こちら - JA愛知中央会

農協法が改正されました
今国会で審議されていた、農業協同組合法等の
一部を改正する等の法律(以下、改正農協法)は、
平成27年8月28日、参院本会議で与党などの
賛成多数で成立しました。改正農協法の施行日は
平成28年4月1日です。
平成27年9月号
JAグループ愛知
笑味ちゃん:改正農協法が
成立したと聞いたけど、
組合員にどんなメリットが
あるのかな?
経過
 平成26年5月に、規制改革会議が、「JA
潰し」につながるような急進的な意見を発表
しました。
<規制改革会議の意見>
 中央会制度の廃止
 全農の株式会社化
 准組合員の事業利用を正組合員の2分の1
に規制する
 理事の過半は認定農業者、民間経営経験が
ある者にする
JAくん:政府は、農協
改革の目的は、農業所得の増大だ
としているけど、今回の農協改革
が農業所得の増大とどう結びつく
かの説明がなく、メリットは不透
明なんだ。
JAグループでは、「農家所得の
向上、地域の活性化」を掲げた取
り組みを実践して、組合員の利用
メリットの拡大に取り組んでいく
よ。
 これに対し、自民党農林議員らは、官邸、規制改革会議、農水省と調整を行い、
平成26年6月に「与党とりまとめ」を策定しました。
 同とりまとめでは、急進的な内容は若干修正されたものの、抜本見直しを迫る
内容は残り、平成27年の通常国会に農協法の見直しを行う旨が明記されまし
た。
 JAグループでは、平成26年11月に自己改革プランを策定し、政府・与党
に対し、自己改革の尊重を求めて、折衝を重ねてきました。
 平成27年2月、政府・与党から示された「法制度等の骨格案」に一定の歩み
寄りがあったことから、JAグループとして、骨格案を受け入れることとなり
ました。
 その後、法案骨子、条文案の策定作業においても、自民党農林議員らは、法案
の内容が「骨格」の枠を超えないよう、また、JAグループの考えを踏まえた
ものとなるよう政府と協議を重ねてきました。
 4月3日に農協法改正案は国会に提出され、6月30日に衆議院通過、8月2
8日に参議院を通過しました。(ともに自・公・維賛成、民・共反対)
笑味ちゃん:貯金や共済は、今まで通り安心して預けられるのかな?
JAくん:今回の農協改革では、JA(地域農協)の組織や事業のあ
り方については、大きな見直しはなかった。今後も安心してご利用い
ただけるよ。
改正農協法のポイント
JAの事業運営原則
・非営利規定を廃止。JAは農業所得の
増大に最大限の配慮をしなければならな
い
JAの理事構成
・理事の過半数を、認定農業者または
農畜産物の販売・法人等の経営に対し
実践的能力をする者とする
・また、年齢や性別に著しい偏りが生
じないよう配慮する
・3年間の経過措置あり
笑味ちゃん:JAの理事構成は
どうなるの?
JAくん:今後(平成31年6
月の通常総会以降)は、理事の
過半数を認定農業者や農産物販
売・経営のプロとすることが
求められるよ。
笑味ちゃん:認定農業者が少ない地域は
困るんじゃないかな?
JAくん:そうなんだ。認定農業者が少
ない地域など特別な事情がある場合や、
認定農業者に準ずる者の範囲については、
一定の配慮が農水省令でされることに
なっているよ。組合員主体のJA運営に
支障が出たり、組合員の選択の幅を狭め
ることのないよう柔軟な対応ができるよ
うにすることが必要だよね。
准組合員の利用規制のあり方
笑味ちゃん:5年後にはどうな
るの?
・改正法施行日から5年間(平成33
年 3月末まで)の正・准組合員の事業
の利用状況並びに改革の実施状況の調
査を行い、検討を加えて結論
JAの監査
・JAに対する全中監査の義務付けを廃
止、公認会計士監査を義務付け(平成
31年度から)
※ 政府はJAの実質的な負担が増え
ないことなどに配慮する
JAくん:5年後に、准組合員
の利用規制を導入するかどうか
も含めて決定することになったんだ。
准組合員の利用が制限されると、信用共済
事業などの収益性が低下し営農経済事業の
財源が減ってしまうおそれや、JAがこれ
まで果たしてきた地域の生活基盤(インフ
ラ)機能が果たせなくなるおそれがある。
それに、これからの地域農業振興
には、地域農業の理解者・賛同者
としての准組合員の力が重要にな
ると思う。
だから、准組合員の利用規制が導
入されないよう取り組むことが必
要だよ。
全国中央会
・一般社団法人に移行(平成31年9月末ま
でに)
・機能は代表、総合調整など(農協法附則
で規定)
※監査部門は分離し、監査法人として独立
会計監査や業務監査(任意)を実施
都道府県中央会
・農協法上の連合会に移行(平成31年9月
末までに)
・事業は、代表、総合調整、会員の要請を
踏まえた経営相談・監査、およびこれら事
業に付帯する事業(教育など)
JA・連合会の組織変更
・信用・共済事業を行っていないJA・
連合会は総代会の承認他、所定の手続き
を経て、株式会社、生協に転換可能
・厚生連は会員全員の承認他、所定の手
続きを経て社会医療法人に転換可能
笑味ちゃん:中央会はどう
変わるのかな?
