2015-05-14_koureisha..

高齢者の疾病と対処
2015.5.14
滋賀県米原市
県立長寿社会福祉センター
地域包括ケアセンターいぶき
畑野秀樹
講義内容
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
①-1.加齢に伴う身体の変化
 ①予備力(ストレス耐性)の低下
 ②恒常性維持機能の低下
 ③防御機能の低下
 ④回復力の低下
 ⑤適応力の低下
脳はどうなるか?
 ①脳重量の低下、大脳の萎縮
 ②神経細胞、神経線維数の減少
 ③神経伝達物質の活性低下
 ④脳血流量の部分的低下
 ⑤脳活性代謝の低下、認知機能の低下
アセチルコリン
セロトニン
夢、意欲、社会性
意欲、感情
心臓・血管はどうなるか?
→ 心肥大・高血圧
 ②運動時の最大心拍数の減少→ 運動耐用能力の低
下
 ③冠動脈硬化 → 狭心症・心筋梗塞
 ①左室壁の肥厚
呼吸器系はどうなるか?
 ①肺の弾性低下、肺胞数の減少→
下、1秒量の低下
 ②呼吸筋力低下
努力肺活量の低
消化器系はどうなるか?
 ①そしゃく・嚥下機能の低下
→ 便秘
 ③腸管壁の脆弱化 → 憩室、便通異常
 ④腸からのカルシウム吸収低下
 ⑤腸内容の食道への逆流
→逆流性食道炎
 ②消化管蠕動運動の低下
腎・尿路系はどうなるか?
 糸球体の喪失、腎血流量の低下、糸球体ろ過率の低下
→夜間尿量の増加
 健常者では、腎予備能があるため水・電解質バランスは
維持される
 女性では腹圧性尿失禁が起こりやすい。
 男性では前立腺肥大による溢流性尿失
禁が起こりやすい
夜間の腎
尿量の増
血流量増
加
加
夜間頻尿
膀胱の容
量の減少
前立腺
肥大
骨・運動系はどうなるか?
 骨量減少、骨強度の低下→骨粗鬆症、骨折
 腱、靭帯の硬化
 関節液減少(ヒアルロン酸など)、滑膜の弾性力低
下→関節炎
 筋萎縮→筋力低下
聴覚はどうなるか?
 高周波の音が聞こえにくくなる
老人性難聴
 聴神経は50歳頃より低下し始め、65歳以上の30%に
聴力障害
 伝音声難聴・・・補聴器が有効
 感音性難聴・・・原因が内耳、聴神経、脳
 耳鳴り
治りにくい
 補聴器の早期装用により日常のコミュニケーションに好影
響
視覚・視力はどうなる?
 角膜は多少厚くなる・・・光が散乱しやすい
 水晶体(レンズ)の黄変、白濁化(白内障)、調節障害
(老視)
 視力低下・・・45~50歳頃から視力が低下し始める→
転倒増加
 視野の狭窄・・・年齢とともに。緑内障があるとさらに狭
くなる
味覚はどうなる?
 味覚は加齢性変化は比較的少ない・・・塩味の感受性低
下
 副鼻腔炎などがあると、嗅覚障害が出ることがある→味
覚低下
 唾液の減少、舌苔など口腔内環境 →味覚低下
 亜鉛摂取の減少→味覚低下
(お茶、ココア、豆な
ど)
免疫力はどうなるか?
 免疫力の低下
リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞 減少
皮膚の変化はどうなるか?
 皮膚弾力の低下
 皮膚表在感覚や深部感覚の低下
 汗腺数の低下・・・発汗、体温調整
 皮膚膜の薄化・・・バリア機能低下、ドライスキン、痒
み
精神・心理機能はどうなるか?
 60歳以上・・・保守性、あきらめ、義理堅さ、依存的
