓談。初
めて会ったサポーターどうしでも、打ち解け
て話が弾んでいた。登録したばかりの方でも、
先輩サポーターが話しかけ、よい雰囲気作り
ができるようになってきた。
最後に、子育て支援システムの見直しにつ
いて、腹案を説明し、意見を集めた。
サポーターを★の数で 3 つにランク分けする
話については、特に不満なく受け入れられた
ようだ。標準的なサポーターである★★(ふた
つ星)サポーターを維持するには、毎年の研修
を必修としたいと説明したところ、ベテラン
サポーターから「子どものケアの情報は年々
変わるので、毎年しっかりやってほしい。毎
年参加して勉強したい」との声が出た。
病児保育・病後児保育の制度を準備中であ
ることについては、民間のシッター資格を持
つサポーターから「我流で病児保育を勉強し
ているので、是非ともしっかり勉強できるし
くみを整えてほしい。見習いなどの制度ができたら、参加したい」との意見が出た。
サポーターの水準についてはもっと厳しくてもよいのではと考えるサポーターもいたが、本事業は
「共助の精神に基づき、一人ひとりができる範囲で力を出し合う」ことを目標にしている。あまりハー
ドルを上げず、適者適材となるよう共助本部が配慮することで多くの方に参加していただける制度で
ありたいと考えている。
50
その他に、サポーターから年齢の上限があるのか、という質問が出た。本事業のサポーターは、学
生サポーターは卒業・修了で辞める方が多く平均年齢は毎年ほぼ同じだが、その他のサポーターは 60
歳台が主力で、平均年齢は毎年ほぼ 1 歳上昇する。70 歳を超える方も数名おられる。ファミリーサ
ポートセンターによっては年齢の上限を設けているところもある。共助本部内でも以前に検討したの
で、その内容をお伝えした。
今のところ健康であれば年齢に上限を設ける予定はない、年齢にかかわらず体調が悪い時は立候補
しないようにしてほしい、長期になるときは連絡していただけるとスタッフも対応がしやすい。特に
問題になるのがひざ等の運動器の故障で、走り回る子どもを追いかけることが難しい時はそうした年
齢層の子の支援には参加しないようにしてほしい。しかし本人が気がつかないことがあるので、一緒
に支援したサポーターさんが気になった場合は、共助本部に連絡してほしい。気になりながら放置し
て事故の原因になってしまうことが怖いので、ささいなことでもサポーター間・サポーターと共助本
部間で情報を共有できるようにしたい。
終了後も個人的にお話に来られたサポーターがあった。病児・病後児保育の経験があるので役立て
たい、制度の発足に協力したいとの申し出であった。本事業が本当に多くの方のボランティア精神に
より支えられていると実感する瞬間である。こうした厚意に助けられながら、共助の精神のもとに利
用者にとってもサポーターにとっても実り豊かな制度を構築していかなくてはならないと思う。
51
( 2 - 8 )ならっこネット通信・ならっこニュース・サポーター通信
今年度も、利用者を対象としたメールマガジン「ならっこネット通信」、サポーターを対象とした
メールマガジン「ならっこニュース」
、サポーターを対象とした会誌「サポーター通信」による情報
提供を行った。こうした細かな情報発信により、必要事項がもれなく迅速に伝わるとともに、注意の
喚起やイベントへの参加者の増加にもつながっている。
ならっこネット通信
メールマガジン形式で、利用者への事務連絡を主とする。平成 26 年 2 月~27 年 1 月現在、下表に
示すとおり、3 回配信した。ならっこネットのシステムダウンに関係するニュースは、その都度なら
っこネット HP のトップ画面にてお知らせを掲載しており、短時間のシステムダウンがほとんどで煩
雑になることから、秋以降 ML(メーリングリスト)での連絡は取り止めとした。今後、ML での連
絡は必要度の高いものに限ることにする。
配信日
主なニュース
vol.41
26. 3.31
登録条件変更手続きについて
vol.42
26. 4. 2
育児奨学金の申請・消費税増税に伴う交通費の値上がりについて
vol.43
26. 9. 8
ならっこネットシステム停止のお知らせ
ベビーカーなど新規購入備品について
ならっこニュース
サポーターへの迅速な情報提供が目的で、講座・講演会への直前の案内や重要な事務連絡が中心と
なっている。平成 21 年度から運用を始め、昨年度 2 月以降 17 回配信した。
26 年度の特筆すべき配信は以下の通り。

26 年 2 月に実施したブラッシュアップ講座は、24 年ぶりの大雪のため欠席者が続出した。当日
は朝から「バスが来ないので、帰ります」「途中まで来ましたが、あきらめます」といったメー
ル連絡が相次いだ。せっかく楽しみにしていただいていた講座に出席していただけず、申し訳な
い限りであった。すぐに録画を作成し、その日のうちにならっこニュースで周知した。サポータ
ーからは折り返し「楽しみにしています」「早々にお伺いします」といった反応があり、フォロ
ーができたかと思われる。(vol.31)

4 月 1 日に消費税が 8%に値上がりし、それに伴って公共交通機関の運賃も改訂された。4 月以
降の支援に直ちに影響することから、注意点を伝えた。(vol.36)
配信日
主なニュース
vol.31
26. 2.14
第 6 回ブラッシュアップ講座録画鑑賞のお知らせ
vol.32
26. 2.20
第 7 回ブッシュアップ講座のお知らせ
vol.33
26. 3. 2
第 7 回ブッシュアップ講座のお知らせ・再送
52
vol.34
26. 3.10
サポーター証更新について
vol.35
26. 3.31
サポーター証送付について
vol.36
26. 4. 2
消費税増税に伴う交通費の値上がりについて
vol.37
26. 5.29
第 5 回サポーター勉強会のお知らせ
vol.38
26. 7.23
第 1 回研修のお知らせ
vol.39
26. 8. 8
サポーター通信送付のお知らせ
vol.40
26. 8.22
講座 悪天候への対応について
vol.41
26. 9. 4
第 1 回ブッシュアップ講座のお知らせ
vol.42
26. 9.12
第 1 回ブッシュアップ講座のお知らせ・再送
vol.43
26.10. 1
ならっこルームでのおやつについて
vol.44
26.10. 8
第 2 回ブッシュアップ講座のお知らせ
vol.45
26.11. 4
第 3 回ブッシュアップ講座のお知らせ
vol.46
26.12. 2
第 4 回ブッシュアップ講座のお知らせ
vol.47
26.12.10
インフルエンザ流行への注意喚起
ブラッシュアップ講座録画鑑賞について
サポーター通信
今年度は夏季に1回、サポーター向けの会誌『サポーター通信』を発行した。本誌には縮小版を掲
載した。年度末に 2 度目の発行を予定している。
12 号(7 月 31 日発行)主な掲載内容

スタッフつらつらリレーエッセイ 9:スタッフによるリレーエッセイで、今回は谷口が担当。

子育て支援システムの今とこれから:サポーターに対しても毎年度事業の報告を行っている。
実施件数などルーチンの報告と、特に今年度は子育て支援システムの見直しについてページを
割いた。サポーター★制度の導入、研修制度など、勉強会で報告したことをまとめた。

