デジタルリーダーに学ぶ 業績向上につながる10の属性

第7回 Digital IQ 調査
2015 Global Digital IQ® Survey
デジタルリーダーに学ぶ
業績向上につながる10の属性
デジタル戦略によって目指すのは売上拡大か、
創造的破壊か?
PwCが2007年から開始した本独自調査では、あるシンプルな問
いを追及している。
「デジタル投資が企業の付加価値を高め、持続
させ続けるために、リーダーはどのようなアクションをとる必要があ
るのか?」ということである。その答えを求めて、グローバル企業の
経営幹部およびIT幹部2,000人近くを対象とした調査を実施してい
る。本年の調査では、優れた財務実績と相関の高い10の重要属性
を識別した。
トップパフォーマーの企業は、デジタル戦略、イノベーション、実
行にじっくりと取り組む傾向が見られる。CEOのコミットメントが高
く、戦略が明確で、戦略に対する認識を共有していることが多い。テ
クノロジーの導入やイノベーションの源泉の探求にあたっては、広
い視野を持つ。またデータから知見を得ることにたけ、サイバーセ
キュリティに積極的に取り組み、デジタル投資の効果を一貫した方
法で測定している。トップパフォーマーの企業(私たちが定義する
Digital IQ®が高い企業)はそのような属性を示し、後進企業の2倍
の速さで収益や利益の成長を遂げている。
本調査により、デジタル投資と企業業績の直接的関連性の立証、
および社内で起こっている創造的破壊の性質、ならびに重要な阻害
要因の大きな傾向が明らかになった。
1. デジタル戦略によって目指すのは売上拡大か、創造
的破壊か?
企業は市場が期待するほどに創造的破壊のためのテクノロジー投
資に熱心ではない。目下の関心事は既存のビジネスモデルをデジタル
に対応させることであり、近視眼的な見方が懸念される。
2. しかし、多くの企業内部ではさまざまな創造的破壊が
巻き起こっている。
経営陣はデジタルテクノロジーの活用を強く望んでいる。支出パ
ターンの変化、デジタルにおける新たな役割、新しい仕事上の関係の
登場といった動きは、事業運営モデル変革の表れである。
3. 消極的な姿勢が変革を阻んでいる。
市場を先取り、社内の創造的破壊を進めるには、小さなスタート
アップ企業のような思考と行動が必要である。部門の壁を越えた生
産的な関係の構築、情報交換と協力のための仕組み作り、スキル開
発を加速することが不可欠である。
Digital IQによる検知事項の意義はこれまでにないほど高まってい
る。企業がデジタルテクノロジーに多額の投資を続け、顧客、従業員、
株主、取締役会が期待する水準が高くなるにつれ、経営陣には膨大
な投資から具体的な成果を得なければならないという重圧がのしか
かる。PwCでは、まず経営陣が今日のデジタル環境を明確に把握す
るべきだと考えている。この準備が整ってこそ、現在のビジネスにお
いて優れた業績を挙げるとともに、将来の創造的破壊が可能になる。
2
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
Digital IQの高い企業は後進企業の
2倍の速さで収益や利益の成長を
遂げている
第7回 Digital IQ 調査
3
デジタルで浮き彫りになる
企業の本当の姿
本調査では、2015年が転換点であるという明確な兆候が明らか
になった。地域による違いは多少あるものの、経営陣はデジタル投
資を通じて競争優位性を発揮しようとしている。以下にその理由を
まとめる。
CEO が深く関与している
本 年 度 の D i g i t a l I Q 調 査 で は 、C E O の 大 半(8 6%)が デ
ジタルテクノロジーの 推 進を極めて重要と位置 づけていた 1 。
経営幹部およびIT幹部の4分の3近くも同様の回答である。何よりこ
の2年間の数値の上昇が変化を如実に物語っている。CEOがデジタ
ルを推進しているという回答は2013年には57%にとどまっていた
が、2014年には71%、本年は73%に増加してきている。地域別で
は中東の高さが目立ち、幹部の84%は、CEOが社内における強力推
進者であると見なしている。
積極的な投資
CEOの号令は多額のデジタル投資に影響を及ぼしている。回答者
の3分の1近く(31%)が、収益の15%以上をITだけではなくビジネス
全体のテクノロジー投資に振り向けていると答えた。テクノロジーア
ナリストの一般的な支出予想である1桁を大幅に上回る数値である。
地域別に見ると、収益の15%以上を投資する傾向が強いのは、アフ
リカ(42%)および東南アジア(40%)となった。
強まる自信
自社のDigital IQが高いと評価した回答者は3分の2を占めてお
り、昨年の64%から微増している。アジア(64%)、スカンジナビア
(59%)、西欧(54%)では、幹部の自信はそれほど強くなかった。
上層部におけるデジタルに対する認識のずれ
62%
50%
49%
45%
41% 41%
41%
33%
46%
37%
あらゆるビジネス領域での
テクノロジー投資
29%
対顧客テクノロジーに関する活動
25%
14%
ITと同義
13%
11%
技術革新に関する活動
データおよび分析に関する活動
CIO
CMO
出典:PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:貴社ではデジタルをどのように定義していますか? 最も近いものを2つまで選択してください。
4
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
CDO
共通の定義がない
CIOはバックオフィスへ?
