SURE: Shizuoka University REpository http://ir.lib.shizuoka.ac.jp/ Title Author(s) Citation Issue Date URL Version アスファルト/スチレン系ブロック共重合体混合物の相溶 性とミクロ構造及びその応用 神谷, 愼吾 p. 1-101 2001-03-23 http://doi.org/10.11501/3185366 ETD Rights This document is downloaded at: 2016-03-29T09:01:14Z 静岡大学博士論文 ア ス フ ァ ル ト /ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 混合物の相溶性とミクロ構造及びその応用 2000 年 12 月 大学院理工学研究科 物質科学専攻 神谷愼吾 ア ス フ ァ ル ト /ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 混合物の相溶性とミクロ構造及びその応用 論文要旨 アスファルトは天然アスファルトと石油アスファルトに大別さ れるが、一般にアスファルトと言えば石油精製過程の最後に残る、 い わ ゆ る 残 渣 物 で あ る 石 油 ア ス フ ァ ル ト の こ と を 指 す 。 1998 年 に は 5,206,000t が 生 産 さ れ 、 そ の ほ と ん ど が 道 路 舗 装 用 に 使 わ れ て い る。このほかにも防水材、制振材などに幅広く使用されている。 アスファルトは適度な接着性、耐水性、耐候性、化学的安定性を 持った低価格な材料である。しかし、感温性が大きいため、低温 では割れやすく、高温では流動しやすいという欠点を持っている。 この欠点をブローイング(加熱溶融アスファルトに空気を吹き込 み、アスファルトを酸化させる。)や高分子の添加により改質し ている。改質材として使われる高分子はスチレン-ブタジエン- ス チ レ ン ト リ ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SBS ) が 代 表 的 な も の で あ る 。 こ の SBS は ほ か の 高 分 子 と 異 な り 10wt% 未 満 の 添 加 で 大 き な 改 質 効果があることが認められている。 本 論 文 は 、 こ の SBS が な ぜ 、 少 な い 添 加 量 で 改 質 効 果 が 高 い の か、どのような構造なのかを明らかにし、高分子によるアスファ ルト改質の機構を提案している。特に本論文では、アスファルト が単一成分ではなく種々の炭化水素の複雑な混合物であることに 着目した。すなわち、アスファルトを高分子量成分と低分子量成 分 の 2 つ の ル ー プ に 分 け 、 成 分 ご と に SBS と の 混 合 状 態 を 調 べ た 。 ま た 、 SBS 以 外 の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 に つ い て も 同 様 な 性質があるのかを検討した。 本論文は以下の五章よりなる。 第一章では研究の背景を述べ、研究の目的と概要を説明した。 ( 1) 第 二 章 で は SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 に つ い て 検 討 し た 。 n- ヘ プ タ ンによる溶剤分別によってアスファルトを低分子量のマルテン (可溶分)と高分子量のアスファルテン(不溶分)の 2 つの成分 に 分 別 し 、 SBS と の 相 溶 性 を 検 討 し た 。 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) の シ フ ト に よ り 、 ポ リ ス チ レ ン ( PS ) ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 、 ポ リ ブ タ ジ エ ン ( PB ) ブ ロ ッ ク と マ ル テ ン が 選 択 的 に 部 分 相 溶 す る こ と が わ か っ た 。 SBS の 両 ブ ロ ッ ク が 特 定 の ア ス フ ァ ル ト 成 分 と 選 択 的 に 相 溶 す る こ と に よ り 、 SBS が ア ス フ ァ ル ト に 対 し て 相 溶 化 剤 的 に 働 く 。 そ の 結 果 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 相 構 造 が 10wt% 未 満 の 添 加 で 変 化 ( マ ト リ ッ ク ス 相 が 反 転 す る 。 ) し 、 アスファルトの力学的性質を大きく変化させることを示した。 第 三 章 で は SBS と 同 じ 効 果 が 期 待 で き る ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 で あ る ス チ レ ン - エ チ レ ン /プ ロ ピ レ ン - ス チ レ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SEPS ) に つ い て も 同 様 の 検 討 を し た 。 PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 、 エ チ レ ン / プ ロ ピ レ ン ( EP ) ブ ロ ッ ク と マ ル テ ン は 選 択 的 に 部 分 相 溶 す る 。 そ の 結 果 、 SEPS の 両 ブ ロ ッ ク が特定のアスファルト成分と選択的に相溶することによって、 SBS と 同 様 に SEPS も 相 溶 化 剤 的 に 働 く こ と が 明 ら か に な っ た 。 第四章ではアスファルトとスチレン系ブロック共重合体の混合 系 の 研 究 か ら 得 た 情 報 に よ り 、 実 用 的 な SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物(改質アスファルト)を作り、その応用を検討した。感温性を 調整することによって、硬化前のコンクリートに強力に接着する 改質アスファルトを世界で初めて実現した。その接着メカニズム について検討した結果、改質アスファルトシートでコンクリート 面を覆い、コンクリート硬化時の反応熱を蓄熱させることにより、 シートが軟化する。そして、コンクリートが硬化する過程で生じ る負圧によりコンクリートの凹凸面に吸い込まれるように接着す ることを明らかにした。改質アスファルトの粘弾性特性を制御す ることが重要であることがわかった。 第五章は第二章から第四章までの結果を総括した。 ( 2) ( 3) 目 第一章 序 次 論 1-1 緒 1-2 アスファルトの性質と構造 1-3 アスファルトの高分子による改質 …………………………… 8 1-4 アスファルトの産業分野での利用 …………………………… 10 1-5 本論文の目的と概要 1-6 参考文献 第二章 言 …………………………………………………………………… 1 ………………………………………… 2 ……………………………………………… 12 ………………………………………………………………… 16 スチレン-ブタジエン-スチレンブロック 共重合体とアスファルトの相溶性 2-1 緒 言 2-2 試料及び実験 2-2-1 試 …………………………………………………………………… 18 ………………………………………………………… 19 料 ……………………………………………………………… 19 2-2-2 熱分析 ……………………………………………………………… 21 2-2-3 針入度及び軟化点 2-2-4 力学的性質 2-2-5 ピーリング試験 2-3 結果と考察 ……………………………………………… 21 ……………………………………………………… 21 ………………………………………………… 22 …………………………………………………………… 22 2-3-1 SBS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 熱 分 析 2-3-2 SBS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の レ オ ロ ジ ー と 力 学 的 性 質 29 2-3-3 SBS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の ミ ク ロ 構 造 モ デ ル 2-4 結 論 2-5 参考文献 ……………………… 22 ……… 33 …………………………………………………………………… 44 ………………………………………………………………… 45 第三章 スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン ブロック共重合体とアスファルトの相溶性 3-1 緒 言 …………………………………………………………………… 47 3-2 試料及び実験 ………………………………………………………… 49 3-2-1 試 料 ……………………………………………………………… 49 3-2-2 熱分析 ……………………………………………………………… 50 3-2-3 針入度及び軟化点 3-2-4 力学的性質 3-3 結果と考察 ……………………………………………… 50 ……………………………………………………… 50 …………………………………………………………… 51 3-3-1 SEPS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 熱 分 析 3-3-2 SEPS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の レ オ ロ ジ ー と 力 学 的 性 質 58 3-3-3 SEPS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の ミ ク ロ 構 造 モ デ ル 3-3-4 ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 67 3-4 結 3-5 参考文献 第四章 論 ……………………… 51 ……… 62 …………………………………………………………………… 70 ………………………………………………………………… 71 SBS 改 質 ア ス フ ァ ル ト の 応 用 4-1 緒 言 …………………………………………………………………… 72 4-2 試料及び実験 ………………………………………………………… 73 4-2-1 改質アスファルト ……………………………………………… 73 4-2-2 試料の作製 4-2-3 温度測定 4-2-4 コンクリート硬度の測定 4-2-5 改質アスファルトの針入度測定 4-2-6 コンクリート硬化時の圧力変化の測定 4-2-7 改質アスファルトの粘弾性の測定 4-2-8 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) の 測 定 4-2-9 引張接着力の測定 ……………………………………………………… 74 …………………………………………………………… 74 …………………………………… 76 ………………………… 76 ……………… 76 ……………………… 76 ……………………………… 76 ……………………………………………… 76 4-3 結果と考察 4-3-1 …………………………………………………………… 78 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト /超 速 硬 コ ン ク リ ー ト 間 の接着 4-3-2 ………………………………………………………… 78 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト /超 速 硬 コ ン ク リ ー ト 間 の形態及び圧力変化 4-3-3 改質アスファルトシートの必要条件 4-3-4 その他の応用 4-4 結 4-5 参考文献 第五章 論 結 辞 ………………… 86 ……………………………………………………… 91 …………………………………………………………………… 94 論 ………………………………………………………………… 95 ………………………………………………………………… 96 本論文に関する主要論文及び参考論文 謝 …………………………………… 81 ……………………………… 99 …………………………………………………………………………… 101 ア ス フ ァ ル ト /ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 混合物の相溶性とミクロ構造及びその応用 第一章 序 1-1 言 緒 論 アスファルトは古くから人類に知られた材料であり、最古の石 油 製 品 の 一 つ で も あ る 。 1880 年 以 前 は 、 ア ス フ ァ ル ト と い え ば 天 然アスファルトのことを言い、石油が地層中、または地表で長い 年月をかけて低留分を揮発させ、変性してきたものである。天然 アスファルトはレーキアスファルト、ロックアスファルト、アス ファルタイトなどに大別されるが、その性質は千差万別である 1) し か し 、 1880 年 以 後 、 石 油 の 減 圧 蒸 留 後 の 残 渣 物 が 天 然 ア ス フ ァ 。 ルトに代用し得られることが発見され、石油アスファルトを道路 舗装に使用したことにより、その優位性が認められた。一般的に アスファルトといえば石油アスファルトのことを指す。 アスファルトは、天然アスファルトのように砂などの不純物を 含まず、蒸留の程度により自由な針入度(軟らかさ)の製品を作 り出すことができる。ブローイング(加熱溶融アスファルト中に 空気を吹き込むことにより、成分炭化水素に重合ないし縮合作用 を起こさせる 2) 。)により、ストレートアスファルト(石油残渣 物)の耐熱流動性を高めたブローンアスファルトを得ることもで きる。また、その価格の安さもあって、工業製品としてのアスフ ァルトの利用範囲は飛躍的に広がった。近年では道路舗装だけで なく、防水材、制振遮音材、防錆材料などに使用されるようにな っ た 。 ア ス フ ァ ル ト は 1998 年 度 で 5,206,000t の 使 用 実 績 が あ り 、 そ のうち半分以上が道路舗装用途に使用されている 3) 。 アスファルトはストレートアスファルト、ブローンアスファル -1- トに大別されるが、この他にも特定用途向けに性質を調整したア スファルトがあり、高分子を添加することによりその性質を改質 したポリマー改質アスファルトもその一つである。種々の高分子 でアスファルトの高温時の流動性、低温時の脆さを改良し、接着 性、制振性などの新たな性能を持たせたポリマー改質アスファル トが注目されている。 1-2 アスファルトの性質と構造 原油は各種沸点の異なる炭化水素が無数に集まったもので、そ の中の最高沸点分がアスファルトである。そのためアスファルト は原油中でもっとも大きな分子であり、もっとも複雑な組成のも のである 4) 。 各 種 の 炭 化 水 素 の 複 合 体 で あ る ア ス フ ァ ル ト の 分 析 法 は O'donell らの研究者により多数発表されている 5) 6) 7) 8) 。これらの分析法は 分別に用いる溶剤が異なり、細かく分別する段階では違いがある。 しかし、アスファルトを分子量が大きく、硬い成分と分子量が小 さく軟らかい成分に大きく分けていることでは一致している。日 本 で は Fig.1-1 に 示 す 日 本 石 油 学 会 法 ( JPI-5S-22 ) 9 ) が 一 般 的 で あ る 。 n- ヘ プ タ ン 可 溶 分 を マ ル テ ン 、 n- ヘ プ タ ン 不 溶 分 で ト ル エ ン 可 溶 分をアスファルテンと総称している。(トルエン不溶分のカーベ ン、カーボイドは通常のアスファルトにはほとんど含まれないの で 、 n- ヘ プ タ ン 不 溶 分 を ア ス フ ァ ル テ ン と す る 。 ) マ ル テ ン は さ らに飽和分、芳香族分、レジン分に分けることができ、また、ア ス フ ァ ル テ ン も も っ と 細 か な 成 分 か ら な る 。 し た が っ て 、 n- ヘ プ タンで分別したアスファルテン、マルテン共に単一成分ではなく、 分子量、構造、性質の似た炭化水素群の総称である。 アスファルテンは脆い黒色固形物で高分子量の極性の高い芳香 族 物 質 の 混 合 物 で あ り 、 分 子 量 は 1,000~100,000 で あ る 。 ア ス フ ァ ルテンの含有量はアスファルトのレオロジー的性質に影響し、ア -2- Fig. 1-1 Method of test for separation of asphalt into fractions (referred to JPI-5S-22) Asphalt 2g n-Heptan 60 ml Insoluble Toluene Soluble Maltene Chromatography Insoluble Carbene Carboid Soluble Asphaltene n-Heptan 300 ml Soluble Saturated Compound Adsorbed Toluene 300ml Soluble Aromatic Compound -3- Adsorbed Methanol 80 ml Toluene 80 ml Methanol 100 ml Soluble Resin スファルテンが増加するほど硬くなり、軟化点が上昇し、粘度が 増加する 10 ) 。一般的にはアスファルト中のアスファルテン含有量 は 5~30% で あ る 。 一 方 、 マ ル テ ン は ア ス フ ァ ル テ ン を 除 い た 成 分 で固体または半固体で粘着性が極めて高い粘ちょう体である。多 環構造ではあるが分子量は小さく、アルキル鎖がより多く、枝の 数が多いと考えられている 11 ) 12 ) 13 ) 。アスファルトは色々な成分か らなる複雑な分子の混合物であるため、一定の分子構造を示すこ と は で き な い が 、 代 表 的 な 構 造 式 と 性 質 を Tab.1-1 に 示 す 14 ) 20 ) 。 アスファルトはマルテン中にアスファルテンがコロイド状に分 散した構造をとっていると考えられている。しかし、単純なコロ イド構造ではなく、アスファルテン分子が寄り集まって核(ミセ ル)を形成し、その核、すなわちミセルの表面にレジン分(マル テン中の高分子量成分)が吸着される。吸着したレジン分がペプ タイザー(解こう剤)として働くことにより、ミセルがマルテン の低分子量成分中(芳香族分、飽和分)に分散、浮遊した状態で ある 15 ) 16 ) 17 ) 18 ) 。このようなアスファルトの構造を文献 19 ) 20 ) を参考に し 、 モ デ ル 図 ( Fig.1-2 ) に 示 す 。 アスファルトは接着性、耐水性、耐候性、化学的安定性を適度 にもち、硬軟自由に選択でき、大量に安価に入手できる有機材料 で あ る 。 Tab.1-2 に 示 す よ う に 日 本 工 業 規 格 ( JIS K2207 ) に よ っ て 、 ストレートアスファルト、ブローンアスファルト、防水工事用ア スファルトに区分され、さらに針入度(軟らかさ)によりグレー ド分けされている。針入度の小さいアスファルトは、高分子量成 分(アスファルテン)の割合がより多いものである。 個々の性質一つをとれば、他に優れた材料はあるが、複合化物 であるがゆえ、多くの性質を兼ね備えていることがアスファルト の最大の特徴である。しかし、アスファルトは高温では流動性が 大きく、低温ではクラックが生じるなどの大きな感温性があり、 -4- Tab. 1-1 Typical structural formula and property of asphalt components Structural formula C/H Molecular weight Maltene (Saturated compound) 0.5 ~ 0.8 0.5 300 ~ 50000 300 ~ 20000 (Aromatic compound) 0.7 300 ~ 20000 (Resin) 0.8 500 ~ 50000 Asphaltene 0.7 ~ 0.9 -5- 1000 ~ 100000 Fig. 1-2 Schematic representation of the physical structure of asphalt Asphaltene Maltene Asphaltene with high Aromatic compound molecular weight components Asphaltene with lower Saturated compound molecular weight components Resin -6- Tab. 1-2 Grade and quality of asphalt by JIS K2207 Grade Straight asphalt Blown asphalt Asphalt for waterproof construction Penetration(25 ºC) Softening point / ºC Flash point / ºC 0 / 10 10 / 20 20 / 40 40 / 60 60 / 80 80 / 100 100 / 120 120 / 150 150 / 200 200 / 300 0 ~ 10 10 ~ 20 20 ~ 40 40 ~ 60 60 ~ 80 80 ~ 100 100 ~ 120 120 ~ 150 150 ~ 200 200 ~ 300 >55.0 >55.0 50.0 ~ 65.0 47.0 ~ 55.0 44.0 ~ 52.0 42.0 ~ 50.0 40.0 ~ 50.0 38.0 ~ 48.0 30.0 ~ 45.0 30.0 ~ 45.0 >260.0 >260.0 >260.0 >260.0 >260.0 >260.0 >260.0 >240.0 >240.0 >210.0 0/5 5 / 10 10 / 20 20 / 30 30 / 40 0~5 5 ~ 10 10 ~ 20 20 ~ 30 30 ~ 40 >130.0 >110.0 >90.0 >80.0 >65.0 >210.0 >210.0 >210.0 >210.0 >210.0 Type Type Type Type 25 20 20 30 > 85.0 > 90.0 >100.0 > 95.0 >250.0 >270.0 >280.0 >280.0 1 2 3 4 ~ ~ ~ ~ 45 40 40 50 -7- これが大きな欠点となっている。