(19)日本国特許庁(JP) 〔実 10 頁〕 公開特許公報(A) (12) (11)特許出願公開番号 特開2015-172019 (P2015−172019A) (43)公開日 平成27年10月1日(2015.10.1) (51)Int.Cl. FI テーマコード(参考) A61K 35/74 (2015.01) A61K 35/74 A 2B005 A61P 31/12 (2006.01) A61P 31/12 171 2B150 A61P 31/04 (2006.01) A61P 31/04 171 4C087 A61P 37/04 (2006.01) A61P 37/04 4C088 A61K 36/07 (2006.01) A61K 35/84 A 審査請求 未請求 (21)出願番号 特願2014-48805(P2014-48805) (22)出願日 平成26年3月12日(2014.3.12) 請求項の数10 OL (全15頁) 最終頁に続く (71)出願人 502128442 株式会社鎌田工業 鹿児島県霧島市国分川内 556−1 (71)出願人 598062608 株式会社 ヒガシマル 鹿児島県日置市伊集院町猪鹿倉20番地 (71)出願人 504258527 国立大学法人 鹿児島大学 鹿児島県鹿児島市郡元一丁目21番24号 (74)代理人 100091096 弁理士 平木 祐輔 (74)代理人 100118773 弁理士 藤田 節 (74)代理人 100170221 弁理士 小瀬村 暁子 最終頁に続く (54)【発明の名称】魚介類用の免疫賦活剤 (57)【 要 約 】 【課題】養殖魚介類の免疫能を向上させる方法の提供。 【解決手段】きのこ廃菌床を含む培養基で乳酸菌を培養して得られる乳酸菌発酵物を含む 、魚介類用の免疫賦活剤、及びそれを用いて魚介類の免疫能を賦活する方法。 【選択図】なし ( 2 ) JP 1 2015-172019 A 2015.10.1 2 【特許請求の範囲】 【0002】 【請求項1】 世界的に魚介類の養殖技術が発展する一方で、それらの きのこ廃菌床を含む培養基に乳酸菌を培養して得られる 疾病、特に感染症による被害が増加している。そのため 乳酸菌発酵物を含む、魚介類用の免疫賦活剤。 感染症予防を目的として魚介類の養殖の際に抗生物質や 【請求項2】 抗菌物質が使用されているが、抗生物質や抗菌物質の乱 乳酸菌が、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属及び 用による魚介類における薬剤の残留、耐性菌の出現等の エンテロコッカス属に属する乳酸菌の群から選択される 問題が発生している。そこでワクチン接種による疾病予 1種以上の乳酸菌である、請求項1に記載の免疫賦活剤 防法の開発も行われているが、全ての病原体に対して有 。 効なワクチンは作製できず、またその効果も一般的に3 【請求項3】 10 乳酸菌が、ラクトバチルス・ファーメンタム キリシマ 、浸漬法及び経口法があるが、それぞれ一長一短があり P−784)、ラクトバチル 、注射法はワクチン接種の操作が容易でなく、経口法で キリシマ2R(受託番号NITE はワクチン接種の効果が低い等の様々な課題が残されて 1R(受託番号NITE ス・ファーメンタム P−785)、ペディオコッカス・ペントサセウス キリシマ1C(受託番号NITE ィオコッカス・ペントサセウス 号NITE ラム ∼4ヶ月間程度と短い。また、ワクチン接種には注射法 いる(非特許文献1)。 P−787)、ペデ 【0003】 キリシマ2C(受託番 エドワジエラ症は、エドワジエラ・タルダ菌(Edwa P−788)、ラクトバチルス・プランタ MH(受託番号NITE トバチルス・プランタラム rdsiella P−1548)、ラク tarda)を原因菌とする細菌性 疾病であり、多くの魚類、特にウナギ、マダイ、ヒラメ ME(受託番号NITE 等の重要養殖魚種において大きな被害を及ぼしているが P−1549)、及びエンテロコッカス・フェカリス( 20 、未だワクチンによる効果的な予防法は開発されていな NBRC い。 3989)からなる群から選択される少なく とも1つである、請求項1又は2に記載の免疫賦活剤。 【0004】 【請求項4】 免疫を賦活する素材を配合した魚類用飼料を給餌するこ きのこ廃菌床が、エノキタケ廃菌床、ヒラタケ廃菌床、 とにより、魚類の免疫を高め疾病を予防する方法の開発 又はブナシメジ廃菌床である、請求項1∼3のいずれか が行われている。例えば、酵母(特許文献1及び特許文 1項に記載の免疫賦活剤。 献2)、乳酸菌(特許文献3)、カンゾウ(特許文献4 【請求項5】 )、多糖類(特許文献5及び特許文献6)等を配合した 培養基が乾燥おから、味噌、及びフスマからなる群より 飼料を用いる方法が報告されている。 選択される少なくとも1つをさらに含む、請求項1∼4 【0005】 のいずれか1項に記載の免疫賦活剤。 30 しかしこれらの従来の方法で用いている免疫賦活素材の 【請求項6】 製造は高コストになりがちであり、魚介類用飼料の価格 感染症予防のための、請求項1∼5のいずれか1項に記 上昇につながる。またこれらの免疫賦活素材は大量製造 載の免疫賦活剤。 