40%
35%
32%
36%
29% 29%
デジタルの定義について最も当てはまるものを2つ選択するよう
求めた質問では、技術革新に関連する活動と位置づけている回答
が過半数(53%)を占めた。テクノロジーを企業全体に組み込むた
めの投資として見ている回答も41%と多く、IT活動(37%)、対顧
客活動(36%)とする回答が続いた。CIOとCDOは共通の認識を持
つ傾向があるが、CMOの優先事項および期待事項は異なっている。
状況は地域によってばらつきがあり、中欧および西欧ではデジタル
をITの問題と見ている幹部が多く、北米(48%)と中東(69%)では
より広い視野で問題を捉えている。
新たな役割とその進化
全てのデジタル活動
の指揮を執る
IT活動および
イノベーションの
指揮を執る
現在
IT活動のみの
指揮を執る
3年後
出展: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:貴社のCIOが主として責任を負う役割について、もっとも適しているものは
以下のどれに当たりますか。また、3年後はどうなりますか。
IT以外の技術投資が増加
68%
47%
2015 Digital
IQ® Survey
2014 Digital
IQ® Survey
かつて企業のテクノロジーを担当するのはCIO(最高情報責任
者)のみだったが、多くの企業では従来CIOが担ってきた役割が新
旧の責任者に分散されるようになってきている。デジタル変革活
動の指揮を執る役職として最高デジタル責任者(CDO)を任命し
ている企業もある(PwC Strategy&による調査、
『Digitizing the
business: The 2015 Chief Digital Officer Study』より)。現時点で
はCIOが全てのデジタル活動の指揮を執っているという回答が多い
が(40%)、3年後には減少が予想されている(35%)。また、CIOが
社内のまとめ役となりITおよびイノベーションに取り組むことを期
待する声(現在32%)は3年後に36%に増加する。CIOの役割の過
小評価が目立つ地域もある。北米では、CIOが企業全体のデジタル
について責任を負うと考える回答が現在の44%から3年後は31%に
減少する。
テクノロジー支出の分散
支出の大半(68%)はIT以外の予算からとなり、前年の47%か
ら大きく増加している。中欧および東欧(73%)、北米(71%)では、
CIOの管理外の支出が多い。また、投資の最終責任者にも変化が見
られた。CEO(34%)を筆頭として、CIO(27%)、CDO(14%)、CFO
(13%)の順に続く。北米および西欧ではCIOがデジタル投資の責
任者であることが多いが、中東ではCDOとなっている。
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey, 2014 Digital IQ® Survey
(回答数:1,988、1,494)
質問:
2015年:過去12カ月で、次の領域に費やされた貴社デジタル予算の割合はどれくらいですか。
2014年:過去12カ月間の貴社のテクノロジー支出のうち、次の機能に費やされた割合はどれく
らいですか。
第7回 Digital IQ 調査
5
デジタルが社内に
大きな創造的破壊をもたらす
6
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
デジタルの価値を追求:
企業に本当に求められているのは何か
回答の傾向から、企業のデジタルに対
する期待の高まりのほどが伺える。デジタ
ルがもたらす創造的破壊や現在の課題へ
の対応がたくさん話題になっている。しか
し、企業が時間とコストを投じているのは
そこではない。デジタルに最も期待するこ
ととして創造的破壊を挙げる声はわずか
1%にすぎない(ただし、デジタル化が企
業にもたらす価値を3つ選択するよう求め
る質問では、この割合は8%に上昇した)。
企業が求めているのはもっと直接的な
見返りである。45%は収益の拡大、25%
はカスタマーエクスペリエンスの改善、
12%は利益の拡大を挙げている。つまり、
デジタルは現在のビジネス成長を促す手
段であり、企業は必ずしも将来のビジネス
を向いているわけではない。
このような近視眼的な見方の是非はさ
ておき、問題はその試みがはたして成功し
ているかどうかである。熾烈な競争が繰
り広げられる今日の環境において、効果
的な取り組みがなされているのだろうか。
PwC Strategy&が最近実施した調査2に
よると、成長を追及する姿勢には変わりが
ないものの、目標を達成する力を不安視
する意見もある。
創造的破壊が最初に想起される事項だが、