25 年度ブラッシュアップ講座終了報告

お楽しみ連載 伊津子の部屋 こどものおはなし その四:スタッフであり前奈良女子大学附
属幼稚園副園長である森本によるエッセイである。

連絡帳:
「備品にニューフェイス登場:ベビーカ―・チャイルドシートの導入をお知らせ」、
「暑
い季節脱水に注意」

学内の AED 知っていますか:学内設置の AED の仕様が変更されたことを報告。
53
『ならっこネット サポーター通信 vol.12』
54
55
( 2 - 9 )子育て支援システムの保険について
本学では、あってはならないことであるが、支援中のサポーターや子どもに事故があった場合を想定
し、システムが本格運用をはじめた当初から、サポーターを対象とした傷害保険および賠償責任保険、
子どもを対象とした傷害保険に加入してきた。保険の内容は随時見直し、その都度、サポーターと子
どもの登録人数などを更新し、望ましいと思われる保険に加入してきた。
平成 26 年度(平成 26 年 4 月 1 日~平成 27 年 3 月 31 日)に本学が加入している保険の内容は、以
下のとおりである。保険料は全額、大学が負担している。
① 普通傷害保険・・有償サポーター本人が事故により傷害を被った場合の補償(就業中のみ担保)
補償額
死亡
500 万円
後遺障害
死亡保険金の 3%~100%
入院日額
3,000 円
通院日額
2,000 円
② 普通傷害保険・・無償サポーター本人が事故により傷害を被った場合の補償(管理下中のみ担保)
補償額
死亡
500 万円
後遺障害
死亡保険金の 3%~100%
入院日額
3,000 円
通院日額
2,000 円
③ 賠償責任保険・・活動中にサポーターが監督・管理中の不備により第三者の身体または損傷破損
させたことにより、法律上の賠償責任が生じた場合の補償。示談代行サービスはない。
補償額
対人・対物保険期間中限度額
1 億円(免責なし)
④ 普通傷害保険・・支援を受ける子どもが、支援中に急激かつ外来の事故により被害を被った場合
の補償(管理下中のみ担保)
補償額
死亡
300 万円
後遺障害
死亡保険金の 3%~100%
入院日額
2,000 円
通院日額
1,000 円
56
また、保険会社に以下のことを確認している。
1.支援の場所についての保険の適用拡大
子育て支援システムの運用開始当時、預かり支援はあらかじめ登録した施設のみで行うよう規定して
いた。子どもの安全を最優先に考えての規定であったが、子どもの日常生活の中には気分転換の散歩
や、散歩を延長したような遠出、イベントへの参加なども当然生じる。長時間の預かりを登録した施
設内に限定するのは現実に即していないと判断し、現在は、登録施設内のみであった保険の条件を、
外出にも適応できるように変更している。この結果、日帰り可能な範囲内での外出が可能となった。
平成 21 年 11 月、学内に一時預かりの施設「ならっこルーム」が開設されたので、「子育て支援シス
テムに」に登録していない利用者(本学の教職員に限らず、一般市民も含まれる)が講演会などで本
学を訪れた際に、その子供の一時預かりをする場合があり得る。また、サポーターも、本学で登録し
ているサポーターだけでなく、その他の方(本学の教職員に限らず、学生・院生、一般市民)である
可能性もある。これらの場合にも保険を適用できるように、これらを「新設事業」とし、従来の保険
契約に加えて「新設事業」の保険に加入している。「新設事業」とは、運営母体は、国立大学法人奈
良女子大学 女性研究者共助支援事業本部であるが、子育て支援システムに登録していない有償のサ
ポーターと、利用者登録をしていない本学関係者が対象となる。ただし、支援の際にサポーターと利
用者の名簿は管理するものとする。保険の内容は上の①②③④と同じである。これで、事業本部が行
う支援は、有償サポーターが行う限り、保険の適用範囲内となる。これは講演会などの一時預かりの
際に適用できるので適用範囲が広い。
さらに平成 22 年 4 月より、以下のように保険の適用条件を広げている。
2.無償で行うサポーターへの保険の適用拡大
支援は有償サポーターによるものばかりではない。サポーター養成講座の実施中に、事業本部の(サ
ポーター養成講座を受講済の)職員が支援に当たることもあるし、大学で実験中の研究者の子どもを、
その配偶者・家族・友人が見る場合もある。このような時は普通無償で預かりが行われるが、このよ
うな場合にも、保険が適用されるように、無償サポーターにも適用できる保険に加入した(上の②に
該当)
。
3.保険が利用できる利用者の範囲についての確認
「子育て支援システム」の利用者は、これまで
(1) 奈良女子大学の教職員
(2) 奈良女子大学の学生
(3) その他、事業本部が認めたもの
のいずれかに属する者としていた。
(3)は、たとえば一時的に研究のために大学に訪れた研究者の方などが該当し、状況を確認したあと、
事業本部が利用者として認めるケースである。また、本学在籍中に子育て支援システムに登録した方
で、籍を抹消後も研究活動等で来学したときに、継続してシステムを利用する場合である。また、平
成 22 年度から利用者として奈良先端技術大学院大学の教員を受け入れている。いずれの場合も、
「3.
その他、事業本部が認めたもの」の範疇にはいるとし、保険の適用がなされることを保険会社に確認
57
した。
また、支援時間に関しては、
「ならっこネット」を用いた支援時間(7:30~22:00)以外の場合でも、
利用者とサポーターの間で支援依頼に関して合意が成立し、支援がサポーターの管理下である場合は、
保険が適用できることを保険会社に確認した。
また、サポーター及び子どもの登録人数の上限と一日の最大稼働人数を現状に合わせて適宜更新し
てきた。平成 26 年度の保険は、有償の場合、サポーターの登録人数の上限は 100 名(平成 25 年度
より 20 名増)
、一日の最大稼働人数は 15 名であり、無償の場合、サポーターの一日の最大稼働人数
は 5 名(対象活動従事者の上限 100 名)
、また、支援される子どもの登録人数の上限は 200 名、一日
の最大稼働人数は 25 名としている。
上記 1~3 により、下の表のように、保険はさまざまなケースに対応できる。いずれもサポーターを対
象とした普通傷害保険および賠償責任保険、子どもを対象とした普通傷害保険が適用され、補償額は
上記の表と同額である。
サポーターの種類
有償サポーター
子どもの種類
保険の適用
登録サポーター
備考
通常の子育て支
登録されている子ども
可
援システムによ
る支援
未登録の子ども
可
入試の際に教職
員が子どもを預
ける場合、附属幼
稚園・附属小学校
での一時預かり
の場合など
未登録サポーター
登録されている子ども
可
未登録の子ども
可
講演会などの際
にサポーターを
雇って参加者の
子どもを預かる
場合など
無償サポーター
登録サポーター
未登録サポーター
登録されている子ども
可
未登録の子ども
可
登録されている子ども
可
未登録の子ども
可
登録していない
教職員が自分の
子どもを「ならっ
こルーム」でみる
場合など
ただし、これらの保険の適用は、個々の支援において、運営母体が「国立大学法人奈良女子大学 女
58
性研究者共助支援事業本部」であることが条件となる。登録していないサポーターおよび子どもの場
合は、事前に事業本部に名簿を届ける必要がある。
支援の場所は、サポーターの自宅、子どもの自宅、あらかじめ登録している学内の施設(ならっこル
ームを含む)
、および事前に届け出た場所(サポーターの管理下にあることが条件であるが外出も可)
に限る。このため、登録していない場所に外出する場合は、事業本部に届け出が必要となる。
これらの保険の適用外のケースとして考えられるのは、例えば、運営母体が女性研究者共助支援事業
本部ではない場合である。奈良女子大学の教員が主催のシンポジウムなどで一時預かりを行う場合は、
この保険の対象外となるので、別途保険に加入する必要がある。この場合でも、一時預かりを共助支
援事業本部が担当する場合は、保険の適用範囲内となる。
幸い、これまで一度も保険の適用の対象となった事故等は起こっていない。しかし、平成 23 年度
にはイベント託児が本格的運用となり、平成 24 年度からは本学の附属幼稚園と附属小学校での一時
預かりが本格的運用となり、平成 25 年度には「ならっこネット」の依頼件数が 1000 件を越えた。
これからも託児の需要は増えるものと思われる。今後も保険の内容等を随時見直し、望ましい保険契
約を行っていくことが必要であろう。
59
( 2 - 1 0 )子育て支援に係わるハード
わるハード面の整備
① ならっこルームの整備
1) 1995 年阪神淡路大震災、
、2011 年東北地方太平洋沖地震に引き続き、30
30 年以内に 70%程度
の確率で起こると言われている
われている南海トラフ巨大地震だけでなく、奈良に
にはいくつもの活断層
が存在し、地震による被害
被害に対する備えが必要である。そのため、女性研究者共助支援事業
女性研究者共助支援事業
本部の活動の要である託児
託児において主に利用する「ならっこルーム」において
において、すべての窓
ガラスに飛散防止フィルムの
フィルムの貼り付けを行った。
2) イベント託児において、
、主催者の判断でおやつの時間を設ける際、お子様
子様の中にはアレルギ
ーをお持ちの場合もあり
もあり、他のお子様のおやつとの区別をつけるため小
小さなお弁当箱を用意
し、各自持参したおやつを
したおやつを一人ずつ出すようにした。
3) ベビーマット・子供用布団
子供用布団
長時間の託児を行う場合
場合も増え、お子様の昼寝に
対応できる様に配置した
した。特に、乳児・幼児の託
児の際、ゆっくり寝かせる
かせる場所ができると、好評
である。
② 学内の備品整備
多目的トイレにおいて、子供用補助便座
子供用補助便座・ステップ設置を行っ
ているが、今年度は改装工事
改装工事の終わった E 棟 1 階、大学会館 1
階に新たに設置した。
60
③ その他 共助内備品整備
を行う時以外でも、利用者の必要に応じて貸出・
・利用が出来るように、
子育て支援システムで託児を
次の備品を配置した。
・ベビーカー
・チャイルドシート(新生児
新生児~7 歳位まで)
・簡易チャイルドシート(
(1 歳位~4 歳位まで)
・ジュニアシート(4 歳位
位~)
④ 子育て関連施設の管理
A 棟フィッティングルームは
フィッティングルームは、倉庫・更衣室に使用されている部屋の中にあり
にあり、表からその存在
が分かりにくかったため、案内板
案内板を作成し部屋の入口に貼付させていただいた
させていただいた。
また、スタッフが掃除道具を
を持参し、ならっこルームと学内各棟のフィッティングルームの
のフィッティングルームの定期
的な巡視を行っている。すなわち
すなわち、ならっこルームの部屋の設備、本やぬいぐるみなどのおもち
やぬいぐるみなどのおもち
ゃ類、備え付けの文具や衛星品
衛星品・薬品類などのメンテナンスと、フィッティングルーム
ティングルーム内のベビ
ーシートの点検・清掃である
である。最近では、C 棟のフィッティングルーム内に
に設置されたベビーシ
ートに不具合があり、修理依頼
修理依頼を学内施設課コールセンターシステムへ登録
登録し、修理をしていた
だいた。今後も引き続き巡視
巡視を続け、各部屋の状況把握・不具合の早期対応
早期対応に努める。
61
第3章
母性支援相談室
母性支援相談室、母性支援カウンセラー
( 3 - 1 )今年度の利用状況活動報告
利用状況活動報告
母性支援相談室は、本年で通算
通算 9 年目を迎えることとなった。平成 18 年度文部科学省科学振興調
整費「女性研究者育成モデル」事業
事業の採択機関 3 年を経て、平成 21 年度より大学
大学の事業として、女
性研究者支援事業本部が運営する
する母性支援相談室の相談業務を継続して 6 年目となる。
年目
今年度も昨年
度に引き続き、2 名の母性支援相談
母性支援相談カウンセラー(産婦人科医師、助産師)とコーディネーター
とコーディネーター1 名で相
談体制を整え、学生、教職員からの
からの相談に対応した。生理不順や激しい生理痛等
生理痛等の思春期から更年期
までの健康相談や、妊娠・出産、
、育児、家族や様々な人間関係など、母性に関するこころとからだに
するこころとからだに
ついての悩みに応じた。26 年度は
は延べ 86 件の相談件数があった。(平成 27 年 1 月末までの集計)
母性支援相談室の周知を図るために
るために、入学時オリエンテーション及び前期ガイダンスにチラシを
ガイダンスにチラシを配
布して案内し、ポスターを学内随所
学内随所に掲示した。また、島本太香子母性支援相談
島本太香子母性支援相談カウンセラーが担当
する「ジェンダー生理学」の講義時
講義時において、
「母性支援相談室だより Vol.4」を
を受講学生に配布した。
「気になることや疑問があれば、
、母性支援相談カウンセラーと一緒に最善の対処法
対処法を考えましょう。
プライバシーは守られます。必要
必要であると判断した場合は医療機関を紹介します
します」と伝え、気軽に利
用してもらえるように来室を促した
した。新規相談者の約 3 割は当該講義が来室のきっか
のきっかけであった。
今年度、自分の体に関心を向け
け、性・妊娠・出産についての知識を深めるために
めるために「母性に関する体
験講座」を 3 回連続して開催した
した。この講座をきっかけに、さらに深く自分のからだ
のからだ等について知り
たい方がその後の相談に繋がった
がった。
母性支援相談室は、相談者のこころとからだが
のこころとからだが元気でいきいきと過ごせることを
ごせることを目指している。月
経不順等の訴えに対して、先ずは
ずは、自分自身で体のリズムに気付くように基礎体温表
基礎体温表をつけることを
指導している。今後も、母性に関
関する健康への正しい知識とセルフケアの大切さを
さを伝え、こころとか
らだの負担を軽減できるよう安心
安心した相談の場を提供していく。
母性支援相談室内には、パーテーションで
パーテーションで区切った 2 つの相談コーナーがあり
コーナーがあり、相談者のプライバ
シーに配慮しながら、個々の相談
相談に対応している。窓際のカウンター席やソファーを
やソファーを設置し、大木の
ヒマラヤ杉を眺めながら一息つくことの
つくことの出来る場となっている。母性に関連する
する書籍も取り揃え貸出
可である。入口に設置したのパンフレットスタンドには
したのパンフレットスタンドには、チラシや基礎体温表を常備している。
相談コーナー↑
母性支援相談室から見える
ヒマラヤスギ→
←入口
入口のパンフレットスタンド
62
<月曜日>
担当 宮田英子(助産師)
母性支援相談室担当 2 年目となった。
1.個別相談の状況
相談例数は少ないが学生さんや教職員の方、卒業生の方などが相談室を利用された。
昼食持参または昼食後休み時間に来られる方が多い。
相談内容は自分のこと(心と体)
、家族間のこと、子どものこと、就職活動、将来の妊娠、出産、更
年期についてなど様々である。相談時間は 30 分から 1 時間内である。
2.私事ではあるが今年度より奈良県助産師会の役員として活動をしている。本部は東京に公益法人
日本助産師会として位置し、全国 47 都道府県助産師会と関係し組織化している。関連団体として全
国助産師教育協議会、研究発表や学術集会を行う日本助産学会、看護師・保健師・助産師の団体であ
る公益法人日本看護協会、世界中の助産師が加盟する国際助産師連盟(ICM)などがある。3 年毎に
ICM 総会・学術集会が開催されている。
(2014 年チェコ・プラハで開催)2015 年 7 月には第 11 回
ICM アジア太平洋地域会議・助産学術集会が横浜で開催される。
このように日本だけでなく、世界中の助産師は専門職として助産の質向上をめざし、女性や子ども、
家族のための助産サービスを提供し、女性の生涯を通して思春期から赤ちゃんを産み育てる成熟期、
更年期、老年期に至るまでの健康相談の実施、助産ケアの質向上のための研修会企画、国や行政との
連携、国際関係など幅広い活動を実施している。
母性支援相談室は、将来の妊娠・出産・子育てなどの準備教育や、教職員の子育てや更年期の悩み
などを相談していただける場所である。ここを訪れる方々にとって、この場所が地域における助産師
会の活動に継続的につながる相談場所となるよう努力したい。
<火曜日>
担当 島本太香子(産婦人科医師)
今年は、母性支援相談を担当させていただいて 3 年目となった。
日々相談にあたるなかで、相談内容の多様化を認識している。今年度の統計をこれまでの推移と比
較しながら、最近の動向を考察していきたい。
1.母性支援相談室の利用者の状況
(1)新規相談者の状況
新規相談者は 4 月、7 月、10 月に多かった。(新規相談者数 表 1)
新学期の始まった直後に多くの新規相談者が訪れたが、これはチラシによる周知により来室したもの
が多い。
(来室のきっかけ 表 5)
今年度は一学期が終了する頃に多くの相談者があったが、これは島本が担当する講義を受けて相談
を希望して来室したものが多かったことによる。
また今年度の特徴として、卒業までに月経に関する心配を解決したいという四回生が後期に多く来
室した。
さらに今年度は、集計表に数は計上していないが、卒業生がメールにより相談を寄せたことへの対
応、休暇中の突然の体調変化などについてメールで相談をよせた学生への対応があった。このような
来室が出来ない場合の相談に対して、どのように対応していくかが今後の検討課題である。
63
(2)相談の時期
相談者の月別のべ件数では、これまで同様、新学期に入ってすぐの相談者が最も多く、夏休み明け
の秋に二つ目のピークがある。昨年度は前期の方が 2 割多かったが、今年度は、前期の方がやや多く
なった。
(月別相談件数;表 1)
(3)相談者の内訳
相談者の所属では、一昨年度は大学生:院生=5:1、昨年度は 3:1、今年度は 3.4:1(所属別相
談者;表 2)であり、院生の利用が徐々に増加している。また今年度は教職員の相談が増加している。
今年度は教職員(研究生を含む)の増加がみられた。なおこの集計には前期にメールで相談のあった
卒業生、休暇中のメールでの相談対応の数は含まれていない。
大学生の学年別内訳は、四年生が半数を占めた。
(4)相談者の来室のきっかけ
今年度は、母性支援相談室のパンフレットを見て来室したものが半数を占めた。また、HP を閲覧
して来室したというものは 15%であり、これからも母性支援相談室をわかりやすく周知していく大切
な手段としてパンフレットや HP を充実させていくことは重要であると考えられる。
また昨年度と引き続き、3 割(来室のきっかけ 表 5)が授業をきっかけに来室していた。平成 21
年度より本学の「ジェンダー生理学」の講義を担当させていただいているが、女性としての的確な身
体管理の重要性を伝えることも大切な目標としてきた。高校までの保健体育や家庭科教育で、既に一
般論として健康の知識を持っていながら、実際に自らの身体の管理や対処にその知識がいかされてい
ないことが学生のレポートから明らかになっている。日頃気になる身体症状等があった場合、そのま
ま放置するのではなく、相談という行動につなげられるように、これからも引き続き、自己の健康管
理を実践する重要性を啓発してきたい。
2.医療機関との連携
母性支援相談室への相談者のなかで医学的な対処が必要な場合は、医療機関を紹介している。医療
機関への紹介は 8 件で、新規相談者の 4 割を占めた。(医療機関への紹介状 1 月現在 表 7)
今年も引き続き、紹介機関との連携を密にし、受診の支援を行うとともに、投薬が必要な場合は、
服薬の時期の確認と基礎体温の管理など日常生活での医学的な経過の管理を実施してきた。
専門医療を提供する主治医と学生の生活全体を支援する母性相談室の連携により、必要な医療が適
切に行われ、症状が改善していき、その改善の状況を本人がリアルタイムに実感することができる。
また、治療を受ける期間中、本人が自らの健康管理の意識を持つことにより、健康的な生活を支え
ることが可能となった。
今後とも、医療を提供する主治医と母性支援相談室との連携を密にして母性支援の充実を図ってい
きたい。
さらに、後述するように大学卒業や大学院の修了に伴い遠方への異動がある場合、継続的な治療の
ために異動先の医療機関を紹介してきた。これまでの治療経過などの診療情報を本人の許可のもと新
主治医へ提供出来たことで、スムーズな治療継続が可能となった。紹介先の医療機関からも順調な経
過に関する返信をいただいている。
3.多様化する相談内容
(1)来室時の主訴
64
昨年度と同様に、大半の相談者は月経関連の異常の自覚から来室しており、最も多い相談内容である
(相談内容;表 7、図 2)
。
これまでの母性支援相談室の相談内容の動向と同様で、「月経周期の不順」が最も自覚されやすい
症状であった。
相談を進めるにつれて、不順に伴う他の諸症状に自ら気が付き、様々な症状との向き合い方や自分
自身のからだ全体の体調管理を意識出来るようになっていく場合が多い。
月経周期の不順を改善する治療を行いながら、それまでの生活習慣や学校生活上の行事のストレス
などにも言及していくことで、学校生活と症状の関連性を認める場合も多い。これらの場合、自らの
健康状態を把握しながら日常生活を送るという視点がいかに大切かを自覚できるよう心がけた。
(2)相談内容の「その他」にみる多様性
昨年度は相談内容の「その他」に分類される相談が全体の 4 割近くであったのが、今年度は半数を
占めるようになった。
月経関連症状や婦人科系症状だけではない「その他」の相談がこのところ増加している。
この理由として、最近は来室時の主な訴えは単一ではない場合が増加傾向を示していることがあげ
られる。
相談者の多くが、身体的症状にとどまらず、学生生活に関連した相談があり、内訳を見てみると「学
業」3 割、
「就職活動」2 割、
「クラブ活動」2 割、
「アルバイト」1 割、
「家族関係」5%であった。
(表
8
その他の内訳 図 3)
また昨年度に引き続き「その他の体調不良」として、月経周期に伴う日頃の体調不良を心配するも
のも認めたが、自分の体調の変化を理解し自己管理がすすんだためか、その割合は減少した。
「めまい」
「気分が悪い」などの症状には、相談室で血圧測定をして、体調不良の自覚とともに客
観的な自己の身体的状況を理解し、自覚症状があった場合の適切な対応方法を身につけることが出来
たと思われる。また、体重測定を母性支援相談室で継続的に実施して、食生活の指導や全身管理を行
った。その他に精神的な状態に関わる相談もみられ、母性支援と並行し精神科での確実な治療の支援
を行った。
(3)学生生活全体を踏まえた相談
上述の様に、相談室を訪れる相談者の相談内容は、単一でないことが多い。特に、身体症状だけで
なく、その背景となる学生生活の悩みに関することの相談が多く見受けられる。これは学生生活を送
る上で、様々な環境が精神的身体的な健康に影響を及ぼしていることを示しており、個人によりスト
レスの原因となる事情は異なる。この多様化に対応して、相談者の生活全体を見守り支援する視点が
重要であると考える。
(4)個性に応じた相談と指導
個人により健康感は異なり、自覚される症状にも違いがある。また、症状の背景にある自己の生活
習慣への関心も違いがあり、
「母性」のとらえ方も相談者により差異がある。それとともに、基礎体
温表の測定手順や記録方法や結果管理、服薬管理なども個々の生活事情や個性により、それぞれに必
要な指導方法が異なることを実感している。学科や学年による事情の違いはいうまでもなく、相談者
の個性に応じた健康管理意識を啓発できるように、きめ細やかな相談を今後も続けていきたい。
(5)学生生活のイベントに連動した相談
学生と院生により、相談の集中する時期に差異があることは、上記1.(2)の利用者の状況です
でに記述したが、相談者の体調や心理状況が様々なイベント(卒論、ゼミ、テスト、就職活動、学会、
65
クラブ行事等々)に左右されることをケースの経過を追うなかで実感している。今後とも、相談者の
学生生活全体の流れの中で、自己の健康状態を把握し、適切に対処するという視点を身につけていけ
るような相談を続けていきたい。
4.卒業や進級に伴う対応
卒業により遠方に移動する学生から、移動先で通院が出来る医療機関の紹介の希望があったので、
条件に合う医療機関と医師を照会、本人の了解のもとこれまでの医療的な経過と支援方針を伝える紹
介状を書き、継続的な治療や経過観察が可能な様に手配した。自らの身体について不安なく新しい生
活に向けてスタートを切る支援を行うことが出来た。
今年度は女子大を離れたあとの新しい生活の中で、身体とこころの相談をメールで受けた。症状に
応じた対応について返信し、近隣で受診可能な医療機関を紹介した。女子大を離れたあとも元気に新
しい生活を続けているとのことである。
新しい学年に進級した学生も、継続的に必要な支援を実施してきた。学年が進むにつれ、勉学やク
ラブなどの生活が変化して行くことに伴い、生活環境から受けるストレスや疲労の質的な変化がある
ことを意識しながら、学生への支援を行ってきた。
5.継続的な支援
相談を受けている事例で、母性支援相談室が休暇中で開いていない時、症状の変化がありどのよう
に対応するべきか本人から相談を受けることがあった。医療機関からの投薬を受けている場合などで、
タイムリーな指示が必要となる場合がある。そのような場合は、必要に応じてメールによる相談を実
施した。
またメールを使って、卒業後に新しい環境での相談が寄せられた(前述)。途切れのない継続的な
支援を行うために、相談方法としてメールが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
6.支援の終了
私が母性支援相談室を担当してから、相談を受けて身体的症状に対する治療を行い、その後も継続
的に自己管理の指導を続けた結果、身体症状が改善して、相談終了となる学生が認められた。症状の
治癒はよろこばしいことであるが、それだけでなく、彼女らはみな、将来的に同じ様な症状が認めら
れた場合も、的確に対処する方法を学んだと話していた。これから女子大を離れて社会人として生活
するなかでも、自信を持って自己の母性管理を行っていってくれると信じている。
7.母性支援相談室内の連携
昨年度に引き続き、母性支援相談室を安心して過ごせる場所にする工夫をしてきた。開放的な相談
スペースや休憩出来る長椅子を確保し、参考資料の充実に努めた。これにより、来室者が書棚の書籍
や参考資料を気軽に参照することが多くなった。また体調不良時の適切な対処の指導や、勉学とクラ
ブ、アルバイトなどの生活全体の流れのなかでの体調管理について、時間をかけて説明し、相談を深
めることが可能となった。
母性支援相談室の広報については、講義中にパンフレットを配布し、コーディネーターに母性支援
相談室の場所や予約方法など具体的な説明をしていただいた。
また、学生からの相談依頼のみならず、症状や対処に関するメール等での問い合わせや、受診の連
66
絡など、コーディネーターがきめ細かく迅速に対応し、タイムリーな支援を行うことができた。さら
に宮田先生との連携により、多角的な支援が必要な学生へのきめ細やかな対応が可能となった。
今後とも、相談者にとって利用しやすい母性支援相談室であるように関係者間の連携を密にしてい
きたい。
8.今後の方向性と課題
先に述べたように、相談者の相談内容は多様化しており、自覚された症状のみへの対応ではなく、
必要に応じて背景にある生活全体を意識した健康管理が必要となってきている。
今後とも、相談者の学生生活の流れや入学、クラブ、アルバイト、就職活動などの様々なイベント
に応じた適切な症状への対処方法と健康管理について、学内の他部門とも連携しながら指導していき
たい。
また今年度は、集計表に数は計上していないが、卒業生がメールにより相談を寄せたことへの対応、
休暇中の突然の体調変化や医療機関を受診したあとの指示などについて、メールで相談をよせた学生
への対応があった。このような来室が出来ない場合の相談に対して、どのように対応していくかが今
後の検討課題である。
さらに今年度は後期に入って四回生の新規相談者が多く来室した。それまでの学生生活のあいだ心
配でありながら様子を見ていたことについて、卒業までに解決したいということであった。学生生活
の多忙さのためについつい後回しになっている症状について、いつでも相談につながるように、これ
からさらなる啓発や広報が必要と思われる。
67
平成 26 年度の母性支援相談室利用状況
表 1 月別相談者件数
新規
表 2 月別所属別相談者件数
再来者数
計
学生
院生
教職員
合計
5
1
6
4月
1
3
2
6
5月
2
4
6
5月
5
1
0
6
6月
0
6
6
6月
4
2
0
6
7月
5
14
19
7月
16
3
0
19
8月
1
2
3
8月
2
0
1
3
9月
1
6
7
9月
2
2
3
7
10 月
4
6
10
10 月
8
2
0
10
11 月
1
7
8
11 月
7
0
1
8
12 月
1
10
11
12 月
7
2
2
11
1月
1
9
10
1月
6
2
2
10
58
17
11
86
前期
4月
後期
2月
2月
3月
3月
21
合計
表 3 年代別相談者数
65
86
合計
表 4 所属別相談者件数
26 年度
学生
院生
教職員
計
10 代
12
平成 18 年度
4
3
3
10
20 代
63
平成 19 年度
63
20
1
84
30 代
10
平成 20 年度
62
37
31
130
40 代
0
平成 21 年度
34
23
53
110
50 代~
1
平成 22 年度
43
32
26
101
合計
86
平成 23 年度
117
8
11
136
平成 24 年度
97
22
0
119
平成 25 年度
56
17
0
73
平成 26 年度
58
17
11
86
合計
534
179
136
849
※以上平成 26 年度分については平成 27 年 1 月末までの集計数を示すものである。
68
20
18
16
14
22年
12
23年
10
24年
8
25年
6
26年
4
2
0
4月
5月
6月
7月
図1
表5
8月
9月
10月
11月 12月
1月
2月
3月
過去 5 年間における月別相談者件数
母性支援相談室来室の端緒
来室のきっかけ
チラシ・パンフレットを見て
表 6 予約経路
人数
予約経路
11
件数
20
メール
HP を見て
3
電話
紹介(友人等)
0
直接来室
22
保健管理センター等からの紹介
1
カウンセラーの指示による
40
その他(授業等)
6
その他
合計
21
3
1
合計
86
※以上平成 26 年度分については平成 27 年 1 月末までの集計数を示すものである。
69
表7
相談内容の内訳
相談者
件数(複
数回答)
医療機
関への
への
紹介状
発行数
2
0
68
7
2
1
28
0
心療内科系
6
0
妊娠出産
1
0
育児相談
1
0
介護相談
0
0
その他
100
0
合計
208
8
月経痛
月経不順
無月経
婦人科系(※)
月経痛
1%
月経不順
33%
その他
48%
無月経
1%
介護相談
0%
育児相談
0%
婦人科系
13%
妊娠出産
1%
心療内科系
3%
図 2 相談内容の
の内訳
(※)月経前緊張症、不正出血、帯下
帯下、
不妊、避妊等を包括して婦人科系
婦人科系に分類
表8
相談内容内訳「その他」の
の内訳
相談者件数
その他
他の
体調不良
3%
(複数回答)
)
婦人科系以外の
体調不良
3
食事指導
0
家族問題
4
学業
33
部活等学生生活
1
17
対人関係
5%
その他
9%
家族問題
4%
食事指導
0%
学業
33%
就職活動
22%
7
バイト
22
就活
対人関係
5
その他
9
合計
アルバイト
7%
部活等学生
生活
17%
100
図3
相談内容内訳「その他」の
の内訳
※平成 26 年度分については
については平成 27 年 1 月末までの集計数を示すものである
すものである。
70
女子大生
女子大生の月経関連症状に関する考察
母性支援相談室 産婦人科医 島本太香子
【目的】
女子大学生への健康教育は、生涯にわたる女性の健康支援
健康支援の機会として予防医
少子化社会において女子大学生
学的に意義深い。今回は、女子大学生
女子大学生の自覚症状と受療行動の調査の中で、月経関連症状
経関連症状と健康認識
の実情につき報告し、将来の健康管理
健康管理に向けたきめ細やかで具体的な母性に関する
する啓発の方策を考察
した。
【方法】
1〜4 年生の女子大生の 105 名
名に、月経関連症状、健康認識につき自記式アンケートを
アンケートを実施し、結
果を分析した。
自覚症状の程度は「なし」
「がまんできる
がまんできる程度」
「気になる」
「なんらかの対処
対処が必要」の 4 段階の
中から選択させた。自分自身の健康感
健康感の意識は「とても健康」
「健康」
「どちらかというと
どちらかというと健康」
「ど
ちらでもない」
「どちらかというと
どちらかというと不健康」
「不健康」
「とても不健康」の 7 段階
段階の中から選択させた。
(図 4 に示すように「とても不健康
不健康」を選択した者はいなかった。
)
【結果】
異常
月経周期の異常
1.月経周期の異常
稀発月経
など
26%
4 割の学生がなんらかの月経周期
月経周期の異常を
自覚していた。最も多いのは稀発月経
稀発月経などの
いわゆる月経不順であり、4 人に
に一人が自覚
していた。10 人に一人が 3 ヶ月以上
月以上の無月
なし
58%
経を自覚していた。
無月経
10%
不正出血
6%
有無
月経関連症状の有無
2.月経関連症状の有無
その他の
症状
9%
4 人に三人は月経に関連したなんからの
したなんからの症
状を自覚していた。7 割近くの学生
学生が下腹部
なし
23%
痛を経験している。その他の症状
症状として挙が
られたものには、頭痛、腰痛、倦怠感
倦怠感等が挙
げられている。一方、何らの関連症状
関連症状を自覚
下腹部痛
68%
しない者も 23%いた。
71
下腹部痛度)
月経関連症状(下腹部痛度
3.月経痛の程度
頻度の高い月
月経関連の症状でもっとも頻度
経痛について、その程度を質問したところ
したところ、
なし
31%
対処が
必要
29%
全体の 1 割はがまんできる程度、
、3 割が日常
生活上で気になる程度、3 割は何
何らかの対処
が必要と回答した。
気になる
29%
4.健康認識
がまん
出来る
11%
の健康認識
女子大学生の
「自分の健康状態をどのように
をどのように認識してい
どちらか
というと
不健康
数以上が「健康」、
「どちらかというと
どちらかというと健康」
9%
が 23%で、8 割以上の学生は健康
健康であると認
どちらで
識していた。「どちらでもない」
」と「どちら
もない
9%
かというと不健康」はそれぞれ 1 割を占めた。
どちらか
自記式アンケートには「とても不健康
不健康」も選
というと
択肢に含まれていたが、これを選択
選択した者は
健康
いなかった。
23%
とても
健康
6%
るか」について、「とても健康」
」が 6%、半
健康
53%
5.月経痛と健康認識の関連
月経痛の程度と健康認識の関連
関連を下図に示した。月経痛に関して「対処が必要
必要」と答えた群で「あ
まり健康でない」および「不健康
不健康」と回答した者が、他の群に比べて多いことが
いことが目につく。一方、他
の三群においては特筆すべき傾向
傾向は見られず、どの群においても「普通」
、
「あまり
あまり健康でない」と回
答した者が約 70%、
「とても健康
健康」
、
「健康」
、
「まあまあ健康」と回答した者が約
約 30%という結果であ
った。
月経痛の程度と健康感
対処が必要
とても
とても健康
健康
気になる
まあまあ
まあまあ健康
ふつう
がまんできる
あまり
あまり健康でない
なし
不健康
0%
20%
40%
60%
72
80%
100%
【考察とまとめ】
1.月経周期の異常
本調査によると 4 割の学生がなんらかの月経周期の異常を自覚しているが、女子大学生の健康管理
上特に注意が必要なことは 10 人に一人が 3 ヶ月以上月経のない無月経を自覚しているということで
あろう。
月経は生理機能の指標という面があり、月経周期の異常は全身的な内分泌や栄養状態を反映する。
この点に関連して最近話題になってきていることに、女性アスリートの無月経と若年性の骨粗鬆症や
疲労骨折の発生の問題がある。女子運動選手の場合、月経不順、無月経が一般に比べ数倍多く、無月
経の 10 代女子運動選手の 3 人に 1 人が疲労骨折を起こしていたというアンケート結果が報告されて
いる。
競技のパフォーマンスを向上させる等の目的で極度の体重制限を行なうと結果的に無月経になる
が、無月経になること自体は運動のパフォーマンスにマイナスに働かないので当事者や競技のコーチ
にとって問題視されないことが多い。しかし、無月経になるということは本来分泌されるべき女性ホ
ルモンが減少するということであり、その結果これらのホルモンの機能に依存する骨の成長と強化
(骨密度の増加)が阻害される。当然ながら骨密度の低下した骨は脆弱で、激しい運動による物理的
負荷が与えられると比較的容易に疲労骨折を生じるわけである。
こうした無月経と骨粗鬆症・疲労骨折との関係は、運動選手の場合だけでなく、摂食障害や過度の
ダイエットでも起こりうる。
10 代後半から 20 代にかけての女子学生が中心である本学のような場合、
無月経は月経がないという状態そのものだけを気にするのではなく、無月経を起こす何らかの生活上、
健康上の問題が存在している可能性を認識する必要がある。学生自身がそのような意識を促進させる
健康教育が肝要であろう。また、月経不順、無月経を経験している学生を長期間放置せず極力受診に
つなげるような環境を整えることが重要だと思われる。
2.月経関連症状
月経関連症状については、下腹部痛を挙げた者がほぼ 7 割を占め、一般女性での同様の調査と同様
の結果であった。このことから、この点に関しては一般女性に対するのと同様の、痛みに対する適切
な対処法、体調管理、服薬などの指導が中心になると考えられる。一方、下腹部痛がなんらかの器質
的な疾患に伴って生じている可能性に留意し、早期に対処することで将来の重症化を防ぐ必要がある。
子宮内膜症はそうした留意すべき器質的疾患であり、早期に対応することにより将来高い確率で不妊
症に陥る可能性を防ぐことが可能である。
3.健康意識と月経痛
月経痛の程度と健康認識の関連については、「対処が必要な月経痛がある」と答えた群で「あまり
健康でない」および「不健康」と回答した者が、他の群に比べて多い傾向が見られた以外は、特筆す
べき結果は見られなかった。これは逆に見れば、女子大学生において月経痛の程度の強さが自己の健
康認識を左右する因子として重要なものであることを示唆しているのかもしれない。
本研究の一部は、第 61 回日本学校保健学会にて報告された。
73
( 3- 2)
「キャリア形成支援システム」への協力
奈良女子大学キャリア形成支援システムは、卒業生・大学院修了生に対して、結婚・出産・育児な
どの女性のライフサイクルに即したキャリア形成をサポートすることを目的とし、「育児・介護・職
業に関する卒業生・修了生間の情報交換」の運用を始めた。女性研究者共助支援事業本部と学生生活
課では、育児・介護についての相談があった場合の対応について審議し、母性支援相談室が対応する
こととした。キャリア形成支援システムのトップページには、「育児や介護で困られたときに質問を
お寄せいただければ、本学の母性支援相談室からのアドバイスやこのシステムに登録された他のメン
バーからのアドバイスを得ることが可能です」とうたっているように、母性支援相談室が相談窓口と
しての役割を担っている。実際に相談が寄せられた場合は、下記流れ図に沿って関連部署と連携し、
迅速かつ適切に対応できるような体制を整えた。
74
( 3 - 3 )母性支援相談室だよりの発行
今年度は、母性支援相談室の周知を図るために母性支援相談室だよりを 2 回発行した。島本太香子
母性支援相談カウンセラーが担当する「ジェンダー生理学」の講義時において、「母性支援相談室だ
より Vol.4」を受講学生に配布し、
「母性支援相談室だより Vol.5」は、後期ガイダンスの資料配布時
に合わせて約 3000 部を同封した。学生、大学院生のみならず教職員も手にしてもらえるように、図
書館、食堂 2 階ラウンジ等に各数十部の設置を依頼した。今後も、母性支援相談室に関心を寄せても
らい必要な方が相談に繋がるように、母性に関する健康情報や母性支援相談カウンセラーからのメッ
セージ、予約方法等を伝えていく広報活動を継続していくこととする。
母性支援相談室だより Vol.4
母性支援相談室だより Vol.5
75
( 3 - 4 )母性に関する体験講座(全 3 回)
母性支援相談室では、女性として自分の体について知りたい方、様々な人間関係・子育てなど女性
のこころとからだの健康にかかわるお悩みに対して、相談体制を整えている。月曜日担当の宮田母性
支援相談カウンセラーは、女性の健康を守り支援する幅広い役割を踏まえた助産師の視点から、経験
豊富なアドバイスを行っている。今年度の母性に関する体験講座は、参加者が、性・生殖・からだに
ついて興味関心を抱き、将来に向けて役立つ知識等を体現できる機会を提供することとした。平成 26
年 10 月から 12 月まで毎月 1 回全 3 回開催し、延べ計 19 名の参加があった。
【第 1 回内容】10 月 20 日(月)12:15~13:00
「テーマ:自分の体を知ろう、パートナーを知ろう」
妊娠・出産に限界があること、自分のからだのこと、人生のプランなどから考えてみる。意外に知ら
ない自分のからだの内部臓器や機能。男女のからだのしくみや卵子の老化問題などを理解する。
・女性のからだ、男性のからだのしくみ(からだの違い、生殖器、ホルモン)
・卵子と精子の一生(発生、寿命、特徴)
・自分のからだチェック
【第 2 回内容】11 月 17 日(月)
12:15~13:00
「テーマ:妊娠成立と妊娠中の心身の変化」
今回は妊婦体験がメインに以下を理解
・妊娠の診断を医学的にとらえて
・分娩予定日はどうして決まるのか、なぜ決めるのかその理由
・お産の時期の種類を知る
・出生前診断とは(検査方法)
・妊娠中の体の変化と胎児発育
・妊娠中の心の変化と日常生活の過ごし方
・妊婦体験(妊婦ジャケットを着用し妊婦の体型になって命の重みを体験)
【第 3 回内容】12 月 1 日(月)12:15~13:00
「テーマ:赤ちゃんを何処でどのように産むの」
お産のしくみと実際を疑似体験
・赤ちゃんをどこで産みますか?
日本の現状…病院・診療所(クリニック)・助産院・自宅等
・どうやって産みますか?…
医師や助産師の指示を受けて半坐位・側臥位などで
フリースタイル分娩(好きな体位で)
・陣痛が始まって赤ちゃんが生まれるまでの経過
・帝王切開術または無痛(麻酔)分娩とは
・出生後早期接触(カンガルーケア)
76
【参加者の意見・感想】
・具体的にどのくらいの時期にパートナーを選び家族をつくるのがよいのかイメージできました。
・高校生の時に受けた授業よりも、今聞くことでより身に迫って感じることが出来ました。
・ビデオで排卵の様子などを詳しく理解できたのが非常に有益でした。
・妊娠し、子供を出産するというのは、本当に奇跡の連続でかけがえのない体験だと思いました。も
う 1 回位この奇跡を体験できるかな?
・赤ちゃんのことをよく知れてよかったです。
・妊婦ジャケットをいろいろな人に試してもらい、妊婦への理解を深めてほしい。
・妊婦ジャケット体験をしたら、年を取ると大変だと実感できるのでは…
・久しぶりに妊婦モードに入りました。いろいろ大変だったことを思い出し、懐かしかったです。こ
れからの人にも、きちんと学んでほしいと思います。
・何回聞いても初めて知ることがあり、やはり若いうちに知識を深めておくのは必要だと思います。
・多くの出産のサポートを経験されている先生と出産を経験した方々との体験談はふだん聞くことが
出来ないのでイメージが具体的になりました。
・結婚したら自然に妊娠するものと思っていてわりとすぐに妊娠できたが、何も知識がなく、後から
色々と本を見たりして情報を得ていたので、このような事前の勉強はとても心強いです。
・体力をつけようという気持ちが強まりました。自然分娩したいという思いを叶えるためには、今か
ら準備出来る事があるとわかりました。
・これから産む予定はありませんが、
「今どき」を知っておくことは次の世代にバトンタッチするた
めにも大事なことなんだと感じました。また機会があれば勉強させて下さい。
ポスター
講座当日の様子①
↑妊婦ジャケット体験
77
【総括: 母性に関する体験講座を開催して
宮田英子】
今年度も学生さんや教職員の方に向けて母性体験講座を計画した。視点はここ数年「卵子の老化」を
知らない若い世代の方がいるということから卵子と精子の一生から始めて、妊娠・出産へと自分自身
の身体を知りケアするという日常生活における自己管理の大切さである。
第 1 回目:今年度は昼食持参で食べながら聴講できるように 12 時 15 分から講座を開始し 13 時から
の授業に間に合うように終了する計画で実施した。また PR 活動として学生食堂に案内を置き、たく
さんの学生さんの目に留まるよう案内を強化した。そのためか当日予約なしで来られた学生さんが 7
名来られて全員で 10 名を超す参加者となった。13 時前に 6~7 名の学生が授業にもどった。授業の
ない学生は卵子と精子の DVD を視聴し質問を受けることができた。
第 2 回目:短い時間で母性体験ができるよう計画し、配布資料には、妊娠の診断はどのような根拠で
行うのか、分娩予定日を決める理由は何かなど知っていると便利な医学的知識も示した。妊娠の経過
と妊婦の心身の変化を説明し、妊婦ジャケット装着による疑似体験を実施した。満足するお産を目指
して妊娠中を母子共に健康に過ごすためには、規則的な生活、食生活、妊婦体操などの運動など健康
の自己管理が必要であることを強調した。
第 3 回目:赤ちゃんをどこで産むのかについて分娩施設の種類や現状わかりやすく説明し、質疑を行
った。まず赤ちゃんが生まれる適切な時期は妊娠 37 週から 42 週までの 5 週間であること、37 週よ
り以前に生まれると早産、42 週以降にうまれると過期産となりお産のリスクが高い異常産になるこ
と。またお産の方法には自然分娩、計画分娩、麻酔分娩、帝王切開術などがあること。どんなスタイ
ルで産むのかについてもいくつかの種類を紹介した。学生さんは自然分娩に大変興味をもたれた様子
であった。フリースタイル分娩は病院や医院、助産院で行われているが実際のお産の様子は想像がつ
かないので今後、機会があれば書籍や DVD で閲覧する方法もあることを伝えた。赤ちゃんが生まれ
るメカニズムについて胎児と骨盤の関係を示して胎児が最小周囲径(胎児の頭におけるもっとも小さ
い周囲の長さ)で骨盤の中を回りながら産道を進んでいく様子を骨盤模型と胎児モデルを使ってシミ
ュレーションした。最後に昨年度受講生で出産育児を経験された方からのメッセージをお伝えして終
了した。メッセージには妊娠・出産は感動や喜びだけでなく、実際はとてもつらくしんどいものがあ
ることを伝えていただきたいという内容であった。確かにお産は自然現象ではあるが、実際に出産に
伴う苦痛や出産後の育児へのとまどいや悩みなどのありのままの現状を伝えた出産準備教育を行う
必要があることを再認識した。
所感:短い時間ではあったが女性の身体、妊娠出産に興味をもっていただけたと考える。
また、体験講座を機会に継続的に相談に来ていただいた学生さんもいて大変嬉しいことである。この
講座が積極的に自分の身体づくりや精神的な心構えや将来、妊娠・出産にどう立ち向かうかについて
考える機会になったことと考える。特に将来、自然分娩をしたいという学生さんの希望は主体的で頼
もしい。この相談室がきっかけとなり、満足できる自然分娩ができることを期待している。
78
【第 1 回資料】
【第 2 回資料】
【第 3 回資料】
79
第4章
教育研究支援員制度
( 4 - 1 )実施経過と総括
本制度は、平成 18 年度に、出産・育児・介護等に関わる女性研究者の教育研究活動の支援のため
主に博士後期課程修了者を教育研究支援員として採用し、支援者と被支援者双方のキャリア形成、キ
ャリア復帰等のチャレンジ支援・再チャレンジ支援に寄与することを目的として開始された。平成 18
年度~平成 20 年度は、科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」採択期間であり、奈
良女子大学教育研究支援員取扱要項を制定し、本制度の運用を行った。
平成 21 年度以降は、本学独自の経費で実施することになり、奈良女子大学教育研究支援員取扱要
項を改正し、制度利用資格、支援業務、支援員対象者についても見直しを行った。平成 21 年度には、
奈良女子大学教育研究支援員取扱要項を改正し、科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事
業」の下で実施する制度という文言を削除し、制度利用の女性教員と支援員の実績報告書の様式を修
正した。また、本学は、平成 22 年度科学技術振興調整費「女性研究者養成システム改革加速」に採
択されたことに伴い、男女共同参画推進活動、女性研究者共助支援活動、女性研究者養成システム改
革推進活動を機動的・機能的に実施するために、平成 22 年 7 月、男女共同参画推進室を改組し、3
つの推進本部等を置くこととした。そして、9 月に、
「国立大学法人奈良女子大学教育研究支援員取扱
要項」を改正し、教育研究支援員制度利用等に関わる審議は女性研究者共助支援事業本部会議におい
て行うこととした。平成 24 年 12 月には、男女共同参画推進室の組織が男女共同参画推進機構と改め
られたが、教育研究支援員に関わる事務的な作業は、総務・企画課との連携のもと、同じ共助支援事
業本部で行っている。
平成 25 年度末より女性研究者共助支援事業本部(教員組織)では、出産・育児・介護・看護に携
わる女性教員の現状についてより理解を深め、更に効果的な教育研究支援員の配置を行うために、利
用申し込みの記載内容について検討を重ね、見直しを行った。また、教育研究支援員として支援活動
に従事している者(支援活動に従事した者を含む)が履歴書等に「教育研究支援員」と記載する際、
その業務内容の説明が必要な場合には、
「教育研究支援員【出産・育児・看護・介護に携わる大学女
性教員の教育研究活動の補助者】
」と記載するように指示をすることとした。これらの改善内容につ
いては、平成 26 年度の募集の際に学内に周知した。
平成 26 年度の教育研究支援員制度利用の申し込みは、昨年度と同様に 2 期(Ⅰ期は 5 月 1 日から
9 月 30 日、Ⅱ期は 10 月 1 日から 3 月 31 日)に分けて募集することとし、平成 26 年 3 月にⅠ期の
利用者の募集を、8 月にⅡ期の利用者の募集を行った。制度利用資格は、平成 26 年 4 月 1 日現在、
原則として小学校 3 年生以下の子供の養育中、または、介護に携わっている本学女性教員である。支
援業務は、平成 22 年度より研究活動支援から、研究・教育活動支援へと拡大し、支援員についても、
適任者が本学関係者の中で見つからない場合は、学外者(ただし女性)を採用することも可とし、制
度を利用する女性教員のニーズに応えることとしている。
4 月と 9 月に開催された女性研究者共助支援事業本部会議において、教育研究支援員制度適用の資
格や支援員の配置時間についての審議を行った。平成 26 年度本制度の利用が認められた女性教員は、
Ⅰ期に 5 名、Ⅱ期に 6 名(うち 1 名は 10 月~12 月)であり、研究・教育活動の支援業務に従事した
教育研究支援員の数はⅠ期に 7 名、Ⅱ期に 11 名である。本年度は、制度利用教員一人に対し平均で
約 12.5 時間(/週)の支援員の配置を行った。支援時間数は少ないかもしれないが、本学は多くの
80
女性教員に対して本制度の適用を認めている。この制度は、出産・育児・介護に携わる女性教員の精
神的な支えになり、研究の質の向上につながっている。また、教育研究支援員にとっては、研究者と
して独り立ちするまでの期間の経済支援を得られると同時に、キャリアを継続する夢を断念すること
なく支えている制度である。
これまで本学では、教育研究支援員の配置を女性教員に限ってきた。平成 18 年度科学技術振興調
整費を用いた女性研究者の支援プログラムに基づいて、本制度を発足させた。他研究機関でも同様の
取組みが行われ、支援員制度というのは、女性研究者育成の観点から、そして女性の研究力向上の観
点から、効果のある制度として文部科学省も評価している。平成 21 年度からは本学独自の経費で運
用しているが、制度利用の対象は女性教員としてきた。しかし他研究機関においては、女性教員だけ
でなく、女性研究者を配偶者とする男性教員にも配置している例が見られてきた。本学でも男性教員
の本制度利用の可能性について検討を行ったが、女性教員への支援を特徴とするということから、本
制度の対象を男性教員にまで拡大することは見送られてきた。しかし、育児・介護に携わる男性が増
加していることから、女性研究者を配偶者とする男性教員の本制度利用について再度検討する時期に
きていると判断し、女性研究者共助支援事業本部では、昨年度ネットワーク・コーディネーターが中
心となって他研究機関における男性研究者に対する支援員の配置状況等について調査を行い、その調
査結果を本報告書で紹介した。女性研究者を配偶者とする男性教員に対して本制度の適用の可能性に
ついて引き続き検討を行う必要があると思われる。
女性研究者共助支援事業本部では、これまでに何度か、本制度の利用経験のある女性教員と支援員
として活動された方々に対して、本制度の利用効果等について紙面調査や聞き取り調査を行い、その
結果は本報告書で紹介してきた。そのような調査を通して、支援員が気軽に利用できる相談体制の必
要性が見えてきたことから、女性研究者共助支援事業本部では、傾聴等の必要な訓練を受けたネット
ワーク・コーディネーターが支援員からの相談に対して適切な対応を取ることができるように体制を
整備し、本年度の第Ⅰ期から支援員に対して周知を行った。平成 27 年 1 月末現在、相談件数はゼロ
であるが、今後もこの相談体制を維持していく。
女性研究者共助支援事業本部では、常に本制度利用者・支援員の声に耳を傾け、これからも本制度
の改善に向けて努力を続けていく。
81
( 4 - 2 )実績報告書
奈良女子大学教育研究支援員取扱要項にある様式に従い、支援員制度利用の女性教員及び教育研究
支援員は任期満了後、また年度末に実績報告書を提出した。以下にその内容を紹介する。女性教員の
所属・職・氏名は A、B、C 等で表し、対応する支援員の氏名は a、b、c 等で表す。教員に対し複数
名の支援員がついた場合は a1、a2 等の表記を用いる。
【Ⅰ期】
◆教員 A 教育研究支援員 a
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 a:論文・報告書等作成の補助、本研究室所属の学生指導補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 A:7 月に国際会議で 2 本論文が採録されました.

