6章 そのほかの燃料電池 - 環境工学研究所 WEEF

6章
そのほかの燃料電池
一一 液体燃料 で も使 える直接形燃料電池一一
燃料電 池 には,主 とす る PAFC,PEFC,MCFC,SOFCと ,こ れ以外の お もな燃
料電池 と して,直 接 形燃料電池 とアル カ リ形燃料 電 池 (AFC:JkJhe fud cdl)
があ る
直接形燃料電 池は,改 質器 を用 いず,原 燃料 を直接燃料電 池 の 燃料極 に供 給
して発電 を行 う方式であ る 水素 を燃料 ガス とす る場合 に くらべ て燃 料電 池 の
性 能は低 く,特 に,発 電効率 が低 い こと,燃 料電池寸法が大 き くな る こ と,な
どの欠 点があ る ものの,改 質器 が不要の ため 発電 システム と して構 成 した 場合
小型 で 簡素 に なる ことか ら、移 動用あるいは携帯用電源 と しての用 途 が期 待 さ
,
れ てい る
直接 形燃料電 池の 中では,直 接 形 メタノール 燃料 電池 (DMFC drect methand
fud cd)の 研 究開発が特 に活発 で, 自動車用の 駆動電源あ る いは 携帯電話用電
源 な とを 目指 した研 究開発 が行われている。そのほかの 直接 形燃料電池 と して
,
ヒ ドラシン燃料電池 とジメテルエー テル燃料電 池が ある
アルカ リ形燃 料電池は, アポ ロ宇宙船の電源 と して初 め て 実用化 され た燃料
電 池で,宇 宙用電源 として最 も長 い使 用実績 をもつ 燃料電池 で あ る
電解 液 を用 い ることで,常 温 で も高性 能が得 られる とい う特徴 があ る
アル カ リ
反面
この 電解 液 と二 酸化炭素 ガスが反応 す るため,燃 料 ガスや酸化剤 ガス (空 気 )
に二 酸化炭素 ガスが含 まれ る とそれ らの ガスは使 うことがで きな いこ とか ら
,
,
限 られ た用途 で優 れた性 能 を発揮す る燃 料電池 となる
61
1
液体燃料 で も使 え る直接 形燃料電池
直接 形 メタノール燃料電池
‐直接 形 メ タ ノール燃 料電 池 の 特 徴 と性 能 レベ ル
直接 形 燃料 電 池 (direct fuel cen:DFC)は
,燃 料 改質 器 を用 い ず 原燃料 をセ
ル ス タッ クに直接 供 給 す る方 式 の燃料 電 池 であ る
発電 システムが 簡素 化
・
改質 器 を必要 としな い ため
,
r搬 用 電源 に使 わ
小 型 軽 量化 され,将 来 は 車載用 電源や 口
れ る もの と期 待 され て い る
メ タ ノー ル を原 燃料 とす る直接 形 燃 料 電 池 (direct methanol fuel ceⅡ
:
DMFC)は 占 くか ら研 究 が行 われ,今 後 は PEFCを l■ った 接 形 燃料 電 池 の研 究
が 活発化 す る.DMFCは 水素 を燃料 ガ ス とす る PAFCや PEFCな どに くらべ て
性能 が低 く,高 効 率 発 電 を 日的 とした用途 に は適 さな い。 改質 器 を必要 とせ ず
発電 シス テム全体 と して小 型軽 量 に な る こ と,燃 料 が液体 で あ るため 取 扱 い が容
l口
,
易 な こ とな どが
DM FCの 大 きな特 徴 であ る.燃 料 電 池 の 最大 の実 用 化課 題 は,い
ずれ の種 類 で も低 コ ス ト化 であ るが ,DMFCで は,■ l途 が小 型携 帯 用電 源 な ど4ヽ
出力 を対 象 とす るため,既 存 の一 次電 池や 二 次 電 池 に くらべ て,使 いや す く便 利
な ものが 実現 で き るか ど うか が重 要 な課題 で あ る。
直接 形 燃料 電 池 と間接 形 燃料 電 池 の代 表 的 な電 lt― 電 流特性 を図 61に 示す.直
接 形 燃料 電 池 の 性能 は,間 接 形 に くらべ て触媒使 用 量 も多 く,運 転 lt力 も数 倍 と
