目 と 健康

第104回 健康セミナー
目と健康
パソコンや携帯電話、
スマートフォンで目を酷使する現代、目にかかる負担は想像以上のようです。
目の病気はかなり進行しないと自覚症状が現れず、
いつの間にか症状が深刻化している場合もあり、
早期発見・早期治療が後の生活の質を大きく左右します。
今回は、住友病院 眼科診療主任部長 五味 文先生に、眼科健診の新しい診断法や治療法をくわしくお話しいただきます。
ときは視覚の情報が基本になって
など、
私たちが日常の行動をする
テレビを 見
本や 新 聞 を 読 む 、
る、人 と会 う 、歩 く 、運 転 を する
白 内 障 手 術によって鮮やかな
色を取り 戻し、転倒予防ができ、
たんだ」と言われます。
かったんだ」
「こんなに色 あせてい
は 一 様 に「 こんなに 見 え ていな
白 内 障で す が、術 後の患 者 さん
伴い、誰でも 必 ずなるといわれる
本 日は、眼 科 医の立 場 から 実
際の 健 診 で わ か るこ とや 、どん
以上に重要な感覚器官です。
ま す 。視 覚は私たちが思っている
遅 ら せ る 可 能 性 が 出 て き てい
など加 齢で起こる病 気の進 行 を
パーキンソン病やアルツハイマー病
症の発生を抑制できる可能性や、
その後ろにレンズ( 水 晶 体 )が あ
るというわけです。
ているときは黄 斑 を 使って見てい
側には脈 絡 膜 という 血 管に富ん
「 見た」と実 感しま す 。網 膜の裏
り 、視 神 経 となって脳に伝 わって
できていて、視 神 経 乳 頭で束にな
視 細 胞の数 も 減ってくるので、
たとえば暗いところでは見えにく
縮瞳化、
もう一つは白内障です。
因の一つは 瞳の開 き が 悪 く なる
眼 底 写 真 を 撮ったときに写 り
が 悪 く なることが あ り ま す 。要
代 後 半から。水
ことで起こります。硝子体の濁り
高齢者
眼科健診の勧め 〜こんなに見つかる目の病気
演 題
いま す 。目が見 えにくいというこ
安全にかつスムーズに歩行、運動、
な 治 療 をしているかをお 話 しし
先生
とは、情 報が得 られにくい、行 動
運 転( 動 体 視 力の向 上 )
ができる
ます。
五味 文
に制 限 が あるということにな り
ようになれば、
より積極的に外と
住友病院 眼科診療主任部長
ます 。
の関 わ り 合いがで き ま す 。認 知
情報の約 %は目から
高 齢 化 社 会にあっては、加 齢に
図1 目の構造
加齢に伴う目の変化
り 、光の屈 折 を 調 節 して網 膜 上
に焦点を合わせます。
レンズの後ろはゼリーのような
もので 満 たさ れた 硝 子 体で す 。
硝子体
図 のように、
加齢に伴って、
さ
まざまな変化が起こってきます。
だ組織があります。
眼で、早い人で
視神経は内側に写っているので、
こ
による飛 蚊 症の頻 度が増 えたり
後部硝子体剥離
目は思っている以上に大事な感覚器官です
目のしくみと働き
目は視 覚 情 報 を とら え 、脳に
伝 える器 官です( 図 )。目の一
番 前にあるのは角 膜( 透 明 )
で角
一番奥の裏面を張っているのが網
チン小帯
膜で、実際には網膜でものを見て
膜 を 通して見 える茶 色い膜が虹
彩で、中 央 に 瞳 孔 が あ り ま す 。
黄斑
図2 正常な目の眼底写真
図3 加齢に伴う目の変化
黄 斑
視細胞数の減少、配列ムラ
います。網膜の表面は神経線維で
図 は正 常な目の眼 底 写 真で
す。写真で最初に目につくのは視
晶 体の厚みが変わらなくなって、
の写 真 は 右 目の映 像です 。黄 斑
します。
若年者
硝子体液化
1
視神経乳頭
視神経
水晶体
く なり ま す 。一 番 顕 著 なのは老
神 経 乳 頭です 。ここから 視 神 経
は必 ず 真 正 面にき ま す 。角 膜 と
が 眼 球の外へ出ていくのです が、 ピントを 合 わせる力が低 下 する
レンズがピントを合わせる屈 折の
目の疾 患は中 高 年に多 く、 、
、 歳代がピークです。多いのは
白 内 障です が、緑 内 障 も 増 えて
効 果を持つのですが、ものを一 番
はっき り と 見 よ う と す ると きに
)。
メラニン色素の減少
脈絡膜菲薄化
30
いま す( 図
白内障
水晶体が厚くなり、
黄色化
80
中心動静脈
2
関西労健 VOL90
3
60
角膜内皮細胞の減少、
不均一化
縮瞳化
2
は黄斑で見ています。視線を向け
4
網膜
角膜
3
70
80
脈絡膜
虹彩
視神経
浅前房化
テーマ
強膜
外眼筋
毛様体
早期発見の重要性
です。成人病は、
本人が症状を自
覚するより前に眼底、
とくに網膜
の血 管に変 化 が 出 ることが 多い
えにくくなっていることはわかって
低 減で き 、●全 身 的 な 病 気 を 治
●投 薬、
運 動、食 事
早 期 発 見は
