研究課題 RNAi を用いた神経・筋疾患の画期的治療法の開発 課題番号 H17-こころ-021 主任研究者 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科脳神経病態学 水澤 教授 英洋 1.研究目的 本研究では、これまでの着実な実績にもとづき、siRNA トランスジェニクマウスを用いて siRNA の有用性や安全性の検証を行うとともに、従来のウイルスベクターの改良と新規レシ チン性カチオニックリポソームや化学修飾による新しい静注可能なデリバリーシステムを開 発する。また、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、脳血管障害など の各動物モデルにて有用性を実証するとともに、中枢神経内へのデリバリーには不可欠の血 液脳関門の克服を目指す。 2.研究方法 まず siRNA 過剰発現トランスジェニックマウス(TgM)を作製し siRNA の in vivo での有効性 を確認し、個体レベルでの siRNA の安全性についても検討する。CAG リピートのような疾患 特異的配列でない変異に対しても有効な RNAi 手法を開発し、in vivo でも確認する。 Off-target 効果、インターフェロン反応など様々な副作用について、特に in vivo でのその 実態と克服法の開発を目指す。神経系へも導入可能なベクターやデリバリーを開発する。 3.研究結果・考察 1) SOD1 遺伝子に対する siRNA 過剰発現トランスジェニックマウス[抗 SOD1 siRNA TgM]の作 製に成功し、家族性 ALS のモデル動物である G93A-SOD1 TgM と掛け合わせることにより、ALS の著明な発症遅延と進行抑制に成功した。 2)あらゆる変異に対応可能な変異アリル特異的新規RNA干渉法を開発し、in vivoでの有効性を 証明した。 3)静脈内投与により in vivo で siRNA を脳血管内皮へ導入、機能発現に成功し、また神経細 胞に導入可能な新規の tocopherol 結合ベクターを開発した。 4)家族性アミロイドニューロパチーのモデルである V30M-TTR TgM で変異アリル特異的 siRNA を新規カチオニックベクターを用いて静注することにより、異常タンパクの産生抑制に成功 した。 5)化学修飾などにより siRNA のインターフェロン反応や shRNA の肝毒性の克服に成功した。 4.結論(まとめ) siRNA は上手く標的組織へデリバリーさえできれば非常に有効であり、インターフェロン 反応や肝毒性についてもベクターの開発など様々な工夫により克服できると思われる。変異 アリル特異的であらゆる変異に対応する RNA 干渉が可能で in vivo でも有効と思われる。
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