5つの鉄則

個人塾は、なぜ潰れていくのか?
潰れていく個人塾の理由の多くは何でしょうか?それは少子化により、「生徒数」が激減したから
に他なりません。しかし、一方で新興塾が隆盛を極めている事も事実です。
すると、少子化で「生徒数が減った」と言われているのは詭弁であり、自塾に生徒を呼び寄せる事
が出来なくなったからだと認識する必要があります。
個人塾の多くは講師が1人もしくは2人で行っている所が多いようです。しかも授業科目も英・数
もしくは、英・数・国など主要2、3科目しか教えていないようです。20年前の学習塾全盛の頃
はそれでもよかったかも知れませんが、現在は様々な情報が行き交い、ニーズも多様になりました。
そのような中で2科目3科目どころか、全教科(場合によっては実技4科目さえも)指導する塾が
結果として生き残っています。つまり、今までの塾は「講師の出来る事だけ」をすれば良かったわ
けです。そのため自らは何も学習してこなかったと言えます。
一方、新興勢力の塾は上記ような努力の他に経営努力も忘れていません。つまり個人塾が潰れてい
くのは、生徒のニーズに応えられなくなったからでしかないのです。
それでも、自宅で行う場合は、あまり問題ないでしょうが物件を借りての経営であると悲惨です。
とにかく生徒を集めない事にはどうしようもありません。固定費さえも稼げないという悲惨な状況
になりかねません。
この本では、当塾が実際に行っている方法を紹介しています。しかし最終的に塾の商品価値は授業
そのものです。授業に対して常に自分達のクオリティを保つ努力をしなければ最終的には潰れてい
くことになります。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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今では、チラシも出さずに1週間で満員御礼(集客技術)
私が学習塾を始めたのは、もう6,7年前の事です。ある年の5月に独立を思い立ち、8月で会社
を辞め、11月に開業しました。開業した場所は、故郷とはいえ、実際は、私には縁もゆかりもな
い所です。実家が引越しをしていたのです。
場所を借り、工事をし、備品を揃える、その間に塾用コンテンツ会社に連絡を取り教材を買う。
それで1か月過ぎました。その後、チラシを友人に作成してもらい配布することにしたのです。
結果は悲惨なものでした。2回のチラシで生徒は0人。8万円近くをドブに捨てたような気分でし
た。友人は「チラシなんて今どき効果はないよ!」と言いましたが、自分の金で商売をしている人
には許されない言葉です。世間であれほどチラシが出回っているのはチラシに効果がある証拠のは
ずです。そこから、私のマーケティング活動が本格化していったのです。
さて、その年には生徒が、どうにか2人来てくれ、翌年の1月にはもう 1 人来てくれ結果3人にな
りました。それがその年の8月には30人にまで増えたのです。その増え方は、やはり夏期講習頃
から緩やかに増え続けるパターンでした。
しかし今は、2月の段階で満員御礼の状態です。今年度で言えば、中1、2生とも定員を急遽増や
して対応したくらいです。し かもチラシはまったく入れていません。そこまでの仕組みを説明しま
しょう。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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今では、チラシも出さずに1週間で満員御礼(集客技術)
私が最初に手をつけたのは、口コミです。
生徒が生徒を連れてくる・・そんな仕組みです。最初に数人の生徒が入塾すると、その生徒たちに
「塾来たい…って言っている友人がいたら連れておいで」と言うわけです。
これは、どの塾でもやっている事でしょう。多くの人は、あまり効果がないと言いますが、
少し待って下さい。順序良く話をしていきますので。
この方法は、意外と効果がありました。生徒たちの人間関係を把握した上で「どの生徒にだけ」