 75歳以上・・・活動性の減退、身体不自由に対する不
安や不満、短気
 言語の流暢さや数的処理能力は若い世代よりも優れてい
る
 新たなことを学習したり、順応する力が低下
 老年期の一般的な知能の低下は大きくない・・・80歳
以降
 独創性・・・芸術
 不安特性・・・喪失が大きく不安になりやすい
身体的な機能低下による心理機能へ
の影響
 活動空間の狭まり
 日常的な対人交流や物事への接触低下
 日常生活での感動、喜びが乏しくなりがち
 事故に遭う危険性の増大
 新たな活動への不安により、活動から遠ざかる
 抑うつ反応
軽いケガであっても心理的ショックが大
死が近づきつつあることへの自覚を呼び起こす
同年代の親しい人の死が不安をかきたてる
感覚機能の衰えによる心理的影響
 聴力の低下
→言葉を介した日常のコミュニケーション
に影響
 猜疑心を持ちやすい
 他人の話しかけに対する理解力の低下
 自閉的な状況に追い込まれる
 知的能力低下
 記憶力を必要とする作業から遠ざ
からる→消極的な姿勢へと変化
 新しい課題への挑戦をためらう
社会環境の変化による心理的影響
 定年や家庭内役割などの社会的役割の喪失
 自己の無用感を植えつけられる(行動意欲の減退)
 人間関係から離脱(孤独感)
 自己中心的になる
 役割喪失や周囲の老人扱い・・・不当なものとして認識
される
 役割への固執
 頑固老人扱いされることへの拒否・・・意地を張る、自
己主張する
 かたくなな態度
高齢者に起こりやすい疾病
精神心理的障害
移動能力障害
排泄機能障害
認知症
せん妄
抑うつ
寝たきり
廃用症候群
転倒
骨折
排尿障害
便秘
尿・便失禁
感覚障害
視力障害
聴力障害
味覚障害
栄養摂取障害
低栄養
脱水
その他
めまい
失神
褥瘡
不眠
高齢者の病気の特徴
 ①病気になりやすく、慢性化しやすい
 ②複数の病気を持っている
 ③合併症を起こしやすい
 ④意識障害を起こしやすい
 ⑤脱水を起こしやすい
 ⑥はっきりした症状がない
 ⑦寝たきりや認知症につながりやすい
 ⑧薬の副作用が出やすい
薬の副作用
 高齢者には副作用が出やすい・・・代謝が遅い、水
分の割合が少ないため血中濃度が高くなりやすい
 たくさんの薬を飲んでいる・・・相互作用
 正しく飲めない・・・目が見にくかったり、理解力
の低下による
アリセプト
活発にする
易怒性、暴言、徘徊など
嘔気など
メマリー
穏やかにする
めまい、ふらつきなど
高齢者において、一般に使用を避けることが
望ましいもの
 抗不安薬・睡眠薬・・・ふらつくなどして転倒や骨折の危険が
高くなる
フルニトラゼパム(ロヒプノール)→半減期が長く、中~短期
作用型ベンゾジアゼピンが望ましい。
ロラゼパム(ワイパックス) 3mg、トリアゾラム(ハルシオ
ン) 0.25mg、エチゾラム(デパス) 3mg→1日用量
が一定量を超えないことが望ましい。高齢者では感受性が高い
ジアゼパム(セルシン)→半減期が長い
 アマンタジン(シンメトレル)→幻覚・せん妄をきたすおそれ
 アミノトリプチン(トリプタノール)→抗コリン作用、鎮静作
用が強い
 オランザピン(ジプレキサ)→血糖上昇、プロラクチン増加
高齢者において、一般に使用を避けることが
望ましいもの
 ジソピラミド(リスモダン、ノルペース)→抗不整脈薬の中