もちろん、高温で流動性が大き い と い う こ と は 100~150 ℃ 程 度 の 比 較 的 低 い 温 度 で も 加 工 す る こ とができるという長所でもある。 1-3 アスファルトの高分子による改質 アスファルトは前述のように耐水性、化学的安定性などを適度 に持っており、安価な有機材料であるため、道路舗装用途を中心 に防水材などに使われている。しかし、その大きな感温性により、 その使用用途が限定されていることも事実である。このような問 題を改善し、防水材、道路舗装用バインダーなどへ使用されるア ス フ ァ ル ト の 性 能 を 改 善 す る た め に 、 1960 年 代 以 来 、 ア ス フ ァ ル トへの天然および合成高分子を混合する(ポリマー改質アスファ ルト)試みが行われ、多数の研究がされてきた 21 ) 22 ) 23 ) 。これらの 高分子の添加により、高温での流動性、低温での脆さなどの欠点 を改善するだけでなく、粘着性などの新たな特性を付加すること も可能になった。 Tab.1-3 に ア ス フ ァ ル ト 改 質 材 と し て 用 い ら れ る 主 な 高 分 子 を 示 した。この中でブロック共重合体(特にスチレン-ブタジエン- ス チ レ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SBS ) を 含 む ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重合体)が代表的な改質材である。これらの熱可塑性エラストマ ー ( TPE ) は 効 果 的 な ア ス フ ァ ル ト 改 質 材 で あ る と 認 め ら れ て い る 24 ) 。 SBS な ど の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 供 重 合 体 は 室 温 よ り か な り 低 い ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) を 持 つ ゴ ム 中 間 ブ ロ ッ ク と 、 室 温 よ り も か な り 高 い Tg を 持 つ ポ リ ス チ レ ン ( PS ) 末 端 ブ ロ ッ ク か ら な っ ている。この二つのブロックは熱力学的に相溶しないため、割合 と し て 少 な い PS 末 端 ブ ロ ッ ク は 互 い に 凝 集 し 、 ド メ イ ン を 形 成 している。凝集している末端ブロックは相対的に動くことができ ず、物理架橋状態にある。このために、化学架橋した加硫ゴムと 同様の材料強度を示す 25 ) 。そのほかにもエチレン-酢酸ビニル共 -8- Tab. 1-3 List of polymers for modified asphalt TPE (Thermoplastic elastomer) SBS (Styrene-butadiene-styrene) triblock copolymer SIS (Styrene-isoprene-styrene) triblock copolymer SEBS (Styrene-b-(ethylene-co-butylene)-b-styrene) triblock copolymer SEPS(Styrene-(ethylene-propylene)-styrene) triblock copolymer TPR (Thermoplastic resin) EVA (Ethylene-vinyl acetate) copolymer EEA (Ethylene-ethyl acetate) copolymer EPM (Ethylene-propylene) copolymer PU (Polyurethane) Polyolefin APAO (Amorphous polyalphaolefin) APP (Atactic polypropylene) PE (Polyethylene) Elastomer or Rubber IIR (Isobutylene / isoprene rubber) CR (Chloroprene rubber) NR (Natural rubber) SBR (Styrene / butadiene rubber) -9- 重 合 体 ( EVA ) 、 ポ リ エ チ レ ン ( PE ) 、 ポ リ ウ レ タ ン ( PU ) 、 ア タ ク チ ッ ク ポ リ プ ロ ピ レ ン ( APP ) 、 ア モ ル フ ァ ス ポ リ ア ル フ ァ オ レ フ ィ ン ( APAO ) 26 ) な ど も 改 質 材 と し て 使 わ れ 、 そ れ ぞ れ 特 徴 のあるアスファルト改質効果を上げている 27 ) 28 ) 29 ) 。また、工業的 には単独で使用されるだけでなく、石油樹脂、テルペン系樹脂、 オイルなどと組み合わせ、硬軟、感温性などの性質を変え、使用 目的にあった改質アスファルトが作られている。また、粘着性を 持たせる、制振性を増すなどの従来にない性質を持たせることも で き る 。 TPE や 熱 可 塑 性 樹 脂 ( TPR ) は 熱 可 塑 性 で あ る た め ア ス ファルトに混合することは容易であるが、混合方法の工夫(例え ば剪断力を加える強制的な混合)によって未加硫ブチルゴム ( IIR ) 、 ク ロ ロ プ レ ン ゴ ム ( CR ) 、 天 然 ゴ ム ( NR ) な ど の ゴ ム 系高分子も混合可能である。しかし、その添加量と改質効果には 大 き な 差 が あ る 。 そ れ ぞ れ の ポ リ マ ー 改 質 に よ る 効 果 を Tab.1-4 に 示 す 。 SBS な ど で は 10wt% 未 満 の 添 加 で も 大 き な 改 質 効 果 が 出 る の に 対 し て 、 TPR や ゴ ム 系 高 分 子 で は 大 き な 改 質 効 果 を 得 る た め に は 多 く の 添 加 ( 例 え ば 30wt% 以 上 ) が 必 要 で あ る 。 こ れ は 個 々 の高分子の力学的性質のほかに、アスファルトとの相溶性の違い に原因があると考えられる。 1-4 アスファルトの産業分野での利用 アスファルトはいろいろな分野で使われている材料であるが、 そのほとんどが道路舗装用のバインダーに使われている。いわゆ るアスファルト舗装は砕石、砂などとアスファルトを混合したも の で ア ス フ ァ ル ト の 添 加 量 は 5~20wt% 程 度 で あ る 30 ) 。道路舗装に 使われるアスファルトは粘度が低く、施工しやすいストレートア スファルトがほとんどである。アスファルト舗装は材料価格が安 いことと、なによりも、施工後すぐに道路を開放できる、騒音も 少ないというコンクリート舗装などにない特徴を持っている。し - 10 - Tab. 1-4 General properties of modified asphalt by various polymers Polymer type Content / % Asphalt Softening point / °C Penetration / 0.1mm Cracking point / °C 50.0 63.0 10 SBS 5 10 20 82.0 116.0 132.0 40.0 32.0 26.0 0 -7 -15 SEPS 5 10 20 63.5 89.0 107.5 38.0 36.0 22.0 5 -5 -10 SIS EVA 10 10 84.5 81.0 49.0 38.0 -10 0 APAO 5 10 20 20 60 53.5 60.0 75.5 56.0 105.5 55.0 51.0 39.0 43.0 4.0 7 5 -10 10 7 PS - 11 - かし、冬期には低温時の脆さにより、舗装にクラックなどが発生 し、夏期では高温時の流動性により、わだち掘れ(走行時のタイ ヤの跡が路面に残り、路面が少しずつへこんでくること。)が発 生する。これらの改善のためアスファルトに高分子を添加し、性 能改善をはかっている。また、最近は高機能舗装として、排水性 舗装なども行われており、これらの舗装用バインダーには高分子 の添加により高剛性、高耐熱性に改質されたアスファルト(改質 アスファルト)が使われている。 また、アスファルトは耐水性に優れた材料である。その性質を 利用した防水材の材料としてとても重要である。アスファルト防 水シートには不織布などを基材にアスファルトをコーティングし、 シート状に加工したものがある。アスファルト防水材は日本工業 規 格 ( JIS A6005, JIS A6013, JIS A6022, JIS A6023 な ど ) で 品 質 を 規 定 さ れた工業製品である。アスファルト防水ではこれまでブローンア スファルトや防水工事用アスファルトが使われてきたが最近では SBS 、 APP 、 APAO な ど で 低 温 時 の 脆 さ を 改 質 し た ア ス フ ァ ル ト を 用いることが多くなっている。従来は溶融アスファルトでアスフ ァルト防水シートを貼る、熱工法が主であったが、アスファルト の改質により、粘着工法、ホットメルト工法(トーチ工法)など も普及している。 粘弾性体としての特性を生かした制振材、遮音材などの分野で もアスファルトは使われている。アスファルトに高比重の粉体を 大量に混ぜることにより効果を高めたり、粘弾性特性を改良する ために高分子で改質したものなど様々なものが製品化されている。 その他にも防錆材、塗料、シーリング材などにもアスファルト は使われている。 1-5 本論文の目的と概要 SBS は ゴ ム 中 間 ブ ロ ッ ク の ポ リ ブ タ ジ エ ン と ガ ラ ス 質 末 端 ブ ロ - 12 - ックのポリスチレンからなり、末端ブロックの物理的架橋により、 加 硫 ゴ ム と 同 等 の 強 度 を 持 っ て い る 。 ま た 、 他 の 高 分 子 が 30~40wt% 以 上 の 添 加 量 で 改 質 効 果 を 発 揮 す る の に 対 し て SBS は 10wt% 未 満 の 少 な い 添 加 量 で 改 質 効 果 が 大 き い 。 ほ か の 高 分 子 に な い SBS の 優 れ た 特 徴 で あ る 。 こ れ は SBS が ア ス フ ァ ル ト 中 に 分 散混合しているだけでなく、アスファルトと何らかの作用をして 混 合 し て い る の で は な い か と 考 え ら れ る 。 SBS と ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 混 合 シ ス テ ム を 解 明 す る こ と に よ り 、 1)な ぜ 、 少 な い 添 加 量 ( 10wt% 未 満 ) で 改 質 効 果 が 大 き い の か 、 2 ) ど の よ う な 構 造 な のかを明らかにすることを目的とした。また、同様な改質効果が 期待できるスチレン系ブロック共重合体であるスチレン-エチレ ン / プ ロ ピ レ ン - ス チ レ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SEPS ) に つ い て も 検討し、スチレン系ブロック共重合体におけるアスファルトの混 合システムをモデル化した。これにより、アスファルトの改質に どのような高分子を用いれば、より少ない添加量で、より高機能 な改質ができるのかわかるはずである。 本論文は五章からなっている。各章の概要は次の通りである。 第 二 章 で は 、 SBS と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 物 に お け る 疑 問 を 解 明 す る た め に 、 n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 に よ っ て ア ス フ ァ ル ト を 低 分子量成分のマルテン(可溶分)と高分子量成分のアスファルテ ン ( 不 溶 分 ) の 2 つ の 成 分 に 分 離 し た 。 こ れ ら が SBS と ど の よ う に混合し、なぜ、他の高分子に比べて少量で改質効果が出るのか を検討した。その検討結果を次のようにまとめた。 1) SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で は 針 入 度 、 軟 化 点 、 引 張 強 さ な ど の 力 学 的 性 質 は 10wt% 未 満 の 添 加 で 大 き く 変 化 す る 。 2) SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で は ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) の シ フ ト に よ り 、 ポ リ ス チ レ ン ( PS ) ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 、 ポ - 13 - リ ブ タ ジ エ ン ( PB ) ブ ロ ッ ク と マ ル テ ン が 選 択 的 に 部 分 相 溶する。 3) SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク が 特 定 の ア ス フ ァ ル ト 成 分 と 選 択 的 に 相 溶 す る こ と に よ っ て 、 SBS が 相 溶 化 剤 的 役 割 を 果 た し 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 相 構 造 を 変 化 さ せ る 。 そ の た め 、 少ない添加量でアスファルトを大きく改質できる。 第 三 章 で は 、 SBS と 同 じ ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 で あ る SEPS に つ い て も 、 ア ス フ ァ ル ト に 対 し て 同 様 に 相 溶 化 剤 的 役 割 を果たすのかを検討した。その検討結果を次のようにまとめた。 1) SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で は 針 入 度 、 軟 化 点 、 引 張 強 度 な ど の 力 学 的 性 質 は 10wt% 未 満 の 添 加 で 大 き く 変 化 し た 。 SBS と同様に少ない添加量で大きな改質効果があることを確認し た。 2) SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で は Tg の シ フ ト に よ り 、 PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 、 エ チ レ ン / プ ロ ピ レ ン ( EP ) ブ ロ ッ クとマルテンが選択的に部分相溶する。 3) SEPS の 2 つ の ブ ロ ッ ク が 特 定 の ア ス フ ァ ル ト 成 分 と 選 択 的 に 相 溶 す る こ と に よ っ て 、 SEPS も 相 溶 化 剤 的 役 割 を 果 た す 事 が明らかになった。 4) 今 ま で の 結 果 か ら SBS や SEPS の ア ス フ ァ ル ト に 対 す る 影 響 をまとめ、アスファルトの特定の成分と相溶するブロック共 重合体であれば、少ない添加量で改質効果が上がることが確 認できた。 第四章ではアスファルトとスチレン系ブロック共重合体の混合 物 の 相 溶 状 態 の 研 究 か ら 得 た 情 報 に よ り 、 実 用 的 な SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 ( SBS 改 質 ア ス フ ァ ル ト ) を 作 り 、 そ の 応 用 研 究 を - 14 - 行った。改質アスファルトの感温性を調整することによって、硬 化前のコンクリートに強力に接着する改質アスファルトを作り、 その接着システムについての現象と理論を検討した。その検討結 果を次のようにまとめた。 1) 改質アスファルトをシート状に成形し、超速硬コンクリート に密着させる。コンクリートが硬化し、改質アスファルトシ ートが密着するまでの温度変化を測定し、シートとコンクリ ー ト 界 面 が 40 ℃ 程 度 に 蓄 熱 す る こ と が わ か っ た 。 2) 改質アスファルトシートがコンクリートと接着していく過程 で、シートとコンクリート間に負圧が生じ、コンクリートの 凹凸面に吸い込まれるように密着した。 3) 改 質 ア ス フ ァ ル ト の 粘 弾 性 特 性 、 針 入 度 、 Tg の 測 定 に よ り 、 改 質 ア ス フ ァ ル ト の 性 質 を 特 定 し 、 40 ℃ 近 辺 で 十 分 な 軟 ら かさを持つことが必要条件であることがわかった。 第五章はこれまでの研究成果をまとめた。 - 15 - 1-6 参考文献 1 ) ア ス フ ァ ル ト 同 業 会 編 , " ア ス フ ァ ル ト 及 び そ の 応 用 ", ア ス フ ァ ル ト 同 業 会 , 1965, p 61. 2 ) J. M. Goppel, J. Knotnerus, V World Pet, Congress, Section III/G, Prepr., 2 (1955). 3 ) ア ス フ ァ ル ト 協 会 , " ア ス フ ァ ル ト " 203 号 , 42 巻 , 2000, p 71. 4 ) P. A. Wintherspoon, R. S. Winniford, in B. Nagy, U. Colombo, Ed., "The asphaltic components of Petroleum" Esevier, Amsterdam, 1967, pp 261-297. 5 ) G. O'donell, Anal.Chem., 23. 894 (1951). 6 ) R. N. Traxler, Oil&Gas J., Sept., 14. 158 (1953). 7 ) J. G. Speight, in T. F. Yen, Ed., "Asphaltene and asphalts, 1," Elsevier, Amsterdam, 1994, p 82. 8 ) R. N. Hubbard, K. E. Stanfield, Anal. Chem., 20. 460 (1948). 9 ) 日 本 道 路 協 会 編 , " 舗 装 試 験 法 便 覧 ", 日 本 道 路 協 会 , 1995, p 437. 10 ) 田 中 晴 也 , 川 付 正 明 , 高 木 清 美 , ア ス フ ァ ル ト , 198. 37 (1999). 11 ) J. G. Speigh, in S. Kaliaguine and A. Mahay, Ed., "Catalysis on the Energy" Elsevier, Amsterdam, 1984, pp 515. 12 ) J. G. Speigh, Am. Chem. Soc., Div. Pet. Chem., Prepr., 34 (2). 326 (1989). 13 ) M. A. Francisco, J. G. Speight, Am. Chem. Soc., Div. Fuel. Chem., Prepr., 29 (1). 36 (1984). 14 ) シ ェ ル 化 学 編 , " 屋 根 材 の た め の 熱 可 塑 性 ゴ ム ( TR ) / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 ", シ ェ ル 化 学 , 1986, p 11. 15 ) 菅 原 照 雄 , 工 藤 忠 夫 , 有 福 武 治 , " 土 木 材 料 Ⅲ ", 共 立 出 版 , 1974, p 24. 16 ) E. J. Barth, in "Asphalt, science and technology" Gordon and Breach, N.Y, 1962, p 10. 17 ) F. J. Nellensteyn, ibid., 14. 134 (1927). - 16 - 18 ) S. J. Park, J. Escobedo, G. A. Mansoori, in T.F. Yen, Ed., "Asphaltene and asphalts, 1," Elsevier, Amsterdam, 1994, pp 179-205. 19 ) J. P. Pfeiffer, R. N. Saal, Journal of Physical Chemistry 44, 44. 139 (1941). 20 ) D. Espinat, in O. C. Mullins, Ed., "Structures and dynamics of Asphaltenes" Division of Plenum Publishing, N.Y, 1998, pp 145-201. 21 ) M. G. Bouldin, J. H. Collins, in K. R. Wardlaw, S. Shuler, Ed., "Polymer Modified Asohalt Binders" ASTM, U. S. A, 1992, pp 50-60. 22 ) T. S. Shuler, J. H. Collins, J. P. Kirkpatrick, in O. E. Briscoe, Ed., "Asphalt Rheology" ASTM, U. S. A, 1987, pp 179-193. 23 ) L. Zanzotto, J. Stastna, Journal of Polymer Science, Part B: Polymer Physics, 35 (8). 1225 (1997). 24 ) E. Diani, M. D. Via, M. G. Cavaliere, in A. M. Usmani, Ed., "ASHALT SCIENCE AND TECHNOLOGY", Marcel Dekker, N. Y, 1997, pp 279-295. 25 ) 高 分 子 学 会 編 , " ポ リ マ ー ア ロ イ 基 礎 と 応 用 ", 東 京 化 学 同 人 , 1987, pp 221-243. 26 ) A. Susti, in A. M. Usmani, Ed., "ASHALT SCIENCE AND TECHNOLOGY", Marcel Dekker, N. Y, 1997, pp 259-277. 27 ) S. J. Rozeveld, E. E. Shin, A. Bhurke, L, France, L. T. Drzal, Microscop Research and Technique, 38 (5). 529 (1997). 