2014年度活動報告 - 一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリーム

平成26年度事業報告
平成26年4月1日から平成27年3月31日まで
当社団では、2006 年にノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏の提唱する「ソーシャ
ルビジネス」の考え方を広めていきながら、「社会の課題を解決していこう」と挑戦されている方、
これから挑戦しようとしている方の事業を応援するために、そうした挑戦者を応援したいとお考え
の方々から資金をお預かりし、その基金からの出資と経営のアドバイスを行います。
今年度は、日本最大のソーシャル・イベントとなった「みんなの夢AWARD」との連携を図り
ながら、ソーシャルビジネスに挑戦しようといしている人(出資を希望している方々)たちの応
援を行いました。
下記、本年度の当事業年度の経過及び成果をご報告いたします。
一般社団法人ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ
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みんなの夢AWARD5 主催事業について
当事業年度の経過及び成果
イベント企画参加、セミナー/シンポジウムへの参加など積極的に活動を展開してきました。
■みんなの夢AWARD5を主催として開催しました!
みんなの夢AWARD5を共催として参加しました。「みんなの夢AWARD」は、社会の課題を解決し、
みんなをワクワクさせ、みんなが夢をもちたくなるすてきな夢に贈られるアワードであり、夢アワードのプレゼンター
は協賛企業からのサポートを得ることができる仕組となっています。このような仕組みで、社会の課題を解決す
る事業に挑戦する社会起業家を応援することを目的としています。弊会では、「ソーシャルビジネス部門」の設
置に協力し、最終ファイナリストへのサポートを予定しています。
【みんなの夢AWARD5開催概要】
日時:平成26年2月23日(月)
会場:日本武道館
参加者:8,000人(のべ)学生団体175、協賛企業60社
共催:一般社団法人ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ
公益財団法人みんなの夢をかなえる会
さわかみ一般財団、ニッポン放送他
後援:経済産業省、文部科学省、
東京証券取引所「ニッポン経済応援プロジェクト『+YOU(プラス・ゆー)』」
国立大学法人九州大学ユヌス&椎木ソーシャル・ビジネス研究センター
起業家スーパーカンファレンス
ベストオブ学園祭、NIPPON IT チャリティ駅伝実行委員会
NPO法人 future dream Achievement、
公益財団法人八王子市学園都市文化ふれあい財団、大学コンソーシアム八王子
日本ファンドレイジング協会
NPO法人ETIC
株式会社共同通信、株式会社オルタナ、オルタナS、農業ドリームプレゼンテーション
協賛:アイエスエフネット、ADK、アサヒビール、イオンクレジット、石坂産業、伊藤ハム、
岩谷産業、インテリジェンス、エイチ・アイ・エス、エーザイ、エイト、王子ネピア、
オタフクソース、カゴメ、加藤産業、極洋、キユーピー、京急、鴻池運輸、コカ・コーライーストジャパン、
さわかみ投信、サントリービア&スピリッツ、三陽物産、秀實社、資生堂、昭和リース、セコム、
損害保険ジャパン日本興亜、東京都民銀行、東洋水産、大和ハウス、DYM、
ネクストワンインターナショナル、日本食研、日本M&Aセンター、野村証券、ハウス食品、
パナソニック、パラマウントベッド、フィリップモリス、日立製作所、福島工業、富士通、富士通ゼネラル、
富士通フロンティア、富士ゼロックス、丸紅、平和不動産
三井住友銀行、三井食品、ヤマサ醤油、USEN、ユニチャーム、リンク&モチベーション、ワタミ
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みんなの夢AWARD5 主催事業について
国内最大のソーシャル・イベントとなったみんなの夢AWARD