Accelerating the Numerical Computation of Positive Roots of Polynomials using Improved
Bounds, PDPTA 2014, VOL2, p201-207 (2014.7)

Validation of EEG Personal Authentication with Multi-channels and Multi-tasks, PDPTA
2014, VOL2, p182-188 (2014.7)
教育研究支援員には研究の作業の一部だけでなく、研究室での雑務の一部を任せています。その結果
として、研究の本質的な部分にあてられる時間の割合を増やすことができました。業務を任せられる
存在があるということで精神的な負担も軽減されたと感じています。育児の関係上、以前と比べて時
間に制約ができてしまいますので、こうした教育支援員の配置は非常にありがたいシステムだと思い
ます。女性研究者共助支援事業本部の皆様にはたいへんお世話になりました。ありがとうございまし
た。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 a:教育研究支援員として業務を行うなかで,女性研究者としてのキャリア・ライフ
スタイルを体感することができ,今後自分がどうあっていきたいかを深く考えることができました。
自分の人生において,非常に貴重な経験だったと思います。
本事業本部ご担当の先生方と職員の皆様にはたいへんお世話になり,心から感謝致しております。あ
りがとうございました。
また,A 先生には指導教員として私自身の研究指導をしていただき,国際会議で以下の業績を上げる
ことが出来ました。

Validation of EEG Personal Authentication with Multi-channels and Multi-tasks, PDPTA
2014, VOL2, p182-188 (2014.7)
◆教員 B 教育研究支援員 b
82
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 b:日本近代文書のデータ入力、授業講義資料作成の補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 B:支援員配置によって、遠方での介護をしながらも、学部学科長、大学院前期課程専攻長、全
学入試委員の仕事を滞りなく果たすとともに、研究を積み重ねることが可能となった。
前期の研究成果については論文としてまとめたものが、今年度中に出版される予定である。また、今
年は科研費の最終年度であり、研究集約に向けて順調に仕事を進めることができた。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 b:日本近代の女性史関係史料を解読し、データ入力・整理作業に従事させていただ
いた。
さらに多くの事例を集めることによって、当時の女性の在り方を位置づけられる貴重な史料だと思う。
点在する日本史の史料をどのように取り込み、組み立て、研究に活用するか、実践的に学ぶことがで
きた。このことを自身の研究にも意欲的に生かしたいと思う。
また、奈良女子大学教育研究支援員という身分を与えられ、専門的業務内容に携わったことは、将来
にわたって古文書に関わる仕事をしていくうえで、自身の職歴として有意義であった。
◆教員 C 教育研究支援員 c1,c2
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 c1:環境配慮行動に関する調査のデータ分析や学会発表の準備、文献検索等の研究支
援、発達障害のある人のためのコミュニケーション・ゲーム開発の調査補助、子育て・出産に関する
調査の研究支援。教育面では、授業の準備補助、学部生の卒論へのアドバイス
教育研究支援員 c2:環境配慮行動に関する調査のデータ分析や学会発表の準備、文献検索等の研究支
援、発達障害のある人のためのコミュニケーション・ゲーム開発の調査補助、子育て・出産に関する
調査の研究支援。教育面では、授業の準備補助、学部生の卒論へのアドバイス
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 C:今年度前期は、ペアデータ調査を行う必要があり、質問紙の準備、共同研究者との連絡、デ
ータの入力など非常に忙しかったのですが、支援員がてきぱきと手伝ってくれたことにより、これら
の業務を滞りなく行うことができました。7 月からは 2 つの学会での発表準備、国際学会を含む 2 つ
の学会におけるアブストラクト投稿準備などがありましたが、支援員がデータ分析等手伝ってくれた
おかげで、それらの締め切りをクリアすることができました。
c1 さんは昨年から支援員となっていますが、業務にも大分慣れてきたため、自分でもいろいろ工夫を
しながら仕事を行ってくれています。また、同じ研究分野であるため、内容についてディスカッショ
ンしながら進めていくことができるのは、私自身の研究のためにも大変役立っています。
c2 さんは大変まじめに勤務しており、今年度前期からは科研で他大学との共同研究を始めたのですが、
それにも積極的に関わってくれています。
83
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 c1:教育研究支援員として採用され、論文執筆のための分析などを手伝うことにより、
以前よりも多様な統計分析を実行することが可能になりました。また、学会発表のお手伝いをするこ
とにより、より分かりやすく効果的な発表の仕方を学ぶことができ、自身の発表にも生かすことがで
きます。Amos での分析を支援員の仕事の一貫として行っていたことにより、自身の研究で Amos を
用いた確証的因子分析などの分析をスムーズに実施することができ、研究面でもここで得た知識が非
常に役立っています。論文検索や分析を通じて、異なる領域の理論や方法を学ぶことができ、自身の
研究者としての視野も広がりました。
教育研究支援員 c2: 研究支援や調査補助を通じて、私は研究資料作成能力及びリサーチスキルを身
に付けることができました。最初は、質的調査をやっている私は量的調査が苦手でした。調査データ
の分析を通じて、量的調査と質的調査のノウハウを把握することができました。課題に対して正確な
調査方法をどのように選択するか、回収したデータをどのように解釈してまとめるのがよいか、読み
やすい PPT や報告書をどのように作成するのかという流れを把握しながら、キャリア形成に役立つス
キルが身に付きました。その結果、平成 26 年度の自分の若手女性支援経費が採択されました。さら
に、支援経費を活かして、自分の研究のために、アンケート調査とフィールド調査を二つ行いました。
これらのデータに基づいて、今年の 10 月に行われる学会で発表する予定です。
先生の負担を減らすため、洞察力及び重要なことは相談、そうではないことは自分で考え、判断する
という能力を身に付けられることを目指して、頑張りたいと思っています。
◆教員 D 教育研究支援員 d1,d2
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 d1:授業のための資料の整理・作成補助、研究資料・研究情報の収集・整理
教育研究支援員 d2:学生指導の補助、授業のための資料の整理、作成補助、データ入力
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 D:今期は昨年度に引き続き 3 期目の d1 さんと、新規の d2 さんの 2 人の支援員にお願いしま
した。今回は授業資料作成、整理を主にお願いしたのですが、2 人とも専門的な知識に長けているお
蔭で、かなりの部分を任せることができ助かりました。今回は期間の途中に新たに私の妊娠が分かり、
体調不良で仕事が滞り指示もできない時期があったのですが、事前にお願いしていた作業を、時には
自ら判断して臨機応変に対応し続けてくれた支援員の存在は、物理的にはもちろん、精神的にも大き
な支えとなりました。
現在 2 歳児の母であり、夫はほとんど単身赴任のような時期もありましたが、周りの方々に支えられ
ながら大学の業務を何とかこなし、何とか家庭を維持できたのは支援員のお蔭であると感謝していま
す。
支援員のお二人と女性研究者共助支援事業本部の皆様には、大変お世話になりました。深く感謝いた
します。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 d1:この半年間は主に資料の作成と、そのための情報収集をさせていただきました。
84
普段触れることのない内容の資料の作成であり、さらに昨年度とは全く違う業務内容を行うことがで
きたので、そのための情報収集によって自分自身の知識を広げることにつながりました。D 先生には、
こなすだけの業務ではなく私自身のプラスになるような仕事を与えていただき非常に感謝していま
す。今後さまざまな仕事をする上での参考にさせていただきたいと思います。
教育研究支援員d2:主に、出欠などのExcelファイルへのデータ入力や、先生が作成された問題の解
答例をTeXと呼ばれる組版処理ソフトウェアを使って作成しました。TeXは論文作成等で使用してい
ますが、今回の解答作成により新たな技法を身に着けることができたと感じています。解答作成を通
じて自身のその分野における良い復習にもなりました。さらに、先生がどのような部分に考慮し問題
を作成されたのかについて聞かせていただくこともでき、研究者としてだけでなく、教育者としての
姿勢に触れることができたことも自身の今後の研究活動、教育活動の糧となると思っています。
支援員として採用していただいたことは、研究を続けていく上での経済的な支えになったことはもち
ろん、育児をしながら研究、教育をされている先生の姿を間近で拝見できる機会にもなり、自身の今
後を考えるにあたって大変良い刺激になりました。
◆教員 E 教育研究支援員 e1
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 e1:研究や実習の補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 E:今年度は、臨床心理コースを立ち上げ、学部 1 年生、大学院修士 1 年生、博士 1 年生を迎え
るという大きな仕事が始まる年度です。さらに、今年度より臨床心理相談センター長としての業務が
一気に増えることになりました。とくに前期は、大学院生に臨床心理実習の現場で、実際にさまざま
な支援活動に関わる実践の場を開拓し、実習指導を始めるという大きな任務がありました。
今回、博士後期課程の e1 さんに、指導担当の私の補助として、その実習指導と実践研究の一端を手
伝っていただき、たいへん心強く仕事を進めることが出来ました。修士 1 年生たちも実習先で困った
ときには e1 さんにも相談することができ、心強かったことと思います。
また e1 さん自身も、博士論文のテーマである「心理教育プログラムの開発とその効果測定」につい
て、修士 1 年生 7 人の協力を得ながら、実習先でデータを収集し、博士論文のための研究の一つを遂
行することができたのではないかと思います。来年度に向けて、実習先で行った研究を、共同研究と
していくつかの学会でも発表してもらいたいと考えています。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 e1:現在従事している業務は、○○学園大阪校(以下○○学園)における E 教授の
教育研究活動の支援員としての活動である。○○学園は府内の小学校中学校に在籍する不登校児童・
生徒の支援校であり、教育研究支援員として児童・生徒の学習支援と学校生活への適応を促す支援を
行っている。特に、学校生活への適応支援では、学校生活に必要な様々なスキルを学べるように心理
教育プログラムを実施している。
本学大学院後期課程における主たる研究テーマは「不登校生の学校復帰に向けた支援」及び「学校現
場で使える予防開発的アプローチに関する心理教育プログラムの提案とその効果」についてであり、
85
支援員としての○○学園における業務は博士論文の研究テーマに沿ったものである。こうした活動の
中で得られた知見は、博士論文の研究成果につながるものと考えている。
【Ⅱ期】
◆教員 A 教育研究支援員 a
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 a:論文・報告書等作成の補助、本研究室所属の学生指導補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 A:今期の業績は以下の通りです。

Biometrics Authentication Based on Chaotic Heartbeat waveform, 7th BMEICON, pp.1-5,
Kyushu, Japan, November 2014

ボリュームデータにおける三次元物体の部分認識, 情報処理学会研究報告, Vol.2014-MPS-101,
No.9, pp.1-6, 奈良, 2014 年 12 月

機械学習を用いた問題解答のための推論システムの開発, 情報処理学会研究報告,
Vol.2014-MPS-101, No.10, pp.1-6, 奈良, 2014 年 12 月
教育研究支援員には研究の作業の一部だけでなく、研究室での雑務の一部を任せています。その結果
として、研究の本質的な部分にあてられる時間の割合を増やすことができました。業務を任せられる
存在があるということで精神的な負担も軽減されたと感じています。育児の関係上、以前と比べて時
間に制約ができてしまいますので、こうした教育支援員の配置は非常にありがたいシステムだと思い
ます。女性研究者共助支援事業本部の皆様にはたいへんお世話になりました。ありがとうございまし
た。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 a:教育研究支援員として業務を行うなかで、女性研究者としてのキャリア・ライフ
スタイルを体感することができ、今後自分がどうあっていきたいかを深く考えることができました。
自分の人生において、非常に貴重な経験になりました。
本事業本部ご担当の先生方と職員の皆様にはたいへんお世話になり、心から感謝致しております。あ
りがとうございました。
また、A 先生には指導教員として私自身の研究指導をしていただき、国際会議で以下の業績を上げる
ことが出来ました。