28 ) J. H. Collins, W. J Mikols, Proc. Assoc. Asphalt Paving Technol., 54. (1985). 29 ) A. Sustic, B. Pellon, Adhesives Age, 34 (12). 175 (1991). 30 ) 日 本 道 路 協 会 編 , " ア ス フ ァ ル ト 舗 装 要 綱 ", 日 本 道 路 協 会 , 1993, p 95. - 17 - 第二章 スチレン-ブタジエン-スチレンブロック 共重合体とアスファルトの相溶性 2-1 緒 言 アスファルトは高温で流動性があり、低温で割れやすいという、 大きな感温性を持っている。また、室温より高い温度でも徐々に 流 動 す る 。 こ の 特 性 は 材 料 と し て 考 え る と 、 低 い 温 度 ( 100 ℃ 程 度)で軟化するため加工しやすいという性質であり、アスファル トの長所でもあり、短所でもある。しかし、この性質により使用 用途が限定されているのも事実である。このような問題を解決す るために、溶融アスファルトに空気をブローイングし、重合ない し縮合により高分子量化したブローンアスファルトが作られた。 しかし、より一層の性能向上と、粘着性などの新たな機能を付加 するために、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体 ( SBS ) な ど の 高 分 子 を ア ス フ ァ ル ト に 添 加 し 、 欠 点 を 改 質 し た アスファルトが考え出された。 SBS は 末 端 ブ ロ ッ ク の ポ リ ス チ レ ン が 凝 集 す る こ と に よ り 、 物 理架橋し、化学架橋した加硫ゴムと同等な性質を持つことができ る。そして、熱可塑性であるために、効果的なアスファルト改質 材となることが報告されている 1) 。それは、低温ではゴム中間ブ ロ ッ ク ( ブ タ ジ エ ン ( PB ) ブ ロ ッ ク ) に よ り 弾 性 を 保 ち 、 亀 裂 防止などの低温性能を向上させる。対して、高温ではガラス質末 端 ブ ロ ッ ク ( ス チ レ ン ( PS ) ブ ロ ッ ク ) に よ り 硬 さ を 増 し 、 耐 熱 性 を 向 上 さ せ る 。 こ れ ら の 効 果 は 、 ア ス フ ァ ル ト に 対 し て、 10wt% 未 満 の 少 量 の SBS を 添 加 す る こ と に よ り 大 き な 改 質 効 果 が あることが明らかにされている 2) 3) 。これは、ほかの高分子には な い SBS の 特 徴 で あ り 、 工 業 的 に 使 用 す る 意 味 は 大 き い 。 ま た 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト の 混 合 物 で は 10wt% の SBS の 添 加 で SBS の 海 - 18 - (マトリックス相)、アスファルトの島(分散相)のネットワー ク 構 造 に な る こ と が 電 子 顕 微 鏡 ( TEM ) 写 真 な ど に よ り 、 多 く の 研究者 4)5) 6) か ら 報 告 さ れ て い る 。 TEM 写 真 か ら 明 ら か に さ れ た 相 構 造 の 変 化 を Fig.2-1 の モ デ ル 図 に 示 す 。 図 の よ う に 6wt% の 添 加 ( Fig.2-1(b) ) で は ア ス フ ァ ル ト が マ ト リ ッ ク ス 相 に な り 、 SBS が 分 散 相 を 形 成 し て い る 。 し か し 、 10wt% の 添 加 ( Fig.2-1(a) ) で は 相 が 逆 転 し SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 を 形 成 す る 。 本 章 に お い て は 、 少 量 の SBS と ア ス フ ァ ル ト と の 混 合 物 の 相 状 態 に つ い て 議 論 す る 。 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 物 理 、 お よ び 力 学 的 性 質 に つ い て 検 討 し 、 さ ら に 、 示 差 走 査 熱 量 測 定 ( DSC ) に よ り 、 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) の 変 化 を 観 察 し た 。 ま た 、 ア ス フ ァ ル ト を n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 で 低 分 子 量 成 分 の マ ル テ ン ( 可 溶分)と高分子量成分のアスファルテン(不溶分)の 2 つの成分 に 分 離 し 、 SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク ( PS ブ ロ ッ ク と PB ブ ロ ッ ク ) と の 混 合 状 態 を Tg 及 び 力 学 的 性 質 の 変 化 に よ り 議 論 し た 。 ゴ ム な ど の 高 分 子 で も ガ ラ ス 転 移 を 示 す も の が 多 く 、 Tg 以 下 で は 熱 運動が抑制されて硬くなる。さらに低温では部分的な結晶化が起 きる 7) 。 高 分 子 混 合 物 の 相 溶 性 の 決 定 に は Tg の 変 化 が 利 用 で き る 。 こ れ ら の 結 果 か ら 、 SBS と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 過 程 に お け る ミクロ構造モデルを提案した。 2-2 2-2-1 試料及び実験 試 料 ア ス フ ァ ル ト ( ス ト レ ー ト ア ス フ ァ ル ト < 針 入 度 60-80 JIS K2207 > ) は 昭 和 シ ェ ル 石 油 ㈱ か ら 、 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 の SBS ( ク レ イ ト ン D1101 、 ス チ レ ン / ブ タ ジ エ ン =31/69 、 Mw:140,000 ) は ク レ イ ト ン ポ リ マ ー ㈱ か ら 、 ホ モ ポ リ マ ー の ス チ レ ン ( ハ イ マ ー ST120 、 Mw:10,000) は 三 洋 化 成 工 業 ㈱ か ら 得 た 。 マ ル テ ン と ア ス フ ァ ル テ ン は n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 ( 石 油 - 19 - (a) SBS/Asphalt blend containing 10 wt% SBS (b) SBS/Asphalt blend containing 6 wt% SBS Fig. 2-1 Schematic representation of microstructure of SBS/ asphalt blends SBS rich phase Asphalt rich phase - 20 - 学 会 法 ( JPI-5S-22 ) 8 ) に 準 拠 ) に よ り 、 ア ス フ ァ ル ト か ら 可 溶 成 分 (マルテン)、不溶成分(アスファルテン)に分離した。得られ た 成 分 は 100~120 ℃ で 恒 量 化 し 、 溶 剤 を 完 全 に 除 去 し た 。 混 合 は ス テ ン レ ス 容 器 中 で 加 熱 溶 融 (185 ℃ ) し た ア ス フ ァ ル ト 、 ま た は そ の 成 分 に 、 予 熱 し た SBS ま た は PS を 徐 々 に 添 加 し た 。 そ し て 、 SBS の 劣 化 を 防 ぐ た め に ホ モ ミ キ サ ー ( 特 殊 機 化 工 業 ㈱ 製 MARK Ⅱ ) の 回 転 数 を 3000r.p.m 、 温 度 を 185 ℃ に 保 ち 、 120 分 間 混 合 し た 。 ( 通 常 、 SBS は 185 ℃ で 4 時 間 ぐ ら い ま で は 劣 化 の 影 響 は ほ と ん ど な い 。 ) 混 合 物 を 1mm 厚 の シ ー ト 状 に 成 型 し 、 室 温まで冷却し、これを試料とした。 2-2-2 熱分析 Tg を 決 定 す る た め の DSC 測 定 は マ ッ ク サ イ エ ン ス 社 の DSC3100 を使い、空気雰囲気中で行った。液体窒素でサンプルを冷却し、 測 定 温 度 範 囲 -110~120 ℃ 、 昇 温 速 度 10 ℃ /min の 条 件 で 測 定 し た 。 Tg は DSC 曲 線 よ り 決 定 し た 。 2-2-3 針入度及び軟化点 針 入 度 は 溶 融 状 態 の SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 を カ ッ プ に 取 り 、 室 温 ま で 冷 却 後 、 サ ン プ ル を 4 時 間 以 上 25 ℃ の 水 中 に 静 置 し た 。 JIS K2207 に 定 め ら れ た 針 入 度 試 験 器 を 使 い 、 針 の 侵 入 深 さ を 測 定 した。 軟 化 点 は 、 JIS K2207 の Ring & Ball 法 に よ り 、 グ リ セ リ ン 液 中 で 昇 温 速 度 5 ℃ /min で 測 定 し た 。 2-2-4 力学的性質 力 学 的 性 質 は 、 測 定 温 度 10 ℃ 、 引 張 速 度 500mm/min で JIS A6021 の 方 法 に よ り 、 ㈱ 島 津 製 作 所 の オ ー ト グ ラ フ ( AGS-500B ) で 測 定 した。引張強さと伸び率は、プロットされた応力-ひずみ曲線 - 21 - ( S-S curve ) か ら 得 た 。 2-2-5 ピーリング試験 ピ ー リ ン グ 試 験 は 厚 さ 0.1mm 、 40 × 160mm の ア ル ミ 板 の 表 面 に ア ス フ ァ ル ト と SBS を そ れ ぞ れ 溶 媒 キ ャ ス ト し 、 溶 媒 を 完 全 に 除 去 す る 。 そ し て SBS と ア ス フ ァ ル ト 面 を 貼 り 合 わ せ 、 所 定 温 度 ( 20~200 ℃ ) で 30 分 間 養 生 し 、 引 張 速 度 100mm/min で 2-2-4 の オ ー ト グ ラ フ に よ り T 型 ( 90 ゚ ) ピ ー リ ン グ 強 度 を 測 定 し た 。 測 定 値 は 幅 10mm 当 た り の 接 着 強 度 に 換 算 し た 。 2-3 2-3-1 結果と考察 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 熱 分 析 一般に高分子鎖のセグメントの運動性は、温度や主鎖の結合回 りの回転のしやすさによって変化する。温度が低くなると、セグ メントの運動性が低下し、変形しても元に戻り難く、流動性が低 下 す る 。 こ れ が ガ ラ ス 状 態 で あ り 、 こ の 温 度 を Tg と い う 9) 。高 分子混合物が相溶性の場合、高分子鎖間の相互作用の影響により 混 合 物 の Tg が 近 づ く 。 高 分 子 混 合 物 の 相 溶 性 判 定 に は Tg の 変 化 の観察は有効な手段である 10 ) 11 ) 。このような高分子の分子運動の 考 え か ら 、 Tg の 変 化 は 、 混 合 物 の 構 成 要 素 間 の 相 互 作 用 を 直 接 的に反映する。 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の Tg の 変 化 を 観 察 す る た め に DSC 測 定 を 行 っ た 。 A.Adedeji ら に よ っ て 、 SBS は -91 ℃ に PB ブ ロ ッ ク 、 95 ℃ に PS ブ ロ ッ ク の 2 つ の Tg が あ り 、 ア ス フ ァ ル ト は -29 ℃ に 特 徴 的 な Tg が あ る こ と が 報 告 さ れ て い る 12 ) 。 DSC 測 定 に よ り 、 SBS は -90 ℃ に PB ブ ロ ッ ク 、 90 ℃ に PS ブ ロ ッ ク の 2 つ の Tg が 、 ア ス フ ァ ル ト に は -34 ℃ 、 8 ℃ 、 37 ℃ に 複 数 の Tg が あ っ た 。 こ の 結 果 は 、 A.Adedeji ら の 報 告 と 同 様 で あ っ た 。 Fig.2-2 に 配 合 比 を 変 え た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 曲 線 か ら 、 SBS の 添 加 量 - 22 - ENDO ← Temperature / ℃ Fig. 2-2 DSC curves of mixtures of SBS and asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SBS d; SBS:Asphalt=50:50 g; SBS:Asphalt=3:97 b; SBS:Asphalt=90:10 e; SBS:Asphalt=10:90 h; Asphalt - 23 - c; SBS:Asphalt=80:20 f; SBS:Asphalt=5:95 の 増 加 に よ り 、 -34 ℃ の ア ス フ ァ ル ト の Tg が -40 ℃ に 低 下 す る 。 ま た 、 ア ス フ ァ ル ト 添 加 量 の 増 加 に よ り 、 -90 ℃ の SBS の PB ブ ロ ッ ク の Tg が -83 ℃ に 上 昇 す る 。 し か し 、 PS ブ ロ ッ ク と 37 ℃ の ア ス フ ァ ル ト の Tg は 、 は っ き り し た 変 化 は 認 め ら れ な か っ た 。 こ れ は 、 両 成 分 が 混 合 物 中 に 占 め る 割 合 が 少 な い ( PS ブ ロ ッ ク は 31% ) た め で あ ろ う 。 ア ス フ ァ ル ト の Tg が 低 下 し 、 PB ブ ロ ッ ク の Tg が 上 昇 す る と い う 結 果 は 、 ア ス フ ァ ル ト が SBS の PB ブ ロ ッ クと相溶可能であること、または少なくとも部分的に相溶可能で あ る こ と を 示 唆 す る 。 測 定 で は ア ス フ ァ ル ト に 複 数 の Tg が あ り 、 こ の う ち の 1 つ の Tg が 変 化 し て い る こ と か ら 、 ア ス フ ァ ル ト の 一部の成分と部分相溶しているのであろう。 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 か ら 判 別 で き な か っ た SBS の PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル ト の 相 溶 性 を 調 べ る た め に 、 SBS の PS ブ ロ ッ ク と 比 較 可 能 な Mw:10,000 の ス チ レ ン ホ モ ポ リ マ ー ( PS ) を ア ス フ ァ ル ト に 混 合 し た 。 Fig.2-3 に こ の 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 -34 ℃ の ア ス フ ァ ル ト の Tg は ほ と ん ど 変 化 し な い の に 対 し て 、 61 ℃ の PS の Tg が ア ス フ ァ ル ト 添 加 量 の 増 加 に よ っ て 低 下 す る 。 こ の 結 果 は PS が ア ス フ ァ ル ト と 相 溶 、 ま た は 少 な く と も 部 分 的 に 相 溶 す る こ と を 示 し て い る 。 PB ブ ロ ッ ク と 相 互 作 用 の あ っ た -34 ℃ の Tg が ほ と ん ど 変 化 し な い の に 対 し て 、 PS の Tg が 変 化 し て い る ことは、アスファルトの別の成分が相溶していると考えられる。 ア ス フ ァ ル ト は 多 成 分 系 で あ る こ と か ら 、 ど の 成 分 が SBS と 相 互作用しているのかを明らかにする必要がある。そのため、アス フ ァ ル ト を n- ヘ プ タ ン で 2 つ の 成 分 、 低 分 子 量 成 分 の マ ル テ ン 、 および高分子量成分のアスファルテンに溶剤分別し 13 ) 14 ) 、 SBS が アスファルトのどの成分と相溶するのかを確認した。ここで、ア スファルトを高分子量成分と低分子量成分の 2 つのグループに分 けることが重要である。不溶成分(アスファルテン)は暗い茶色 の 脆 い ガ ラ ス 質 固 体 で 、 全 体 の ア ス フ ァ ル ト の 16wt% を 占 め る 。 - 24 - ENDO ← Temperature / ℃ Fig. 2-3 DSC curves of mixtures of PS and asphalt at heating rate of 10 °C/min a; PS b; PS:Asphalt=80:20 d; PS:Asphalt=20:80 - 25 - c; PS:Asphalt=60:40 e; Asphalt 可溶成分(マルテン)は高粘度の混合物で全体のアスファルトの 84wt% を 占 め る 。 Fig.2-4 は SBS と マ ル テ ン の 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 マ ル テ ン は 、 Fig.2-4(d) に 示 す よ う に -36°C に Tg が あ る 。 SBS 添 加 量 の 増 加 に 伴 っ て -36 ℃ の マ ル テ ン の Tg が -41 ℃ に 低 下 し 、 -90 ℃ の PB ブ ロ ッ ク の Tg が -78 ℃ に 上 昇 す る 。 こ の 結 果 は マ ル テ ン と SBS の PB ブ ロックの相互作用が強い、すなわち相溶性である可能性がある。 こ の PB ブ ロ ッ ク の Tg の 上 昇 は Fig.2-2 の 結 果 と 一 致 し 、 PB ブ ロ ッ クと相溶するのはアスファルト成分のうち主にマルテンであると 考えられる。 Fig.2-5 に SBS / ア ス フ ァ ル テ ン 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 ア ス フ ァ ル テ ン は Fig.2-5(d) に 示 す よ う に 35°C に Tg が あ る 。 ア ス フ ァ ル テ ン と の 混 合 で は 、 SBS の PB ブ ロ ッ ク の -90 ℃ の Tg は ほ と ん ど 変 化 し な い 。 対 し て 、 ア ス フ ァ ル テ ン の 35 ℃ の Tg は SBS の 添 加 量 の 増 加 に 伴 っ て 上 昇 す る 。 こ の 結 果 は SBS の PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 少 な く と も 部 分 相 溶 す る こ と を 示 す 。 Fig.2-2 に 示 し た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で は 、 PS ブ ロ ッ ク ( 31% ) が 少 な く 、 ア ス フ ァ ル テ ン の Tg の 変 化 が DSC で は は っ き り 観 測 で き な か っ た が 、 こ の 実 験 に よ り ア ス フ ァ ル テ ン は SBS の PB ブ ロ ッ ク よ り PS ブ ロ ッ ク と 主 に 相 互 作 用 す る こ と が わ か っ た 。 ア ス フ ァ ル ト は n- ヘ プ タ ン に よ っ て ア ス フ ァ ル テ ン と マ ル テ ン に分離できるが、アスファルテンとマルテンは単一成分ではなく、 同じような性質を持つ一群の炭化水素の総称である。このため、 マ ル テ ン の 全 成 分 で は な く 、 一 部 の 成 分 と PB ブ ロ ッ ク が 相 溶 し て い る の で Tg の シ フ ト 量 は 少 な い の で あ ろ う 。 ア ス フ ァ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク も 同 様 で あ る 。 し か し 、 Tg は 確 実 に 変 化 し て い る ため、相溶または部分相溶と考えられる。 - 26 - ENDO ← Temperature / ℃ Fig. 2-4 DSC curves of mixtures of SBS and maltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SBS b; SBS:Maltene=60:40 c; SBS:Maltene=20:80 d; Maltene - 27 - ENDO ← Temperature / ℃ Fig. 2-5 DSC curves of mixtures of SBS and asphaltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SBS c; SBS:Asphaltene=20:80 b; SBS:Asphaltene=60:40 d; Asphaltene - 28 - 2-3-2 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の レ オ ロ ジ ー と 力 学 的 性 質 高分子混合物の相溶性は力学的性質の測定により判定できるこ とが知られており 15 ) 16 ) 、これは相構造が変化することを表してい る 。 し た が っ て 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 力 学 的 性 質 の 変 化 は混合物の相構造の変化を表している。混合物の力学的性質を調 査し、相構造の変化について検討した。 混 合 物 の 軟 化 点 、 針 入 度 の 変 化 を Fig.2-6 に 示 し た 。 SBS 添 加 量 の増加によって、軟化点が上昇し、針入度は小さくなった。これ は 混 合 物 の 熱 流 動 性 が 減 少 し 、 硬 さ が 増 し た こ と を 示 す 。 SBS の 添 加 量 に よ っ て 性 質 は 直 線 的 に 変 化 せ ず 、 3~10wt% の SBS 添 加 量 範 囲 で 大 き く 変 化 す る 。 3~10wt% の SBS 添 加 量 範 囲 に 針 入 度 、 軟 化 点 の し き い 値 が あ る こ と が わ か る 。 Fig.2-7 に 示 す よ う に 、 引 張 強 さ 、 伸 び 率 に お い て も 3~10wt% で 性 質 に 大 き な 変 化 が 見 ら れ た 。 