実態の投資優先順位は最下位
2%
的確なデータ分析を通じた意思決定の向上
2%
ブランドや評判の向上
1%
各業界における創造的破壊
2%
人材確保と求人の強化
4%
コスト削減
1%
新参企業への対抗
1%
その他
5%
製品のイノベーション
45%
収益の拡大
12%
利益の拡大
25%
カスタマーエクスペリエンス
の向上
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:企業へのデジタル投資からどのような価値を得ることを期待していますか。最も当てはまるものを3つ選択してください。
(1位に挙げられた回答)
第7回 Digital IQ 調査
7
Digital IQ
デジタルの成長を
加速する10の属性
第7回 Digital IQ 調査
8
01
02
CEOがデジタル推進者である。
デジタルに責任を持つ幹部が
基本的なビジネス戦略策定に
関わっている。
03
04
ビジネスと連携したデジタル戦略に
ついて合意し、最高責任者レベルで
共有している。
ビジネスおよびデジタル戦略が
社内の隅々まで十分に浸透している。
05
06
外部情報源と積極的に協力して
新たなテクノロジーの応用に関する
アイデアを集めている。
主に競争優位性を目的として
企業のデジタル投資を行っている。
07
08
ビジネス価値を向上するために、
取得したあらゆるデータを効果的に
活用している。
企業のデジタルプロジェクトに
おいて、セキュリティやプライバシー
のリスクを積極的に評価し、
対策をとっている。
09
10
ビジネスケイパビリティおよびプロセス、
デジタルおよびITコンポーネントを含む、
複数年にわたる企業のデジタルロード
マップがある。
デジタルテクノロジー投資の成果を
一貫した方法で評価している。
第7回 Digital IQ 調査
9
企業のDigital IQはどの程度か?
Digital IQ分析からは、自社のケイパビリティに強い自信を持っている企業でも、デジタルを具体的な利益につなげられていないこと
が伺える。しかし、進むべき道は見えている。PwCは今回約2,000人の幹部からの回答に基づき、戦略、イノベーション、実行にわたって
25以上の要因を分析した。最終的に、優れた財務実績と相関のある10の属性を識別した。これらに基づいて、Digital IQスコアを算定
する。本調査でDigital IQの高い(上位4分の1のグループ)企業は、このような属性を示した企業であり、後進企業の2倍の速さで収益
や利益の成長を遂げている。
Digital IQスコアを用いることで、企業がテクノロジー投資からどれほどの価値(一般的には成長)を得ているかを一貫した方法で評
価できる。Digital IQを使用して企業の成果を定量化し、個々の企業として、業界内、また同業他社と比較したベンチマーク評価を行う。
総合スコアは方向性を把握する上で重要ではあるものの、Digital IQの真価は、10の属性それぞれを評価し、デジタルに対する企業の
理解度、優先順位、ギャップを把握できる点にある。
79.5
10
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
77.8
77.2
世界平均
テクノロジー
消費財・小売・流通
77.1
電力・公益事業
ヘルスケア
金融サービス
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
ホスピタリティ・レジャー
76.6
75.6
エンターテインメント・
メディア・情報通信
エネルギー・資源
自動車
75.8
76.6
77.3
産業機械
77.4
77.6
デジタル戦略を練る -
役員室から休憩室まで
デジタルの戦略的重要性から、Digital IQの10の属性のうち
4つは戦略に関するものとなっている。
最も重要なのはCEOのリーダーシップである。
デジタルリーダーをはじめとする経営陣が当事者意識を持ち、
社内全体で継続的に取り組む必要がある。
第7回 Digital IQ 調査
11
01
CEOが推進者
CEOのリーダーシップとテクノロジーの価値の関係の分析は、Digital IQ調査開始当初からのテーマで
ある。2007年に実施した最初の調査では、CEOによる推進と優れた財務実績の相関を確認した。テクノロ
ジーの重点事項が運用効率から成長に移り、関係者や話題も変化した以上、CEOがリーダーシップを執
るのは自然なことである。CEOはデジタルに高い期待を寄せ、創造的破壊の優先順位を他の幹部と比べ
てかなり高く設定している。また取締役会もデジタルへの関与を強めてきている。2015年10月まで実施し