Biometrics Authentication Based on Chaotic Heartbeat waveform, 7th BMEICON, pp.1-5,
Kyushu, Japan, November 2014
◆教員 B 教育研究支援員 b
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 b:日本近代文書のデータ入力、講義資料作成の補助
86
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 B:支援員配置によって、遠方での介護をしながらも、学部学科長、大学院前期課程専攻長、全
学入試委員の仕事を滞りなく果たすとともに、研究を積み重ねることが可能となった。
今年は科研費の最終年度であり、研究集約に向けて順調に仕事を進めることができた。研究成果は 27
年度中刊行予定である。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 b:主に日本近世・近代の女性関係史料を解読し、データ入力・整理作業に従事させ
ていただいた。
村方・町方の女性の多種多様な役割に注目することによって、当時の女性と家・町村共同体の在り方
を明らかにし、位置づけてゆくことのできる作業であると思う。点在する日本史の史料をどのように
取り込み、組み立て、研究に活用するか、実践的に学ぶことができた。このことを自身の研究にも生
せるよう取り組んでいきたいと思う。
また、奈良女子大学教育研究支援員という身分を与えられ、専門的業務内容に携わったことは、将来
にわたって古文書に関わる仕事をしていくうえで、自身の職歴として有意義であった。
◆教員 C 教育研究支援員 c1,c2
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 c1:環境配慮行動に関する調査のデータ分析や学会発表の準備、文献検索等の研究支
援、発達障害のある人のためのコミュニケーション・ゲーム開発の調査補助、子育て・出産に関する
調査の研究支援。教育面では、授業の準備補助、学部生の卒論へのアドバイス。
教育研究支援員 c2:環境配慮行動に関する調査のデータ分析や学会発表の準備、文献検索等の研究支
援、発達障害のある人のためのコミュニケーション・ゲーム開発の調査補助、子育て・出産に関する
調査の研究支援。教育面では、授業の準備補助、学部生の卒論へのアドバイス。
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 C:後期には、これまで行ってきた国際比較調査のとりまとめ作業があり、データ分析を異なる
角度から行ったり報告書を執筆するなどの作業があったのですが、支援員の 2 人が作業の補助をして
くれたため、大変な作業もなんとかこなすことができました。支援員の c1 さんは専門分野が共通し
ていることもあり、データ分析の方法にも慣れてきて、自分で考えながら作業を進めてくれています。
c2 さんも、資料収集など効率的に進めてくれました。支援員の補助があったからこそ、共分散構造分
析などの複雑な分析にもチャレンジすることができ、研究の幅を広げることができました。
また、支援員と共に分析の仕方や業務の内容について議論しながら進めていくことができるのは、研
究についての考えを整理する上でも大変役立っています。c1 さんは他大学所属なので、他大学での研
究室の話を聞くことも、奈良女の教育環境を考える上で参考になっています。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員c1:研究支援員として採用され、論文執筆のための分析などを手伝うことにより、以
87
前よりも多様な統計分析を実行することが可能になりました。また、分析前のデータの精査の仕方や、
データの管理の仕方、ファイルの整理法など、学ぶところが大きいです。学会発表の補助をすること
により、表やグラフの効果的な見せ方、ポスターでの配置のしかたなど、有益な経験を積むことが出
来ています。新たな分析法をここで学び、実行することにより、今後の自身の研究の可能性の幅も広
がりました。さらに論文検索や分析を通じて、異なる領域の理論や方法を学ぶことが出来、自身の研
究者としての視野も広がりました。
教育研究支援員 c2:まず、研究支援や調査補助を通じて、私は専門分野の方法論や分析方法を身につ
けることができました。また、報告書の作成や学会発表資料の準備を通じて、研究等プロジェクトを
推進するマネジメント能力を磨くことができました。
次に、調査データの分析を通じて、量的調査と質的調査のノウハウを把握することができました。
課題に対して正確な調査方法をどのように選択するか、回収したデータをどのように解釈してまとめ
るのがよいか、読みやすいパワーポイントや報告書をどのように作成するのかという流れを把握しな
がら、キャリア形成に役立つスキルが身に付きました。
最後、博士後期課程の歩き方について、C 先生から様々なアドバイスをいただきました。先生の話
を聞いてから、将来の自分の未来をはっきり見ることができました。
◆教員 D 教育研究支援員 d1,d2
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 d1:授業のための資料の整理、教材資料作成の補助、教育に関わる事務書類作成の
補助
教育研究支援員 d2:授業のための資料の整理、教材資料作成の補助、教育に関わる事務書類作成の
補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 D:今期は前期に引き続き 4 期目の d1 さんと、2 期目の d2 さんの 2 人の支援員にお願いしまし
た。今回は授業資料・演習問題の解答例作成や、出席状況、レポート提出状況の整理を主にお願いし
たのですが、2 人とも専門的な知識に長けているお蔭で、かなりの部分を任せることができ助かりま
した。配置願いを出す時点で、既に d2 さんが途中でインターンシップに入る可能性が高かったこと、
私自身が途中で産前休暇に入ることが決まっていたという点で通常と異なる状況だった上、私が急遽
病気休暇を取得せざるを得なくなった等、異例続きの状況でしたが、女性研究者共助支援事業本部の
皆様が迅速かつ好意的に対応して、途中での配置時間割変更や例外措置をお認めくださったお蔭で、
本当に助かりました。
後期は講義の合間に産前休暇取得の為の補講を行う必要があり、休暇中も上の子の世話をしながら成
績処理などの雑務に追われていましたが、何とか業務をこなし家庭を維持できたのは支援員のお蔭で
あると感謝しています。支援員のお二人と女性研究者共助支援事業本部の皆様には、大変お世話にな
りました。深く感謝いたします。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
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教育研究支援員d1:今期の前半は主に授業資料・演習問題の解答例作成を行い、後半はそれと合わせ
て学生の出席状況、レポート提出状況の整理等を行いました。
d2 さんから引き継いだ業務は昨年度と同じ内容の業務があったので比較的スムーズに出来たかと思
いますが、授業資料・演習問題の解答例作成では与えられた仕事を時間内で終わらせることが出来な
かったなど、内容的に不十分な部分があったかと思います。しかし今回業務にあたったことは私にと
っては非常に良い経験になりました。今後さまざまな仕事をする上での参考にさせていただきたいと
思います。
教育研究支援員 d2:前期と同様に、名簿作成や授業出席状況の整理、D 先生が作成された問題に対
する解答例を作成いたしました。
11月中頃に長期インターンシップに12月から行くことが決まり、途中までとなってしまい残念でした
が、研究者、教育者、そして母親として活躍されるD先生を近くから拝見させてもらうことは、今回
も自身のキャリア形成を考える上でとても参考になりました。
◆教員 E 教育研究支援員 e2,e3
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 e2:大規模調査データ入力補助、男女共同参画推進のための講演会に関するアンケ
ートの集計補助、実習現場での調査研究補助
教育研究支援員 e3:大規模調査データ入力補助、男女共同参画推進のための講演会に関するアンケ
ートの集計補助、実習現場での調査研究補助
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 E:10 月には科学研究費の報告書を作成するという大きな業務があったが、その編集の補助を
分担してもらうことで、科研費報告書を完成することができた。「こころとからだの健康」プロジェ
クトによる調査データについて、入力補助や分析補助を頼むことができ、研究の作業をスムーズに進
めることができた。また、10 月に開催した男女共同参画推進のための講演会におけるアンケートの
集計を任せることができ、ほかの業務に差し障りなく、調査結果の報告を行うことができた。さらに、
今年度は、修士 1 回生の実習を担当したが、そこでの実習補佐として雑務を引き受けてもらうことが
でき、実習指導の業務に専念できた。これらの研究成果を科研費報告書ならびにジャーナル投稿論文
1 本、そして臨床心理相談センター紀要 3 本(うち 1 本は支援員も含む共著)にまとめることができ
た。
教育研究支援員を配置していただき、大いに感謝いたします。ありがとうございました。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 e2:調査データの入力や、アンケートの集計補助を通して、データの分析方法や解
析、またその結果としての考察の考え方や捉え方について学ぶことが出来た。また、実習現場では、
実習補佐として積極的に動くことが出来、グループワークや心理教育の指導者としてどのような心構
えが必要であり、どのように関係を作っていくのかについて、経験を通して学ぶことが出来た。
教育研究支援員 e3: 10 月には科学研究費の報告書を作成するという大きな業務があり、その編集の
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補助を分担することで、科学研究費報告書を完成することが出来た。「こころとからだの健康」プロ
ジェクトによる調査データについて、入力補助や分析補助を行う(担う)ことで、研究の作業を円滑
に進める事に貢献できた。10 月に開催した男女共同参画推進のための講演会におけるアンケートの
集計や分析を補助することで、調査結果の報告を迅速に行う事に貢献出来た。修士 1 回生における実
習での補佐として雑務を行い、教授の実習指導の害にならないようにした。
◆教員 F
教育研究支援員 f1,f2,f3
〔支援員の業務内容〕
教育研究支援員 f1:実験の補助(実験器具の洗浄・滅菌、試薬の作製、細胞の培養・カウント等)
、
データ入力、研究資料の整理
教育研究支援員 f2:実験の補助(実験器具の洗浄・滅菌、試薬の作製、細胞の培養・カウント等)
、
データ入力、研究資料の整理
教育研究支援員 f3:文献の整理、研究資料の整理、教育研究に関わる事務書類の作成の補助、PC 等
の維持管理、実験器具の洗浄
〔教育研究支援員を配置されたことによる効果〕
教員 F:平成 26 年 10 月から 0 歳児を保育所へ預けて仕事復帰をしました。初めての育児をしながら
の研究教育活動に不安がありましたが、3 名の教育研究支援員(各週 5 時間)の支援を受けて、限ら
れた時間内で着実に研究教育活動を進めていく事ができました。
支援員の f1 さん、f2 さんには、主に実験の補助をしていただき、時間のかかる実験準備やデータ入
力などを手伝ってもらうことで、本年度予定していた研究計画にそって研究を進め、学会発表もする
ことができました。支援員の方々が経験したことのない実験手技についても指導した上で手伝っても
らうことで、お互いにとって有意義な時間となるように配慮しました。支援員の f3 さんには、PC に
よるデータ処理能力に長けていらっしゃることから、主に文献や研究資料の整理や事務書類の作成の
補助、PC 等電子機器類の維持管理をしていただきました。研究教育活動を行なう環境を多方面から
整備していただくことによって、限られた時間内でも円滑に業務を進める事ができました。半年間の
産休・育休のブランクを感じることなく研究教育活動を再開し成果を得る事ができたのも、この教育
研究支援員制度を利用させていただいたお陰だと、心より感謝申し上げます。
〔教育研究支援員として採用されたことによる効果〕
教育研究支援員 f1:私は教育研究支援員として採用されたことにより実験スキルを向上させることが
でき、さらに子育てをしながら働くということを自分の中でイメージすることができたので、とても
良い機会になったと感じている。
まず、支援員として自分の研究ではまだ行ったことがない実験もお手伝いをさせていただいたことで、
その実験で使用する装置の使用方法やプロトコルなども学ぶことができ今後研究を進める上でとて
も役立つ経験になった。また、人の実験の一部を任せてもらうということはその分責任を持ってやら
なければならないので、ミスをしないよう 1 つ 1 つの仕事をより慎重に行うようになり、今まで行っ
たことがある実験の手順なども再確認することができた。
また、私は以前から結婚したとしても何か仕事はしていたいと考えていたが、支援員として採用され
90
たことにより子育てをしながらお仕事をされている F 先生の経験談をたくさん伺うことができ、子育
てと仕事を両立して行う大変さを実感したとともに、将来私も F 先生のように子育てをしながら働き
充実した生活を送りたいと強く思うようになった。
教育研究支援員 f2:自分が普段行わない実験の方法を学べるだけではなく、研究者としての姿勢を見
て、研究への意欲・知識が向上しました。この経験をもとに、自分の研究をよりよく進められるよう、
これからも努めていきたいと思います。
また、教育研究支援員の業務を通じて、女性研究者としてのキャリア・ライフスタイルを体感するこ
とができました。
子育てと研究を両立させている先生の働き方を見て、研究者、女性としての視点で学ぶことが多々あ
りました。これから就職活動を行うに当たって自分の人生について考える際に、この貴重な経験を活
かしたいと思います。
教育研究支援員 f3:支援員として採用され、論文の作成に必要な文献やデーターなどの資料 整理、
会計処理、実験器具・PC などの維持管理など、教員の日々の業務 を円滑に進める事ができる様、時
間がかかる煩雑な作業の負担軽減を中心に考え、補助を行ってきた。 今回支援員となり、女性研究
者のライフイベントと限られた時間内での研究者としての業務の両立の難しさを痛感し、今後の支援
の考え方を学ぶ良い機会となった。
91
第5章
( 5- 1)
「知る・学ぶ・伝える
意識啓発活動
連続講座『心を元気にするヒント~あるがままの自分を生きる~』
」
事業報告
目的(概要)
男女共同参画の根幹である equality(平等=全ての人が等しく大切にされること)の実現を目指し、
「多様な個性の尊重」についての様々な話題を連続講座の中で提供する。初めて知ったこと(「知る
equality」
)
、関連する問題や背景などについて学んだこと(「学ぶ equality」)
、一人ひとりが大切にさ
れる社会を作るために毎日の生活の中で自分が出来ること(「伝える equality」)を参加者に持ち帰っ
て頂くことを目的とする。
実施担当
主催:奈良女子大学 男女共同参画推進機構の 3 本部
(女性研究者共助支援事業本部、男女共同参画推進本部、キャリア開発支援本部)
後援:奈良県、奈良県教育委員会、奈良市、奈良市教育委員会、奈良新聞社、朝日新聞奈良総局、
読売新聞奈良支局、産経新聞奈良支局、奈良人権部落解放研究所、奈良県ビジターズビューロー
活動内容
本学は、基本理念の第一に「男女共同参画社会をリードする人材の育成―女性の能力発現をはかり
情報発信する大学へ―」と定め、平成 17 年に奈良女子大学男女共同参画推進室を設置した。
(*平成
24 年 12 月に男女共同参画推進機構に改編。
)そして基本理念と男女共同参画社会の実現に向け、国
が定める基本計画等に基づき、教育・研究・運営等のあらゆる場面で環境整備を進めてきた。第 2 期
中期目標・中期計画(平成 22 年 4 月~平成 28 年 3 月)には、学内外における男女共同参画の推進
が定められ、この目標・計画達成に向けた取り組みの一環として、平成 22 年度に本事業を開始した。
この事業は、男女共同参画の根幹である「多様な個性の尊重」と「人間の平等(equality)」を身近
な問題として捉え学ぶことを目的として、男女共同参画を含む人権に関する様々な話題を講座等を通
して提供する。平成 22 年度は、ビデオ教材を用いて、日本国憲法に「男女平等」が書かれた経緯を
知ることから始め、家庭における性別役割分業やアジア、ヨーロッパ、アメリカの女性を取り巻く環
境について学んだ。平成 23 年度は、
「幸せに生きるためのヒント」と題した 5 講座を開催し、人権関
連分野で活躍する講師や留学生に、自分を好きになり、元気になるための「秘訣」や、お金やモノか
らは得られない「本当の豊かさ」について、多様な視点から話題を提供して頂いた。平成 24 年度は、
「自分を好きになること」
(自尊感情の育成)をテーマとした 4 回の講座を実施し、体と心の栄養、
対話力、自己・他者受容、出来事の解釈が感情・行動にもたらす影響、自己肯定感の育成を助ける要
因、対人関係の境界線等について学んだ。昨年度は「心を元気にすること」をテーマに、①喪失感・
悲しみ、②不安・恐れ、③怒りの感情の受け止め方・対処の仕方に関する 3 講座を行った。参加者数
は年々増加し、昨年度の参加者数は、3 講座で延べ 570 名(実人数 405 名)だった。このような講座
の開催を求める方々がいかに多いかを示している。
今年度は、
「あるがままの自分を生きる」ことについての 2 講座を開講した。比較や評価が常に付
いて回る競争社会の中で、多くの人は、男/女らしくありたい、
「成功者」でありたい、人望を集めた
92
い等の様々な欲求を持って暮らしている。自分の理想に向かって努力すること自体は悪くないが、そ
のような願望に執着して縛られると、状況をありのままに見ず、その状況は「こうあるべき」という
イメージを投影することで、真実を否定してしまう。そして理想と現実のギャップから失意や苦悩が
生じ、本当の自分を押し殺して生きていかなければならなくなる。更に、地位や財産や才能がいくら
あっても、自分と他者を比較すると、自分が他の誰かよりも劣っているところが必ず見つかるため、
幸せを感じにくい。
「あるがままに生きる」ことは、
「自分勝手に気ままに暮らす」ことではない。事
実をそのままの姿で認め、感じたままの純粋な気持ちを大切にし、心の揺れを自然なものとして受け
入れることである。そして他者の「あるがまま」も尊重し、周囲に感謝しながら、謙遜に愛を持って
生きる姿勢である。そのような生き方は、自分と他者に内在するさまざまな可能性・力を引き出して
開花させ、平和で対等な人間関係を創り出す。自分を他者と比較することなく、自分の過去やあり得
べき未来に照らし合わせることもなく、今ここで、ありのままの自分を受容することは、安定した幸
福感を生み出す。
以下、各講座の内容を紹介する。
第1回
9月13日(土)14:00~16:30 (本学大学会館2階の大集会室で開催)
『<いのち>の力
講
師:金
~自分の中に、外に、それはある~』
香百合さん(ホリスティック教育実践研究所 所長)
参加者数:95名
託児利用者数:5名(1歳児=2名、3歳児=3名)
この講座では、昨年 89 歳で亡くなられた講師の金さんのお母さまの生き方から、命の力の育み方
や心を元気にする方法を学んだ。金さんのお母さまは、自分が産んだ 4 人の子どもと夫の浮気相手が
産んだ 2 人の子どもを「子どもはみんな宝物」と言いながら大切に育てあげた。70 歳まで働いて稼
いだお金は、子どもの教育費等に使い果たし、彼女自身は最期まで借家住まいだった。ギャンブル好
きで浮気癖のある夫を責めずに、
「自分は幸せだった。色んな人に支えてもらった。子どもが人生を
豊かにしてくれた」と言う彼女は、周囲への感謝の気持ちが強く、人からは感謝を求めない。73 歳
の時に夜間中学校に、74 歳の時に定時制高校に楽しく通っていた。素直に人の話を聴き、良いと思
えることを実行していく姿勢さえあれば、人は年齢に関係なくいつまでも成長して輝き続けることが
出来る。
お母さまは 13 年前に脳梗塞で倒れたが、強靭な生命力により車いすで散歩を楽しめるところまで
回復した。お母さまとの散歩中の会話の中で、金さんは多くのことを学び、脚力をつけた。お母さま
が亡くなる前夜も一緒に散歩し、お互いのことが大好きで大切な存在であることや、感謝の気持ちを
伝え合った。お母さまは、あたたかいやり取りの思い出を沢山残して下さった。私たちが人のためと
思ってやっていることは、結局自分のためにもなっている。死ぬまで一度も家族に謝らなかったお父
さまとは対照的に、お母さまは認知症が進んでも、笑顔と人を慈しみ感謝する気持ちを最後まで持っ
ていた。幸せに生きたお母さまと「なんちゅう生き方をするんや」と感じさせるお父さまは、金さん
が人間を研究する上での最高の「モデル」。金さんは、お母さまの生き方から学んだ幸せに生きるた
めの普遍的なポイントを紹介した。
赤ちゃんは裸で小さいけれども、
「可能性の種」を沢山持って生まれてきている。良い環境が与え
られれば、種は芽を出し花を咲かせ、内在している力が溢れんばかりに発揮される。命の力の土台は
93
子ども時代に育まれるため、子ども時代が幸せだとその後の人生を生きやすくなる。しかし大人にな
ってからでも、人間は死ぬまでずっと変化し続けている。そのため「●歳になったから私はあかん」
とか「年とったから私は終わり」等と言っていてはいけない。私たちは、他の人を支え、他の人から
支えてもらい、その相互作用の中で力を得る。命の力の種を豊かに花開かせていくためには、お互い
の潜在的な力を引き出す(=エンパワーする)人間関係が必要である。性別・年齢・障がいの有無等
に関わらず、エンパワメントは起こる。あたたかく優しく自分の話を聴き、心を和ませてくれる人が
いるかどうかによって、私たちの人生は大きく変わる。良い人間関係は、今からでも、いくらでも築
ける。私たちの力を信じ、私たちが自分らしくイキイキと成長するのを傍で支えてくれる親、先生、
友達などを「支援者」と呼ぶ。私たちもそれらの支援者を支え、この繋がりの相互作用から命の力が
湧き出てきて、私たちは元気に生きられる。命の力は、自分の中にあるだけでなく、自分の外にもあ
る。
自尊感情は、あるがままの自分を好きだ、大事だと思い、他人のことも受け入れて大切にする気持
ちである。世の中に蔓延している、他人を受け入れず、自分だけ OK という「自己中心感情」は、私
たちを幸せにしない。自尊感情が高い時は、エネルギーが出てきて、前向きで積極的になり、持って
いる力を発揮しやすくなる。病気になりにくく、学力が伸びやすく、スポーツ等のパフォーマンスが
向上しやすくなる。そして対等な関係を喜んで築き、上手に謝り、人を許し、嫌なことを忘れていく。
一方、自尊感情が低い時は、エネルギーが出てこなくて、後ろ向きで消極的になり、持っている力を
発揮しにくい。偉そうな人の前では発言出来ないが、自分よりも弱い人には八つ当たりして、自分も
他人も許せずに、嫌なことをいつまでも引きずる。自尊感情が低い時には、休憩し、人に話を聴いて
もらいながら、低いなりに生きれば良い。その状態は、輝くばかりの素晴らしい命を持って生まれて
きているのに、傍にいる誰かが私たちを否定するようなことを言い、私たちを悪い魔法にかけてしま
ったようなものだ、と理解すれば良い。
自尊感情を高めるには、体の栄養と心の栄養が不可欠だ。体の栄養は、きちんと寝る、食べる、排
泄することから得られ、体を元気にする。睡眠は一番重要なので、睡眠時間を削ってはいけない。夜
によく寝て朝に気持ちよく起きることが大切だ。食欲は生きる意欲と繋がっている。美味しい、楽し
い、嬉しいという気持ちで、他の命を頂いていることに感謝しながら、丁寧に食べよう。そして悩み
始めたら、ぐちゃぐちゃと考えても脳はどうにも出来ない。だから難しいことは考えずに、空気と緑
のきれいなところを歩くのが良い。睡眠のリズムを整えるのには 3~4 カ月かかるが、それ以外から
得られる体の栄養は、今日から自分で立て直せる。
心の栄養は、あるがままの自分を(失敗や欠点も含めて)受け入れ、自分にあたたかい関心を寄せ、
大切に思ってくれる人々から得られる。認めてもらう、褒めてもらう、信じてもらう、聴いてもらう、
「あなたがいてくれて嬉しい」等の感謝とねぎらいの言葉をかけてもらうことから生じる。自分のあ
るがままを肯定的に聴いて励ましてくれる人が傍にいる時に、自分の記憶の中にある良いものを思い
出しやすい。又、安心・安全な居場所として、家以外にもお金をかけずに行ける居心地の良い場所(例
えば、図書館、喫茶店等)を持とう。更に、脳は笑顔を見ている時に非常に活性化されるので、鏡を
見て口角をあげる練習をすると良い。自ら積極的に出会いをつくるためにも、人にはまず優しい笑顔
を向け、心をこめて挨拶し、愛と慈しみの言葉で会話を始めよう。心の栄養を人からもらったり、人
にあげたりする相互作用の中で、お互いの心が回復し幸せになれる。自分ばかり「頂戴、頂戴」とい
う態度では、上手くいかない。私たちのエネルギーを奪うような人からは距離を置くことが大切だ。
参加者は二人一組になり、対話を通してお互いが持っている元気・幸せを引き出す(=エンパワメ
94
ントする)関係をつくり、講座内容
講座内容の学びを深めた。参加者は、ペアで自己紹介
自己紹介し、好きなもの、し
んどい時の対処法、これまでに自分
自分を支えてくれた人、自尊感情についての話
話を聞いて思ったこと、
自分の体と心の栄養について感じること
じること等を話した。話し手は、心を開いて自分
自分を語り、聴き手は、
黙ってうなずきながら相手の話を
を 100%聴き、聴いた話は大事に胸にしまっておく
にしまっておく。相手が沈黙して
いても、その沈黙に寄り添って相手
相手を支えることが出来る。
私たちは、一生の中で多くの別
別れを体験する。大切な人・ペット、慣れ親しんだ
しんだ居場所、仕事、健
康、自信などを失うのは、誰にとっても
にとっても辛く悲しい体験で、エネルギーのレベルが
エネルギーのレベルが下がる。プロセス
や症状は人によって異なるが、否認
否認、怒り、罪悪感、抑うつ、無力感、孤独感、
、あきらめ、再生など
の段階を経て、ゆっくりと回復する
する。私たちは、どんな喪失体験からでも回復出来
回復出来る。人生は、山あ
り谷ありで、始まりがあって終わりがあると
わりがあると約束されている。死は寂しいけれども
しいけれども、悪いことではな
い。死ぬ瞬間に、
「私の人生は楽しかった
しかった、面白かった、有難う」と思えたら万々歳
万々歳だ。
金さんが提供した幸せ・元気に
に生きるための 8 つのヒントは、①1 日 1 回は外
外に出て体と心を「外
向き」にする。②人とのつながりと
とのつながりと関わりを大事にする。③高齢になってからも
になってからも出来るものを含め、
趣味をいくつか持つ。④年齢を言
言い訳にせずに、新しいことにチャレンジする。
。⑤一人で抱え込まな
いで相談する。⑥笑う。⑦運動する
する。⑧世のため、人のためになることを心がける
がける。
(ボランティア
活動は、自分のためにもなる。
。
)
)金さんから参加者への「言葉のプレゼント」は
は、★まず動く!悩ん
でいる時間がもったいない。★和顔愛護
和顔愛護で始めよう。★大丈夫!あなたの中にエネルギー
にエネルギー発電所があ
るよ。 参加者は、これらの言葉
言葉が記されたカードの裏側に、この講座から学んだことの
んだことの中で、今後
生活に取り入れてみようと思うことを
うことを書き留めた。オープンで優しく愛情深い金
金さんの笑顔に包まれ
て、会場は終始和やかで安心感に
に満ちていた。
アンケート結果より(一部紹介)
)
:「心が晴れやかに、楽になった」
「今後の日常生活
日常生活で取り入れたい
ことが沢山あった」
「涙がこみ上げてきた
げてきた。まだ気づいていなかった自分の心に
に気付くことが出来た」
「今の自分と向き合って何をすれば
をすれば良いのか分かった」
「とても元気になれた」
」
「
「沢山のものを得た。
心が洗われて自分の事を少し好きになれた
きになれた」
「素晴らしい内容をやさしい言葉で
で話してもらって、と
ても良かった」
「いい出会いと気
気づきをいただけて、感謝」
「お話に引き込まれた
まれた」
「心の持ち方、物
の見方で生き方が変わっていく事
事もあるのだと思った」
「楽しかった。胸がわくわくしてきた
がわくわくしてきた」
「話の
展開が素晴らしかった。涙が出るほど
るほど良かった。これからの人生が楽しみ」
「最近自信
最近自信を失くしてい
たので、すごく参考になった」
」
「
「自分が今まで体験してきたことを思い出し、どんな
どんな人生を歩んでき
たかを考える機会だった」
95
第2回
9月27日(土)14:00~16:30 (本学大学会館2階の大集会室で開催)
『インディアンの教え~本当の「誇り」と「自信」を手にする~』
講
師:松木
正さん(マザーアース・エデュケーション 代表)
参加者数:108名
託児利用者数: 4名(1歳児=2名、2歳児=1名、3歳児=1名)
この講座では、アメリカン・インディアンの人々の自然観、生き方、伝統儀式から、あるがままを
受け入れることの大切さを学んだ。講師の松木さんによるインディアンの人々の歌で講座は幕を開け
た。松木さんは、1989 年に YMCA との繋がりを頼りに渡米し、サウスダコタ州にあるインディアン
(ラコタ族)の人々の居留区内で生活をスタートさせた。インディアンの人々は、アメリカ白人社会
への同化政策に伴う激しい偏見と差別を受け、言語・文化が奪われ、貧困から抜け出せない悪循環に
陥っていた。彼ら・彼女らの平均寿命は短く、安定した仕事を持つ人は少なく、生活保護を受けて暮
らす人が多かった。10 歳未満の子が既にアルコールに溺れることも稀ではなく、将来への希望を失
い、成人前に自殺してしまうケースを目の当たりにした。自分の感情が受け止められず、「安心」を
知らずに成長した子も少なくない。そのため、感情を上手くコントロール出来ずに、自分の存在が大
切にされない悲しみを、怒りのカタチで爆発させる子も沢山いた。ある日、松木さんが空手を通して
多くのインディアンの少年たちと親しくなっていることに興味を持ったラコタの人が、(ラコタの 7
つの聖なる伝統儀式の中の 1 つである)
「イニィピー(子宮に帰る)」
(英語名はスウェット(汗)ロ
ッジ(小屋)
・セレモニー(儀式)
)に松木さんを招待した。
スウェットロッジ・セレモニーでは、蒸し風呂状態の小さなドーム型のテントの中で、仲間と一緒
に「今ここ」にある想いを分かち合い、祈りを大いなる存在に送る。参加者全員がスウェッドロッジ
内に車座になり、スピリットを招き入れる歌を歌う。そして真っ赤になるまで焼いた石を、柳の木で
作られたドーム状のテントの中に入れ、閉め切った空間の中で水をかけて、スチームサウナのような
状態を作り出す。このセレモニーでは、ドーム状のテントを大地の子宮に、石を入れるところを胎盤
に見立てている。産道を通ってもう一度子宮の中に入り、心身を浄化し終えてからこの産道をもう一
度通って出てくるため、
「生まれ変わりの儀式」と言える。主な目的は、舞い上がる 100 度近くにも
なる蒸気の中、思考から解き放たれ、身体の内側から湧き上がる祈りを、創造主であるワカン(不思
議)タンカ(大きい)に送ることである。情動的な祈りの中で、「辛くて、辛くて、しかたないので
す」
「どうしたらいいかわかりません、助けて下さい」と言う人もいれば、声を震わせるだけの歌を
叫ぶ様に歌う人もいる。モノクロ写真で見るような戦士の風貌を持つ大柄な中年男性たちが、自分の
祈りの番になるとものすごい勢いで泣いていた。「男は泣いたらあかん」と言われて育ち、マッチョ
の美意識を持っていた松木さんは、その光景に大きなショックを受けた。しかし松木さん以外の参加
者は、彼らの涙をごく当たり前のものとして受け入れていた。
暗闇の中から「ホー(Ho)」という「そうなんだね、辛いんだね」「わかるよ」という共感を表す
相槌が聞こえてきた。参加者は、ただ寄り添うように「ホー」と言って、それぞれの人の「あるがま
ま」をあたたかく受け入れていた。癒しの歌(Healing Song)も聞こえてきて、その歌に混じって泣
いている人もいた。松木さんは、
「ここでは、強い自分でなくても良い。そのままの自分で大丈夫な
んや」と感じ、心が解放された。何を語っても、自分の存在が否定されることは絶対にない。「誰か
にとって都合が良い自分」ではなく、
「あるがままの自分」を皆が受容して、自分のために歌ったり
祈ったりしてくれる感覚は、胎児がへその緒で胎盤と繋がっている安心感に似ていた。