で強力な陰性変力作用があり、心不全を誘発する恐れがある。
また抗コリン薬でもある
アミオダロン(アンカロン)→危険な不整脈を起こす危険が
ある
ドキサゾシン(カルデナリン)→低血圧、口内乾燥
ニフェジピン短期作用型(アダラート)→低血圧や便秘
スルピリド(ドグマチール)→パーキンソン症候群を起こす
恐れ
シメチジン(タガメット)→錯乱を含む中枢神経症状
チクロピジン(パナルジン)→凝血予防に有効だが肝障害や
血球減少症など危険な副作用
 ヒドロキシジン(アタラックス)、プロメタジン(ピレチ
ア)→抗コリン作用が強い
特定の疾患において避けることが望ましいもの
 排尿障害のある人→抗コリン作用のある抗ヒスタミン薬や抗アレ







ルギー薬(PL顆粒も)→尿閉
糖尿病の人→クエチアピン(セロクエル)、オランザピン(ジプ
レキサ)→血糖上昇作用
肥満の人→オランザピン(ジプレキサ)→食欲を刺激し体重を増
加させる
認知症の人→抗コリン薬、鎮痙薬、筋弛緩薬等→中枢神経系を変
調させる
認知症の人→ベンゾジアゼピン系→認知症を増悪
パーキンソン病の人→メトクロプラミド(プリンペラン)、リス
ペリドン(リスパダール)→症状増悪
失神のある人→中~短ベンゾジアゼピン系、ゾルピデム(マイス
リー)→運動失調、精神運動機能障害など
緑内障のある人→チオトロピウム(スピリーバ)→眼圧を上げる
特定の疾患において避けることが望ましいもの
 心不全のある人→ジソピラミド(リスモダン、ノルペース)→陰







性変力作用
不整脈のある人→三環系抗うつ剤→不整脈を誘発する
凝固療法中の人→アスピリン、NSAIDs、チクロピジン(パ
ナルジン)→出血傾向
慢性閉塞性肺疾患(COPD)→長時間型ベンゾジアゼピン系(セルシ
ンなど)→呼吸抑制
胃潰瘍・十二指腸潰瘍→NSAIDs、アスピリン→胃潰瘍悪化、発症
の恐れ
慢性便秘→抗コリン薬、三環系抗うつ薬→便秘の悪化
座位・立位を保持できない人→ビスフォスフォネート(フォサ
マック、ボナロン、ボノテオ)→食道副作用軽減のため、食後3
0分は座位か立位
腎機能低下→ガスターなどH2ブロッカー→精神症状など
バイタルサインや全身観察のポイント
◆バイタルサイン
「生命維持に必要な」、「命にかかわる」という意味
 1.血圧
正常 100~140/ 60~80
くらい
 2.脈拍
正常 60~90回/分
 3.呼吸
正常 16~20回/分
 4.体温
正常 36~37度
バイタルサインや全身観察のポイント
◆何気ない言葉かけから様子を観察する
 「いつもと変わりがないか」
 「食欲はあるか」
 「よく眠れたか」
 何か変と思ったら、相談してみる(家族・看護師・
医師・ヘルパーなど)
緊急に医療を要する状態
◆状態の観察
1.痛みやめまい
2.脱水や低栄養状態
3.意識障害
4.バイタルサイン
◆在宅医療では、以下の点に注意する
1.緊急時、かかりつけ医に連絡することが原則であ
る
2.ヘルパーも本人の既往歴を知ったうえで介護に入
る
3.ケアマネが緊急時のことについて、あらかじめ本
人・家族に確認しておく
◆施設においても、延命するかしないかなども含め、緊急
時の対応について確認しておく
◆病気の知識そのものよりも、「見る・聞く・感じる」こ
頭痛
→ くも膜下出血 →緊急
 変なことを言っている →脳血管障害 →緊急
 手足のしびれ、力が入らない →脳血管障害 →緊
急
 強い吐き気
胸痛
 胸がしめつけられる強い痛み
→ 心筋梗塞・狭心
症 →緊急
 圧迫感・不快感 →心筋梗塞・狭心症 →緊急
 息切れ、手足が冷たい、放散する痛み → 心・血
管の病気→緊急
背部痛
→ 大動脈解離 → 緊急
 裂けるような痛み → 大動脈解離 → 緊急
 赤い尿 → 腎結石 → 要連絡
 強く痛む場所が移動
腹痛
 発熱・嘔吐・下痢
→ 消化器の感染症 → 要連
絡
 下血 → 消化管出血 →
緊急
めまい・ふらつき
→ 心筋梗塞・狭心症 → 要連絡
急に手足の力が抜けた感じ →脳卒中・心原性脳塞栓症
→ 要連絡
手足の動きにくさ → 脳卒中・心原性脳塞栓症 →要
連絡
脈が極端に速かったり遅かったり → 不整脈 →要連
絡
目が見えにくい → 脳卒中 → 要連絡
下痢・嘔吐 → 脱水 → 要連絡
意識レベルの低下、訴えと各症状が強ければ →緊急
 胸の痛み