プレゼンテーターの藤岡氏がソーシャルビジネスの夢を語る
多数の若者が参加するイベント
会場は熱気あふれ8000名が集まった。
オーディエンスも投票する
コメントする審査員
大盛況のうちエンディング
ファイナリストたち
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法人サポーターの募集
主催として参加した「みんなの夢AWARD5」の協賛社にお声がけを行い、法人サポーター
を募集し、16社の応募・協賛がありました。協賛して頂いた企業のロゴマークを、ホームページ、
広告などで露出致しました。
【平成27年度・法人サポーター】
アサヒビール㈱ /インテリジェンス㈱/伊藤ハム㈱/カゴメ㈱/キューピー㈱/サントリービア&スピリッ
ツ㈱/三陽物産㈱/昭和リース㈱/野村證券㈱/ハウス食品グループ本社㈱/パラマウントベッド
㈱/丸紅㈱/ワタミ㈱
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キャリア大学でソーシャルビジネスセミナー開催
企業が学生に対しキャリア教育を提供するプラットフォーム「キャリア大学」との連携により、「ユヌ
ス・ソーシャルビジネス」をワークショップを通じて理解し、具体的なソーシャルビジネスモデルを構
築する講座を行いました。
■9月15日(月) キャリア大学
■場所:キャリアデザインカフェ
■参加:大学1~2年生22名
■講師:中川理事
講義『ソーシャルビジネス概論-社会の課題を解決する力-』を行い、「ソーシャルビジネスとは」
や「ユヌスソーシャルビジネスの7原則」を理解し、ワークとして『ソーシャルビジネスをつくってみよ
う』を行い、学生にプレゼンして貰いました。
当団体が主催する、みんなの夢AWARDへのエントリーにつながりました。
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Japan Aqua Enterprise株式会社
プロジェクト:BOP層の起業を支援し、雇用を創出する屋台喫茶ビジネスと農村に安全な給
水を供給するビジネス
代表取締役会長:勝浦 雄一
取締役社長:柴田雄介
取締役:中川直洋(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 理事)
取締役:小田剛志(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 監査)
課題/目標:勝浦雄一氏が代表をつとめる「日本ベーシック」がもつ水関連技術を通じて、バ
ングラデシュの水に困窮する人々に安全な水を供給するという社会開発課題を、ボランティア
や寄付行為ではなくビジネスを以て解決することを目指します。この課題解決過程において貧
困層の雇用等社会還元を目指しつつ次の課題解決の為の資金を確保することをめざします。
事業概要:BOP層に屋台をレンタルし、毎日材料などのサプライを供給する。屋台では、日
本食メニュー、コーヒー、ティーなどの販売を行い、販売成果はIT機器を活用して店舗位置の
管理とともに本部に報告する。屋台の経営はNGOに経営管理を委託し、住民と密着したビ
ジネスを展開する。
出資金額:7,334,350円
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株式会社GGC
プロジェクト:統廃合の危機にある離島中山間、地域の高校魅力化を通じた地域の活性化
プロジェクト
代表取締役:藤岡 慎二 (ふじおか・しんじ)
取締役:中川直洋(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 理事)
課題:離島中山間地域は人口減少に伴い少子高齢化している。少子化で高校の生徒数
は減少し離島中山間地域の高校ほど統廃合の危機に瀕している。
目標:高校が魅力化することで、統廃合の対象だった高校が、生徒数が安定し、離島中山
間地域も高校を中心に活性化されている。
事業概要:少子化が進む離島中山間地域の高校の魅力化を通じて、地域の活性化を図
る。高校の魅力化は①新感覚の寮生活、②高校の授業内容の変更、③公営塾の設立・運