松木さんは、自分が祈る番がくると、あらかじめ一生懸命考えておいた祈りの言葉が吹き飛んでし
96
まい、こらえていた涙がボタボタと流れ、最後は小さな子どもが泣くようにしゃくり上げていた。長
年「弱さ」と思い込み、胸の中に閉じ込めていた悲しさ、寂しさ、苦しさなどのダメな感情がこみ上
げて、言葉になって溢れ出た。気持ちを言葉にしようとすると、言葉が気持ちに追い付かず、実際の
気持ちと言葉が乖離してしまうことがある。自分の今の思いを祈りに出来ない時は、「ミタクイエオ
ヤシン」という(私につながる全てのものたちよ、という意味の)言葉に託し、ただその繋がりの中
にいる自分を感じているだけで良かった。泣いたり叫んだり、声や体を震わせたりしているだけでも
大丈夫だった。儀式終了後、長老のアンクル・ロイが松木さんに声をかけた。「この大地に生きる者
にとって一番大事なのは、信頼(Faith)だよ。信頼のないところには何も起こらない。信頼は、受
け入れることから始まるんだ。
」受け入れるとは、目の前にいる相手の世界に入っていき、相手の「あ
るがまま」を尊重し、相手の「今」に寄り添うことである。スウェットロッジ・セレモニーは、参加
者が自己肯定感を育むための大切な場である。
松木さんは、ラコタの人々が「人の姿(在り方)
」を表すのに用いる「生命の木(Tree of Life)」
(イ
ラスト)を紹介した。最も大切なのは「根っこ」であり、人間にとっての根っこは自己肯定感(私は
存在していいんだという安心感)だ。何かをしているから、何かが出来るから(Doing)という条件
付きの OK ではなく、自分の存在そのもの(Being)に対する無条件の肯定感である。これに対し、
「枝葉」は、
(勉強ができる、お利口さんにしている等の)していること(Doing)の肯定感。「幹」
の部分は自信(=「私は大丈夫」という自分への信頼)であり、根拠のない(Being からくる)自信
と有能感(Doing)からくる自信の 2 種類がある。根拠のない自信を持つ人は、恐れがあまりない。
勉強が出来なくて、学歴が大したことがなくても、
「きっと私は大丈夫」
「私は幸せになれる」等と思
える。一方、有能感からくる自信に依存している人は、学歴があり、裕福で、容姿が良く、能力が高
くても不安である。常に自信が持てる根拠となるものを探し求め、「もしこれが出来るようになった
ら」
「もし●●に認められたら」等と考えている。自己実現するためには、これら2種類の自信が両
方必要だが、自己肯定感という根っこのない所に有能感の幹だけが育つと、中が空洞化しているため
に、周りから大きな力が加わることでボッキリ折れてしまう。一方、自己肯定感の根っこがしっかり
張っている人は、コア(芯)がしっかりしているので折れにくく、万が一幹(自信)が折れても、根
があるから再生出来る。私たちが持つ問題のほとんどは、自己肯定感が育まれていないことに起因し
ている。自己肯定感は、私たちのものの見方を大きく変えるため、過去の辛く悲しい経験等の受け取
り方にも肯定的に作用する。
従来の学校教育では、学生評価の基準を積極的か消極的かという Doing(していること)の観点に
置き、主体的か客体的かという Being(存在していることそのもの)の観点は見過ごされてきた。主
体性とは、このことは自分にとってどうなのか、自分はどう感じているのかという、自分のあるがま
まと一緒にいる在り方、そして客体性とは、人にどう見られているか、人の期待にどう応えられるか
を強く意識している在り方である。必ずしも積極的=主体的ではなく、行動は積極的でも、客体性(
「見
られたい自分」でいる在り方)が強い人は大勢いる。一人ひとりのあるがままを大切にし、たとえ消
極的であっても主体性を持って自分の人生を丁寧に生きられる人を育てていく必要がある。自分の存
在が大事にされる経験を積み安心感を持つと主体性が育まれ、
「私はこう思う」
「私はこうしたい」と
自分の気持ちを表現し、主体性を持って行動出来るようになる。
(親子や友人の)1 対 1 の緊迫した近い関係は、絆が強くコントロールしやすい・されやすい特徴
を持つ。あるがままを認めず、対立を恐れ、力のない方がある方に合わせる。支配され、相手の価値
観に合わせていると、自分の人生の物語の「主人公」として主体的に生きることが出来ない。これを
97
「強い絆」と呼んでいる。反対に、ゆるやかな弛み(自由)のある関係には「深い絆」が存在し、2
人の自由度は高い。相手の信念や思い込みの中に取り込まれず、相手を信頼して自分の気持ちを伝え、
自分の意思で行動出来る。ぶつかることがあっても関係が切れてしまうことはない、という安心感が、
信頼感を生み出す。気持ちの「キャッチボール」をする中で、ボールを投げた時に、相手がそれをし
っかりと受け止めて反応してくれるという経験を積むと安心感を得られる。特に親から安心感をもら
った人は、本当に困った時に誰かに助けを求め、甘えることが出来、自分一人で問題を抱え込まなく
て済む。
松木さんから参加者への「言葉のプレゼント」は、★Fear(恐れ)からする決断は不幸の輪の中へ
引き込む・・・幸せの輪に導くのは Joy(喜び)の感覚だ! ★分かち合うとは、その一瞬一瞬を共
にいて、そのエネルギーを感じ、生命(いのち)の詩(うた)を歌い、生命のダンスを踊ること。★Faith
(信頼)のない所には何も起こらない。参加者は、これらの言葉が記されたカードの裏側に、この講
座から学んだことの中で今後生活に取り入れてみようと思うことを書き留めた。素朴で力強く臨場感
溢れる松木さんのお話と歌に、参加者は真剣に耳を傾けていた。
アンケート結果より(一部紹介):「経済のみを優先して、本来の当たり前のことを無視した日本社
会の現状について考えさせられた」
「日本文化の中で忘れ去られた感覚の大切さを教えて頂いた」
「お
話はどれも深く衝撃的で、涙が流れた」
「日常の迷いや言葉にならない思いをインディアンの歌を通
して表現してもらえたようで感動し、涙が出た。こんなに言葉だけで人に伝えることが出来るのは素
晴らしい」
「ストレートに心に響いた」
「自分にとって心地よい生き方を自分で選び、行動していきた
い」
「こんなに感動する講演は、聴いた記憶がない。もっと若い時に聞けていたらと思ったが、今だ
からこそ、これだけ心に響いたのかもしれない」「人との繋がりに悩んでいたので、解決方法が分か
って良かった」
「人生が違う方向に進みそう。言葉にならない」「心の中を整理できた」「心が随分楽
になった」
「心がスーッと晴れるようだった。ありのままの自分で生活を楽しめそう」
成果と見通し
1.広報について
連続講座のチラシとポスターを作成し、奈良県、大阪府、京都府、兵庫県の公民館、図書館、市町
村役場、社会福祉協議会、人権文化・男女共同参画・子育て支援・青少年自立支援・障がい者支援・
就職支援・高齢者の関連機関、保健センター、消費生活センター、メンタルヘルスのクリニック、い
のちの電話相談、部落解放同盟、YWCA・YMCA、NPO・ボランティア団体等約 650 カ所に郵送し
た。
98
奈良県、奈良県教育委員会、奈良市、
奈良市教育委員会、奈良新聞社、朝日
新聞奈良総局、読売新聞奈良支局、産
経新聞奈良支局、奈良人権部落解放研
究所の後援名義を頂き、奈良県の女性
支援課を通して、奈良県政・経済記者
クラブと文化教育記者クラブ
(合計 58
カ所)に報道発表した。奈良しみんだ
より 8 月号、
ヒューライツニュース
(奈
良人権部落解放研究所のニュースレ
ター)8 月号、産経新聞の奈良版(9/3)
、
奈良新聞(9/13)、朝日新聞の奈良版
(9/26)、奈良テレビ県政フラッシュ
のお知らせコーナー(8/22)で講座を
紹介して頂いた。それから、近鉄奈良
駅構内の奈良県ビジターズビューロ
ーの掲示板にポスターを貼って頂い
た。更に、本学のHPだけでなく、奈
良先端科学技術大学院大学の男女共
同参画室、奈良県、奈良県の女性支援
課、奈良ボランティアネット(奈良県
社会福祉協議会)、奈良 NPO センタ
ー等の HP、そしてマイタウン奈良、
ならまなびネット、ならリビング.com にも講座の案内を掲載して頂いた。本学のメルマガや女性研
究者ネットワーク Newsletter、電子掲示板等でも講座を広報した。
1 回目の講座には 95 名、2 回目の講座には 108 名の方が参加された。ご家族・友人・知人に勧め
られ、ペアやグループで参加された方も多かった。昨年度までの「知る・学ぶ・伝える equality」連
続講座を受講し、今年度の講座も楽しみにしていた、自分で講座の情報を探した、という声も多く聞
かれた。又、参加者の年齢層は幅広く、奈良市外からの方やインターネットを全く使わない方も多く、
「今後も奈良県南部や県外(大阪府や京都府)に向けても、このような講座のチラシを郵送して欲し
い」という要望が目立った。男性の参加者も多く、特に 2 回目の講座では、全体の約半数が男性だっ
た。
2.託児サービスについて
生後 3 カ月~小学校 6 年生のお子様を対象とした無料託児サービ
スへのお申し込みを、各講座開催 1 カ月前から受け付けた。今年度
は、申し込み後のキャンセル数が極めて少なく、効率よく運営出来
た。毎回 2 名のコーディネーターと 4 名の託児サポーターが託児を
実施し、合計 9 名のお子様がこのサービスを利用された。
「託児サー
ビスがあったから、講座を受講出来た。有難かった」と利用者(保護者)に非常に喜ばれた。
99
3. 講座の運営について
事業名の「知る・学ぶ・伝える equality」の「伝える equality」
(講座で学んだことを持ち帰り、
周囲の人々に伝えること)を参加者に実施して頂くために、講師から参加者への「言葉のプレゼント」
(講座の要旨・メッセージ)と自分の生活に取り入れてみようと思うことを書く欄を印刷したカード
を用意した。講師に、参加者への「言葉のプレゼント」に込められている想いを講座の中で語って頂
いた後で、講座で得たこと・決心をしたこと(やってみようと思うこと)を参加者に記入して頂いた。
前年度までに開催した講座の受講は事前申し込み制にしていた。しかし、参加者数は毎年度増え、
特に昨年度は 3 講座で延べ 813 名の受講申し込みがあり、受け付け担当のスタッフに多大な負荷がか
かった。そのため、今年度は事前申込制にしなかった。その結果、参加者数が各講座開始時まで分か
らなく、予測もしにくかった。どのような参加者数でも、会場の雰囲気を壊すことなく、すぐに対応
出来るよう会場設営を工夫した。今年度の講座は、講師の要望により、途中で休憩を入れて 2 時間半
とした。
「長時間にわたり、身体的に少ししんどかった」という声もあったが、
「話をゆっくりと聴け
て充実していた」という感想が多かった。参加者お一人おひとりが大切にされていると感じ、安心し
て受講して頂けるよう、あたたかい場づくりを心がけた。具体的には、会場がある大学会館までの道
案内の看板と貼り紙を多数設置したり、Welcome メッセージをアンケート用紙の裏面に印刷して配
布したり、受付テーブル付近にキャンディーを置いたり、講座開始前後や休憩時間にリラックスでき
る BGM を流す等して、参加者への歓迎の気持ちを表した。参加者の心身をリラックスさせ、和やか
で明るい雰囲気づくりに繋がったと思う。
4. 連続講座全体の評価について
連続講座全体に対しては、
「心が元気になった」「人生観が変わった」「今日からすべきこと、実践
したいことが沢山見つかった」
「学んだことを早速実行したい」
「色んな場面・人間関係で取り入れた
い」
「子、孫に伝えていきたい」等のコメントが多数寄せられた。一人ひとりの個性が大切にされる
環境の実現に向け、あるがままの自分と他者を大切に受けとめて、感情が伝えようとするメッセージ
に耳を傾け、主体的に考えて行動する力を育む(そのきっかけをつくる)という連続講座の目的は、
概ね達成出来たように思う。
「このような講座に、他の人も誘ってまた参加したい」
「毎年この講座(シ
リーズ)を楽しみにしている。同じ講師のお話でも、何回も聞かないと自分のものにならないので、
100
去年の自分より今年の自分の方が理解出来たと感じる時は、とても嬉しい。来年の講座を楽しみに、
この 1 年間頑張りたい」等、心のケアをテーマとした講座のアンコールを求める声も多かった。
大変濃くて深い内容の素晴らしい講座をして下さったお二人の講師の方、足を運んで下さった参加
者の皆様、そして講座の企画・広報・運営にお力添え下さった学内外の全ての方々に、心からお礼を
申し上げたい。
101
( 5 - 2 )男女共同参画推進の意識啓発のための講演会(10 月)
日
時:平成 26 年 10 月 28 日(火)
16:30~18:00
場
所:奈良女子大学総合研究所 N 棟
N101 講義室
テーマ:女性キャリア形成と女子大学の現代的機能
講
師:渡辺三枝子氏
(筑波大学名誉教授、同大学研究センター客員研究員)
主
催:奈良女子大学男女共同計画推進機構
世話人:男女共同参画推進本部
参加者:本学教職員・学生(42 名)
<講演概要>
キャリアの概念についてまず説明され、女子大学が本来持っていた意義とこれからの役割について
述べられ、女性の将来だけではなくリーダーシップを発揮できる人材についてご紹介いただいた。
キャリアの意味は、日本人とアメリカ人では異なる。日本人は山を目指すイメージであるのに対し
て、アメリカ人は、道の両脇にたくさんの箱を並べていくイメージを持っている。この箱は、道を進
むほど大きくなっている。箱の中身は、その道を通過するときに経験したことがつめこまれている。
箱は、放置されるのではなく、必要に応じて、開放され、中身を確認することができる。その際、新
たに感じたことや考えたことを箱の中身と一緒にしまいなおすことができる。つまり、どちらも表現
は違うが、今まで経験してきたことを集めて身に付けていくことが大事である。経験の中には、自分
が望まないネガティブな状況に陥ることもあるだろうが、この予期せぬ経験や新たな経験には、新た
な知識が得られる可能性がある。また、自分で考え、意識的に身に付けることによって、どんな状況
でも、将来に最大限生かしていくことができる。つまり、自分が社会の一員として、様々な知識や考
えの人と一緒に、新たなことに気づいていくことで、不透明な社会をいきぬく原動力となるキャリア
を積むことができる。
女性は順応性が高いためよいが、男性は固定概念を壊すことが苦手である。そのため、国が中心と
なって、男女共同参画が進められている。たとえば、女性の雇用率を 3 割にするとか、同レベルの能
力を持つなら女性を雇用するなどの政策がとられている。しかしながら、これは、やり方を間違える
と、男女逆差別になりかねない。ゆえに、性差を気にせず、能力に見合った待遇を行える社会を構築
することが重要である。この際、参画するのは社会だけではなく、家事、子育て、介護も踏まえる必
要がある。つまり、ワークライフバランスやワークファミリーバランスを考慮すべきである。
女子大学は、女学生ばかりで事を進めなければならないため、ある意味、性差にとらわれない社会
の一例といえる。つまり、社会では男性がしてくれることを、自分たち女性だけで協力しなければな
らない。この女子大学での経験を 1 つのキャリアととらえ、就職後も、男性だけに頼るのではなく、
困ったら男女問わず助け合い、人間としてどうすべきかを考えることができれば、素敵な気遣いがで
きるリーダーとなりうる。この考えは、今にはじまったことではなく、女学校が始まった 100 年前か
らすでに考えられていたことである。女学校で学ばれていたことは、和裁、洋裁、料理が主であるか
もしれないが、これは、良妻賢母を育てるためではなく、社会で自立し貢献するためにその当時必要
だったものである。
102
社会で自立しリーダーシップを発揮する場は、経済的な面だけではなく、社会貢献が大切である。
そのために必要な素質として、考え込まずに行動すること、相手のことを思いやること、優先順位を
考えること、メンター(相談相手)を持っていること、結果をポジティブにとらえること、失敗の中
から学ぶこと、人間関係つくりを大切にすることなどが挙げられる。これらのことは、大学の日常生
活、授業、研究を通じて身に付けることができるキャリアである。特に、女子大学では、性差から脱
却した学生生活が送れるため、男女にとらわれず、他者と協調して仕事をしていく能力を身に付けら
れる可能性を秘めている。このことを踏まえ、時代の少し先を見据えて、今の学生を育てていくべき
である。
<講演会アンケート結果>
参加者は、教職員 28 人、大学院生 12 人、学部生 2 人であった。講演会後の「満足度」については、
「満足(16 人)
」
「やや満足(16 人)
」と肯定的な評価が 86.5%を占めた。講演の内容については「理
解できた(24 人)
」
「やや理解できた(8 人)」となり、難易度についても 84.2%が肯定的な評価をし
ていた。感想としては、
「女性としての“キャリア”を個性、アイテムとして活かそうと思えた(大
学院生)
」
「
“なぜこの道を選んだのか?”
“そこでしか経験できないこと”というフレーズが心に残り
ました。なんとなく学生生活を送っていたので、今しか学べないことは何なのかすごく考えさせられ
ました(大学院生)
」
「性別にとらわれずに個人差・個性に注目した見方・考え方の重要性を感じるこ
とができました。自分自身はもちろん、学生たちにもそれを伝えていこうと思います(教員・女性)
」
「人それぞれの生き方がある。
“キャリア”の意味について改めて考えるきっかけになった(職員・
男性)
」などの感想が寄せられた。
103
( 5 - 3 )新入生向け科目「大学生活入門」での本事業の取り組み紹介
平成 22 年度より、新入生向け開講科目「大学生活入門」がはじまった。この科目は、基礎科目群(主
題科目)に属し、区分は「スタートアップ科目」である。平成 23 年度より前期の水曜日 5・6 限に開
講されている。この科目は、学長、副学長からのメッセージをはじめ、本学の紹介、本学の歴史や大
学生活をおくる上での注意事項を講義するもので、新入生には大学生活へのガイダンスとなるもので
ある。受講者は 1 回生が中心であるが、2 回生以上の受講者もおり、平成 26 年度は 357 名の受講者
があった。今年度は 6 月 18 日に、
「男女共同参画の推進」と題して、男女共同参画推進機構から副機
構長(春本晃江)が講義を行った。講義の中では共助支援事業本部の活動にも触れ、新入生たちに本
学の女性研究者を支援する取組みについて熱く語った。
以下は授業で用いたプレゼンテーションファイルの一部(79 枚中の 16 枚)
104
( 5 - 4 )関西圏の女子大学合同公開シンポジウム-女性の力を今こそ-
日
時:平成 26 年 6 月 21 日(土)
場
所:武庫川女子大学中央キャンパス
中央図書館2階グローバルスタジオ
参加者:47 名
開催概要
社会において女性の力が求められている今日、関西圏の女子大学が連携してシンポジウムを開催し、
女子大学の現状について考える。
プログラム
13:00
開会
基調講演 中川智子 宝塚市長
14:40
パネルディスカッション
参加者:中川智子
宝塚市長
表 真美
京都女子大学発達教育学部教授
徳山孝子
神戸樟蔭女子学院大学人間科学部教授
春本晃江
奈良女子大学研究院自然科学系教授・女性研究者共助支援事業本部長
福尾惠介
武庫川女子大学女性研究者支援センタープロジェクトリーダー
三宅えり子 同志社女子大学現代社会学部教授
16:00
閉会
横川公子氏(武庫川女子大学女性研究者支援センタープロジェクト推進支援室長)の司会のもとでシ
ンポジウムが始まった。糸魚川直祐氏(武庫川女子大学長兼女性研究者支援センター長)の開会の挨
拶の後、中川智子氏(宝塚市長)による基調講演が行われた。講演では、中川氏の経験に基づきなが
ら、実践してきたこと、そして男性も女性も生き生きと生きていける社会を作るために、今私たちは
何を考え、行動しなければいけないかということについて、時折ユーモアを交えながら、熱く語られ
た。中川氏は和歌山の那智勝浦に生まれ、中学まで大阪の貝塚で過ごしたのち横浜の企業に就職した。
結婚後兵庫にうつり、専業主婦として、子育てをしながら地域の PTA などに参加していた。阪神•淡
路大震災の翌年 1996 年に衆議院議員となり、2009 年の春より宝塚市の市長に就任して現在に至って
いる。中川氏の基調講演の概要については後述する。
基調講演の後、中川氏と関西圏の 5 女子大学のメンバーによるパネルディスカッションが行われた。
まず、女性の研究力を向上させるための環境作り・社会で活躍するための課題・各大学独自の取組な
どについて紹介された。当日紹介した奈良女子大学の女性研究者共助支援の現状と課題については、
本稿の最後に記載する。
各大学の取組等の紹介の後、会場から寄せられた質問に対して、中川氏と 5 女子大学のメンバーから
意見・提案が活発に述べられ、予定時間を超過して、シンポジウムは閉会した。
105
《中川智子氏の基調講演の概要》
今日の大きなテーマである男女共同参画は、雇用機会均等法以降、ずっと言われていることである。
現政権でも女性の力の大きさは取り沙汰されており、 日本の未来のために女性の力を生かしていこ
うということが言われている。これは女性問題と言われているが、実際は政治問題だと思っている。
このことを実感したのは 3 年前、あるパーティーでノルウェー大使(女性)と出会ったときである。
大使が私に近づき、女性の市長をやっと見つけた、と言われた。その日は百人ほどの市長がパーティ
ーに参加していたが、女性市長は私一人であった。大使から女性市長は全国に何人いるのか聞かれた
ので、約 1%だと答えると、大使は「それで女性は怒らないのか?意思を決定する場にもっと女性を
入れるように国に訴える声は女性からあがらないのか?」と言われた。もちろんそうなるように努力
していると伝えた。大使によると、法律を制定するまではノルウェーも同じ状況であり、『女性が持
てる力を存分に発揮して、自分の望む人生を生きるように』といくら声をあげても効果はなかったと
いうことである。
ノルウェーは 15 年前、大学をはじめとする教育機関•企業•国会や地方の議員といった、さまざま
な意思決定の場に、女性を 50%登用しなければならないという法律を作った。例えば企業の場合、
執行権を持つ役員のうち女性の比率が 50%以下になったら、国がその会社に対し、違法行為として解
散命令を出すことができる。そのように細部まで詰められた法律がなければ、いくら個々人が頑張っ
ても限度があるということだ。
私が国会で法律を作る場にいたとき、つくづく感じたのが、決定するところには男性ばかりが入っ
ているということである。人間としてどんな社会が望ましいかを考え、持てる能力を発揮するのは難
しい。やはり社会整備の基本は法律である。
男女共同参画の法律を作成するのは難しいと感じたのは、夫婦別姓に関する民法改正の話が国会で
出たときである。当時、自民党の中でなされた議論は「墓は誰が守るのか?」というただ一点だけだ
った。墓の問題だけで、最後まで別姓反対が大多数であった。そういう状況の日本で、女性が生き生
きと生きていくことは本当に難しいことである。
女性が生き生きと生きていける世の中は、男性にとっても楽である。別姓問題のときに、墓のこと
で反対している人たちを見て、男性はもしかすると怖いのかもしれない、半数も女性が入ることによ
って、自分が切られてしまう・女性に自分のボストや既得権利を取られていくと怯えているのではな
いかと思った。実際、男性のほうがいざとなると弱いものである。生き生きと生きられない仕組みの
中で、それでも男だからと言われ続けている男性にとって、今は大変生きにくい世の中である。もち
ろん、女性も生きにくい。それでも この国は変えようとしない。
女性として政治の現場にいたときに、やはり女性は命に敏感だと感じた。さまざまな議員立法に関
わったが、 薬害やハンセン病、被爆者問題、医療の副作用•副反応問題などが起きたとき、一緒に頑
張った議員の多くは女性であった。命の問題に関して、女性は実に敏感に仕事をすると痛感した。
私は 20 歳で短大を卒業し、船会社に入社し、そこで強烈な男女差別を経験した。男性は就職した
日から正社員、しかし、女性は 3 ヶ月経つまで正社員ではない。同期の男性は最初からかなり責任の
ある仕事を持たされていたのに、女性だからというそれだけの理由で、まず覚えさせられる仕事がお
茶汲みとコピーとりだった。ようやく 3 ヶ月が過ぎて正社員になれたと思ったら、給料は男性の半分
しかない。計算したら、勤続 10 年目の女性でようやく、男性の新卒初任給と同じ賃金になるという
ことが分かった。同期の 11 名の女性新入社員は、一人では無理であるが結集したら戦えるかもしれ
ないと考え、翌年の組合役員選挙に 6 人が立候補し、見事当選した。組合の役員の過半数を女性が占
106
めたので、会社との交渉を含め、翌年から何もかも全てが変わり、要求額は男女とも一緒になった。
流石に一朝一夕で妥結額が同じというわけには行かなかったが、多少差がつく程度にまで改善した。
それからもみんなで団結して戦おうということになった。
その後、結婚して兵庫に移り、別の企業で働いていたが、オイルショックによるリストラと妊娠し
たこともあり、退職せざるを得なくなった。
子どもが小学校一年生になり、学校給食の問題に関わるようになり、社会に踏み出すことになった。
衆議院議員に立候補しようと考えたきっかけは、1995 年の阪神•淡路大震災であった。当時は宝塚の
中でも、被災状況はさまざまであり、いろいろなボランティア活動に参加し、震災に関する法律の必
要性を感じた。法律を作れるのは議員だけだと思い、立候補することに決めた。
1996 年の 11 月に当選。そして 1998 年の 5 月 31 日、
「被災者生活再建支援法」が議員立法により
この国で初めて制定された。多くの議員が党派を超えて結集してできた法律である。この法律ができ
てから、あの東日本大震災が起きた。見捨てられていないというのは、被災者にとっては希望以外の
何ものでもない。阪神淡路大震災では、忘れられ見捨てられているのではないかという不安や恐怖が、
被災者たちの生きる気力を奪っていた。そうではない、国民全体で応援しているという証が、法律で
ある。
女性の活力をこの国の財産としてあたりまえに扱うという法律を作ることは、女性にとって希望に
なる。男とか女ではなく「人として生きられる社会」は、ヨーロッパでは既に実現している。それに
比べ、日本を始めとする東アジアの国々は非常に遅れているが、周りを牽引していけるのは、日本で
はないか。そのために必要なのは、やはり教育だと思う。
家庭、学校、教育のすべてにおいて、言葉をはじめとする男女の縛りを、自覚的になくしていくこ
とを私たちは心がけてきた。そして、自分の今いるところでも、何かを具体的に変えなければならな
いと思った私は、宝塚市役所で女性管理職を増やすため、女性が働きやすい環境を作っていくことを
目標に、これからもっと積極的に取り組んでい こうと思っている。
大切なことは、今いるところで社会の仕組みを変えていくことと、 社会全体を変えるために仲間
たちが結集することだと思う。これからも、お互い協力し連携して、社会を変えるためのいろいろな
取組を行っていければ幸いである。
《女性研究者共助支援事業本部長 春本晃江による「奈良女子大学の女性研究者共助支援の現状と課
題」概要》
奈良女子大学は 3 学部(文学部 3 学科、理学部 2学科、生活環境学部 5 学科)によって構成され
ており、大学院は博士前期課程と後期課程があり、学生数は学部と大学院合わせて約 2600 名、教員
は約 200 名である。これまで、女性のライフサイクルに配慮した教育環境の整備を行ってきた。
平成 17 年に男女共同参画推進室を設置し、平成 18 年度に採択された「女性研究者支援モデル育成
事業」のもとで、研究と家庭生活の両立を支援する女性研究者共助システムを構築し、採択期間の終
了後も、大学独自の経費によりこれを運用している。
本学の支援の特徴は、第一にニーズを踏まえた支援ということである。学内でアンケート調査やイ
ンタビューを実施して潜在的なニーズを探り、本当に必要なものを把握しようと努めている。次に、
細やかな支援、つまり一人一人のニーズに合わせた支援である。必要なところに必要な支援が行き届
くことを目標にしている。また、生涯にわたる支援、幼稚園児から大学院生まで、卒業後も就職情報
107
を提供するなど、生涯にわたる支援を行っている。そして取組の現状を常に把握し、必要な改善や見
直しを行っている。
これらの特徴を踏まえた支援として、主なものを紹介する。
教育研究支援制度は、出産•育児•介護に携わる女性教員に、主に大学院博士課程修了生を支援員と
して配置する制度である。これまでに年間十数名の女性教員が支援を受け、支援員の数は年間 20 名
あまりとなっている。これによって女性教員は教育研究活動を支援してもらえ、時間的にも体力的に
も、そして精神的にも余裕が生まれ、それは教育指導や研究内容の充実という形で戻される。支援員
にとっても、この制度は経済的な支援となるだけでなく、支援員自身のキャリア形成の支援にもなっ
ている。
次に本学の特徴的な子育て支援システムについて説明する。アンケート調査で最も多かったのが、
保育所や学童保育ではカバーできない、例えば土日祝日、夜間の支援が欲しいという声であった。大
学教員というのは、土日も入試業務や学会・研究会などがあるためである。そこで、子育て支援が必
要な人それぞれに専任のサポーターを配置し、支援を行うこととし、Web を用いた「ならっこネット」
を構築した。これは、迅速で、信頼性のある、安全なシステムである。利用者(本学の関係者)とそ
の子供がこのシステムに登録し、子供の支援をしたいと希望する方(サポーターと呼ぶ)も登録し、
利用者とサポーターそれぞれの要望が合う方(専属のサポータ一と呼ぶ)をマッチングする。専属サ
ポ一タ一は一人の子供に対して 2〜3 名である。利用者はパソコンなどを通して支援依頼をすると、
「ならっこネット」を通じて、専属サボーターに支援メールが一斉に届き、サポーターのうち、支援
ができる方のみが返信をし、その中から担当するサポーターが決まる。支援の開始前から終了までパ
ソコンから情報が流れ、現在の支援状況を、利用者も女性研究者共助支援事業本部も知ることができ
る。これにより、万が一の事態についても即座に対応することができる仕組みになっている。支援を
依頼する場合、サポーターの質が問題になる。本学ではサポーターを独自に養成し、本学のシステム
を理解していただける方のみを登録するという方法をとっている。「基礎講座」と「ブラッシュアッ
プ講座」を開催し、サポーターの質の向上に努めている。子育て支援のための設備としては、一時預
かり施設「ならっこルーム」やフィッティングルーム、多目的トイレなどがある。
このような支援のもとで、女性教員の科研費などの採択率が上がってきている。本学の女性教員比
率は、平成 20 年度に下がりかけたが、アクションプランを提案し、女性教員採用の促進を図り、努
力を続けた結果、現在は女性教員比率は全学で 33.3%、理学部の女性教員比率は 24%に達している。
先ほど、男女共同参画を進めるには法律を作らなければというお話を中川市長がなさっておられたが、
女性教員比率についても、やはりトップが率先して、何パーセントという目標を立てることが大事で
あると思う。
これからの本学の課題としては、教育研究支援員制度利用者の対象者を広げること、子育て支援
Web システムを改良すること、そして女性教員比率、特に上位職階の女性比率を上げることである。
本学はこれらに真摯に向き合い、課題の解決に向けて努力を続けていきたいと思う。本学がこれまで
に行ってきたことで、関西圏の女子大学と共に進めていけること、参考にしていただけることがあれ
ば、一緒に連携していきたいと思っている。
108
「奈良女子大学の女性研究者共助支援の現状と課題」のパワーポイント
109
( 5 - 5 )女性研究者研究活動支援事業シンポジウム 2014
「女性研究者研究活動支援事業
シンポジウム 2014
―女性研究者支援とダイバーシティ・マネジメントー」
日
時:平成 26 年 11 月 26 日(水)
場
所:一橋講堂(東京都千代田区)
主
催:文部科学省、独立行政法人科学技術振興機構
9:30-12:00 分科会(以下の 6 つの分科会に分かれて議論した)
分科会A:両立支援
分科会B:意識改革
分科会C:ポジティブ・アクション(採用、登用)
分科会D:研究力向上・リーダーシップ育成
分科会E:次世代育成
分科会F:連携(地域・企業)
・ネットワーク構築
午後からは公開シンポジウム
本学からは、奈良女子大学男女共同参画推進機構 副機構長(兼 女性研究者共助支援事業本部長)春
本晃江と、学務課専門職員 鶉野晃弘が出席した。両人とも、分科会 A:両立支援に参加した。
分科会 A:両立支援
座長 名古屋大学 束村博子氏
名古屋大学の両立支援について榊原千鶴氏(名古屋大学)が報告した。
≪概要≫
2 つの保育園と学童保育をもつ。あすなろ保育園では附属病院の小児科と連携して病児保育を 2 年前
から開始し、月平均 7~8 名を受け入れている。ワーク・ライフ・バランスの促進として、次のよう
なことを実施している。

