第七話 間違えられた給料 「連立方程式を使って」 あるコンビニで働くAさんとBさんの給料を 、間違えて計算し、支払ってしまいました。 Aさんは昼間で時給800円、Bさんは夜間で時給が1000円です。2人の1ヶ月に働いた時間も違いま す。給料計算を担当した人は、Aさんが夜間、Bさんが昼間働いたものとしてしまったのです。働い た時間は、2人とも正確に計算され、合計で260時間。そこで、もう一度正しく計算し直し、調整し たら店に12000円のお金が返ってきました。 AさんとBさんの正しい給料の金額は、それぞれいくらだったのでしょうか。 読んでいるだけでも、まったくやっかいな問題です。何か簡単に考えられないでしょうか。 「表」は問題を整理するのに最適な方法 A B 時給 800 1000 時間 x時間 y時間 金額Ⅰ 1000x 800y 金額Ⅱ 800x 1000y 金額Ⅰ(間違えた方)と金額Ⅱ(正しい方)の差が、店に返った 12000 円ですから、 (1000x+800y)=(800x+1000y)+12000 この式を整理し、200x-200y=12000・・① また、時間合計から、x + y= 260・・② ①-②×200 から、-400y=-40000 となり、 y=100、したがってx=160 となります。これに正しい時給をかけて答を求めます。 (答)Aさん 800×160=128000 Bさん 1000×100=100000 128000 円 100000 円 1 その一 数学の中でも「文章題」が苦手、嫌いという人が多くいるように思います。その原因は「文章」 にあるようです。文を読んで理解するというのは、図形のように見て考える、規則にしたがって 計算する分野とは異なります。 そこで、「文」→「表」という発想を用いて、この苦手分野を克服してくれたらと思います。 ☆ パンとジュース 1個 80 円のパンと、1個 120 円のジュースを合わせて 13 個買い、1240 円払いました。それぞれ、 何個ずつ買ったのでしょうか。 パン 単価 ジュース 80円 合計 120円 個数 x個 y個 13個 代金 80x円 120 y円 1240円 この表から連立方程式を作ります。 80x+120y=1240 ・・・① x + y=13 ・・・② ①-②×80 から、40y=200 となり、y=5 (答) パン8個、ジュース5個 ☆ 歩きと自転車 家から時速5kmで友人の家まで歩きました。そこから自転車を借りて、時速20kmで走った ら、5時間後に、55km先の目的地に着いた。 何時間歩き、何時間自転車にのったでしょうか。 歩き 自転車 合計 速さ 5km/時 20km/時 時間 x時間 y時間 5時間 距離 5xkm 20ykm 55km 5x+20y=55・・・① x + y= 5 ・・・② (以下計算は略) 2 (答) 歩き3時間、自転車2時間 その二 ☆ 去年と今年 ある学校の生徒数は、去年180人だった。今年は、男子が15%増え、女子が5%減り、生徒 数が全体で11人増加した。去年の男女それぞれの生徒数を求めなさい。 男子 女子 合計 去年(人) x y 180 今年(人) 1.15x 0.95y 191 1.15x+0.95y=191 ・・・① x + y=180 ・・・② (以下略) (答) 男子100人、女子80人 この問題では、x人が15%増えると、1.15x人となることや、y人が5%へると、0.95y人にな ることなど、比率の知識も必要です。 ☆ 食塩水 25%の食塩水と、10%の食塩水を混ぜ合わせたら、15%の食塩水が300gできた、それ ぞれ何gずつ混ぜたのかを求めなさい。 25% 10% 15% 全体量(g) x y 300 食塩量(g) 0.25x 0.1y 300×0.15 0.25 x+0.1 y=300×0.15 ・・・① x + y=300 ・・・② (以下略) その三 ここまで、文章題を「文章」→「表」というように整理し、解決する問題を紹介してきました。 しかし、このような形をとらない問題もあります。 ☆ 表を使わない問題① ある2けたの自然数がありました。この数は、各位の数の和の4倍より3大きい数です。また、 一の位と十の位を入れ替えた数は、もとの数より9大きくなります。もとの数を求めなさい。 3 (2けたの自然数)=10x + y (各位の数の和) = x + y 例えば23円は、10円玉2個と3円を合わせた金額で、10×2+3とあらわせます。 10x+y=4(x+y)+3 ・・・① 10y+x=10x+y+9 ・・・② (以下略) ①と②を、普通の形(ax+by=c)に変形し、 (答) 23 ☆ 表を使わない問題② ある列車が、長さ 1260mの鉄橋を、渡り始めてから、渡り終わるまで 60 秒かかります。同様に 2010mのトンネルでは 90 秒かかります。この列車の長さと速度を求めなさい。 (列車の速さ)×(時間)=(トンネル・鉄橋 の長さ)+(列車の長さ) 「秒速ymで、長さxmの列車が1260mの鉄橋を60秒で渡る」ことから、 60y=1260+x ・・・① 「秒速 ymで、長さ xmの列車が2010mのトンネルを90秒で抜ける」ことから、 90y=2010+x ・・・② 90y=2010+x ・・・① -) 60y=1260+x ・・・② 30y=750→ y=25 → x=240 (答) 列車の長さ 240m、速さ 25m/秒 第七話「秘伝」 5%の食塩水がありました。ここに水を入れると 濃度4%、重さ200gの食塩水ができました。それ ぞれ、何gずつ混ぜたでしょうか? 5×x+0×y=4×(x+y) ・・・① x+ y=200 ・・・② 4 ①より、x-4y=0 -) ②から、x+ y=200 -5y=-200 したがって、y=40 → x=160 (答)5%食塩水160g、水40g 水を0%の食塩水と考えるのがコツです。 ☆ 「表を使わない問題②」も、注意が必要な問題です。 Ⅰ「トンネルに入り始めてから、出終わるまで」 Ⅱ「トンネルに入り始めてから、出始めるまで」 Ⅲ「トンネルに入り終わってから、出終わるまで」 Ⅳ「トンネルに入り終わってから、出始めるまで」 列車の長さをxm、速さをym/秒とした時に、 (xm)(トンネルの長さ 2010 m )(xm) Ⅰでは 90y=2010+x、Ⅱでは 90y=2010、 Ⅲでは 90y=2010、Ⅳでは 90y=2010-x、というように、式が異なります。文章題は、ちょっ とした言葉の違いが、問題の解決に大きく左右します。文を注意深く読み取る必要があるだけに、 文章題は、やはり難しいものだと言えます。 ここで第七話は終わりますが・・ 本棚に数学と英語の本が並んでいます。数学の本は4冊、英語の本は3冊あり、例えば、 「数・数・英・英・数・数・英」というように並べることもできます。どのような順に並 べることができるでしょうか、全部で何通りあるのかを求めましょう。 数学は「白い本」、英語は「赤い本」と考えてみると、これら7冊がつくる色の配色が全部で何 通りあるのかを聞いています。そこで、英語の「赤い本」に着目すると「赤①、赤②、赤③」が、 例えば2番目、5番目、7番目に並んだとしても、①・②・③の「順列」=3×2×1=6通り は同じ配色となります。 同じ配色を6通り重複して数えているのですから、「赤い本」が何番目になるのかという「順列」 を、この数で割ったものが答です。 (答) 7×6×5/3×2×1 から35通りとなります。 5
© Copyright 2024 ExpyDoc