http://www.kuze.co.jp/ 2708 久世 久世 健吉 (クゼ ケンキチ) 株式会社久世社長 物流効率化と不採算取引の解消により黒字回復を目指す ◆2015 年 3 月期の振り返り 当期の連結売上高は新規顧客の獲得と既存顧客への拡売、また旭水産(株)の新規連結による 25 億 21 百万 円も寄与して 680 億 44 百万円(前期比 9.3%増)となり、売上総利益も 113 億 21 百万円(同 9.1%増)と順調に拡 大した。売上総利益率は円安と原料高騰の影響により 0.1 ポイント低下して 16.6%となっている。 一方で販管費も 116 億 86 百万円(前期比 13.1%増)と増加しており、売上高販管費率は 17.2%(同 0.6 ポイント 増)となった。その主な要因は、売上高の増加に加えて遠隔地への配送が増え、運賃が 8 億 7 百万円増加したこと による。また、今後の事業拡大を見据えた新卒および中途採用により人件費が 2 億 15 百万円増加し、新たな物流 拠点として藤沢 DC と大阪天保山 DC を立ち上げたことに関連する費用などが 3 億 32 百万円発生した。 この結果、営業損失は 3 億 65 百万円(前期比 4 億 6 百万円減)、経常損失 1 億 99 百万円(同 4 億 37 百万円 減)、当期純損失は 4 億 12 百万円(同 5 億 12 百万円減)と創業以来初の赤字決算となった。なお、旭水産ののれ んの一時償却 1 億 84 百万円を特別損失に計上している。 セグメント別の売上高は食材卸売事業が 631 億 86 百万円(前期比 9.6%増)となり、92.6%を占めている。食材 製造事業は 48 億 74 百万円(同 5.2%増)、不動産賃貸事業は 1 億 45 百万円(同 5.2%減)となっている。 販売チャネル別の売上構成比をみると、居酒屋・パブは 27.8%(前期比 1.2 ポイント減)、デリカ・惣菜・ケータリン グ・娯楽施設その他は 14.6%(同 1.3 ポイント減)と減少傾向が続いており、ディナーレストラン・ホテル・専門店は 20.9%(同 0.3 ポイント増)と横ばいで推移している。一方で、ファストフード・ファミレス・カフェは 36.7%(同 2.2 ポイ ント増)と好調を維持した。 当期末の総資産は 196 億 10 百万円(前期比 3.2%増)となったが、純資産は利益剰余金の減少や有価証券評 価差額金の増加などから 46 億 11 百万円(同 3.8%減)となり、その結果、自己資本比率は 23.5%(同 1.7 ポイント 減)となっている。借入金残高は 2 億 13 百万円増加して 25 億 51 百万円となっており、現預金の期末残高は 32 億 60 百万円(同 11.8%減)となっている。 営業キャッシュフローは 1 億 7 百万円の収入となり、投資キャッシュフローは 1 億 76 百万円の支出、財務キャッ シュフローは 4 億 4 百万円の支出となり、現金および現金同等物の期末残高は 28 億 24 百万円(前期比 4 億 69 百万円減)となっている。 当期は、採算性を重視した攻めの営業、物流の採算改善と精度向上、すべての業務の品質向上、海外事業展 開の促進、グループ力の強化という 5 つの施策に重点を置いて取り組んだ。 営業面では積極的な新規開拓により 1,800 店舗を新たに獲得し、42 億円の増収効果につながった。一方で、収 益改善のために個社別採算管理を徹底して顧客ごとに交渉を始めたが、期中には十分な成果は得られなかった ことが今後の課題である。 委託配送費の削減については、取引の打切りも含めて顧客とともに不採算コースの見直しを進めており、第 4 四半期からは徐々に成果が出始めている。また、配送運行管理システムと配車システムの導入により、顧客の問 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 合せへの迅速な対応と精度の高いコース設定が可能となった。特に横浜 DC では、業務品質向上の取り組みによ り配送遅延率が大幅に低下している。 海外事業では、ニュージーランドのキスコフーズインターナショナルは安定的に黒字経営を継続している。久華 世(成都)についても卸売事業が順調に推移しており、来期以降の黒字化にめどがついた。 グループ力の強化としては、旭水産と当社との相互顧客紹介を推進しており、取引先の間口が拡大している。 今後さらに青果事業と水産事業のコラボレーションの本格稼働を進める計画である。 ◆来期は黒字回復の見込み 新中期経営計画「第 3 次 C&G 計画」の初年度となる 2016 年 3 月期は、当期の赤字転落を受けて収益改善を最 優先課題として取り組んでいく。4 月より商品本部を新設して 4 本部体制としており、各本部に企画部を設置してマ ネジメント力の強化と部門間の連携強化を図っている。 営業部門では、既存顧客のインストアシェアアップと採算性を重視した新規顧客の開拓を進めるとともに、今後も 続くとみられる仕入価格の高騰に対応して適正な価格設定に努める。物流部門では物流費の削減に加え、在庫 の適正化も含めた効率的なセンター運営に努めてミスやロスの削減に取り組む。商品部門では、メーカーとの協 業によりマーケットシェアの拡大とコスト競争力の向上に注力する。また、(株)久世フレッシュ・ワン(野菜)と旭水 産(魚)の協働による顧客開拓を更に進めていく。 