1 2 自転車は、免許を持たずに誰でも乗れる、便利な乗り物です。それゆ え、交通ルールを知らない、あるいは知っていても守らない利用者も多 くいるのが実態です。 本区では、自転車交通量の増加に伴い、自転車利用者のマナー改善や、 自転車通行空間の整備を求める声も多く寄せられています。このような 背景から、関係者が一体となって環境整備を推進するため、 「自転車利用 環境推進方針」を策定しました。 この方針は、平成 28 年度 (2016 年度)からおおむね 5 年間を対象期間 として、 「まもる」 「はしる」 「とめる」の 3 つを柱に、秩序ある安全で快 適な自転車利用環境の構築を進めていくものです。 推進にあたっては、行政の取り組みだけでなく、自転車ドライバーで ある区民、民間事業者の協力、連携が不可欠です。 「自転車を安全快適に 利用できるまち・江東」の実現に向けて、皆様の一層のご理解、ご協力 をお願いいたします。 平成 28 年(2016 年)3 月 3 4 ●自転車… 道路交通法第 63 条の 3 に規定される「普通自転車」をいいます。なお、 「普通自転車」とは、車 体の大きさ及び構造が内閣府令で定める基準に適合する二輪又は三輪の自転車で、他の車両を牽引 していないものをいいます。 「内閣府令で定める基準」は、道路交通法施行規則第 9 条の 2 で規定されています。 ●交通事故… 道路交通法第 2 条第 1 項に規定されている道路において、車両、路面、電車及び列車(軌道車)の 交通によって起こされた、人の死亡又は負傷を伴った事故及び物的損害を伴った事故をいいます。 但し、本書では人身事故のみを取り扱っています。 ●当事者… 交通事故に関係した人をいいますが、車両等が関係した事故の運転者については、運転中の車両 等を当事者としています。 第 1 当事者 過失(違反)がより重い当事者。過失(違反)が同程度の場合は、被害がより小さい方の当事者 第 2 当事者 過失(違反)がより軽い当事者。過失(違反)が同程度の場合は、被害がより大きい方の当事者 ●パーソントリップ調査… 「どのような人が」「どのような目的で」「どこからどこへ」「どのような交通手段で」移動した かなどを調べるものです。鉄道や自動車、徒歩といった各交通手段の利用割合や交通量などを求め ることができます。 トリップ 人がある目的をもって、ある地点からある地点へと移動する単位をトリップといい、 1 回の移動でいくつかの交通手段を乗り換えても 1 トリップと数えます。 トリップエンド 1 つのトリップの出発側と到着側をそれぞれ「トリップエンド」といいます。 発生集中量 ある地域内に出発地または到着地を持つ人の移動の合計で、 「トリップエンド」を集 計したものです。 ●自転車通行空間… 法令による定義はありませんが、本書では自転車が通行可能な道路、又は道路の部分のうち、自 転車の通行すべき場所が明示されている空間を「自転車通行空間」と呼称します。 ●自転車専用通行帯… 道路交通法第 20 条第 2 項の道路標識により、車両通行帯の設けられた道路において、普通自転 車が通行しなければならない車両通行帯として指定された車両通行帯をいいます。 ●路面表示… 道路標識、区画線及び道路表示に関する命令に規定されていない、法定外の路面に描かれた表示 で、ペイント、石等で路面に描かれた線、記号又は文字をいいます。 ●幹線道路… 都市圏構造の骨格を形成する道路であり、広域的な交通の処理を担う自動車交通機能を重視した 道路です。また、歩行者、自転車の通行についても移動の軸となるように、誰でも分かりやすい安 全安心な道路として交通を集約します。 ●地区主要道路… 幹線道路に囲まれた地区の自動車交通を集約し、幹線道路と地区内相互の円滑な自動車交通処理 を担う道路です。歩行者、自転車の通行については、幹線道路に囲まれた地区内での移動軸となる 道路です。 -1- ○ 都内では、自転車が加害者(第 1 当事者)となる対歩行者件数が約 22 倍に増えています。 ○ 加害者となった自転車運転者に高額な損害賠償命令が出されるケースも相次いでいます。 ○ 自転車のルール・マナーが遵守されず、自転車関連の交通事故が増加傾向にあることを踏 まえ、国や東京都は、自転車利用環境の改善に向けた取組みを積極的に進めています。 ● 平成 19 年 17 月 内閣府 … 自転車の安全利用の促進について 5,160 全体 4,868 対歩行者 ● 平成 23 年 10 月 警察庁 … 良好な自転車交通秩の序実現のための総合対策 の推進について 1,882 1,132 1,400 2,828 ● 平成 24 年 11 月 国土交通省、警察庁 … 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン 849 ● 平成 25 年 17 月 東京都 … 自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例 884 76 38 平成5年 平成10年 平成15年 平成20年 平成25年 図 東京都内の自転車事故件数 ● 平成 27 年 14 月 東京都 … 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技 大会に向けた自転車推奨ルート ● 平成 28 年 1 月現在 国土交通省、警察庁 … 安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関す る検討委員会を開催中 (加害者(第 1 当事者):自転車) 目的 秩序ある安全で快適な自転車利用環境の構築 位置付け 江東区長期計画、都市計画マスタープランを上位計画とします。 対象期間 平成 28 年度(2016 年度)からおおむね 5 年間とします。 視点と構成 自転車利用における 3 つの基本動作である「まもる」 「はしる」 「とめる」 を視点として、基本方針と、取組方針を示します。 -1- (千 TE) 137.1 54.0 自宅-私事 34.7 勤務・業務 24.0 92.3 68.3 文化施設 3% 病院 6% 私事 59.4 83.1 78.3 自宅-業務 93.2 教育施設 (学校等) 13% 自宅-通学 自宅-勤務 35.2 会社等 15% 58.4 49.6 45.3 商業施設 30% 鉄軌道駅 24% 昭和63年 平成10年 平成20年 平成42年 (推計) 図 江東区内の目的別自転車発生集中量 図 574 542 518 477 447 自転車関与事故件数 359 違反あり 47.8% 自転車が第 1 当事者となった事故件数 51 平成21年 図 自転車の行先施設の構成比(平成 20 年) 65 53 64 53 平成23年 50 平成25年 図 江東区内の自転車事故件数の推移 中卒~19歳 1.85 20歳代 1.04 中学生 1.04 50歳代 自転車事故における自転車の違反状況 (平成 27 年 1~6 月) 高校生以下 11.2% 高齢者 5.7% (15.4%) (21.1%) 0.96 30歳代 0.84 40歳代 0.83 小学生 一般 83.1% 0.73 60~64歳 (63.5%) 0.59 65歳以上 幼児・園児 違反なし 52.2% 0.54 0.03 (件/千人) 図 定点調査における違反者の年齢構成比 (平成 26 年 10 月 警視庁) ※区内 3 地点の平均、()内は人口構成比 図 年齢階層別自転車事故発生件数(平成 26 年) -2- 整備済み延長:5.0km (1.6%) 江東区道:1.1km (22%) 未整備延長:386.6km (98.4%) 図 駐車場収容台数 国道、都道:3.9km (78%) 江東区内の自転車通行空間整備状況(平成 28 年 1 月時点) (千台) 20.2 (台) 20.1 亀戸 352 18.8 門前仲町 17.4 163 森下 駐車台数 12.3 14.0 17.4 134 西大島 106 東陽町 105 清澄白河 13.3 95 木場 放置台数 89 豊洲 5.4 平成17年度 3.4 2.3 1.5 平成20年度 平成23年度 平成26年度 図 江東区内駅周辺の放置自転車台数等の推移 工業地域 4.9% 55 辰巳 55 放置自転車台数の現況(上位 10 駅) 準工業地域 …ほぼ全ての用途の建物が建築可 ○ 住宅 ○ 店舗等 ○ 事務所等 ○ 遊戯施設・風俗施設 ○ 公共施設・病院・学校等 ○ 工場・倉庫等 (危険性の大きいもの等は除く) 第 1 種住居地域 13.8% 工業専用地域 15.2% 大島 図 商業地域 近隣商業地域 7.8% 2.2% 80 オレンジ色の駅は収 容台数が充足してい る駅です。 