が難しく、魚介類用飼料に広く使用することは困難であ 【請求項7】 る。 エドワジエラ属菌又はホワイトスポット病ウイルスによ 【先行技術文献】 る感染症予防のための、請求項6に記載の免疫賦活剤。 【特許文献】 【請求項8】 【0006】 魚介類が、魚類又は甲殻類である、請求項1∼7のいず 【特許文献1】特開平7−99858号公報 れか1項に記載の免疫賦活剤。 【請求項9】 【特許文献2】特開2013−66399号公報 40 【特許文献3】特表平11−511012号公報 請求項1∼8のいずれか1項に記載の免疫賦活剤を含有 【特許文献4】特開2009−221148号公報 する魚介類用飼料。 【特許文献5】特開平10−313794号公報 【請求項10】 【特許文献6】特開平10−279486号公報 請求項9に記載の飼料を魚介類に給餌することによる、 【非特許文献】 魚介類の免疫賦活方法。 【0007】 【発明の詳細な説明】 【非特許文献1】野口浩介、増養殖環境における微生物 【技術分野】 の生態と利用に関する研究、佐玄水振セ研報5:61− 【0001】 91(2012) 本発明は、魚介類用の免疫賦活剤に関する。 【発明の概要】 【背景技術】 50 【発明が解決しようとする課題】 ( 3 ) JP 3 2015-172019 A 2015.10.1 4 【0008】 本発明に係る乳酸菌発酵物及びそれを含む免疫賦活剤は 本発明は、養殖魚介類の免疫能を効果的に増強する方法 、魚介類の免疫能を効果的に賦活し増強することができ を提供することを課題とする。 る。 【課題を解決するための手段】 【発明を実施するための形態】 【0009】 【0012】 本発明者らは、上記事情の課題を解決するために鋭意検 以下、本発明を詳細に説明する。 討を行った結果、きのこ廃菌床を主成分とする培養基に 本発明において用いる免疫賦活素材である乳酸菌発酵物 乳酸菌を播種して培養して得られる乳酸菌発酵物が魚介 は、きのこ廃菌床を主成分とする培養基(培地とも呼ば 類の免疫能を賦活し増強することができ、感染症予防に れる)に乳酸菌を播種し、培養することにより製造する 有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。 10 ことができる。ここできのこ廃菌床は、任意のきのこ( 【0010】 通常は、食用きのこ)の菌を菌床培養することにより製 すなわち、本発明は以下を包含する。 造することができる。きのことしては、例えば、エノキ [1]きのこ廃菌床を含む培養基で乳酸菌を培養して得ら タケ、ヒラタケ、ブナシメジ、ハナビラタケ、エリンギ れる乳酸菌発酵物を含む、魚介類用の免疫賦活剤。 、シイタケ、ナメコ、ヤマブシタケ、マイタケ、ヌメリ [2]乳酸菌が、ラクトバチルス属、ペディオコッカス属 スギタケ、ハタケシメジ、ホンシメジ、アラゲキクラゲ 及びエンテロコッカス属に属する乳酸菌の群から選択さ 、ウスヒラタケ等が挙げられるが、これらに限定されな れる1種以上の乳酸菌である、上記[1]に記載の免疫賦 い。きのこを菌床栽培(菌床培養)し、菌糸蔓延及び培 活剤。 養熟成を経て形成された子実体を採取した後の菌床がき [3]乳酸菌が、ラクトバチルス・ファーメンタム シマ1R(受託番号NITE チルス・ファーメンタム TE ス のこ廃菌床である。きのこの菌床栽培に用いる培養基は P−784)、ラクトバ 20 、おがこ、木材チップ、稲わら、コーンコブミール(コ キリシマ2R(受託番号NI ーンコブ)等の培地基材、フスマ、おから(乾燥おから P−785)、ペディオコッカス・ペントサセウ など)、味噌、糠(米糠など)、粉ビート、小麦胚芽、 キリシマ1C(受託番号NITE P−787)、 乾燥焼酎粕等の栄養材、水、場合により石灰(消石灰な キリシマ2C(受 ど)、貝化石、カキ殻等のpH調整剤などの添加剤を混 P−788)、ラクトバチルス・プラ 合することにより調製することができる。培養基の原料 ペディオコッカス・ペントサセウス 託番号NITE ンタラム MH(受託番号NITE P−1548)、 のより好ましい例としてはコーンコブ、米糠、フスマ、 ME(受託番号NIT おから、石灰、味噌、及び粉ビートが挙げられるが、こ P−1549)及びエンテロコッカス・フェカリス れらに限定されない。一般的には、栄養材の配合量は培 ラクトバチルス・プランタラム E キリ (NBRC 3989)からなる群から選択される少な 地基材の5∼25重量%、好ましくは10∼20重量% くとも1つである、上記[1]又は[2]に記載の免疫賦活剤 30 である。加える水の量は、培地基材の乾燥程度により調 。 節するが、通常は60%∼70%程度である。きのこの [4]きのこ廃菌床が、エノキタケ廃菌床、ヒラタケ廃菌 菌床栽培は、用いるきのこの種類に合わせて、常法によ 床、又はブナシメジ廃菌床である、上記[1]∼[3]に記載 り適宜行うことができるが、一般的には、例えば、培養 の免疫賦活剤。 容器に充填した培養基を殺菌・冷却した後、きのこの種 [5]培養基が乾燥おから、味噌、及びフスマからなる群 菌を培養基に接種して培養し、菌糸を菌床に蔓延させ、 より選択される少なくとも1つをさらに含む、上記[1] 熟成させ、菌かきして種菌を取り除き、原基形成を促し ∼[4]に記載の免疫賦活剤。 