営を通じて実施する。
生徒は地域内だけでなく、全国や海外から生徒を募集する。
出資金額:10,000,000円
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株式会社GGC(レポート①)
高校の有無はUIターンの定着率に影響する
3646、この数字は全国にある公立高校の数です。(H26年文部科学統計要覧より)
このうち、一年間に統廃合される高校の数は54校前後です。(平成17年から25年まで)
このまま統廃合が進めば、10年間で6~7校に1校は無くなる計算です。特に高校の統廃
合が進む場所は離島中山間地域です。仮に東京の高校が1校統廃合されても、電車で他
の高校に通えます。しかし統廃合が進んでいるのは島に、地域に、通学圏内に唯一の、地方
の高校です。
高校の統廃合が地域に与える影響とは。正式な調査が待たれるところですが、高校の有無
は定住促進に影響します。2012年12月朝日新聞によると、福島県の桧枝岐村は温泉ブー
ムでIターンが増加しました。しかし高校がなかったため十数年後、大変な転出超過に。一方、
鹿児島県屋久島町には高校があり、世界遺産でもある屋久島の自然について学び始めまし
た。高校卒業後、意欲ある若者は一端島を離れますが、かえって島の良さに気付きUターン率
が高まりました。高校の有無がUIターンの定着率に関与する事例です。UIターンが地方創生
の鍵であり、高校の存続が地域活性化の要と言えるでしょう。これらの現象は高校に限った事
ではありません。岐阜県高山市高根町は合併に伴い、平成18~20年にかけて小中学
校を廃校にしました。その結果、子育て世代が地域を離れました。平成11年の時点での人
口は800人程度で、高齢化率は30%程度でしたが、平成27年には人口は合併前の
予想であった676人を大きく下回り、400人にまで減少しました。高齢化率は60%に
迫る勢いです。学校の廃校が少子高齢化と人口減少に拍車を掛けたのです。
地域の教育力が移住・定住に影響
広島県大崎上島町で定住・移住促進の窓口となっている取釜宏行氏は”移住の問い合わ
せの際に、子どもを持つ親の場合は、必ず教育の質、とりわけ高校での教育の質について聞か
れることが多い”といいます。その声を受けて、大崎上島町では広島県立大崎海星高校の魅
力化を町長や校長のリーダーシップの元、先述の取釜氏らと推進しています。大崎上島町役
場・大崎海星高校と地域おこし協力隊で島に移住した若者たちは、高校でのキャリア教育、
公営塾の設置、全国からの生徒募集も実施する予定です。地域における教育の充実は移住
や定住促進の一貫なのです。私たち、GGCは2015年度から広島県立大崎海星高校の魅
力化プロジェクトに参画。
スタッフが4月から地域おこし協力隊として赴任。公営塾を5月11日からプレオープンし、定
期試験対策、推薦・AO入試対策講座を開始しています。先日の公営塾では、生徒が試験
前ということもあり、30名近く(全校生徒の半分)が来てくれました。今後は生徒の全国募集、
また地域の課題発見・解決型キャリア教育の“大崎上島学”を実施していきます・
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株式会社GGC(レポート②)
高校などの学校の統廃合により、地域が閉じるまで
高校が統廃合により、子育て世代が流出し、全国規模の移住者の争奪戦で不利
になるでしょう。UIターンも減り、人口が増える要素は見つかりません。子育て世代の
若い就業人口の減少は、地域の経済効果減少だけでなく税収減をも引き起こしま
す。やがて、人は行政サービスが良い近隣の自治体に流れます。衰退している地域に
30年ローンで家を誰も建てません。投資が冷え込み、地域経済は減速します。
子育て世代の流出は、面倒を見ている高齢者世代の流出も引き起こし、医療機
関も危機に瀕します。学校がなくなり、子育て世代、そして高齢者世代も流出し、医
療機関も、交通機関の維持も困難になり地域は静かに閉じていくでしょう。人口350
人の島、北海道羽幌町、天売島。このような危機に直面している羽幌町立天売高
校は全校生徒4人。まさに最悪のシナリオが現実のものになる可能性があります。