一 方 、 SBS の 10wt% 以 上 の 添 加 で は 軟 化 点 、 針 入 度 と 同 様 に 小 さ な変化しかなかった。 こ れ ら の 結 果 は 、 3~10wt% の SBS 添 加 量 に お い て 臨 界 濃 度 が 存 在 し 、 SBS と ア ス フ ァ ル ト の 新 し い 相 構 造 が 生 じ た こ と を 暗 示 し て い る 。 力 学 的 性 質 の 大 き な 変 化 は 、 SBS が 連 続 相 を 形 成 す る た め と 考 え ら れ る 。 DSC 測 定 の 結 果 、 す な わ ち Tg の シ フ ト か ら 併 せ て 考 え る と 、 ア ス フ ァ ル ト の 2 つ の 成 分 と SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク が 特 定 の 相 手 と 部 分 相 溶 し 、 そ の 結 果 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 相 構 造 が 変 化 す る 。 し た が っ て 、 相 構 造 の 変 化 に よ り SBS /ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 軟 化 点 な ど の 力 学 的 性 質 が 変 化 す る と 考 え ら れ る 。 軟 化 点 の 上 昇 は 、 Tg の 変 化 が 影 響 し て い る の で は な く、相構造の変化が影響するためである。 比 較 の た め に 、 PS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 添 加 量 に よ る 針 入 度 と 軟 化 点 の 変 化 を Fig.2-8 に 示 す 。 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 ( Fig.2-6 ) と 比 較 し て 、 し き い 値 が あ る と い う こ と で は 類 似 し て い る が 、 大 き な 違 い が あ る 。 す な わ ち 、 SBS が 3~10wt% の 添 加 で - 29 - 140 60 130 50 110 40 100 30 90 80 20 Penetration / X0.1mm Softening point / ℃ 120 70 Softening point Penetration 60 50 10 0 0.0 2.0 4.0 6.0 8.0 10.0 12.0 14.0 16.0 18.0 20.0 SBS Content / % Fig. 2-6 Variation of softening point and penetration with SBS content of asphalt blends - 30 - 450 10000 400 1000 300 250 100 200 Elongation / % Tensile strength / N cm -2 350 150 10 100 Tensil strength Elongation 50 0 1 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 SBS Content / % Fig. 2-7 Variation of tensile strength and elongation with SBS content of asphalt blends at 10 °C by tensile speed of 500 mm/min - 31 - 70 110 60 100 50 90 40 80 30 Softening point Penetration 70 60 50 20 Penetration / X0.1mm Softening point / ℃ 120 10 0 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 100. 0 PS Content / % Fig. 2-8 Variation of softening point and penetration with PS content of asphalt blends - 32 - 性 質 が 大 き く 変 化 す る の に 対 し て 、 PS は 20wt% 以 上 の 添 加 で 性 質 の 大 き な 変 化 が 起 こ っ た こ と で あ る 。 前 述 の 結 果 よ り 、 PS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 は 部 分 相 溶 で あ る 。 少 な い PS 添 加 量 ( 20wt% ) で 海島構造が生じ、軟化点、針入度の変化から考えて、しきい値は 20~40wt% の 範 囲 に あ る と 考 え ら れ る 。 20wt% 以 上 の 添 加 で 物 性 が 変 化 す る の は 相 構 造 の 変 化 、 す な わ ち 、 PS の 連 続 相 が 形 成 す る た め と 考 え ら れ る 。 こ の 反 転 の た め の 臨 界 濃 度 ( 30~40vol% ) は 一 般 的な二成分混合系の連続相を形成する考え(パーコレーションス レショールド)と一致していた 17 ) 。 興 味 深 い こ と に 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 は PS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 と 比 較 し て 、 少 な い 添 加 量でもアスファルトの特性を大きく変化させることができる。 SBS は PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン 、 PB ブ ロ ッ ク と マ ル テ ン が 互 い に 部 分 相 溶 し 、 SBS が 相 溶 化 剤 と し て 働 く た め 、 少 な い 添 加 量 で 相 反 転 が 起 き る の だ ろ う 。 し か し 、 PS 単 独 で は 単 に ア ス ファルテンと相溶するだけで、アスファルトの全成分に対して大 きな影響を与えない。したがって、両者の相構造の変化のために 必要な添加量が異なり、物性が変化するしきい値に違いがでたの であろう。 2-3-3 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の ミ ク ロ 構 造 モ デ ル 一般に、アスファルトはアスファルテンがマルテン中に拡散す る多重コロイド構造であり、分子量分布も大きく、本質的に不均 一なシステムである 18 ) 19 ) 。 ア ス フ ァ ル ト ( 185 ℃ で 0.34dPa.s ) と SBS で は 溶 融 粘 度 に 大 き な 差 が あ り 、 混 合 物 の 相 構 造 が 変 化 し た 場合、溶融粘度に変化が見られるはずである。したがって、溶融 粘度の変化は相構造の変化(マトリックス相の反転)を反映する はずである。 185 ℃ に お け る SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 融 解 粘 度 と 混 合 時 間 の 関 係 を Fig.2-9 に 示 す 。 3wt% の SBS を 添 加 し た 混 合 物 は 、 融 解 粘 - 33 - SBS 3% SBS 10% Viscosity / dpa s 6 4 2 0 0 50 100 Time / min 150 Fig. 2-9 Time dependence of viscosity for the mixture of SBS and asphalt at 185 °C - 34 - 度は非常に小さく、粘度は観察された混合時間の範囲では明らか な 変 化 は 無 か っ た 。 し か し 、 10wt% の SBS を 添 加 し た 混 合 物 は 、 3wt% 混 合 物 よ り 高 い 融 解 粘 度 を 示 し 、 120 分 ま で 直 線 的 に 上 昇 し 、 150 分 以 上 で 一 定 に な っ た 。 SBS の 添 加 量 が 3wt% と 少 な い 時 に は SBS は 一 部 が 溶 解 、 ま た は 微 粒 子 状 に ア ス フ ァ ル ト に 分 散 し 、 ア ス フ ァ ル ト が 連 続 相 を 形 成 し て い る の で あ ろ う 。 し か し 、 SBS の 添 加 量 が よ り 多 い 時 ( 例 え ば 、 10wt% ) に は 、 SBS の 連 続 相 が 生 じ る た め 粘 度 変 化 が 起 き る と 考 え ら れ る 。 適 度 な 撹 拌 時 間 が SBS をアスファルトに微分散させ、相互作用を誘発し、相変化を起こ す た め に 必 要 で あ る 。 混 合 物 の モ ロ フ ォ ロ ジ ー は SBS の 添 加 量 と 混合時間の両方に依存する。 Fig.2-10 に SBS と ア ス フ ァ ル ト を そ れ ぞ れ ア ル ミ 板 に 溶 媒 キ ャ ス ト し 、 熱 融 着 に よ り 貼 り 合 わ せ た サ ン プ ル の 90 ゚ ピ ー リ ン グ 接 着 強度を示す。接着強度は熱融着温度が高くなることによって大き く な る が 、 直 線 的 で は な い 。 こ の 実 験 で 、 100 ℃ 以 上 に お い て 、 Fig.2-11 に 示 す よ う に SBS 側 の 接 着 破 損 表 面 で 変 色 を 観 察 し た 。 こ れ は 、 ア ス フ ァ ル ト の 構 成 成 分 が SBS の PS ブ ロ ッ ク の Tg で あ る 90 ℃ 以 上 で SBS に 拡 散 す る た め で あ ろ う 。 特 に 、 150 ℃ 以 上 で 加 熱処理されたサンプルは接着強度が非常に高くなる。なぜなら、 PS ブ ロ ッ ク の セ グ メ ン ト 融 解 ( 180 ℃ ) 20 ) は 、 ア ス フ ァ ル ト と SBS の拡散を容易にするからである。しかし、2 時間以上の長い時間、 150~200 ℃ で 保 持 す る と 、 Fig.2-12 に 示 す よ う に 、 接 着 強 度 は 明 ら かに減少した。これは、アスファルトの脆性に起因するもので、 そ の 低 分 子 量 成 分 ( 特 に マ ル テ ン ) が SBS に 拡 散 し 、 ア ス フ ァ ル トの粘弾性が小さくなり、脆くなるためである。 Tab.2-1 に 、 文 献 を 考 慮 し て SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル ト構成成分(アスファルテンとマルテン)の溶解度パラメーター ( SP ) を 示 し た 21 ) 22 ) 。 SP は 凝 集 エ ネ ル ギ ー 密 度 の 平 方 根 で 表 さ れ 、 分 子 間 引 力 の 強 さ を 表 し 、 SP が 大 き い ほ ど 極 性 が 強 い 。 SP の 近 - 35 - 4.00 3.50 Peel strength / N cm -1 3.00 2.50 2.00 1.50 1.00 0.50 0.00 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200 Heat-sealed temperature / C゚ Fig. 2-10 Peel strength of SBS and asphalt heat-sealed at various temperatures for 30 min - 36 - Time / min 30 60 120 180 20 Temperature / ℃ 50 100 150 200 Fig. 2-11 Effect of annealing temperature on adhesive surface between SBS and asphalt after peel test - 37 - 5.0 4.5 Peel strength / N cm -1 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 50℃ 150℃ 200℃ 1.5 1.0 0.5 0.0 20 40 60 80 100 120 Annealing time / min Fig. 2-12 Effect of annealing temperature and time on peel strength in SBS/asphalt film - 38 - Tab. 2-1 Solubility parameters of SBS and asphalt Polymer Solubility parameter (Asphalt) Asphaltene 8.0-10.0 Maltene below 8 (SBS) Polybutadiene 8.0 Polystyrene 9.1 - 39 - いものは互いに相溶しやすいことが経験的に知られている。マル テ ン の SP は ポ リ ブ タ ジ エ ン と 近 く 、 ア ス フ ァ ル テ ン の SP は ポ リ スチレンと近い。これはそれぞれが相溶しやすいことを示してお り、熱分析の結果と一致している。 さらに、中島と共同研究者 23 ) に よ り 報 告 さ れ た TEM 写真の結 果 か ら 考 え る と 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の ネ ッ ト ワ ー ク 構 造 に 1000nm 未 満 の ア ス フ ァ ル ト 微 粒 子 を 見 る こ と が で き る 。 も し 、 臨 界 濃 度 に お い て SBS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 が 5wt% の SBS を 含 み 、 ア ス フ ァ ル ト 微 粒 子 が こ の SBS に よ り 被 覆 さ れ る な ら ば 、 SBS の 厚 さ は そ の 体 積 分 率 か ら 考 え て 10nm 未 満 で あ る 。 こ の 厚 さ は 、 伸 ば さ れ た SBS 分 子 鎖 の 約 半 分 で あ る 。 TEM 写 真 か ら SBS 相 と し てとらえている部分は明らかにこの値よりも大きい。これはオス ミ ウ ム 酸 染 色 に よ り PB ブ ロ ッ ク の 不 飽 和 結 合 を と ら え て い る た めであろう。したがって、相溶化剤として作用することができる SBS 相 は ア ス フ ァ ル ト 成 分 に 存 在 し 、 新 し い ミ セ ル を 形 成 す る 。 こ の 概 念 図 を Fig.2-13 に 示 す 。 一 般 的 に 体 積 分 率 の 大 き い 成 分 ( 75% 以 上 ) 、 ま た は 溶 融 粘 度 の低い成分(この場合、アスファルト)がマトリックス相になる 傾向にある。この場合、アスファルトがマトリックス相になるは ず で あ り 、 実 際 に 少 な い SBS の 添 加 量 で は ア ス フ ァ ル ト が マ ト リ ッ ク ス 相 に な っ て い る 。 10wt% 程 度 の 添 加 の SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 を 形 成 す る 為 に は Einstein の 粘 度 式 24 ) から導きだした η D( 分 散 相 の 粘 度 ) κ = η C( マ ト リ ッ ク ス 相 の 粘 度 ) の比(κ)が 1 以上でなければならない。したがって、マトリッ ク ス 相 ( SBS ) の 粘 度 は 分 散 相 ( ア ス フ ァ ル ト ) よ り 低 い 必 要 が - 40 - PB unit PS unit 10nm SBS phase Asphalt phase (Asphaltene) (Maltene) SBS 10nm Asphalt 1000nm Fig. 2-13 SBS Schematic model in surface between asphalt and - 41 - あ る 。 し か し 、 SBS の 粘 度 は ア ス フ ァ ル ト の 粘 度 ( 185 ℃ で 0.3dPa.s ) と 比 較 し て 非 常 に 高 く 、 こ の 式 に 当 て は め る と κ は 1 以 上 に な り 、 こ れ は 今 回 の 実 験 結 果 と 矛 盾 す る 。 す な わ ち 、 SBS が アスファルトと単純に分散混合しただけでなく、互いに影響して いることを示している。 実 験 結 果 に 基 づ き 、 185 ℃ で SBS を ア ス フ ァ ル ト に 混 合 し て い く 過 程 の SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 構 造 モ デ ル を Fig.2-14 に 示 す 。 この過程は次のとおりである。 (a) : ア ス フ ァ ル ト の 構 造 は マ ル テ ン に ア ス フ ァ ル テ ン が コ ロ イ ド 状に分散しているものである。 (b) : 高 温 ( 185 ℃ ) で マ ト リ ッ ク ス 相 の ア ス フ ァ ル ト に SBS を 少 量 添 加 ( 3~5wt% 未 満 ) す る こ と に よ っ て 、 SBS の 分 子 鎖 は ア スファルテンとマルテンの間の界面に集中する。アスファル テ ン と SBS の PS ブ ロ ッ ク が 選 択 的 に 相 溶 す る と と も に 、 マ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク の 非 相 溶 性 に よ り 、 不 安 定 な ミ セ ル を 形成する。アスファルトがマトリックス相になっているため、 混合物の粘度、力学的性質の変化はほとんどみられない。 (c) : SBS を よ り 多 く 添 加 す る 事 に よ っ て 、 ア ス フ ァ ル テ ン / マ ル テ ン 界 面 の SBS 濃 度 は 大 き く な る 。 そ し て 、 マ ル テ ン 相 中 に 微 粒 子 状 に 分 散 し た SBS ミ セ ル の 構 造 が 生 じ る 。 こ の 段 階 で 、 混合物の粘度、力学的性質に小さな変化が生じる。 (d) : 最 後 に 、 SBS 添 加 量 が 、 臨 界 値 に 達 す る 時 、 ア ス フ ァ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク が 、 マ ル テ ン と PB ブ ロ ッ ク が 部 分 相 溶 で あ る こ と に よ り 、 SBS ( 分 散 相 ) と ア ス フ ァ ル ト ( マ ト リ ッ ク ス 相 ) は 相 の 反 転 を 起 こ し 、 SBS の 連 続 的 な 相 ( マ ト リ ッ ク ス 相)になる。この時、アスファルテンとマルテンも相の反転 を 起 こ す 。 ま た 、 SBS 相 は Fig.2-13 に 示 し た よ う に 非 常 に 薄 い 。 SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 に な っ た 時 、 す べ て の ア ス フ ァ ル テ ン 界 面 が SBS に よ り 占 め ら れ る の で 構 造 が 安 定 す る 。 混 合 物 の - 42 - Fig. 2-14 Schematic model of SBS/asphalt mixtures at 185 °C a; Asphalt b; SBS (3~5%)/Asphalt c; SBS (<5%)/Asphalt d; SBS (5~10%)/Asphalt e; SBS (<10%)/Asphalt - 43 - 粘度と力学的性質は急激に変化する。 (e) : SBS 添 加 量 が 10wt% を 越 え る と SBS の マ ト リ ッ ク ス 相 が 増 え 、 力学的性質の変化は小さくなる。 こ こ で は 、 SBS は 相 溶 化 剤 と し て 働 く だ け で は な く 、 相 構 造 を 安 定 さ せ る 役 割 を 果 た す と 考 え ら れ る 。 こ の 時 、 両 末 端 の PS ブ ロックとアスファルテンの相互作用が重要である。このモデルに よって、少ない添加量で混合物の性質が大きく変化する理由が説 明できる。 2-4 結 論 SBS と ア ス フ ァ ル ト の 配 合 比 を 変 え た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 を 作 製 し 、 そ れ ぞ れ の DSC 測 定 、 軟 化 点 、 針 入 度 な ど の 力 学 的 性 質 を 調 べ た 。 そ の 結 果 、 低 分 子 量 成 分 の マ ル テ ン ( n- ヘ プ タ ン に よ り ア ス フ ァ ル ト か ら 分 別 さ れ た 可 溶 成 分 ) は SBS の PB ブ ロ ックと優先的に部分相溶するのに対して、高分子量成分のアスフ ァ ル テ ン ( n- ヘ プ タ ン 不 溶 成 分 ) は PS ブ ロ ッ ク と 主 に 部 分 相 溶 す る こ と が Tg の 変 化 に よ り わ か っ た 。 し か し 、 ア ス フ ァ ル テ ン 、 マルテンともに単一成分ではなく多成分系であり、その一部の成 分 と SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク と が 選 択 的 に 部 分 相 溶 し て い る た め 、 Tg の 変 化 は あ ま り 大 き く な い 。 レ オ ロ ジ ー お よ び 力 学 的 性 質 の 測 定 に よ り 、 少 な い SBS 添 加 量 ( 例 え ば 、 10wt% 未 満 ) で さ え 混 合 物 の 粘 度 、 針 入 度 、 お よ び 引 張強さが大きく変化することを示した。これは、相構造が変化す るためであると考えられる。 SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク が ア ス フ ァ ル ト 2 成 分 に 対 し て 、 相 溶 化 剤的な働きをする混合状態のモデルを提案し、このモデルにより、 SBS の 少 な い 添 加 量 で ア ス フ ァ ル ト の 力 学 的 性 質 を 大 き く 改 質 で きる理由を説明した。 - 44 - 2-5 参考文献 1 ) E. Diani, M. D. Via, M. G. Cavaliere, in A. M. Usmani, Ed., "ASHALT SCIENCE AND TECHNOLOGY", Marcel Dekker, N. Y, 1997, pp 279-295. 2 ) C. Grimm, "Application of microscopic methods in the field of polymer-bitumen binders" 4th Eurobitume Symp., Madrid, 1989, p 54-59. 3 ) D. Whiteoak, "The Shell Bitumen Handbook" Shell Bitumen UK, Surrey, 1990, pp 149-168. 4 ) H. J. Neumann, "Required properties and composition of polymer-bitumen either for waterproofing or road construction" Rilem Seminar, Dubrovnik, 1999, pp 25-34. 5 ) A. Adedeji, T. Grunfelder, F. S. Bates, C. W. Macosko, M. Stroup-Gardiner, and D. E. Newcomb, "Polymer Alloys Blends", Society of Plastics Engineers, USA, 1995, pp 602-625. 6 ) R. Ho, A. Adedeji, D. W. Giles, D. A. Hajduk, C. W. Macosko, F. S. Bates, J.Polym. Sci., 35, 2857 (1997). 7)久 保 亮 五 , 長 倉 三 郎 , 井 口 洋 夫 , 江 沢 洋 編 , "理 化 学 辞 典 第 4 版 ", 岩 波 書 店 , 1993, p 250. 8 ) 日 本 道 路 協 会 編 , " 舗 装 試 験 法 便 覧 ", 日 本 道 路 協 会 , 1995, p 437. 9 ) 栗 原 福 次 , " 高 分 子 材 料 大 百 科 " 日 刊 工 業 新 聞 , 1999, p 90. 10 ) S. Krause, in D. R. Paul, S. Newman, Ed., "Polymer Blends vol.1", Academic Press, N. Y, 1978, p 15. 11 ) 高 分 子 学 会 編 , " ポ リ マ ー ア ロ イ 基 礎 と 応 用 " 東京化学同 人 , 1987, pp 135-137. 12 ) A.Adedeji, T.Grunfelder, F.S.Bates, C.W.Macosko, M. Stroup-Gardiner, and D.E. Newcomb, Polym.Eng.Sci., 36. 1707 (1996). 13 ) H.Tanaka, M.Kawatuki, K.Takagi, Asphalt, 198, 37 (1999). - 45 - 14 ) E. J. Barth, in "Asphalt, science and technology" Gordon and Breach, N.Y, 1962, p 117. 15 ) C. F. Hammer, Macromolecules, 4, 69 (1971). 16 ) 小 佐 井 興 一 , 東 野 剛 , 日 本 接 着 協 会 誌 , 11(1), 2 (1975). 17 ) H.E.Stanley, in T.W.Burkherdt and J.M.J.van Leeuwen Ed., "Real Space Renormalization", Springer-Verlag, N.Y, 1982, pp 169-206. 18 ) E. J. Barth, in "Asphalt, science and technology" Gordon and Breach, N.Y, 1962, p 10. 19 ) S. J. Park, J. Escobedo, G. A. Mansoori, in T.F. Yen, Ed., "Asphaltene and asphalts, 1," Elsevier, Amsterdam, 1994, pp 179-205. 20 ) R.F. Boyer, "Polymer Yearbook," Vol. 2, Harwood Academic Publishers, N.Y., 1985, p 234. 21 ) Ten Fu Yen, in O. C. Mulline and E. Y. Sheu, Ed., "Structures and Dynamics of Aspaltenes," Plenum Press, 1998, p 4. 22 ) 18. J.B.Gardiner, Rubber Chem. Technol., 43, 370 (1970). 23 ) 中 島 滋 夫 , 出 口 隆 宏 , 斉 藤 章 , ゴ ム 協 会 誌 , 72, 48 (1999). 24 ) A. Einstein, Ann. Physik, 17, 289, 549 (1905); ibid., 34, 591 (1911). - 46 - 第三章 スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン ブロック共重合体とアスファルトの相溶性 3-1 緒 言 ス チ レ ン - ブ タ ジ エ ン - ス チ レ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SBS ) に よ る ア ス フ ァ ル ト の 改 質 は 10wt% 未 満 の 少 量 の 添 加 で さ え 、 大 き な 改 質 効 果 が あ る 。 前 章 で は n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 に よ っ て アスファルトをマルテンとアスファルテンの 2 つの成分 1) 2) に分 別 し 、 こ の 2 成 分 が SBS と ど の よ う に 相 溶 す る か を 検 討 し た 。 そ の 結 果 、 少 量 の SBS を 添 加 す る こ と に よ り 、 マ ル テ ン は SBS の ブ タ ジ エ ン ( PB ) ブ ロ ッ ク と 、 ア ス フ ァ ル テ ン は ス チ レ ン ( PS ) ブロックと部分相溶し、アスファルトに対して相溶化剤として働 き 、 相 構 造 を 変 化 さ せ る 。 SBS は ア ス フ ァ ル ト の 特 定 の 成 分 と 部 分相溶することにより相構造を変化させる、という新しいミクロ 構造モデルを提案した 3) 。このため、他の高分子に比べて少量の 添加でも大きな改質効果があることがわかった。 し か し 、 SBS は ゴ ム 中 間 ブ ロ ッ ク の PB ブ ロ ッ ク に 不 飽 和 結 合 を 持 つ た め 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 、 い わ ゆ る 改 質 ア ス フ ァ ルトの生産、貯蔵、使用時に加わる熱履歴により酸化などの劣化 が 起 こ り や す い 。 熱 や 酸 素 に よ り ラ ジ カ ル が 発 生 し 、 PB ブ ロ ッ ク の 結 合 が 繰 り 返 さ れ 架 橋 す る こ と で 劣 化 が 起 き る 。 SBS の 劣 化 過 程 を Fig.3-1 に 示 し た 。 SBS の 劣 化 は 溶 融 ア ス フ ァ ル ト へ の 添 加 直後から少しずつ始まり、最終的にはアスファルトと分離し、改 質効果を失ってしまう。このため、混合槽を窒素置換する、老化 防止剤を添加するなどの対策がとられている。しかし、老化防止 剤の添加は高い温度で持続的に効果のあるものが少なく、表面に ブリードするなど、ほかの物性に及ぼす影響も大きい。また、混 合槽の窒素置換は設備上の問題などがあり、決定的な解決策であ - 47 - Polystyrene H H H H | | | | ( C-C=C-C | | H H )n Polystyrene Polystyrene H H H | | | ・ ( C-C=C-C | | H H )n Polystyrene Crosslinking Degradation Fig. 3-1 Thermal degradation process of SBS - 48 - るとは言えない。また、常温時でも紫外線、オゾンなどにより徐 々に劣化する。 このため、分子構造(ゴム中間ブロック)に不飽和結合を持た な い ス チ レ ン - エ チ レ ン / ブ チ レ ン - ス チ レ ン 共 重 合 体 ( SEBS ) や ス チ レ ン - エ チ レ ン / プ ロ ピ レ ン - ス チ レ ン 共 重 合 体 ( SEPS ) でアスファルトを改質し、劣化しにくい改質アスファルトを作る ことが検討されている 4) 5) 6) 。加熱溶融状態で劣化しにくく、常温 時 で も 安 定 し た 性 能 を 維 持 で き る 改 質 材 と し て SEPS 、 SEBS は SBS には無い特徴を持っており、工業的に使用する意味は大きい。 本 章 で は 、 SBS と 同 様 の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 で あ り 、 さ ら に 、 マ ル テ ン と の 相 溶 性 が 期 待 さ れ る エ チ レ ン /プ ロ ピ レ ン ( EP ) ブ ロ ッ ク を 持 つ SEPS を 試 料 と し て 用 い た 。 SBS と 構 造 の 似 た SEPS が ア ス フ ァ ル ト の 成 分 に 対 し て 相 溶 化 剤 と し て 働 き 、 相構造を安定させることができるのか、また、どの程度力学的性 質が向上するか併せて検討した。 また、最後にアスファルトのスチレン系ブロック共重合体の混 合について総括した。 3-2 3-2-1 試料及び実験 試 料 ア ス フ ァ ル ト ( ス ト レ ー ト ア ス フ ァ ル ト < 針 入 度 60-80 JIS K2207 > ) は 昭 和 シ ェ ル 石 油 ㈱ か ら 、 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 の SEPS ( ク レ イ ト ン G1730 、 ス チ レ ン / ゴ ム = 23/77 、 Mw:93,000 ) は ク レ イ ト ン ポ リ マ ー ㈱ か ら 、 ホ モ ポ リ マ ー の ス チ レ ン ( ハ イ マ ー ST120 、 Mw:10,000) は三洋化成工業㈱から、エチレン-プロピレンコポリ マ ー ( EPM ) ( ㈱ JSR EP01P 、 Mw:190,000 ) は ㈱ JSR か ら 得 た 。 マ ル テ ン と ア ス フ ァ ル テ ン は n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 ( 石 油 学 会 法 ( JPI-5S-22 ) 7 ) 準 拠 ) に よ り 、 ア ス フ ァ ル ト か ら 可 溶 成 分 (マルテン)、不溶成分(アスファルテン)に分離した。得られ - 49 - た 成 分 は 100~120 ℃ で 恒 量 化 し 、 溶 剤 を 完 全 に 除 去 し た 。 混 合 は ス テ ン レ ス 容 器 中 で 加 熱 溶 融 (185 ℃ ) し た ア ス フ ァ ル ト 、 ま た は そ の 成 分 に 、 予 熱 し た SEPS ま た は PS を 徐 々 に 添 加 し た 。 そ し て 、 ホ モ ミ キ サ ー ( 特 殊 機 化 工 業 ㈱ 製 MARK Ⅱ ) の 回 転 数 を 3000r.p.m 、 温 度 を 185 ℃ に 保 ち 、 120 分 間 混 合 し た 。 混 合 物 を 1mm 厚のシート状に成型し、室温まで冷却し、これを試料とした。 3-2-2 熱分析 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) を 決 定 す る た め の DSC 測 定 は マ ッ ク サ イ エ ン ス 社 の DSC3100 を 使 い 、 空 気 雰 囲 気 中 で お こ な っ た 。 液 体 窒 素 で サ ン プ ル を 冷 却 し 、 測 定 温 度 範 囲 -100~120 ℃ 、 昇 温 速 度 10 ℃ /min の 条 件 で 測 定 し た 。 Tg は DSC 曲 線 よ り 決 定 し た 。 3-2-3 針入度及び軟化点 針 入 度 は 溶 融 状 態 の SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 を カ ッ プ に 取 り 、 室 温 ま で 冷 却 後 、 サ ン プ ル を 4 時 間 以 上 25 ℃ の 水 中 で 静 置 し 、 JIS K2207 に 定 め ら れ た 針 入 度 試 験 器 を 使 い 、 針 の 侵 入 深 さ を 測 定 した。 軟 化 点 は 、 JIS K2207 の Ring & Ball 法 に よ り 、 グ リ セ リ ン 液 中 で 昇 温 速 度 5 ℃ /min で 測 定 し た 。 3-2-4 力学的性質 力 学 的 性 質 は 、 測 定 温 度 10 ℃ 、 引 張 速 度 500mm/min で JIS A6021 の 方 法 に よ り 、 ㈱ 島 津 製 作 所 の オ ー ト グ ラ フ ( AGS-500B ) で 測 定 した。引張強さと伸び率は、プロットされた応力-ひずみ曲線 ( S-S curve ) か ら 得 た 。 - 50 - 3-3 3-3-1 結果と考察 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 熱 分 析 SEPS の 添 加 量 を 変 え た SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 を 作 製 し 、 そ の Tg を 決 定 す る た め に DSC 測 定 を 行 っ た 。 Tg の 変 化 は 、 混 合 物 の構成要素間の相互作用を直接的に反映し、混合物の相溶性を判 定することができる 8) 。 ( 2 つ の 混 合 物 の Tg が 近 づ く 。 ) Fig.3-2 は SEPS と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 比 を 変 え た 配 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 DSC 曲 線 か ら 、 SEPS 添 加 量 の 増 加 に よ っ て 、 ア ス フ ァ ル ト の 8 ℃ の Tg が -23 ℃ に 低 下 し 、 -30 ℃ の Tg も 低 下 す る 。 ま た 、 ア ス フ ァ ル ト の 添 加 量 の 増 加 に よ っ て 、 -61 ℃ の EP ブ ロ ッ ク の Tg が -54 ℃ に 上 昇 し 、 58 ℃ の PS ブ ロ ッ ク の Tg も 低 下 し て い る こ と が 分 か る 。 こ の PB ブ ロ ッ ク の Tg の 上 昇 と 、 ア ス フ ァ ル ト の Tg の 低 下 は 混 合 物 が 相 溶 す る こ と を 示 唆 す る 。 Tg の 変 化 量 が 小 さ いのは、前章で述べたようにアスファルトの全体と相溶している わ け で は な い か ら で あ ろ う 。 前 章 の 結 果 よ り 、 -30 ℃ 付 近 の ア ス フ ァ ル ト の Tg は 、 マ ル テ ン 成 分 の セ グ メ ン ト 運 動 に 起 因 す る 。 し た が っ て 、 こ の 結 果 は SEPS の EP ブ ロ ッ ク は マ ル テ ン と 部 分 相 溶している可能性を示す。 SEPS の 2 ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル ト の 2 成 分 の 間 の 相 互 作 用 の 情 報 を 得 る た め に 、 ア ス フ ァ ル ト を 、 n- ヘ プ タ ン の 溶 剤 分 別 に よ り 2 つの成分、低分子量成分のマルテン、および高分子量成分のア ス フ ァ ル テ ン に 分 離 し た 。 不 溶 性 の 成 分 の ア ス フ ァ ル テ ン は 、 35 ℃ に Tg を 持 つ 暗 褐 色 の ガ ラ ス 質 固 体 で あ り 、 全 体 の ア ス フ ァ ル ト の 16wt% を 占 め 、 可 溶 性 成 分 の マ ル テ ン は -36 ℃ に Tg を 持 つ 非 常 に 粘 着 性 の 高 い 粘 ち ょ う 体 で 、 全 体 の ア ス フ ァ ル ト の 84wt% を 占める。しかし、それぞれの成分は単一成分ではなく、似たよう な性質を持つ一群の炭化水素の総称である。 Fig.3-3 に SEPS と マ ル テ ン の 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 EP ブ ロ ッ ク の Tg は マ ル テ ン 濃 度 の 増 加 に よ っ て 、 -61 ℃ か ら -56 ℃ に 上 - 51 - ENDO ← Temperature / °C Fig. 3-2 DSC curves of mixtures of SEPS and asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SEPS c; SEPS:Asphalt=10:90 e; Asphalt b; SEPS:Asphalt=20:80 d; SEPS:Asphalt=5:95 - 52 - ENDO ← Temperature / °C Fig. 3-3 DSC curves of mixtures of SEPS and maltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SEPS c; SEPS:Maltene=25:75 b; SEPS:Maltene=50:50 d; Maltene - 53 - 昇 す る 。 Tg の シ フ ト 量 が 小 さ い の は マ ル テ ン の す べ て の 成 分 と EP ブ ロ ッ ク が 相 溶 し て い る の で は な く 、 一 部 の 成 分 と 相 溶 し て い る た め で あ る と 考 え ら れ る 。 な お 、 PS ブ ロ ッ ク の 含 有 量 ( 23% ) が 少 な い た め 58 ℃ の PS ブ ロ ッ ク の 変 化 は 確 認 で き な か った。 モ デ ル 実 験 と し て 、 Fig.3-4 に SEPS の EP ブ ロ ッ ク を 想 定 し た EPM と マ ル テ ン の 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 EPM の -51 ℃ の Tg は マ ル テ ン 濃 度 の 増 加 に よ り -45 ℃ に 上 昇 し 、 -36 ℃ の マ ル テ ン の Tg は -39 ℃ に 低 下 す る 。 さ ら に 、 EPM は 結 晶 性 で あ り 、 ポ リ エ チ レ ン 結 晶 の 融 点 降 下 も 観 測 で き る 。 こ の 結 果 よ り 、 EPM と マ ル テ ン は 少 な く と も 部 分 相 溶 で あ り 、 マ ル テ ン と EP ブ ロ ッ ク は 部 分 相 溶 で あ る と い う Fig.3-3 の 結 果 を 裏 付 け る 。 Fig.3-5 に SEPS / ア ス フ ァ ル テ ン 混 合 物 の DSC 曲 線 を 示 す 。 ア ス フ ァ ル テ ン の 添 加 量 を 増 や す と 、 -61 ℃ の EP ブ ロ ッ ク の Tg は ほ と ん ど 変 化 し な い の に 対 し て 、 58 ℃ の PS ブ ロ ッ ク の Tg は 低 下 す る 。 こ れ は ア ス フ ァ ル テ ン が PS に 部 分 相 溶 し て い る こ と を 示 唆 す る 。 ア ス フ ァ ル テ ン の 混 合 に よ っ て 、 SEPS の EP ブ ロ ッ ク の Tg が ほ と ん ど 変 化 し な い の に 対 し て 、 SEPS の PS ブ ロ ッ ク の Tg は 低 下 す る 。 ア ス フ ァ ル テ ン は SEPS の EP ブ ロ ッ ク よ り PS ブ ロ ッ ク と主に相互作用を持つことがわかる。 SEPS の PS ブ ロ ッ ク と 比 較 可 能 な Mw:10,000 の ス チ レ ン ホ モ ポ リ マ ー ( PS ) を 、 ア ス フ ァ ル テ ン と 混 合 し た 。 こ れ ら の 混 合 物 の DSC 曲 線 を Fig.3-6 に 示 す 。 35 ℃ の ア ス フ ァ ル テ ン の Tg が 上 昇 し 、 61 ℃ の PS の Tg が ア ス フ ァ ル テ ン 濃 度 の 増 加 に よ っ て 低 下 す る 。 こ の 結 果 は 、 PS と ア ス フ ァ ル テ ン が あ る 程 度 相 溶 性 で あ る こ と を 示 し て い る 。 こ れ は Fig.3-5 の 結 果 と も 一 致 し 、 ま た 前 章 で 述 べ た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で の 結 果 と も 一 致 す る 。 ア ス フ ァ ル テンもマルテンと同様に単一成分ではないため、アスファルテン の 一 部 の 成 分 と PS が 相 溶 し て い る の で Tg の シ フ ト 量 は 少 な い 。 - 54 - ENDO ← Temperature / °C Fig. 3-4 DSC curves of mixtures of EPM and maltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; EPM c; EPM:Maltene=25:75 b; EPM:Maltene=50:50 d; Maltene - 55 - ENDO ← Temperature / °C Fig. 3-5 DSC curves of mixtures of SEPS and asphaltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; SEPS c; SEPS:Asphaltene=25:75 b; SEPS:Asphaltene=50:50 d; Asphaltene - 56 - ENDO ← Temperature / °C Fig. 3-6 DSC curves of mixtures of PS and asphaltene extracted from n-heptane solution of asphalt at heating rate of 10 °C/min a; PS b; PS:Asphaltene=50:50 - 57 - c; Asphaltene Tg の 測 定 結 果 よ り 、 SEPS の EP ブ ロ ッ ク は マ ル テ ン と 部 分 相 溶 し 、 PS ブ ロ ッ ク は ア ス フ ァ ル テ ン と 部 分 相 溶 す る こ と が わ か っ た 。 