、子実体を形成させることにより実施することができる [6]感染症予防のための、上記[1]∼[5]に記載の免疫賦 。次いで培養基(菌床)から子実体を取り除くことによ 活剤。 [7]エドワジエラ属菌又はホワイトスポット病ウイルス り得られた廃菌床を、乳酸菌培養のための培養基に用い 40 る。培養基に用いるきのこ廃菌床は、pH6以上の新鮮 による感染症予防のための、上記[6]に記載の免疫賦活 なものであることが好ましい。 剤。 【0013】 [8]魚介類が、魚類又は甲殻類である、上記[1]∼[7]に 発酵飼料製造に用いるきのこ廃菌床は、通常は30∼1 記載の免疫賦活剤。 00重量%、好ましくは80∼90重量%で乳酸菌培養 [9]上記[1]∼[8]に記載の免疫賦活剤を含有する魚介類 用の培養基に配合すればよい。乳酸菌培養用の培養基は 用飼料。 、きのこ廃菌床に加えて、乳酸菌の増殖を促進させるた [10]上記[9]に記載の飼料を魚介類に給餌することによ めの任意の栄養材、例えば、フスマ、乾燥おから、味噌 る、魚介類の免疫賦活方法。 、糠(米糠など)、小麦胚芽、乾燥焼酎粕等を1種又は 【発明の効果】 2種以上含むことが好ましい。栄養材の配合量はきのこ 【0011】 50 廃菌床の量に対して5∼25重量%、好ましくは10∼ ( 4 ) JP 5 2015-172019 A 2015.10.1 6 20重量%である。水分量は培養状態、培養後の操作性 ム ME(受託番号NITE からすると60重量%以下が望ましく、乾燥おから、フ 2013年2月28日)は、独立行政法人製品評価技術 スマなどを用い、通常はきのこ廃菌床の量に対して50 基盤機構の特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託 重量%程度に調整する。きのこ廃菌床、栄養材等の原料 されている。エンテロコッカス・フェカリス(Ente を好ましくは均一に混合して培養基を調製する。 rococcus 【0014】 989)は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイ 調製した培養基を殺菌(例えば蒸気滅菌等の高温殺菌、 オテクノロジーセンター(Biological Re 又は常温殺菌)し、40℃以下に冷却後、培養基に乳酸 source 菌を播種し、培養する。乳酸菌としては、任意の乳酸菌 そのカタログ(NBRC を用いることができるが、食用可能な乳酸菌が好ましい 10 Biological 。好適な乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス属、 れており、そのカタログ番号(NBRC番号)に基づい ペディオコッカス属、エンテロコッカス属及びロイコノ て分譲を受けることができる。 ストックス属に属する乳酸菌が挙げられる。そのような 【0015】 乳酸菌は、例えば、ラクトバチルス・ファーメンタム、 培養基には、1種の乳酸菌を播種してもよいし、2種以 ラクトバチルス・プランタラム、ペディオコッカス・ペ 上の乳酸菌を播種してもよい。 ントサセウス、ペディオコッカス・アシディラクティシ 乳酸菌の播種(接種)量は、以下に限定するものではな 、エンテロコッカス・フェカリス、ロイコノストックス いが、1.0 ・ラクティス等が挙げられるが、これらに限定されない 量比)、例えば1.0∼9.0x10 。好適に使用できる乳酸菌の具体例としては、ラクトバ が好ましい。 チルス・ファーメンタム 【0016】 acillus ma キリシマ1R(Lactob 20 fermentum obacillus hima kiris P−785)、 キリシマ1C(P 1C)(受託番号NITE s cfu/g以上(培養基の総重 6 cfu/gの量 P-78 pentosaceu 30 2C)(受託番号NITE は18∼30時間)培養すればよい。培養は、10 fu/g以上、例えば1.0∼9.0x10 9 8 c cfu/ gの乳酸菌発酵物(死菌体も含む)を得るまで継続する ことが好ましい。以上のような培養により得られる発酵 物を、本発明では乳酸菌発酵物と称する。 【0017】 このようにして得られた乳酸菌発酵物(主に生菌を含む MH( )は、そのままでも免疫賦活素材として飼料等に使用で M きるが、乾燥(例えば約80℃程度での乾燥)及び粉末 化等の処理を行ってもよい。このような処理を施すこと ME(Lactobacillu により、安定性が増し、長期保存も可能になる。そのよ plantarum plantarum )で15∼96時間(通常は15∼48時間、好ましく P−1548)、ラクトバチ H)(受託番号NITE ルス・プランタラム ki キリシマ2 P−788)、ラクトバチルス・プランタラム Lactobacillus 5 に攪拌混合した後、25∼40℃(例えば30∼35℃ pentosaceus kirishima of えばよい。