中国:“新常態”(ニューノーマル) - JOGMEC 石油・天然ガス資源情報

中国:“新常態”(ニューノーマル)における
石油消費構造の変化
2016年3月24日
JOGMEC調査部
竹原 美佳
1
本日の内容
 エネルギー消費構造の変化
 石油消費構造の変化
 石油消費の中期見通し
2
経済“新常態”:量から質への転換
 経済成長の減速
高成長(GDP年平均成長率10%以上)から 中高成長(同7%前後)
 産業構造調整
重工業からサービス産業、投資主導から消費主導
2020年までの経済・産業政策の方向性
 小康社会の実現
GDPと所得水準を2010年比で倍増(GDP年平均6.5%)
 産業の最適化、高度化
“供給サイドの改革”
過剰設備(生産能力)の解消や利益を出せない“ゾンビ企業”の
淘汰
“中国製造2025”(2015年策定)に基づき“品質強国”、“製造強
国”作りを急ぐ
政府活動報告等に基づき作成
3
エネルギー消費構造の変化:消費推移
百万トン
(石油換算)
3,500
エネルギー消費推移(2000~2015年)
3,010
3,000
2,500
2,000
1,500
1,000
1,029
500
0
中国能源統計年鑑等に基づき作成
経済成長に伴い、エネルギー消費は2000~15年で約3倍増加
エネルギー消費:2000年10億toe→2015年30億toe
4
エネルギー消費の伸び(2000~2015年)
中国のGDPとエネルギー消費の対前年成長
(2000~2015年,%)
18%
16%
14%
12%
10%
GDP
, 6.9%
8%
6%
電力, 0.7%
4%
2%
エネルギー,
0.9%
0%
エネルギー
GDP
エネルギー消費
2000~2010年
年平均9%
2013~2015年
年平均2.3%
(2015年0.9%)
電力
中国能源統計年鑑等に基づき作成
経済“新常態”、エネルギー効率向上、環境政策によりエネル
ギー消費構造に変化
5
エネルギー効率向上、排出抑制政策
12次五か年計画(11~
15年)目標
13次五か年計画
(16~20年)目標
エネルギー効率
向上政策
GDP単位あたり*エ
ネルギー消費削減
16%削減(拘束性**)達
成
15%
環境・排出抑制
政策
非化石エネルギー
比率拡大
11.4%(拘束性)
(達成,11.7% )
15%
*GDP1万元創出あたり
**拘束性指標
(拘束性の他に政策遂行の結果予測される“予測性指標”が存在。例えば環境・排
出抑制政策に伴い天然ガスの利用拡大2015年7%(予測性:未達5.9%)
6
エネルギー効率向上政策
石油換算億トン
GDP単位あたりエネルギー消費(2005~2015年)
35
30
25
20
15
10
5
0
0.98
0.65
一次エネルギー消費
(左軸、石油換算億トン)
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
原単位
(右軸、石油換算トン/万元)
中国能源統計年鑑等に基づき作成
エネルギー消費効率は2005年を基準年として約3割向上
7
排出抑制政策
中国のエネルギー源別消費(2000・2010・2015年)
7.3%
2%
9.4%
4.0%
22%
11.7%
発電電力量に占める非化石比率
億kWh (2000、2010年、2015年1‐11月)
60000
5.9%
17%
18%
50000
25%
40000
19%
30000
69%
69%
64%
20000
10000
18%
0
2000年
2010年
石炭
原油
天然ガス
2015年
非化石
2000年
2010年
火力
2015年1‐11月
非化石
中国能源統計年鑑、中国電力企業連合会に基づき作成 非化石エネルギー発電
非化石エネルギー消費
2010年9.4%→2015年11.7%
2010年19%→2015年25%(水力18%、
原子力・風力各3%、その他1%)
2006年以降持続可能な成長へと政策を転換、省エネルギー・排出抑制政策を推
進。エネルギーの転換(電化)などによりエネルギー源の多様化(石炭抑制)漸進。
8
12次五か年計画期のエネルギー源別消費
増減
エネルギー源別消費増加(2011~15年,石油換算百万トン)
200
150
100
50
0
‐50
2011年
2012年
石炭
石油
2013年
天然ガス
2014年
2015年
非化石エネルギー
中国能源統計年鑑
他に基づき作成
石炭消費は期間中もっとも増加。しかし2012年以降 “新常態”、環境・排出抑制
