企業訪問 シ リ ーズ 株式会社 いわき精機 ∼裾野の広い受注分野と 一貫生産体制が強みの自動機メーカー∼ 企業概要 代表取締役社長:國井幹司郎(くにい かんじろう) T E L:0246−36−0118 所在地:いわき市好間工業団地1−11 F A X:0246−36−0081 資本金:3,000万円 創 業:1967年9月 事業概要:一般機械製造業 従業員:98名 國井社長 人間が行う作業を機械が代替する自動機や省力 験に基づいた高い技術力が不可欠となります。 化機器は、人件費などのコスト削減に寄与するば そこで今回の「企業訪問」では、自動機や省力 かりでなく、作業時間の短縮や品質の均一化が図 化機器の設計・製造を主力とする県内の有力企業 れるなど、企業の競争力を高める重要な役割を 「株式会社いわき精機」本社を訪れ、國井幹司郎 担っています。そして、自動機や省力化機器は、 社長と國井三千郎専務に創業から今後の展開に至 依頼企業のニーズに合った「オンリー・ワン」で るまで、経営にかける思いや事業内容についてお あるため、設計から製造、検査に至るまで長い経 聞きしました。 本社社屋 福島の進路 2015. 7 企業訪問 門型五面加工機 NC フライス機 ● 創業からの沿革についてお聞かせ下さい する経営」です。社員の技術力は、当社における 1967年9月に、私の父が資本金100万円で、市 経営の根幹を成すものであるため、社員の潜在能 内内郷で創業いたしました。創業当初は、ゴム製 力を最大限に引き出す社内体制を採ることにより、 造業で有名な岡本ゴム工業(現オカモト㈱)から 技術力の向上と生産の効率化を両立させる経営を の受注により、ゴム製品の検査機製造などを主な 理想としています。 業務としていました。その後、1976年に新工場を 市内に建設しましたが、1992年に現在の MA セ ● 御社の事業概要についてお聞かせ下さい ンターを移転新設しました。さらに、再生可能エ 当社では、自動機および省力化機器などの一般 ネルギー関連分野など多様な受注分野に対応する 機械における設計から製造、現場での据え付けま ため、2005年に FA センター、2013年に CA セン でを主力事業としています。また、受注分野は、 ターを好間工業団地にそれぞれ開設いたしました。 半導体や液晶パネルから自動車関連、食品関連ま で多方面に亘っています。自動車関連では、リチ ● 経営理念についてお聞かせ下さい ウムイオン電池の製造装置やタイヤの仕上がり精 当社の経営理念は3つあります。 度を計測する検査装置、食品関連では、もやしの 1点目が「顧客を大切にする経営」です。当社 洗浄から梱包までを扱う製造ラインなどをそれぞ は、設計段階からお客様と綿密な打ち合わせを重 れ受注しています。一方、震災関連では、原発事 ね、お客様の要望を最大限に大切にすることを信 故で発生した汚染土を収納する保管容器なども製 条としています。 造しています。 2点目が「地域と環境を大切にする経営」です。 さらに、将来の経営基盤として成長が期待され 当社は、ものづくりを通して、地域社会の発展に る再生可能エネルギー分野にも参入し、太陽光発 寄与することを目指すとともに、環境保全にも配 電の架台や風力発電の部品加工に加え、パネル調 慮した経営を続けるよう努めています。 達から架台設置、施工までの工程を一貫受注する 3点目が「社員の能力を伸ばし、技術を大切に 専門部門も新設いたしました。 福島の進路 2015. 7 企業訪問 溶接作業 フレームを吊り上げる従業員 ● 御社の生産体制についてお聞かせ下さい 延べ床面積約6,800㎡の工場内には、再生可能エネ MA・FA・CA の3つのセンターでは、多様な ルギー事業に取り組むため、大型工作機械や大型 生産設備を備え、一貫生産体制と高効率化を図る クレーンを完備しています。そして、増設した屋 生産システムを敷いているため、分業化による生 上の約2,400㎡には、最大出力200kW の太陽光パ 産効率の向上を可能としています。 ネルを設置し、同センター内消費電力の約30%を MA センターでは、主に大型機械加工や大物溶 賄っています。ちなみに、MA は manufacturing、 接、塗装に対応しており、モーター用架台や大型 FA は factory automation、CA は chance、 装置フレームなどを生産しています。 