好適な例では、乳酸菌を培養基に加えて均一 7)、ペディオコッカス・ペントサセウス s x10 Catalogue Resources)に掲載さ P−784)、ラク fermentum C(Pediococcus Center;NBRC)に寄託され、 キリシマ2R(Lact ペディオコッカス・ペントサセウス rishima 3 培養基での培養は、用いる乳酸菌に適した培養条件で行 2R)(受託番号NITE ediococcus faecalis)(NBRC kirishi 1R)(受託番号NITE トバチルス・ファーメンタム P−1549;寄託日: ME)(受託番号NITE うな処理により乳酸菌が死菌体となった乳酸菌発酵物も P−1549)、エンテロコッカス・フェカリス(En 本発明において免疫賦活素材として好適に使用できる。 terococcus 【0018】 BRC 3989)等が挙げられる。なお、ラクトバチ ルス・ファーメンタム E faecalis)寄託株(N キリシマ1R(受託番号NIT 40 P−784;寄託日:2009年7月23日)、ラ クトバチルス・ファーメンタム 号NITE 本発明に係る乳酸菌発酵物は、魚介類の免疫能を賦活し 増強する作用を有する。本発明において魚介類とは、魚 類、甲殻類、貝類、及び頭足類を指す。魚介類の具体例 キリシマ2R(受託番 としては、コイ、アユ、マス、フナ、ウナギ、サケ等の P−785;寄託日:2009年7月23 淡水魚;ブリ、タイ(マダイなど)、カンパチ、フグ、 日)、ペディオコッカス・ペントサセウス キリシマ1 マグロ、アジ、ヒラメ、カレイ、カワハギ、ホッケ、サ P−787;寄託日:2009 バ、サンマ、ムツ、イワシ、アナゴ、タラ等の海水魚; 年7月23日)、ペディオコッカス・ペントサセウスキ クルマエビ、ウシエビ、イセエビ、サクラエビ、ボタン リシマ2C(受託番号NITE P−788;寄託日: エビ、タラバガニ、ケガニ、ズワイガニ、ロブスター、 2009年7月23日)、ラクトバチルス・プランタラ シャコ等の甲殻類;カキ、ホタテ、アサリ、シジミ、ハ ム マグリ、サザエ、アカガイ、アワビ等の貝類;タコ、イ C(受託番号NITE MH(受託番号NITE P−1548;寄託日: 2013年2月28日)、ラクトバチルス・プランタラ 50 カ等の頭足類が挙げられる。本発明において対象となる ( 5 ) JP 2015-172019 A 2015.10.1 7 8 魚介類としては、魚類又は甲殻類であることがより好ま 本発明に係る魚介類の免疫賦活方法では、本発明に係る しく、例えばマダイ、ヒラメ、又はクルマエビが特に好 乳酸菌発酵物を任意の量で含む魚介類用飼料を給餌に用 ましい。 いることができるが、典型的には、飼料総重量に対して 【0019】 乾燥重量で1重量%∼30重量%、好ましくは4∼20 本発明に係る乳酸菌発酵物は、魚介類の免疫能を賦活し 重量%の本発明に係る乳酸菌発酵物を含む魚介類用飼料 増強する作用を有することから、魚介類用の免疫賦活剤 が用いられる。本発明に係る乳酸菌発酵物をそのような として用いることができる。本発明において免疫賦活と 量で飼料原料と混合し、魚介類用飼料を製造することが は、生体の免疫系を活性化し、免疫機能を高めることを できる。 意味する。より具体的には、本発明に係る乳酸菌発酵物 【0022】 による免疫能の増強は、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚 10 本発明に係る乳酸菌発酵物と混合する飼料原料としては 介類に投与した場合、オプソニン化酵母菌に対する白血 、魚介類用飼料の原料として用いられる通常の飼料基材 球の貪食率(総白血球数に対する貪食白血球数の割合) を用いることができ、特に限定されず、対象となる魚介 を、乳酸菌発酵物を投与しない対照と比較して例えば1 類の種類や成長段階等に応じて適宜選択することもでき 0%以上、好ましくは20%以上増加させることにより る。一例では、魚粉(主成分)、大豆粕、トウモロコシ 示され得る。本発明に係る乳酸菌発酵物による免疫能の 粉、小麦、及びでん粉を用いた配合飼料を飼料原料とし 増強はまた、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚介類に投与 て本発明に係る乳酸菌発酵物と混合することができる。 した場合、血清補体活性(補体第2経路活性)を、乳酸 別の例では、飼料原料として、魚粉(主成分)、タラ肝 菌発酵物を投与しない対照と比較して例えば20%以上 油、ダイズレシチン、ビタミン混合物、ミネラル混合物 、好ましくは40%以上増加させる(ACH50値で例 、活性グルテン、及びセルロースを、本発明に係る乳酸 えば20%以上、好ましくは40%以上の低下に対応) 20 菌発酵物と混合してもよい。 ことにより示され得る。本発明に係る乳酸菌発酵物によ 【0023】 る免疫能の増強はまた、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚 魚介類用飼料の製造方法は、特に限定されず、適宜選択 介類に投与した場合、ウサギ赤血球に対する血清又は体 することができる。