言えば良いのかを考えた上で行動するのです。全員に言っても効果は少ないでしょう。
鈴をつけるターゲットを見極めることにより、その効果は倍増します。
冬期講習時にも生徒が増え、この年に現在の当塾の礎を築いたと言えます。
しかし、3学期に入ると来年度に向けて、また生徒獲得に励まなければなりません。
生徒の多くは中3生だったので、とにかく経営を安定させるためにも中1.2生が欲しい所です。
次に私が行った事は「チラシ」の改訂。以前とは異なり、自分で全て書き上げました。現在ではチ
ラシをいれなくとも多くの生徒が集まりますが、最初は自塾の存在を知ってもらうにはチラシが一
番です。さて、最初に私達が行うべきことは、
1.自塾の存在を知ってもらう事です。
2.その次に塾に来たいと思ってもらう事。
3.そして、来させる事。
4.最後に入塾させる事です。
私が作成したチラシはこの段階の中で1∼3までを考えた物でした。
次にその構成を紹介しましょう。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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今では、チラシも出さずに1週間で満員御礼(集客技術)
まず自塾の存在を知ってもらう。このためには「チラシ」そのものが目立つ必要があります。
普通のコピー用紙に青 1 色で作成したチラシをどう目立たせるか?これが課題でした。
方法は、まず文字の大きさを「めちゃ大きく」してキャッチコピーを書いたのです。
キャッチコピーは、
「うまい!」と感じさせなくとも相手のメリットに訴えれば十分です。
私どもでは「全員合格!」
「合格率100%」がキャッチになっています。
このようなキャッチは、自塾の特長を分析すると出てくるものですが、もっと簡単な方法が
あります。それは自塾の生徒に「何でうちの塾に来たの?」と聞く事です。
顧客のことは顧客に聞くのが一番です。先生や講師の思いこみで自塾を判断してはいけません。
塾の判断は生徒がするものなのです。当塾のチラシは全て生徒がチェックしています。
これも「誰が顧客」なのか?どんなターゲットに訴えなければならないか?を考えると
答は一目瞭然のはずです。
さて、次は自塾に「来たい」と思わせる事です。この方向性は様々でしょう。しかし塾の本質は
志望校合格やテストの点数が上がる事です。人間教育なども必要ですが(私共も、当然行っており
ます)それだけで生徒が来るわけではありません。本質の部分を的確に言えるとこれはかなり強い
のです。
しかし、そうでない場合はどうするか?例えば大手塾のチラシを見てください。かなり書き込まれ
ていませんか?そこには、各コースを詳細に説明していたり、もちろん合格者数や合格体験談など
も載っている事でしょう。実は、これが「行きたい!!」と思わせるのです。
一方、あなたのチラシは「スカスカ」ではありませんか?顧客はチラシのデザインを見ているの
ではありません。情報を読んでいるのです。
スカスカのチラシ=情報がないチラシ=何もない塾
とシビアに顧客は見てしまうのです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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今では、チラシも出さずに1週間で満員御礼(集客技術)
まず「この塾に行きたい」と思わせることをチラシに書くこと です。
生徒募集とだけ書かれたチラシを見て誰が行きたくなるでしょうか?私は、この部分をひらすら
考えました。
その結論が、
「全員合格する秘密」です。なぜ全員合格するのか?その理由を詳細に述べました。
現在、この1部はHPにも掲載されています。
長い文章を人は読まないと思ってはいけません。興味があれば読むのです。
興味のない人は最初からチラシを手に取りません。私の、最初の失敗の原因は、ターゲットを
見失っていた事でした。約6000枚のチラシを入れたのですが、実際は、その中でターゲット
となる中学生のいる家庭は、約500程度。もともと5500枚は無駄な物なのです。