2013年度からご縁を頂いたGGCは、2014年度に羽幌町教育委員会と折衝を続
け、2015年度から羽幌町立天売高校魅力化プロジェクトをスタート。現在、専門ス
タッフが1名赴任し、札幌市を中心にPR活動を実施しています。今後は寮や公営塾、
キャリア教育である“天売学”の充実に務め、さらなる生徒獲得を目指します。
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株式会社GGC(レポート③)
密かに増える教育移住
沖縄県立久米島高校。沖縄県の離島の久米島は人口が8000人強。久米島高校は
島内からの進学率は80%近くと高い数値を示していますが人口流出に伴い、生徒数が減
少。高校と島民で危機感が醸成されました。2013年は久米島高校の校長先生や有志
の先生方、島外から採用された支援員が一丸となって、生徒の島外募集を実施。2014
年度からは、久米島町役場との協働体制を構築し、行政・高校・地域の3者のチーム久
米島で魅力化プロジェクトを推進。GGCもプロジェクトに参画しております。2015年4月か
らは、関西で塾のマネジメントをされていたリーダーの元、早稲田・慶応・東工大卒の高学
歴でかつ指導経験が豊富な講師陣が久米島町に着任。公営塾始動、既に学校との協
動体制を確立し、事業を進めています。今後は島内と島外の交流を促進する宿泊型交
流施設の設置、目的意識や学習意欲だけでなく、学ぶ力や愛郷心を育成するキャリア教
育プログラム“ちゅらゼミ”などの施策に、向けて、着々と準備中です。プロジェクトの成果は早
速出ています。2014年度に島外から5名が里親制度の元、久米島高校に入学。2015
年度は10名が島外から久米島高校に入学。そのうち2名は親と共に移住する”教育移
住”、1名は久米島に親戚がいるとのことで、移住。すでに島外から15名。いずれも東京や
大阪などの都市部からの進学です。来年度は更に受け入れ体制を充実させて、多くの生
徒を島外から受け入れる予定です。
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株式会社GGC(レポート④)
教育移住や、島外からの高校への島留学の成果、都会の子達の地域への思いを生む
高校生たちやその家族は、確かに卒業と同時に久米島を出るかもしれません。島外から来た
高校生がどうなるのか・・・その成果は、早くから全国募集をはじめ、私たちGGCが2010年から
参画させていただいている高校魅力化の最先端事例として高名島根県立隠岐島前高校に
あります。(詳細は、岩波書店の“未来を変えた島の学校~隠岐島前発ふるさと再興への挑
戦~”をご覧下さい。)
島留学制度を使って東京から隠岐島前高校に進学した2人に高校卒業後に聞きました。
東洋大学に進学した卒業生は、“中学生まで、埼玉には自分の居場所がないと感じていた。
限られた人間関係のなかで窮屈に生活を送っていた。しかし、隠岐島前でボランティア活動を
する中で、沢山の人と関わって自分の居場所を見つけられ、 消極的だった性格がボランティア
を率先して行い、自分から行動する力を身につけられた。更には、自分の人生の目標も見つけ
られた。 海士町の方に関わっていただいたおかげだ。 今の自分がいるのも隠岐島前での学び
があったから。 だから、恩返しとして、海士町の力になる仕事をしたい。”と将来隠岐島前で働く
保育士を目指している。
もう1人、高知大学に通う卒業生は“大学卒業後は、都心の企業でノウハウを獲得・社会
問題を見つめなおし、地方(場所は未定)で実践して力を蓄える。やがて隠岐島前に帰るっ
ていうビジョンを今漠然と持っている。 隠岐島前では私は自身に自信をもち、自分が好きに
なった。 初めて自分が住んでる地域に対して誇りを持てた。 夢を開拓できたのも海士町という
場があったからだ。夢を見つけたり深堀れる素材が島には詰まってた。 隠岐島前に感謝してい
る。 今頑張っている町長や、巡の環の方や、隠岐島前を引っ張ってる人のバトンを継ぎたい。
継げるような人材になるために、大きな力を蓄えて帰りたい。”と語る。
このような島外生との交流を通じて、島で生きる覚悟を決めた西ノ島出身の島前高校出身