政策により伸びが鈍化(非化石エネルギーによる代替進展)。石油消費は2013年
以降伸びが鈍化(天然ガス・非化石エネルギーによる代替)したが2015年は低油
価で再び成長に。天然ガスは主に石油からの代替が進展したが2014年以降価
格競争力が低下し伸びが鈍化。
9
石油需給の現状
石油需給推移(2000~2015年)
石油需給実績(2015年)
原油生産
(IEA)
433万b/d
(前年比2.6%、10
万b/d増)
石油消費
(IEA)
1,118万b/d
(同5.4%、57万b/d
増)
石油純輸入* 653万b/d
(海関統計) (同5.9%増、36万
b/d)
輸入依存度
61%
海関統計、IEA等にもとづき作成
*原油輸入-(原油輸出+石油製品輸出)
IEAにもとづき作成(2016年は見通し)
経済減速、産業構造調整下ではあるが、2015年の石油消費は
国家備蓄、輸送燃料(ガソリン・ジェット)により増加
10
原油輸入量と輸入価格
原油輸入価格(2015年)
原油輸入量と平均輸入価格(2012~2015年)
800
120.0
700
原油輸
入量
671万b/d
(前年比
8.8%、54万
b/d増)
原油輸
入価格
1344.5億ド
ル(同41%、
939億ドル
減)
原油平
均輸入
価格
54.9ドル/
バレル
(同46%、47
ドル減)
100.0
600
80.0
500
400
60.0
300
40.0
200
20.0
100
0
0.0
2012年
2013年
原油輸入量(左軸、万b/d)
2014年
2015年
平均輸入価格(右軸、ドル/バレル)
中国海関統計に基づき作成
2015年の石油消費は油価低迷により国家備蓄、輸送燃料(ガソ
リン・ジェット)需要が増加
11
国家石油備蓄への備蓄による増加
1期国家石油備蓄基地4
基地への国家備蓄量:
1,243万トン≒9,074万バ
レル)
(2014年11月、国家統計
局)
国家備蓄量:8基地計2,610
万トン≒約1億9053万バレ
ル*
2015年11月、国家統計局
*2015年の原油純輸入量
665万b/dの29日分に相当
公式発表では2014年~2015年末に国家備蓄として原油1,367万トン(9,979万
バレル≒日量27万バレル)が備蓄された模様(うち10万b/dは2012年に備蓄と
国家能源局幹部発言あり)13次五か年計画で2期国家備蓄構築へ。2016年
は2基地が完成予定。当面備蓄需要は継続の見通し
12
国家石油備蓄基地
1期(完了)
鎮海(浙江省)
Zhenhai(Zhejiang)
舟山(浙江省)
Zhoushan(Zhejiang)
黄島(山東省)
Huangdao(Shandong)
大連(遼寧省)
Dalian(Liaoning)
貯蔵容量
(万バレル)
事業者
Sinopec
3,276
2,759
Sinochem
3,150
2,905
Sinopec
2,016
1,825
CNPC
1,890
1,584
10,332
9,074
CNPC
1,890
備蓄完了
CNPC
1,890
備蓄完了
Sinopec
2,016
備蓄完了
Sinochem
1,890
備蓄完了
Sinopec
2,016
備蓄完了
CNPC
1,8902016年完成予定
CNOOC
1,8902016年完成予定
1期計
2期(構築中)
蘭州(甘粛)
Lanzhou(Gansu)
独山子(新疆)
Dushanzi(Xinjiang)
天津(Tianjin)
舟山(浙江省)二期
Zhoushan(Zhejiang)
黄島(山東)二期
Qindao(Shandong)
錦州(遼寧)
Jinzhou(Liaoning)
恵州(広東)
Huizhou(Guangdong)
備蓄量
(万バレル)
2期計(2015年
11月現在)
13,482
9,979
石油消費:産業牽引型から消費牽引型へ
軽油消費と貨物道路輸送(2000年・2005~2014年)
70,000
351
400
350
60,000
61,017
50,000
300
250
40,000
200
30,000
139
150
20,000
10,000
100
6,129
50
0
0
軽油消費
2000年139万b/d
→2014年351万b/d(
年平均15万b/d増)
同時期の石油消費
の4割が軽油
2000 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015
貨物道路輸送(左軸、億トンキロ)
軽油消費
(右軸、万b/d)
