巻頭言 - 全国老人保健施設協会

巻 頭 言
報酬改定からみる
地域包括ケアシステムの構築
全老健副会長、介護老人保健施設有縁の荘理事長
四藏 直人
平成26 年度診療報酬改定では、在宅復帰・在
宅支援機能の強化として 7 : 1 の一般病棟や地域
包括ケア病棟の入院基準で、自宅等への退院患者
割合をそれぞれ75%、70%以上とする在宅復帰
要件が追加された。自宅等には在宅強化型老健施
設等が含まれることになった。さらに医療・介護
の連携の評価として、特に維持期リハビリの移行
促進等で、評価の見直しや要介護被保険者等に対
する維持期の脳血管疾患等、運動器リハビリにつ
いて経過措置の延長が行われた。また介護保険リ
ハビリ移行支援料が新設された。
一方、平成24 年度介護報酬改定では、在宅支
援強化型としてリハビリを実施することで入所者
の在宅復帰を推進すること(在宅復帰率)
、新規
入所者の利用拡大および入所期間の短縮を推進す
ること(回転率)
、医療的ケアの必要な中重度者
のサポートを強化すること(重度者率)を中心に
改定された。さらに平成27 年度介護報酬改定で
は、在宅支援強化型デイケアの概念が取り入れら
れ、デイケアからデイサービスへの移行として社
会参加支援加算の新設や、新規開始者の拡大、中
重度者のサポート強化として中重度者ケア体制加
算が新設された。
平成24 年度の介護報酬改定で老健施設に対す
るメッセージとして発されたことは、老健施設が
本来持っている機能を十分発揮してほしいことだ
と受け止めている。全老健では、平成24 年度介
護報酬改定以降の 3 年間、国が示した在宅復帰と
いう老健施設の本来の機能に力を注ぐことに懸命
に取り組んできたが、平成27 年度介護報酬改定
では全体で▲2.27%と残念な結果となった。
その状況で、在宅強化型老健施設では基本サー
ビス費の下げ幅が▲1.56%に抑えられたことや、
在宅復帰・在宅療養支援機能加算が21 単位から
27 単位に増えたことなどから、全体ではマイナ
スというなかで、在宅復帰機能の強化というイ
メージを読み取ることができる。さらに退所後の
生活を支援するために新たな評価や、在宅支援を
推進するための看護・介護職専従常勤要件が緩和
され、通所・訪問リハビリについては活動と参加
に焦点を当てたリハビリや社会参加ヘの移行等に
ついて評価されている。
さて、在宅強化型老健施設は平成24 年 4 月時
点の会員施設のうち3.8%だけだったが、平成27
年10 月には16.4%にまで増えている。また、加
算型老健施設は平成24 年 4 月には10.4%だった
が、平成27 年10 月では29.6%にまで増加してい
る。約 3 年で、在宅強化型で約 4 倍、加算型で約
3 倍となっている。
このように診療報酬改定や介護報酬改定の一連
の動きを振り返ると、平成26 年度診療報酬改定
が在宅復帰・在宅支援機能の強化であり、一方で
平成27 年度介護報酬改定は在宅支援の受皿の充
実(短期入所については今まで触れられていない
が)であったことを考えると、これは平成30 年
の診療報酬・介護報酬同時改定に向けて、地域包
括ケアシステムの構築を睨んだものというイメー
ジを読み取れる。
地域包括ケアは老健施設の得意分野だ。都市部
や地方ではそれぞれの資源の違いがあることは事
実である。しかし、地域特性に合わせ既存の社会
資源サービスを活用し、それをいっそう発展させ
て「地域完結型」を考えていくことが重要なこと
といえる。老健施設は、ほぼ中学校区に 1 つある
介護保険施設であると同時に、医療提供施設でも
あるのだ。つまり、その要になるといえる。
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