溜 池 - 展景

溜
池
子
やす こ
布宮慈
大水に決壊したる堤ありひととせ干上がつたままの溜池
通るたび底を晒して溜池は生き物のかず減らしてゆきぬ
やうやくに重機の音を響かせて堤の補修なされれば 夏
わづかづつ新しき水貯へる池の堤に起きる涼風
水嵩の戻りたるころ鳥が来て牛蛙鳴き糸とんぼ飛ぶ
水鳥の二羽三羽浮き真ん中に常に一羽で浮かぶ鴨ゐる
わがことにあらねど蛙の声すればこころたのしく溜池を過ぐ
頑丈になりたる堤のその奥に木苺生るを知りをりわれは
いは や じふ はち や
葛 の 葉 の 山 を 覆 へ ば 幟 立 つ 「岩 谷 十 八 夜 観 音 例 祭」
お い で お い で 葛 の 葉、 葛 の 蔓 ゆ れ て あ や し き ま で に 赤 き 幟 よ
*山形県中山町の山間部、岩谷地区にある観音堂。むかしから目の神様、仏様として信仰され、オナカマ(口寄
せ巫女)の本山といわれるほど栄えたという。
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展景 No. 79
展景 No. 79
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