卸電力取引所の業務規程の認可について

資料3
卸電力取引所の業務規程の認可について
(趣旨)
小売全面自由化に伴い、小売電気事業者の電力調達手段については、相対
取引のみならず、卸電力取引市場を経由した取引が大幅に増加することが予
想される。このような状況において、電気の使用者の利益を保護し、電気事
業の健全な発達を図るためには、経済産業大臣が卸電力取引市場における価
格形成や市場運営の状況等を適切に把握し、問題がある場合にはこれを是正
し得る環境を整備することが必要であるため、第 2 弾改正電気事業法におい
て、卸電力取引所に関する規定(第 6 章:第 97 条~第 99 条の 12)を新設
することとした。
経済産業大臣は、当委員会からの意見回答も踏まえ、平成 28 年 3 月 22 日
に一般社団法人日本卸電力取引所を卸電力取引所として指定することを決
定した。一般社団法人日本卸電力取引所は平成 28 年 4 月 1 日より卸電力取
引所として活動することを予定しているところ、平成 28 年 3 月 22 日付けで
業務規程の認可申請があり、これについて電気事業法第 66 条の 10 第 1 項第
5 号に基づき、経済産業大臣より当委員会に対して意見聴取が行われたとこ
ろ、委員会としての意見を御検討いただく。
主なポイント
○ 卸電力取引所の業務規程認可申請に係る審査について
本年 4 月の第 2 弾改正電気事業法の施行に先立ち、平成 28 年 3 月 11 日付けで、
一般社団法人日本卸電力取引所より経済産業大臣宛に卸電力取引所の指定申請が
行われ、当委員会の意見回答を踏まえて、平成 28 年 3 月 22 日付けで一般社団法
人日本卸電力取引所を卸電力取引所として指定することが決定された。
同日付けで、一般社団法人日本卸電力取引所より、卸電力取引所の業務規程の認
可申請が行われ、電気事業法第 66 条の 10 第 1 項第 5 号に基づき、経済産業大臣
より当委員会に対して意見聴取が行われた。
一般社団法人日本卸電力取引所による卸電力取引所の業務規程認可申請につい
て、「電気事業法第 6 章の規定による卸電力取引所の指定等に係る審査基準等」
(20160310 資第 19 号)に適合するかどうか、委員会としての意見を御検討いた
だく。
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卸電力取引所の指定等に関する省令(関係部分のみ抜粋)
(業務規程の認可の申請等)
第4条 卸電力取引所は、法第99条第1項前段の規定により業務規程の認可を受けようとす
るときは、様式第3の業務規程認可申請書に業務規程を添えて提出しなければならない。
2
卸電力取引所は、法第99条第1項後段の規定により業務規程の変更の認可を受けようと
するときは、様式第4の業務規程変更認可申請書に変更後の業務規程を添えて提出しなければ
ならない。
(業務規程の記載事項)
第五条 法第99条第3項の経済産業省令で定める事項は、次のとおりとする。
一
市場開設業務を行う時間及び休日(当該時間及び休日がスポット市場、一時間前市場、翌々
日以降の特定の時間帯に受け渡される電気を対象として取引する市場その他卸電力取引
所において開設される市場ごとに異なる場合にあっては、当該市場ごとの時間及び休日)
に関する事項
二
市場開設業務を行う事務所の所在地
三
売買取引を行うことができる者の資格及びその審査の方法に関する事項
四
卸電力取引市場の種類に関する事項
五
売買取引の方法(当該方法がスポット市場、一時間前市場、翌々日以降の特定の時間帯に
受け渡される電気を対象として取引する市場その他卸電力取引所において開設される市
場ごとに異なる場合にあっては、当該市場ごとの方法)に関する事項
六
売買取引の決済に関する事項
七
売買取引の手数料に関する事項
八
債務の履行を担保するために預託する金銭を徴収する場合には、当該金銭の徴収及びその
管理の方法に関する事項
九
地域によって売買取引の価格が異なることにより生じる収益の管理に関する事項
十
売買取引において、不正な行為が行われ、又は不当な価格が形成されている場合における
当該売買取引の制限その他の売買取引の公正を確保するために必要な措置に関する事項
十一 市場開設業務の実施体制に関する事項
十二 卸電力取引市場の監視の方法に関する事項
十三 取引参加者に対する処分に関する事項
十四 売買取引の実施方法に関する取引参加者からの助言又は意見の聴取に関する事項
十五 前各号に掲げるもののほか、市場開設業務の実施に関し必要な事項
(業務規程の認可の基準)
第6条 法第99条第3項の認可の基準は、法第98条第1号及び第2号に掲げる業務を適正
かつ確実に実施する上で適当なものであることとする。
2
電気事業法第6章の規定による卸電力取引所の指定等に係る審査基準等(関係部分のみ抜粋)
第1 申請に対する処分
1.第97条第1項の規定による卸電力取引所の指定 (省略)
2.第99条1項の規定による卸電力取引所の業務規程の認可及び変更の認可
電気事業法第99条第1項の規定による卸電力取引所の業務規程の認可及び変更の認可に