制 限 などで病 気のリスク要 因 を
からです。
いても、「老眼かな」と見過ごして
すきっかけになるので、●両目の眼
目は二つあるので、どちらかが
悪くなっても気づかないうちに進
いた、
たまたま片 目をつぶったら、
底 検 査 を きっち り 受 けてほしい
行 している 場 合 が あ り ま す 。見
開いているほうの目が見 えていな
と思います。
らよく 聞 き ま す 。気づいていても
健診における眼科検査
いのに気づいたなどは患 者さんか
いな くても 、眼 科へ行っていない、
健診を受けていない人は結構いる
ようです。
厚生労働省 平成20年「患者調査」より
多く行われているのが、視力検
査、
眼圧検査と眼底写真です。
0
視 力や視 野の障 害は進んでし
ま う と 不 可 逆 性で、多 くは元に
早い人では40歳代から、80歳代になるとほとんどの人に
視 力 検 査は視 力 低 下の有 無の
チェックですが、
厳密なものではあ
3.8%
戻 らないので、早 く 見つけること
白内障
りません。眼科の病院では矯正レ
6位
が大 事です 。視 力の大 幅 な 低 下
40歳代以上で近視が強い人は要注意
ンズという、
その人に一番合ったレ
7.8%
ンズで測る矯 正 視 力になり ま す
高度近視
期 発 見 と 治 療のタイミングを 見
5位
や 失 明への進 行 を 防 ぐ には 、早
50歳代以降に発症、60〜70歳代(とくに男性)
に多い
が、
普通の健診ではその人が持参
9.1%
極 め た 医 学 的 処 置 が 重 要 にな
加齢黄斑変性
のコンタクトレンズやメガネまたは
4位
人数(千人)
4000〜8000人に1人
ります。
眼 圧 検 査 は 緑 内 障のチェック
13.7%
裸眼で測るので視力が落ちていて
の検査から見つかることは日常的
網膜色素変性症
もわからないかもしれません。し
で す 。眼 圧 が 高いと 緑 内 障の可
位は網 膜 色 素 変 性 症 。これ
は生まれながらにして素因を持っ
3位
飛蚊症
600
近視、遠視、乱視を眼科での診察時に適切なレンズで矯正して
得られる最大の視力。目に病気がなければ通常誰でも1.0以上。
400
矯正視力
糖尿病患者の約20%
0歳 1〜4 5〜9 〜14 〜19 〜24 〜29 〜34 〜39 〜44 〜49 〜54 〜59 〜64 〜69 〜74 〜79 〜84 〜89 以上
10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90歳
19.1%
そ れだ けでは あ り ま せん。眼
底 検 査は全 身 疾 患の早 期 発 見の
能 性 が 出てき ま す が、眼 圧 が 低
ている病気です。
100
糖尿病網膜症
か し 、片 目 ずつ検 査 を す ること
いからといって心 配はないという
視神経乳頭陥凹拡大 ● 網膜神経線維束欠損
●
網膜の視細胞が産生する老廃物。加齢により処理されなくなった
もの。加齢黄斑変性症の前駆病変として重要視されている。
200
2位
きっか け に な るこ と が 多いので
ことでは あ り ま せん。実 際 は 正
位は加 齢 黄 斑 変 性 。日 本 人
では圧倒的に男性の患者が多く、
中が見 えにくい症 状 を きたすこ
●
網膜血管の走行・形態異常の有無
網膜出血、
白斑の有無
●
ドルーゼン
300
500
緑内障
40歳以上では20人に1人
す 。高 血 圧 、糖 尿 病 、高 脂 血 症 、 で、見 え 方 をチェックする機 会に
常 眼 圧 緑 内 障の人のほうが多い
女性の 〜 倍にあたります。
はなります。
わ けで、あ く まで も 眼 圧の高い
身疾患の有無をチェックするだけ
とがあ り ま す 。高 度な 近 視から
白 内 障でも、治 療のタイミング
を 外 せば 視 力 低 下 、視 覚 障 害の
図4 年齢別患者数
図6 日本の失明原因ランキング
明るい部屋や白い面をバックに黒い点や糸くず状の形が浮遊して
いるように感じる症状。硝子体のにごりや眼底出血により起こる。
20.7%
白内障
緑内障
目の疾患全体
1位
図5 健診での眼底写真の評価
図7 視覚障害の原因疾患別割合(男女)
黄斑上膜、
黄斑円孔、
加齢黄斑変性、
中心性漿液性脈結網膜症、
黄斑浮腫、
ドルーゼンの沈着など
● 初期では眼底写真での判定は困難
Yamada M,et al. Ophthalmic Epidemiolosy 2010
高血圧性変化、動脈硬化性変化、糖尿病網膜症
緑内障
緑内障
糖尿病網膜症
変性近視
加齢黄斑変性
白内障
その他
脳 卒 中 、心 臓 病 などの疾 病 が 目
人 をスクリーニングするためのも
位は高 度 近 視 。近 視が非 常
に強い場合は「網脈絡膜変性」と
のです 。
)、緑 内 障や 白 内
ではな く( 図
くる合併症は女性に多いものです