のある生徒。彼も法政大学の学生です。彼は島外から来た生徒との交流をきっかけに“帰りた
いという気持ちは高まったと思う。島外生がきっかけで地元に誇りを持つようになった。以前より
好きになった。 結果、地元である西ノ島に帰って、地元をもっと元気にしたい、と思うようになっ
た。”と話す。
一時的にせよ教育移住によって地域外の生徒は、彼らのように、将来、地域で仕事をする
優秀な人材の候補生になります。働く場所や地域、仕事の幅が広がり、地域にはプラスです。
彼らがきっかけとなり関係・交流人口を増やせれば、移住促進につながります。また、教育移住
は地元の生徒にも“自分の地域の価値再発見”の良い機会です。しかし、ただ単に外部から
生徒を受け入れれば良いわけではありません。
受け入れた生徒を地域が総がかりで、志や人間性、社会性などを育む教育環境が必要で
す。決して、教育を学校だけに押し付けるのではなく、地域の住民と学校の先生方が一体と
なって高校生に夢を持たせる、夢を実現させる力を身につけさせることが重要なのです。
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株式会社GGC(レポート⑤)
高校の魅力化で地域の担い手とリーダーを育成する
2040年に、彼らは40歳から45歳。まさに地域の中心となり、地域を担っていく人材にな
ります。まさに今、高校の魅力化に取り組むことは、短期的には関係・交流人口の増加による
定住人口の増加、そして中長期的には地域に戻ってくるUターンだけでなく、都会で力を溜め
て、地域に貢献する担い手やリーダーの育成につながるのではないでしょうか。
初めから永住を望んでは、移住者は来ない
NHKの白熱教室にも出演している米国コロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授の授業で
興味深い思考実験があります。まず、彼女は学生に向けて、質問をします。“皆さんを素晴らし
いリゾート地にご招待します。そこは広大で、世界中のありとあらゆるエンターテインメントが揃っ
ています。海と山の大自然の中でゆっくり過ごすこともできれば、あらゆるレジャーやスポーツ、ア
クティビティが揃っていて飽きることはありません。食事だって世界中の食を最高のレベルで楽しむ
こともできます。食事もアルコールも好きなだけどうぞ。自然だけでなく、都会を彷彿とさせるエリ
アもあり、ショッピングも楽しむことができます。ちなみにパートナーもいくら変えても構いません。夢
のような提案だと思いませんか?さて、皆さん、チケットを受け取りますか?”と。もちろん、学生
のほとんどが手を挙げます。そこでアイエンガー教授は、こう付け加えます。“この提案にはひとつ
条件があります。この提案に乗り、リゾート地に行った人は・・・実は死ぬまで、この地から出るこ
とはできません。” この条件を聞いた学生は手を下げます。
これは何を意味するのか。それは“人は選択を奪われることを忌み嫌う”ということです。このよ
うな夢のような提案ですら、人は手を下げるのに、これからどのような事が起きるかわからない移
住先で“お前はここに骨を埋めるつもりなのか”を迫られたら、選択を奪われた、として移住・定
住を躊躇するでしょう。躊躇する理由は、その地域に魅力がないからではなく、選択を奪われた
からなのです。地方・地域には人の入れ替わり(新陳代謝)もよしとする度量が求められるの
ではないでしょうか。
課題先進地域である地方を題材にした課題解決型キャリア教育が開く地方・地域の未来。
近年、高校では地方や地域の課題、まさに人口減少や少子高齢化、財政難などを題材と
して、課題を発見し解決案を考え、地元の大人たちと実行する地域課題発見解決型キャリア
教育が盛んです。私は、このキャリア教育に2つの期待をしています。一つは、地域の担い手・
就業人口の確保です。鳥取大学の筒井准教授によると、“高校生が地域固有のことを学ぶと
地域で活躍するイメージが持て、生徒の進路意識が高まる”との研究結果があるようです。地
域固有のことを学ぶ中で、ふるさとに自分自身の居場所と出番を見つけ、生徒の進路意識に
影響を与えそうです。