こ の 結 果 は 、 SBS と 同 様 に SEPS も ア ス フ ァ ル ト に 対 し て 相 溶化剤的に働き、相構造を変化させ、少ない添加量で力学的性質 を大きく変える可能性があることを示す。 3-3-2 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の レ オ ロ ジ ー と 力 学 的 性 質 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 相 構 造 の 変 化 を 判 定 す る た め に は 力学的性質の測定が有効な手段であることは前章で述べた。した が っ て SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 力 学 的 性 質 を 測 定 し 、 相 構 造 の変化について検討した。 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 力 学 的 性 質 は 、 JIS の 試 験 方 法 に 基 づ き 測 定 し た 。 Fig.3-7 に SEPS 添 加 量 と 軟 化 点 、 針 入 度 の 関 係 を 示 す 。 SEPS 添 加 量 の 増 加 に よ っ て 、 軟 化 点 は 高 く な り 、 針 入 度 は 低 下 す る 。 す な わ ち 、 SEPS の 添 加 に よ り 、 ア ス フ ァ ル ト が 改 質 さ れ た こ と を 示 す 。 さ ら に 、 Fig.3-8 に 示 す 引 張 強 さ 、 伸 び 率 に お い て も 3~10wt% の SEPS 添 加 量 の 間 で 引 張 強 さ 、 伸 び 率 が 大 き く 変 化 し た 。 前 章 と 同 様 に 3~10wt% の SEPS 濃 度 の 間 に 力 学 的 性 質 が 大 きく変化するしきい値がある。この領域で、相の変化が生じてい る の で あ ろ う 。 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 電 子 顕 微 鏡 ( TEM ) 写 真 で 観 察 さ れ た 10wt% 程 度 の 添 加 で SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 に な る こと 9) と 同 様 で あ ろ う 。 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で も SEPS が マ トリックス相になることにより混合物の力学的性質が大きく変化 する。 Fig.3-9 に 比 較 と し て 示 し た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 軟 化 点 、 針入度の変化と同様な傾向を示している。ただし、力学的性質の 改 質 効 果 は SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 ほ ど 大 き く な い 。 こ れ は 連 続 相 と な っ た SEPS 自 体 の 力 学 的 性 質 に 起 因 す る も の で あ る 。 ブ ロック共重合体とアスファルトの混合物において力学的性質がど - 58 - 70 110 60 100 50 90 40 80 30 70 20 Softening point Penetration 60 50 Penetration / X 0.1mm Softening point / °C 120 10 0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 SEPS Content / % Fig. 3-7 Variation of softening point and penetration with SEPS content of asphalt blends - 59 - 400 10000 Tensile strength Elongation 350 300 250 100 Elongation / % Tensile Strenbth / N cm -2 1000 200 10 150 100 1 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 SEPS Content / % Fig. 3-8 Variation of tensile strength and elongation with SEPS content of asphalt blends at 10 °C by tensile speed of 500 mm/min - 60 - 140 70 130 60 Softening point / °C 50 110 100 40 90 30 80 20 Penetration / X 0.1mm 120 70 Softening Point Penetration 60 50 10 0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 SBS Content / % Fig. 3-9 Variation of softening point and penetration with SBS content of asphalt blends - 61 - の程度変化するかは連続相となるブロック共重合体に依存する。 3-3-3 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の ミ ク ロ 構 造 モ デ ル ア ス フ ァ ル ト ( 185 ℃ で 0.34dPa.s ) と SEPS で は 溶 融 粘 度 に 大 き な差があり、混合物の相構造が変化した場合、溶融粘度に変化が 見られるはずである。これはマトリックス相となる成分の性質 (粘度)に影響されるためである。 撹 拌 温 度 185 ℃ に お け る SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 溶 融 粘 度 と 撹 拌 時 間 の 関 係 を Fig.3-10 に 示 す 。 SEPS を 3wt% 添 加 し た 系 は 、 融解粘度は非常に低く、溶融粘度の変化はほとんどなかった。し か し 、 SEPS を 10wt% 添 加 し た 系 は 時 間 と 共 に 相 対 的 に よ り 高 い 溶 融 粘 度 を 示 す 。 こ の 結 果 は 前 章 の SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 粘 度 変 化 と 同 様 で あ る が 、 SEPS の 溶 融 粘 度 は SBS よ り 低 い た め 絶 対 値 は 小 さ い 。 ( SBS 混 合 物 が 6dpa.s 、 SEPS 混 合 物 が 3dpa.s ) 3wt% の 低 い SEPS 添 加 量 で は 、 SEPS は 一 部 溶 解 ま た は 微 粒 子 状 に ア ス フ ァ ル ト 中 に 分 散 し て い る が 、 SEPS 添 加 量 が よ り 高 い 時 ( 例 え ば 、 10wt% ) の 時 に は 、 SEPS の 連 続 相 が 形 成 す る た め と 考 え ら れ る。適度な撹拌時間がアスファルトを微分散させ、相変化を起こ させるのに必要である。 Tab.3-1 に 、 文 献 を 考 慮 し て SEPS の 2 つ の ブ ロ ッ ク 及 び ア ス フ ァ ル ト 構 成 成 分 の 溶 解 度 パ ラ メ ー タ ー ( SP ) を 示 し た 10 ) 11 ) 。マルテ ン の SP は EP と 近 く 、 ア ス フ ァ ル テ ン の SP は PS と ほ ぼ 同 程 度 で あ っ た 。 SP が 近 い と い う こ と は そ れ ぞ れ が 相 溶 し や す い こ と を 示 し て い る 。 以 上 の 結 果 よ り 、 SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 で も SBS/ ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 と 同 様 な 相 溶 性 を 持 つ と 考 え ら れ る 。 以 上 の 結 果 か ら 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 と 同 様 な モ デ ル 図 で SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の 混 合 過 程 を 説 明 で き る 。 こ れ を Fig.3-11 に 示 し た 。 (a) : ア ス フ ァ ル ト は ア ス フ ァ ル テ ン が マ ル テ ン に コ ロ イ ド 状 に 分 - 62 - 4 Viscosity / dpa s SEPS 3% SEPS 10% 2 0 0 50 100 150 Time / min Fig. 3-10 Time dependence of viscosity for the mixture of SEPS and asphalt at 185 °C - 63 - Tab. 3-1 Solubility parameters of SBS and asphalt Polymer Solubility parameter (Asphalt) Asphaltene 8.0-10.0 Maltene below 8 (SEPS) Ethylene-Propylene 8.0 Polystyrene 9.1 - 64 - Fig. 3-11 Schematic model of SEPS/asphalt mixtures at 185 °C a; Asphalt b; SEPS (3~5%)/Asphalt c; SEPS (<5%)/Asphalt d; SEPS (5~10 %)/Asphalt e; SEPS (<10 %)/Asphalt - 65 - 散した構造である。 (b) : 高 温 ( 185 ℃ ) で ア ス フ ァ ル ト に SEPS を 少 量 添 加 ( 3~5wt% ) す る と 、 SEPS の 分 子 鎖 は ア ス フ ァ ル テ ン と マ ル テ ン の 間 の 界 面 に 集 中 す る 。 ア ス フ ァ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク は 部 分 相 溶 性 で あ り 、 そ の 相 互 作 用 と マ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク 間 の 非 相 溶性が、不安定なミセルを形成する。アスファルトがマトリ ックス相であるため、混合物の粘度、力学的性質の変化はほ とんど見られない。 (c) : SEPS を よ り 多 く 添 加 す る と 、 ア ス フ ァ ル テ ン / マ ル テ ン 界 面 の SEPS 濃 度 は 大 き く な る 。 そ し て 、 マ ル テ ン 相 中 に 微 粒 子 状 に 分 散 し た SEPS ミ セ ル の 構 造 が 生 じ る 。 こ の 段 階 で 、 混 合物の粘度、力学的性質に小さな変化が生じる。 (d) : 最 後 に 、 SEPS 濃 度 が 、 臨 界 値 ( 約 5~10wt% ) に 達 す る と 、 ア ス フ ァ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク が 、 マ ル テ ン と EP ブ ロ ッ ク が 部 分 相 溶 性 で あ る た め 、 SEPS と ア ス フ ァ ル テ ン 相 は 相 の 反 転 を 起 こ す 。 EP ブ ロ ッ ク と 部 分 相 溶 し た マ ル テ ン の 界 面 を PS ブロックと部分相溶したアスファルテンが覆う構造に反転し、 SEPS の 連 続 相 ( マ ト リ ッ ク ス 相 ) に な る 。 SEPS が マ ト リ ッ ク ス 相 に な っ た 時 、 す べ て の ア ス フ ァ ル テ ン 界 面 が SEPS に より占められるので構造が安定する。混合物の粘度と力学的 性質は急激に変化する。 (e) : SEPS 添 加 量 が 10wt% を 越 え る と SBS の マ ト リ ッ ク ス 相 が 増 え 、 力学的性質の変化は小さくなる。 こ こ で は 、 SEPS は 相 溶 化 剤 と し て 働 く だ け で は な く 相 構 造 を 安 定 さ せ る 役 割 を 果 た す 。 ア ス フ ァ ル ト の 2 成 分 と SEPS の 2 つ のブロックが特定の相手と部分相溶することは 3 成分高分子ブレ ンド系において相互の界面張力を下げるためにブロック共重合体 を添加する事例と同様な効果があると考えられる - 66 - 12 ) 13 ) 。少ない添 加 量 で 混 合 物 の 性 質 が 大 き く 変 化 す る 理 由 を SBS / ア ス フ ァ ル ト 混合物と同様なモデルで説明できる。 3-3-4 スチレン系ブロック共重合体とアスファルトの混合 今 ま で 述 べ て き た よ う に 、 SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 と SEPS / ア スファルト混合物とでその混合過程を同じモデルで説明できるこ と が わ か っ た 。 PS ブ ロ ッ ク と ア ス フ ァ ル テ ン が 部 分 相 溶 で あ る こ と は 前 章 で も 確 認 し た が 、 EP ブ ロ ッ ク と マ ル テ ン も 部 分 相 溶 であることもわかった。しかし、アスファルテン、マルテンとも 単一成分ではないため、すべての成分に各ブロックが相溶してい るわけではなく一部の成分と相溶している部分相溶である。した がって、アスファルテンと相溶するブロックとマルテンと相溶す るブロックの両方を持ったブロックポリマーであれば少ない添加 量 で 大 き な 改 質 効 果 を 上 げ ら れ る で あ ろ う 。 PS の よ う に ア ス フ ァルト成分の一方だけと相溶するものでは、少ない添加量で改質 効果を高めることはできない。 この考え方から、マルテンとアスファルテンの割合が変わると、 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 と の 相 溶 性 が 変 化 す る と 考 え ら れ る 。 Fig.3-12 に グ レ ー ド の 異 な る ア ス フ ァ ル ト ( 針 入 度 20/40 、 ア ス フ ァ ル テ ン / マ ル テ ン 比 =20/80 ) と SBS 混 合 物 の 針 入 度 、 軟 化 点 の 変 化 を 示 し た。アスファルテンの多いアスファルトではしきい値が明確で無 く 、 物 性 の 変 化 も 直 線 的 で あ る 。 5~10wt% で は 改 質 効 果 は か え っ て 低 く な っ て い る 。 Tab.3-2 に ア ス フ ァ ル ト の グ レ ー ド に よ る 物 性 値 、 そ れ ら に 8wt% の SBS を 添 加 し た 混 合 物 の 物 性 値 を 示 し た 。 SBS 添 加 前 の ア ス フ ァ ル ト の 物 性 ( ア ス フ ァ ル テ ン の 少 な い ア ス ファルトは針入度、軟化点ともに小さい。)も影響しているがア スファルトに占めるアスファルテンの割合が多いと、改質効果 ( 力 学 的 性 質 ) が 小 さ い こ と が わ か る 。 ( 改 質 効 果 は SBS 添 加 前 後の針入度の変化率とした。)しかし、アスファルテンが少ない - 67 - 150 70 140 60 130 Softening point / ℃ 110 40 100 30 90 80 Penetration / X0.1mm 50 120 20 70 b d 60 10 a c 50 0 0.0 5.0 10.0 15.0 20.0 SBS Content / % Fig. 3-12 Effect of asphalt grades on softening point and penetration in modified asphalt on various SBS content a; Softening point of asphalt in grade 20/40 b; Softening point of asphalt in grade 60/80 c; Penetration of asphalt in grade 20/40 d; Penetration of asphalt in grade 60/80 - 68 - Tab. 3-2(a) Relationship between property and asphalt grades Grade Penetration (a) Softening point / ºC Asphaltene / Maltene 20 / 40 60 / 80 150 / 200 21.7 62.0 152.7 60.0 51.5 45.0 20 / 80 16 / 84 12 / 88 Blown asphalt 10 / 20 14.0 103.0 36 / 64 Semi blown asphalt AC-100 46.7 58.5 22 / 78 Straight asphalt Tab. 3-2(b) The property of asphalts mixed with 8wt% of SBS(KRATON D1101) Grade Penetration (b) Softening point / ºC Modified effect (a-b) / (a) X 100 20 / 40 60 / 80 150 / 200 17.0 34.7 66.0 92.0 92.0 95.5 21.66 44.03 56.78 Blown asphalt 10 / 20 12.7 132.0 9.29 Semi blown asphalt AC-100 36.3 91.5 22.27 Straight asphalt - 69 - と 力 学 的 性 質 の 最 大 値 は 小 さ い 。 ア ス フ ァ ル テ ン と PS ブ ロ ッ ク は部分相溶のため、相溶性はそれほど大きくない。相を反転させ るためにはそれほど多くのアスファルテンを必要とせず、アスフ ァルテンの割合によって力学的性質の変化、すなわち相構造の変 化のしきい値が変わるのであろう。 以上のように、アスファルテンもしくはマルテンとの相溶性を 高める第三成分を添加することにより、混合系の熱的、力学的性 質をコントロールできる。たとえば、ジブロック共重合体の少量 の添加でも効果があるであろう。 3-4 結 論 SEPS と ア ス フ ァ ル ト 混 合 系 に お い て マ ル テ ン の 一 部 の 成 分 は SEPS の EP ブ ロ ッ ク と 優 先 的 に 部 分 相 溶 し 、 ア ス フ ァ ル テ ン の 一 部 の 成 分 は PS ブ ロ ッ ク と 主 に 部 分 相 溶 す る こ と が Tg の 変 化 に よ り わ か っ た 。 こ の 系 で は 、 少 な い SEPS 添 加 量 ( 例 え ば 3~10 wt% ) でも混合物の粘度、針入度、および引張強さの向上が見られた。 SEPS は ア ス フ ァ ル ト に 対 し て 相 溶 化 剤 的 に 働 き 、 少 量 の 添 加 で 性能が大きく変化する。これは同じスチレン系ブロック共重合体 で あ る SBS と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 物 と 同 じ ミ ク ロ 構 造 モ デ ル で 説 明できる。 アスファルトに対して少ない添加量で改質効果を上げるために はアスファルテンとマルテンの特定の成分と部分相溶し、相溶化 剤的に働く高分子が必要である。 また、アスファルト中のアスファルテン含有量は少ない方が力 学的性質の変化割合は大きい。しかし、アスファルテン含有量が 多いほど、力学的性質の最大値は大きい。したがって、アスファ ルトの改質にはアスファルテンとマルテンの割合のバランスが重 要である。 - 70 - 3-5 参考文献 1 ) 田 中 晴 也 , 川 付 正 明 , 高 木 清 美 , ア ス フ ァ ル ト , 198, 37 (1999). 2 ) E. J. Barth, in "Asphalt, science and technology" Gordon and Breach, N. Y, 1962, p 117. 3 ) 神 谷 愼 吾 , 田 坂 茂 , 稲 垣 訓 宏 , 第 49 回 高 分 子 年 次 大 会 予 稿 集 , 49, 1045 (2000). 4 ) X. Lu, U. Isacsson, J. Applied Polymer Science, 76, 1811 (2000). 5 ) R. Ho, A. Adedeji, D. W. Giles, D. A. Hajduk, C. W. Macosko, F. S. Bates, J.Polym. Sci., 35, 2857 (1997). 6 ) A. Sustic, in A. M. Usmani, Ed., "ASHALT SCIENCE AND TECHNOLOGY", Marcel Dekker, N. Y, 1997, pp 259-277. 7 ) 日 本 道 路 協 会 編 , " 舗 装 試 験 法 便 覧 ", 日 本 道 路 協 会 , 1995, p 437. 8)高 分 子 学 会 編 , "ポ リ マ ー ア ロ イ 基 礎 と 応 用 " 東 京 化 学 同 人 , 1987, pp 135-137. 9 ) T. F. Turner, J. F. Branthaver, in A. M. Usmani, Ed., "Asphalt Sience and Technology", Marcel Dekker. Inc, N. Y, (1997), p. 59-101. 