高 くす るこ とに よ つて実 用 レベ ル に近 づ け て い る 一 般 に は,セ ル電 圧 は,「ni接
燃料 H2/C02/CO:80%/20%′ 10ppm
[に 接形 ]
燃料 メタノール15■ ol水 漕液
電流密度 6●
図 61
"m2〕
直接 形燃料電池 と間接 形燃料電池 の性 能比較
液体 燃 料 で も使 え る直接 形燃 料電 池
形 に くらべ て低 いの で,発 電効率 を高 くす るこ とは, きわめ て困難 で あ る。
動 作 原理
DMFCは
メ タ ノー ル を燃 料 極 で 直 接 電 気
空気構
電解贅
燃ホ
+極
化学 子
的に酸 化 させ る反応機 構 であ り,触 媒 で
あ る白金 に吸 着 した メ タ ノー ルの メチ ル 基か
(H.)が はず れ て い く
複雑 な反応 が推 察 され て い る. 白金 Lに 一酸
ら段 階的 に 水素 イ オ ン
化 炭 素 が 強 国にll■ 着 し, 白金 の触 媒 活性 が 611
害 され るこ とが性 能 llt下 の 原 因 と考 え られ て
い る。 燃料 極 で の 反応 は, メタ ノー ル と水 を
消 費 し二 酸 化 炭 素 と水 素 イ オ ン を ′
L成 す る
が , ギ酸や ホル ムア ル デ ヒ ドも燃料極 出 11で
検 │11さ れ る.空 気 極 触媒上 では水素 イオ ン と
酸素 か ら水 を生成 す るのが 主反応 であ る
空気極での上反応
%02+6H・ +Ge -3H20
燃料極での L反 応
CH30H+H20
(lXl
図
6-2).
DMFCの 性 能低
6H+十 C02+6e
62 0MFCの 動 作原理
ド要 因 と して,メ タ ノー ルが 電解 質 膜 を透 過 し空気極 で直接 峻
化す る現 象 が あ り, これ に よ って燃料 ガ スが む だに 消 費 され発 電効率 が低 下 す る
だけ で な く,酸 素 極 の 電位 が下 が る
そ して,開 I』 路電圧 が低 い 原 因 は,電 解 質
膜 を通 る燃料 クロ ス リー クの ため と考 え
開発状 況
')れ
てい る
り
海 外 に おけ る直 接 形 メ タ ノー ル 燃料 電 池 の お もな開 発 状 況 を表 61に ′
Itす
1990年 以 前は,ア ル カ リ性や 酸性 な どの 電解 質 をマ トリッ クスに 含浸 させ 使 用 さ
オして い た 1990年 イヽに な り, セル ス タ ッ クに
PEFCが 月lい らオLる よ うに な り, III
力密 度 が著 し く向上 して きた。
実用 商 計1を イ メー ジ した DMFCの 発 電 シ ステム 開 発 も活 発 にイiわ れ て い る。
米 国 ロ スア ラモ ス研 究 所 で は,モ トロー ラ社 と共 同 で,携 帯 電 話 の 電 源 と して
DMFCと 二 次電 池 の ハ イプ リッ ドシ ステムの 試 作 品 を 2000年 に 発表 した. ダ イ
ム ラー クラ イスラー 社 は,バ ラー ドパ ワー シス テム社 と共 同 で,DMFCを 搭 載 し
た ゴー カー トの 試作 品 を 2000年 に発表 した この 燃料 電 池 の 出 力は 3kWで ,I
回 の 燃料 充 て ん で 15 km走 行 で きる
わ が 国 にお い て も,三 洋 電機 ,松 下 電 器産 業 , 日立 製 作所 , トヨタ,ユ アサ コ
表
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61 DMFCの 開 発展 開
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液体 燃 料 で も使 え る直接 形燃料 電 池
図
64
携帯 OMFC
Iゲ 真提 供 il本 1ヒ 気 1休
│]
― ポ レー シ ョン,NECな どでOr究 が 行 われ て い る 図