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株式会社GGC(レポート⑥)
大学入試会改革は地方や地域の高校にとってチャンス
2つ目は地方や地域の高校の活性化です。多くの自治体で高校の学区が撤廃され、優秀
な生徒は都市部にある進学校に集められ、学力向上に勤しみます。優秀な生徒を一同に集
め、切磋琢磨させ、かつ、実績がありベテランの先生方を集めて集中的に指導をする方法は確
かに今までの大学受験では成果を上げるには効率的な方法でした。しかし、2020年には大
学入試が大きく変わります。センター試験が廃止され、新しい学力試験が始まります。更に生
徒自身の志や問題意識、人間性などが総合的に問われるようになったのです。
高校生自身の学力を出願書類に書き込み、提出した後、大学別の個別試験が課せられま
す。個別試験が地方や地域の高校生にとってのポイントです。この個別試験の中身は、大学
で何を学びたいかを問う志望理由書や、大学入学後の学習計画書、また高校でどのような活
動をしてきたかの成果報告書、面接やプレゼンテーション、グループディスカッションなど多様な試
験が課せられる予定です。つまり、学力だけでなく、志や表現力、人間性も見る入試に変わっ
ていきます。各地域から優秀な生徒を集めて、集中的にガリガリ勉強させる高校ほど、個別試
験に対応できず、不利になります。高校の授業で生徒を地域に解き放ち、課題先進国日本
の課題先進地域の課題を発見し、解決策を考えて実行する。高校生たちはやがて、自身の
地域に居場所と出番を見つけ、地域で生きる志を立てる。その志は大学受験において重点的
に評価されるようになります。今まで不利だと思われていた高校が、突然、革命が起きたかのよ
うに有利になる可能性を秘めているのです。地域づくりと文科省が進める大学受験改革は一
見関係ないようで、実は大きな可能性を秘めています。大学入試改革を地方創生の好機と
捉え、高校を起点とした地域活性化を狙う高校があります。大阪府立能勢高校です。大阪
府内でありながら、人口流出と少子高齢化、過疎化が進む能勢町にある高校です。伊丹空
港から30分で行ける町ですが、大阪とは思えない里山風景が広がっている風光明媚な場
所です。能勢高校も生徒数減少で存続の危機でした。
能勢高校は2012年から活動を開始、様々なケースを研究しながら、プロジェクトを推進。
2014年度からは本格的にプロジェクトを開始。私たちGGCも参画。高校再編計画、大学受
験のサポート、地域外からの生徒募集、リクルート社の映像授業の試行実験、よのなか科によ
るワークショップ形式の授業を中高生向けに開始。能勢高校の最大の課題は、町内からの進
学率の低下。2013年度は38%でした。様々な施策の結果、町内から進学する生徒の進学
率が増加。町内にある2つの中学の一つは進学率50%を超え、もう一つは昨年以上の40%
を超えている。合計で45%と進学する生徒数が増えた。大阪府教育委員会は3年定員割れ
して、努力していない高校は廃校にすると言っていたが、努力が認められ、今回の整理対象か
らは外れました。むしろ、能勢高校は能勢町とコラボしている好事例として挙げられています。
能勢高校は、H29年度に学科再編の構想を持っています。H29年度からは自身の学校
をグローカルスクールと位置づけ、21世紀スキル系列と社会イノベーション系列を設置。特に
社会イノベーション系列は、社会起業コースと地域創生コースに分かれます。課題先進地域で
ある能勢町の教育・医療・福祉などの暮らし、そして雇用や経済など仕事に関する課題を発
見し、解決する中で自身の志を育みながら、ふるさとでの進路意識を高めて、学力以外で社
会を生き抜くために必要なコミュニケーション能力や課題発見・解決能力、リーダーシップ、創造
力、論理的な思考・表現力を鍛えたいとしています。まさに2020年からの大学入試改革に対
応していると言えるでしょう。
仕掛け次第では、2020年からの大学入試改革は高校を起点とした地方創生の起爆剤と
なるのです。
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株式会社GGC(レポート⑦)
地域総がかりで高校と高校生を支援していく意識が必要になるでしょう。