育児休暇を 3 回に分けてとることができる

教職員を応援するアクションプラン(子育て中の女性研究者の授業担当や委員会業務の軽減、セ
ンター入試監督の配慮
(2 歳まで)
。これらのことについて、アンケートをして部局長が判断する)

女性研究者との意見交換会を頻繁に開催し利用者のニーズを把握

名古屋市とのコラボ事業(外国人向けの子育て情報を名古屋大学で翻訳など)

IT システム(自宅で大学のネットワークが使えるシステム)の整備

ベビーシッター利用券の発行

大学での子育て支援 MAP の作成

女性休養室・育児支援室の設置(施設課との連携が大事)等。
2014 年度よりユニバーサルデザインマニュアル策定 WG に入って、男女共同参画の視点からマニュ
アル作成に参加し、担当者が変わっても情報が受け継がれるようにした。介護に関する支援について
は検討中である。
110
≪質疑応答等≫
・ 育児休業の代替教員の配置について
育児休業の間の代替教員は部局に任されている(東京大学、名古屋大学)
・ 病児保育・病後児保育について
病児保育は病院の近くで実施されている。子どもの熱が 38.5 度までは預けることができる(朝 8
時から夕 6 時まで、1 日 3000 円)
。病後児保育はもう一方の保育所でも受け入れている(熱は 38
度まで)
。女性医師の利用が多い。インフルエンザなどの感染症では発熱している期間は預けられ
ないが、熱が下がって他にうつす心配はないが学校を休ませないといけない期間は預けられる。
・ 環境整備をするとどんどん預けるという悪循環になりはしないか
基本的には休んでもらうようにしてもらっている。そういった基本姿勢を確認しておく必要があ
る。病児保育や延長保育に関しては親の選択肢を増やすことが大切である。
≪日本大学 大坪久子氏による話題提供≫
理工系の学協会による「女性研究者・技術者がポテンシャルを最大限に発揮するために:課題と要望」
の追加資料としてアンケートをまとめている。研究者のワーク・ライフ・バランス(WLB)基盤の
定着、育児休業・介護期間中の研究環境維持を可能にする研究費の運用の実現が要望書項目として出
されている。出産・子育ては、研究代表者の立場では、競争的資金が全く執行できなくなることを意
味し、チームの研究員や支援員を解雇することと同義である。任期付研究者(単年度契約)の場合は
「出産=離職」になる可能性が非常に大きい。雇用者側にとっても悩みとなる。一方、好事例として、
助教が出産し休業期間を超えて 3 年程度雇用できる制度を整備した例がある(某国立大学)。任期が
再任可の場合で、再任審査の際に最長 2 年間の特例任期を申請する制度を整備、テニュアクロックの
延長、動物飼育のためだけに研究補助者の雇用を継続することを JST が認めたという例もある(さ
きがけ)
。
育児休業を 3 分割して取得を可能にした。ただし常勤のみ。独自の育児休業制度を導入し、3 年間の
うち、いつでも育休を取得できるようにした例もある。代替教員を雇いあげても、引継ぎとかの期間
が認められない(同時に利用者といることができない)ことが問題である。
≪質疑応答等≫
・ JST の研究支援員の業務の範囲が限られていて、授業の補助等が認められないのは困る。
・ 補助金と自主経費によってもできる業務の範囲は異なってくるが、JST の補助金も自主経費と同
様に使用できることが望ましい。
・ 厚生労働省によると、育児休業給付制度が変更され、2014 年 10 月1日以降、育児休業期間中の
就労については、1 ヶ月の就業日数 10 日以下か、11 日以上であっても就業時間が 80 時間以下で
あれば育児休業給付が支給されることになったが、これを機関で利用するにはまだ規程ができて
ないためにできないことがある。こういった短時間勤務中に支援員は必要だが、今は認められて
いないのが問題である。
・ 支援員の雇用時間は、フルタイムは認められていないのが問題である。支援員は非常勤的な雇上
げしかできないが、ポスドクはこのような条件では来ないので、実際に雇い上げているのは学生
が多い。こういったことが問題である。
・ 和田室長より、研究支援員に対しては何とかしたい。予算が厳しいが、女性研究者がフルタイム
111
で仕事している場合に、本人がいない間は支援員を雇い上げることはできなかったが、今後はで
きるようにしたい。
将来に向けた様々な議論がかわされ、分科会 A は終了した。
午後より一般公開シンポジウム 司会 JST 山村康子氏
13:15-13:20 開会挨拶:文部科学省 科学技術・学術政策局 局長 川上伸昭氏
≪概要≫
安倍政権では女性の活用が主要な政策の一つである。女性の割合は科学技術分野では伸びては来てい
るがまだ 14%で先進国では最下位である。管理職はまだまだ少ない。エンパワーメントが重要であり、
27 年度からダイバーシティー研究環境支援事業を開始する。このシンポジウムで活発な意見交換を
希望する。
13:20-13:30 「女性研究者研究活動支援事業」について -来年度事業の概要説明―
文部科学省科学技術・学術政策局 人材政策課人材政策推進室長省 和田勝之氏
◆ダイバーシティー研究環境実現イニシアチブ
「一般型」は「特色型」となる。ダイバーシティーの実現のための具体的な目標を設定するとともに、
それらを各部局に浸透させること、支える体制を実現することの取組を支援する。
「連携型」は今年度開始したものをさらに充実させる。先進的な取組みをプラットフォーム化するこ
とにより、他機関への展開、企業等を連携機関に参画させ、今の「連携型」をより充実させる。研究
補助者をライフイベント中に配置、病児保育、メンターの配置などを行うことを支援する。また、再
開促進のための特別研究員事業 RPD 採用数を増やす(150 人→200 人)。その他、女子中高生の理
系進路選択支援プログラム、サイエンス・インカレを実施する。
◆「女性研究者支援モデル育成事業」事後評価
「女性研究者支援モデル育成事業」の全採択機関の評価が出そろった。最初の年度(平成 18 年度)に採
択された機関については、現在の評価基準で評価したものとなることが資料とともに説明された。こ
れにより、奈良女子大学の「女性研究者支援モデル育成事業」は評価 B から評価 A となった。本学
のこの事業にかけた努力と成果が認められたといえる。
13:30-14:20 基調講演 橋本孝之氏(日本 IBM 株式会社会長)
≪講演概要≫
IBM は 1911 年に創立された。計算機からコンピュータへの時代であった。1937 年に日本 IBM が創
立された。IBM の従業員数は 43 万人(日本 IBM では 23000 名)のグローバル経営を目指し、ハー
ドからサービスへビジネスモデルを変更してきた。入社 5 年以下の比率が 51%、自宅などリモートに
勤務する比率は 40%である。
IBM の男女共同参画の歴史は、第1世代(法的なしばりによる止むを得ない実施の時期)を超え
て、第 2 世代を経た第 3 世代に入っている。ビジネスとダイバーシティー戦略の連動、ダイバーシテ
112
ィーがないモノカルチャーではグローバル社会では勝ち残れないと認識し、新しい価値を創造する必
要が出てきた。それらの結果、IBM は男女共同参画が進んでいる企業として日経ウーマンなどで第
一位となっている。女性、障がい者、LGBT(同性愛者やトランスジェンダーなど)といった人たち
の能力を最大に活用することと環境整備を行ってきた。例えば、LGBT 同士の結婚に結婚祝い金も認
めている。もはやワーク・ライフ・バランスではなく、ワーク・ライフ・インテグレーションという
言葉がふさわしい(仕事と家庭生活のバランスを考えることから一歩進んで、職業生活と個人生活を
柔軟に統合し、双方の充実を求めること)。
これまでの IBM では、女性自身に、辞めない、泣かない、覚悟を決めることをさせ、時間のフレ
キシビリティーをどうするかについては、在宅勤務、短時間勤務、勤務場所の自由さ、ネットワーク
などを整備してきた。数値目標を決め、退職率をへらし、採用率を上げる。管理職比率を上げる。ア
クションプランを定めて意識改革を進め、退職理由を把握して退職を防ぐ試みを行っている。女性の
管理職増加を実施するために男性管理職への支援、女性の育成機会の増大などを行ってきた。「日本
IBM こがも保育園」8:00-18:30(20:00 まで延長可)をもち、英語プログラムの実施、Web カメラ
による子どもの状況配信サービスも行っている。障がい者の支援の例として麻川智恵子さんを紹介す
る。中途失明者、2 女の母であり、IBM 技術者の最高職位である IBM Fellow になった。日本女性と
して最初の方である。障がい者の残った機能を活用する。ACE(Accessibility Consortium of
Enterprises:一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム)のロールモデルとして、障が
い者のインターンシップや動画字幕作成システム、電子書籍等の開発を進めている。その他、配偶者
の転勤による休職は 2 年まで認めている。ダイバーシティーを推進し、一緒に仕事をすることが楽し
いと思える環境づくりを行っている。グローバルリーダーには、スキルだけでなく、コンピテンシー、
つまり行動特性が大事である。
IBM は 9 つのコンピテンシーを定義(お客様の成功を追及するパートナー、あくなきチャレンジ
精神、グローバル・コラボレーション、体系的な思考に基づく行動、相互信頼の構築、専門性を駆使
した影響力、絶え間ない変革、相手にインパクトを与えるコミュニケーション力、IBMMer(社員)
の成功への支援)し、優れたリーダーになるための行動特性や資質としている。
≪質疑応答等≫
・ 介護対策はどのようにしているか。
在宅勤務を生かす。完全在宅 0.5 日/月に出社すれば OK の制度もある。インフラを作り、人事制
度で支える。
・ ダイバーシティーを進めるコツ
意図的にやらなければ進まない。同じ評価であれば女性を上げる。ロールモデルを作ること。女
性のリーダーをつくる。男性の管理職に、理解のある人を増やす。両性の能力などの違いを理解
することもダイバーシティーを進めるのに大切。国民性と男女差の違いを理解し、インクルーシ
ブな社会を実現する。
14:20-15:00 特別講演 前田芳實(鹿児島大学学長)
「きばいもんそ!!かごっま(がんばりましょう、鹿児島) ~意識改革を目指して~」
≪講演概要≫
キャンパスは 3 つに分かれている。保育所と保育園が1つずつある。女性研究者研究活動支援事業に
113
23 年度~25 年度に採択された。環境整備、すそ野の拡大(メンター制度、カフェ実施、ロールモデ
ル週の発行)
、意識改革(もっとも大事、トップセミナーで各部局のトップに理解をもたせる試み、
シンポジウムなどの実施、キャラバンで各部局へ行き力説する)、ポジティブアクション(女性限定
公募など)
、論文の書き方、プレゼンの仕方などの講習会を開催した。女性教員の数は増えてきてい
るが現在まだ 16.7%、理工農系は 6.1%である。学長管理の下ですべての人事を行い、女性教員採用
枠を定めている。課題は男性の意識改革で、意識は高くはなっているがまだまだである。学長の強い
リーダーシップのもとで、女性のリーダー育成、アクションプラン、環境整備などを進めている。
15:10-17:30 分科会発表
分科会 A 両立支援
座長:名古屋大学 束村博子氏
・ 名古屋大学の例:保育所 2 か所、学童保育(小1の壁の克服)、育児中の短時間勤務制度(H20)
ワーク・ライフ・バランスを応援するアクションプラン、制度があることを周知させる試み、病
児保育をはじめた(病院の小児科とのコラボ)、名古屋市とのコラボ事業として子育て支援を行っ
ている。研究支援員補助制度の在り方を検討し、育児休業中・短時間勤務中への支援員補助がで
きそうな段階に来ている。
・ 病児保育:派遣型ベビーシッター制で東京医科歯科大が試行中である。
・ 男性への支援員の適用について:支援事業に採択された機関の半数は適用(奈良女子大学からの
情報提供)
、鹿児島大学ではシングルファーザーに適用している。
・ 東京大学の育児休業の分割取得の制度などがある。
分科会 B 意識改革の推進・浸透
座長:北海道大学 有賀早苗氏
誰の意識、何について、何が問題、どうしたら変わるか、本当に平等・公平な能力・業績評価が行
われているか、異なることに価値がある男女共同参画やワーク・ライフ・バランスは女性の問題とと
らえられている、男性にもメリットがあることの気づきの必要性などが話し合われた。
「ここが問題」として、以下のような考え方や状況があることが指摘された。
・女性のみ対象のポジティブアクションは男女共同参画の趣旨に反している
・女性限定公募の実施は女性蔑視、アファーマティブアクションは逆差別
これらはジェンダー間不均衡是正のための暫定的実施の必要性への不理解といえる。
・女性教員採用への漠然とした懸念
ライフイベントによる周囲へのしわ寄せリスクが男性より高い
これについては、女性教員の増員・活躍促進の必要性・メリットの理解増進が必要である。
・学長・総長、担当理事等のシンポジウム等への参加は冒頭挨拶のみ、“所用のため”途中退席して
当然
申請時ヒアリングに参加するのは、トップの“やる気”を見せないと採択されないからであるが、
事業シンポジウムには不参加となることがしばしばある。
・解決すべき課題・ニーズではなく、補助金で何をするかだけしか考えない
これは補助金が終われば継続できないという発想に繋がる。
・大した金額でないから他の高額事業の方が大切
・女性の活躍支援の必要性は認識しても現場・経営状況から非現実的と諦める
114
・各委員会に女性委員を1名加えれば男女共同参画クリアと思っている
意識改革の推進・浸透に効果的な試みの例として、
・男女共同参画、キャリアデザイン等について学ぶ様々な講義の実施
・仕事と子育てロールモデル集 ―男性編― を作成する
・男女共同参画関連情報の提供。これは考えるきっかけの提供となる。
・平成 26 年度文部科学省生涯学習政策局による男女共同参画社会の実現の加速に向けた学習機会充
実事業「学生のための男女共同参画ワールド・カフェ 男子会×女子会(男女とも 50 人ずつ)~学
生だけの本音ミーティング in みえ~」
(三重県にて平成 26 年 6 月 28 日開催)
などが挙げられた。
分科会 C ポジティブ・アクション 座長:広島大学 相田美砂子氏
広島大学における男女共同参画のための基盤整備等の状況が紹介された。
・ モデル育成事業や養成システム改革加速事業、女性研究者研究活動支援事業(拠点型)などを
推進。
・ 人件費ポイント全学調整分を女性教員採用に回すなど、広島大学独自の改革を推進。
・ 大学の方針を明示し、中期計画に女性教員割合、女性管理職の割合を多くすることも明記。
・ 公募文書に「同等なら女性を採用」を明記。
・ 各部局等の女性教員採用割合の目標値を定めているが、これはそれぞれの研究科の博士課程
(後期)学生の女性割合を基準として設定。
・ 女性の評議員を増やす(まだ 2 名)ことも大切。
広島大学のやり方は、データ集約⇒適切な分析⇒適切な方針⇒無理強いでもなく、調整でもなく、納
得して実行し、その結果、女性の大学院生の割合が増え、女性教員比率も増加した。
分科会に参加した大学においてポジティブ・アクションの試みをチェックしたシートが披露された。
岩手大学では、ポジティブ・アクション経費制度として、女性限定公募で採用すれば経費を 3 年間支
給などである。
分科会 D 研究力向上・リーダーシップ育成 座長:東北大学 田中真美氏
東北大学では、男女共同参画推進のための行動指針 7 項目(両立支援、女性リーダー育成、次世代
育成、顕彰制度、地域連携、国際化対応、支援推進体制)を掲げている。杜の都ジャンプアップ事業
for 2013 等を通してリーダー育成事業、外部資金獲得セミナーなどの開催は、当人の意識改革となる。
研究力向上・リーダーシップ育成に有効な手段として、以下のことが報告された。
・ セミナー開催(非常に効果がある)
:教員からの要望:英語論文の書き方や書き方の指導方法、
英語プレゼンテーション)を実現。個別型か集合型かは工夫するべき。
・ 外部資金獲得に向けてのセミナー等:外部資金獲得フォローアップ制度(東京医科大学、九州大
学は特に女子枠がある)
・ エンカレッジするための賞:京都大学、岩手大学、熊本大学
・ アメリカ分校を利用した海外女性研究者との交流:3 名の女性研究者+学生 40 名、3 週間(2 週
間語学研修+1 週間見学)
(武庫川女子大)は大変好評とのこと。
・ 研究支援制度:育児・介護だけでなく社会貢献に対する支援にも(女性管理職へ)(九州大学、
115
筑波大学)
。人数比は、育児・介護:社会貢献=3:1(九州大学)
・ 四国で連携し、評議員も含めた役員などに数値目標(愛媛大学)
・ 交流座談会、集い、サロン:集まる機会の提供
・ メンター制度:神戸大(研究メンター1+ライフサポーター1:採用された方やメンターにも年に
1 回発表)
、熊本大(研究 1+教育 1+女性教員 1、アカデミックメンター+ライフサポートメン
ターが効果的。ロールモデルの提示や刺激を受ける機会を増やすことになる。内部にいないとき
には外部にも求める。
)
分科会 E 次世代育成 座長:東京農工大学 宮浦千里氏
次世代育成のための効果的な試みとして、対象別に以下のことが話された。
<学部生に対して>
・セミナー:身近なロールモデル、多様なキャリアパスの紹介を行う。
・講義:共通課目として男女共同参画の講義を取り入れる。
・中高生向けのイベントに参加:ロールモデルとしての意思づけ、情報共有の場。
・男女共同推進学生委員会:学生が主体的に参加する枠組み
<大学院生に対して>
・セミナー・講義:ロールモデルの紹介、留学セミナー、研究力向上セミナー、キャリアパスセミナ
ーなど。
・交流会・学生センター:女性同士の横と縦のつながりをもつ。
・学生賞:公式な賞にすることでキャリアとして活かせる。
・ロールモデル集の作成:
(自分がロールモデルとなった場合)ロールモデルとしての自覚。
(インタビューとしての参加)双方向型でロールモデルと向き合える。
<若手女性研究者に対して>
・セミナー:ロールモデル、外部資金獲得セミナーなど。
・研究資金の女性:その後の外部資金獲得のきっかけ作り。
・共同研究グループの形成:女性のみの共同研究グループ、企業とのマッチング、イベントなど
・メンター制度:有効な取組で拡大が必要
課題としては、
・セミナーなどのイベントを女性限定にするかどうか(次世代育成は男女を問わない)
・セミナーのターゲットの当て方、内容の設定(広報、いかに有効なセミナーにするか)
・事業終了後の予算措置(継続性の重要性)
・ロールモデルの情報公開(一方で個人情報の問題も)
・地域的な連携など(他機関との連携を含めた次世代育成の広がり)
・男性の参画推進(事業実施中、事業終了後)
などが指摘された。
116
分科会 F 連携・ネットワーク構築
座長:宮崎大学 伊達 紫氏
企業との連携体制の構築の課題として、構築に時間がかかる。物理的にも離れている。研究内容に
よってはすべてオープンにできるわけではなく、共同研究の推進やネットワーク構築が困難なことも
多い。
解決策として、構築可能なパートとそうでないパートを明確にする、保育サービスの共同利用、ロ
ールモデルの提示、新製品開発部門へのインターンシップ、共通のテーマを掲げた共同研究へ女性研
究者をプロモートする。企業との橋渡し役を活用する。産学連携センターなどを通したパートナー選
び、地域の中に積極的に溶け込んでいくことも重要、などが話された。
いずれの発表も分科会での熱い議論を反映して、多くの有益な内容が予定時間を越えて語られ、
種々の意見交換のあと閉会となった。
(写真上)女性研究者研究活動支援事業
シンポジウム 2014
(右)女性支援モデル育成事後評価結果
(本シンポジウムで配布された資料)
117
( 5 - 6 )他研究機関からの訪問調査
今年度は 8 月に大阪市立大学の訪問、10 月に大阪教育大学の訪問があり、ならっこネットを中心
とした子育て支援システムやウェブ活用について意見交換を行い、問題点や検討すべき事項の整理を
行った。
【大阪市立大学の訪問】
日
時: 平成 26 年 8 月 26 日(木)16:00~17:30
会
場: 女性研究者共助支援事業本部面談室
訪問者: 我妻優美氏(女性研究者支援室)
関澤彩眞氏(女性研究者支援室コーディネーター)
応対者: 都留浩子(女性研究者共助支援事業ネットワークコーディネーター)
大阪市立大学は、平成 24 年 11 月に本事業の視察に来られた。12 月には当時の富崎松代本学男女
共同参画推進機構長が大阪市立大学女性研究者支援室開設記念講演会で報告を行うなど、本事業と関
わりが深い。25 年度には文部科学省の女性研究者研究活動支援事業に選定され、以降本格的に女性
研究者の支援事業を展開している。
今回は、活動の実務的な面を担当しておられる 2 名の方が、本事業の活動の実際をご覧になりたい
という趣旨で来られた。
大阪市立大では、6 月からウェブを活用した『女性研究者ネットワークシステム』を運営している。
女性研究者と研究支援員の人材データベースであり、また SNS 機能により研究者間で情報交換を進
めることもできる。システムが完成する以前から研究支援員の配置は行われていたが、より効率的な
運用と支援員候補者の発掘を目的として導入されたとのことである。しかし、実際に運用してみると、
使い勝手など様々な面で不都合が生じたそうである。これはならっこネットでも同様で、実際に使っ
てみないとわからない不都合が多々みられた。しかし、一度構築したウェブサイトは変更が難しく、
人的な配慮でカバーしているのが現状である。その他、保守管理等ウェブサイト維持の経費、安全面
の脆弱性など、共通する課題がいくつもあり、現状や対策を話し合った。
さらに、子育て支援システムの運営についても、サポーターの育成、支援の手続き、保険など、詳
細について尋ねられた。大阪市立大学には学内保育施設があり、また医学部キャンパス内には院内保
育所や病児保育室が設置されている。規模の大きい大学であればこそのうらやましいような状況であ
るが、それでも二次保育への需要があり、本学のシステムを参考にされたいとのことである。本事業
では、毎年制度の瑣末な改良を重ねていることや、多大且つ変更の多い個人情報を正確に管理するた
めのデータベースを構築中であることなどを話した。
「ならっこネット」というシステムの名称や「な
らっこちゃん」キャラクターの起用など、制度周知の工夫に関心を持っておられるようであった。
短い時間であったが、意見交換ができ、今後も協力を進めていくことを確認できた。本事業へのヒ
ントも多々得られ、有意義な時間となった。
【大阪教育大学の訪問】
日
時: 平成 26 年 10 月 30 日(木)16:00~16:45
会
場: ならっこルーム
118
訪問者: 碓田智子氏(健康生活科学講座・居住環境学博士)
岡本幾子氏(副学長、附属図書館長)
対応者: 谷口陽子(女性研究者共助支援事業ネットワークコーディネーター)
今年 11 月末に奈良女子大学で都市住宅学会が行われた。その際、学会主催者が参加者向けに学内
の託児室で託児を行う準備をしているということを聞かれ、本学の託児システムや学内設備について
知りたいということで来られた。
大阪教育大学には社会人向けの夜間大学院があり、学齢期の子供を抱える女性の社会人院生が少な
くない、また女子学生が 55%いるがなかなか支援システムも設備も整っていないということで、本学
の支援体制や利用頻度について質問があった。本学では、学生や院生等に対しては育児奨学金制度や
事前に顔合わせが済んでいるサポーターさんに授業や研究の間、託児をしてもらうシステムがある、
また育児や介護をしながら研究をしている女性研究者には教育研究支援員制度があるということを
話した。
設備としては、各棟の各階にフィッティングルーム(オムツ替えや授乳ができる)もしくは多目的
トイレ(子供用便座・踏み台を設置)が設けられており、託児設備「ならっこルーム」にはおもちゃ
や本、棚の中には乳幼児用のお昼寝用ふとんが収納されている事などを説明した。託児室の明るい雰
囲気や充実した設備も整っていることに感心されていた。子育て支援システムの運営については、サ
ポーターの育成(ブラッシュアップ講座の開催等)
、個別託児と集団託児、保険の事などを説明した。
これだけ充実した託児システムや設備を持っている本学で、今課題になっていること、問題だと思
うことは何かという質問を受けた。今課題としてあがっているのは、病後児の支援と警報が出た時の
支援体制である。病児や病後児を預かるにはやはり資格や経験がないといけないし、必要となった時
にすぐに支援できるだけのサポーター数を確保しておかないといけない。また警報が出て複数の利用
者から支援依頼が一斉に入った時に、天候が悪い中支援を立候補してくれるサポーターがいるか、サ
ポーターが小学校や保育園の場所を知らないと迎えに行けない・・・事前に顔合わせしているサポー
ターが迎えに行けるとは限らないので初めてのサポーターが迎えに行って子供が不安に思わないか、
等の問題が浮かび上がっており、ただ今支援体制を整えるべく奮闘中であると伝えた。
帰りにフィッティングルームを視察して帰られた。
119
第6章
広報活動
( 6 - 1 )ホームページ
昨年度「男女共同参画推進機構」
(http://gepo.nara-wu.ac.jp/)のホームページをリニューアルした
ため、本年度は特に大きく手を加えたところはないが、リンク情報ページに女性研究者活動支援事業
採択機関を追加、また母性支援相談室の開室日カレンダーや子育て支援システムの基礎講座開催日カ
レンダーの更新、学内工事に伴うネットワークの停止のお知らせを更新し、こまめに情報発信を行う
ようにしている。キャリア開発支援本部や女性研究者養成システム改革推進本部へのリンクがわ
かりやすくなり、本学の充実した女性研究者支援体制が見やすくなったとの声をもらっている。
ホームページの維持管理においては、今年度にアクセス制限をかけるなどの対策を行ったことによ
り、システム被害は確認できなかったものの、昨年度に引き続きセキュリティーに関する監視・対策
を行った。まず、サーバーのアクセスログを定期的に確認することにより、外部からのアクセス傾向
を把握し、攻撃ログの内容や公的機関から公表されているセキュリティー情報と共に、サーバーへの
影響度・攻撃への防御方法を調査し、必要なアプリケーションのアップデートや、ホームページで使
用されている CMS に対するプラグの投入を行うなど、システムへの被害を回避する対策を講じた。
来年度も継続して、システムの安定運用・セキュリティー強化に努める。
【ホームページのアクセスログ】
ホームページへのアクセスログは、Google Analytics を利用し分析している。
訪問者数を見てみると、平成 26 年 4 月よりのべ 3300 人(1 月末現在)アクセスしてもらっており、
新規訪問率は 60%前後で推移し、既存のユーザーよりも新規訪問者からのアクセスが多いことがわか
る。トップページの各コンテンツへのアクセスでも男女共同参画機構の概要ページへ多くアクセスし
てもらっていることから、新規訪問者が本学の取り組みに関心を持ってアクセスしてもらっているの
ではないかと思う。ページビュー数のグラフからは、トップページへのアクセスに次いで講演会・講
座ページへのアクセスが多く、地域連携事業の equality 連続講座や子育て支援システムの基礎講座を
開催していることからホームページにて開催日や詳細な講座情報を確認していると思われる。
来年度は本学の取り組みをよりわかりやすく伝えるために、教育研究支援員制度や子育て支援シス
テムの利用状況や利用者の声を掲載し、これから利用を検討する際の指標になるようにしていきたい。
より多くの方にワーク・ライフ・バランスを支援する制度を知ってもらい、働きやすい環境作りの一
端を担えるような情報をホームページからも発信していきたいと考えている。
120
(H26 年 4 月~H27 年 1 月)
121
( 6 - 2 )学内外配布資料、ポスター、チラシなど
学内外配布資料
今年度も、本事業が主催するサポーター養成講座や各種
イベントへのポスターセッションなど、事業の広報活動
に力を入れた。以下、まとめて掲示する。
■平成 25 年度報告書
A4 版 141 ページ
2014 年 3 月発行。