JAくん:JA全中(全国
農業協同組合中央会)は、
農協法に基づく特別認可法
人から一般社団法人に移行することになった
よ。JA全中の全国監査機構は、組織の外に
だされ、公認会計士法に基づく監査法人を新
設することになっているよ。
笑味ちゃん:どうして、JA全中の監査権限
をなくすの?
JAくん:政府は、JA全中が地域農協の自
主性を阻害しているからだといっている。で
も、そのような事実を立証することを国会で
求められたけど、明確に答えていないんだ。
笑味ちゃん:JA全中の監査から公認会計
士監査に移行するとどうなるのかな?
JAくん:公認会計士監査になると、会計
監査に特化してしまい、組合員やJAが求
める経営改善や破たん未然防止対策ができ
なくなるおそれがあるんだ。他にも、JA
の監査負担が増えたり、公認会計士の少な
い地方では、監査を受けられないJAが生
じるおそれがあるよ。こうしたデメリット
が出ないよう、改正農協法附則では、全中
から移行した監査法人が、極力、現在の全
国監査機構の監査機能を維持できるよう、
配慮されることになったよ。
今後は農協法関連の政省令が公布される予定
 改正農協法では、多くの内容を政省令で定めることにしており、今秋以降に順次公布
される見通しです。
 中でも、理事構成に関する規定は、理事改選を間近に控えるJAにとって喫緊の課題
です。農水省は、地域の実情に応じ、例えば認定農業者が少ない場合等への対応につ
いて、省令により措置する方針です。省令の内容に注視する必要があります。
今後の取り組み
今後の見通し
 今回の農協改革の狙いは、過去の規制改革会議と同様、JAの信用・共済事業の分離で
す。今回はその目的のために、法改正を行い、公認会計士監査の導入とJA全中の一般
社団法人化を実現し、JAグループの対抗力を削いできました。
 加えて、政府は、「JAは農業所得の増大に最大限の配慮」規定の追加、理事構成の見
直しを通じて、JAの職能組合化の道筋をつけました。附則で、5年後に「自己改革の
達成状況」等を鑑み、農協制度や准組合員利用規制の在り方を検討すると明記していま
す。
 政府(規制改革会議)は「自己改革の達成状況を確認する」と、今後の改革については
JAグループの取り組みに任せるかのような姿勢を見せていますが、達成状況は不十分
だとして、総合JAへの攻撃をさらに強めるおそれがあります。
准組合員利用規制は5年後に結論
 准組合員の利用規制は、特に重大な問題です。准組合員の利用が規制されると、信用共
済事業の収益性が低下し、農家の営農・くらしをサポートすることが困難になるおそれ
があります。地域によっては生活基盤(インフラ)機能が弱体化するかもしれません。
政府のいう「農業の成長産業化」には繋がらず、「地方創生」に逆行することも考えら
れます。
 現時点で、5年後に准組合員の利用規制が導入されるかどうかは決まっていませんが、
導入圧力が弱まることはありません。
 こうした中、准組合員の利用規制については、国会の審議でも多くの懸念が指摘された
ため、参院農林水産委員会でも、「准組合員の利用の在り方の検討にあたっては、正組
合員数と准組合員数の比較等をもって規制の理由にしないなど、地域のための重要なイ
ンフラとしての農協が果たしている役割や関係者の意向を十分踏まえること」と附帯決
議がなされました。今後、附帯決議を踏まえた対応がされるよう、政府に働きかけてい
くことが必要です。
JAグループの取り組み
 JAグループは、農家所得の増大に注力するとともに、
〇 農業所得の向上に果たす総合事業の役割
〇 准組合員が「地域農業の応援団」であること
〇 JAが地域のインフラ機能を担っていること
――――を実践をもって地域・国民に積極的に発信していく必要があります。