位は白内障。治療が進んで、
手 術で治る病 気 として知 られて
比 較 してどれだ け 変 化 が 起こっ (図
たかを見てとれるので、継 時 的に
受けていただくことが大事です。
います。失明する可能性は少ない
のですが、白内障の手術をする前
に認 知 症が進んでしまったとか、
)
症 を 発 症 するといわれていま す
原因になります。
です 。
ので、定 期 的 な 眼 底 検 査 が 重 要
ます 。
うケースも 少なくないと思ってい
を 進 ませる悪 循 環に入ってし ま
得られなかった人もあり、
認知症
タイミングよく 手 術 する機 会 が
失明理由のランキング
(図
)。
障の程 度 も わかり ま す 。過 去 と
眼 底 写 真 を 撮 ることにより 、 いって、黄 斑 部が萎 縮してくる場
糖尿病、
高血圧、
動脈硬化など全
合があり、黄斑変性と同様、真ん
3
位は緑 内 障です 。 歳 以 上
では 人に 人が罹 患し、
ドック
かります。
でも 必 ず 一 定 以 上の確 立で見つ
40
位は糖 尿 病 網 膜 症 。糖 尿 病
を 有 す る 人の % 程 度 が 網 膜
20
4
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5
7
6
6
1
女性
男性
2
3
4
5
5
1
20
2
黄斑疾患
●
)。
います。
で治療で遅らせたり、
進行させな
開放隅角緑内障はシュレム管の
フィルター( 線 維 柱 帯 )
の目 詰 ま
(図
り 、多 くは開 放 隅 角 緑 内 障です
早期発見&早期治療がQOLを左右します
気づかずに視野が欠けていく緑内障
「 視 力はあっても 視 野が狭い」
可能性に、
よくよく注意していた
い努力ができます。
常は
〜 ㎜ の眼 圧が突 然
作 を 起こすことがあ り ま す 。通
す 。隅 角 が 完 全に塞 がれると発
閉塞隅角緑内障は隅角が狭く
な り 、閉 塞 して 起 こるタイプで
りで起こり 、
ゆっく り 進 行 するの
に眼 圧が上がることで視 神 経が
だきたいです。
上 昇 、ま たは
緑 内 障は眼い圧きの
ち
その人の目の閾 値( 限 界 値 )以上
障 害されて視 野が欠けてしま う
病 気です 。進 行 性の病 気です か
ら早く見つけることが大事です。
「開放隅角」と「閉塞隅角」
眼 圧 は 房 水の循 環によって 決
まり ま す 。房 水は水 晶 体 を 支 え
う 状 態が一 晩 続 くと失 明に近い
緑内障の症状
水 晶 体の間 を 流 れ、栄 養や 酸 素
状態になることもあります。
〜 ㎜ まで上がります。そうい
初期症状は視野検査で少し感
度 が 落 ちているかな という 程 度
を 供 給 、老 廃 物 を 受 け 取った り
ふっと横から入ってきた人を見落
て、上 方の信 号 を 見 落としたり、
ういう 人 が 知 ら ず に 運 転 を し
視 力はそんなに落 ちないので、そ
視野狭窄を起こします。しかし、
が担っていた視 野が狭 くなるので
害 さ れて 脱 落 す ると、その線 維
値であっても、視 神 経の線 維が障
緑 内 障 には「 開 放 隅 角 緑 内
障 」と「 閉 塞 隅 角 緑 内 障 」が あ
ります。
れ 、緑 内 障 にな るリスクが 高 ま
圧が高 く なって視 神 経が障 害さ
何 らかの要 因で流れが滞ると眼
眼 外の血 管へ流 れていき ま す 。
見えたりします。目がちゃんと見
ます。照明を見ると虹の輪っかが
になっているので見 えにく くなり
腫を起こすと、すりガラスのよう
りません。眼圧が上がり黒目が浮
を 経てシュレム管から排 出され、 で病院へ運ばれることも少なくあ
間にある隅 角に流 れ、繊 維 柱 帯
目の疾患かを判断できます。
ている毛 様 体でつくられ、角 膜と
ですが、
だんだん視 野が狭 くなっ
し ま す 。その 後 、角 膜 と 虹 彩の
として起こった事故が報告されて
よ り 的 確に判 断 す るために、
線 維 が 欠 損 しているかどうかを
どの立体的な構造をとらえること
「眼科の医師に相談」とあるよう
また、
風邪薬などの注意書きに
「 緑 内 障の あ る 人 は 飲 め ない」
ください。
て線維が減っているので、
どの辺り
拡大している方向(図
わかり ま す 。視 神 経 乳 頭 陥 凹が
の厚みが正 常より 薄 く なるのが
は視 神 経 乳 頭の周りの神 経 線 維
これまで眼 底 写 真 などの平 面の
網膜、
網膜の裏の脈絡膜まで細か
く見ることができます。
虹彩
虹彩
水晶体
水晶体
えているかどうかで脳外科疾患か
高 齢 にな る と 水 晶 体 が 硬 く
なって虹 彩が押され、挟 隅 角 ある
くことになります。
OCTの飛躍的進歩
ができます( 図
このOCT(光干渉断層計)と
いう装置(図 )
は、
網膜の厚みな