係る審査基準については、業務規程が、次のとおり定められ、かつ、その内容が同条第3項に
基づき省令第6条に適合することとする。
(1)省令第5条第1号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① スポット市場及び一時間前市場のうち、少なくとも入札受付及び約定処理については、
原則として年間を通じて全ての時間帯で業務を実施すること。
② ①に規定する業務以外の市場開設業務を行う時間及び休日について規定していること。
③ 市場開設業務について臨時休業を行う場合には、その基準を示していること。
(2)省令第5条第2号に掲げる事項として、少なくとも市場開設業務を行う事務所の
所在地が規定されていること。
(3)省令第5条第3号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 資力信用を有するなどの一定の客観的要件を満たす場合には、次に掲げる場合も含め、
原則として全ての電気事業者の参加を認めていること。
イ
発電事業者が卸売を行うために卸電力取引所で電力を購入する場合
ロ
小売電気事業者が余剰電力を卸電力取引所で売却する場合
② 電気事業者以外の者について、資力信用を有するなど一定の客観的要件を満たす場合に
は、少なくとも次に掲げる者について参加を認めていること。
イ
発電設備の維持及び運用を行っている者
ロ
小規模な電気事業者などから委託を受けて取引を行う者
③ 少なくとも次に掲げる者について、客観的要件により排除していること。
イ
純資産額が乏しいことその他の理由により、資力が無いと認められる者
ロ
破産者で復権を得ないこと、関係法令への重大な違反を行ったこと、役員に暴
力団員等が存在すること、暴力団員等が事業活動を支配していることその他の
理由により、信用がないと認められる者
④ 取引参加資格の判断に際して、恣意性を排除した審査を行う仕組みが確保されているこ
と。
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(4)省令第5条第4号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 少なくとも次に掲げる市場を開設する旨を定めていること。
イ スポット市場
ロ 一時間前市場
ハ 翌々日以降の特定の時間帯に受け渡される電気を対象として取引する市場
② スポット市場については、実需給の前日に取引が可能であること。
③ 一時間前市場については、年間を通じて、スポット市場の閉鎖後の特定時点から実需給
の1時間前時点までの間に取引が可能であること。
(5)省令第5条第5号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 売買取引の方法として、少なくとも次に掲げる内容を定めていること。
イ
買い及び売りの注文方法
ロ
約定方法(連系線の容量に制約がある場合の取扱いを含む。
)
ハ
約定結果の通知方法
ニ
電気の受渡しの方法、受渡しに必要な費用の分担方法及びその計量方法
ホ
売買代金の支払方法、支払時期及び支払に必要な費用の分担方法
ヘ
売買代金の支払が不履行となった場合の取扱い
ト
災害発生時等、通常の売買取引が困難な場合の取扱い
② スポット市場及び一時間前市場について、次に掲げる約定方法を用いていること。
イ スポット市場
ブラインドシングルプライスオークション
ロ
随時取引が可能な取引方法(ザラバ取引)
一時間前市場
③ 卸電力取引所で約定された電力は、一般送配電事業者が管理する送配電網を通じて受け
渡されること。
④ スポット市場及び一時間前市場については、取引の約定条件として、電力広域的運営推
進機関に対して送電可否判定を依頼し、連系線の送電確認を行うこととしていること。
⑤ 受渡しに関して定めている事項が、電力広域的運営推進機関が定める関係規程や一般送
配電事業者が定める託送供給等約款の内容と整合していること。
(6)省令第5条第6号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 決済対象及び決済日が明記されていること。
② スポット市場及び一時間前市場については、取引参加者の間で直接資金決済を行うので
はなく、卸電力取引所が取引参加者間の売買取引を整理(ネッティング処理)した上で、
売買代金を求償することとしていること。
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(7)省令第5条第7号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 取引参加者から売買手数料や会費等を徴収する場合には、金額の定め方及びその徴収方
法について明確な定めが置かれていること。
② 徴収する金額の定め方及びその徴収方法が特定の者を有利に扱い、又は不利に扱うもの
となっていないこと。
(8)省令第5条第8号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① スポット市場及び一時間前市場については、代金支払が不履行となった場合に備えて、