脱水
→ 脱水 → 要連絡
発熱 → 脱水 → 要連絡
室内での熱中症 → 脱水 → 緊急
季節変化に順応できない → 要連絡
症状が重度であれば → 緊急
 下痢・嘔吐




低栄養状態
 食事介助での摂取量が徐々に低下
 床ずれの悪化
→ 要連絡
→ 要連絡
意識障害
→ 脳血管障害 → 緊急
手足の動きが悪い → 脳血管障害 →緊急
呂律が回らない → 脳血管障害 → 緊急
頭をひどく痛がる→くも膜下出血 → 緊急
糖尿病がある → 血糖異常(高血糖・低血糖)→
緊急
症状が重度であれば → 緊急
皮膚のかさかさ感 → 脱水に注意
 突然おかしくなる






伊吹山山頂
5月
講義内容
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
嚥下障害を起こす原因疾患
 脳血管障害(脳梗塞・脳出血)
 神経・筋疾患
 加齢による筋力の低下
嚥下障害の診断方法
 質問紙・・・肺炎の既往歴、食事でむせる時がある
か、など
 水飲みテスト・・・3mlの水→30mlの水
 反復唾液嚥下テスト(RSST)・・・30秒間で
2回以下なら嚥下障害の可能性
 嚥下造影検査(VF)
 嚥下内視鏡検査(VE)
嚥下障害の治療・
リハビリテーション
○口腔ケア

誤嚥性肺炎は、唾液の中の細菌を肺の中に誤まって飲み込
むことによって引き起こされるといわれています。このため
口の中を清潔に保ち、細菌数を減少させておくことは、誤嚥
性肺炎を予防する上で重要です。

うがい、ガーゼ、歯ブラシ、スポンジブラシ、歯間ブラシ
を用いて、口腔清掃を行います。また歯ブラシや義歯ブラシ
を用いて義歯を清掃します
○口唇、頬、舌の運動
 口に空気をためて頬を膨らまします。また口唇をとが
らしたり、口角を横に引いたりします。舌をまっすぐで
きるだけ前に出したり、舌を出して、左右の口角をなめ
たりします。
○呼吸訓練
 嚥下障害のある人では、呼吸が浅く、十分空気を吐き
だせないことが多い。呼吸の訓練として、胸の動きを大
きくし、十分空気を吸い込んでまた吐きだすことを行え
るようにします。
 具体的には、腹式呼吸の指導、口すぼめ呼吸の指導、
体位排痰法、胸の動きを改善させる運動、介助呼吸法な
どがあります。
○空咳、空嚥下の練習

喉頭の動きを引き出すために空嚥下(つばを貯めて飲み込
む)の練習を行います。咽頭に残留した食べ物や気管に誤嚥
した後の痰を出すのを促すために、空咳の練習を行います。
○言語療法