例えば、飼料基材に対し、本発明に 表粘液の凝集活性として測定されるレクチン活性(粗レ 係る乳酸菌発酵物を添加した後に、常法に従い混合し、 クチン活性)を、乳酸菌発酵物を投与しない対照と比較 成形してもよい。例えば、エクストルーダを使用し、本 して例えば10%以上、好ましくは20%以上増加させ 発明に係る乳酸菌発酵物を100℃前後で乾燥し、粉末 る(ウサギ赤血球を凝集させる最低濃度で例えば10% 化して一定量を飼料原料に混合し、それをペレット化す 以上、好ましくは20%以上の低下に対応)ことにより ることにより、本発明に係る乳酸菌発酵物を含有する魚 示され得る。さらに本発明に係る乳酸菌発酵物による免 介類用飼料を製造してもよい。あるいは、飼料基材を混 疫能の増強は、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚介類に投 30 合し、成形して得た配合飼料に対し、本発明に係る乳酸 与した場合、へい死を引き起こす濃度の病原体(エドワ 菌発酵物をコーティングする等の方法により、魚介類用 ジエラ・タルダ菌、ホワイトスポット病ウイルスなど) 飼料を製造することができる。 の存在下、乳酸菌発酵物を投与しない対照で生残率0% 【0024】 となる時点で例えば20%以上、好ましくは30%以上 魚介類用飼料は任意の形状であってよく、対象となる魚 の生残率となることにより示され得る。これらの免疫能 介類の種類や成長段階等に応じて適宜選択することがで 増強の指標は、具体的には実施例に記載の方法に従って きる。魚介類用飼料の形状としては、例えば固形状(モ 測定することができる。 イストペレットを含む)、粉末状(練り餌を含む)、及 【0020】 びペースト状等が挙げられる。 本発明では、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚介類に投与 【0025】 することにより、魚介類の免疫能を賦活し増強すること 40 本発明は、上記のような、本発明に係る乳酸菌発酵物を ができる。典型的には、本発明に係る乳酸菌発酵物を魚 含有する魚介類用飼料も提供する。本発明はまた、本発 介類用飼料に添加し、それを魚介類に給餌することによ 明に係る乳酸菌発酵物を含有する、免疫賦活用の魚介類 り、魚介類の免疫能を賦活し増強することができる。本 用飼料の製造方法も提供する。 発明に係る乳酸菌発酵物の成分が魚介類の免疫系に直接 【0026】 的又は間接的に作用し、魚介類の免疫能を賦活するもの 本発明に係る乳酸菌発酵物を、飼料に配合して与える等 と考えられる。このような本発明の方法によれば、従来 により魚介類に投与することにより、魚介類の免疫能の より安価に、かつ多くの養殖魚介類の免疫能を一度に賦 賦活・増強効果を得ることができる。本発明に係る乳酸 活・増強することができる。本発明はこのような魚介類 菌発酵物による魚介類の免疫能の賦活・増強効果は、具 の免疫賦活方法も提供する。 体的には、例えば、血清補体活性の増加、白血球の貪食 【0021】 50 率の増加、又はレクチン活性の増加によって確認するこ ( 6 ) JP 9 2015-172019 A 2015.10.1 10 とができる。 ヒラタケ廃菌床90部、及び乾燥おから10部を発酵タ 【0027】 ンク内で均一に混合して培養基を調製し、撹拌しながら さらに本発明に係る乳酸菌発酵物は、このような免疫能 蒸気を用いて30分間培養基を滅菌した。培養基を室温 の賦活及び増強により、魚介類の疾病を予防する効果も まで冷却した後、乳酸菌エンテロコッカス・フェカリス 有する。本発明に係る乳酸菌発酵物は、特に、感染症、 (NBRC すなわち病原体感染による疾病を効果的に予防する効果 になるように添加した。培養基を30∼35℃に維持し を有する。感染症は特に限定されないが、細菌又はウイ ながら約20時間培養し、6.7x10 ルスによる感染が好ましい。好適な具体例としては、以 乳酸菌発酵物(生菌)を得た。得られた乳酸菌発酵物( 下に限定されるものではないが、例えば、エドワジエラ 生菌)を、乾燥機を用い約80℃で乾燥し、乳酸菌発酵 属菌、典型的にはエドワジエラ・タルダ菌の感染に起因 10 物2を得た。 する疾病(エドワジエラ症など)や、ホワイトスポット 【0032】 病ウイルスの感染に起因するホワイトスポット病等が挙 (3)乳酸菌発酵物3の製造 げられる。これらエドワジエラ症やホワイトスポット病 ブナシメジ廃菌床90部、及びフスマ10部を発酵タン 等は、効果的なワクチン開発が困難とされていた疾病で ク内で均一に混合して培養基を調製し、撹拌しながら蒸 あり、これらの感染症の予防に対して高い有効性を示す 気を用いて30分間培養基を滅菌した。培養基を室温ま 本発明に係る乳酸菌発酵物は、非常に有用である。 で冷却した後、乳酸菌ペディオコッカス・ペントサセウ 【0028】 ス キリシマ2C(受託番号NITE 本発明に係る乳酸菌発酵物は、高い感染症予防効果を示 10 すことから、魚介類用の、感染症予防剤又は感染症予防 養基を30∼35℃に維持しながら約20時間培養し、 のための免疫賦活剤としても用いることができる。この 20 5.1x10 ため本発明に係る乳酸菌発酵物の投与対象としては、感 た。