つまり、どんなチラシを入れても塾そのものの必要性がない分けですから見てもらえないのです。
この人たちは、最初から無視すれば良いのです。しかしこの人たちにも…つまりみんなに読んで
もらえるように…との思いが私にあり、結果「誰にも読まれない」チラシを書いていたのです。
さて、チラシに書く内容は決まりました。後は、顧客に来てもらえるかどうかです。
塾の多くは「無料体験」をしています。しかし無料体験が成功している事は殆どないでしょう。
私もやって見ましたが、1人しか募集して来ませんでした。一応、入塾しましたが。
私の経験では、
「無料体験」という言葉そのものが、既に「あやしい」のです。最近では、いつも
無料体験をしている塾もあります。しかし、それだけで生徒が来るか?と言えば来ないでしょう。
まず見知らぬ「塾」に入る…その行為そのものが、心理的敷居の高いものなのです。
そこで私は「学校帰り」にちょっと寄って下さい…との張紙もし、教室の雰囲気などもチラシに
載せ、親しみやすい、つまり敷居の低い塾 にしたのです。おかげで、生徒が学校帰りに塾生が
新しい生徒を連れてくる雰囲気が出来あがったのです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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チラシも出さずに1週間で満員御礼(集客技術)
ここまで出来たら、後は簡単です。友人が友人を連れてくる事で急速に生徒数が伸びて行きました。
生徒数が伸びない原因は、
「塾」そのものの敷居が高い場合が、ままあります。一度、入塾して
しまうと関係ないのですが、最初の1歩は意外と勇気がいるものです。生徒の立場に立って考えて
いくと自ずと答えは出てきます。
現在、私はチラシを入れていません。しかしDMは行っています。DMは内容により嫌われる事も
多いので注意が必要ですが、興味のあるDMは、非常に有効です。
私の、今年のDMの結果は約180通で12名の入塾でした。広告費も非常に下がりました。
その上、DMはチラシ以上の情報を与える事が出来るのです。
計4枚からなるDMパッケージを作りましたが、最大のポイントは、返信ハガキを使ったことです。
お気軽にお申し込み下さい…と書けば、すぐに電話をかけてくれるか?と言えば
答はNO。
電話は相手の肉声を聞く事になります。その事自体が、顧客のアクセスを躊躇させているのです。
これを返信用ハガキにすると、まぁ簡単。12名全てがハガキでした。しかも送り返してきた分
だけ私は払えばいいのです。1通70円ですが、それでも1000円でおつりがきます。
非常に安上がりです。そして何よりも、私も電話に出る必要がなく、まったく手がかからなかった
のです。これらの情報は、郵便局にて無料配布している「小冊子」に詳しく書かれています。
是非、この小冊子は入手して下さい。
このようにして、広告にかける経費を非常に下げて、しかし必要情報をキチンと見込み客に
配布する。この仕組みを早く作ってしまう事です。当塾は、わりと早い時期から独自ドメインを
取得し、HPを掲載しております。この主な目的は、生徒の確保です。HPで世界から顧客を…
というのは、マスコミの作ったバカな話に過ぎません。HPこそ「ローカライズ」した最も安い
広告手法なのです。現在では、生徒の囲い込みにもネットを多用しています。
ネットを使っての生徒獲得法は、これらの手法をネットに上げたものです。
ある手法で成果が出たならば、それを別のメディアで試す。そうする事で一層の効果が
期待出来ます。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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他塾を合法的に撤退させる方法(競合対策)
私共の塾では、ある年の10月まで中2生は6名でした。しかし、その後の1か月間で10人に、
そして今では満員になっています。ではその1か月間で何をしたのでしょう?
