本日の概要(10/9) • 前回の続き(コンピュータと音楽の歴史等) • 音楽データの分類 • 音響データ • 記号(楽譜)データ • その他(構造記述等) • データのファイル形式: 以下の2つを取り上げる • WAV (音響データ) • MIDI/SMF (楽譜データ) 1 音楽の記号的側面 • 音響信号 連続的であり、記号化・構造化されていない。 • 音楽的に意味のある単位 時間・音高について離散化されたカテゴリに分割される。 ⇒ 音符、楽譜 • 高次の構造 それらの単位を組み合わせて関係付けた構造、 抽象的・概念的な構造 ⇒ 楽曲の解釈、音楽構造の表現 2 *音楽データの形態 • 音響信号 信号・数値 ↓ ×103~104 • MIDI 符号 記号化 ↓ ×10-1~101 • 音楽記述言語 • 構造・知識表現 構造化 3 音楽データの記述形式・言語 • • • • • 音響データ(WAV 等) 音楽データ表現としての MIDI/SMF Music XML MML とその拡張 テキストベース: MUSIC-X, Csound, CMix, Nyquist, DARMS, Humdrum/Kern, ...... • GUI ベース: KYMA, MAX, Pd, …... • 統合的な音楽記述環境・システム • 知識表現型言語 • Music Structure • DOOD ベース 4 データ形式、MIDI 音源の比較 • 例: バッハ:ブランデンブルグ協奏曲第5番第1 楽章(最初の2分ぐらい) • MML データ 7.7 KB • SMF ファイル 19.2 KB • WAV ファイル(44.1 kHz mono) 9.46 MB • (生演奏) • MIDI 音源(ソフトシンセ、外部音源等々)によっ て音質さらには曲の表情もかなり異なる。 • MIDI 音源をチューニングした例(加藤) 5 音響データと記号(楽譜)データ • 同じ曲について (約2分間) • 音響データ 約 10,000 KB (10 MB) ↑ (500倍) ↓ 6 • MIDI データ 約 20 KB 音響データ(1) • 基本的には、A/D 変換されたディジタル音響デー タ(数値の時系列)を記録したもの。 • したがってデータ量は録音時間(及びチャンネル 数、分解能)に応じて決まり、演奏されている楽曲 の種類には拠らない(楽譜データとの違い) • ディジタル化のパラメタ • 標本化(サンプリングレート) 量子化(分解能・深度) • 1サンプルあたりの量子化データ(数値)を並べる。 7 ディジタル化 • 時間軸方向のディジタル化(標本化) • サンプリングレート: 44.1 kHz (CD), 22050, 11025, 48000, 8000Hz(電話)... • cf.人間の可聴域: 約 20~20000 Hz • Shannon の標本化定理 サンプリングレートの ½ までの周波数成分は 忠実に標本化可能 • 振幅方向のディジタル化(量子化) 8 bit (48 dB), 16 bit (96 dB: CD/DA), ... 8 聴覚(Wikipedia より): 内耳 9 可聴域 (20~20,000 Hz) 10 参考:可聴域 • 本当の可聴域は? • 可聴域は人によってかなり個人差がある。 • 20~20,000 Hz というのは、純音(=正弦波)単独 での測定に基づく。 • 複合音では、単独では認識されない高周波成分 も(音色)などの形で認識されると言われている。 • 「モスキート」 • 若年(~25才ぐらい)は高音がよく聞こえるが、年 と共に高いほうが聞こえなくなる。 • 「モスキート」:若者を追いだす装置? • →君には聞こえるか? 11 ディジタル化 y • 時間軸方向のディジタル化(標本化) • 振幅方向のディジタル化(量子化) y y' -2.00 x 12 ディジタル化の例 Sampling rate 正弦波(440Hz) ピアノ音(中央ハ) 261.1 Hz 44,100 Hz (÷2=)22,050 Hz (÷5=)8,820 Hz (÷10=)4,410 Hz (÷20=)2,205 Hz (÷50=)882 Hz 880Hz π/3 44,100Hz 8bit 13 参考: CD のデータ • CD の容量: 約 650MB(CD-ROM の場合) • オーディオ CD(CD-DA)ではデータ量はこれより 多い(チェックビットなどがないため) • サンプリングレート: 44100 Hz 2 byte / 2 channel, linear PCM • 標準的な記録時間は最大約 74分 • 練習: 実際のデータ量を計算してみよ。 14 ディジタル情報の特徴 • 十分に高い分解能があれば、連続量を十分正確に表現で きる。 • 技術の高精度化が背景として必要 • 精度とデータ量のトレードオフ • 人間の認知能力との兼ね合い • アナログ情報に比べて、はるかに高い自由度で生成・加 工・編集等の処理ができる。 • ソフトウェア的な処理 • データが転送、コピーによって劣化しない。 • 著作権問題: 「Winny 事件」等 15 音響データ(2) • 数値の表現: • 整数型 • 符号付整数(WAV 2 byte: ー32768~+32767) • ベースシフト(WAV 1 byte: 0~255 (-128)) • 浮動小数点(Matlab 等) • チャンネル数 • モノラル(1チャンネル) • ステレオ(2チャンネル) • 多チャンネルステレオ(5.1ch surround など) 16 音響データ(3) • オーディオデータファイル形式 音響データそのものに加えて、パラメタ値などを どう記録するかの決まり。 • 非常に多数の形式がある。代表的なものとして は: • WAV (Microsoft) • AIFF (Mac/Apple) • AU (Sun) • (MP3) • データの圧縮: 可逆/非可逆(MP3 等) 17 音響データ(WAV 形式) • IFF/RIFF 形式 Mac 用の AIFF の MS/Windows 版 • ファイル拡張子: .wav 等 • ヘッダ部、フォーマットチャンク、データチャンクよりなる。 • フォーマットチャンク データについての基本的な情報(チャネル数、サンプリン グレート等) • データチャンク 実際の波形データの数値列 • Big Endian/Little Endian 問題 • 資料: http://www.kk.iij4u.or.jp/~kondo/wave/ 等 18 WAV 形式: データ表現(数値) • 数値の表現: 整数型 • 2byte: 符号付整数(ー32768~+32767) 先頭ビット:符号ビット • 0xxx xxxx xxxx xxxx: 正(または 0) • 1xxx xxxx xxxx xxxx: 負 • 1byte: ベースシフト(0~255 (-128)) • 1000 0000: 0 • 1xxx xxxx: 正(x≠0) • 0xxx xxxx: 負(x≠0) 19 WAV 形式: データ表現 • 多チャンネルデータは、各数値データをチャネル 順に並べる。 • 2チャンネルステレオの場合、L, R, L, R, … • バイトオーダー Intel 方式(いわゆる little endian) • n byte の2進数表現が [b1 b2 … bn] のとき、 ファイルには bn, …, b2, b1 の順に書き出す。 20 MIDI (Musical Instruments Digital Interface) • もともとは、ディジタル楽器の情報交換のための 規格として制定された。(1982/1983) ハードウェアインタフェース、符号化方式、通信プロトコル • 符号化: 音の高さ(ノート番号)、強さ(Velocity)、その他 • 拡張規格: GM (General MIDI) メーカー固有: GS (Roland), XG (YAMAHA) 等 • ファイル保存形式: SMF (Standard MIDI File) 21 MIDI 機器(1) • MIDI 音源(シンセサイザ) 各種の楽器の音を合成してオーディオ装置に送る。 • FM 合成方式(Yamaha DX-7 等) • PCM 音源(Pulse Coded Modulation) • その他 • コントローラ 通常の楽器の演奏インタフェースにあたる。 • MIDI キーボード • MIDI ドラム • ウィンド・コントローラ、ギター・コントローラ、 ... • その他 シーケンサ、ミキサー、リズムボックス、... 22 MIDI 機器(2) • 音源付キーボード 音源とキーボード等のコントローラが一体になっ たもの(従来楽器のイメージ) • 音源+コントローラ 従来楽器に対する大きな違いは、発音部分と演 奏インタフェースが分離されていること。 • キーボードで弦楽器、管楽器等の音が出せる。 • 物理的に離れていてもかまわない。 • 複数の音源を同時に制御できる。 23 MIDI とコンピュータ(1) • コンピュータと MIDI 機器を接続するには、MIDI インタ フェースが必要。 (最近の MIDI 音源では組み込みで用意されている: RS-232C, USB インタフェース等) • コンピュータによって • MIDI 機器を制御する(演奏を行う) • MIDI 機器から情報を入力し、記録(録音)、加工・編 集、出力する • 他のメディアとの融合、多様な表現形式の実現 24 MIDI とコンピュータ(2) • DTM (Desk Top Music) 音楽情報を様々な形で表現・入力・編集・出力する統合 的なシステム Finale, Professional Composer, Cakewalk, Cubase, Sibelius, MAX/MSP, ... • 「ソフトシンセ」 MIDI 音源の機能をコンピュータ上でソフトウェア的に実 現するプログラム • 現在のコンピュータには標準的に装備されており、ブラウ ザなどの親システムから呼び出されて使われる。 • SMF は標準的な音楽データ交換形式となっている。 cf MusicXML (Recordare) も de facto 標準となりつつある。 25 MIDI/SMF • MIDI: Musical Instrument Digital Interface • ハードウェア 31.25 kHz serial, photo-coupler 接続 (MIDI コネクタ、MIDI ケーブル) • コード: MIDI コード • 拡張: GM (General MIDI), GS, XG, ... • SMF: Standard MIDI File Format • MIDI データのファイル保存形式 • 時間情報、トラックへの分割、メタ情報等 26 MIDI メッセージ • Status byte(先頭1バイト)と data byte(s) よりなる。 • Status byte は MSB on(先頭ビットが 1)、data byte は原則 として MSB off(例外あり)。 8nH: AnH: CnH: EnH: note off key pressure program change pitch bend 9nH: BnH: DnH: FxH: note on control change channel pressure system message • Channel voice message (status 8nH~EnH) では status byte の下 4 bit はチャネル指定(16チャネル) • Running status: 前のメッセージと同じ status byte は省略可能。 27 ノート・イベント • note-on: 9nH + [note number]+[velocity] • note-off: 8nH + [note number]+[velocity] • note number: 半音単位での音高 (0~127: 中央ハは 60) • velocity: 音の「強さ」(0~127) note-on で velocity=0 なら消音に相当 ⇒ running status 利用 28 SMF • • • • IFF/RIFF 形式準拠 ファイル拡張子: .mid, .midi, .smf 等 ヘッダチャンクとトラックチャンクよりなる。 ヘッダチャンク ファイルについての基本的な情報 • トラックチャンク 各「トラック」の実際のデータを格納 ⇒「チャネル」と「トラック」の違いに注意 29 SMF: ヘッダチャンク • “MThd” <length><format><ntrks><division> • <length>(4bytes): チャンクの長さ(値 6) • <format>(2bytes): 0, 1, 2 のいずれか 0: 1トラック、1: 複数トラック、(2: 複数曲等) • <ntrks>(2bytes): トラック数 • <division>(2bytes): 時間分解能 通常は4分音符の分解単位を記す (別形式:SMPTE+frame ticks) 30 SMF: トラックチャンク • “MTrk”<length><events>* • <length>(4 bytes): track の長さ • イベント • [delta-time] MIDI イベント (SysEx 以外の)MIDI コード • [delta-time] SysEx イベント F0, F7 status の MIDI コード(可変長データを伴う) • [delta-time] メタ・イベント 曲名、テキスト、調、拍子などの書誌的情報 31 SMF: 可変長数値指定 • 数値を 7 bit ずつに分割してコーディング MSB on の場合には数値が続く。 例) 120 = 78H = 0111 1000B 259 = 103H = 1000 0010 0000 0011B • delta-time: 直前のイベントとの時間差 同時イベントの場合には 0 を指定する。 32 SMF: メタ・イベント • 書誌的情報: テキスト、著作権表示、シーケンス/トラック名、 楽器名、歌詞、マーカー、キュー・ポイント • 楽曲情報: テンポ指定、拍子、調 • トラックの終わり: end of track • その他 シーケンス番号、MIDI Channel Prefix, シーケンサ固有情報等 33 SMF: 運用 • 実際のデータでは、note on/off に running status を使用しているものが多い。 ⇒ 中途からの再生に問題あり • 時間分解能は、大きいほど細かい指定ができる が、delta-time などのバイト数が多くなる。 ♩ = 96, ♩ = 480 など • 実際の演奏の質は音源依存 • トラックとチャネルの関係、分割/統合 • テキスト中の日本語コード 34 文献 (MIDI 関係) • 音楽電子事業協会 http://www.amei.or.jp/ MIDI 1.0 規格書、リットーミュージック (1998) • MMA (MIDI Manufacturer’s Association) http://www.midi.org/ • 新井純 SMF リファレンス・ブック、GS リファレンス・ブック Edirol リットーミュージック (1996) • 田辺義和: Windows サウンドプログラミング、 翔泳社 (2001) • (授業ページのリンク集も参照) 35 文献 • E. Selfridge-Field (Ed.): Beyond MIDI: The Handbook of Musical Codes, MIT Press (1997), BN 0-262-19394-9. • C. Roads: The Computer Music Tutorial, MIT Press (1996), BN 0-262-68082-2 (平田他(訳):「コンピュータ音楽」、東京電機大学 出版、2001) • 平田圭二:「コンピュータ上での音楽知識の表現」、 bit 別冊「コンピュータと音楽の世界」4.2 節、 pp.163-181. 36
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