高齢者の疾病と対処 2015.5.14 滋賀県米原市 県立長寿社会福祉センター 地域包括ケアセンターいぶき 畑野秀樹 講義内容 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて ①-1.加齢に伴う身体の変化 ①予備力(ストレス耐性)の低下 ②恒常性維持機能の低下 ③防御機能の低下 ④回復力の低下 ⑤適応力の低下 脳はどうなるか? ①脳重量の低下、大脳の萎縮 ②神経細胞、神経線維数の減少 ③神経伝達物質の活性低下 ④脳血流量の部分的低下 ⑤脳活性代謝の低下、認知機能の低下 アセチルコリン セロトニン 夢、意欲、社会性 意欲、感情 心臓・血管はどうなるか? → 心肥大・高血圧 ②運動時の最大心拍数の減少→ 運動耐用能力の低 下 ③冠動脈硬化 → 狭心症・心筋梗塞 ①左室壁の肥厚 呼吸器系はどうなるか? ①肺の弾性低下、肺胞数の減少→ 下、1秒量の低下 ②呼吸筋力低下 努力肺活量の低 消化器系はどうなるか? ①そしゃく・嚥下機能の低下 → 便秘 ③腸管壁の脆弱化 → 憩室、便通異常 ④腸からのカルシウム吸収低下 ⑤腸内容の食道への逆流 →逆流性食道炎 ②消化管蠕動運動の低下 腎・尿路系はどうなるか? 糸球体の喪失、腎血流量の低下、糸球体ろ過率の低下 →夜間尿量の増加 健常者では、腎予備能があるため水・電解質バランスは 維持される 女性では腹圧性尿失禁が起こりやすい。 男性では前立腺肥大による溢流性尿失 禁が起こりやすい 夜間の腎 尿量の増 血流量増 加 加 夜間頻尿 膀胱の容 量の減少 前立腺 肥大 骨・運動系はどうなるか? 骨量減少、骨強度の低下→骨粗鬆症、骨折 腱、靭帯の硬化 関節液減少(ヒアルロン酸など)、滑膜の弾性力低 下→関節炎 筋萎縮→筋力低下 聴覚はどうなるか? 高周波の音が聞こえにくくなる 老人性難聴 聴神経は50歳頃より低下し始め、65歳以上の30%に 聴力障害 伝音声難聴・・・補聴器が有効 感音性難聴・・・原因が内耳、聴神経、脳 耳鳴り 治りにくい 補聴器の早期装用により日常のコミュニケーションに好影 響 視覚・視力はどうなる? 角膜は多少厚くなる・・・光が散乱しやすい 水晶体(レンズ)の黄変、白濁化(白内障)、調節障害 (老視) 視力低下・・・45~50歳頃から視力が低下し始める→ 転倒増加 視野の狭窄・・・年齢とともに。緑内障があるとさらに狭 くなる 味覚はどうなる? 味覚は加齢性変化は比較的少ない・・・塩味の感受性低 下 副鼻腔炎などがあると、嗅覚障害が出ることがある→味 覚低下 唾液の減少、舌苔など口腔内環境 →味覚低下 亜鉛摂取の減少→味覚低下 (お茶、ココア、豆な ど) 免疫力はどうなるか? 免疫力の低下 リンパ球、ナチュラルキラー(NK)細胞 減少 皮膚の変化はどうなるか? 皮膚弾力の低下 皮膚表在感覚や深部感覚の低下 汗腺数の低下・・・発汗、体温調整 皮膚膜の薄化・・・バリア機能低下、ドライスキン、痒 み 精神・心理機能はどうなるか? 60歳以上・・・保守性、あきらめ、義理堅さ、依存的 75歳以上・・・活動性の減退、身体不自由に対する不 安や不満、短気 言語の流暢さや数的処理能力は若い世代よりも優れてい る 新たなことを学習したり、順応する力が低下 老年期の一般的な知能の低下は大きくない・・・80歳 以降 独創性・・・芸術 不安特性・・・喪失が大きく不安になりやすい 身体的な機能低下による心理機能へ の影響 活動空間の狭まり 日常的な対人交流や物事への接触低下 日常生活での感動、喜びが乏しくなりがち 事故に遭う危険性の増大 新たな活動への不安により、活動から遠ざかる 