ていた2015 Annual Corporate Directors’ Surveyでは、取締役会がテクノロジー戦略や課題(特にサイ
バーセキュリティ)に関するディスカッションに費やす時間が延びてきている。正式な取締役会会議ごとに
CIOと話し合う役員も増加している(2012年には18%だったが、本年は25%)。CEOやデジタルリーダー
のディスカッションの範囲は、やがてサイバーセキュリティ以外にも広がると想定される。
CEOは「創造的破壊」
を意識しているが、
他の幹部の間では関心が薄い?
54%
財務的価値
創造的破壊
67%
54%
50%
47%
44%
45%
16%
CEO
6%
4%
CFO
COO
7%
8%
CMO
CIO
3%
4%
CDO
CTO
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:デジタルエンタープライズ投資からどのような価値を得ることを期待していますか。最も当てはまるものを上から3つ選択してください。
(収益の拡大、利益の拡大、業界の創造的破壊、新参企業への対抗)
12
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
第7回 Digital IQ 調査
12
02
デジタルリーダーが戦略を策定
デジタルの基調を打ち出し、ビジョンを提示するのはCEOだが、デジタルの運用責任を負うのは基本
的なビジネス戦略を策定するCIOやCDOであることが多い。この傾向は、デジタルリーダーがビジネス
の大部分を担当している企業で顕著である。企業によっては、新しい組織構造を通じて戦略を共同策
定するのが効果的となっている。例えば、ある世界的なヘルスケア企業では、数十人のCIOとCMOをま
とめるためにデジタル協議会を発足させた。それぞれのビジネスユニットが課題に取り組むのではなく、
協力してデジタル戦略と実行に臨んでいる。このような協議会が本当の意味で力を発揮するには、部門
の壁を越えて協力し、ITとビジネスの両分野の人材で構成されている必要がある。
03
経営陣が関与
CDOやCIO以外の最高経営者も戦略に参加し、それぞれの役割を担う必要がある。共通認識を持
つことで、投資を最大限に生かせるようにし、重複する領域を見つけ出し、取り組みの妨げとなりか
ねないリソースのギャップを明らかにする。過去数年間の調査から、投資から最大限の価値を引き出
すには、経営陣が生産的な関係を構築することが不可欠であることがわかっている。特に重要なのは
CIOとCMOの協力関係であり、生産的な協力関係を構築することが求められる。CIOとCMOの関係が
強固であるという回答は54%と、調査対象とした9つの関係の中で最も弱い。対照的に、CIOとCEOの
関係が強固であるという回答は70%だった。
第7回 Digital IQ 調査
13
04
社内全体で戦略を共有
戦略を完全なものとするには、社内の全員の参加が必要である。このシンプルな原則の重要性はこの
3年間変わらない。現在、企業の69%がビジネスおよびデジタル戦略が社内全体で共有されていると述
べているが、共有が進んだのは最近のことである。昨年は55%、一昨年は50%にすぎなかった。経営陣
はテクノロジーを戦略の周知や従業員の動員に利用することが多い。ビデオを制作し、ソーシャルメディ
アやスマートフォンを活用して、どのような戦略を練り従業員にどのような影響が及ぶか、デジタルで伝え
ている。
デジタル支出の目的はITよりも対顧客活動の方が多い
50%
49%
48%
47%
50%
49%
48%
48%
40%
33%
33%
35%
33%
31%
30%
27%
29%
28%
23%
23%
20%
20%
21%
19%
20%
10%
0%
アフリカ
アジア
中欧
および
東欧
IT
中南米
マーケティングおよび営業
中東
北米
西欧
その他
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:過去12カ月で、次の各領域に費やした企業のデジタル予算の割合はどれくらいですか。
14
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
第7回 Digital IQ 調査
14
視野を広げ、
重要領域に注力することで、
イノベーションを加速
短期的な成長と長期的な差別化を目指す
イノベーション戦略で考慮すべき点は多いが、
Digital IQには2つの重要な要因がある。
新たな分野を開拓してイノベーションを追求すること、
そして競争優位性を持つ領域で決断力をもって
行動することである。
第7回 Digital IQ 調査
15
05
外部からのアプローチ