科で散 瞳 検 査をした後に発 作を
に、も と も と 閉 塞 隅 角の人 は あ
で 視 野の欠 損 が 出て きているか
)
に向かっ
る種の薬 剤で緑 内 障 発 作が誘 発
もわかります。
初 期は眼 底 写 真での判 定は難
しいところはありますが、神経線
情 報しかなかったのが、O C Tで
上がり ました。
「 あごをのせて
OCTは 年程前に開発され
ま したが、近 年 飛 躍 的に精 度 が
維の欠 損の有 無 を 見るために視
見ると黄斑の中心部のくぼみ、
視
秒ほど」の検 査で所 見が出ます。
神経乳頭の変化を見ます。
)。
神 経 乳 頭 陥凹のへこみ、 層 ある
注意です(図
検 診で「 視 神 経 乳 頭の陥 凹 拡
大の疑い」という 所 見がつくと要
眼底検査の所見
されることがあります。
)。緑 内 障 眼で
起こすこともあるので気をつけて
作 を 起こすことがあ り ま す 。眼
き、
水晶体が厚くなって緑内障発
書や細かい作業をすると、
瞳が開
これ まで緑 内 障 といわれたこ
とのない人も、
夜、
暗いところで読
てきます。
視野の検査、
OCT検査で見てい
ていき ま す( 図
)。眼 圧が正 常
40
緑 内 障 発 作は目の救 急 疾 患で
す。目 も 頭 も 痛 くなるので、救 急
Hg
角膜
シュレム管
シュレム管
水晶体
毛様体
線維荘帯
角膜
線維柱帯
末期
中期
20
いは閉 塞 隅 角になる頻 度が増 え
Hg
角膜
初期
正常
9
10
50
線維柱帯 虹彩
シュレム管
6
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7
2
図8 緑内障の症状
図10 眼底検査による判定
図12 網膜の断層図
13
10
図9 開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障
図11 OCT
(光干渉断層計)
12
閉塞隅角
緑内障
解放隅角
緑内障
11
20
視神経乳頭陥凹拡大
正常
組織切片に近い生体の断層図
8
10
視野検査
結果
視野
イメージ
●健 診で 最 も 陽 性
(要
緑内障
精 査 対 象 )にな りや すい疾 患で
が出ているので、最 後 まで目 薬で
緑 内 障 と判 断されたら、ま ず
眼圧を下げます。
いろいろな目薬
緑内障の治療 す 。視 神 経 乳 頭のちょっとした形
コントロールできる機 会が増 えて
OCTが有用な疾患は緑内障
と黄斑疾患です。
の変 化や神 経 線 維 束の欠 損がは
います。
の変 化が進んでいる場 合は、
さら
じまっているかどうかなどがよく
●中 心のくぼみがな
黄斑疾患
く なったり 、変 形 しているのが一
に下 げるために手 術が必 要にな
わかります。
目でわかります。
ることもあります。
点 眼で眼 圧 を 下 げ き れなかっ
た 場 合や 眼 圧は下 がっても 視 野
どちらも 早 期 発 見、早 期 治 療
が 極 めて 大 切 なので 、発 見 には
O C T を 使 うのが有 効です 。
突然、
硝子体出血を起こす糖尿病網膜症
不 安 度は計 り 知れないものがあ
とが多いので、患者さんにとっての
に糖 尿 病 網 膜 症は両 眼に出るこ
リスクは少なくありません。とく
高血圧、
動脈硬化など
糖尿病、
全身疾患が視力に影響を及ぼす
併せて、糖 尿 病 、高 血 圧 、動 脈
硬 化 、高 脂 血 症 など原 疾 患の治
なります。
でスクリーニングすることが鍵に
とって非 常に大 きなことで、健 診
明 者 を 救 う ということは社 会に
%が救われると出ています。失
ると思います。
梗塞のリスクを軽減できます。
療をはじめることで脳卒中、
心筋
疫 学 調 査では、 年 未 満の頻
度で眼 底チェックを してお け ば、
糖 尿 病 網 膜 症 によ る 失 明 者 の
それが網 膜 静 脈 分 枝 閉 塞 症( 図
軽度〜高度
な視力低下
歳 代の男 性に多 く
ある人は、
かなりの確率で動脈硬
黄斑浮腫、網膜細動脈瘤、
硬性白斑
〜
からだの中の血 管 を 直に見て
取 れるのは 眼 底 だ けで す 。色 が
化性変化を伴っています。出血が
糖尿病
黄斑浮腫
)
で
薄く細めなのが動脈、
太めで色が
黄 斑 部にかかると黄 斑 浮 腫を起
ができ ま す 。放ってお く と、目の
高度
視力低下
眼底写真の所見
濃いのが静脈です。高血圧性の変
こし、視 力がガクンと落 ちて気が
糖尿病と新生血管
糖 尿 病があっても 必 ず 糖 尿 病
網 膜 症になるわけではあ り ませ
力を落としてしまいます。
す。新生血管は破れやすく、
むく
眼底を見ると、初期は「小さな
出血や硬い白斑」からはじまって、
網膜新生血管、硝子体出血、
網膜剥離、新生血管緑内障
図15 網膜静脈分枝閉塞症
図16 糖尿病網膜症の病期と所見