63は ,地 球 環 境保全 関係
助 を受 け ,ユ
産業 技 術開発 促 進 費者じ
(1オ )国 際環 境 技
ン
の
術 移 転 研 究 セ ター と 共 同 fll究 で開 発 した 100Wお よび 300 W DMFCで あ
る 図 64は NECが 武作 した携 帯 燃 料電 池 の :真 で あ る
アサ コー ボ レー シ ョンが
/t‐
'ウ
2
その他の 直接形燃料電池
ヒ ドラシ ン燃 料電 池
ヒ ドラ ジン燃料 電 ,Lは ,原 燃料 と して ヒ ドラ ンン を用 い,ア ル カ リ‖:電 解 液 に
溶解 させ ,常 温 で作動 させ る
素であ る
ヒ ドラ ジ ンは反 応性 に富 み ,反 lL‐ 生成物 は水 と窒
また,液 体 の ため貯 蔵 ,輸 送 がl■ 利 で″)り
,移 動 用 小 型電源 な どを対
象 に 1960∼ 70年 代 に FtFl発 され た
lα )W級 の航 路標 識「
火や
電源 な どで使 われ た実 績 が あ る
しか し, ヒ ドラジ ンが 高価 な こ ともあ って用途
が 限 ら才して い るこ とか
',,
3kW級 の 軍 用通信 器
不
貞極 自
勺な‖胃発 はイiわ ″して ,ヽ な 。ヽ
ジメチ ル エ ー テ ル燃 料電 池
ジ メチル エ ー テ ル は近 い将 来,発 電用 あ るい は 自ll」 中用 燃 料 と して大 量安価 に
市場 に供 給 され る可 能性 の あ る原 燃 料 で ″,る
わが国 をは じめ ア ジア地 域 に お い
て,製 造・ 利用 に 関 す る技術 開 発 が進 行 して い る
ジ メチルエー テ ル (CHrO― CH3)は , メ タ ノー ル 2分 か す
)水 1分 子 を とった
「
分 子構 造 を有 す る.沸 点 が -251・ Cで 液化 ガ スの 形 で販 売 され て い る セ タ ン価
が 高 く,発 火温 度 が低 く,す す を出 さな いの で,デ ィー ゼ ルエ ン ジ ン用 燃料 に適
して い る.ジ メチ ルエー テ ル には軽微 な麻 酔性 が あ るが , メ タ ノー ルの よ うな粘
膜刺 激性 ,視 神 経 障 害 ,中 枢神 経 障害 な どは な く, メ タ ノー ルに くらべ る と低 毒
性 であ る.
ジ メチ ルエー テ ル は,燃 料 改質器 を用 い て水 素 に転換 し燃料 ガ ス と して用 い る
こ ともで きるが ,PEFCへ 直接供 給 す る と メ タ ノー ル に近 い発 電性 能 が得 られ る
こ とが 1998年 に報告 され た
メ タノー ル は,高 分 子 電解 質膜 を透過 しや す く,性
能低 下や 燃 料 利 用効 率 が低 くな る欠点 を有 す るが , ジ メチ ルエ ー テ ル は メタ ノー
ルに くらべ て高分 子電解 質 膜 を透 過 しに くい な どの特 徴 もあ り,直 接 形 ジ メチ ル
エ ー テ ル燃料 電 池 の研 究 が進 め られ て い る.
62
議
原
宇宙で使 えるアルカリ形燃料電池
理
ア ル カ リ形燃料電池 (alka‖ ne fu‖
ce‖
:AFC)は ,電 解液に水酸化 カ リウム
水溶液 な どのアルカ リ性水溶液 を用 い,主 として 100・ C以 下で作動 させ る電池で
ある.燃 料 ガス としては水素 ,酸 化剤 ガスとしては酸素 あ るいは空気が用 い られ
る.
燃料 極 で は
,
H2+20H
空気 極 で は
■
- 2H2+2e
,
2+H20+2e
- 20H
の 反 応 が 起 こ り,全 体 と して は
H2+÷
02-H20
とな る.た だ し,式
,
つ
“
(62)の 反応 は 1段 でl■ む の では な く
02+H20+2e -0211 +OII
(6-4)
ン
ン
オンと水酸
が生成
酸化水素
イオ
で, まず過酸化水素 イ
し,過
を分解
化物 イオ
す る触媒があると
,
,