Digital IQの高い企業では、イノベーションに外部からのアプローチを採用している。つまり、ベン
ダーや顧客など、他のイノベーターの膨大なナレッジベースを活用し、テクノロジーの新たな活用方法
を見つけ出そうとする。さまざまな新テクノロジーの評価にも積極的で、ビジネス主導やベンダー主導
ではなく、テクノロジー主導のアプローチが特徴的である(他企業の50%に対して69%)。また、ビジ
ネスモデルのイノベーションに熱心に取り組んでいる企業(業界の創造的破壊を目指している8%の
企業)は、外部からのアプローチを徹底的に採用していることも判明した。広い視野をもってイノベー
ションに取り組み、ビジネスをデジタル化する機会を常に模索している。このような姿勢はデジタルに
よる創造的破壊に取り組む企業では71%に見られるが、その他の企業では63%となった。
ビジネスをデジタル化する
機会を常に模索する姿勢は、
デジタルによる創造的破壊に
取り組む企業では71%に見られるが、
その他の企業では63%となった。
16
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
第7回 Digital IQ 調査
16
06
競争優位性を追求
多くの外部情報源を積極的に利用して情報を収集することは、市場における差別化につながる。さ
まざまなアイデアの中から、ビジネスに有望なものを見つけ出し、優先順位を設定する必要がある。
候補に挙がる新テクノロジーは個々の企業によってさまざまである。今後3~5年間で戦略的に重要と
見なされているのは、サイバーセキュリティ、データマイニングおよび分析、データ仮想化、デジタル配
信、プライベートクラウドである。また、NoSQLデータベース、業務用センサー、エンタープライズウェ
アラブルなども競争力につながると期待できる3。
新テクノロジーの導入は
テクノロジー主導で進む
100%
75%
50%
25%
0%
自動車
エンター
エネルギー・
テインメント・
資源
メディア・
情報通信
金融
サービス
テクノロジー主導
出典:PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:新しいテクノロジーの導入をどのように行っていますか。
ヘルスケア ホスピタリティ
・レジャー
ビジネス主導
産業機械
電力・
公益事業
消費財・
小売・流通
テクノロジー
ベンダー主導
第7回 Digital IQ 調査
17
重要ケイパビリティと
デジタルロードマップで
実行力を強化
企業のケイパビリティはビジネス戦略に沿ったものである
必要があるが、Digital IQには2つの独特のケイパビリティが
不可欠である。データの利用も、サイバーセキュリティおよび
プライバシーへの対応も、競争する上で避けて通れない課題である。
また、優れたDigital IQと、複数年にわたるデジタルロードマップ、
一貫した進捗評価方法は密接に結び付いている。
第7回 Digital IQ 調査
18
07
ビジネスデータの有効活用
多くの場合、取得したデータから価値を引き出すことは、ビジネスをどのようにして拡大するか、競合
企業と協力するかどうかなどの戦略的意思決定の材料にすることを指す。これは容易なことではない。
データの取得に伴う困難よりも、どのデータを使用すべきなのか、自分の役割にどのように役立つのか
といった行動やスキルに関する課題が、データ品質や精度と同じくらい挙げられている4。有望視されて
いるのは、サードパーティデータ(78%)、クラウドアプリケーションデータ(70%)、ソーシャルメディア
データ(69%)、位置対応データ(64%)であった。
08
サイバーセキュリティへの積極的な取り組み
どの企業もそれぞれのエコシステムの中で、セキュリティやプライバシーの問題への対応に常に苦
労している。さらに新しいテクノロジーや新規顧客、新規パートナー、新型デバイス、新規データが加
わり、依存関係の複雑化とともにリスクが増加している。これが、今日の企業が置かれている基本的
な環境である。Digital IQの観点から見て重要なのは、企業がどの程度積極的に取り組むかというこ
とだ。企業は、サイバーセキュリティ戦略がブランド構築、競争優位性の獲得、株主価値の向上にどの
ように役立つのかを常に考える必要がある。Digital IQの高い企業は、デジタルエンタープライズプロ
ジェクトにおいて、セキュリティやプライバシーのリスクを積極的に評価し、対策をとっている。Digital
IQの低い企業(64%)と比べ、リスク管理の準備度にも自信を持っている(80%)。このような企業で
は、特にIoTのような新たなテクノロジーを活用する新規製品およびサービスの開発会議に、リスク管
理者やセキュリティリーダーを定期的に参加させるなどしている。