見 られ ま す 。高 血 圧や 糖 尿 病の
化、
動脈硬化性の変化、
糖尿病網
つきます。
)。シェ
膜 症の有 無などを 網 膜の血 管の
変 化で観 察 しま す( 図
として、 〜 の
イエ分類(Hは血圧、Sは動脈硬
化 。正 常を
段階)
やキースワグナー 分 類(血
段
ん。血糖コントロールが良ければ、
圧 と 動 脈 硬 化 を ま とめて
階)
で判定します。
です。
網膜症を発症しないことが多いの
●血 圧が高いと
高血圧性変化
血管が硬く、
細くなります。進行
●血 管の硬さ
動脈硬化性変化
を 交 叉 現 象で見 ま す 。目の血 管
みをつく りやすいので、突 然 破れ
前 増 殖にはシミのよう な 軟 性 白
糖 尿 病になると、ま ず 目の毛
細 血 管が障 害され、十 分 な 酸 素
は静 脈 と動 脈が必 ず 交 叉してい
て硝 子 体 出 血 を 起こして真っ暗
斑 が 生 じ、新 生 血 管 を 呼び込 む
)。
ます。たとえば動脈が硬くなって
になったり、目の血管が増 殖 膜を
虚血が起きているサインになりま
(図
いると静 脈 を 抑 えるので、詰 まっ
つくって網膜剥離(牽引性網膜剥
中でどんどん網目状に張ってきま
たところを 起 点 としてむ くみや
塊)
が見られるようになり ます 。
すると出血や白斑(たんぱく質の
図14 高血圧性変化と動脈硬化性変化
す 。増 殖 型になると異 常 な血 管
増殖
●
離 )を 起こしてしまいま す 。こう
なし
●
なる前にくい止めたいものです。
●
す 。それを 補 う ために新 生 血 管
●
が 網 膜に届 け られな く な り ま
動脈硬化性変化
極 端に血圧が高 くなると視 神 経
●
乳 頭の浮 腫( 腫れ)を 起こして視
●
出 血 を 起こすことが あ り ま す 。
網膜細動脈瘤、
点状・
しみ状出血、硬性白斑
高血圧性変化
病 気の 進 行 具 合 は 単 純 型▼
前 増 殖 型▼増 殖 型 にな り ま す
●
動脈の狭細化・直線化
動脈の口径不動
出血・白斑
乳頭浮腫
●
57歳男性
64歳男性
自覚症状
60
Scheie分類
(H 1-4,S 1-4)
K-W分類
(0,Ⅰ,Ⅱa,Ⅱb,Ⅲ,Ⅳ)
●
増殖糖尿病
網膜症
50
8
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9
5
血管反射の亢進
公叉現象
動線動脈
銀線動脈
●
16
15
3
1
前増殖糖尿病網膜症
単純糖尿病網膜症
16
図13 OCTによる乳頭周囲神経線維層の評価
静脈走行異常、網膜最小血管異常、
軽度
軟性
(綿花様)
白斑
視力低下
前増殖
14
4
6
眼底所見
単純
0
起こします。
が 張ってきて出 血や 網 膜 剥 離 を
療 が 行 われていま す 。糖 尿 病 が
頃 は 黄 斑 浮 腫にもいろいろな 治
の治療が必要になってきます。
あ れば 必 ず 眼 底 チェックを 受 け
糖尿病網膜症では黄斑に浮腫
を 生 じ る こ と も あ り ま す が 、 て、
目の中に変化を起こす前から
O C T 画 像で診 断でき ま す 。近
加齢黄斑変性は加齢により 網
膜の中 心 部である黄 斑に障 害が
く信号を送るための構造になって
でいて、
ここだけ血管があ り ませ
見たいものが見えない加齢黄斑変性
生じて起こります。
います。
にいえば図 のようになります。
がゆがんで見えることです。極端
黄 斑が悪 く なると、ま ず 最 初
に気づくのは、見ようとしたもの
加齢黄斑変性の症状
ません。
ればどうしても ・ の視力は出
ま う 箇 所で、中 心 窩に障 害 が あ
眼 底の中で占める割 合は小さ
くても 大 き く 視 力 が 変 わってし
ん。目の奥にある視細胞に効率よ
ものの形と色
私たちは黄斑で、
を 見 分 けていま す( 図 )。黄 斑
の真ん中 を 中 心 窩 といい、くぼん
ついたよ うにぼや け る、濃 く なっ
「 窓 枠 がゆがんで見 え る 」
「 畳の
縁がゆがんで見える」で気づく人
も あ り ま すが、進 行 すると影が
まっすぐのものが
ゆがんで見える
真ん中がぼやけて見える
中心の影が濃くなって
拡大する
黄斑疾患の場合
て広がる、
見ようとしても見えな
いという経過をたどります。
いろいろな黄斑異常
黄 斑の病 気には加 齢 黄 斑 変 性
以外 も あ り ま す( 図 )。たとえ
図19 加齢黄斑変性以外の黄斑疾患
さらに進行すると…
正常な見え方
ば、
黄斑円孔や黄斑上膜です。
加 齢に伴って硝 子 体に収 縮 が
起こります。黄斑部の網膜が引っ
張られ、孔が開いてしまうのが黄
斑 円 孔 、硝 子 体の一 部が膜 を 張
網膜そのものが腫れている。
膿包をつくっている。網膜剥
離している
(浮いている)
。
進行すると…
通常の見え方
黄斑が悪くなると…
網膜そのものが腫れている。