これらのプロジェクト以外にも、岡山県立和気閑谷高校や長野県立白馬高校でも魅力化プ
ロジェクトを開始しております。しばらくは無理な拡大はせず、腰を据えて今あるプロジェクトを
一つひとつ進めていく予定です。
地方や地域の高校が地方創生の鍵 ”ブーメラン人財”を育む日
島根県立隠岐島前高校魅力化プロジェクトでは、“ブーメラン人財”という言葉が合言葉に
なっています。これは、高校生を学校だけでなく、地域と共に力の限り、応援し、外に送り出す
ことが、返って、自分の地域に帰ってくるブーメランのような人財という意味です。子供たちを学
校だけに押し付けるのではなく、地域の大人たちも一丸となって、子供たちの学力や志、人間
性、社会性、社会に通用する力を育てる。
これらの力を育まれた生徒たちは大学や社会人となって、様々な場で力を発揮するでしょう
。当然ながら評価されます。評価された時に、“自分が評価されているのは、ふるさとが、あの
町が、私を育ててくれたから”とふるさとを思い出し、親孝行をするのが当然のように、ふるさとに
ブーメランのように恩返しをするようになるでしょう。
この恩返しの想いの総和こそ、地方創生の鍵に疑いはないでしょう。
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2015年の予定
(1)出資に関して
ユヌス氏の提唱する「ソーシャルビジネス」の考え方に沿う事業に対しての「出資」の検討を行っていきます。事
務局、専門家からのアドバイスのもと、出資希望者からの面談を行っていきます。当団体が主催する、みんなの
夢AWARD6に向けて、ソーシャルビジネス候補を選定します。
年度1社の出資を計画しております。
金額は、最大2000万円
(2)出資先の経営参画
出資者へ経営参画し、役員会などに参加。拠出先企業のメリットを考えながら、出資先企業の最大限のメ
リットを享受していく。
毎月、役員会など定期的な会議を行い、報告を受け、承認、経営的なアドバイスを行い、すべてのソーシャ
ル・ビジネス事業でリスクを排除していきます。
①Japan Aqua Enterprise
プロジェクト:BOP層の起業を支援し、雇用を創出する屋台喫茶ビジネスと農村に安全な給水を供給するビ
ジネス
代表取締役会長:勝浦 雄一
取締役社長:柴田雄介
取締役:中川直洋(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 理事)
取締役:小田剛士(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 監査)
出資金額: 7,334,350 円
②株式会社GGC
プロジェクト:統廃合の危機にある離島中山間、地域の高校魅力化を通じた地域の活性化代表取締役:
藤岡 慎二 (ふじおか・しんじ)
取締役:中川直洋(一般社団法人 ソーシャルビジネス・ドリームパートナーズ 理事)
出資金額:10,000,000万円
(3) その他
法人サポーター制度に関して
当社団法人の活動の主旨に賛同していただいた方に、ソーシャルビジネスドリームパートナーズの法人サポー
ター(協賛)になっていただき、下記の区分により会費を頂きます。
・法人サポーターについて 会費(年額)
50,000円
・募集体制:募集方法は、人的ネットワーク、公式HPなどを通じて法人の協賛を行っていきます。
■法人サポーターを募集、17社以上
主催として参加した「みんなの夢AWARD5」の協賛社にお声がけを行い、法人サポーターを募集し、16
社の応募・協賛がありました。協賛して頂いた企業のロゴマークを、ホームページ、広告などで露出致します。
【参考 平成27年度・法人サポーター】 13社
アサヒビール㈱ /インテリジェンス㈱/伊藤ハム㈱/カゴメ㈱/キューピー㈱/サントリービア&スピリッツ㈱/三陽物
産㈱/昭和リース㈱/野村證券㈱/ハウス食品グループ本社㈱/パラマウントベッド㈱/丸紅㈱/ワタミ㈱
■PRについて
みんなの夢AWARD6での広告や当団体のHPでアピールしていきます。
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