平成 28 年 4 月 1 日 花田学園卒業生訪問 Report HANADA‐AT Newsletter #9 2015 年 8 月、バスケットボール女子日本代表がアジア予選を勝ち抜き、リオデジャネイロオリンピックの出場権を獲得した。伊 藤由美子氏は 2012 年から(公財)日本バスケットボール協会(以下、JBA)専任トレーナーとして女子日本代表全カテゴリー(A 代表からアンダーカテゴリー、育成を含む)のサポートを行っている。 伊藤氏は 2004 年バスケットボール女子日本代表がアテネオリンピックに出場した際もトレーナーとして同行したが人数枠の関 係で選手村の外からチームをサポートすることになった。チームの成績も振るわず 10 位で大会を終えた。その後は JBA 女子日本 代表サポートトレーナーの一員として代表活動を支えたが、A 代表がロンドンオリンピックの出場権を逃し新体制が構築される中、 チームから乞われて専任トレーナーに就任。再び女子日本代表トレーナーとして手腕を振るうこととなった。 今回は就任からリオデジャネイロオリンピック出場権獲得までの活動についてお話しを伺った。 伊藤 由美子(いとう ゆみこ) 花田学園 昼間部 本科(H7 年卒) 岐阜県立女子高校→日本鍼灸理療専門学校 鍼灸、あん摩マッサージ指圧師。日本体育協会公認アスレティックトレーナー。 高校時代はバレーボール選手として活躍(インターハイ、国体出場)。 資格取得後は社会人女子バスケットボールチーム(富士銀行、荏原製作所)、田渕整形外科 勤務を経て、2012 年から(公財)日本バスケットボール協会専任トレーナー。 (公財)日本バスケットボール協会スポーツ医科学委員会員。 Q. JBA 専任トレーナーの役割を教えてください。 活動は主に強化部門と育成部門があり、強化部門においては、日本代表チームの全カテゴリー にトレーナーとして帯同し、合宿、遠征、大会の準備と活動をします。育成部門においては、医 科学講習などを通して選手の外傷障害予防の普及活動が主な内容です。これらを年代別に一貫し たサポートを行い、バスケットボールの競技力向上に貢献することが主な役割と考えています。 Q. 現在の仕事内容を教えてください。 ①ケガの応急処置、②治療、③復帰までのリハビリ指導、④テープ指導、⑤ウォーミングアップ・クールダウン、⑥トレーニン グ指導、⑦食事の内容等栄養管理、⑧チームスタッフや医師との連携、⑨所属チーム(保護者含む)との連携、⑩物品管理、⑪ス ケジュール管理、⑫ドーピングに関する管理、⑬遠征時の環境確認及び準備、⑭スポンサーとの連携、⑮選手教育用講習会準備、 ⑯サポートトレーナーとの連携、など選手のコンディションに関する事と、チームにおけるコンディション管理が主な仕事です。 Q. オリンピック予選に向けどんな取り組みをしてきましたか? リオデジャネイロオリンピック予選は 7 連戦という日程の為、トレーニング強度(練習強度)を例年よりも上げていく上で日々 のリカバリーが重要と考え、 「リカバリー」について取り組みました。 ①心拍変動による客観的指標の導入、②快眠セミナーによる有効的な休養のレクチャー、③試合期の食事による筋グリコーゲン維 持のための栄養管理④試合時と試合後の栄養管理。 これらは、ケア等だけではなく、身体組織レベルでより早いリカバリーをすることで、積み重なる疲労を蓄積しにくくすること を目的に実施し、選手全員が最後までパフォーマンスを維持できたと感じています。 Q. 選手のケアや指導などをするときに心がけていることはどんなことですか? ケアはトレーナー任せにならないよう、選手自身の身体の状況を選手が理解、納得し、何をすべきか指導するよう努めています。 また、困った時は重症になる前に声を掛けてもらえるよう、日頃から日常生活的な事も含めてコミュニケーションをとるように心 がけています。 Q. スタッフ間で円滑にコミュニケーションを行うために心がけていることは どんなことです? 当たり前の事ですが、一日の初めは挨拶をしっかりします。また、感情的にならず、気 が付いたことは後回しにせずその場で言うように心がけています。逆に、スタッフからも 遠慮せず何でも意見していただけるよう、普段から会話をするように心がけています。ま た、トレーナーでありますがチームスタッフであると意識して、手が空いているときは、 練習の手伝いや雑用など他のスタッフの手伝いもするようにしています。 Q. ストレングスコーチ、アシスタントトレーナーとの役割分担について教え て下さい。 ウォーミングアップ、クールダウン、筋力トレーニングなど強化していく部分はストレ ングスコーチが担当し、ケガや外傷を抱えた選手の補強トレーニングやリハビリはトレー ナーが担当しました。また、選手のコンディション状況は常に監督と共にストレングスコ ーチも情報を共有し、患部外トレーニングはアドバイスを頂きながら行ったり、ストレン グスコーチが担当するなど、常に話し合って分担していました。 Q. 