膿包をつくっている。網膜剥
離している
(浮いている)
。
るのが黄斑上膜(前膜)
で、
誰でも
なり得ます。黄斑上膜は、 〜
す。
「ゆがみ」
の症状で気づくこと
が多いようですが、OCTで見る
率で見つかります。
と 症 状のない人にも かな りの確
それ以外には、
目の血管の異常
によるむくみで、
黄斑が腫れたり
水が溜まったりする黄斑浮腫(糖
尿 病 網 膜 症や 網 膜 静 脈 分 枝 閉
塞症の合併症)
があります。
硝子体が原因の黄斑円孔や黄
斑上膜は手術での治療になり、
浮
黄斑浮腫(網膜静脈分枝閉塞症)
黄斑浮腫(糖尿病)
図17 黄斑の構造
60
腫の場 合は浮 腫 を 取るための薬
黄斑の前に膜が張っている。
中心窩
歳 代が発 見されやすい適 齢 期で
40
18
17
脈絡膜
19
1
0
穴が開いていて、硝子体の
ゼリーの膜が一部見えている。
網膜
10
11 関西労健 VOL90
黄斑上膜
黄斑円孔
黄斑
角膜
図18 加齢黄斑変性の症状
10cm四方の方眼紙から
約30cm離れ、片目を閉じ
て中央の黒い点を見つめ、
マス目が波打ったり、
ゆがん
だり欠けていないかをチェッ
クする。
図20 アムスラーチャートの異常
物 治 療や、
レーザーによって異 常
できて起こります(図
異常な血管(脈絡膜新生血管)
が
)。
な血 管 を 潰 していくのが 基 本に
なります。
糖 尿 病 網 膜 症や 網 膜 静 脈 閉
塞 症では 網 膜に虚 血 が 起こって
目 ずつで見て、真ん中の点や網 目
血を起こすので、
比較的に治療し
血 管が破れると網 膜の前 面に出
新 生 血 管 が 張って き ま す 。新 生
の格 子がちゃんと見 えているか、
やすいのですが、加齢黄斑変性は
自 己チェックの最 初の一 歩はア
ムスラーチャート( 図 )
です 。片
ちょっとした変化がないかを確認
網 膜の神 経の裏 側に新 生 血 管が
療 を す るのは 難 し かったので す
でき ま す 。網 膜 を 傷つけ ずに治
するものです 。 ㎝四方の方 眼 紙
きます 。
でわかるので、自 宅でもチェックで
4位
が、最 近はいろいろな薬が出てき
4位
ています。
4位
加 齢 黄 斑 変 性は加 齢と名がつ
いているので、ま だ ま だ 先の話 と
高度近視
思 う か も しれ ま せんが、中 心 性
す 。O C Tで治 療の効 果が判 定
2位
OCTによる所見
目に注 射して新 生血管を退 縮さ
て 喫 煙 す る 人 はリスクが 高いの
できます(図
5位
漿 液 性 脈 絡 網 膜 症 という 、 〜
O C Tで見ると、脈 絡 膜 側 か
ら生じた新 生血管がわかり ます
万人)
ですが、
日 本やアジア
性に多 く なり ま す 。 歳 以 上の
せる治療で、
進行を止めることが
で、ま ず 禁 煙 を 勧めま す 。ドルー
i P S 細 胞 治 療は、患 者さん
の皮 膚 細 胞からi P S 細 胞 をつ
く り 、網 膜 色 素 上 皮 細 胞 という
網 膜と脈 絡 膜の間にある細 胞を
つく り ま す 。手 術で新 生 血 管 を
抜いた 後 、i P Sからつくった網
年経ったと
膜 色 素 上 皮 細 胞を移 植 するとい
う治療で、 例目が
6位
歳 代で同じような病 態になる
人がいま す 。働 き 盛 りのストレス
が 高い人 、た ばこを 吸 う 人 に 多
)。脈 絡 膜 新 生血管が網 膜
溜 ま り 、網 膜 剥 離は網 膜の下 側
れ ま す 。浮 腫 は 網 膜の中に水 が
や浮腫を起こしているのも見て取
の裏 側で出 血 した り 、網 膜 剥 離
く、
将来的には加齢黄斑変性につ ( 図
ながったりします。
「萎縮型」と「滲出型」
加 齢 黄 斑 変 性は欧 米ではとて
も多い病気で、
成人の中途失明の
加 齢 黄 斑 変 性には萎 縮( ドラ に水が溜まる状態をいいます。
イ)型と滲出(ウェット)型があり、
組織が萎縮して弱っている萎縮型
第
位(推
は、
なかなか治せません。滲 出 型
定
位です。日本では第
は黄 斑 部の後ろにある脈 絡 膜に
でも患者数が増えてきています。 坑 V E G F 療 法 ●V E G F
( 血 管 内 皮 増 殖 因 子 )阻 害 剤 を
欧米では女性に多く、
日本では男
位
で き ま す 。現 在の治 療の主 流で
視 覚 障 害では、日 本でも 第
)。男 性で血 圧が高 く
ゼンと呼ばれる網 膜 下の沈 着 物
滲出型加齢黄斑変性の治療です。
●はじ
i P S 細 胞 治 療( 図 )
めて人にiPS細胞を使ったのが
です( 図
が加齢黄斑変性発症に関与する
)。
といわれていま すが、
日 本 人では
ドルーゼンを認めない人も少なく
ありません。
加齢黄斑変性の治療
現 在の 治 療の 対 象 は 滲 出 型
( 脈 絡 膜 新 生 血 管 を 伴 う )加 齢