清算預託金を預かる制度が採用されていること。
② 取引参加者から清算預託金を徴収する場合には、少なくとも次に掲げる内容を定めてい
ること。
イ
清算預託金の算定方法
ロ
清算預託金の徴収方法
ハ
清算預託金の保全の方法及び運用益の取扱い
ニ
清算預託金の払い戻し方法
③ 清算預託金の必要額が市場の流動性の確保を妨げるものとなっていないこと。
(9)省令第5条第9号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適
合していること。
① 地域によって売買取引の価格が異なることにより生じる収益(以下「市場間値差収益」
という。
)について、卸電力取引所の資産から実質的に区別して管理されていること。
② 市場間値差収益を利用する場合には、事前に経済産業大臣の了承を得ること。
③ 市場間値差収益について、電気事業制度の今後の設計等に基づき用いる方針を有してい
ること。
(10)省令第5条第10号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準に適合
していること。
① いかなる行為が不正な取引に該当するかを定め、取引参加者に対するルールにおいて、
これを明示的に禁止していること。
② 不正な取引として、少なくとも次の項目を定めていること。
イ
電気の実物取引を目的としない取引をすること
ロ
仮装の取引をする、又は偽って自己の名を用いないで取引をすること
ハ
他者と通謀の上、当該他者との取引を成立させることを意図した取引の申込
みをすること
ニ
単独で又は他人と共同して、取引が繁盛であると誤解させるような取引や相
5
場を変動させるような取引をすること
ホ
市場相場が自己や他人の操作によって変動する旨を流布すること
ヘ
インバランス料金を変動させることを目的に、約定を見込まない取引を行うこと
ト
相対取引や電力先物市場など卸電力取引所外の電力に関連した取引において
利益を得る目的で、卸電力取引所の市場の相場を変動させるような取引を行う
こと
チ
公表前の発電所の事故情報など、卸電力取引所の価格形成に影響に及ぼすイン
サイダー情報に基づく取引を行うこと
③ いかなる場合に不当な価格形成に該当する可能性があるかについて定めていること。ま
た、不当な価格形成に該当する可能性がある場合として、少なくとも次の項目を定めて
いること。
イ
市場における需給関係では正当化できない水準の価格が形成されている場合
ロ
一般的な発電原価から上方又は下方に著しく乖離した市場価格が形成されて
いる場合
④ 不正な取引を防止するため、取引参加者に対するルールの周知や教育を行うこととして
いること。
(11)省令第5条第11号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準
に適合していること。
① 市場開設業務を実施するに足りる十分な組織体制が整備されていること。
② 職員の監視体制が整備されていること。
③ 売買取引の数量の拡大及び適正な価格形成を図るための企画、調査及び提言を行う体制
が整備されていること。
(12)省令第5条第12号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準
に適合していること。
① 卸電力取引市場の監視を行う体制が整備されていること。特に、第三者委員会における
審議や処分に対する不服申立制度が整備されていることなど、卸電力市場の監視結果に
ついての判断や処分が公正・中立になされることを担保する仕組みを有していること。
② 取引参加者の行為が、不当な行為及び不当な価格形成に該当するおそれがある場合には、
必要に応じて、取引参加者に対する調査を行うこととされていること。
③ 不当な行為及び不当な価格形成に該当すると認めたときは、業務規程その他の取引関連
規定に基づき、取引参加者に対して必要な処分を行うこととされていること。
④ ③の措置を講じたときは、速やかにその旨を資源エネルギー庁及び電力・ガス取引監視
等委員会へ報告することとしていること。
(13)省令第5条第13号に掲げる事項として、少なくとも次に掲げる内容及び基準
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に適合していること。
① 取引参加者が関係法令、業務規程その他卸電力取引所が定める規定に違反する行為を行
った場合の処分内容が具体的に明記されていること。
② 卸電力取引所が実施する調査に対する取引参加者の協力に関する記載を設けているこ
と。また、当該調査に対する協力が得られなかった場合の措置について定められている
こと。
(14)省令第5条第14号に掲げる事項として、少なくとも取引参加者が利用しやすい市場
運営が行われるように、取引ルールや取引制度の変更について、取引参加者の意見を
聴き、必要に応じて反映させる仕組みを有していること。
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