抑うつ反応 軽いケガであっても心理的ショックが大 死が近づきつつあることへの自覚を呼び起こす 同年代の親しい人の死が不安をかきたてる 感覚機能の衰えによる心理的影響 聴力の低下 →言葉を介した日常のコミュニケーション に影響 猜疑心を持ちやすい 他人の話しかけに対する理解力の低下 自閉的な状況に追い込まれる 知的能力低下 記憶力を必要とする作業から遠ざ からる→消極的な姿勢へと変化 新しい課題への挑戦をためらう 社会環境の変化による心理的影響 定年や家庭内役割などの社会的役割の喪失 自己の無用感を植えつけられる(行動意欲の減退) 人間関係から離脱(孤独感) 自己中心的になる 役割喪失や周囲の老人扱い・・・不当なものとして認識 される 役割への固執 頑固老人扱いされることへの拒否・・・意地を張る、自 己主張する かたくなな態度 高齢者に起こりやすい疾病 精神心理的障害 移動能力障害 排泄機能障害 認知症 せん妄 抑うつ 寝たきり 廃用症候群 転倒 骨折 排尿障害 便秘 尿・便失禁 感覚障害 視力障害 聴力障害 味覚障害 栄養摂取障害 低栄養 脱水 その他 めまい 失神 褥瘡 不眠 高齢者の病気の特徴 ①病気になりやすく、慢性化しやすい ②複数の病気を持っている ③合併症を起こしやすい ④意識障害を起こしやすい ⑤脱水を起こしやすい ⑥はっきりした症状がない ⑦寝たきりや認知症につながりやすい ⑧薬の副作用が出やすい 薬の副作用 高齢者には副作用が出やすい・・・代謝が遅い、水 分の割合が少ないため血中濃度が高くなりやすい たくさんの薬を飲んでいる・・・相互作用 正しく飲めない・・・目が見にくかったり、理解力 の低下による アリセプト 活発にする 易怒性、暴言、徘徊など 嘔気など メマリー 穏やかにする めまい、ふらつきなど 高齢者において、一般に使用を避けることが 望ましいもの 抗不安薬・睡眠薬・・・ふらつくなどして転倒や骨折の危険が 高くなる フルニトラゼパム(ロヒプノール)→半減期が長く、中~短期 作用型ベンゾジアゼピンが望ましい。 ロラゼパム(ワイパックス) 3mg、トリアゾラム(ハルシオ ン) 0.25mg、エチゾラム(デパス) 3mg→1日用量 が一定量を超えないことが望ましい。高齢者では感受性が高い ジアゼパム(セルシン)→半減期が長い アマンタジン(シンメトレル)→幻覚・せん妄をきたすおそれ アミノトリプチン(トリプタノール)→抗コリン作用、鎮静作 用が強い オランザピン(ジプレキサ)→血糖上昇、プロラクチン増加 高齢者において、一般に使用を避けることが 望ましいもの ジソピラミド(リスモダン、ノルペース)→抗不整脈薬の中 で強力な陰性変力作用があり、心不全を誘発する恐れがある。 また抗コリン薬でもある アミオダロン(アンカロン)→危険な不整脈を起こす危険が ある ドキサゾシン(カルデナリン)→低血圧、口内乾燥 ニフェジピン短期作用型(アダラート)→低血圧や便秘 スルピリド(ドグマチール)→パーキンソン症候群を起こす 恐れ シメチジン(タガメット)→錯乱を含む中枢神経症状 チクロピジン(パナルジン)→凝血予防に有効だが肝障害や 血球減少症など危険な副作用 ヒドロキシジン(アタラックス)、プロメタジン(ピレチ ア)→抗コリン作用が強い 特定の疾患において避けることが望ましいもの 排尿障害のある人→抗コリン作用のある抗ヒスタミン薬や抗アレ ルギー薬(PL顆粒も)→尿閉 糖尿病の人→クエチアピン(セロクエル)、オランザピン(ジプ レキサ)→血糖上昇作用 肥満の人→オランザピン(ジプレキサ)→食欲を刺激し体重を増 加させる 