■学生向けのチラシ(A4 表裏・4 月ガイダンスにて配布)
122
■子育て支援サポーター養成講座基礎講座
養成講座基礎講座・ブラッシュアップ講座のポスター・チラシ
のポスター・チラシ
(8 月 奈良市近郊の公共施設
公共施設・子育て関係団体に配布)
・ポスター
・チラシ掲示例
チラシは 4 つ折りにして、ケースに
ケースに入れて掲示する。公共施設等に配布する
する際には、専用ケース
とともに掲示依頼する。(写真左
写真左)
学内掲示板には、ポスターにケースを
ポスターにケースを取りつけて掲示。(写真右)
123
( 6 - 3 )男女共同参画推進機構のリーフレット
女性研究者共助支援事業本部は、本報告書「(1-1)女性研究者共助支援事業本部の活動の変遷」
にあるように、平成 18 年度科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」に採択されたことを
契機に設置された。学長が本部長に就任され、事業統括責任者は男女共同参画推進室長であり、男女
共同参画推進室員を中心にして本部の組織が作られた。採択期間(平成 18 年度~20 年度)と採択期
間終了後も、男女共同参画推進室と女性研究者共助支援事業本部は、並列した組織として活動を展開
してきた。その後、平成 22 年度科学技術振興調整費「女性研究者養成システム改革加速」に採択さ
れたことに伴い、平成 22 年 7 月に男女共同参画推進室が改編され、推進室の中に 3 本部(男女共同
参画推進本部、女性研究者共助支援事業本部、女性研究者養成システム改革推進本部)が設置された。
平成 23 年度、本学は科学技術人材育成費補助事業「ポストドクター•インターンシップ推進事業」
に採択され、この事業を実施するための組織「キャリア開発支援本部」が、男女共同参画推進室の 4
番目の本部として設置されることになり、平成 23 年 10 月に、男女共同参画推進室は再度改編され、
4 本部体制になった。平成 23 年 10 月以降、男女共同参画推進室は 4 本部を有する大きな組織となっ
た。このために、平成 24 年 12 月、組織の名称が「男女共同参画推進機構」に改められたが、男女
共同参画推進に係る具体的業務を実施するために 4 本部体制はそのままであり、現在に至っている。
男女共同参画推進機構では、その活動内容を広く周知するために、平成 25 年度の男女共同参画推
進機構運営委員会でリーフレットの作成を決定し、平成 26 年度に発行した。リーフレットの中で、
女性研究者共助支援事業本部の活動は次のように紹介されている。
生涯にわたる共助システム
◆ひとりひとりのニーズに合わせて、子育てを支援
大学内にある「ならっこルーム」や、利用者宅での預かりなど、ニーズに合わせて子育てサポータ
ーを配置しています。
本学教職員・院生・学生は誰でも利用できます。学生生活課・学務課と連携して、育児奨学金制度
やポストドクター育児支援金制度も実施しています。
◆出産・子育て・看護・介護に関わる女性教員の教育研究活動をサポー卜
主に博士後期課程修了生が、支援員として活躍しています。「教育研究支援員制度」は利用者への
支援のみならず、支援員の教育研究能力の育成に役立つています。
◆思春期から更年期まで、こころとからだの健康相談
大学内にある母性支援相談室では、専門カウンセラー(産婦人科医と助産師)が学生・教職員の相
談を幅広く受けています。
124
125
第7章
学内外の組織との連携
( 7 - 1 )女性研究者ネットワークの構築
男女共同参画推進機構の各本部は、それぞれが提供する様々な支援について、メールや HP 等を介
して周知をはかってきた。それらのいずれも重要な情報であるが、他の多くのメール等の中では、そ
の重要性が伝わらないこともある。女性研究者共助支援事業本部と女性研究者養成システム改革推進
本部では、女性研究者の研究力の向上につながる研究情報や研究支援情報に焦点を絞り、これらの情
報を提供するために、新たなネットワークを構築することとし、検討を開始した。両本部の本部長ま
たは副本部長を含む関係者からなる「女性研究者ネットワーク構築準備委員会」において、ネットワ
ークで配信する情報、構築後のネットワークの運営等について検討し、「奈良女子大学女性研究者ネ
ットワーク開設に向けて」
(構築案)を作成した。この構築案について、平成 26 年 5 月 12 日開催の
男女共同参画推進機構運営委員会において審議し、新たなネットワークを立ち上げることが承認され
た。承認された内容は次のとおりである。
1. 名称:
「奈良女子大学女性研究者ネットワーク」
2. 目的:女性研究者に対して、女性研究者を対象とした研究情報、あるいは研究支援情報を発信
し、女性研究者の研究力の更なる向上に資する。
3. 情報配信方法:現在使用されている事務配信システムを利用する。
4. 責任者:女性研究者共助支援事業本部長
5. 情報収集・発信担当:女性研究者共助支援事業本部ネットワーク・コーディネーター、女性研
究者養成システム改革推進本部事務補佐
機構運営委員会での承認の後、5 月 20 日に初会合を開き、次の内容を確認した。
1. メーリングの対象は、学内女性教員と次の方々(事業本部を含む)とする。
男女共同参画推進機構長、及び副機構長、
男女共同参画推進機構の 4 本部の本部長、及び副本部長、
男女共同参画推進機構担当事務職員、及び 4 本部の各担当事務職員、
男女共同参画推進機構の 4 本部、
女性研究者養成システム改革推進本部事務補佐、
女性研究者共助支援事業本部ネットワーク・コーディネーター、
2. 情報の内容に応じて、メーリンググループを、女性教員全体と理工農系女性教員の二つに分け
て配信する。
3. 配信情報を確認し、配信年間スケジュールを作成。
平成26年6月3日に女性研究者ネットワーク発足の挨拶メールを配信し、ネットワーク構築の目的、
配信内容、配信対象について周知した。その後、女性研究者共助事業本部からは、子育て支援システ
ム、教育研究支援員制度、母性支援相談室、男女共同参画推進機構の各本部が主催する講演会等の学
内情報を配信した。子育て支援システム(イベント託児・ならっこネット)についての案内を配信す
ることにより、
「託児」について広く気軽に利用していただけるシステムが本学にあることを周知し
126
た。このメールの配信により、子育て支援システムについての問合せがあり、利用の増加につながっ
た。母性支援相談室は、これまでは学生向けの案内を主に行ってきたが、教職員の相談・利用もでき
ることを広報した。また、各本部が主催する講座・講演会等については、それぞれの本部からのメル
マガ以外に、この女性研究者ネットワークを通して配信することにより、さらなる参加を促した。
近年奈良女子大学は、関西圏の女子大学との連携に向けてワーキンググループを立ち上げ、女性研
究者研究活動支援事業への応募や共同研究推進の可能性について検討を行っているが、そのワーキン
グを構成する大学の 1 つである武庫川女子大学より、意識啓発セミナーの案内を配信する依頼をいた
だき、2 月に初めて学外情報の配信も行った。
平成 26 年度は、女性研究者養成システム改革加速事業関係の情報も含めて、20 件の情報配信を行
った(
「平成 26 年度 女性研究者ネットワーク メール配信記録」参照)
。今後も女性研究者にとっ
て有用な情報を、学内のものだけでなく学外のものも含め、幅広く配信を行っていく。
平成 26 年 6 月 3 日配信
発足の挨拶
127
平成 26 年度 女性研究者ネットワーク メール配信記録
配信区分
内
容
月
日
6月
3
共通
発足挨拶
19
共通
イベント託児、ならっこネットのご案内
1
共通
平成 26 年度Ⅱ期教育研究支援員制度について
14
理工農
7月
女性研究者対象 研究スキルアップ支援
国内会議・国際会議:第 2 回、英語論文校閲:第 3 期の学内公募実施
8月
9月
10 月
11 月
25
共通
「知る・学ぶ・伝える equality」連続講座のお知らせ
12
共通
平成 26 年度Ⅱ期教育研究支援員制度利用者募集について
18
理工農
4
共通
16
理工農
26
共通
母性支援相談室のご案内
2
共通
平成 26 年度Ⅱ期教育研究支援員制度 採択結果について
14
理工農
30
共通
12
理工農
平成 26 年度研究スキルアップ経費(PD 等)公募のお知らせ
イベント託児のご案内(学会 等)
研究スキルアップ経費(英語論文校閲)公募の案内
研究スキルアップ経費の採択結果について
講演会「大学・大学院で身につける能力」について
理工農学系女性研究者 研究スキルアップ支援
国内会議・国際会議:第3回、英語論文校閲:第5期の学内公募実施
12 月
4
共通
1月
15
理工農
29
共通
イベント託児のご案内(退職記念行事・センター試験・個別試験中 等)
研究スキルアップ経費 英語論文校閲経費支援公募
武庫川女子大学女性研究者支援センター主催
意識啓発セミナーのご案内
2月
3月
19
共通
26
理工農
共通
平成 27 年度Ⅰ期教育研究支援員制度について
研究スキルアップ経費の採択結果について
平成 27 年度Ⅰ期教育研究支援員制度利用者募集について
(
「日」欄が空白のものは配信予定)
128
( 7 - 2 )関西圏女子大学との連携
平成 18 年度の「女性研究者支援モデル育成」の目的には「優れた女性研究者がその能力を最大限
発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として女性研究者が出産・育児等を両立し、
環境整備や意識改革など研究活動を継続できる仕組みを構築するモデルとなる優れた取組を支援す
る」とある。これまで、本学の女性研究者支援の取組は多くの研究機関から訪問調査を受け、「女性
研究者支援モデル育成」に採択された事業としての役割を果たしてきた。他の研究機関でも、先行機
関の取組を参考にして、それぞれ独自の取組を展開し、着実に成果をあげている。武庫川女子大学も
そのような研究機関の一つである。武庫川女子大学は、平成 24 年度に女性研究者研究活動支援事業
に採択され、育児・介護支援部門、キャリア支援部門、国際化支援部門、調査•広報部門を設けて、
女性研究者が研究活動を継続するために必要な環境整備を行うとともに、若手女性研究者の早期自立
や国際的に活躍する女性研究者の育成により、上位職を含む女性研究者数の増加を目指している。そ
の他の関西圏の女子大学の中には、男女共同参画の意識が醸成されている機関も複数ある。本学では、
そのような研究機関と連携することにより、各取組が重層し、相乗的な効果をあげることができると
判断し、近隣の女子大学と共に、女性研究者の研究力を向上させる活動を推進することとした。合わ
せて、潜在する女性の能力を発掘しその能力を生かすことができる仕組みの開発を目指すこととした。
武庫川女子大学の呼びかけにより、平成 26 年 2 月 4 日に女性研究者活動支援のための情報交換会
が開催され、3 月 8 日に第 2 回、4 月 5 日に第 3 回情報交換会が開催された。そして、6 月に関西圏
の女子大学合同シンポジウムを開催すること、及び、関西の女子大学において、女性研究者の研究環
境の整備・充実と研究の活性化や新領域研究の萌芽を目的とした新たな支援連携システムを構築する
ため、関西圏の女子大学女性研究者支援連携ワーキンググループ(以下ワーキンググループ)を発足
することとした。6 月 6 日開催の第 4 回ワーキンググループ会議において、6 月 21 日(土)に武庫
川女子大学において合同シンポジウムを開催することを確認した。6 月 21 日の合同シンポジウムで
は、一つの大学では解決できない課題を、女子大学が連携し、女性の強みを生かせるネットワークを
作り、研究力がアップする環境の実現を目指すことを確認した(当日のシンポジウムの内容について
は、本稿の(5-4)項を参照)
。
文部科学省においても、そのような複数の研究機関等による連携のもとでの女性研究者研究活動支
援に対し、その活動を普及させる事業の応募を開始した。平成 25 年 4 月には女性研究者研究活動支
援事業(拠点型)が、平成 26 年 5 月には同事業(連携型)の公募が行われた。6 月 27 日開催の第 5
回ワーキンググループ会議において、武庫川女子大学が代表機関となり女性研究者研究活動支援事業
(連携型)に応募することを確認した。女性研究者の裾野の拡大および若手女性研究者の研究力の向
上と、共同大学院カリキュラムの開発等を目指すこととして提案書を作成し、7 月に提案書を送付し
た。残念ながら、今回の提案は選定にはいたらなかった。科学技術振興機構の女性研究者研究活動支
援事業委員会からは、女性研究者在籍比率及び採用比率のより高い数値目標を設定するとともに、上
位職への登用を具体的に図る仕組みを構築することを期待するという内容のコメントがあった。
ワーキンググループでは、次の女性研究者研究支援事業(連携型)への応募を目指すこととし、今
後も活動を続けていくこととした。10 月 30 日に第 6 回、平成 27 年 1 月 10 日に第 7 回のワーキン
ググループ会議を開催した。3 月 9 日には、本学で、第 8 回の会議を開催する予定である。非採択の
理由を参考にして、内容の見直しを行い、他の研究機関との連携の下で、本学の取組の更なる改善に
向けて、今後も努力を続けていく。
129
第8章
事業本部メンバー紹介
本年度、奈良女子大学女性研究者共助支援事業本部
奈良女子大学女性研究者共助支援事業本部は、以下のメンバーで運営しております。
■事業本部スタッフ
【上左より】乾 ふみ(母性支援相談室
母性支援相談室の笑顔)
石川 彩子(教育研究支援員
教育研究支援員・事務関係担当)
大塚 夏子(PC 関係
関係はおまかせ!新システム開発に奮闘しています
しています)
春本 晃江(女性研究者共助支援事業本部長
女性研究者共助支援事業本部長)
都留 浩子(養成講座
養成講座・ポスター・チラシ作成はおまかせください
はおまかせください)
谷口 陽子(HP から
から情報をお届けします)
【
基礎講座講師)
右 】 森本 伊津子(基礎講座講師
■母性支援相談室カウンセラー
宮田 英子(月曜日担当)
島本 太香子(火曜日担当)
助産師
産婦人科医師
130
第9章
総
括
( 9 - 1 )平成 26 年度総括
本学は、科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」に応募し、平成 18 年度~平成 20
年度に提案課題「生涯にわたる女性研究者共助システムの構築」が採択され、採択期間の 3 年間に、
女性研究者に対する支援環境の整備を進めた。採択期間終了後もこれを大学の重要な事業と位置付け、
女性研究者共助支援事業本部が中心となって、支援環境整備・拡充のために様々な活動を行っている。
本学の女性研究者共助支援事業を含む男女共同参画推進活動は高く評価されている。「はじめに」
でも紹介されているように、平成 26 年 11 月に開かれた「女性研究者研究活動支援事業 シンポジウ
ム 2014」において、文部科学省より、平成 18 年度に採択された機関の評価については、現在の評価
基準で評価したものとなることが発表され、本学の「女性研究者支援モデル育成事業」は「A 評価」
となった。また、本学は、独立行政法人大学評価・学位授与機構による平成 25 年度実施大学機関別
認証評価を受け、平成 26 年 3 月 26 日、
「奈良女子大学は、大学評価・学位授与機構が定める大学評
価基準を満たしている」と評価された。その評価書の冒頭に主な優れた点が挙げられており、その一
つとして「教育研究支援員制度や若手研究者サポートシステム、スタートアップ研究費や研究スキル
アップ経費の配分等、女性教員の育児と教育研究活動の両立及びポストドクターと博士後期課程学生
のキャリア形成支援のために多様な体制を整備するとともに、子育て中の男女教職員のための一時預
かり施設(ならっこルーム)設置等、男女共同参画社会における大学構成員の課題解決のために積極
的に取り組んでいる。
」と記載されている。
女性研究者共助支援事業本部では、支援を必要とする人、そして場合によってはその支援に従事す
る人と直接向き合って、その活動を行う必要があるために、数名のコーディネーターを雇用している。
本部組織を支えるコーディネーターと教員達の優れた能力と献身的な弛まぬ努力により、本学の女性
研究者共助支援の内容は見直しが行われ、毎年、改善すべき課題を整理し、解決策を検討し、次年度
の活動に反映させている。このような努力の結果が高い評価に結びついている。平成 26 年度も、こ
れまでに実施してきたことに加えて、昨年度の課題を整理して女性研究者の支援環境整備と拡充のた
めの改善策を実施した。その中で本年度特記すべきこととして次の 6 つを挙げる。
1) 本学の「女性研究者支援モデル育成事業」に対する評価の見直しが行われた。平成 26 年 11 月
26 日(水)に、一橋大学(一橋講堂)において、
「女性研究者研究活動支援事業 シンポジウ
ム 2014―女性研究者支援とダイバーシティ・マネジメント-」が開催され、文部科学省科学
技術・学術政策局 人材政策課人材政策推進室長 和田勝行氏より「女性研究者研究活動支援事
業」の来年度事業について概要説明があった。その中で、「女性研究者支援モデル育成事業」
の全採択機関の評価が出そろったこと、最初の年度(平成 18 年度)に採択された機関については、
現在の評価基準で評価したものとなることが資料とともに説明された。これにより、奈良女子
大学の「女性研究者支援モデル育成事業」は評価 B から評価 A となった。本学のこの事業に
かけた努力と成果が認められたといえる。
2) 本学独自の子育て支援システムは、平成 18 年度から毎年開講しているサポーター養成講座、
平成 20 年度に運用を開始した Web システム「ならっこネット」、平成 21 年度に開設した子供
の預かり支援専用の部屋「ならっこルーム」、平成 23 年度に運用を開始したイベント託児シス
131
テムの 4 本の柱によって支えられている。子育て支援システムは絶えず見直しを行っているが、
本年度は特に「ならっこネット」の Web システム全体、関連するデータの整理と運用方法等
大きな見直しを行った。
3) 教育研究支援員制度は、平成 18 年度の設置以来、出産・育児・介護等に携わる女性教員に適
用してきたが、女性教員の現状についてより理解を深め、更に効果的な教育研究支援員の配置
を行うために、平成 25 年度末より、利用申し込みの記載内容について検討を重ね、見直しを
行った。また、教育研究支援員として支援活動に従事している者に対しても、相談体制を整え
る等、制度の充実に向けて改善を行った。
4) 女性研究者共助支援事業本部は、男女共同参画推進本部とキャリア開発支援本部とともに、地
域貢献事業を通して男女共同参画推進の意識啓発を行うために、
「知る・学ぶ・伝える equality」
事業~あるがままの自分を生きる~2 回連続講座を実施した。本講座は多くの方々の関心を集
め、参加者数は延べ 200 名以上に達した。この事業は本年度をもって 5 年間の活動を終了する
が、事業の締めくくりとして、力強いメッセージを発信することができた。
5) 女性研究者共助支援事業本部と女性研究者養成システム改革推進本部では、女性研究者の研究
力の向上につながる研究情報や研究支援情報に焦点を絞り、これらの情報を提供するために、
新たなネットワークを構築することとし、検討を開始した。そして、平成 26 年 5 月開催の男
女共同参画推進機構運営委員会において「女性研究者ネットワーク」の構築が承認された。6
月から情報の提供を開始した。
6) 平成 18 年度に開始した本学の女性研究者支援の取組は、多くの研究機関から訪問調査を受け、
「女性研究者支援モデル育成」に採択された事業としての役割を果たしてきた。他の研究機関
でも、先行機関の取組を参考にして、それぞれ独自の取組を展開し、着実に成果をあげている。
本学では、そのような研究機関と連携することにより、各取組が重層し、相乗的な効果をあげ
ることができると判断し、近隣の女子大学と共に、女性研究者の研究力を向上させるための活
動推進に向けて、検討を開始した。
男女共同参画推進機構としての活動も含めて、平成 26 年度に女性研究者共助支援事業本部において
実施した活動の詳細は、本報告書の各章を参照していただくこととし、ここでは、上の特記事項も含
めて、次の項目について今後の展望も含めてまとめておく。
・ 子育て支援システム
・ 教育研究支援員制度
・ 意識啓発活動
・ その他特筆すべき事項(学内外の組織との協力推進)
①
子育て支援システム
平成 20 年 4 月の子育て支援 Web システム(ならっこネット)の運用開始当初、利用者登録数は 7
名、サポーター数は 9 名であったが、平成 27 年 1 月現在の利用者登録者数は 46 名(支援該当の子
どもの数は 65 名)
、登録サポーター数は 73 名に増加している。運用開始以来、利用者・サポーター
に積極的に呼びかけ、運用に関する様々な意見を収集し、それらの意見をシステムの修正に反映させ
てきた。平成 21 年度には、学内に、子どもの預かり支援専用の部屋(通称「ならっこルーム」
)が設
132
置された。共助支援事業本部では、子育て支援システムの運用開始当初から保険に加入し、子どもと
サポーターの安全を最優先の課題として取り組んできた。子育て支援システムに登録していない教職
員等の子どもの一時預かりをする場合や、本学で登録しているサポーター以外の方が子どもの一時預
かりをする場合にも適用できるようにするなど、保険の内容を随時見直し、適切な保険に加入してき
た。子どもが関わるシステムであることから子どもの安全確保を最優先とすること、また、本システ
ムには学外者も関わっていることから学外者である方々には自身と子どもの安全確保に尽力してい
ただき、連絡を受けた女性研究者共助支援事業本部スタッフが対応することを、危機管理上の留意点
としてきた。大学周辺の各病院に確認をとり、子どもへの対応も整備するなど、子育て支援システム
は、その安全性を検討しながら改良を行っている。なお、平成 20 年 4 月から平成 27 年 1 月までの
「ならっこネット」を介した支援依頼は 1100 件以上に達し、8 割強の支援が実施された。
サポーターの能力の更なる活用のために、そして、本学の教職員の教育研究活動支援のために、平
成 23 年度からイベント託児システム(シンポジウムや講演会等開催時の託児)を開始した。平成 26
年度(平成 27 年 1 月現在)
、依頼件数は 40 件であり、そのうち 27 件が実施された(附属学校での
託児を含む)
。託児総数は約 600 名である。なお、平成 22 年 9 月(22 年度は試験運用)から平成 27
年 1 月までのイベント託児の依頼件数は 150 件近くあり、そのうち約 8 割の件数が実施された。託児
数の累計は約 2100 名である。イベント託児システムは運用開始から絶えず見直しを行ってきた。イ
ベント託児申し込み者の事務的な手続きの軽減を図り、集団託児の質の均一化を図るために、託児を
3 つのパターンに分け、イベント託児が安全に実施されるように必要事項を整理し、マニュアルの改
訂を行った。
学内でのシンポジウムや講演会で子どもを預けられることは当事者にとってはたいへんありがた
いことであり、学内にこのようなシステムがあることは教員や学生にとって大きな助けとなる。平成
22 年度末から本学の附属幼稚園での一時預かりを試験的にはじめ、平成 23 年度からは附属小学校で
も一時預かりを試験的に開始した。
平成 26 年度も、信頼のおけるサポーター養成のために、基礎講座、ブラッシュアップ講座を開催
した。女性研究者共助支援事業本部では、ブラッシュアップ講座の内容について検討を行い、子育て
支援に関する様々な側面からの情報を、サポーター登録した方も含めて多くの方々に伝える努力を行
った。今年からサポーター必修の基礎研修を設け、今年度は「小さい子どもの預かり支援」と題して
子どもの体調不良に気が付くための基礎知識、病後児の扱いなど、サポーターに必要な医学的知識を
学んでいただいた。また、昨年度に引き続き、今年度もサポーター間の親交とスキルアップを兼ねて、
サポーターだけの参加で勉強会を企画するなど、サポーター間の結びつきがより強力になり信頼でき
るシステムが構築されている。子育て支援システム運用開始時から、利用者を対象としたメールマガ
ジン「ならっこネット通信」
(今年度は 2 回)と、サポーターを対象とした印刷物「サポーター通信」
(今年度は1回)を配信している。これらに加え、平成 22 年 2 月より、必要事項を迅速に伝えるた
めに、注意の喚起やイベントへの参加を促すために、サポーターを対象としたメールマガジン「なら
っこニュース」の配信も始めた(今年度は 12 回)
。今後も、利用者・サポーターに対して、きめ細か
な情報発信を行っていく。
上述したように、Web システム「ならっこネット」は、平成 20 年度から運用を開始し、7 年目を
迎えている。Web システム「ならっこネット」は、長年の使用の中でシステムの不具合点が顕在化し
てきた。この不具合点の改良だけでなく、Web システムを子育て支援システム全体の中で更に活用す
るために、新たな機能追加・セキュリティー強化を行い、再構築に取り組んだ。
133
まず、現行のシステムによる支援フローの全体の見直しを行った。現行のシステムが行っている支
援フローは、利用者の支援依頼から支援終了・承認までをシステムで管理している。支援終了までの
フロー内で問題が発生した場合は「緊急対応」としてフローが停止し、女性研究者共助支援事業本部
スタッフが状況確認など介入を行い、それ以降はシステムによる管理は停止する。フローが停止する
原因の多くは、サポーターが支援を行うためのシステムとのやり取りに使われる煩雑なメールへの返
信忘れである。これらを踏まえ、フロー全体を見直した。大きな変更点は次の4つである。
i.
スタッフの介入後、単なるメールの返信忘れなど、支援続行に問題が無いと判断された場合「緊
急対応」のフローで終了せず、通常の支援フローへ復帰できる機能を追加した。支援終了まで
をできるだけシステムによって管理できる様に改良を行った。更に、共助サポーター全員が支
援不可となった場合、現行システムでは支援をキャンセルしシステム管理外で支援されていた
ものを、新システムでは一時的に他のサポーターを配属させてシステムに登録し、支援を管理
できる機能を追加した。
ii.
システムとサポーター間でやり取りされるメールついて、変更を加えた。今までは「Yes であ
るなら返信」としていたが、
「Yes」
「No」などの状況に応じた返信を設定することで、システ
ムに多様性を持たせた。これまで返信の無い方について「立候補しません(No)」なのか、メー
ルを読まれていないのか、判断に困る場合があったものを、
「立候補します」
「立候補しません」
とサポーターから明確な意思を返信していただくことで、細かい状況を確認できる様にした。
また、利用者都合による利用時間延長などで支援終了時刻を過ぎても「終了」の返信ができな
い事による「緊急対応」しかなかったフローに、「終了」だけでなく「延長」のフローを追加
し、サポーターが「終了」以外の「延長」返信を行える機能を追加した。
iii.
子育て支援システムの柱の一つである「イベント託児システム」でも Web システムを活用で
きる様にした。イベント託児の募集・立候補管理において、託児サポーター募集メール配信と
立候補受付、立候補状況管理などが行えるシステムを開発した。
iv.
システムにおけるメール送受信状況を一覧表として表示する機能を追加した。システムが送信
した内容だけでなく、システムが受信したメールを確認できる様にした。更に、スタッフがイ
ベント託児の募集などの任意のメールを作成し、サポーターへ送信できる機能も追加した。そ
して、固定されたメールアドレスからすべてのメールを送信することにした。これにより、サ
ポーターの携帯電話の機能によりメールが受信されない等の問題を解決することができた。
上記以外に、スタッフが必要に応じてどの時点でも支援をキャンセルすることができるようにした。
そしてサポーターへのメッセージを入力できる様にした。これは、現行のシステムで支援をキャンセ
ルした場合、サポーターに対しシステムから「キャンセルになりました」という機械的なメールしか
届かす、サポーターに対しての感謝の気持ちやキャンセル理由を伝えたいといった、利用者の方から