得られた乳酸菌発酵物(生菌)を、乾燥機を用い約 染症のリスクが高い魚介類も好適である。 80℃で乾燥し、乳酸菌発酵物3を得た。 例えば、エドワジエラ症が知られる魚介類(例えば、ウ 【0033】 ナギ)なども好適な対象となる。 <乳酸菌凍結乾燥物の製造> またホワイトスポット病は甲殻類全般で発生が知られる 試験区の効果と比較するため乳酸菌発酵物に含まれるも ウイルス病であるため、甲殻類は広く好適な投与対象と のと同様の乳酸菌の凍結乾燥物を作製した。先ず、5重 なる。 量%MRSブイヨン培地(関東化学製)に乳酸菌を播種 【実施例】 し、35℃で20時間培養した。これを遠心分離し、沈 【0029】 殿物を精製水で洗浄し、5重量%トレハロース及び5重 以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する 30 量%スキムミルク調整液に加え、懸濁し凍結し、凍結乾 。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定され 燥した。乳酸菌ラクトバチルス・ファーメンタム るものではない。 シマ1Rについては1.7x10 【0030】 ペディオコッカス・ペントサセウス (実施例1) いては3.2x10 <乳酸菌発酵物の製造> ッカス・フェカリス(NBRC (1)乳酸菌発酵物1の製造 3.2x10 エノキタケ廃菌床85部、乾燥おから10部及び味噌5 。これらは下記の評価試験に供した。 部を発酵タンク内で均一に混合して培養基を調製し、撹 【0034】 拌しながら蒸気を用いて30分間培養基を殺菌した。培 (実施例2) 養基を室温まで冷却した後、乳酸菌ラクトバチルス・フ 40 <自然免疫能評価試験> ァーメンタム 6 3989)を10 6 cfu/gのオーダー 9 cfu/gの P−788)を cfu/gのオーダーになるように添加した。培 9 1 1 cfu/gの乳酸菌発酵物(生菌)を得 1 1 1 1 キリ cfu/g、乳酸菌 キリシマ2Cにつ cfu/g及び乳酸菌エンテロコ 3989)については cfu/gの凍結乾燥物(生菌)を得た キリシマ1R(受託番号NITE P− 試験魚としてマダイ稚魚(平均体重38.9g)を用い 784)及びペディオコッカス・ペントサセウス キリ 、乳酸菌発酵物1が魚の自然免疫能におよぼす影響を飼 シマ1C(受託番号NITE 10 6 P−787)を合わせて 育試験で評価した。 cfu/gのオーダーになるように添加した。 マダイ稚魚に乳酸菌発酵物1の添加量の異なる飼料を1 培養基を30∼35℃に維持しながら約20時間培養し 、5.6x10 9 5日間又は30日間与えて飼育した。飼育試験で与えた cfu/gの乳酸菌発酵物(生菌)を 飼料の組成を表1に、飼育試験条件を表2に示した。 得た。得られた乳酸菌発酵物(生菌)を、乾燥機を用い 【0035】 約80℃で乾燥し、乳酸菌発酵物1を得た。 【表1】 【0031】 (2)乳酸菌発酵物2の製造 50 ( 7 ) JP 11 2015-172019 A 2015.10.1 12 ューブに取り、PBSを1mL加え、2000回転で2 分間遠心後、上澄みを捨てた。この操作を3、4回繰り 返し、ウサギ保存血液から赤血球画分を得た。これにP BSを10mL加え、ウサギ赤血球浮遊液を作製した。 次に96穴マイクロプレートの各ウェルに、PBSを5 0μLずつ分注し、そこへ、総タンパク濃度をBCA法 によりあらかじめ算出しておいた、マダイ血清試料及び 体表粘液50μLをマイクロプレートの一列目に加え、 マイクロピペットで数回吸引吐出した。一列目のうち、 【0036】 10 【表2】 50μLを二列目に移し、マイクロピぺットで数回吸引 吐出した。この操作を三列目へ、四列目へと同様に行い 、測定対象サンプルの2倍希釈系列を作製した。これら の各ウェルにウサギ赤血球浮遊液を50μLずつ分注し 、28℃で90分間インキュベートした。各ウェルの底 部へのウサギ赤血球の凝集沈降の有無を顕微鏡観察し、 赤血球凝集沈降を起こすことのできた血清及び体表粘液 の最低タンパク濃度(μg/mL)を算出し、活性値と 【0037】 した。 15日間又は30日間の飼育試験終了後、各区より試験 【0039】 魚を5尾ずつ取り上げ、フェノキシエタノール(300 20 また、腎臓からはパーコールを用いた密度勾配遠心法に ppm)で麻酔し、血液、体表粘液及び腎臓(頭腎)を よりマクロファージを含む白血球集団を分離し、オプソ 採取した。採取した血液は室温で放置し、凝固後に遠心 ニン化酵母菌に対する貪食率(総白血球数に対する貪食 分離(4℃、3000rpm、15分)し、血清を回収 白血球数の割合)を測定した。貪食率の測定は、酵母菌 した。このマダイ血清試料について、血清補体活性(補 にあらかじめ用意しておいたマダイ血清試料を加え、2 体第2経路活性、ACH50値)を以下のとおり測定し 5℃で1時間インキュベートし、オプソニン化酵母液( た。