答えは「他塾から生徒を引き抜いた」 のです。
もちろん、表立ってするわけではありません。まったくもって向こうの生徒が自分の意思で当塾に
来てくれたのです。この方法は、幸いなことに(他塾からしたら不幸なことに)抜群の結果を出し
たのです。
実際、そ の 塾 は 潰 れ て し ま い ま し た 。10月までは、当塾を抜いて中2生は7人いたそうで
す。そして、この塾は地域の中堅塾であり、この町のNo1塾でした。現在は県下最大の塾が来て
いますので、当塾はさらに厳しい状況におかれています。しかし、それでも生徒数は増え続けてい
ます。この「生徒引き抜き」を大手塾は頻繁に行います。私共がお世話になっている先輩たちも頭
を悩ませています。しかしやり方によっては大手から逆に、引き抜く事も出来るのです。
「生徒」がどこにいるのか?といえば、一番確実なのは「他塾」にいるのです。
これに気付いたとき、私は喜びました。結局、
(これは通塾率と関係しますが)いくら塾の効用を
説いても塾に興味のない生徒しか、残っていない可能性が高いわけです。しかし他塾に行っている
生徒は「塾」に行っているのです。ただ自塾でないだけで…。
そうすると答は簡単です。その生徒たちに、まず自塾に来てもらえばいいのです。
実はこのツールも先程のDM用の返信ハガキを使用しました。販促ツールは後で使い回しが利くよ
うにしておくとよいでしょう。もちろん、この時は、その塾の教務力が落ちている事も、調査済で
した。後は、生徒にハガキを持たせ、いつでもおいでね…と伝えてもらえば、もう十分でした。そ
の塾から7人中4人が私の塾に流れ、残り3人のうち2人はその塾を辞め、最終的に、その塾は3
月で撤退したのです。これは、私共としても大きな教訓を含んでいます。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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他塾を合法的に撤退させる方法(競合対策)
結局、生徒が勝手に口コミを行うのではなく、それを誘発するようなツールを作ってあげる事によ
り、いっそう口コミが広がるわけです。
「話てくれ!!」
「紹介してくれ!!」とだけ言っても効果
はありません。それを誘発する仕組みを考える事です。大手塾などは「図書券」などを上げると言
って、生徒に「友人を売らせる」行為をよくしますが、多くは反感を買い(特に保護者の)失敗に
終わる事が多いようです。
当塾では、図書券などで釣ったりしませんし、全て生徒の自主性に任せています。
しかもツールがあれば、「生徒が塾に来い」と言う必要がないのです。はがきを渡せばいいのです
から。
このように、普段なら生徒がしないような行動でも、ツールで行動の敷居を下げ
ることにより成功したわけです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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簡単売上倍増計画(アップセールスの仕組み)
生 徒 が 増 え て も 利 益 が 出 な け れ ば 意 味 が あ り ま せ ん 。しかし、簡単に利益を上げる方法
があります。それは、顧客単価を上げることです。もともと塾に来る生徒の多くは合格したいから
です。そのため中3生の比率が多いのではないでしょうか?
中3生には塾に対しニーズがあるのです。それに対し、中1,2生にニーズは少ない。つまり、中
1、2年生においては、ウォンツがないと来てくれないのです。
当然、欲求の度合いではニーズの方が強いですから中3生が多くなるわけです。
当塾はこれに早くから気付き、中 3 生 は 中 1 , 2 生 の 2 倍 の 生 徒 数 が 入 れ る よ う に 時 間
割 を 組 替 え ま し た 。また、指導教科も、中1,2生の2教科から中3生のみ4教科とし月謝も
上げました。合格に向けてニーズが高いですので、全員4教科受講します。つまり、一番利益の出
やすい学年を見極めた瞬間に利益が倍増していったのです。
一方で大手塾では中1生∼中3生まで最初から価格体系を変えていない所が多いようです。
もともと科目選択が出来るからでしょうが、基本2、3科目しか中1,2年の時は取らないはず。
それなら最初は、そのコースのみをサービスしておいた方が効率的なはずです。
個人塾は教室数も講師も少ないので、人数がいないコースを開設するのは費用の無駄です。