10 ) H. E. Stanley, in T. W. Burkherdt and J. M. J. van Leeuwen Ed., "Real Space Renormalization", Springer-Verlag, N. Y, 1982, p 169-206. 11 ) T. F. Yen, in O. C. Mulline and E. Y. Sheu, Ed., "Structures and Dynamics of Aspaltenes," Plenum Press, 1998, p 4. 12 ) 堀 内 伸 , 繊 維 学 会 誌 , 54, 419 (1998). 13 ) H. F. Guo, S. Packirisamy, N. V. Gvozdi, D. J. Meier, Polymer, 36, 785 (1997). - 71 - 第四章 SBS 改 質 ア ス フ ァ ル ト の 応 用 4-1 言 緒 前章までのアスファルトとスチレン-ブタジエン-スチレンブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ( SBS ) な ど の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 の 研 究により、アスファルトとの混合過程をモデル化することができ た 。 本 章 で は 優 れ た ア ス フ ァ ル ト 改 質 材 で あ る SBS を 使 っ た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 ( SBS 改 質 ア ス フ ァ ル ト ) を 土 木 用 途 に 使 われている防水材料への応用について検討した。 交通量の増加、地震対策などのために、近年、橋梁の改修工事 などで床版の補強として増厚コンクリート等を施工し、橋梁を補 強している。(上面増厚工法 1) )この時、増厚コンクリートで床 版を補強するとともにコンクリートクラックによる雨水の浸入を 防ぎ、鉄筋コンクリートの保護を目的として、床版面と舗装アス ファルトの間に防水・保護層を設けることが普通となっている。 従来は増厚コンクリートとして超速硬コンクリートを使用して硬 化終了後に防水・保護層を施工していた。しかし、改修を必要と する主要幹線道路は交通量も多く、工事の迅速な施工が課題とな っている。 従 来 の 防 水 層 は コ ン ク リ ー ト が 硬 化 し 、 表 面 水 分 が 10% 程 度 に なった時点で溶融アスファルトなどの接着剤を用いて改質アスフ ァルトシートを接着していた。しかし、残留水分などのためにブ リスタリング(防水層が膨れること。)が発生し接着性に問題が 2) 生じた 。また、被着体となるコンクリートが未硬化の状態では 防水層を施工することは不可能であった。 ア ス フ ァ ル ト に SBS な ど の 高 分 子 を 溶 融 混 合 さ せ 、 特 性 を 改 質 したアスファルト混合物を工業的にはポリマー改質アスファルト と呼ばれる。改質アスファルトは建築、土木の防水分野で広く使 - 72 - わ れ て い る 材 料 で 工 業 製 品 と し て 使 用 さ れ て い る も の は SBS な ど の 熱 可 塑 性 エ ラ ス ト マ ー ( TPE ) な ど の 高 分 子 と ア ス フ ァ ル ト を 混合した単純なものだけでなく、可塑剤、石油樹脂などを溶融混 合 し て 作 ら れ る も の も あ る 。 SBS は 10wt% 未 満 の 添 加 で ア ス フ ァ ル ト 中 で SBS の ネ ッ ト ワ ー ク 構 造 3) になり、アスファルトの脆さ、 耐熱流動性、粘弾性特性を改善する。特に耐熱流動性の改善には 効果があり、同じ軟らかさ(針入度)でも改質アスファルトは流 動性が非常に小さい。アスファルトに添加する高分子の種類、添 加量により、いろいろな特性の改質アスファルトを作ることが可 能である 4)5) 。 防 水 材 料 と し て 使 用 す る た め に 、 SBS と ア ス フ ァ ル ト を 溶 融 混 合し、可塑剤としてテルペンフェノール共重合体を添加した改質 アスファルトを作製した。この改質アスファルトをシート状また は加熱溶融状態で超速硬コンクリート面に施工した場合、コンク リートの硬化と同時に強力な接着力を発揮する特性を持つ 6) 。こ の様な特性の改質アスファルトを使い防水材料を作ることにより 迅速な施工が可能となる。 上述の改質アスファルトは疎水性であり、多量の水を含んだコ ンクリートと界面で浸潤し、コンクリートと接着しているとは考 えにくい。そこで本章では超速硬コンクリートと改質アスファル トの界面でどのような現象が起きているのかを明らかにし、防水 材となる改質アスファルトの特性について示した。 4-2 4-2-1 試料及び実験 改質アスファルト 改 質 ア ス フ ァ ル ト は ア ス フ ァ ル ト に SBS ( ク レ イ ト ン ポ リ マ ー ㈱ ク レ イ ト ン D1101 、 ス チ レ ン / ブ タ ジ エ ン 比 = 31/69 ) を 10wt% 添 加し、可塑剤として樹脂(テルペンフェノール共重合体)を添加 した。この改質アスファルトはコンクリートの硬化と同時に強力 - 73 - に接着することができる。これをサンプル A とする。 4-2-2 試料の作製 改 質 ア ス フ ァ ル ト は ア ス フ ァ ル ト に SBS 、 ア タ ク チ ッ ク ポ リ プ ロ ピ レ ン ( APP ) 、 樹 脂 ( テ ル ペ ン フ ェ ノ ー ル 共 重 合 体 ) な ど を 所 定 の 割 合 で 添 加 し 、 混 合 槽 を 185 ℃ に 保 ち 、 ホ モ ミ キ サ ー ( 特 殊 機 化 工 業 ㈱ 製 MARK Ⅱ ) を 使 い 溶 融 混 合 し た 。 加 熱 状 態 の ま ま ロ ー ル で 、 厚 さ 1mm の シ ー ト 状 に 成 型 し 、 こ れ を サ ン プ ル と し た。 ま た 、 比 較 の た め に 、 ポ リ プ ロ ピ レ ン ( チ ッ ソ ㈱ 製 K7019 ) 、 改質アスファルトと同様な力学的性質を持つエチレン-酢酸ビニ ル 共 重 合 体 ( EVA 、 三 井 ・ デ ュ ポ ン ポ リ ケ ミ カ ル ㈱ 製 EV45X ) 、 未 加 硫 ブ チ ル ゴ ム に つ い て も 180~200 ℃ で 加 熱 溶 融 状 態 の ま ま ロ ー ル で 厚 さ 1mm の シ ー ト 状 に 成 型 し た 。 また、一連の実験に使用した超速硬コンクリート(住友大阪セ メ ン ト ㈱ 製 ジ ェ ッ ト セ メ ン ト ) の 配 合 は Fig.4-1 に 示 し た 。 ( 水 セ メ ン ト 比 、 41 wt% 、 細 骨 材 率 58 wt% ) 特 に 断 り が な い 限 り 、 試 験 は 温 度 23 ℃ 、 湿 度 65% の 条 件 下 で 行った。 4-2-3 温度測定 Fig.4-1 に 示 す よ う な 実 験 装 置 で コ ン ク リ ー ト 内 部 と 表 面 及 び 、 コンクリート表面を改質アスファルトシートで覆った場合のシー ト /コ ン ク リ ー ト 界 面 、 シ ー ト 表 面 、 コ ン ク リ ー ト 内 部 の 硬 化 過 程における温度を測定し、比較した。測定はデジタル温度計(㈱ 佐 藤 計 量 器 製 作 所 製 SK-1250MC ) 、 赤 外 放 射 表 面 温 度 計 ( タ ス コ ジ ャ パ ン ㈱ 製 THI-500 ) で 行 っ た 。 シ ー ト は 硬 化 前 の 超 速 硬 コ ン クリートに軽く密着させた。 - 74 - Radiation thermometer a3 b2 Modified asphalt sheet Composition of concrete Jet cement Fine aggregate Coarse aggregate Water Dehydration agent Retarder 150mm a2 a1 b1 300mm (Depth:300m) Thermometer Fig. 4-1 Mould The equipment for temperature change measurement ( Temperature : 23 °C Humidity : 65 % ) - 75 - 50mm 100 139 101 41 2 0.3 parts parts parts parts parts parts 4-2-4 コンクリート硬度の測定 JIS K2207 石 油 ア ス フ ァ ル ト の 針 入 度 試 験 器 を 用 い て 針 の 部 分 を 6.4mm φ の 円 柱 に 置 き 換 え ( 面 荷 重 3.038N/cm2 ) 、 時 間 変 化 を 測 定 した。 4-2-5 改質アスファルトの針入度測定 JIS K2207 石 油 ア ス フ ァ ル ト の 針 入 度 測 定 器 ( 針 荷 重 0.98N ) を 用 い て 20 ℃ 、 及 び 40 ℃ で の 針 入 度 の 時 間 変 化 を 測 定 し た 。 サ ン プ ルはそれぞれの温度の恒温室中に4時間以上静置した。 4-2-6 コンクリート硬化時の圧力変化の測定 Fig.4-2 に 示 す よ う な 実 験 装 置 で シ ー ト に よ る コ ン ク リ ー ト 面 の 密閉直後からの相対内部圧力の時間変化を測定した。型枠にコン ク リ ー ト を 流 し 込 み ( 厚 さ 120mm ) 、 18cm2 の 面 に 3.6cm2 の 空 間 を 設 定 し 、 圧 力 測 定 器 を 乗 せ て シ ー ル で 密 閉 す る 。 圧 力 の 変 化 は 10 分おきに測定した。 4-2-7 改質アスファルトの粘弾性の測定 測 定 温 度 0~60 ℃ で 粘 弾 性 ( レ オ メ ト リ ッ ク ス サ イ エ ン テ ィ フ ィ ッ ク 社 製 ARES ) を 測 定 し た 。 4-2-8 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg) の 測 定 Tg を 決 定 す る た め の DSC 測 定 は マ ッ ク サ イ エ ン ス 社 の DSC3100 を使い空気雰囲気中でおこなった。液体窒素でサンプルを冷却し、 測 定 温 度 範 囲 -100~120 ℃ 、 昇 温 速 度 10 ℃ /min の 条 件 で 測 定 し た 。 Tg は DSC 曲 線 よ り 決 定 し た 。 4-2-9 引張接着力の測定 道路橋鉄筋コンクリート床版防水層設計・施工資料 - 76 - 7) による引 Pressure gauge 48mm φ Sensor Concrete Modified asphalt sheet 2mm 120mm Mould 110mm φ Fig. 4-2 The equipment for pressure change measurement ( Temperature : 23 °C Humidity : 65 % ) - 77 - 張 接 着 力 を 測 定 し た 。 測 定 温 度 は 20 ℃ で 行 っ た 。 4-3 4-3-1 結果と考察 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト /超 速 硬 コ ン ク リ ー ト 間 の 接 着 所 定 の 配 合 で 超 速 硬 コ ン ク リ ー ト を 作 製 し 、 Tab.4-1 に 示 す サ ン プルをシート状にし、上面に軽く密着させ、コンクリート硬化後 に引張接着力を測定した。道路橋鉄筋コンクリート床版防水層設 8) 計 ・ 施 工 資 料 に よ る 20 ℃ の 引 張 接 着 力 の 規 格 は 58.8N/cm2 以 上 で あ り 、 サ ン プ ル A~D の 接 着 力 は こ れ 以 上 で あ る 。 し か し 、 剥 離 面の状況を観察するとサンプル A 以外は界面剥離(コンクリー トと改質アスファルト面での剥離)、または部分凝集破壊(部分 的に改質アスファルトが接着面に残る)を起こす。凝集破壊(改 質アスファルトが接着面に残る)を起こし、引張接着力の大きい サンプル A はより強力に接着している。 また、同じサンプル A でもコンクリート硬化後に熱融着させ るより、硬化前に密着させた方がより強力に接着している。貼付 方法により引張接着力に差があることは、単純に改質アスファル トシートの接着性だけで接着しているのではない。 サ ン プ ル A を コ ン ク リ ー ト 上 面 に 密 着 さ せ る と 1~2 時 間 ほ ど で 完 全 に 接 着 す る 。 こ の 過 程 の 温 度 変 化 を Fig.4-3 に 示 す 。 a の 系 列 は改質アスファルトシートをコンクリート上面に密着させたもの、 b の系列がシートを密着させないでコンクリートだけのものであ る。 表面に何もない場合(b 系列)、コンクリートの硬化過程では コ ン ク リ ー ト 内 部 温 度 ( b1 ) と 表 面 の 温 度 ( b2 ) は ほ ぼ 同 じ で 温 度上昇も小さい。しかし、改質アスファルトシートをコンクリー ト表面に密着させた場合(a 系列)、コンクリート内部の温度 ( a1 ) と 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト 表 面 の 温 度 ( a3 ) と も 上 昇 し 、 さらに内部と表面に大きな温度差を生じる。改質アスファルトシ - 78 - Tab. 4-1 Adhesion strength of asphalt/concrete interface Sample Setting of concrete hardening Adhesion strength / N cm-2 fracture section A:Modified asphalt Before After 157 78 Modified Asphalt Phase boundary B:Modified asphalt Before 157 Phase boundary C:Modified asphalt Before 78 Phase boundary D:EVA <VA46%> Before 88 Phase boundary E:Unvulcanized rubber Before 29 Modified Asphalt F:Polypropylene Before 2 Phase boundary A; Modified asphalt (SBS:10%) B; Modified asphalt (SBS:10%, Atactic polypropylene:5%) C; Modified asphalt (SBS:20%) D; EVA (Ethylene-vinyl acetate) copolymer <VA46%> - 79 - a1 a2 a3 b1 b2 Temperature / ℃ 40 35 30 25 20 0 50 100 150 200 Time / min Fig. 4-3 Temperature change of various sampling positions in concrete composite (see Fig. 4-1) a; With modified asphalt sheet a1; Inside of concrete a2; Modified asphalt/concrete phase boundary a3; Modified asphlat surface b; Without modified asphalt sheet b1; Inside of concrete b2; Concrete surface - 80 - ートで表面を覆うことで、その遮熱性によりコンクリートの反応 熱を蓄熱している。 超速硬コンクリートは水和反応により硬化する。この反応は発 熱反応である。超速硬コンクリートは普通ポルトランドセメント 9) よりも硬化が速く、発熱量も大きいことが知られている 。改質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト を 密 着 さ せ た 場 合 、 内 部 温 度 を 10 ℃ 以 上 も 上昇させることができる。これはコンクリート表面から水が蒸発 するときに奪われる潜熱を内部に閉じこめる効果と表面から空気 への熱伝導を抑制する効果である。コンクリートの水和反応は反 応時の温度が高いほど速く進み、硬化も速くなる。a 系列のピー ク は 90 分 、 b 系 列 の ピ ー ク は 110 分 に あ り 、 硬 化 の 終 息 も 改 質 ア スファルトシートにより蓄熱された分速い。 したがって、コンクリート表面を改質アスファルトシートで覆 うことにより、蓄熱させ、コンクリート界面温度を通常より高く することができる。 4-3-2 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト /超 速 硬 コ ン ク リ ー ト 間 の 形 態 及び圧力変化 Fig.4-4(a) の 様 に 凹 凸 を つ け た 超 速 硬 コ ン ク リ ー ト 表 面 に サ ン プ ル A の改質アスファルトシートを密着させた。(この写真は効 果 を は っ き り さ せ る た め に 表 面 に 50mm φ の 凹 凸 を つ け て あ る 。 ) Fig.4-4(b) は サ ン プ ル A を コ ン ク リ ー ト に 軽 く 密 着 さ せ た 直 後である。硬化する過程で表面に軽く密着させた改質アスファル トシートがコンクリートの凹凸面に強力に密着して、より強固に 接 着 し た 状 態 を Fig.4-4(c) に 示 す 。 シ ー ト を 剥 が し て み る と 改 質 ア スファルトが凝集破壊を起こして強力に接着している。これは蓄 熱による温度上昇で、弾性の下がった改質アスファルトシートが 密着されるためと考えられる。この過程での圧力変化を測定した の が Fig.4-5 で あ る 。 - 81 - Modified asphalt sheet Concrete Fig. 4-4(a) Photograph of concrete surface with 50 mm φ pit before sticking modified asphalt - 82 - Modified asphalt sheet Concrete Fig. 4-4(b) Photograph of concrete composite after 10 min in contact with modified asphalt sheet - 83 - Modified asphalt sheet Concrete Fig. 4-4(c) Photograph of concrete composite after 8 hr in contact with modified asphalt sheet - 84 - 4 3 2 Pressure / g cm -2 1 0 -1 -2 -3 -4 -5 0 50 100 150 200 250 300 Time / min Fig. 4-5 Pressure change of interface space between between modified asphalt sheet and concrete (Bottom area:18 cm2, Volume: 3.6 cm3 ) - 85 - 温度の上昇と共に圧力が増し、その後、急激に減圧していくこ と が わ か る 。 圧 力 が 最 大 と な る の は 約 80 分 後 で 界 面 温 度 が 最 大 と な る 90 分 と ほ ぼ 一 致 し て い る 。 圧 力 が 上 が る 原 因 と し て は 巻 き込まれた空気及びコンクリート表面の余剰水が反応熱により水 蒸気となり、圧力を上げると考えられる。次に、コンクリートの 水和反応と共に急激に水蒸気を含めた水分がコンクリート内部に 取 り 込 ま れ 減 圧 す る 。 こ の 時 、 温 度 は 40 ℃ 程 度 ま で 上 が っ て お り、この温度で粘弾性変形の大きな改質アスファルトシートは負 圧によりコンクリート表面の微細な凹凸構造に接着するのであろ う 。 こ の 負 圧 は ほ ぼ 水 の 蒸 気 圧 分 で 、 約 9.8Kg/cm2 で シ ー ト を 転 圧 していることになる。通常、硬化途中のコンクリート面にシート を転圧することは不可能なのでシートを接着させるのに有効な力 が働いている。 したがって超速硬コンクリートは通常は表面からの蒸発する水 分を反応に使用することができ、表面をシートで覆うことにより 水分の蒸発を防いで硬化する。コンクリート表面からの水分の蒸 発を防ぐことで硬化後のコンクリートの性状によい影響を与える ことができる。これと同時に表面近くを真空状態にする。 4-3-3 改質アスファルトシートの必要条件 Fig.4-6 に 超 速 硬 コ ン ク リ ー ト と 強 力 に 接 着 す る サ ン プ ル A の 各 温 度 に お け る 針 入 度 の 変 化 を 示 し た 。 20 ℃ は 常 温 、 40 ℃ は Fig.4-3 で 示 し た シ ー ト / コ ン ク リ ー ト 界 面 の 最 高 温 度 40 ℃ を 想 定 し て い る。また、針入度の時間変化はその温度での改質アスファルトの 変 形 量 を 表 す と 考 え ら れ る 。 20 ℃ ( a ) と 40 ℃ ( b ) を 比 較 し た 場 合 、 40 ℃ の 変 形 量 は 大 き い こ と が わ か る 。 コ ン ク リ ー ト 硬 化 時 の 発 熱 に よ り 、 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト が 40 ℃ 程 度 に 達 す る と大きな変形性を有し、また、超速硬コンクリートの硬化時の負 圧 に よ り 凹 凸 面 に 密 着 し て い る こ と が わ か る 。 Fig.4-4(a) の よ う な - 86 - 180 a 160 b c 140 Penetration / X0.1 mm 120 100 80 60 40 20 0 1 10 100 Time / sec Fig. 4-6 Penetration change of modified asphalt and concrete a; Penetration of modified asphalt at 20 °C b; Penetration of modified asphalt at 40 °C c; Penetration of concrete - 87 - 1000 大きな凹凸面だけでなく、もっとミクロに見た場合、コンクリー ト表面の微細な面まで軟化した改質アスファルトが入り込みアン カー効果により、より強力に接着しているとが考えられる。 