challenge、change から文字を取って名付けてお また、FA センターでは、主に設計や板金溶接、 ります。 仕上げ加工、検査、電機組み立て、試運転調整、 さらに当社では、生産管理システムの「見える 板金、検査などを行い、大型試験器や各種測定器 化」を進めており、従業員は自分のパソコンで原 などの検査装置に加え、精密部品加工に対応した 価管理や納期管理が可能となったことから、リー クリーンルームも備えています。 ドタイム(受注から納品までの期間)の短縮やコ 最後に、CA センターは、2013年操業開始した新 スト削減、生産効率の向上などに役立っています。 工場ですが、ふくしま産業復興企業立地補助金な ど約12億50百万円を投じた総敷地面積約20,000㎡、 ● 御社の強みについてお聞かせ下さい 当社の強みは、長年の経験と高い技術力を持つ 熟練工を多数抱えていることです。このため、設 計から製造、検査までの一貫生産体制が可能とな り、これまで外部委託していた工程も内製化を進 めることができて利益率の上昇に寄与しています。 また、受注分野の裾野が広いことも、高い技術力 が下支えとなっています。受注分野が広いことが 経営リスクの分散につながり、創業以来、何度も 材料溶断機 福島の進路 2015. 7 経験している産業構造や景気の変動にも大きな影 企業訪問 響を受けることなく、安定した受注先を確保する ことができているのだと思っています。 一方で、こうした高い技術力は、当社の充実し た社員教育制度が背景となっています。当社では、 社内外のセミナーに社員を積極的に参加させると ともに、資格試験取得制度も制定しており、社員 のモチベーション向上に役立っているものと考え ます。さらに、目標管理制度も導入しており、目 國井幹司郎社長(左)と國井三千郎専務(右) 標と成果を明確にすることにより、更なる向上心 の醸成につなげています。 一方、取引先企業が生産拠点を海外移転させて いる状況下で、当社でも、東南アジアを中心とし ● 震災の影響についてお聞かせ下さい た新規市場の開拓に挑戦していく考えであり、国 震災直後に従業員全員の無事を確認しましたが、 内外でバランスの取れた生産体制づくりを検討し 生産設備の一部が損壊し、1,000万円程度の損害 ています。そして、こうした海外展開の可能性も を受けるなど、2週間の休業を余儀なくされまし 見込んで、従業員には積極的に海外視察に行かせ た。また、海外企業では、放射能の影響を危惧し て見聞を広めさせ、チャレンジ精神を養わせてい て取引を停止させ、現在でもまだ再開のめどが ます。さらに、即戦力となる中国やネパールなど 立っていないところもあります。 のアジア人実習生の受け入れにも取り組んでいま 一方、震災をきっかけとした生産拠点の分散や す。 食の安全確保に関わる受注のほか、原発事故によ 【インタビューを終えて】 る汚染土を収納する保管容器の受注など、震災に より、新たに増えている受注分野もあります。し 当社の強みは、高い技術力を背景に、多様な 受注分野を持つとともに、一貫生産体制を可能 かし、未だに復興の道半ばにある市内の現状を考 としている点にあります。この結果、産業構造 えると、手放しでは喜べません。そして、こうし や景気の変動があっても、安定した受注を維持 た震災の経験から、当社でも自家発電を開始させ することができるだけでなく、低コストと短納 るとともに、生産拠点の分散化を検討するなど、 防災・減災に取り組んでいるところです。 期を実現し、お客様の満足する製品を提供し続 けているものと言えます。また、再生可能エネ ルギーなどの新分野や東南アジア等新規市場の 開拓に挑む社長の決断力が、当社の多業種にわ ● 最後に、今後の展望についてお聞かせ下さい 当社では、震災後から受注量が高水準で推移し たる受注先の確保に結びついているものと感じ ました。 今回の取材により、今後も当社が、社長の ている自動車関連産業向けを主軸とした生産を続 チャレンジ精神で新たな分野に受注先を拡大さ けながらも、再生可能エネルギーなど成長分野に せ、県内工場の自動化、省力化に寄与し続ける おける市場開拓にも取り組んでいくつもりです。 ものと確信しました。 (担当:和田) 福島の進路 2015. 7
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