飲み込みの機能を改善させるために、言語療法も行います。
母音をできるだけ長く持続して発音します。口唇音、舌音な
どの発声練習を行います。

具体的には、"パ"、"タ"、"カ"、"ラ"などの音を、一息で1
回ずつ発声したり、一息で5回連続して発声したりします。
講義内容
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
肺炎の診断
◆高齢者の肺炎の特徴と注意点
 ①肺炎症状が乏しく、症状が非典型的であるため、
診断・治療が遅れがちになる
 ②高齢者肺炎には肺結核が混在していることがある
 ③既にほかの病気(糖尿病や心疾患など)に患って
いる人が多いので、潜在的な肺炎発症因子や増悪因
子を持っているため肺炎が急速に悪化する
 ④原因として気づかない誤嚥性肺炎が多い
高齢者肺炎の特徴
高齢者肺炎では、咳の出ない肺炎も多い
 肺炎の初発症状としての咳・痰の頻度は、高齢者は一般
成人に比べ約20%ほど低い
 65歳以上の肺炎患者では、初発症状としての咳は約4
0%の症例で認められない
高齢者肺炎の特徴
呼吸器以外の症状にも注目
 発熱の頻度が低い
 食思不振、全身倦怠感、意識障害が前面に出ることも
 飲水量低下により脱水になりやすく、これに低酸素血症
が重なり中枢神経異常をきたしやすい
 初発症状としての意識障害は約25%・・・脱水所見は
70%に見られる
 脱水は肺炎重症化の重要な要因
高齢者肺炎は呼吸不全になりやすい
 早期より、また病巣の広がりが少ないうちから呼吸不全
に陥りやすい
 高齢者肺炎では心不全を合併することがあり、呼吸不全
が急速に増悪する可能性がある
高齢者肺炎の原因と予防
高齢者肺炎は夜作られる
 高齢者では、咳反射が低下している
 本人・家族が気づかない摂食・嚥下障害が認められる(不顕性
肺炎)
 就寝時に口腔内の唾液や食べ物の残りが気道に落ち込み、咳反
射が低下しているために気づかずに朝を迎える
 予防するために、口腔内をきれいにすることや寝る姿勢(頭を
高くするなど)が必要
高齢者肺炎の原因と予防
ワクチンのすすめ
 インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン
 高齢者の入院頻度、死亡率を減らす
 インフルエンザワクチンは1年に1度
 肺炎球菌ワクチンは5年間有効
 行政の補助・・・肺炎球菌ワクチン
インフルエンザワクチン
高齢者の肺炎 まとめ
 ①高齢者特有の肺炎症状を理解して早期に「肺炎かもし
れない」と気づくこと
 ②「重症化しやすい」ので早期に医療機関を受診するこ
と
 ③高齢者肺炎は「気づかない誤嚥」が原因のことが多く、
日常の予防が必要
 ④高齢者肺炎の中に「肺結核」が時に紛れ込んでいるこ
と
伊吹山の花
グンナイフウロ
6月
講義内容
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
高齢者の脱水
 細胞組織の衰退で細胞内の水分が減っている
 代謝機能が低下している
 喝中枢機能が鈍くなり、水分摂取量が減っている
 嚥下力低下により、飲水に支障がある
 腎機能の低下により、頻尿になりやすい
 基礎的な体力が低下しているため、抵抗力が低い
脱水を起こしやすい
脱水症の初期症状
 なんとなく元気がなくなる(活動性が低下)
 微熱
 皮膚の乾燥
 唾液分泌量が減少し、口渇感をおぼえる
脱水の予防
 1日に飲水として、約1500ml以上の水分摂取
が必要
 人間の体は、尿・汗・呼吸などで、1日に2000
~2500mlの水分を排出し、失った水分を、飲
水・食事・体内生産によって補っている
 食事や体内生産によって、800~1000mlは
取り込むことはできるが、残りの水分は飲料水とし
て補給する必要がある。
脱水を予防するポイント
好きな飲み物を用意し、いつでも飲めるようにする
 緑茶・麦茶・紅茶・コーヒー・オレンジジュース・スポーツドリン
クなど
家族や友達と一緒に飲む
 一人でお茶を飲むのは味気ない。家族と一緒に、地域のサロンなど
で仲間と一緒に
ゼリーや寒天質のものを使う
 飲み物だけでは飽きてしまう。ゼリーなど水分量の多いものをおや
つに取り入れるのも、水分補給には効果的
こまめに水分を摂取するよう促す
 高齢者が1回に飲む水分の量はそれほど多くない。こまめに摂取す
るように促す。
講義内容
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