の要望を受けて追加した機能である。また、万が一の個人情報の漏えいを避けるために、サーバーシ
ステム本体へのアクセスできる端末を制限し、登録する個人情報項目を削減した。現行システムと同
様に Web 上でのサーバーとユーザとの情報のやり取りを暗号化する SSL 証明書と、ウイルス対策ソ
フトを導入した。更に、ハード面での整備も強化した。
今後は、現用に向けた通常・負荷試験を行い、問題点の修正・改良を行い、新しい Web システム
「ならっこネット」として子育て支援システムにおける役割をさらに担えるようにする。
134
平成 20 年度の運用開始から 7 年目を迎えた「子育て支援システム」は、この間、登録した利用者・
サポーター数は 200 名近く、その管理を適切に行うことが重要となってきた。特に子どもは所属学校
園や放課後の過ごし方が変わることが多く、登録内容の更新が頻繁にあり、更新の履歴をたどること
が難しい等の問題が出てきた。そこで今年度は登録者情報に関するデータベースを作成し、情報を一
元的に管理するシステムを構築した。これまでは Web システム(ならっこネット)の登録情報を基
本情報として取り扱ってきたが、今後はデータベースを基本情報とし、そこから適宜必要な情報をな
らっこネットに移すこととして、統計処理などに必要な新規項目も、今後必要に応じてデータベース
上に作成していくこととした。
データベース作成にあたり、利用者各々の利用状況を調べたところ、利用頻度の少ない利用者も多
いことが判明した。これまでは特に要望がなければ利用者とサポーターのマッチングの見直しを行っ
てこなかった。現在のシステムは、利用頻度が高い利用者にはよい仕組みであるが、頻度が低い利用
者にとっては、必ずしも利用しやすいシステムではない。そこで利用頻度が高い人とそうでない人に
区別して利用者の登録を見直すこととし、利用頻度に依らず利用しやすいシステムに改良していくこ
ととした。
現在のシステムのもとで、体調が悪い子どもの預かりや、警報発令時など緊急で一斉に生じる支援
については、スキルや経験があるサポーターに限り、面談を実施したうえで、体調不良時の預かりや
警報発令時のお迎えの依頼を設定している。当然ながらこうしたケースでの支援に対するニーズは高
く、本事業でもサポーターの資質によって実施したりしなかったりといった不安定な対応ではなく、
どの利用者にも使えるような仕組みを整えることが必要である。緊急サポートの制度を検討するとと
もに、これらに対応できるサポーターの養成も検討を始めた。
以上のことを含めて、サポーターのスキルアップがこれまで以上に必要となってきており、必修の
スキルや知識を習得するための「研修」を設定し、スキルアップを認定する制度を設定することとし
た。
平成 23 年度に採択された、科学技術人材育成費補助事業「ポストドクター・インターンシップ推
進事業」に基づいて、ポストドクター対象の支援事業の一環として、育児支援金制度が開始された。
これは、
「ポストドクター・インターンシップ推進事業」に参加するポストドクターで、子育て支援
Web システム「ならっこネット」を利用した場合に、その利用経費の支援が行われるというものであ
る。学生・院生を対象とした育児奨学金制度は平成 24 年度から開始された。この育児奨学金制度で
も、学生・院生が「ならっこネット」を利用した場合に、その利用経費への支援が行われる。育児支
援金制度と育児奨学金制度の申請において、女性研究者共助支援事業本部は「ならっこネット」を利
用したことの証明を行い、学生・院生の育児奨学金申請の手伝いをする。これらのことは「ならっこ
ネット」が本学関係者の子育て支援において重要な役割を果たしていることを示しており、女性研究
者共助支援事業本部の役割が益々重要になっていることを示しているといえる。
母性支援相談室では、設置当初の相談者の多くは学生であったが、徐々に、院生や教職員の間にも
浸透し始め、相談者の年齢の幅も広がりを見せてきた。それぞれのライフステージにそった悩みの相
談として、自身の健康問題ばかりではなく、子育て、夫婦問題、家族との関わり、老親の病気や介護
などでの関わりについての悩み等が寄せられ、本事業のキーワードの一つでもある「生涯にわたる」
支援に向けて、適切な助言が行われている。平成 22 年度より、学生生活課により管理運営されてい
る「キャリア形成支援システム」の HP で、
「育児や介護で困られたときに質問をお寄せいただけれ
ば、 本学の母性支援相談室からのアドバイスやこのシステムに登録された他のメンバーからのアド
135
バイスを得ることが可能です。
」という案内を掲載し、女性のライフサイクルに即したキャリア形成
支援に努めるとともに、新たに育児・介護等に関する卒業生・修了生同士のネットワークの形成にも
資することとしている。母性支援相談室は平成 18 年度に開設されたが、開設以来、上記の相談や活
動に応じていただいたお二人の先生方(母性支援カウンセラー)が、平成 24 年度から 25 年度にかけ
て新しい方々に交替された。母性支援相談室では、新しいお二人の先生方を迎えて、今後も、本学の
学生や教職員に対してだけでなく、卒業生・修了生に対しても育児・介護に関する相談体制について
ニーズを把握し、改善を目指していく。
②
教育研究支援員制度
本事業で実施している支援策の中で、学内外から高い評価を得ているのが教育研究支援員制度であ
る。本制度は、平成 18 年度に、出産・育児・介護等に関わる女性研究者の教育研究活動の支援のた
め主に博士後期課程修了者を教育研究支援員として採用し、支援者と被支援者双方のキャリア形成、
キャリア復帰等のチャレンジ支援・再チャレンジ支援に寄与することを目的として開始された。平成
18 年度~平成 20 年度は、科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成事業」採択期間であり、
奈良女子大学教育研究支援員取扱要項を制定し、本制度の運用を行った。平成 21 年 4 月からは、本
学独自の経費で実施することになり、奈良女子大学教育研究支援員取扱要項を改正し、制度利用資格、
支援業務、支援員対象者についても見直しを行った。制度利用資格は、適用年度のⅠ期は 4 月 1 日(Ⅱ
期は 10 月 1 日)現在、原則として小学校 3 年生以下の子供の養育中、または、介護に携わっている
本学女性教員とした。支援業務は、研究活動支援から、研究・教育活動支援へと拡大し、支援員につ
いても、適任者が本学関係者の中で見つからない場合は、学外者(ただし女性)を採用することも可
とし、制度を利用する女性教員のニーズに応えることとした。平成 25 年度末より女性研究者共助支
援事業本部(教員組織)では、出産・育児・介護・看護に携わる女性教員の現状についてより理解を
深め、更に効果的な教育研究支援員の配置を行うために、利用申し込みの記載内容について検討を重
ね、見直しを行った。また、教育研究支援員として支援活動に従事している者(支援活動に従事した
者を含む)が履歴書等に「教育研究支援員」と記載する際、その業務内容の説明が必要な場合には、
「教育研究支援員【出産・育児・看護・介護に携わる大学女性教員の教育研究活動の補助者】」と記
載するように指示をすることとした。これらの改善内容については、平成 26 年度の募集の際に学内
に周知した。更に、支援員に対しては、気軽に利用できる相談体制を整え、本年度の第Ⅰ期から支援
員に対して周知を行った。平成 26 年度本制度の利用が認められた女性教員は、Ⅰ期に 5 名、Ⅱ期に
6 名(うち 1 名は 10 月~12 月)であり、研究・教育活動の支援業務に従事した教育研究支援員の数
はⅠ期に 7 名、Ⅱ期に 11 名である。本年度は、制度利用教員一人に対し平均で約 12.5 時間(/週)
の支援員の配置を行った。支援時間は少ないかもしれないが、多くの女性教員に対して本制度の適用
を認めている。出産・育児・介護・看護に携わる女性教員の精神的な支えになり、研究の質の向上に
つながっている。また、教育研究支援員にとっては、研究者として独り立ちするまでの期間、未来の
研究者の経済支援を行うと同時に、そのキャリアを継続する夢を断念させることなく支援する制度で
ある。女性教員と支援員双方のキャリア形成支援につながる共助精神を反映した制度である。本制度
については、今後も、より充実した支援環境形成に向けて、検討を続ける必要がある。
これまで本学では、教育研究支援員の配置を女性教員に限ってきたが、他研究機関においては、女
性教員だけでなく、女性研究者を配偶者とする男性教員にも配置している例が見られてきたことから、
平成 25 年度、ネットワーク・コーディネーターが中心となって他研究機関における男性研究者に対
136
する支援員の配置状況等について調査を行い、その調査結果を本報告書で紹介した。本学では、未だ、
女性研究者を配偶者とする男性教員に対して本制度の適用には至っていない。今後、適用の可能性に
ついて引き続き検討を行う必要があると思われる。
③
意識啓発活動
女性研究者共助支援事業本部の活動が高い評価を得ていることは上述した。その活動内容について、
平成 26 年度も他研究機関からの訪問調査があり、共助支援事業本部が対応した。平成 22 年度から男
女共同参画推進室(機構)は地域貢献事業の一つとして「知る・学ぶ・伝える equality」事業を実施
してきた。この事業では、男女共同参画の根幹である equality(平等=全ての人が等しく大切にされ
ること)を実現するために、
「多様な個性の尊重」についての様々な話題を提供している。初めて知
ったこと(知る equality)
、関連する問題や背景などについて学んだこと(学ぶ equality)、一人ひと
りが大切にされる社会を作るために毎日の生活の中で自分が出来ること(伝える equality)を参加者
に持ち帰って頂くことを目指している。平成 26 年度は、
「あるがままの自分を生きる」ことについて
の 2 講座を大学会館の大集会室で開催した。比較や評価が常に付いて回る競争社会の中で、多くの人
は、男/女らしくありたい、
「成功者」でありたい、人望を集めたい等の様々な欲求を持って暮らして
いる。自分の理想に向かって努力すること自体は悪くないが、そのような願望に執着して縛られると、
状況をありのままに見ず、その状況は「こうあるべき」というイメージを投影することで真実を否定
してしまう。そして理想と現実のギャップから失意や苦悩が生じ、本当の自分を押し殺して生きてい
かなければならなくなる。更に、地位や財産や才能がいくらあっても、自分と他者を比較すると、自
分が他の誰かよりも劣っているところが必ず見つかるため、幸せを感じにくい。「あるがままに生き
る」ことは、
「自分勝手に気ままに暮らす」ことではない。事実をそのままの姿で認め、感じたまま
の純粋な気持ちを大切にし、心の揺れを自然なものとして受け入れることである。そして他者の「あ
るがまま」も尊重し、周囲に感謝しながら、謙遜に愛を持って生きる姿勢である。そのような生き方
は、自分と他者に内在するさまざまな可能性・力を引き出して開花させ、平和で対等な人間関係を創
り出す。自分を他者と比較することなく、自分の過去やあり得べき未来に照らし合わせることもなく、
今ここで、ありのままの自分を受容することは、安定した幸福感を生み出す。本講座は多くの方々の
関心を集め、2 講座で延べ 203 名の方が参加された。子育て中の方も参加しやすいように、毎回無料
の託児を提供した。
「知る・学ぶ・伝える equality」事業は本年度をもって 5 年間の活動を終了する
が、事業の締めくくりとして力強いメッセージを発信することができた。この他に男女共同参画推進
のための講演会も行い多くの方が参加した。これらの参加者には多くの学外者も含まれており、本学
が地域の男女共同参画の意識啓発等に果たす役割の重さを感じる。今後もニーズの把握に努め、学内
外の意識啓発を行う必要がある。
④
その他特筆すべき事項(学内外組織との協力推進)
本学では、平成 17 年度に男女共同参画推進室が設置され、平成 22 年度には、男女共同参画推進、
女性研究者共助支援、女性研究者養成システム改革推進のそれぞれの活動を中心になって行う3つの
本部からなる組織に改組された。このことにより、大学全体として男女共同参画を推進する姿勢がよ
り鮮明になったといえる。さらに、女性人材を社会に輩出することを男女共同参画推進の視点からと
らえ、平成 23 年度科学技術人材育成費補助事業「ポストドクター・インターンシップ推進事業」に
応募し採択されたことを受け、この事業を推進するための組織「キャリア開発支援本部」が、男女共
137
同参画推進室の 4 番目の本部として設置され、男女共同参画推進室は平成 23 年 10 月に4本部体制に
なり、平成 24 年 12 月に男女共同参画機構へと名称を変更した。4つの本部は緩やかに連携をとりな
がら、独自の活動を活発に行っている。各本部は、それぞれ独自の HP を立ち上げ、活動紹介等の情
報発信を行ってきた。そして、4 本部の活動の相互の関連性を分かりやすくするために、平成 25 年
度、男女共同参画推進機構の HP を新たに開設した。コンテンツでは、各事業本部の名称を記述せず
に、利用者の立場からわかりやすいように、「奈良女子大学は女性の活躍を応援!」「学生・教職員、
ご家族、男性も支援!」
「働くお父さん・お母さんを応援!」
「がんばるあなたを応援する制度!」
「男
女共同参画推進のための講演会・講座」とした。なお、推進機構の HP の開設に伴って、平成 18 年
度に開設した女性研究者共助支援事業本部の HP(平成 21 年度からは男女共同参画・女性研究者共
助支援事業の HP としてリニューアル)を閉鎖したが、女性研究者共助支援事業本部の活動は、これ
らのコンテンツで紹介される支援項目の殆どすべてと関係していることが分かる。今後も更に多くの
方々に、様々な支援制度を知ってもらい身近に感じてもらうことができるように、制度利用者の声等
の紹介に努めていく。
男女共同参画推進機構の各本部は、それぞれが提供する様々な支援について、メールや HP 等を介
して周知をはかってきた。それらのいずれも重要な情報であるが、他の多くのメール等の中では、そ
の重要性が伝わらないこともある。女性研究者共助支援事業本部と女性研究者養成システム改革推進
本部では、女性研究者の研究力の向上につながる研究情報や研究支援情報に焦点を絞り、これらの情
報を提供するために、新たなネットワークを構築することとし、検討を開始した。そして、「女性研
究者ネットワーク」の構築案が、平成 26 年 5 月開催の男女共同参画推進機構運営委員会において承
認された。6 月から配信を開始し、平成 26 年度は 20 件の情報配信(配信予定を含む)を行った。こ
れからも、女性教員の研究力向上に資する情報の収集を行い、適切に情報提供を行っていく。
平成 18 年度の「女性研究者支援モデル育成」の目的には「優れた女性研究者がその能力を最大限
発揮できるようにするため、大学や公的研究機関を対象として女性研究者が出産・育児等を両立し、
環境整備や意識改革など研究活動を継続できる仕組みを構築するモデルとなる優れた取組を支援す
る」とある。これまで、本学の女性研究者支援の取組は多くの研究機関から訪問調査を受け、「女性
研究者支援モデル育成」に採択された事業としての役割を果たしてきた。他の研究機関でも、先行機
関の取組を参考にして、それぞれ独自の取組を展開し、着実に成果をあげている。本学では、そのよ
うな研究機関と連携することにより、各取組が重層し、相乗的な効果をあげることができると判断し、
近隣の女子大学と共に、女性研究者の研究力を向上させる活動を推進することとした。合わせて、潜
在する女性の能力を発掘しその能力を生かすことができる仕組みの開発を目指すこととした。文部科
学省においても、そのような複数の研究機関等による連携のもとでの女性研究者研究活動支援に対し、
その活動を普及させる事業の応募を開始した。平成 25 年 4 月には女性研究者研究活動支援事業(拠
点型)が、平成 26 年 5 月には同事業(連携型)の公募が行われた。本学でも、それぞれの事業に応
募したが採択には至らなかった。非採択の理由を参考にして、内容の見直しを行い、他の研究機関と
の連携の下で、本学の取組の更なる普及に向けて、今後も努力を続けていく。
女性研究者共助支援事業本部の活動は、本報告書だけでなく、ホームページや Newsletter で紹介
されている。それらの活動の大半は、他の組織等の協力を得られたことにより実現されたものである。
学外では奈良県女性支援課、奈良県教育委員会、奈良市教育委員会、各種支援団体等に協力をいただ
いている(組織等の名称は平成 27 年 1 月現在のものである)
。これまでのご協力に対して感謝を申し
上げるとともに、これからもご協力をいただけるように、女性研究者共助支援事業本部ではその活動
138
の見直しを怠らず、そして自負と責任をもって活動を実施しなければならない。
今後も、本事業本部は常に何が求められているかを的確に把握し、学内外の組織と連携して、男女
共同参画のための活動を推進していく。
139
( 9 - 2 )男女共同参画推進関連年表・女性教員比率推移
男女共同参画推進関連年表(その1)
年
奈良女子大学のうごき
国内のうごき
国連・国外のうごき
1908
明治 41
1946
昭和 21
1947
昭和 22
1948
昭和 23
1949
昭和 24
1952
昭和 27
1953
昭和 28
1966
昭和 41
1971
昭和 46
1973
昭和 48
1975
昭和 50
1980
昭和 55
1981
昭和 56
1985
昭和 60
1987
昭和 62
1989
昭 和 64
/ 平 成
元年
1993
平成 5
1994
平成 6
1995
平成 7
奈良女子高等師範学校開設(4.1)
・第 22 回総選挙(女性初投票)
・男女共学制実施指示
・日本国憲法公布
・女性の地位委員会設置
・民法改正(「家」制度廃止)
・労働基準法制定
・優生保護法制定
・世界人権宣言採択
奈良女子大学設置(5.31)
理家政学部長は波多腰ヤス教授
・女性の参政権に関する条約採択
理家政学部は理学部と家政学部に分かれ、奈良女子大
学は 3 学部体制になる。
家政学部長は波多腰ヤス教授(8.1~S30.7.31)
・結婚退職制無効判決(東京地裁)
・国際人権規約採択
稲葉文枝氏(日本で初めての女性の国立大学理学部長)
(11.1~S48.3.31)
部落問題委員会設置
・国際婦人年
・第 1 回世界女性会議(メキシコ)
・女子差別撤廃条約
堀川蘭子氏 学生部長(6.1~S57.5.31)
・定年差別制無効判決(最高裁)
・女子差別撤廃条約批准
・男女雇用機会均等法制定
・第 3 回世界女性会議(ナイロビ)
堀川蘭子氏 家政学部長(4.1~H3.3.31)
・子どもの権利条約採択
・国連世界人権会議(ウィーン)
・子どもの権利条約批准
・最高裁に初の女性判事
・第 4 回世界女性会議(北京)
140
1997
平成 9
1999
平成 11
2000
平成 12
・丹羽雅子氏(日本で初めての女性の国立大学学長)(4.1
~H15.3.31)
・倫理・人権委員会設置
男女雇用機会均等法改正
男女共同参画社会基本法制定
・大学の基本理念制定(11 月)
・セクシュアル・ハラスメント防止対策委員会設置
・児童虐待防止法制定
・
「男女共同参画基本計画」閣議決
定
・国連女性 2000 年会議(ニュー
ヨーク)
・DV防止法(配偶者からの暴力
の防止及び被害者の保護に関する
法律)制定
・男女共同参画会議、男女共同参
画局設置
アフガニスタンの女性支援に関す
る懇談会開催
2001
平成 13
・女性文学部長(4.1~H15.3.31)
・女性附属図書館長(4.1~H15.3.31)
・
「奈良女子大学における職員の旧姓使用の取り扱い及
び手続き等について」学長決定(12.5)
2002
平成 14
五女子大学コンソーシアムによるアフガニスタン女子
教育支援事業
2003
平成 15
・女性副学長(4.1~H16.3.31)
・アフガニスタン女子教育支援のための女性教員研修
(H20 年を除き H23 年度まで毎年実施)
・「少子化社会対策基本法」公布、
施行
・
「次世代育成支援対策推進法」公
布、施行
・
「女性のチャレンジ支援策の推進
について」
(男女共同参画推進本部
決定)
2004
平成 16
・国立大学法人 奈良女子大学設立(4.1)
・女性理事・副学長(4.1~H17.3.31)
・女性附属学校部長(4.1~H19.3.31)
・長期履修学生制度(有職・育児・介護の理由による)
・DV防止法改正
・
「女性国家公務員の採用・登用の
拡大等について」
(男女共同参画推
進本部決定)
2005
平成 17
・博士研究員制度(2 月)
・「男女共同参画基本計画・(第二
・奈良女子大学次世代育成支援行動計画策定(第 1 回: 次)
」閣議決定
4.1~H20.3.31)
・「女性の再チャレンジ支援プラ
・奈良女子大学若手女性研究者支援経費制度(10 月)
ン」策定
・男女共同参画推進室設置(11 月:H23 年 12 月から男 ・第 9 回世界女性会議(ソウル)
女共同参画推進機構)
・女性男女共同推進室長(~H25.3.31)
・アジア・ジェンダー文化学研究センター(5 年間の準
備期間を経て設置)
・科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」 ・男女雇用機会均等法改正
・
「国の審議会等における女性委員
事業に採択(H18~20 年度)
・女性研究者共助支援事業本部設置(6 月、本部長=学 の登用の促進について」
(男女共同
長、事業統括責任者=男女共同参画推進室長)
参画推進本部決定)
・科学技術振興調整費「女性研究
・教育研究支援員制度(9 月)
・サポーター養成講座開講(11 月)
者支援モデル育成」事業開始
・母性支援相談室設置(11 月)
・DV防止法改正
・女性附属学校部長(4.1~H20.3.31)
・キャリア支援メーリングリスト(6 月運用開始、平成 ・仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バラン
21 年 4 月以降 キャリア形成支援システムに移行)
ス)憲章、及び 仕事と生活の調和
推進のための行動指針策定
2006
平成 18
2007
平成 19
141
2008
平成 20
2009
平成 21
2010
平成 22
2011
平成 23
2012
平成 24
2013
平成 25
2014
平成 26
・子育て支援 Web システム(ならっこネット)運用開
始(2 月~3 月 試験運用、4 月より本運用)
・女性理学部長(4.1~H21.3.31)
・セクシュアル・ハラスメント等の防止等に関する規
程
・次世代育成支援対策推進法に基づく奈良女子大学行
動計画(第 2 回:6.1~H23.5.31)
・女性研究者共助支援事業継続(独自経費による:4 月)
・女性理事・副学長(4.1~H23.3.31)
・女性附属図書館長(4.1~H25.3.31)
・キャリア形成支援システム(4 月)
・ならっこルーム設置(11 月)
・平成 25 年 3 月までに女性教員比率を 20%以上にする
ことを目指す(理学部教授会決定:1 月)
・女性教員比率を 30%以上にする(中期計画( 第 2
期)H22~27 年度)
・科学技術振興調整費「女性研究者養成システム改革
加速」事業に採択(H22~26 年度)。H26 年度末の女性
教員比率は全学で 31.7%、理工農系分野で 28.4%を目
指す。実施期間終了後 5 年間において、理工農系分野
の女性教員採用比率 50%、在職比率を定常的に 20%以
上に維持することを目指す。
・大学の地域貢献事業として「知る・学ぶ・伝える
equality」を開始(H26 年度まで毎年実施)
・男女共同参画推進室改編(3 本部体制になる)(7 月
※H23 年 8 月から 4 本部体制)
・3 学部に男女共同参画推進委員会設置(7 月)
・イベント託児試験運用開始(9 月)
・イベント託児本運用開始(4 月)
・女性理事・副学長(4.1~H25.3.31)
・
「奈良女子大学における男女共同参画の基本方針」制
定(5.27)
・次世代育成支援対策推進法に基づく奈良女子大学行
動計画(第 3 回:8.1~H27.3.31)
・文部科学省科学技術人材育成費補助事業「ポストド
クター・キャリア開発事業」に採択(H23~27 年度)
・男女共同参画推進室改編(3 本部体制から 4 本部体制
へ)(8 月)
・ポストドクター育児支援金(10 月)
・育児奨学金(4 月)
・男女共同参画推進機構設置(男女共同参画推進室の
名称変更、4 本部体制維持)(12 月)
・
「第 7 回女子中高生のための関西科学塾」
(平成 24 年
度独立行政法人科学技術振興機構「女子中高生の理系
進路選択支援プログラム」の受託事業)
・女性理事・副学長(附属図書館(H26.4.1 より学術情報
セ ン タ ー ) 長 、 男 女 共 同 参 画 推 進 機 構 長 兼 務 ) (4.1 ~
H29.3.31)
・女性研究者ネットワーク発足(5 月)
・子育て支援 Web システム(ならっこネット)再構築
着手
・奈良女子大学とお茶の水女子大学が連携を図り「理
系女性教育開発共同機構」を設置、生活工学分野を基
142
・女子差別撤廃条約実施状況第 6
回報告提出
・
「女性の参加加速プログラム」
(男
女共同参画推進本部決定)
・科学技術振興調整費「女性研究
者養成システム改革加速」事業開
始
・「第 3 次男女共同参画基本計画」
(12.17 閣議決定)国家公務員の
採用者に占める女性の割合を平成
27 年度末までに 30%程度にする
という成果目標が定められた。
・文部科学省科学技術人材育成費
補助事業「ポストドクター・キャ
リア開発事業」開始
・
「第 4 期科学技術基本計画」8 月
閣議決定
・科学技術人材育成費補助事業「女
性研究者研究活動支援事業(一般
型、拠点型)」開始
・科学技術人材育成費補助事業「女
性研究者研究活動支援事業(一般
型、連携型)
」、
「科学技術人材育成
のコンソーシアムの構築事業」開始
・「日本再興戦略」改訂 2014-未
盤とした理工系大学院共同専攻(仮称)を新たに設置。 来への挑戦-(6.24 閣議決定)
「女
性の活躍推進」を盛り込む
・「女性の活躍推進に向けた公共
調達及び補助金の活用に関する
取組指針について」(8.5 男女共
同参画推進本部決定)
網掛け部分は、男女共同参画推進室(機構)に関する出来事を示す。
143
男女共同参画推進関連年表(その2)
144
女性教員比率推移
女性教員比率(5月1日現在)
%
90.0
85.0
80.0
75.0
70.0
65.0
60.0
55.0
50.0
45.0
40.0
35.0
30.0
25.0
20.0
15.0
10.0
教授比率
H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23 H24 H25 H26
12.5 13.5 19.0 19.2 19.0 18.4 18.2 19.8 20.9 20.7 22.5 22.0
准教授・講師比率 29.5 30.4 27.1 28 27.5 26.2 25.6 25.6 25.9 28.4 26.8 30.9
助教(助手)比率 68.0 69.6 65.4 66.7 65.4 62.5 73.9 76.9 84.6 87.5 83.3 85.2
全職階合計比率
26.4 27.0 27.9 28.6 28.6 26.7 27.4 29.6 31.2 32.0 33.3 33.7
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平成 26 年度
女性研究者共助支援事業本部活動報告書
2015 年 3 月 発行
発行
国立大学法人奈良女子大学
男女共同参画推進機構 女性研究者共助支援事業本部
編集責任者
春本晃江(女性研究者共助支援事業本部長)
連絡先
〒630-8506 奈良市北魚屋西町
奈良女子大学女性研究者共助支援事業本部
Tel/Fax
0742-20-3344
URL
http://gepo.nara-wu.net/
e-mail
[email protected]
(無断転載を禁ずる)
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