そのため当塾では中1、2生には安い価格で、かつ最低限のニーズを満たす「2科目」のみ講義し
ています。これにより中3生のクラス数や授業科目を増やす事が出来たのです。
(ただし定期テス
ト前には、全教科行います。もちろん、無料です。
)当塾は科目毎の料金設定は行っておりません
が、このような設定も有効に働くでしょう。
例えば、ある集団授業の大手塾では、1科目のみだと9000円。2科目だと17000円。
3科目だと22000円となり、多く取れば取る程、割安の設定です。しかも能力別コースも併用
しています。
優秀なコースは、基本的に3科目取らないと入れない仕組みです。このため、中1,2生の顧客単
価が(ただでさえ高いのに)非常に高い物になるのです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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簡単売上倍増計画(アップセールスの仕組み)
空椅子を作りたくないのなら「個別指導」が良さそうに思えますが、個別指導は、コマ数で月謝が
決まることが多いのですが、中3生になってコマ数を増やす生徒は意外と少ないのです。
講師は多くの教科を少ないコマ数で指導しなければならず非常に大変です。
これを解決する方法は、コマ数を増やす「切実な理由」を塾側が生徒に教える事です。
ある個別塾では、やはりコース分けをうまく使い、基本的に週1回から、毎日通塾出来るコースへ
の生徒の誘導を行っています。これにより顧客単価が非常に高くなりました。
アップセールスの形は、最終的に一番必要な物をいかに高くサービスするか?という部分にかかり
ます。高いテキストを売ったり、テストを毎月したり…というものではありません。
ここを勘違いすると、授業以外で費用を後で請求する「ヒドイ塾」との評判が起こりますので注意
が必要です。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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生徒が卒業まで滞在する方法(囲い込みの原理)
最近よく聞く話は、「新中1生が入塾しない」というものと、
「中3生になったら生徒が大手塾へ逃
げていく」というものです。
私の高校時代の恩師の1人が、現在個別塾を経営しています。ある日、ふと出会い、話したのです
が、中3生になると多くの生徒が町の大手塾へ流れていくとの 事。先生がおっしゃるには、「1人
で何科目も教える事は出来んので、3科目に絞って授業するが、結局、理社もしている大手に流れ
ていく。
」と。
確かにこれは、実は生徒の流れる大きな原因の1つです。しかし理由は他にもあります。
まず、これらを考える前に生徒と保護者の心理を研究する必要があるのです。
まず生徒側の心理を考えてみましょう。生徒が何故「塾」へ行くのか?
中1,2生の時は友人が行くから…という理由もあるでしょう。しかも「ニーズ」はそれほど強く
はありません。ある意味、
「近い塾」でもいいわけです。しかし3年生になってくると受験が近づ
いて来ます。特に成績の良い子ほど、受験には敏感です。自分の受験する高校の受験者全員
レベルが高いと知っているからです。すると友人が行くから…という理由ではなく、友人に負けな
いため…という理由がそこに出てきます。遠い塾でも、負けないための、つまり合格出来る塾へ行
くわけです。成績は5科目で決定されますので、3科目でなく5科目教える塾に流れるのは、この
ためです。
一方、保護者は「お金を出すスポンサー」です。ス ポ ン サ ー と し て 一 番 考 え る こ と は 、「 無
駄 金 に な ら な い か ? 」 と い う 事 で し ょ う 。 お金を出すなら合格を保証して欲しいのです。
現在、個人塾でも大手塾でも料金は、それほど変わりません。そうなると、名前の通った大手塾に
通わせた方が保護者としては安心出来るのです。つまり、保護者自身が塾の見極め方を知らないた
めに、大手塾へ行かせる…という事で安心を買っていると言ってもかまわないでしょう。
こんな話があります。ある電機メーカーのセールスマンが銀行にあるコンピュータシステムを売り
こみに行った時の話です。銀行の担当者は、「I○Mで決定だ。
」と言うのです。メーカーのセール
スマンは、「当社の製品の方が優れている、価格も安い」と、その理由を詳細に述べました。しか
し決定が覆る事はなかったのです。なぜでしょう?