これらの取り組みにより、2016 年 3 月期の連結業績については売上高は 637 億円(前期比 43 億 44 百万円減)と 減収になるものの、利益面では営業利益 1 億 20 百万円(同 4 億 85 百万円増)、経常利益 2 億 35 百万円(同 4 億 34 百万円増)、当期純利益 2 億 20 百万円(同 6 億 32 百万円増)と黒字を回復する見込みである。 なお、連結業績において大きな割合を占める当社単体の業績は、当期から取り組んでいる収益改善や物流効率 化の効果がはっきり出てくるのは第 2 四半期以降になるとみている。そのため上期は赤字決算の計画となってい るが、下期にはそれをカバーして通期では黒字回復を見込んでいる。 ◆新たな中期計画を策定 当期は中期経営計画「第 2 次 C&G 計画」の最終年度となっており、当社グループは 2015 年 3 月期から新たに 「第 3 次 C&G 計画」を掲げて収益基盤の構築を進め、最終年度である 2018 年 3 月期には売上高 700 億円、営業 利益 7 億円、ROE8%の達成を目指す。 安定的な収益の確保は中長期的に当社グループが成長していくために何よりも重要であり、そのことがひいて は顧客へのよりよい商品・サービスの提供、また従業員を含めたステークホルダーの安心感と信頼感を獲得する ことにつながる。そのため当社グループは売上を拡大して粗利益を確保する一方で、物流コストの低減に取り組 んで収益の確保に努める。 売上の拡大に向けては、2020 年の東京オリンピックを見据えて東京・神奈川を中心とする首都圏を重点地区と 位置付け、既存顧客のインストアシェアアップと新規顧客の開拓を進める。チェーン戦略については当期の赤字を 反省材料とし、採算性を重視して取引条件を徹底的に見直す。また、これまでの属人的な営業体制から脱皮し、 社内の基準等を整備して組織的な営業体制の構築に注力することで不採算取引の発生を抑制する。 販管費の中で大きな割合を占める物流費については、当期から効果が出始めている効率化の取り組みを更に 拡大する。重点エリアである関東においては、新たな物流センターの設置も検討している。 商品面では、仕入商品やメーカーを集約してコストメリットを最大限に追求する。さらに、当社グループのシナジ ーを活かして品質や価格において優位性のある PB 商品の開発に取り組むだけでなく、キスコフーズインターナシ ョナルの特長ある酪農品を活用して製造卸としての基盤を確立することに挑戦する。 また、業務効率のさらなる改善のためには情報システムの整備が不可欠となっている。収益の回復状況を見な 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。 がら、新たな基幹システム、物流システム、営業支援システムの開発を中期計画期間中に積極的に進めていく。 主なグループ会社の取り組みとして、キスコフーズは高品質・高価格帯マーケットを中心に日本国内だけでなく アジア市場に向けた商品開発に取り組んでいく。久世フレッシュ・ワンは、仲卸との関係強化や産地契約により仕 入の多角化を進めながら、都内 5 区から東京・神奈川エリアに業務を拡大していく。 旭水産はクオリティの高さが評価されていることから、高価格帯商品でミドル~アッパー層の外食をターゲットに 売上の拡大をはかる。 久華世(成都)は現在、重慶にも拠点を設けて物流を開始している。マーケットが急速に拡大している一方で競 合環境は比較的緩やかであり、事業エリアの拡大を加速して先行者利益の最大化を目指す。さらには、当社商品 やキスコ商品を販売する新たな事業モデルの確立にも挑戦していく計画である。 ◆質 疑 応 答◆ 物流費改善に関連した取引停止による影響はどのくらいを見込んでいるか。 2016 年 3 月期における取引停止は 10 数社で、売上に対しては 80 億円程度の影響となる。それによって物流 費は 9 億円程度の削減になる見込みで、売上減少分は既存の底上げと新規の獲得によってカバーできると考え ている。 現在の PB 商品の売上高構成比はどのくらいか。 現状では、当社の久世ブランドとキスコブランドを合わせて連結売上高に占める割合は 8%程度である。将来的 にはこの比率を 15%程度までは高めたい。特に中国をはじめとする海外市場では自社ブランドの販売を強化して いきたい。 中期計画にあるシステム投資の規模を教えてほしい。 2016 年 3 月期は収益の改善に注力するので、実際のシステム開発は 2017 年 3 月期以降ということになるが、 1.5~2 億円程度の投資を考えている。 海外事業が利益貢献するのはいつごろになる見通しか。 2016 年 3 月期の黒字化は間違いないと思っているが、まだ絶対額としては小さい。連結業績に寄与してくるの は「第 3 次 C&G 計画」以降になるとみている。 旭水産が赤字になった背景と今後の見通しを教えてほしい。 経験のある社員の退社により商圏を失ったことなどが要因となっているが、当期に人員を増強していることもあ って業績は回復基調にある。 (平成 27 年 5 月 20 日・東京) *当日の説明会資料は以下の HP アドレスから見ることができます。 http://www.kuze.co.jp/ir.html 本著作物の著作権は、公益社団法人 日本証券アナリスト協会®に属します。
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