認知症の人→抗コリン薬、鎮痙薬、筋弛緩薬等→中枢神経系を変 調させる 認知症の人→ベンゾジアゼピン系→認知症を増悪 パーキンソン病の人→メトクロプラミド(プリンペラン)、リス ペリドン(リスパダール)→症状増悪 失神のある人→中~短ベンゾジアゼピン系、ゾルピデム(マイス リー)→運動失調、精神運動機能障害など 緑内障のある人→チオトロピウム(スピリーバ)→眼圧を上げる 特定の疾患において避けることが望ましいもの 心不全のある人→ジソピラミド(リスモダン、ノルペース)→陰 性変力作用 不整脈のある人→三環系抗うつ剤→不整脈を誘発する 凝固療法中の人→アスピリン、NSAIDs、チクロピジン(パ ナルジン)→出血傾向 慢性閉塞性肺疾患(COPD)→長時間型ベンゾジアゼピン系(セルシ ンなど)→呼吸抑制 胃潰瘍・十二指腸潰瘍→NSAIDs、アスピリン→胃潰瘍悪化、発症 の恐れ 慢性便秘→抗コリン薬、三環系抗うつ薬→便秘の悪化 座位・立位を保持できない人→ビスフォスフォネート(フォサ マック、ボナロン、ボノテオ)→食道副作用軽減のため、食後3 0分は座位か立位 腎機能低下→ガスターなどH2ブロッカー→精神症状など バイタルサインや全身観察のポイント ◆バイタルサイン 「生命維持に必要な」、「命にかかわる」という意味 1.血圧 正常 100~140/ 60~80 くらい 2.脈拍 正常 60~90回/分 3.呼吸 正常 16~20回/分 4.体温 正常 36~37度 バイタルサインや全身観察のポイント ◆何気ない言葉かけから様子を観察する 「いつもと変わりがないか」 「食欲はあるか」 「よく眠れたか」 何か変と思ったら、相談してみる(家族・看護師・ 医師・ヘルパーなど) 緊急に医療を要する状態 ◆状態の観察 1.痛みやめまい 2.脱水や低栄養状態 3.意識障害 4.バイタルサイン ◆在宅医療では、以下の点に注意する 1.緊急時、かかりつけ医に連絡することが原則であ る 2.ヘルパーも本人の既往歴を知ったうえで介護に入 る 3.ケアマネが緊急時のことについて、あらかじめ本 人・家族に確認しておく ◆施設においても、延命するかしないかなども含め、緊急 時の対応について確認しておく ◆病気の知識そのものよりも、「見る・聞く・感じる」こ 頭痛 → くも膜下出血 →緊急 変なことを言っている →脳血管障害 →緊急 手足のしびれ、力が入らない →脳血管障害 →緊 急 強い吐き気 胸痛 胸がしめつけられる強い痛み → 心筋梗塞・狭心 症 →緊急 圧迫感・不快感 →心筋梗塞・狭心症 →緊急 息切れ、手足が冷たい、放散する痛み → 心・血 管の病気→緊急 背部痛 → 大動脈解離 → 緊急 裂けるような痛み → 大動脈解離 → 緊急 赤い尿 → 腎結石 → 要連絡 強く痛む場所が移動 腹痛 発熱・嘔吐・下痢 → 消化器の感染症 → 要連 絡 下血 → 消化管出血 → 緊急 めまい・ふらつき → 心筋梗塞・狭心症 → 要連絡 急に手足の力が抜けた感じ →脳卒中・心原性脳塞栓症 → 要連絡 手足の動きにくさ → 脳卒中・心原性脳塞栓症 →要 連絡 脈が極端に速かったり遅かったり → 不整脈 →要連 絡 目が見えにくい → 脳卒中 → 要連絡 下痢・嘔吐 → 脱水 → 要連絡 意識レベルの低下、訴えと各症状が強ければ →緊急 胸の痛み 脱水 → 脱水 → 要連絡 発熱 → 脱水 → 要連絡 室内での熱中症 → 脱水 → 緊急 季節変化に順応できない → 要連絡 症状が重度であれば → 緊急 下痢・嘔吐 低栄養状態 食事介助での摂取量が徐々に低下 床ずれの悪化 → 要連絡 → 要連絡 意識障害 → 