学習塾経営成功の5つの鉄則
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生徒が卒業まで滞在する方法(囲い込みの原理)
その理由は銀行の担当者の一言が顕著に表しています。それは…
「I○Mを導入し、万一問題があっても上層部は納得してくれる。しかし、そうでない貴社のマシ
ンを導入し、万一問題が起こったら、それみたことか…と言われる」と。つまり、世界No1(当
時)の会社の製品を導入していて問題が起こったら「No1の会社でもこうなのだから、他でも起
こる問題なのだ」と上司は納得するが、自社のマシンが問題を起こしたら「なぜI○Mを導入しな
かったのだ」と言われるという分けです。
これは保護者心理そのものなのです。大手塾へ行かせる事で、安心しているのです。
大手塾の実情があまりに杜撰でヒドクとも、それで万一、子供が受験に失敗しても「あそこでダメ
だったのだから、他でも同じ結果だった…」と納得するわけです。
個人塾が大手塾に打ち勝つには、この部分をキチンと理解しておく必要があります。
これを端的に制度として表している塾もあります。
「合格保証制度」といいます。
つまり、不合格者には月謝全てをお返しする…というものです。私が聞いたところによると、
正直にお返ししているようです。平均年に1人∼2人程度でしょうが…。
しかし利益は圧倒的です。その地元では大手塾をはるかに凌ぐ生徒数を確保しています。
もともと昔から地元に根ざした塾で伝統があるのですが、それでもここまで勝ちぬいている事に、
この制度が一役かっていることは間違いありません。
当塾は合格100%を達成していますので、この制度を作っていませんが、
(ある意味、合格させ
ないと塾ではないと思っていますので)制度化すると非常にインパクトがあるものだと思います。
しかし、当塾が行っているのは、このような保証制度ではありません。
それは、何でしょうか?
学習塾経営成功の5つの鉄則
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生徒が卒業まで滞在する方法(囲い込みの原理)
答は、保護者との人間関係を構築する事です。生徒との人間関係は構築しているでしょうが、
保護者との人間関係を構築している塾は少ないと思われます。せいぜいが年3回程度の面接ではな
いでしょうか?ヒドイ塾になると、入塾時しか塾の先生の顔を見た事がないとおっしゃっていた
保護者の方もいらっしゃいます。
当塾は、毎月1度、学習報告書という形で保護者の方に生徒の学習態度や成績などを全て報告して
います。このことが人間関係を作る基礎になっているのです。週一回、メールもお送りしています。
メールの内容は、時間割変更等の事務連絡が多いのですが、確実に今後メールは増えていきます。
当塾の保護者での普及の割合は携帯も含めると、約9割です。
面接は、保護者が塾に「来る」という手間がかかるため、嫌う保護者の方も多いものです。
私共も中2から中3生へ上がる春休みとか、3年時の夏休みなどに面接を行って来ましたが、
残念ながら2割程度の方は欠席されます。かと言って自分の子供に興味がない分けではありません。
そこで、月一回の報告書を出しているのですが、これが、かなり好評なのです。人的なつながりが
ここで出来あがっているわけです。また、この報告書により日々の学習態度や生徒の日頃の生活態
度、悩みなども分かりますので非常に喜ばれています。
これを顧客接近という言い方も出来るでしょう。塾は生徒だけでなくスポンサーである保護者にも
サービスを行うべきものです。このため、当塾では、兄弟・姉妹割引制度などありませんが、兄弟・
姉妹での通塾率はほぼ100%となっています。これは、塾の決定権を保護者が、かなりの部分握
っているからです。生徒だけでなく保護者も囲い込むことで生徒の滞塾期間だけでなく、兄弟・姉
妹もふくめれば長期間にわたり収入を得ることが出来ます。
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生徒が勝手に増える顧客増殖法(口コミの新手法)
塾は口コミが広がらない業種だと言われます。そのような傾向は確かにあるかも知れませんが、そ
れを放っておくわけにもいきません。多くの塾は紹介システムを作っていますが、
(図書券などで
生徒を釣る方法が多い)生徒にはともかくも、保護者には総スカンを食う事が多いようです。
また、とにかく自塾の特長を出そうと「イベント」を考えられる先生も多いようです。
ある塾の先生からこんなメールを頂きました。
「○○塾では、生徒を連れてのキャンプとか野外活
動をしていて評判がいいようですが、先生の所では何かしていますか?」と。