準工業地域 50.7% 他区の状況 ○ 区全域を指定 :7 区 ○ 商業地域、近隣商業地域以外も指定 :7 区 ○ 商業地域、近隣商業地域のみ(江東区と同じ) :2 区 図 江東区の用途地域構成比(平成 26 年 4 月現在) -3- ○ 事故遭遇率や違反率が高くなっている高校生や一般成 人層に対する普及啓発活動を強化します。 ○ ルールを知っていて守らない利用者が相当数いるた め、 「スケアード・ストレート」を積極的に活用します。 ○ 外国人などに対する普及啓発も推進することにより、 ルール・マナーの学習機会の切れ目を解消します。 · 新たに高校生を対象とした自転車安全教室を実施します。 · 中学校、高等学校で実施する自転車安全教室において一般成人層の参加を可 能とするほか、イベント等を活用した自転車安全教室の開催を検討します。 · 区内インターナショナルスクールでの自転車安全教室の実施を検討します。 · コミュニティサイクルのホームページの一層の多言語対応等を推進します。 ○ 事故被害者の救済、加害者の経済的負担軽減の観点から、加入の必要性を広く 周知します。 ○ 自転車事故に備えた保険への加入義務付けなど、他自治体の先進的な取り組み について、その効果や影響を調査研究します。 · 適切な保険選びができるよう、保険の加入状況に応じた啓発を行います。 · 区報、交通安全教室など、様々な機会を捉えて啓発を行います。 ○ 区内の使用中の自転車は約 28 万台であり、広報の活用が不可欠です。 ○ 「自転車安全利用五則」「自転車運転者講習の対象となる危険行為」「自転車事 故に備えた保険への加入」を重点項目として広報を展開します。 · 国、都の有益な学習ツールを区ホームページに関連付け、内容を充実します。 · 「こうとう安全安心メール」などインターネットツールを活用した情報発信を 行います。 · 自転車駐車場利用者や撤去自転車引取り者への啓発を検討・実施します。 · 庁有自転車に基本ルールを示したシートを取り付けるなど、自転車を利用する 区職員による自転車安全利用の啓発を行います。 · サイドミラー装着推進に向けた取り組みを行います。 -4- ○ 自転車は「車道が原則、歩道は例外」であることを踏まえ、 「自転車と歩行者 の分離」 「自転車の車道通行における安全性確保」を視点とした自転車通行環 境の整備を区全域で推進します。 ○ 幹線・地区主要道路を中心とした自転車通行ネットワークを構築し、自転車 の通行すべき場所をピクトグラム等で道路上に明示します。 考え方 面(駅周辺、自転車事故多発エリア)と線(エリア間路線)によるネットワークの構築 自転車通行空間整備済み、整備予定の国道、都道と連携 エリア整備では地域特性を踏まえた柔軟な路線選定を実施 構成路線 幹線道路、地区主要道路など 整備対象 江東区の管理する構成路線(エリア整備では生活道路も対象となる場合があります) 対象延長 約 150km (江東区道の約 50%) · 国のガイドラインに沿って選定します。 · 区道の現況から車道混在又は自転車専用通行帯を中心に整備を進めます。 · 個別路線の整備形態は、警視庁など関係者との協議も踏まえて選定します。 · 国道、都道、他区の管理する道路との接続部では、当該道路管理者との協議・ 調整を行い、自転車利用者が安全に通行できるような形態とします。 図 自転車専用通行帯および車道混在の整備例(港区) (左:自転車専用通行帯、右:車道混在(自転車ピクトグラムと矢羽根型路面表示)) · 当初 2 年程度を「検証段階」と位置付け、特定のエリア・路線で先行的に整備します。 · 検証段階で課題を抽出し、解決策を検討することにより、その後の広域展開を効果的か つ効率的に行います。 検証段階 平成 28, 29 年度 広域展開段階 平成 30 年度~ · 通行空間の整備に合せ、利用促進 PR やルール・マナーの啓発などを行います。 · 区報等を通じて、自動車運転者に対しても通行空間に対する理解を求めます。 -5- 凡例 エリア整備対象地 平成27年4月1日現在 幹線道路(区道) 地区主要道路(区道) 国・東京都の計画 及び 2020 年東京オリンピック・パラリンピック競 技大会に向けた自転車推奨ルート (実線:整備済み、破線:整備予定) 図 広域自転車通行ネットワーク整備対象路線概略図 注1. 南部地域内には地区主要道路がありませんが、現況に応じて地区主要道路に準ずる路線 を整備対象とする場合があります。 注2. エリア整備においては幹線道路、地区主要道路以外の路線も対象となる場合があります。 -6- ○ 公共交通結節点である鉄軌道駅へのアクセスを目的とする駐車需要に対して は、今後も区が自転車駐車場の整備や収容台数の向上を推進します。なお、推 進にあたっては民間活力も積極的に導入します。 ○ 商業・業務施設等、特定施設の利用を目的とする駐車需要については、附置義 務制度の見直しにより、施設側で環境整備を行うよう誘導します。 ○ ○ 江東区長期計画に基づいた自転車駐車場の整備 整備予定 有明・国際展示場駅、新豊洲駅、市場前駅 (平成 29 年度開設予定) ○ 民間活用による自転車駐車場の整備 · 区の負担が少なく、効率的に整備可能な民設民営駐車場の導入を推進します。 整備予定 新木場駅 (平成 29 年度開設予定) ○ 既設自転車駐車場の収容台数の向上 · 機器の入れ替えによる収容台数の増加など、駐車場の高度利用を推進します。 ○ 自転車駐車場附置義務の見直し · 附置義務対象区域外で進展する大規模開発や、対象外施設の周辺で見られる著 しい放置状況などを考慮し、対象区域の見直しなどを検討します。 優先検討事項 対象区域の見直し 検討事項 施設の用途・規模の見直しなど · コミュニティサイクルの全区展開の検討と連動し、検討を深めます。 ○ 自転車駐車場の整備が進んでいる駅周辺においても、未だ自転車が放置されて しまう現状を踏まえ、今後も状況に応じ、柔軟な放置自転車対策を推進します。 · 自転車の放置を抑止するため、自転車利用者への放置防止啓発を推進します。 · 自転車利用の変化に併せた自転車駐車場への誘導策を展開します。 … 定期・一時利用枠の見直し、誘導サインの検討など · 区域外への放置自転車拡散や、区域未指定の駅周辺での放置自転車増加などに 対応するため、放置禁止区域の指定・見直しを行います。 · 放置抑止効果が最大限発揮されるよう、撤去エリアや時間帯等を随時見直します。 -7- ○ 本推進方針に基づき、実施すべき事業について整理し、第 10 次交通安全計画(計画期間: 平成 28 年度~平成 32 年度)に盛り込みます。 ○ 第 10 次交通安全計画、交通安全実施計画に位置付ける施策の実施にあたり、関係者間で 必要な連絡調整を行うため、江東区、区内各警察署等で構成される「江東区自転車利用 環境整備連絡会」を設置します。 ○ 計画立案、施策の実施、効果検証、事業改善を PDCA サイクルとして繰り返し実施し、 効果的・効率的に環境整備を進めます。 ・Check を踏まえた推進内容の改善 ・次期江東区交通安全実施計画へ反映 ・第 10 次江東区交通安全計画 ・江東区交通安全実施計画 ・江東区自転車利用環境整備連絡会 ・江東区交通安全協議会 ・各事業主体による取組み ・相互連携(江東区自転車利用環境整備連絡会) ○ 今後も社会情勢・ニーズに合せ、自転車に関する法令改正や、ガイドラインの見直しが 生じる可能性があります。これらの検討動向を注視し、必要に応じて本方針内容を見直 します。 ○ また、方針の改訂については、おおむね 5 年後の自転車利用環境を踏まえて、江東区自 転車利用環境整備連絡会において検討します。 今後改訂等が見込まれる国や東京都の計画等 ・ 安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン (国土交通省、警察庁) ・ 東京都自転車安全利用推進計画 (東京都) -8- 平成 28 年 3 月 江東区東陽 4-11-28 江東区土木部交通対策課 電話 03(3647)9111(大代表) -9-
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