脳血管障害 → 緊急 手足の動きが悪い → 脳血管障害 →緊急 呂律が回らない → 脳血管障害 → 緊急 頭をひどく痛がる→くも膜下出血 → 緊急 糖尿病がある → 血糖異常(高血糖・低血糖)→ 緊急 症状が重度であれば → 緊急 皮膚のかさかさ感 → 脱水に注意 突然おかしくなる 伊吹山山頂 5月 講義内容 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて 嚥下障害を起こす原因疾患 脳血管障害(脳梗塞・脳出血) 神経・筋疾患 加齢による筋力の低下 嚥下障害の診断方法 質問紙・・・肺炎の既往歴、食事でむせる時がある か、など 水飲みテスト・・・3mlの水→30mlの水 反復唾液嚥下テスト(RSST)・・・30秒間で 2回以下なら嚥下障害の可能性 嚥下造影検査(VF) 嚥下内視鏡検査(VE) 嚥下障害の治療・ リハビリテーション ○口腔ケア 誤嚥性肺炎は、唾液の中の細菌を肺の中に誤まって飲み込 むことによって引き起こされるといわれています。このため 口の中を清潔に保ち、細菌数を減少させておくことは、誤嚥 性肺炎を予防する上で重要です。 うがい、ガーゼ、歯ブラシ、スポンジブラシ、歯間ブラシ を用いて、口腔清掃を行います。また歯ブラシや義歯ブラシ を用いて義歯を清掃します ○口唇、頬、舌の運動 口に空気をためて頬を膨らまします。また口唇をとが らしたり、口角を横に引いたりします。舌をまっすぐで きるだけ前に出したり、舌を出して、左右の口角をなめ たりします。 ○呼吸訓練 嚥下障害のある人では、呼吸が浅く、十分空気を吐き だせないことが多い。呼吸の訓練として、胸の動きを大 きくし、十分空気を吸い込んでまた吐きだすことを行え るようにします。 具体的には、腹式呼吸の指導、口すぼめ呼吸の指導、 体位排痰法、胸の動きを改善させる運動、介助呼吸法な どがあります。 ○空咳、空嚥下の練習 喉頭の動きを引き出すために空嚥下(つばを貯めて飲み込 む)の練習を行います。咽頭に残留した食べ物や気管に誤嚥 した後の痰を出すのを促すために、空咳の練習を行います。 ○言語療法 飲み込みの機能を改善させるために、言語療法も行います。 母音をできるだけ長く持続して発音します。口唇音、舌音な どの発声練習を行います。 具体的には、"パ"、"タ"、"カ"、"ラ"などの音を、一息で1 回ずつ発声したり、一息で5回連続して発声したりします。 講義内容 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて 肺炎の診断 ◆高齢者の肺炎の特徴と注意点 ①肺炎症状が乏しく、症状が非典型的であるため、 診断・治療が遅れがちになる ②高齢者肺炎には肺結核が混在していることがある ③既にほかの病気(糖尿病や心疾患など)に患って いる人が多いので、潜在的な肺炎発症因子や増悪因 子を持っているため肺炎が急速に悪化する ④原因として気づかない誤嚥性肺炎が多い 高齢者肺炎の特徴 高齢者肺炎では、咳の出ない肺炎も多い 肺炎の初発症状としての咳・痰の頻度は、高齢者は一般 成人に比べ約20%ほど低い 65歳以上の肺炎患者では、初発症状としての咳は約4 0%の症例で認められない 高齢者肺炎の特徴 呼吸器以外の症状にも注目 発熱の頻度が低い 食思不振、全身倦怠感、意識障害が前面に出ることも 飲水量低下により脱水になりやすく、これに低酸素血症 が重なり中枢神経異常をきたしやすい 初発症状としての意識障害は約25%・・・脱水所見は 70%に見られる 脱水は肺炎重症化の重要な要因 高齢者肺炎は呼吸不全になりやすい 