国際大会で活動するために身につけておくと良いことはありますか? 主に海外での大会帯同となることが多いことから、環境(食事、時差、気候、習慣)が変わってもネガティブにならず、日本に 居る時と同じように対応できること。また、日本のように何でもそろっているところは少なく、杓子定規に物事が運ばない事は常 で、どんな状況でも柔軟に対応できることが必要かと感じます。 その他、英会話ができると多くの国で困ることが少なくなります。 Q. トレーナーを目指すようになったきっかけは何ですか? 高校時代、試合の時は腰痛などを抱えるレギュラーメンバーのマッサージなどをして活躍してくれたことがうれしくて、トレー ナーという仕事に大変興味を持ったことがきっかけです。 一度は事務職に就いたのですが、この時の思いが忘れられず、現職で活躍されているトレーナーを訪ね、スポーツ現場の話を伺 い、勝負に掛ける選手のサポートをしたいという思いが益々強くなり、この道を目指しました。 Q. 仕事をする上でご自身の一番得意な分野を教えてください。 花田学園で学んだ鍼灸マッサージを活かした治療がやりがいがあり、選手の反応を一番感じられるので、治療が得意な分野です Q. 仕事の面白さややりがいを感じるのはどんなときですか? 勝つために努力する選手や、チームに対して、コンディション管理や指導することで少しでも結果に繋がる事がやりがいですし、 外傷障害で苦しんだ選手が無事に復帰しコートで活躍した姿を見ると、自分の事のように嬉しく私自身の次への活力にもなります。 Q. 自分自身の研鑽のために行っていることはありますか? トレーニングが苦手なので、学術会に参加したり、ストレングスコーチから選手が指導されているのをみて、体験して学んでい ます。また、外国語を学んでいます。 Q. これから目指していきたいことや現在の目標を教えてください。 まずは、今年のリオデジャネイロオリンピックで、過去の 7 位以内入賞を目指し、サポートしていきたいと考えています。その ためには 8 月に最高のコンディションになるよう外傷障害を減らし日々のトレーニングに励めるコンディションつくりのサポート と、栄養や時差など環境整備のサポートを考えています。また、長期的には東京オリンピック、その先にメダルをとれるチームに する為に、ジュニア世代からの年代に応じた段階的サポートを考えています。 Q. 花田学園を選んだ理由、また昼間部 or 夜間部を選んだ理由を教えてください。 当初相談していたトレーナーは別の学校の卒業生でしたが、花田学園をすすめられた為、花田学園を受験しました。学生の頃か らできれば現場経験を希望しており、トレーナーは昼から夜にかけて仕事が多いのではないかと考え、昼間部を選びました。 Q. 花田学園で一番思い出に残っていることは何ですか? 学園祭やソフトボール大会など、行事も多く楽しい学生生活も貴重な思い出ですが、3 年生の時に溝口先生のご指導の元、高校 サッカー選手権に帯同させていただき、最初で最後の現場実習をしたことは、毎日が初めての連続で今でもはっきりと覚えていま す。 Q. 花田学園で学んで一番役に立っていることは何ですか? 鍼灸マッサージの理論と実習が今でも主たる仕事であり、この資格がある為トレーナーや病院でも活かすことが出来ており、一 番役に立っている事です。 トリオ:携帯できる微弱電流治療器のおかげで、外傷障害時の管理もしやすく、経過が良いため、選手 にも勧めています。 バスケットボールトレーナー勉強会:バスケットに関わる外傷障害の内容が多く、現場ならではの講義 が聞けるところがおすすめです。 菜根譚:洪自誠著 時々読み返して自身を振り返ります。 【編集後記】JBA 選任トレーナーとしてリオ五輪の舞台に立つ伊藤由美子氏。オリンピック出場権獲得後、選手達は W リーグで熱戦を繰り広げ JX の 8 連覇で閉幕。いよいよ 4 月からリオ五輪に向けた代表活動が開始されました。ぜひとも上位入賞を目指して頑張って欲しいと思います。伊藤 氏にはお忙しいところ取材のご協力いただき感謝いたしております。(溝口秀雪、津田清美) 注:掲載の写真および文章の転載を禁じます。 発行:花田学園アスレティックトレーナー総括部 取材:花田学園アスレティックトレーナー専攻科・東京有明医療大学 AT・HFI コース 〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町 20-1 電話 03-3461-4787 Fax 03-3461-4733 http://www.hanada.ac.jp/ 取材日:平成 28 年 3 月 取材協力:(公財)日本バスケットボール協会専任トレーナー伊藤由美子氏 《花田学園 東京有明医療大学、日本鍼灸理療専門学校、日本柔道整復専門学校 》 花田学園 AT 総括部(花田学園 AT 専攻科、東京有明医療大学 AT/HFI コース) 溝口秀雪
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