まず、Mg・EDTAを10mM濃度となるよう加 10 えた0.1%ゼラチンベロナール緩衝液(pH7.5) し、セルストレイナー(100メッシュ)で細胞を濾し を用いてウサギ保存血液を遠心洗浄(4℃、300rp 、比重1.04及び1.07g/mLに調整し、プラス m、5分)し、得られたウサギ赤血球をMg・EGTA チックチューブに重層したパーコールに注入して、遠心 添加0.1%ゼラチンベロナール緩衝液(pH7.5) 30 分離(4℃、1600rpm、30分)後、分離された に2×10 8 細胞/mLとなるよう懸濁した(赤血球浮 6 /mL)を作製した。次に試験魚の腎臓を取り出 白血球層のみを回収した。これをRPMI1640培地 6 遊液)。次に、125、100、80、62.5、50 で数回遠心洗浄して、細胞濃度を10 及び25μLのマダイ血清試料に対して0、25、45 整した。このようにして調製した白血球懸濁液にオプソ 、62.5、75及び100μLのMg・EDTA添加 ニン化酵母液を等量加え、25℃で2時間インキュベー 0.1重量%ゼラチンベロナール緩衝液(pH7.5) ト後、塗抹標本を作製し、ギムザ染色して顕微鏡観察し をそれぞれ加え、マダイ血清の希釈系列を作製した。こ た。視野内の全白血球数に対するオプソニン化酵母貪食 れらのマダイ血清希釈液に上記で調製した赤血球浮遊液 白血球数の割合(%)を算出し、貪食率とした。 50μLをそれぞれ加え、20℃で24時間インキュベ 【0040】 ート後、EDTAを10mM濃度となるよう添加した0 30日間の飼育試験後の稚魚の白血球の貪食率と血清補 .1%ゼラチンベロナール緩衝液(pH7.5)を70 40 体活性(ACH50値)の測定結果を表3に示す。また 0μL加え、反応を停止させ、遠心分離(4℃、300 15日間又は30日間の飼育試験後の稚魚の血清及び体 rpm、5分)した液層の吸光度(OD414)を測定し 表粘液の粗レクチン活性の測定結果を表4に示す。 た。両対数グラフのX軸に試験に用いたマダイ血清の希 【0041】 釈倍率、Y軸にY/(1−Y)をプロットし、得られた 【表3】 曲線よりY=0.5(溶血率50%)となるxを求め、 ACH50(Unit/mL)とした。 【0038】 またマダイ血清試料及び体表粘液の粗レクチン活性(レ クチン活性)をウサギ赤血球に対する凝集活性として測 定した。ウサギ保存血液2000μLをプラスチックチ 50 細胞/mLに調 ( 8 ) JP 13 2015-172019 A 2015.10.1 14 造した。この乳酸菌発酵物を用いて表1の試験区1の組 成(乳酸菌発酵物を5重量%配合)に従って調製した飼 料をマダイ稚魚に給餌しながら、実施例2と同様にして 、30日間試験を行い、白血球の貪食率を調べた。 【0046】 その結果、貪食率は、表1の対照区と同じ飼料を用いた 対照区の28.5%に対して、試験区ではペディオコッ カス・ペントサセウス 【0042】 キリシマ2Cで42.1%、ラ クトバチルス・ファーメンタム 【表4】 10 キリシマ2Rで38. 7%、ラクトバチルス・プランタラム %、ラクトバチルス・プランタラム MHで44.1 MEで41.3% 、エンテロコッカス・フェカリス(NBRC 3989 )で43.6%を示し、上記乳酸菌発酵物を含む飼料を 用いた試験区では貪食率が有意に増加した。すなわち様 々な乳酸菌種を用いて製造した本発明に係る乳酸菌発酵 物が、魚の自然免疫能の増強に有効であることが示され た。 【0047】 【0043】 (実施例4) 表3に示すとおり、白血球の貪食率は乳酸菌発酵物の添 20 <マダイの感染試験> 加量の増加に伴い上昇した。同様に血清補体活性も乳酸 乳酸菌発酵物の病原菌感染予防効果を評価するため、養 菌発酵物の添加量の増加と共に増加した。 殖魚類の感染症エドワジエラ症を引き起こすエドワジエ 【0044】 ラ・タルダ菌(Edwardsiella 一方、乳酸菌発酵物の添加量の異なる飼料を15日間与 )を用いて、マダイ稚魚の感染試験を実施した。平均体 えたマダイ稚魚の血清及び体表粘液中の粗レクチン活性 重40gのマダイ稚魚に、実施例1で製造した乳酸菌発 は対照区及び試験区間で同様のレベルを示したが、30 酵物2を用いて調製した乳酸菌発酵物添加量の異なる飼 日間の飼育試験後には血清、体表粘液ともに試験区では 料を6週間(42日間)給餌しながら飼育した。飼料組 対照区と比較して粗レクチン活性が顕著に増加し、また 成は表1の対照区、試験区1、試験区2及び比較区に従 飼料中の乳酸菌発酵物の添加量の10%以上への増加に った。飼育条件は、給餌期間を除き表2に従った。6週 伴い粗レクチン活性はさらに増加した。比較区の凍結乾 30 間の飼育終了後、マダイの腹腔内にリン酸緩衝液で濃度 燥乳酸菌は過剰量にもかかわらず、粗レクチン活性の増 調整した菌濃度3.6x10 加については僅かな効果にとどまった。なお表4に示す エラ・タルダ菌溶液0.1mLを打注し、マダイ稚魚の 粗レクチン活性値は、数値が高い程、粗レクチン活性が へい死数の推移を経時的に観察した。 低いことを示す。これらの結果より、本発明に係る乳酸 【0048】 菌発酵物にはマダイ稚魚の自然免疫能を増強する効果が 結果を表5に示す。乳酸菌発酵物2無添加の飼料を与え あり、マダイの健全性を高めることができることが示さ た対照区では打注2日目にへい死尾数が急増し、6日目 れた。 