)。
いうところです。
黄 斑 変 性 に な り ま す( 図
で き る だ け 黄 斑 部 網 膜 を 傷つ
現時点では
iPS細胞治療は、
移 植 までの時 間や費 用がかかり
網 膜はほぼ透 明に近い色です
が、黄 斑だけが黄 色い色 素を持っ
黄斑の黄色い理由
ますが今後の進歩が待たれます。
け るこ と な く 新 生 血 管 を 治 療
しま す 。
レー ザーによる 治 療 ●新 生血
管が黄 斑から離れた場 所にある
場 合にはレーザー光 線で病 変 を
光線力学療法 ●光感受性物質
と弱レーザーを 組み合わせた 治
ていま す 。黄 斑に黄 色の色 素 が
凝固します。
療で、
黄斑部にも照射できます。
黄斑変性
図22 OCTによる脈絡膜新生血管
図24 滲出型AMD(加齢黄斑変性)
に対する治療
図26 加齢黄斑変性に対するiPS細胞治療の応用
5位
脈絡膜
脈絡膜
iPS細胞由来
RPEシート移植
3位
脈絡膜新生血管
ブルッフ膜
滲出液
網膜色素上皮細胞
新生血管抜去術
●
網膜
脈絡膜新生血管
正常の黄斑部
●
光線力学療法
(承認2003年)
抗VEGF療法
(承認2008、2009、2012年)
現在も新たな薬剤が開発中
●
網膜色素上皮(RPE)
細胞障害
1位
図21 萎縮型加齢黄斑変性と滲出型加齢黄斑変性
図23 年齢別に見た主な視覚障害の原因
図25 加齢黄斑変性の治療前後の眼底ならびにOCT所見
色素変性症
黄斑部に出血や脂質の
沈着が見られる
3位
黄斑部が薄くなって
弱っている
1位
矯正視力1.0
2位
滲出(ウェット)型
糖尿病網膜症
萎縮(ドライ)型
矯正視力0.3
70 1
12
13 関西労健 VOL90
1
1位
21
4
26
25
1
2位
30
24
3位
20
75
緑内障
10
2
23
18〜59歳 60〜74歳 75歳以上
年齢
22
40
黄斑部網膜
保ち、
酸化ストレスを減らす効果
素があることで黄 斑の健 常 性 を
積しやすいところです 。黄 色い色
だの中で最 も 酸 化ストレスを 蓄
いるかと思いま す 。黄 斑は、から
ストレスを 起こすと話 題になって
胞にダメージを与 えるとか、酸 化
す。ブルーライトが目に入ると細
波 長の光 をブロックして く れ ま
あるのは重要で、黄色い色素は短
の確かなエビデンスはありません。
日本人でのサプリメントの有効性
やすい人 とそ うでない人がいて、
いく成分ですが、目の中に沈着し
れていま す 。加 齢 とともに減って
チンは黄 色い色 素をつくるといわ
成分です。
ルテインやアスタキサン
いま 市 販されているサプリメン
トの多 くは黄 色の色 素 をつくる
となっています。
得 ま す が、同 じ 年 齢でも 程 度に
白 内 障は水 晶 体が濁る病 気
で す 。加 齢 によって 誰 で も な り
よって 硬 く 黄 色 く なって き ま す
いもので す が 、水 晶 体 も 加 齢 に
若いときの水 晶 体はほんとう
にきれいで、網 膜と同 様に瑞々し
黄 色 くなるのは、黄 斑への酸 化ス
進 行 を 遅らせる可 能 性のある
点 眼 治 療 も あ り ま すが、根 本 的
波長が短いため光が散乱しやすく、
まぶしさや像のにじみ
につながる。目のピント調節機能に負担がかかる、眼精疲
労につながる、
などが話題になっている。
細胞配列の乱れ 混濁
ブルーライト
核の膨隆
レンズが濁って見づらくなる白内障
歳
は個 人 差 が あ り ま す 。 〜
)。ただ、
年齢的にある程度
トレスを 減 ら す 効 果 が あ るとい
(図
す 。水 晶 体の濁 り 方のパターンに
代 も あ る し 、先 天 性 も あ り ま
も 違いが あ り ま す 。糖 尿 病やア
われています。
で対 向 車のライトがとても まぶ
白内障の初期症状は「かすむ」
「 まぶしい」が 代 表 的 。車の運 転
白内障の症状
トピー性 皮 膚 炎があると合 併し
や す く 、あ る 種の薬( 特にステロ
イド )
では 白 内 障や 緑 内 障 を 促
進 し た り し ま す 。いろいろな 要
素で見 えにくさの進 行 具 合は変
わるので、手 術の時 期 も 人 そ れ
ぞれです 。
「二重 、
三重に見 える」、
「近視化
に治 すのは手 術になり ます 。濁っ
図27 水晶体の加齢による変化
硝子体
ある程度の年齢になってから高度な視力障害を起こすこと。
歳 く らいの黄 色さ)が主 流
角膜のカーブ、
目の長さを測定し、
流は単 焦 点レンズです 。術 前に、
で調 整 す ることができ ま す 。主
白 内 障の手 術で、も と も と 遠
視、近視がある場合は眼内レンズ
です。
ズ(
挿 入 す るレンズは 透 明ではな
く、
わずかに着 色した黄 色いレン
図28 白内障手術のステップ
白内障治療の進歩
する」ようになり ま す 。老 眼だっ