第7回 Digital IQ 調査
19
09
デジタルロードマップ
複数年にわたるロードマップを中心として士気の向上を図る試みは、最初のDigital IQ調査から見られ
る重要な慣行である。長期の戦略計画を前面に出した上で、年度計画や予算配分などの単年の戦術的
項目に加え、バランスをとることが重要である。しかし、社内のデジタル化が進むと同時にまとまりがなく
なり、ロードマップの整備への関心が薄れていくようである。現在、ビジネスケイパビリティおよびプロセ
ス、デジタルおよびITコンポーネントを含む、複数年にわたるデジタルエンタープライズロードマップを
作成している企業は53%まで落ち込んでいる(4年前は63%)。ロードマップのスキル面は多くの企業に
とって深刻な課題である。自社のビジョンを実現するために必要な全ての技術力を備えていると答えた
幹部は55%だった。
何を目指すのか?
デジタルロードマップの未整備が目立つ
60%
59%
57%
54%
47%
45%
50%
44%
30%
15%
9%
0%
アフリカ
アジア
中欧
および
東欧
西欧
中南米
中東
北米
出典: PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:運営モデルに関する次の記述はどの程度当てはまりますか。
「ビジネスケイパビリティおよびプロセス、デジタルおよびITコンポーネントを含む、複数年にわたるデジタルエンタープライズロードマップがある」
20
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
第7回 Digital IQ 調査
20
10
一貫性のある方法による評価
経営幹部は、デジタル投資からどのような価値が得られるかをはっきり示すことを求める。この傾向
もDigital IQの高い企業(79%)の方が強い(Digital IQの低い企業では72%)。これを示すには、成長
目標に向けた進捗を評価するための従来の基準(ROIなど)と、思い切った投資を評価するための新し
い評価基準を組み合わせる必要がある。これには特に取締役会が強い関心を示している。取締役会は
リスクのみに基づく評価基準から、10~15の幅広い「サイバー評価基準」へと視野を広げている。例え
ば、
「企業の戦略に影響を及ぼす、データ取得活動でのトレンドの把握」などがある5。
デジタル目標の達成に足りないのは「技術力」
65%
63%
60%
61%
59%
57%
55%
55%
57%
55%
54%
52%
50%
45%
47%
自動車
エンター
金融サービス ヘルスケア
エネルギー・
テインメント・
資源
メディア・情報通信
ホスピタリティ
・レジャー
産業機械
電力・
公益事業
消費財・
小売・流通
テクノロジー
出典:PwC, 2015 Global Digital IQ® Survey(回答数:1,988)
質問:組織とスキルに関する次の記述はどの程度当てはまりますか。
「デジタルエンタープライズビジョンを実現するために必要な技術力を全て備えている」
第7回 Digital IQ 調査
21
Digital IQを引き上げるための次のステップ
企業はデジタルを完全に受け入れ、投資が成長促進と競争優位
性の創出につながることを期待している。2,000人の幹部を対象と
して実施したDigital IQ調査では、目標達成のためには経営陣が
指揮を執って組織的に取り組む必要があることがわかった。まず、
Digital IQ評価を受け、自社の位置づけを明らかにする。その上で、
以降にあげる次のステップに進む。
1. 自社の Digital IQ を調べる
主要なビジネスおよびITチームとともに評価を受ける。最近では、
大手事業会社のグローバルリーダー125人に対してカスタマイズし
たDigital IQベンチマークを実施した。Digital IQスコアは非常に高
かったが、10の属性を調べたところ、デジタルビジョンの構築と共
有の面では大きな遅れが見られた。
2. デジタル戦略ワークショップを開催する
セッションを通じて、幹部の調査によって浮かび上がった改善領
域を評価する。また、次の点について話し合い、共通の認識を形成
する。
§§ デジタル投資の役割
§§ デジタルを推進するために必要な組織的役割
(CDO、CIO、CMO、その他)
§§ 社内での変化に伴って生じた課題のうち、未対処のもの
(社内で分散が進んでいるが、IT支出がばらばらになって
いるなど)
3. デジタルでコミュニケーションを図る
企業のDigital IQベンチマークは、デジタル戦略を中心として社
内全体をまとめるのに役立つ。ビデオや社内ソーシャルメディア、モ