中国能源統計年鑑に基づき作成
2012年頃まで経済・製造業の発展に伴う物流規模の
拡大により軽油消費が堅調に増加
14
石油消費は産業牽引型から消費牽引型へ
ガソリン消費と自家用車保有台数(2000年・2005~2014年)
14,000
12,000
226
250
12,339
200
10,000
150
8,000
6,000
100
81
4,000
50
2,000
625
0
0
2000年 2005年 2006年 2007年 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年
自家用車保有台数(左軸、万台)
ガソリン消費
(右軸、万b/d)
ガソリン消費
2000年81万b/d
→2014年226万b/d
2010年以降の伸び
16万b/d増加
(軽油の伸びを上回
る)
中国能源統計年鑑に基づき作成
2010年頃から自家用車保有台数の拡大とともにガソリン
消費が堅調に成長
15
大型車(SUV)の販売が2015年の石油消費を牽引
自動車販売台数増減(2012~2015年、万台)
250
200
150
100
50
0
‐50
‐100
2012年
2015年販売台数
2,115万台
乗用車
2013年
MPV(多目的車)
2014年
SUV
2015年
軽バン(交差型)
中国自動車工業協会(CAAM)にもとづき作成
2015年の自動車販売台数は前年比7.8%増。乗用車の販売
が対前年で減少、その他販売も伸び悩む中、SUVの販売が
好調で特に上半期のガソリン(石油)消費を牽引
16
今後の石油需給見通し(IEA、中期)
需要
2016年1,150万b/d
2021年1,360万b/d
年平均成長(16~21
年):3.3%、40万b/d
増
中国の石油需給
万b/d
1,400.0
1,200.0
1,000.0
800.0
600.0
400.0
200.0
0.0
2015
2016
2017
需要
2018
2019
2020
2021
生産
供給
年平均成長(16~21
年):0.8%、3万b/d
減
IEA中期見通し
需要は年平均40万b/d増加、安定的に推移
低油価による投資削減、大慶等成熟油田の減退が進行し、
供給の伸びが鈍化、需給ギャップ拡大へ
17
主要石油製品需要見通し(試算)
主要石油製品需要試算(2014年~2021年)
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
2014年
2015年
2016年
ガソリン
2017年
軽油
2018年
2019年
2020年
2021年
年平均成長
(2016~21年)
ガソリン:7.4%、
25万b/d
軽油:0.4%、2
万b/d
ジェット燃料:
12.2%、10万
b/d
計37万b/d
ジェット燃料
「2016年石油、原油、ガソリン・軽油、ジェット燃料需給予測」
(2015年国内外油気行業発展報告p106)にもとづき試算
2017年以降は2016年の対前年伸び率で固定
石油消費は輸送燃料(ガソリン、ジェット)が牽引、軽油消費の伸
びは低迷が続く可能性
18
余剰の軽油輸出増加の可能性
単位:千t
軽油輸出増加(2013~2015年)
1,200
1,000
800
600
400
200
‐
1月
2月
3月
4月
5月
2013年
6月
2014年
7月
8月
9月
10月 11月 12月
2015年
新華社China OGP等に基づき作成
軽油は生産を抑制しているが余剰分を輸出。当面は軽
油の輸出拡大が続く模様
19
低油価の石油・天然ガス供給への影響
国有石油企業3社売上・投資・国内生産増減(2015年1~9月)
PetroChina
Sinopec
CNOOC
売上
2,089億ドル
25.6%減
2,460億ドル
27.4%減
187億ドル
33.4%減
投資
237億ドル
21.7%減
‐
77億ドル
35.7%減
2,221(1.5%減)
7,795(1.7%増)
815(4.3%減)
1,942(0.1%減)
262(28.9%増)
258(24.2%増)
国内生産
原油千b/d
天然ガスMMcfd
2015年は低油価で投資を削減。陸上生産は減少、海洋の生産開始で微増
2016年に3社はさらにCapexを抑制(10~20%)、生産減少(2~5%)の見通し
PetroChina:国内生産を前年比3%減少。大慶等コストが高く収益性の低い
成熟油田の生産を抑制。
Sinopec:国内生産を同4.8%減少。勝利油田等コストが高く収益性の低い成