た 水 晶 体 を 除 去 して眼 内レンズ
眼内レンズを
挿入します
し く 感 じることが あ り ま す 。水
たのに最 近 近 くが見 えるように
( 人工水 晶 体 )
に入れ替 え ま す 。
な器 具 を 挿 入し濁った水 晶 体 を
濁った水晶体を
砕いて吸い出します
眼内レンズの進歩
切開します
水晶体線維
細胞の膨化
中途失明
上皮細胞の
欠落
99%の水分とコラーゲンでできている、
ゼリー状で、
ほぼ無色
透明の組織。
嚢の肥厚
黄色化
3
晶 体の中 央 が 濁っている 場 合 は
なってき たのは、白 内 障が進んで
以前の手 術では水 晶 体を全 摘 出
「 暗 さ を 感 じる」、乱 視のように
いるのかもしれません。このよう
するために、大 きな傷をつくらな
超音波乳化吸引術という方法で、
ければなりませんでした。現在は
方で白内 障の有 無を推 定できま
砕いて吸い出し、残した嚢( 袋 )
に
1990年 大阪労災病院眼科
1997年 大阪大学大学院入学
2001年 大阪大学大学院修了 大阪大学眼科助手
2006年 大阪大学眼科講師
2012年 住友病院眼科診療部長
2015年 住友病院眼科診療主任部長 現在に至る
直径は6mm程度
眼内レンズ
眼内レンズに
置換
濁った水晶体を
除去
に、白 内 障の症 状はいろいろなバ
リエーションがあります。
㎜くらいの小さな傷口から小さ
健 診では基 本 的に水 晶 体は直
接 診 ま せんが、眼 底 写 真の写 り
す 。眼 底 写 真や視 力 をチェックす
眼内レンズを入れます
(図 )
。
ります
(図 )
。
先生
ふみ
ることで白 内 障の進 行 具 合がわ
み
かるので、
やはり 定期的な健診は
お勧めです。
ご
五味 文
眼 内レンズは、折 りたたんで小
さな創口から入れ、嚢の中で広が
2
1989年 大阪大学医学部卒業 大阪大学眼科入局
28
2
40
14
15 関西労健 VOL90
29
1
20
27
30
眼内レンズ
約13mm
濁った水晶体
図29 眼内レンズ
(イメージ図)
ボールのよ うになっていると 強い
乱 視 は 目のひ ず みで 、ラグビー
を 得 られる可 能 性があ り ま す 。
選 ぶので 、術 後 に 良い裸 眼 視 力
臨んでください。
白内障は簡単な手術と思われ
がちですが、
よく理解して手術に
手術になることもあります。
嚢が弱い、
瞳が開きにくい
なお、
などの素 因があって、
より 難 しい
その人に合ったレンズでの度 数 を
乱 視にな り ま す 。ひ ず みは 治 せ
なかったのです が、
いまは乱 視 を
矯 正でき る 眼 内レンズもできて
〜
は すべて間 違い
目の病気に正しい理解を
以 下の
です。
血 圧 が 高 くて も 見 え 方 に 影
も 遠 近 両 用( 多 焦 点 )
レンズがで
でき ま せんが、近 年 、眼 内レンズ
なくなってから
感覚器のクオリティを上げるこ
とで、よ り 活 動 的になって、よ り
)。
がなる病気
世 紀のキーワードになってい
白 内 障の手 術 を 受 けるタイミ
ングは早まっています。
きています(図
と く に 女 性 か らは「メガネフ
リーになって快 適 」と喜ばれます
糖 尿 病 網 膜 症 は 血 糖コント
ントラストが若干悪い ●遠近の見
( 先 進 医 療 ) ●単 焦 点に比べてコ
糖尿病網膜症は血糖コントロー
ルがよかったとしても進む場合が
ロールをきちんとしたら治る
生 死に関わる病 気が重 要なの
はもちろんですが、視覚はとても
ます 。ぜひ、「 最 寄りの眼 科 」をつ
え方に慣れが必要
あ り ま す 。糖 尿 病の治 療 ととも
大事なものなのです。
受診してほしいと願っています。
くって、
何かあったときにはすぐに
リングが見 える光 輪 視、
などがデ
に網膜症の治療も必要です。
●光を見ると
メリットになります。
が、●保 健 診 療でカバーされない
が
ハッピーな老 後が送れるというの
の一つともいえます。
ます 。ドルーゼンは加 齢 性の変 化
黄 斑 変 性にならない場 合があ り
ドルーゼンがな くても 黄 斑 変
性になることも あれば、あっても
変性にならない
ド ル ー ゼンが な け れ ば 黄 斑
ます 。
血 圧が高いと網 膜の血 管に変
化 が 起こり 、出 血や 浮 腫 を 生 じ
響しない
4
5
21
どこか一箇所に焦点が定まる
多焦点眼内レンズ
います。
老 眼については、若いと きのよ
うに水 晶 体の厚みを 調 整できる
白 内 障の手 術 は 完 全 に 見 え
5
緑 内 障 は 眼 圧 が 高い人 だ け
弾 力に富んだ状 態に戻 すことは
1
16
17 関西労健 VOL90
1
2
3
30
単焦点眼内レンズ
網膜
網膜
さまざまな焦点距離を持つ
図30 老視を矯正する眼内レンズ
(イメージ図)