尿失禁の原因
◆尿失禁の頻度
 在宅の老人の約20%(5人に1人)に何らかの尿失禁の症状
がある
 医療機関や老人病院に入院している半数の人に尿失禁が見られ
る
◆尿失禁に伴う生活上の問題点
 患者さん側に頻回な排尿による不眠、トイレを汚したり、外出
の断念など、イライラ感や罪悪感
 介護する側も介護の疲れや経済的負担があり、人間関係のきし
みも
高齢者の尿失禁
 切迫性尿失禁
・・・排尿回数が多く、トイレまで行くのが間に合わな
い
 溢流性尿失禁
・・・尿が出にくい、残った感じ、たらたらと垂れる
 腹圧性尿失禁
・・・咳をしたり立ち上がったりする際に漏れる
 機能性尿失禁
・・・排尿の姿勢が取れない、
認知症・寝たきりなどでトイレ
まで行けない
排尿管理の基本方針
 おしっこの漏れがなく、一人で排尿できること
 膀胱炎や腎盂腎炎といった感染症を起こさないこと
 腎臓の機能を正常に保つこと
これらを管理して、できるだけ一人でおしっこが出
るようにすること
高齢者尿失禁の治療
 尿道に管(カテーテル)を入れる方法
 自分で管を使って尿を取る方法(自己導尿)
 訓練や薬による治療
 手術
訓練による治療
 ①膀胱訓練・・・切迫性尿失禁の場合に、排尿を我
慢して膀胱を大きくする
 ②排尿習慣訓練・・・認知症や脳卒中後遺症の尿失
禁の場合に、介護者による排尿の意識づけや排尿訓
練
 ③骨盤底筋訓練・・・腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁
の治療
 ④身体的リハビリテーション・・・筋トレなど
薬による治療
 切迫性尿失禁・・・膀胱の刺激状態を弱めたり、膀胱
の炎症を抑えるようにして、おしっこをたまりやすく
する
副作用
バップフォー、ネオキシテープ
→口渇、便秘、眠気
ウリトス、ベシケア →
認知機能障害
ベタニス
 溢流性尿失禁・・・前立腺肥大がある時は、尿道を開
いたり、前立腺を小さくする
ハルナール、フリバス、ユリーフ、
アボルブ、パーセリン
 神経因性膀胱・・・膀胱の収縮が弱くなっている場合
には、膀胱の収縮力を高める
ベサコリン
高齢者の便失禁
原因別に大別すると、
 ①脳血管障害による神経因性の便失禁
 ②認知症や活動性の低下による機能性の便失禁
 ③刺激性下剤による下痢便の便失禁
高齢者の便通異常
 食習慣や主疾患治療のための服薬の影響、日常生活での
活動量の減少によることが多い
 しかし、高齢者施設では便秘対策として下剤が投与され
ることが多く、その結果、便秘→(下剤)→下痢→便失
禁→(止痢剤)の悪循環が発生
 不適切な下剤投与
は、多くの高齢者に
身体的、心理的、
社会的苦痛を与え
ている
便秘の種類
 便秘の種類は大きく、結腸性便秘と直腸性便秘に分
けられる。便が大腸(結腸)のどこかに詰っている
のか、直腸まで降りてきているが出せないで詰って
いるのかの違い
 直腸性便秘のひとつに嵌入便がある
下剤の種類
 酸化マグネシウム(カマ)、マグミット、マグラックスと呼
ばれる緩下剤
緩下剤は大腸の水分吸収を減らす働き。便の水分を増やすこ
とで、硬い便を軟らかくし、便の量を増やす
 アローゼン、プルゼニド、ラキソベロン、センナに代表され
る
刺激性下剤
刺激性下剤は大腸の蠕動運動を促進させ、便が大腸を通過す
る時間を早める働きがある
 直腸まで便が降りてきている直腸性便秘の場合、大腸に作用
する刺激性下剤も、緩下剤も作用しない
適切な下剤を
 問題は、便がどこに溜まっているか。肛門に指を入れる
肛門直腸診で、直腸に便があるかどうかを確認できる。
 直腸性の便秘の場合、レシカルボン座薬や浣腸、あるい
は摘便が有効。直腸に便があれば、レシカルボンや浣腸
の処方で10~30分後の排便が期待できる。3~4日
間排便がないからといって、一律に刺激性下剤の投与で
はなく、重要なことは、便がどこに溜まっているのかを
診断し、それに適した処方を選ぶ
まとめ
 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい




て
②嚥下障害の原因、診断、治療について
③肺炎の予防方法について
④脱水の原因、判断、対処法について
⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に
ついて
老化はいつか行く道
自分だったらどうしてほしいか考
えて