熟油田の生産を抑制。
CNOOC:生産は同2~5%減少の見通し
20
参考:中国の精製処理能力と処理量推移
16000
千バレル/日
14000
精製処理能力
12000
10000
PetroChina
24%
その他
31%
8000
6000
4000
2000
CNOOC
4%
Sinopec
41%
0
2000年
2002年
2004年
2006年
2008年
2010年
2012年
2014年
2014年:1,410万b/d
BP Statistical Reviewに基づき作成
精製処理能力は過剰
精製処理能力の7割は国有大手石油企業、3割は山東省などに位
置する独立系精製企業(国有大手稼働率は8割、独立系は約3割)
21
独立系製油所への輸入ライセンス付与で原油
輸入増加の可能性
企業
1 山東
2 遼寧
3 山東
4 山東
5 山東
6 山東
7 寧夏
8 山東
9 山東
10 山東
11 山東
12 山東
13 山東
14 陝西
東明石化
(Dongming)
盤錦北方
(Panjin Beifang)
中化弘潤
(Sinochem Hongrun)
墾利石化集団
(Kenli)
利津石油化工廠
(Lijin)
東営亜通石化
(Yatong)
宝塔石化
(Baoda)
京博石油化工
(Jinbo)
寿光魯清石化
(Shuguang)
天弘化学
(Tianhong)
匯豊石化
(Huihong)
東営斉潤化工
(Dongying Jirun)
海右石化
(Haiyou)
陝西延長
合計
輸入枠
(万トン/年)
輸入枠
(万b/d)
取得時期
750
15
2015年5月
700
14
2015年6月
530
11
2015年7月
252
5
2015年7月
350
7
2015年7月
336
7
2015年7月
616
12
2015年8月
331
7 2015年10月
258
5 2015年10月
440
9 2015年10月
416
8 2015年10月
220
4 2015年11月
320
360
5,879
2016年2月29日
東明石化、天
弘化学、匯豊
石化などの独
立系精製事業
者16社が山東
省済南市で
中国(独立製油
所)石油調達連
盟を設立
6 2015年11月
7
118
2016年1月
22
参考:原油輸入相手先の変化
ロシア・中
央アジア
14%
欧米・
中南米
13%
アジア・太
平洋
3%
地域別原油輸入対前年増減(2013~2015年、万b/d)
30
25
20.4 19.2 20
17.3 15
10
アフリカ
19%
中東
51%
4.6 5
0
‐5
アジア・太平洋
中東
アフリカ
‐10
ロシア・中央アジア
欧米・中南米
‐7.2 2013年
2014年
2015年
2015年の原油輸入相手先(地域別)はアフリカが縮小、ロ
シア・中央アジア(ロシア)および南米(ベネズエラ・ブラジ
ル)が拡大。中東はクウェート、オマーン、イラクが拡大。
23
参考:原油輸入主要相手国のシェア攻防
万b/d
中国の主要国からの原油輸入推移(2005~2015年)
120
100
80
60
40
20
0
サウジアラビア
アンゴラ
ロシア
オマーン
イラク
イラン
イランの制裁解除により中東高硫黄原油の中国向け
供給の競争激化へ
ロシアの供給拡大に対しアフリカ低硫黄原油の原油が
輸送コストなどの面で劣勢に立たされる可能性
独立系精製事業者の調達行動に要注目。
2015年の原油輸入
サウジアラビア:首
位は維持、シェアは
ダウン
ロシア:長期契約増
量で2位に浮上。
イラク:権益原油輸
入や売買契約の増
加で4位に浮上。
イラン:制裁(2012
年)後2割程度減少
したが、2014年には
制裁前水準に復帰。
しかし、2015年は前
年比微減
24
まとめ
エネルギー消費構造の変化
経済“新常態”、エネルギー効率向上、環境政策によりエネルギ
ー消費構造に変化(石炭消費の伸びが鈍化、非化石エネルギー
は進展)
石油消費構造の変化
石油消費は軽油からガソリン・ジェット燃料等の輸送燃料へ。
産業牽引から消費牽引へと移行。石炭に比べ“新常態”(経済減
速や産業構造調整)の影響が小さい。
石油需給の中期見通し
石油需要はガソリン・ジェット燃料等の輸送燃料や国家石油備
蓄の積み増し等により今後も一定の伸びが見込まれる。供給は
低油価による投資削減や成熟油田の減退により伸びが鈍化、需
給ギャップ拡大へ。
25
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