ま た 、 粘 弾 性 の 測 定 結 果 を Fig.4-7 に 示 す 。 サ ン プ ル C は Tab.4-1 の測定結果からもわかるように引張接着力が小さく、界面剥離を 起こすタイプの改質アスファルトである。サンプル C は温度変 化に対して弾性率の低下が少ない。サンプル A は引張接着力も 大きく材料破壊を起こす。これは温度に対する弾性率の低下が大 き く 、 40 ℃ 付 近 で の 粘 弾 性 変 形 が 大 き い た め と 考 え ら れ る 。 こ の 40 ℃ 付 近 で の 粘 弾 性 挙 動 が コ ン ク リ ー ト に 対 す る 密 着 に は 重 要な要因になっている。サンプル B は中間的な性質を示し、完 全 に 密 着 し な い が 、 接 着 力 は 大 き い 。 サ ン プ ル B、 C は 弾 性 率 が 大きいのでコンクリートの微細な面への入り込みによるアンカー 効果が少なく界面剥離を起こす。このような界面剥離を起こすよ うなものは、改質アスファルトの特性である感温性の変化により、 低温時に急激に接着力が落ちることが考えられる。 Tab.4-2 に 改 質 ア ス フ ァ ル ト 及 び 高 分 子 の Tg 、 40 ℃ の 針 入 度 な ど の 測 定 結 果 を 示 す 。 Tab.4-1 、 4-2 か ら 改 質 ア ス フ ァ ル ト で も 針 入 度、軟化点などが示すように高分子の添加量、種類により種々の タイプがあり、すべてが良好な接着性を示すとは限らない。界面 剥 離 を 起 こ す タ イ プ の 改 質 ア ス フ ァ ル ト ( サ ン プ ル B) は 針 入 度 が示すように硬いものである。そのため、引張接着力は大きくな るがコンクリートへの密着が起きにくくなる。より針入度の小さ い ( 硬 い ) 改 質 ア ス フ ァ ル ト ( サ ン プ ル C) は 界 面 で 剥 離 し 、 引 張接着力も小さくなっている。改質アスファルトの場合、引張接 着 力 と コ ン ク リ ー ト へ の 接 着 状 態 は 40 ℃ の 針 入 度 で 90 前 後 ( サ ン プ ル A) が 引 張 接 着 力 と 接 着 状 態 の バ ラ ン ス が と れ て い る 。 常 温ではある程度硬くても、コンクリートの硬化時の反応熱の蓄熱 に よ っ て 、 40 ℃ 程 度 で コ ン ク リ ー ト 表 面 の 凹 凸 に 密 着 す る の に - 88 - G'<Modulus> / Pa 10 8 10 7 10 6 10 5 10 4 10 Sample A Sample B Sample C 3 -5 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 Temperature / ℃ Fig. 4-7 (G') Temperature change of modified asphalt of modulus Sample A; modified asphalt (Tg: -42 °C) Sample B; modified asphalt (Tg: -21 °C) Sample C; modified asphalt (Tg: -25 °C) - 89 - Tab. 4-2 Thermal properties of modified asphalt and polymers Sample Penetration (40°C) Softening point / °C Tg / °C A; Modified asphalt 90 104 -42 B; Modified asphalt 39 111 -21 C; Modified asphalt 23 133 -25 D; EVA<VA46%> 45 E; Unvulcanized rubber 64 F; Polypropylene -36 135 3 A; Modified asphalt (SBS: 10 %) B; Modified asphalt (SBS: 10 % Atactic polypropylene: 5 %) C; Modified asphalt (SBS: 20 %) D; EVA (Ethylene-vinyl acetate) copolymer <VA 46 %> - 90 - -65 十分な変形性を持った改質アスファルトがより強く接着する。し か し 、 軟 化 点 が 100 ℃ 以 上 で あ る こ と か ら も わ か る よ う に 40 ℃ で 流動したり、染み出しを起こす性質のものではない。これは、 SBS に よ る 改 質 効 果 に よ る も の で あ る 。 したがって、超速硬コンクリートの硬化後に強力に接着する改 質アスファルトの必要条件は以下の通りである。①コンクリート 表面にアンカー効果で接着するためにある特定の温度で十分な粘 弾性変形が可能であること。②コンクリートとの接着性が大きい ことである。 改質アスファルトによって、粘弾性特性などの力学的性質をコ ントロールすることで上記条件を達成することは可能である。さ らに、そのほかの高分子でもサンプル A と同様な粘弾性特性を 持ったもので有ればコンクリート硬化時に強力に接着できる可能 性がある。 4-3-4 その他の応用 アスファルトの耐熱性、力学的性質の改質などのほかに、新し い性質を付加すると言うことも重要なアスファルトの改質目的で ある。アスファルトは骨材やコンクリートとある程度の接着性を 持っているが、特に室温以下では粘着性を示さない。アスファル トをポリマーで改質し、粘着性を持たせることにより、土木建築 用防水シートなどに応用することが可能である。その実用的な一 例 を Tab.4-3 に 示 し た 。 ア ス フ ァ ル ト に SBS を 添 加 す る と と も に 、 オイル、石油樹脂などを添加することによって、アスファルトに 粘着性を持たすことができる。また、その配合割合を変更するこ と に よ り 、 Fig.4-8 に 示 す よ う に 、 接 着 強 度 が 最 大 と な る 温 度 領 域 を変えることができる。 アスファルトは工業製品であり、アスファルテン、マルテンな どの成分を調整することは難しい。そこで実用例のようにマルテ - 91 - Tab. 4-3 Properties of two types of modified asphalt High temperature type(a) Low temperature type(b) Composition 60/80 Asphalt Oil Petroleum resin SBS Others Penetration / X0.1 mm Experimental temperature -5 0 10 20 30 40 Softening point / °C 67 15 5 8 5 °C °C °C °C °C °C 56 25 5 6 8 20.7 25.0 33.6 57.3 85.0 117.3 33.3 42.3 57.3 93.0 126.0 152.0 100.5 91.5 - 92 - 140 (a) (b) 120 Peel strength / N cm -1 100 80 60 40 20 0 -10 0 10 20 30 40 Temperature / C゚ Fig. 4-8 Temperature dependence of peel strength of different modified asphalt (a); High temperature type modified asphalt (b); Low temperature type modified asphalt - 93 - ンと性質の近い、オイルや石油樹脂を加えて擬似的にアスファル ト の 成 分 調 整 を す る こ と に よ り 、 SBS な ど の 高 分 子 と の 相 溶 性 を 変化させて、アスファルトを自由に改質することが可能であろう。 4-4 結 論 超速硬コンクリート施工直後に改質アスファルトシートで覆う ことで両者を強力に接着することができる。これは次の 2 つの作 用によることが明らかになった。 ①改質アスファルトシートでコンクリート表面を覆うことによ り反応熱を蓄熱させること。 ②蓄熱は改質されたアスファルトでなくても起こりうるが、そ の温度により十分な粘弾性変形を持つ改質アスファルトがコ ンクリート硬化時の負圧により表面の凹凸面に吸引される。 また、このような現象を利用して接着させる改質アスファルト の特性はアスファルトに添加する高分子の種類、添加量を調整し、 粘弾性変形をコントロールすることにより作り出すことができる。 - 94 - 4-5 参考文献 1 ) 橋 梁 研 究 委 員 会 編 , " 上 面 増 厚 工 法 設 計 施 工 マ ニ ュ ア ル ", 高 速 道 路 調 査 会 , 1995. 2 ) ア ス フ ァ ル ト 協 会 , ア ス フ ァ ル ト , 203 号 , 42 巻 , 2000, p 71. 3 ) 中 島 滋 夫 , 出 口 隆 宏 , 斉 藤 章 , 日 本 ゴ ム 協 会 誌 , 72, 48 (1999). 4 ) W.P.F.Heather, "Polymer Modified Aspalt Binders", 1992, p 237. 5 ) Elio Diani, Mauro Da Via, Maria Grazia Cavaliere "ASHALT SCIENCE AND TECHNOLOGY", 1997, p 287. 6)神 谷 愼 吾 , 杉 本 泰 一 , 田 中 謙 次 , "防 水 工 法 及 び コ ン ク リ ー ト 床 版 の 増 し 厚 工 事 の 防 水 工 法 ", 特 開 平 8-333816 1996. 7)日 本 道 路 協 会 編 , "道 路 橋 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 床 版 防 水 層 設 計 ・ 施 工 資 料 ", 丸 善 , 1987, p 91. 8)日 本 道 路 協 会 編 , "道 路 橋 鉄 筋 コ ン ク リ ー ト 床 版 防 水 層 設 計 ・ 施 工 資 料 ", 丸 善 , 1987, p 13. 9 ) 日 本 道 路 公 団 編 , " 試 験 研 究 所 技 術 資 料 第 1 2 5 号 ", 日 本 道 路 公 団 試 験 所 , 1997, p 79. - 95 - 第五章 結 論 本研究はスチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体 ( SBS ) な ど の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 と ア ス フ ァ ル ト の 混 合 状 態 に つ い て 明 ら か に す る こ と を 目 的 と し た 。 特 に SBS は 少 な い 添 加 量 ( 10wt% 未 満 ) で ア ス フ ァ ル ト に 対 し て 大 き な 効 果 の あ る改質材として優れた性質を持っている。 ま ず 、 SBS と ア ス フ ァ ル ト の 配 合 比 を 変 え た SBS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 を 作 製 し 、 DSC 測 定 、 軟 化 点 、 針 入 度 な ど を 測 定 し た 。 従 来 の 報 告 と 同 様 に 少 な い SBS 添 加 量 の 時 ( 例 え ば 、 10wt% 未 満 ) にさえ混合物の粘度、針入度、および引張強さが大きく変化する こ と を 示 し た 。 ま た 、 熱 分 析 に よ り 、 ア ス フ ァ ル ト の 成 分 が SBS の 2 つのブロックと部分相溶することがわかった。次にアスファ ル ト を n- ヘ プ タ ン に よ る 溶 剤 分 別 に よ り 可 溶 成 分 で 低 分 子 量 の マ ル テ ン と 不 溶 成 分 で 高 分 子 量 の ア ス フ ァ ル テ ン に 分 離 し 、 SBS と 混 合 し 、 相 互 作 用 を 検 討 し た 。 ガ ラ ス 転 移 点 ( Tg ) の シ フ ト か ら ア ス フ ァ ル テ ン 、 マ ル テ ン の 一 部 の 成 分 と SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク とが選択的に部分相溶していることを確認した。この結果から、 マ ル テ ン は SBS の ブ タ ジ エ ン ( PB ) ブ ロ ッ ク と 優 先 的 に 部 分 相 溶 す る の に 対 し て 、 ア ス フ ァ ル テ ン は ス チ レ ン ( PS ) ブ ロ ッ ク と 主 に 部 分 相 溶 す る こ と が わ か っ た 。 SBS の 2 つ の ブ ロ ッ ク が ア ス フ ァルトの 2 成分に対して、相溶化剤として働くために、少ない添 加 量 で SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 に な る 。 こ の 結 果 よ り 、 混 合 状 態 の モ デ ル を 提 案 し 、 SBS の 少 な い 添 加 量 で ア ス フ ァ ル ト を 改 質 で き る理由を説明することができた。 SBS は 、 力 学 的 性 質 は 良 い も の の 高 温 で 熱 劣 化 す る と い う 欠 点 を 持 つ 。 こ れ は SBS の PB ブ ロ ッ ク の 不 飽 和 結 合 に よ る 。 そ の た - 96 - めアスファルト改質材として、同じスチレン系ブロック共重合体 の ス チ レ ン - エ チ レ ン / プ ロ ピ レ ン - ス チ レ ン ( SEPS ) ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 と ア ス フ ァ ル ト の 配 合 比 を 変 え て 混 合 物 を 作 っ た 。 SEPS はその構造に不飽和結合を持たず、ラジカルの発生による劣化を 防 ぐ こ と が で き る 。 ま た 、 エ チ レ ン / プ ロ ピ レ ン ( EP ) ブ ロ ッ ク とマルテンとの相溶性も期待できる。 ま ず 、 配 合 比 を 変 え た SEPS / ア ス フ ァ ル ト 混 合 物 の DSC 測 定 、 軟 化 点 、 針 入 度 な ど を 測 定 し 、 ア ス フ ァ ル ト の 成 分 が SEPS の 2 つ の ブ ロ ッ ク と 部 分 相 溶 す る こ と が わ か っ た 。 SBS と 同 様 に 少 な い SEPS 添 加 量 の 時 ( 例 え ば 、 10wt% 未 満 ) に さ え 混 合 物 の 粘 度 、 針 入 度 、 お よ び 引 張 強 さ が 大 き く 変 化 す る 。 さ ら に 、 SBS / ア ス ファルト混合物と同様にアスファルトをマルテンとアスファルテ ン に 分 離 し 、 SEPS と 混 合 し た 結 果 、 ア ス フ ァ ル テ ン 、 マ ル テ ン の 一 部 の 成 分 と SEPS の 2 つ の ブ ロ ッ ク と が 選 択 的 に 部 分 相 溶 し て い る こ と を 見 い だ し た 。 そ の 結 果 か ら 、 マ ル テ ン は SEPS の EP ブロックと優先的に部分相溶するのに対して、アスファルテンは PS ブ ロ ッ ク と 主 に 部 分 相 溶 す る こ と が わ か っ た 。 こ れ は SBS / ア スファルト混合物と同じモデルで説明できる。 以 上 の 実 験 結 果 に よ り 、 SBS と SEPS の 2 つ の ス チ レ ン 系 ブ ロ ッ ク共重合体とアスファルトの混合過程をモデル化することができ た。すなわち、マルテン中にアスファルテンが分散したアスファ ル ト が 、 高 分 子 相 溶 化 剤 ( SBS 、 SEPS ) に よ り ア ス フ ァ ル テ ン 中 にマルテンが分散する構造へ相反転するのである。そして、最終 的 に は SBS が マ ト リ ッ ク ス 相 を 形 成 す る 。 こ れ に よ り 、 ” な ぜ 、 PS な ど の ほ か の 高 分 子 と 比 べ て 少 な い 添 加 量 で ア ス フ ァ ル ト を 改質できるか”を明らかにした。アスファルトの 2 つの成分(ア スファルテン、マルテン)に対して同様な効果を持つ高分子(お そらくブロック共重合体)であれば、少ない添加量でアスファル - 97 - トの改質ができるはずである。 以上の結果に基づきスチレン系ブロック共重合体とアスファル トの混合物、いわゆる改質アスファルトの応用に関する実験を行 った。 改質アスファルトはその防水性、粘弾性の特質を活かして防水 材として使用されるため、コンクリートとの接着性が重要である。 コンクリート硬化時には表面は水で濡れており、通常、アスファ ルトの接着は不可能とされていた。しかし、ある種の高分子改質 アスファルトを用いると強力に接着できることを見いだした。 こ の 接 着 メ カ ニ ズ ム は 、 1) 改 質 ア ス フ ァ ル ト シ ー ト で コ ン ク リート表面を覆うことにより、コンクリートの水和反応熱を蓄熱 さ せ 、 2) そ の 温 度 に よ り 十 分 な 粘 弾 性 変 形 可 能 な 改 質 ア ス フ ァ ルトがコンクリート硬化時の負圧により表面の凹凸面に吸引され るというものである。この改質アスファルトは、弾性率とその温 度 変 化 が あ る 範 囲 に あ る 必 要 が あ り 、 ま た 、 こ れ は SBS / ア ス フ ァルト混合物のような相反転をともなう系で実現することができ る。 以上のようにスチレン系ブロック共重合体とアスファルトの混 合過程が明らかになったことにより、工業製品である改質アスフ ァルトの針入度、軟化点、粘弾性特性などを調整し、用途にあっ た性質を作り出せることができるようになった。 - 98 - 本論文に関する主要論文及び参考論文 主要論文 1) 神谷愼吾,田坂茂,稲垣訓宏,田中謙次,コンクリートの硬 化時に接着コーティングするポリマー改質アスファルトに対 す る 研 究 , ASPHALT, Vol. 42, No. 202, pp 28-34 (2000) 2) Shingo Kamiya, Shigeru Tasaka, Xiaomin Zhang, Dewen Dong Norihiro Inagaki, Compatibilizer Role of Styrene-butadiene-styrene Triblock Copolymer in Asphalt, Polymer Jounal, Vol. 33, No. 3, (2001) ( 掲 載 予 定 ) 3) 神 谷 愼 吾 , 田 坂 茂 , 堀 田 大 輔 , ア ス フ ァ ル ト と ポ リ [ス チ レ ン -block-( エ チ レ ン -co- プ ロ ピ レ ン )-block- ス チ レ ン ] ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 ブ レ ン ド の 力 学 的 性 質 と 相 構 造 , 日 本 化 学 会 誌 , No. 3, pp 163-168 (2001) ( 掲 載 予 定 ) 口頭発表 1) 神谷愼吾, 田坂茂, 稲垣訓宏, ア ス フ ァ ル ト /ス チ レ ン ・ブ タ ジ エ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 の相溶性, 高 分 子 学 会 . 第 48 回 高 分 子 学 会 年 次 大 会 , 1999, 5.27 ( 京 都 ) 2) 神谷愼吾, 田坂茂, 稲垣訓宏, 田中謙次 セメント硬化に伴う改質アスファルトの接着, 高 分 子 学 会 . 第 8 ポ リ マ ー 材 料 フ ォ ー ラ ム , 1999, 10.29 ( 横 浜 ) 3) 神谷愼吾, 田坂茂, 稲垣訓宏, ア ス フ ァ ル ト /ス チ レ ン ・ブ タ ジ エ ン ブ ロ ッ ク 共 重 合 体 の相溶性Ⅱ, 高 分 子 学 会 . 第 49 高 分 子 学 会 年 次 大 会 , 2000, 5.31 ( 名 古 屋 ) - 99 - 4) 相川覚, 田坂茂, 稲垣訓宏, 神谷愼吾, 野口英一郎, ABS 樹 脂 ・ 油 脂 混 合 物 の 熱 分 解 と ア ス フ ァ ル ト の 混 和 性 エ ネ ル ギ ー ・ 資 源 学 会 , 第 19 回 研 究 発 表 会 , 2000, 6.15 5) 田坂茂, 神谷愼吾, 薫徳文, 稲垣訓宏, 相川覚, 植物油中での高分子の分解とアスファルト化 高 分 子 学 会 , 第 49 回 高 分 子 討 論 会 , 2000, 9.29 ( 仙 台 ) 特 許 1) 神 谷 愼 吾 , 杉 本 泰 一 , 田 中 謙 次 , "コ ン ク リ ー ト 面 の 防 水 施 工 法 ", 特 願 平 11-352005 2) 神 谷 愼 吾 , 杉 本 泰 一 , 田 中 謙 次 , "コ ン ク リ ー ト 面 の 防 水 施 工 法 ", 特 願 平 11-350435 - 100 - 謝 辞 社 会 人 と な っ て 15 年 、 技 術 系 の 仕 事 を し て い た と は い え 、 学 問という分野からは離れていた自分を社会人学生として大学院博 士課程に入学させていただきました。この 3 年間、今までとは違 った環境に身をおき、発見と驚きの連続でしたが、大学では大変 有意義に過ごし、忘れかけていた”探究心”を思い起こさせてい ただきました。これも稲垣教授、田坂教授を初めとする研究室の 皆様のおかげと感じております。また、外国人留学生の張暁民氏、 薫徳文氏、博士課程の先輩である相川覚氏には研究についてのご 助言をいただきました。 論文作成に当たっては、田坂教授には懇切丁寧に、根気よくご 指導いただきました。学問的なことだけではなく、考え方などあ らゆる面でご教示を受けました。また、稲垣教授、藤波教授、環 境科学の溝口教授にはお忙しい中、適切なご教示、ご助言をいた だきました。 先生方をはじめ、多くの人たちにお世話になり、自分なりの研 究ができたと思います。心より感謝いたします。ありがとうござ いました。今後、皆様から得たことを十分に生かし、これから新 たなスタートを切りたいと思います。 最後に、社会人学生として勉強する機会を与えて下さいました 静岡瀝青工業㈱の加藤社長、杉本工場長をはじめ技術部の皆様に は心から感謝いたします。また、身近で、論文を読んで意見を聞 かせてくれた家族に感謝します。 - 101 -
© Copyright 2024 ExpyDoc