までに12尾全てがへい死した。これに対し、乳酸菌発 【0045】 酵物2を5重量%又は10重量%添加した飼料(それぞ (実施例3) れ試験区1、試験区2)を与えた場合、打注2日目以降 <各種乳酸菌を用いた乳酸菌発酵物の貪食率に対する効 40 のへい死数が大きく低減し、打注2日目から明らかにエ 果> ドワジエラ菌感染予防効果が認められた(表5)。一方 乳酸菌としてペディオコッカス・ペントサセウス シマ2C(受託番号NITE チルス・ファーメンタム TE ルス・プランタラム cfu/mLのエドワジ キリ 、凍結乾燥乳酸菌エンテロッコス・フェカリスを含む飼 P−788)、ラクトバ 料を与えた比較区では、僅かに効果が認められたものの キリシマ2R(受託番号NI P−785)、ラクトバチルス・プランタラム MH(受託番号NITE 5 tarda P−1548)、ラクトバチ ME(受託番号NITE 試験区と比べるとはるかに効果が低かった。 【0049】 この結果より、本発明に係る乳酸菌発酵物はマダイ稚魚 P−1 の自然免疫能を増強させ、病原菌の感染を予防する効果 549)及びエンテロコッカス・フェカリス(NBRC を有すること、それによりマダイの健全性を高めること 3989)のいずれか1種を使用すること以外は、実 施例1の乳酸菌発酵物1と同様にして乳酸菌発酵物を製 50 ができることが示された。 【0050】 ( 9 ) JP 15 2015-172019 A 2015.10.1 16 【表5】 【0054】 【表7】 10 【0055】 8週間の飼育終了後、クルマエビの第3腹節部に、クル 【0051】 マエビがへい死する濃度のWSSV液を0.1mL打注 (実施例5) し、クルマエビのへい死数の推移を経時的に観察した。 <他の魚類での感染試験> 【0056】 実施例1で製造した乳酸菌発酵物2を5重量%添加した その結果、ウイルスに感染してから8日目に、対照区( 飼料をヒラメに6週間給餌したこと以外は実施例4と同 乳酸菌発酵物無添加飼料)ではクルマエビの生残数はゼ 様にして、エドワジエラ・タルダ菌感染試験を行った。 ロとなったが、試験区1の生残数は20尾中5尾、試験 その結果、対照区(乳酸菌発酵物無添加飼料)では6日 区2では8尾、試験区3では9尾となり、明らかに乳酸 目で生残率(生存率)はゼロとなったが、試験区(乳酸 菌発酵物のWSSV感染予防効果が認められた。乳酸菌 菌発酵物添加飼料)では生残率が50.0%となり、ヒ 20 エンテロッコス・フェカリス凍結乾燥物添加飼料を用い ラメでも本発明に係る乳酸菌発酵物のエドワジエラ・タ た比較区では生残数3尾で若干の効果は認められたもの ルダ菌感染に対する予防効果が認められた。 の乳酸菌発酵物添加飼料と比べてはるかに効果は低かっ 【0052】 た。 さらに、エドワジエラ・タルダ菌の代わりにホワイトス 【産業上の利用可能性】 ポット病ウイルス(以下、WSSV)を用いて、WSS 【0057】 Vによる感染試験を実施した。平均体重0.8gのクル 本発明に係る乳酸菌発酵物は、安全性が高く、安価でか マエビに、実施例1で製造した乳酸菌発酵物2を1.0 つ大量製造が可能である。本発明に係る乳酸菌発酵物は 重量%、2.5重量%及び5.0重量%添加した飼料を 、それを給餌することにより魚介類の免疫機能を増強し 8週間給餌しながら飼育した。比較区では、上述した乳 、病原体の感染を予防し、予防困難な魚介類の疾病を防 酸菌エンテロコッカス・フェカリス(NBRC 止するために用いることができる。本発明に係る乳酸菌 398 30 9)の凍結乾燥物を添加した飼料を同様に給餌した。 発酵物は、特に、効果的なワクチン製造が困難とされて 飼料組成を表6に、飼育条件を表7に示した。 いるエドワジエラ・タルダ菌やホワイトスポット病ウイ 【0053】 ルスに起因する魚類感染症に対して高い有効性を有する 【表6】 ことから、感染症予防用に有利に使用できる。 ──────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl. FI テーマコード(参考) A23K 1/18 (2006.01) A23K 1/18 102A A23K 1/00 (2006.01) A23K 1/00 101 (72)発明者 鎌田 政人 ( 10 ) 鹿児島県霧島市国分川内556−1 (72)発明者 三谷 下野 株式会社鎌田工業内 紘明 鹿児島県霧島市国分川内556−1 (72)発明者 JP 株式会社鎌田工業内 正美 鹿児島県日置市伊集院町妙円寺3−4−7 (72)発明者 横山 佐一郎 鹿児島県鹿児島市下荒田4−50−20 Fターム(参考) 2B005 GA01 GA07 2B150 AC05 EB03 4C087 AA01 AA02 ZB35 ZC61 4C088 AA02 AC16 AA03 BC55 BC56 MA02 MA52 NA14 ZB09 BA37 MA52 NA14 ZB09 ZB33 ZB35 ZC61 ZB33 2015-172019 A 2015.10.1
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