バイルなどのテクノロジーを活用して、継続的なデジタルコミュニ
ケーションを図ることも検討したい。
4. 創造的破壊のための戦略を策定する
創造的破壊のための明確な戦略とアプローチを策定しよう。ある
エネルギー会社では、デジタルテクノロジーを活用して数年以内に
まったく新しいビジネスを始めようとしている。ただし、新しいビジ
ネスの詳細を考えるにしても、収集した全てのデータからの価値の
実現、運用効率の向上といった従来の目標に立ち戻って考えること
は重要だ。
22
デジタルリーダーに学ぶ業績向上につながる10の属性
5. エコシステムを広げる。
デジタルの飛躍的な成長、市場の創造的破壊、最新技術への対応
を1社でこなすのは至難の業である。デジタルイノベーションは、新興
企業の支援者、大学の研究室、オープンソースプロジェクト、メーカー
コミュニティーなど、あまりなじみのないところから生まれるものであ
る。外部に目を向け、交際範囲を広げ、常に斬新なアイデアや豊富な
スキルを取り入れる時期に来ている。
あなたの会社のDigital IQを評価しましょう
www.pwc.com/digitaliq
脚注
1 PwC、
『18th Annual Global CEO Survey(第18回世界CEO意識調査)』、2015年1月
2 Strategy&、
『2015 Growth Survey』、2015年6月
3 PwC、
『Digital IQ: Three surprising digital bets
(2015年の投資はどこへ向かうのか?見落とされがちな3つのテクノロジー)』、2015年1月
4 PwC、
『Global Data & Analytics Survey 2014: Big Decisions™』、2014年9月
5 PwC、
『Achieving excellence—Cybermetrics: what directors need to know
(Audit Committee Excellence Series)』、2015年9月
PwCのDigital IQ調査について
PwCでは2007年から世界各国の経営およびIT幹部を対象としてDigital IQ調査を毎年実施している。
7回目となる本年は、2015年7月から9月までを調査期間とし、51カ国1,988人から回答を得た。
回答は7地域、10業種に集約されている。回答者の半数がIT幹部、残りの半数が経営幹部である。
回答者の21%は収益10億米ドル以上の企業に、52%は収益5000億米ドル~10億米ドルの企業に勤務している。
グローバル調査の回答者の内訳
西欧
中欧および
東欧
24%
7%
北米
29%
中東および
アフリカ
4%
アジア
22%
南米
14%
第7回 Digital IQ 調査
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シニアマネージャー
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合同会社、PwCアドバイザリー合同会社、PwC税理士法人、PwC弁護士法人を含む)の総称です。各法人は独立して事業を行い、相互に連携をとりながら、監査および
アシュアランス、コンサルティング、ディールアドバイザリー、税務、法務のサービスをクライアントに提供しています。
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人以上のスタッフを有し、高品質な監査、税務、アドバイザリーサービスを提供しています。詳細はwww.pwc.com をご覧ください。
本報告書は、PwCメンバーファームが2015年9月に発行した
『2015 Global Digital IQ Survey - Lessons from figital leaders 10 attributes driving
stronger performance』
を翻訳したものです。翻訳には正確を期しておりますが、英語版と解釈の相違がある場合は、英語版に依拠してください。電子版はこちらから
ダウンロードできます。www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/thoughtleadership.html
オリジナル(英語版)はこちらからダウンロードできます。www.pwc.com/gx/en/services/advisory/2015-global-digital-iq-survey/downloads.html
日本語版発刊月:2016年3月
管理番号:I201510-1
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