私の所では、合格後の祝勝会をする程度で特別何もしていないのが現状です。イベントは楽しい物
ですし、確かに差別化につながるかも知れませんが、しかし塾の本業は「授業」です。差別化を出
すのであれば、本業である授業で出さないと意味がありません。
問題は、授業そのものが差別化し難い場合にどうするのか?という事でしょう。
私の所では、一斉授業です。個別指導であれば様々な付加価値をつけることも簡単かも知れません
が、残念ながらそうは行きません。もちろん、指導力には絶対の自信を持っていますが、それはど
の塾さんでも同じでしょうから、そう言う意味では「特別な塾」では無いことになります。
しかし、生徒が生徒を連れてくる。その最大のポイントは「タイミング」です。いつ生徒が塾を考
え出すのか?このタイミングを計り、そこでポンと自塾の生徒の背中を押すと学校で話してくれる
のです。
タイミングは、試験後が最適です。特に試験が終わった直後と、テストが返って来る頃です。
ここで塾へ行っていない生徒は塾に行っている生徒に色々と尋ねます。多くは「塾にでも行こうか
な?」程度のたわいない話しですが、ここをうまく捕らえる事が出来るかどうかが最大のコツです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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生徒が勝手に増える顧客増殖法(口コミの新手法)
このポイントをうまく掴むと、後は簡単です。私の所では今までに紹介した様々なツールを用意し
ていますが、それ以上に普段から塾の運営を生徒に結構任せています。つまり彼らにとって塾はも
う1つのホームルームなのです。自分達の仲間が増えることを一番欲しているのは、実は塾の生徒
たちです。先生のためではなく、自分たちの仲間を増やすというモチベーションがある事が最大の
強みです。ツールは、あくまでも生徒の口コミをしやすくする「触媒」に過ぎません。
塾の運営そのものを生徒に合わせる…生徒が塾運営に参加出来るような形にしておく事で仲間が
増えていくのです。生徒参加側の塾運営こそが、勝手に増える最大の手法です。
今まで紹介したハガキや効果的なチラシの手法はもちろん有効です。これだけで満室になる事でし
ょう。実際、ある個人塾(東北の激戦区)では、私が添削したチラシを10月に配布しそのたった
1回のチラシで12月まで入塾者が続いたそうです。しかし、チラシ・DMなどの手法だけでは、
ある意味で「表面を取り繕っている」に過ぎません。塾そのものが生徒の価値になる仕組みこそが
最大の強みとなるべきです。
学習塾経営成功の5つの鉄則
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最後に
これまで新規生徒獲得に焦点をあてて述べてきました。いかがだったでしょうか?
何故、あえて「新規生徒獲得」に焦点をあてたか?
それは、個人塾の先生方々の状況を察するあまり、今必要な事であると日頃感じていたから
です。個人塾は総合力では、大手塾に負けるかも知れません。しかし、指導力や生徒への想い
は、大手塾など足元にも及ばない素晴らしいものを持っています。
この小冊子をお読みの先生も、素晴らしい指導力をお持ちのはずです。
しかし、その個人塾がどんどん潰れていく…これは、ある意味、生徒にとっても不幸な事です。
本当にいい物が何故残らないのか?私が塾を始めて、最初に感じた事でした。
私の回りの先生方々は皆、熱心に指導され、様々な面において素晴らしいものをお持ちです。
しかし、聞く話は「生徒が減っている」という暗い話ばかり…。これは、大手塾がチラシ、D
M、場合によってはTVCMなどの広告手法を持っているのに対し、個人塾は意外と何も今ま
でして来なかった事が原因だと分かったのです。
いいものであるからには、自信を持って「正々堂々」と広告すればいいのではないか?
こんな気持ちから、私の実践マーケティングはスタートしました。とはいえ、資金がありませ
ん。最後の一発逆転のチラシは、貯金0まであと6万円・・という所で出したものです。
このチラシで成功を収め、その後、様々な実験を繰り返し、今の形が出来あがったのです。
広告は自塾の存在を知ってもらう非常に有効な方法です。いくら良い物でも「知られない限り」
は無意味です。
この小冊子をお読みになられた先生方々が、この機会にぜひとも素晴らしいご自分の塾を生徒
たちに広め、地域社会に貢献される事を願ってやみません。
最後になりましたが、先生の今後のご発展と、ますますのご活躍をお祈り申し上げます。
開進スクール
河野
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代表
優