早期より、また病巣の広がりが少ないうちから呼吸不全 に陥りやすい 高齢者肺炎では心不全を合併することがあり、呼吸不全 が急速に増悪する可能性がある 高齢者肺炎の原因と予防 高齢者肺炎は夜作られる 高齢者では、咳反射が低下している 本人・家族が気づかない摂食・嚥下障害が認められる(不顕性 肺炎) 就寝時に口腔内の唾液や食べ物の残りが気道に落ち込み、咳反 射が低下しているために気づかずに朝を迎える 予防するために、口腔内をきれいにすることや寝る姿勢(頭を 高くするなど)が必要 高齢者肺炎の原因と予防 ワクチンのすすめ インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン 高齢者の入院頻度、死亡率を減らす インフルエンザワクチンは1年に1度 肺炎球菌ワクチンは5年間有効 行政の補助・・・肺炎球菌ワクチン インフルエンザワクチン 高齢者の肺炎 まとめ ①高齢者特有の肺炎症状を理解して早期に「肺炎かもし れない」と気づくこと ②「重症化しやすい」ので早期に医療機関を受診するこ と ③高齢者肺炎は「気づかない誤嚥」が原因のことが多く、 日常の予防が必要 ④高齢者肺炎の中に「肺結核」が時に紛れ込んでいるこ と 伊吹山の花 グンナイフウロ 6月 講義内容 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて 高齢者の脱水 細胞組織の衰退で細胞内の水分が減っている 代謝機能が低下している 喝中枢機能が鈍くなり、水分摂取量が減っている 嚥下力低下により、飲水に支障がある 腎機能の低下により、頻尿になりやすい 基礎的な体力が低下しているため、抵抗力が低い 脱水を起こしやすい 脱水症の初期症状 なんとなく元気がなくなる(活動性が低下) 微熱 皮膚の乾燥 唾液分泌量が減少し、口渇感をおぼえる 脱水の予防 1日に飲水として、約1500ml以上の水分摂取 が必要 人間の体は、尿・汗・呼吸などで、1日に2000 ~2500mlの水分を排出し、失った水分を、飲 水・食事・体内生産によって補っている 食事や体内生産によって、800~1000mlは 取り込むことはできるが、残りの水分は飲料水とし て補給する必要がある。 脱水を予防するポイント 好きな飲み物を用意し、いつでも飲めるようにする 緑茶・麦茶・紅茶・コーヒー・オレンジジュース・スポーツドリン クなど 家族や友達と一緒に飲む 一人でお茶を飲むのは味気ない。家族と一緒に、地域のサロンなど で仲間と一緒に ゼリーや寒天質のものを使う 飲み物だけでは飽きてしまう。ゼリーなど水分量の多いものをおや つに取り入れるのも、水分補給には効果的 こまめに水分を摂取するよう促す 高齢者が1回に飲む水分の量はそれほど多くない。こまめに摂取す るように促す。 講義内容 ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて 尿失禁の原因 ◆尿失禁の頻度 在宅の老人の約20%(5人に1人)に何らかの尿失禁の症状 がある 医療機関や老人病院に入院している半数の人に尿失禁が見られ る ◆尿失禁に伴う生活上の問題点 患者さん側に頻回な排尿による不眠、トイレを汚したり、外出 の断念など、イライラ感や罪悪感 介護する側も介護の疲れや経済的負担があり、人間関係のきし みも 高齢者の尿失禁 切迫性尿失禁 ・・・排尿回数が多く、トイレまで行くのが間に合わな い 溢流性尿失禁 ・・・尿が出にくい、残った感じ、たらたらと垂れる 腹圧性尿失禁 ・・・咳をしたり立ち上がったりする際に漏れる 機能性尿失禁 ・・・排尿の姿勢が取れない、 認知症・寝たきりなどでトイレ まで行けない 排尿管理の基本方針 おしっこの漏れがなく、一人で排尿できること 膀胱炎や腎盂腎炎といった感染症を起こさないこと 腎臓の機能を正常に保つこと これらを管理して、できるだけ一人でおしっこが出 るようにすること 高齢者尿失禁の治療 尿道に管(カテーテル)を入れる方法 自分で管を使って尿を取る方法(自己導尿) 訓練や薬による治療 手術 訓練による治療 ①膀胱訓練・・・切迫性尿失禁の場合に、排尿を我 慢して膀胱を大きくする ②排尿習慣訓練・・・認知症や脳卒中後遺症の尿失 禁の場合に、介護者による排尿の意識づけや排尿訓 練 ③骨盤底筋訓練・・・腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁 の治療 ④身体的リハビリテーション・・・筋トレなど 薬による治療 切迫性尿失禁・・・膀胱の刺激状態を弱めたり、膀胱 の炎症を抑えるようにして、おしっこをたまりやすく する 副作用 バップフォー、ネオキシテープ →口渇、便秘、眠気 ウリトス、ベシケア → 認知機能障害 ベタニス 溢流性尿失禁・・・前立腺肥大がある時は、尿道を開 いたり、前立腺を小さくする ハルナール、フリバス、ユリーフ、 アボルブ、パーセリン 神経因性膀胱・・・膀胱の収縮が弱くなっている場合 には、膀胱の収縮力を高める ベサコリン 高齢者の便失禁 原因別に大別すると、 ①脳血管障害による神経因性の便失禁 ②認知症や活動性の低下による機能性の便失禁 ③刺激性下剤による下痢便の便失禁 高齢者の便通異常 食習慣や主疾患治療のための服薬の影響、日常生活での 活動量の減少によることが多い しかし、高齢者施設では便秘対策として下剤が投与され ることが多く、その結果、便秘→(下剤)→下痢→便失 禁→(止痢剤)の悪循環が発生 不適切な下剤投与 は、多くの高齢者に 身体的、心理的、 社会的苦痛を与え ている 便秘の種類 便秘の種類は大きく、結腸性便秘と直腸性便秘に分 けられる。便が大腸(結腸)のどこかに詰っている のか、直腸まで降りてきているが出せないで詰って いるのかの違い 直腸性便秘のひとつに嵌入便がある 下剤の種類 酸化マグネシウム(カマ)、マグミット、マグラックスと呼 ばれる緩下剤 緩下剤は大腸の水分吸収を減らす働き。便の水分を増やすこ とで、硬い便を軟らかくし、便の量を増やす アローゼン、プルゼニド、ラキソベロン、センナに代表され る 刺激性下剤 刺激性下剤は大腸の蠕動運動を促進させ、便が大腸を通過す る時間を早める働きがある 直腸まで便が降りてきている直腸性便秘の場合、大腸に作用 する刺激性下剤も、緩下剤も作用しない 適切な下剤を 問題は、便がどこに溜まっているか。肛門に指を入れる 肛門直腸診で、直腸に便があるかどうかを確認できる。 直腸性の便秘の場合、レシカルボン座薬や浣腸、あるい は摘便が有効。直腸に便があれば、レシカルボンや浣腸 の処方で10~30分後の排便が期待できる。3~4日 間排便がないからといって、一律に刺激性下剤の投与で はなく、重要なことは、便がどこに溜まっているのかを 診断し、それに適した処方を選ぶ まとめ ①高齢者に起きやすい疾病や健康障害の特徴につい て ②嚥下障害の原因、診断、治療について ③肺炎の予防方法について ④脱水の原因、判断、対処法について ⑤排泄に関する障害の原因とコントロールの方法に ついて 老化はいつか行く道 自分だったらどうしてほしいか考 えて
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